被破壊センサ
【課題】破壊に至らない検出対象物の変形を検出可能で、検出感度を容易に調整することが可能な被破壊センサを提供することを課題とする。
【解決手段】被破壊センサ1は、脆性材料製の基材20と、基材20に積層され導電性を有するセンサ膜21と、を有する被破壊部材2と、被破壊部材2の一方に配置され、荷重伝達時に被破壊部材2に部分的に当接する第一当接部30を有する第一当接部材3と、被破壊部材2の他方に配置され、荷重伝達時に被破壊部材2に部分的に当接する第二当接部40L、40Rを有する第二当接部材4と、を備える。荷重伝達方向から見て、第一当接部30と第二当接部と40L、40Rとは、ずれて配置される。被破壊部材2の破壊前後において、センサ膜21の電気抵抗が変化することを基に、検出対象物80の変形を検出する。
【解決手段】被破壊センサ1は、脆性材料製の基材20と、基材20に積層され導電性を有するセンサ膜21と、を有する被破壊部材2と、被破壊部材2の一方に配置され、荷重伝達時に被破壊部材2に部分的に当接する第一当接部30を有する第一当接部材3と、被破壊部材2の他方に配置され、荷重伝達時に被破壊部材2に部分的に当接する第二当接部40L、40Rを有する第二当接部材4と、を備える。荷重伝達方向から見て、第一当接部30と第二当接部と40L、40Rとは、ずれて配置される。被破壊部材2の破壊前後において、センサ膜21の電気抵抗が変化することを基に、検出対象物80の変形を検出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、破壊されることにより検出対象物の変形を検出する被破壊センサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ガラスの破壊を検出可能な破壊検出センサが開示されている。同文献記載の破壊検出センサは、脆弱な基板と、基板の表面に配置された導電層と、を備えている。同文献の段落[0040]、[0042]に記載されているように、破壊検出センサは、ガラスなどの検出対象物に接着して使用される。すなわち、基板は、検出対象物に、全面的に貼り付けられている。検出対象物が破壊されると、導電層が断線する。当該断線により、検出対象物の破壊を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−123468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の破壊検出センサによると、基板が検出対象物に全面的に貼り付けられている。導電層が断線するためには基板が破壊されればよい。しかしながら、破壊検出センサには、基板破壊用のストロークが確保されていない。このため、検出対象物から独立して、選択的に基板だけを破壊することは困難である。したがって、導電層が断線するためには、基板のみならず、検出対象物も破壊される必要がある。よって、破壊に至らない検出対象物の変形を検出することが困難である。
【0005】
また、基板の壊れやすさではなく、結局は検出対象物自体の壊れやすさに、導電層の断線しやすさ、すなわち破壊検出センサの検出感度が支配されてしまう。このため、検出感度を調整することが困難である。
【0006】
本発明の被破壊センサは、上記課題に鑑みて完成されたものである。本発明は、破壊に至らない検出対象物の変形を検出可能で、検出感度を容易に調整することが可能な被破壊センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記課題を解決するため、本発明の被破壊センサは、脆性材料製の基材と、該基材に積層され導電性を有するセンサ膜と、を有する被破壊部材と、該被破壊部材に荷重が伝達される方向を荷重伝達方向、該荷重伝達方向に直交する方向を直交方向として、該被破壊部材の該荷重伝達方向の一方に配置され、荷重伝達時に該被破壊部材に部分的に当接する第一当接部を有する第一当接部材と、該被破壊部材の該荷重伝達方向の他方に配置され、荷重伝達時に該被破壊部材に部分的に当接する第二当接部を有する第二当接部材と、を備え、該荷重伝達方向から見て、該第一当接部と該第二当接部とは、該直交方向にずれて配置され、該被破壊部材の破壊前後において、該センサ膜の電気抵抗が変化することを基に、検出対象物の変形を検出することを特徴とする。ここで、検出対象物の「変形」には、検出対象物の変位(移動)も含まれる。
【0008】
本発明の被破壊センサは、被破壊部材を備えている。検出対象物が変形する際、被破壊部材は、第一当接部材、第二当接部材からの荷重の入力により破壊される。このため、検出対象物の、破壊に至る変形は勿論、破壊に至らない変形も検出することができる。
【0009】
また、被破壊部材の壊れやすさを調整することで、センサ膜の断線(導通状態から絶縁状態になること)のしやすさを容易に調整することができる。被破壊部材を壊れやすくすると、検出対象物の変形量が小さい場合であっても、変形を検出することができる。すなわち、検出感度が高くなる。被破壊部材を壊れにくくすると、検出対象物の変形量が大きい場合に、変形を検出することができる。すなわち、検出感度が低くなる。このように、本発明の被破壊センサによると、検出対象物の変形の有無を判別するための、検出感度を自在に調整することができる。
【0010】
また、本発明の被破壊センサは、第一当接部材と第二当接部材とを備えている。第一当接部材、第二当接部材は、各々、少なくとも荷重伝達時において、被破壊部材に当接している。なお、第一当接部材、第二当接部材は、各々、荷重伝達時以外は、被破壊部材に当接していなくてもよい。荷重伝達方向から見て、第一当接部と第二当接部とは、直交方向にずれて配置されている。このため、荷重が伝達される際、被破壊部材において、荷重伝達方向一方から荷重が入力される部分(第一当接部が当接する部分)と、荷重伝達方向他方から荷重が入力される部分(第二当接部が当接する部分)と、が直交方向にずれることになる。したがって、被破壊部材に破壊を誘起することができる。また、荷重伝達方向から見て第一当接部と第二当接部とが直交方向にずれて配置されているため、被破壊部材の破壊に必要なストロークを確保することができる。また、被破壊部材は、脆性材料(ガラス、セラミック、樹脂、コンクリートなどを含む)製である。このため、破壊に必要なストロークが短くて済む。したがって、被破壊センサの荷重伝達方向の肉厚を薄くすることができる。
【0011】
(2)好ましくは、上記(1)の構成において、前記第一当接部材は、前記被破壊部材に部分的に荷重を入力することにより、該被破壊部材に破壊を誘起する前記第一当接部を有する破壊誘起部材であり、前記第二当接部材は、荷重伝達時に該被破壊部材を部分的に支持する複数の前記第二当接部と、複数の該第二当接部間に区画され、該被破壊部材の破壊に必要なストロークを確保する凹部と、を有する支持部材である構成とする方がよい。
【0012】
破壊誘起部材は、第一当接部を有している。一方、支持部材は、複数の第二当接部と、凹部と、を有している。荷重が伝達される際、被破壊部材において、第一当接部が当接する部分は、凹部に進入する。このため、凹部の荷重伝達方向の全長(深さ)により、被破壊部材の破壊に必要なストロークを確保することができる。
【0013】
(3)好ましくは、上記(1)または(2)の構成において、前記第一当接部は、前記被破壊部材に部分的に前記荷重を入力することにより剪断力を発生させる構成とする方がよい。本構成によると、被破壊部材において、第一当接部が当接する部分と第一当接部が当接しない部分との間、または第一当接部が当接する部分と第二当接部が当接する部分との間で、剪断力を発生させることができる。このため、被破壊部材の破壊に必要なストロークが短くなる。
【0014】
(4)好ましくは、上記(1)ないし(3)のいずれかの構成において、前記センサ膜は、樹脂製の母材と、該母材中に充填される導電性フィラーと、を有する構成とする方がよい。本構成によると、母材がエラストマー製である場合(この場合も勿論上記(1)の構成に含まれる)と比較して、センサ膜の脆性を高くすることができる。このため、より検出感度を高くすることができる。
【0015】
(5)好ましくは、上記(1)ないし(4)のいずれかの構成において、前記センサ膜は、前記基材に印刷される構成とする方がよい。本構成によると、センサ膜を所定の位置に正確に配置することができる。また、センサ膜の寸法精度が高くなる。また、センサ膜の荷重伝達方向の肉厚を薄くすることができる。このため、センサ膜の脆性を高くすることができる。したがって、より検出感度を高くすることができる。
【0016】
(6)好ましくは、上記(1)ないし(5)のいずれかの構成において、前記センサ膜は、前記基材よりも、破断伸び量が小さい構成とする方がよい。本構成によると、センサ膜は、基材よりも、脆性が高くなる。このため、センサ膜が破壊されやすくなる。したがって、より検出感度を高くすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、破壊に至らない検出対象物の変形を検出可能で、検出感度を容易に調整することが可能な被破壊センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第一実施形態の被破壊センサの斜視図である。
【図2】同被破壊センサの左右方向断面図である。
【図3】同被破壊センサの回路図である。
【図4】同被破壊センサの荷重伝達時の左右方向断面図である。
【図5】同被破壊センサの破壊完了時の左右方向断面図である。
【図6】破壊誘起部材の移動量と同被破壊センサの応答電圧との関係を示すグラフである。
【図7】第二実施形態の被破壊センサの左右方向断面図である。
【図8】第三実施形態の被破壊センサの左右方向断面図である。
【図9】第四実施形態の被破壊センサの左右方向断面図である。
【図10】第五実施形態の被破壊センサの左右方向断面図である。
【図11】第六実施形態の被破壊センサの左右方向断面図である。
【図12】第七実施形態の被破壊センサの斜視図である。
【図13】第八実施形態の被破壊センサの斜視図である。
【図14】被破壊センサの破壊誘起部材付近の断面図である。
【図15】変形検出実験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の被破壊センサの実施の形態について説明する。
【0020】
<第一実施形態>
[被破壊センサの構成]
まず、本実施形態の被破壊センサの構成について説明する。図1に、本実施形態の被破壊センサの斜視図を示す。図2に、同被破壊センサの左右方向(長手方向)断面図を示す。以下に示す図中、前後方向は、本発明の「荷重伝達方向」に対応している。左右方向は、本発明の「直交方向」に対応している。前方は、本発明の「荷重伝達方向の一方」に対応している。後方は、本発明の「荷重伝達方向の他方」に対応している。
【0021】
図1、図2に示すように、本実施形態の被破壊センサ1は、被破壊部材2と破壊誘起部材3と支持部材4とを備えている。支持部材4は、ステンレス鋼製であって、直方体状を呈している。支持部材4の前面には、左右一対の第二当接部40L、40Rと、凹部41と、が配置されている。凹部41は、左右一対の第二当接部40L、40Rの間に配置されている。
【0022】
被破壊部材2は、基材20とセンサ膜21とを備えている。基材20は、ガラス製であって、長方形薄板状を呈している。ガラスは、本発明の「脆性材料」の概念に含まれる。基材20は、左右一対の第二当接部40L、40Rの間に架設された状態で、支持部材4の前面に積層されている
センサ膜21は、導電性を有している。センサ膜21は、長方形薄膜状を呈している。センサ膜21は、基材20の前面に印刷されている。センサ膜21は、基材20の前面の全体に亘って配置されている。
【0023】
センサ膜21は、以下の方法により、基材20に配置される。まず、脂環式エポキシとアミン系硬化剤とに、センサ膜21全体を100体積%として、カーボンビーズを45体積%混合したセンサ膜用塗料を、スクリーン印刷機により、基材20の前面に印刷する。次に、塗膜を110℃で硬化させる。このようにして、センサ膜21は、基材20に配置される。エポキシは、本発明の「樹脂」の概念に含まれる。カーボンビーズは、本発明の「導電性フィラー」の概念に含まれる。
【0024】
センサ膜21の左右両端には、各々、配線(図略)が接続されている。一対の配線は、制御装置(図略)に電気的に接続されている。制御装置の記憶部には、検出しきい値(電圧)が格納されている。
【0025】
破壊誘起部材3は、ステンレス鋼製であって、直方体状を呈している。破壊誘起部材3の後面には、長方形状の第一当接部30が配置されている。第一当接部30は、センサ膜21の前面の左右方向中央部分に当接している。破壊誘起部材3の左面、右面、上面、下面と、後面である第一当接部30と、の間の挟角は、90°である。
【0026】
図2に示すように、前方または後方から見て、第一当接部30と、左右一対の第二当接部40L、40Rと、は左右方向にずれて配置されている。すなわち、第一当接部30は、左右一対の第二当接部40L、40Rの間に、配置されている。また、前方または後方から見て、第一当接部30と凹部41とは重複して配置されている。検出対象物(図略)は、破壊誘起部材3の前方に配置されている。
【0027】
次に、本実施形態の被破壊センサの回路構成について説明する。図3に、本実施形態の被破壊センサの回路図を示す。図3に示すように、回路90は、電源900と第一抵抗体901と第二抵抗体902とを備えている。回路90は、制御装置に配置されている。
【0028】
第一抵抗体901の電気抵抗R1、第二抵抗体902の電気抵抗R2、電源900の電圧Eは、各々一定である。センサ膜21の左右方向(長手方向)両端間の電気抵抗をRsとして、検出点P1、P2間の電気抵抗Rtは、次式(1)により算出される。
Rt=(Rs・R2)/(Rs+R2) ・・・・・式(1)
また、検出点P1、P2間の応答電圧Vtは、次式(2)により算出される。
Vt=(Rt/(Rt+R1))・E ・・・・・式(2)
【0029】
[被破壊センサの動き]
次に、本実施形態の被破壊センサ1の動きについて説明する。図4に、本実施形態の被破壊センサの荷重伝達時の左右方向断面図を示す。図5に、同被破壊センサの破壊完了時の左右方向断面図を示す。図6に、破壊誘起部材の移動量と同被破壊センサの応答電圧との関係をグラフで示す。
【0030】
荷重は、前方から検出対象物に入力される。図4に白抜き矢印で示すように、検出対象物は、前方から破壊誘起部材3を押圧する。押圧された破壊誘起部材3は、前方から被破壊部材2を押圧する。
【0031】
図4に誇張して示すように、押圧された被破壊部材2は、第二当接部40Lの右縁40Lrと、第二当接部40Rの左縁40Rlと、の間で、後方に膨らむように撓む。つまり、被破壊部材2は、凹部41に没入するように撓む。被破壊部材2と比較して、破壊誘起部材3の第一当接部30は、撓みにくい。このため、第一当接部30の左縁30L(破壊誘起部材3の後面左角部)と右縁30R(破壊誘起部材3の後面右角部)とは、被破壊部材2の前面に線接触する。したがって、被破壊部材2の前面のうち、第一当接部30の左縁30L、右縁30Rが線接触する部分には、荷重が集中する。このように、被破壊部材2は、あたかも四点曲げ試験機にセットされた試験片のように、第二当接部40Lの右縁40Lrと、第二当接部40Rの左縁40Rlと、の間で、第一当接部30の左縁30L、右縁30Rにより、前方から押圧される。
【0032】
ここで、被破壊部材2の基材20はガラス製である。このため、脆い。したがって、第一当接部30の左縁30L、右縁30Rから集中的に入力される荷重により、被破壊部材2の前面には、左縁30Lおよび右縁30Rのうち少なくとも一方から、クラックが発生する。クラックが被破壊部材2の後面まで進展すると、図5に示すように、被破壊部材2が破断する。被破壊部材2は、ほとんど弾性変形することなく破断する。被破壊部材2のうち、破断した部分は、凹部41に没入する。
【0033】
被破壊部材2が破断すると、センサ膜21も破断する。このため、センサ膜21の左右両端間の電気抵抗Rsが無限大になる。したがって、式(1)からRt=R2になる。また、式(2)からVt=(R2/(R2+R1))・Eになる。すなわち、図6に示すように、応答電圧Vtが上昇し、検出しきい値Vthを超える。応答電圧Vtが検出しきい値を超えると、制御装置の演算部は、センサ膜21が導通状態から絶縁状態に切り替わったと判別する。つまり、検出対象物が変形したと判別する。このようにして、本実施形態の被破壊センサは、自身が破壊されることにより、検出対象物の変形を検出している。
【0034】
また、センサ膜21が短絡すると、センサ膜21の左右両端間の電気抵抗Rsが0になる。したがって、式(1)からRt=0になる。また、式(2)からVt=0になる。すなわち、図6に点線で示すように、応答電圧Vtが0になると、制御装置の演算部は、センサ膜21が導通状態から短絡状態に切り替わったと判別する。
【0035】
[作用効果]
次に、本実施形態の被破壊センサ1の作用効果について説明する。図2に示すように、本実施形態の被破壊センサ1は、被破壊部材2を備えている。図4、図5に示すように、検出対象物が変形する際、被破壊部材2は、第一当接部30からの荷重の入力により破壊される。このため、検出対象物の、破壊に至る変形は勿論、破壊に至らない変形も検出することができる。
【0036】
また、被破壊部材2の壊れやすさを調整することで、センサ膜21の断線(導通状態から絶縁状態になること)しやすさを容易に調整することができる。被破壊部材2を壊れやすくすると、検出対象物の変形量が小さい場合であっても、変形を検出することができる。すなわち、検出感度が高くなる。被破壊部材2を壊れにくくすると、検出対象物の変形量が大きい場合に、変形を検出することができる。すなわち、検出感度が低くなる。このように、本実施形態の被破壊センサ1によると、検出対象物の変形の有無を判別するための、検出感度を自在に調整することができる。
【0037】
また、被破壊部材2は、脆性の高いガラス製である。このため、破壊に必要なストロークが短くて済む。したがって、被破壊センサ1の前後方向の肉厚を薄くすることができる。また、凹部41の前後方向深さを浅くすることができる。
【0038】
また、図2に示すように、本実施形態の被破壊センサ1によると、前方または後方から見て、第一当接部30と第二当接部40L、40Rとは、左右方向にずれて配置されている。このため、荷重が伝達される際、被破壊部材2において、前方から荷重が入力される部分(第一当接部30が当接する部分)と、後方から荷重が入力される部分(第二当接部40L、40Rが当接する部分)と、が左右方向にずれることになる。したがって、被破壊部材2に破壊を誘起することができる。
【0039】
また、図4、図5に示すように、本実施形態の被破壊センサ1によると、荷重が伝達される際、被破壊部材2において、第一当接部30が当接する部分は、凹部41に進入する。このため、被破壊部材2の破壊に必要なストロークを確保することができる。また、第一当接部30は、被破壊部材2を、主に剪断力により破壊している。このため、被破壊部材2の破壊に必要なストロークが短くなる。
【0040】
また、本実施形態の被破壊センサ1によると、図6に示すように、導通状態から絶縁状態への変化のみならず、導通状態から短絡状態への変化を検出することができる。このため、被破壊センサ1の自己診断性が高い。
【0041】
また、本実施形態の被破壊センサ1によると、センサ膜21は、エポキシ樹脂製の母材とカーボンフィラーとを有している。このため、母材がエラストマー製である場合と比較して、センサ膜21の脆性を高くすることができる。したがって、より検出感度を高くすることができる。
【0042】
また、本実施形態の被破壊センサ1によると、スクリーン印刷法により、センサ膜21は、基材20に印刷されている。このため、センサ膜21を所定の位置に正確に配置することができる。また、センサ膜21の寸法精度が高くなる。また、センサ膜21の前後方向の肉厚を薄くすることができる。このため、センサ膜21の脆性を高くすることができる。したがって、より検出感度を高くすることができる。
【0043】
また、本実施形態の被破壊センサ1によると、センサ膜21は、基材20よりも、破断伸び量が小さい。このため、センサ膜21は、基材20よりも、脆性が高くなる。したがって、センサ膜21が破壊されやすい。
【0044】
<第二実施形態>
本実施形態の被破壊センサと第一実施形態の被破壊センサとの相違点は、被破壊部材の構成だけである。ここでは、相違点についてのみ説明する。図7に、本実施形態の被破壊センサの左右方向断面図を示す。なお、図2と対応する部位については、同じ符号で示す。図7に示すように、センサ膜21は、基材20の後方に配置されている。すなわち、センサ膜21は、外部(前方)に露出していない。
【0045】
本実施形態の被破壊センサ1は、構成が共通する部分に関しては、第一実施形態の被破壊センサと同様の作用効果を有する。また、本実施形態の被破壊センサ1によると、センサ膜21が外部に露出していない。このため、検出対象物に被破壊センサ1を取り付ける際など、隣接部材にセンサ膜21が干渉しにくい。したがって、誤ってセンサ膜21が断線しにくい。
【0046】
また、本実施形態の被破壊センサ1によると、前出図4に示すように、凹部41に没入するように被破壊部材2が膨らむ際、基材20の径方向外側にセンサ膜21が配置されることになる。このため、剪断力に加えて、左右方向からの引張力がセンサ膜21に加わる。したがって、センサ膜21が断線しやすい。
【0047】
<第三実施形態>
本実施形態の被破壊センサと第一実施形態の被破壊センサとの相違点は、破壊誘起部材と、被破壊部材および支持部材と、が別々に配置されている点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。
【0048】
図8に、本実施形態の被破壊センサの左右方向断面図を示す。なお、図2と対応する部位については、同じ符号で示す。図8に示すように、破壊誘起部材3は、検出対象物80の後面に取り付けられている。一方、被破壊部材2および支持部材4は、固定部材81に取り付けられている。
【0049】
取付状態(検出対象物80が変形していない状態)においては、第一当接部30は、被破壊部材2から距離L1だけ離間している。検出対象物80が後方に向かって変形すると、第一当接部30が被破壊部材2に衝突する。そして、被破壊部材2を破壊する。
【0050】
本実施形態の被破壊センサ1は、構成が共通する部分に関しては、第一実施形態の被破壊センサと同様の作用効果を有する。また、本実施形態の被破壊センサ1によると、破壊誘起部材3と、被破壊部材2および支持部材4と、が別々の部材(検出対象物80、固定部材81)に取り付けられている。このため、被破壊センサ1を構成する各部材の配置の自由度が高くなる。また、本実施形態の被破壊センサ1によると、加速された状態で、第一当接部30が被破壊部材2に衝突する。このため、被破壊部材2が破壊されやすくなる。
【0051】
また、本実施形態の被破壊センサ1によると、第一当接部30とセンサ膜21前面との間の距離L1を調整することで、検出感度を調整することができる。距離L1を短くすると、検出対象物80の変形量が小さい場合であっても、変形を検出することができる。すなわち、検出感度が高くなる。距離L1を長くすると、検出対象物80の変形量が大きい場合に、変形を検出することができる。すなわち、検出感度が低くなる。
【0052】
<第四実施形態>
本実施形態の被破壊センサと第三実施形態の被破壊センサとの相違点は、破壊誘起部材および被破壊部材と、支持部材と、が別々に配置されている点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。
【0053】
図9に、本実施形態の被破壊センサの左右方向断面図を示す。なお、図8と対応する部位については、同じ符号で示す。図9に示すように、破壊誘起部材3および被破壊部材2は、検出対象物80の後面に取り付けられている。一方、支持部材4は、固定部材81に取り付けられている。
【0054】
取付状態(検出対象物80が変形していない状態)においては、被破壊部材2は、第二当接部40L、40Rから距離L2だけ離間している。検出対象物80が後方に向かって変形すると、相対的に、第二当接部40L、40Rが被破壊部材2に衝突する。そして、被破壊部材2を破壊する。
【0055】
本実施形態の被破壊センサ1は、構成が共通する部分に関しては、第三実施形態の被破壊センサと同様の作用効果を有する。また、本実施形態の被破壊センサ1によると、破壊誘起部材3および被破壊部材2と、支持部材4と、が別々の部材(検出対象物80、固定部材81)に取り付けられている。このため、被破壊センサ1を構成する各部材の配置の自由度が高くなる。また、本実施形態の被破壊センサ1によると、加速された状態で、第二当接部40L、40Rが被破壊部材2に衝突する。このため、被破壊部材2が破壊されやすくなる。
【0056】
また、本実施形態の被破壊センサ1によると、第二当接部40L、40Rと基材20後面との間の距離L2を調整することで、検出感度を調整することができる。距離L2を短くすると、検出対象物80の変形量が小さい場合であっても、変形を検出することができる。すなわち、検出感度が高くなる。距離L2を長くすると、検出対象物80の変形量が大きい場合に、変形を検出することができる。すなわち、検出感度が低くなる。
【0057】
<第五実施形態>
本実施形態の被破壊センサと第一実施形態の被破壊センサとの相違点は、支持部材が一対の支持片を有する点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。図10に、本実施形態の被破壊センサの左右方向断面図を示す。なお、図2と対応する部位については、同じ符号で示す。図10に示すように、支持部材4は、左右一対の支持片41L、41Rを備えている。左右一対の支持片41L、41Rは、各々、ステンレス鋼製であって、直方体状を呈している。左右一対の支持片41L、41Rは、固定部材82の前面に固定されている。支持片41Lの第二当接部40Lは、被破壊部材2の左端後面に当接している。支持片41Rの第二当接部40Rは、被破壊部材2の右端後面に当接している。凹部41は、一対の支持片41L、41R間に区画されている。
【0058】
本実施形態の被破壊センサ1は、構成が共通する部分に関しては、第一実施形態の被破壊センサと同様の作用効果を有する。また、本実施形態の被破壊センサ1によると、支持部材4の構造が簡単になる。
【0059】
<第六実施形態>
本実施形態の被破壊センサと第一実施形態の被破壊センサとの相違点は、被破壊部材に一対のスリットが形成されている点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。図11に、本実施形態の被破壊センサの左右方向断面図を示す。なお、図2と対応する部位については、同じ符号で示す。図11に示すように、被破壊部材2の基材20の後面には、左右一対のスリット200L、200Rが凹設されている。スリット200L、200Rは、各々、V字溝状を呈している。スリット200Lは、第一当接部30の左縁30Lに、前後方向に対向している。スリット200Rは、第一当接部30の右縁30Rに、前後方向に対向している。
【0060】
本実施形態の被破壊センサ1は、構成が共通する部分に関しては、第一実施形態の被破壊センサと同様の作用効果を有する。また、本実施形態の被破壊センサ1によると、より被破壊部材2が破壊されやすくなる。このため、検出感度を高くすることができる。また、被破壊部材2の被破壊箇所を、左縁30Lとスリット200Lとの間の部分、または右縁30Rとスリット200Rと間の部分に、誘導することができる。このため、複数の被破壊センサ1間において、検出感度のばらつきが小さくなる。
【0061】
<第七実施形態>
本実施形態の被破壊センサと第一実施形態の被破壊センサとの相違点は、センサ膜が基材に一筆書き状に印刷されている点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。図12に、本実施形態の被破壊センサの斜視図を示す。なお、図1と対応する部位については、同じ符号で示す。また、説明の便宜上、破壊誘起部材3を透過して示す。また、センサ膜21にハッチングを施す。
【0062】
図12に示すように、基材20の前面には、センサ膜21が、一筆書き状にジグザグに蛇行して印刷されている。センサ膜21の右上端および左下端には、各々、配線(図略)が接続されている。本実施形態の被破壊センサ1は、構成が共通する部分に関しては、第一実施形態の被破壊センサと同様の作用効果を有する。本実施形態の被破壊センサ1のように、基材20の前面に、部分的にかつ冗長的にセンサ膜21を配置してもよい。
【0063】
<第八実施形態>
本実施形態の被破壊センサと第七実施形態の被破壊センサとの相違点は、五本のセンサ膜が基材に印刷されている点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。図13に、本実施形態の被破壊センサの斜視図を示す。なお、図12と対応する部位については、同じ符号で示す。
【0064】
図13に示すように、基材20の前面には、左右方向に延在する五本のセンサ膜21が、互いに平行に印刷されている。センサ膜21の左右両端には、各々、配線(図略)が接続されている。すなわち、五本のセンサ膜21は、互いに電気的に並列に接続されている。本実施形態の被破壊センサ1は、構成が共通する部分に関しては、第七実施形態の被破壊センサと同様の作用効果を有する。本実施形態の被破壊センサ1のように、基材20の前面に、複数のセンサ膜21を配置してもよい。
【0065】
<その他>
以上、本発明の被破壊センサの実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0066】
上記実施形態においては、前後方向を本発明の「荷重伝達方向」に、左右方向を本発明の「直交方向」に、それぞれ対応させた。しかしながら、これらの対応関係は特に限定しない。上下方向、左右方向を本発明の「荷重伝達方向」に対応させてもよい。また、上下方向、前後方向を本発明の「直交方向」に対応させてもよい。
【0067】
破壊誘起部材3の形状は特に限定しない。図14(a)〜(e)に、被破壊センサの破壊誘起部材付近の断面図を示す。なお、図2と対応する部位については、同じ符号で示す。図14(a)に示すように、破壊誘起部材3は、被破壊部材2に、長方形枠状に当接してもよい。すなわち、第一当接部30が長方形枠状を呈していてもよい。図14(b)に示すように、破壊誘起部材3が三角柱状(楔状)を呈していてもよい。図14(c)に示すように、破壊誘起部材3が半円柱状を呈していてもよい。すなわち、第一当接部30が線状を呈していてもよい。また、図14(d)に示すように、破壊誘起部材3がカミソリの刃状を呈していてもよい。また、図14(e)に示すように、破壊誘起部材3が針状を呈していてもよい。また、第二当接部40L、40Rを、上記第一当接部30のような形状にしてもよい。第一当接部30、第二当接部40L、40Rの配置数は特に限定しない。
【0068】
上記実施形態においては、被破壊センサ1により、検出対象物80の変形の有無を検出した。しかしながら、検出対象物80の変位(検出対象物80の変形を伴わない変位を含む)の有無を検出してもよい。また、検出対象物80の変形の原因が、検出対象物80に入力される荷重の場合は、検出対象物80の変形を介して、検出対象物80に入力される荷重の有無を検出してもよい。
【0069】
上記実施形態においては、図3に示す回路90を制御装置に配置したが、被破壊センサ1に配置してもよい。また、回路90のうち、電源900を制御装置に、第一抵抗体901、第二抵抗体902を被破壊センサ1に、分離して配置してもよい。
【0070】
センサ膜21の形状、大きさなどは特に限定しない。これらは、被破壊センサ1の用途などに応じて適宜決定すればよい。例えば、センサ膜21の前後方向の肉厚は、被破壊センサ1の小型化、薄型化などの観点から、10μm以上500μm以下とすることが望ましい。250μm以下がより好適である。センサ膜21の肉厚を小さくすると、センサ膜21が破壊されやすくなる。
【0071】
センサ膜21の材質は特に限定しない。母材は、樹脂、エラストマーの中から、導電性フィラーとの相溶性などを考慮して、適宜選択すればよい。特に、センサ膜用塗料からセンサ膜21を形成する場合には、塗料化が可能な材料を選択することが望ましい。すなわち、自身が液状の材料、あるいは溶剤などに可溶な材料を選択するとよい。
【0072】
例えば、熱可塑性樹脂として、PE、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、ポリビニルアセテート(PVAc)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、PET、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、非晶質フッ素樹脂、非晶質ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂などが挙げられる。なかでも、溶剤に可溶であるという理由から、ポリアミド、非晶質フッ素樹脂、非晶質ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂などが好適である。
【0073】
また、熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン、PIなどが挙げられる。なかでも、エポキシ樹脂が好適である。エポキシ樹脂の硬化前樹脂には、比較的低粘度の液状のものが多い。よって、溶剤を使用せずに塗料化可能である。また、導電性フィラーとの相溶性も良好である。このため、導電性フィラーを、略単粒子状態でかつ高充填率で配合しやすい。エポキシ樹脂としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂(A型、F型、AD型)、脂環式エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、多価アルコール類とエピクロルヒドリンとを反応させて得られるポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0074】
また、エラストマーは、ゴムおよび熱可塑性エラストマーから適宜選択することができる。例えば、ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)、エチレン−プロピレン共重合ゴム(エチレン−プロピレン共重合体(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)など)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(Cl−IIR、Br−IIRなど)、水素化ニトリルゴム(H−NBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリルゴム(AR)、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム(CSM)、ヒドリンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、合成ラテックスなどが挙げられる。また、熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系、オレフィン系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、フッ素系などの各種熱可塑性エラストマー、およびこれらの誘導体が挙げられる。なかでも、導電性フィラーとの相溶性が良好なEPDM、NBR、シリコーンゴムが好適である。また、液状IR、液状BR、RTV型(室温硬化型)シリコーンゴムは、硬化前に液状であり、溶剤を使用せずに塗料化可能である点で、好適である。
【0075】
導電性フィラーは、導電性を有するものであれば、特に限定しない。例えば、炭素材料、金属などの微粒子が挙げられる。これらのうち、一種を単独で、あるいは二種以上を併せて用いることができる。センサ膜21の破断伸び量を、より小さくするという観点から、導電性フィラーとして、真球あるいは極めて真球に近い形状(略真球状)の粒子を採用するとよい。
【0076】
また、導電性フィラーの充填率は、センサ膜21の体積を100体積%とした場合の30体積%以上であることが望ましい。30体積%未満の場合には、導電性フィラーが導電パスを形成しにくく、所望の導電性が発現しにくい。35体積%以上であるとより好適である。反対に、導電性フィラーの充填率は、センサ膜21の体積を100体積%とした場合の65体積%以下であることが望ましい。65体積%を超えると、母材への混合が困難となり、成形加工性が低下する。さらに、センサ膜用塗料を調製しにくくなる。55体積%以下であるとより好適である。
【0077】
母材中、導電性フィラーは、できるだけ凝集せず一次粒子の状態で存在することが望ましい。よって、導電性フィラーを選択する際には、平均粒子径や母材との相溶性などを考慮するとよい。例えば、一次粒子の状態で存在する導電性フィラーの平均粒子径は、0.05μm以上100μm以下であることが望ましい。0.05μm未満の場合には、凝集して二次粒子を形成しやすい。0.5μm以上、さらには1μm以上であると好適である。反対に、平均粒子径が100μmを超えると、センサ膜21の肉厚を小さくしにくくなる。60μm以下、さらには30μm以下であると好適である。
【0078】
導電性フィラーとしては、銀、金、銅、ニッケル、ロジウム、パラジウム、クロム、チタン、白金、鉄、およびこれらの合金、カーボン等から適宜選択すればよい。とりわけ、カーボンビーズが好適である。カーボンビーズは、導電性が良好で、比較的安価である。また、略真球状を呈しているため、高充填率で配合することができる。具体的には、大阪ガスケミカル社製のメソカーボンマイクロビーズ(MCMB6−28(平均粒子径約6μm)、MCMB10−28(平均粒子径約10μm)、MCMB25−28(平均粒子径約25μm))、日本カーボン社製のカーボンマイクロビーズ:ニカビーズ(登録商標)ICB、ニカビーズPC、ニカビーズMC、ニカビーズMSB(ICB0320(平均粒子径約3μm)、ICB0520(平均粒子径約5μm)、ICB1020(平均粒子径約10μm)、PC0720(平均粒子径約7μm)、MC0520(平均粒子径約5μm))、日清紡社製のカーボンビーズ(平均粒子径約10μm)などが挙げられる。
【0079】
センサ膜21は、例えば、次のようにして製造することができる。母材に熱可塑性樹脂を選択した場合には、加熱溶融した熱可塑性樹脂に、導電性フィラー、必要に応じて添加剤を加えて混合した後、プレス成形、射出成形などを行う。また、母材に熱硬化性樹脂を選択した場合には、硬化前樹脂に、硬化剤、必要に応じて添加剤を加えて混合した後、プレス成形などにより硬化させる。一方、母材にエラストマーを選択した場合は、まず、エラストマーに、加硫助剤、軟化剤などの添加剤を添加して、混練りする。続いて、導電性フィラーを加えて混練りした後、さらに、架橋剤、加硫促進剤を加えて混練りし、エラストマー組成物とする。次に、エラストマー組成物をシート状に成形し、それを金型に充填してプレス加硫する。
【0080】
センサ膜21の肉厚を小さくするためには、センサ膜用塗料からセンサ膜21を形成することが望ましい。すなわち、まず、樹脂またはエラストマーなどの母材の形成成分を含むセンサ膜用塗料を調製する。次に、調製したセンサ膜用塗料を、基材20に塗布し、乾燥させる。なお、熱硬化樹脂を使用した場合は、センサ膜用塗料を塗布した後、硬化させればよい。また、エラストマーを使用した場合は、乾燥と同時に、あるいは乾燥後に、架橋反応を進行させればよい。
【0081】
センサ膜用塗料の塗布方法は、種々の方法を採用することができる。例えば、インクジェット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、パッド印刷、リソグラフィーなどの印刷法の他、ディップ法、スプレー法、バーコート法、ディスペンサー法などが挙げられる。例えば、印刷法を採用すると、塗布する部分と塗布しない部分との塗り分けを、容易に行うことができる。また、大きな面積、細線、複雑な形状の印刷も容易である。さらに、センサ膜21以外の配線などを同様の方法で形成することができるため、各部品を集積化しやすい。印刷法の中でも、高粘度の塗料も使用可能であり、塗膜の肉厚の調整が容易であるという理由から、スクリーン印刷法が好適である。また、センサ膜21の材質として、市販の銀ペースト、銅ペーストなどを用いてもよい。
【実施例1】
【0082】
以下、本発明の被破壊センサに対して行った変形検出実験について説明する。実験に用いた被破壊センサの構成は、第一実施形態の被破壊センサの構成と同様である。まず、実験に用いた被破壊センサの寸法について、図1、図2を援用しながら説明する。
【0083】
図1、図2に示すように、破壊誘起部材3の第一当接部30の左右方向全長は52mm、上下方向全長は25mmとした。被破壊部材2の基材20の左右方向全長は120mm、上下方向全長は25mm、前後方向肉厚は1.15mmとした。センサ膜21の左右方向全長は120mm、上下方向全長は25mm、前後方向肉厚は0.5mmとした。支持部材4の凹部41の左右方向全長は76mm、上下方向全長は25mm、前後方向深さは3mmとした。
【0084】
次に、実験方法について説明する。実験においては、図1、図2の前後方向が上下方向になるように、つまり破壊誘起部材3が上に、支持部材4が下に、それぞれ配置されるように、被破壊センサ1を配置した。そして、破壊誘起部材3を1mm/分の速度で下降させた。図15に、変形検出実験の結果をグラフで示す。図15中、横軸は時間を示す。左縦軸は、破壊誘起部材3が被破壊部材2に加える荷重を示す。右縦軸は、破壊誘起部材3の下方への移動量、および式(2)から算出される、図3の検出点P1、P2間の応答電圧Vtを示す。
【0085】
図15に示すように、破壊誘起部材3が移動するのに従って、破壊誘起部材3が被破壊部材2に加える荷重は徐々に大きくなる。そして、被破壊部材2が一気に破断する。この際、応答電圧Vtは、2.5Vから一気に3.3Vに変化する。2.5Vと3.3Vとの間(例えば2.9V)に検出しきい値Vthを設定することで、応答電圧Vtの変化から、検出対象物の変形を検出することができる。
【0086】
本実施例の場合、図3の電源900の電圧Eは5Vである。また、センサ膜21の初期の電気抵抗Rsは、Rs=2・R1=R2となるように、設定されている。このため、初期の検出点P1、P2間の電気抵抗Rtは、式(1)から、Rt=Rs/2となる。また、初期の検出点P1、P2間の応答電圧Vtは、式(2)から、Vt=2.5Vとなる。
【0087】
また、被破壊部材2が破断すると、センサ膜21も破断する。このため、センサ膜21の電気抵抗Rsが無限大になる。したがって、式(1)からRt=R2になる。また、式(2)から、Vt=3.3Vとなる。よって、被破壊センサ1の検出レンジのフルスケールはΔVt=0.8V(=3.3V−2.5V)となる。
【0088】
これに対して、センサ膜の初期の電気抵抗Rsを、Rs=(1/2)・R1=(1/5)・R2となるように、設定する。この場合、初期の検出点P1、P2間の電気抵抗Rtは、式(1)から、Rt=5Rs/6となる。また、初期の検出点P1、P2間の応答電圧Vtは、式(2)から、Vt=1.5Vとなる。
【0089】
また、被破壊部材2が破断すると、センサ膜21も破断する。このため、センサ膜21の電気抵抗Rsが無限大になる。したがって、式(1)からRt=R2になる。また、式(2)から、Vt=3.6Vとなる。よって、被破壊センサ1の検出レンジのフルスケールはΔVt=2.1V(=3.6V−1.5V)となる。このように、図3の回路90の回路定数を調整することにより、被破壊センサ1の検出レンジのフルスケールを調整することができる。
【符号の説明】
【0090】
1:被破壊センサ、2:被破壊部材、3:破壊誘起部材、4:支持部材。
20:基材、21:センサ膜、30:第一当接部、30L:左縁、30R:右縁、40L:第二当接部、40Lr:右縁、40R:第二当接部、40Rl:左縁、41:凹部、41L:支持片、41R:支持片、80:検出対象物、81:固定部材、82:固定部材、90:回路。
200L:スリット、200R:スリット、900:電源、901:第一抵抗体、902:第二抵抗体。
P1:検出点、P2:検出点、Vt:応答電圧、Vth:検出しきい値。
【技術分野】
【0001】
本発明は、破壊されることにより検出対象物の変形を検出する被破壊センサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ガラスの破壊を検出可能な破壊検出センサが開示されている。同文献記載の破壊検出センサは、脆弱な基板と、基板の表面に配置された導電層と、を備えている。同文献の段落[0040]、[0042]に記載されているように、破壊検出センサは、ガラスなどの検出対象物に接着して使用される。すなわち、基板は、検出対象物に、全面的に貼り付けられている。検出対象物が破壊されると、導電層が断線する。当該断線により、検出対象物の破壊を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−123468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の破壊検出センサによると、基板が検出対象物に全面的に貼り付けられている。導電層が断線するためには基板が破壊されればよい。しかしながら、破壊検出センサには、基板破壊用のストロークが確保されていない。このため、検出対象物から独立して、選択的に基板だけを破壊することは困難である。したがって、導電層が断線するためには、基板のみならず、検出対象物も破壊される必要がある。よって、破壊に至らない検出対象物の変形を検出することが困難である。
【0005】
また、基板の壊れやすさではなく、結局は検出対象物自体の壊れやすさに、導電層の断線しやすさ、すなわち破壊検出センサの検出感度が支配されてしまう。このため、検出感度を調整することが困難である。
【0006】
本発明の被破壊センサは、上記課題に鑑みて完成されたものである。本発明は、破壊に至らない検出対象物の変形を検出可能で、検出感度を容易に調整することが可能な被破壊センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記課題を解決するため、本発明の被破壊センサは、脆性材料製の基材と、該基材に積層され導電性を有するセンサ膜と、を有する被破壊部材と、該被破壊部材に荷重が伝達される方向を荷重伝達方向、該荷重伝達方向に直交する方向を直交方向として、該被破壊部材の該荷重伝達方向の一方に配置され、荷重伝達時に該被破壊部材に部分的に当接する第一当接部を有する第一当接部材と、該被破壊部材の該荷重伝達方向の他方に配置され、荷重伝達時に該被破壊部材に部分的に当接する第二当接部を有する第二当接部材と、を備え、該荷重伝達方向から見て、該第一当接部と該第二当接部とは、該直交方向にずれて配置され、該被破壊部材の破壊前後において、該センサ膜の電気抵抗が変化することを基に、検出対象物の変形を検出することを特徴とする。ここで、検出対象物の「変形」には、検出対象物の変位(移動)も含まれる。
【0008】
本発明の被破壊センサは、被破壊部材を備えている。検出対象物が変形する際、被破壊部材は、第一当接部材、第二当接部材からの荷重の入力により破壊される。このため、検出対象物の、破壊に至る変形は勿論、破壊に至らない変形も検出することができる。
【0009】
また、被破壊部材の壊れやすさを調整することで、センサ膜の断線(導通状態から絶縁状態になること)のしやすさを容易に調整することができる。被破壊部材を壊れやすくすると、検出対象物の変形量が小さい場合であっても、変形を検出することができる。すなわち、検出感度が高くなる。被破壊部材を壊れにくくすると、検出対象物の変形量が大きい場合に、変形を検出することができる。すなわち、検出感度が低くなる。このように、本発明の被破壊センサによると、検出対象物の変形の有無を判別するための、検出感度を自在に調整することができる。
【0010】
また、本発明の被破壊センサは、第一当接部材と第二当接部材とを備えている。第一当接部材、第二当接部材は、各々、少なくとも荷重伝達時において、被破壊部材に当接している。なお、第一当接部材、第二当接部材は、各々、荷重伝達時以外は、被破壊部材に当接していなくてもよい。荷重伝達方向から見て、第一当接部と第二当接部とは、直交方向にずれて配置されている。このため、荷重が伝達される際、被破壊部材において、荷重伝達方向一方から荷重が入力される部分(第一当接部が当接する部分)と、荷重伝達方向他方から荷重が入力される部分(第二当接部が当接する部分)と、が直交方向にずれることになる。したがって、被破壊部材に破壊を誘起することができる。また、荷重伝達方向から見て第一当接部と第二当接部とが直交方向にずれて配置されているため、被破壊部材の破壊に必要なストロークを確保することができる。また、被破壊部材は、脆性材料(ガラス、セラミック、樹脂、コンクリートなどを含む)製である。このため、破壊に必要なストロークが短くて済む。したがって、被破壊センサの荷重伝達方向の肉厚を薄くすることができる。
【0011】
(2)好ましくは、上記(1)の構成において、前記第一当接部材は、前記被破壊部材に部分的に荷重を入力することにより、該被破壊部材に破壊を誘起する前記第一当接部を有する破壊誘起部材であり、前記第二当接部材は、荷重伝達時に該被破壊部材を部分的に支持する複数の前記第二当接部と、複数の該第二当接部間に区画され、該被破壊部材の破壊に必要なストロークを確保する凹部と、を有する支持部材である構成とする方がよい。
【0012】
破壊誘起部材は、第一当接部を有している。一方、支持部材は、複数の第二当接部と、凹部と、を有している。荷重が伝達される際、被破壊部材において、第一当接部が当接する部分は、凹部に進入する。このため、凹部の荷重伝達方向の全長(深さ)により、被破壊部材の破壊に必要なストロークを確保することができる。
【0013】
(3)好ましくは、上記(1)または(2)の構成において、前記第一当接部は、前記被破壊部材に部分的に前記荷重を入力することにより剪断力を発生させる構成とする方がよい。本構成によると、被破壊部材において、第一当接部が当接する部分と第一当接部が当接しない部分との間、または第一当接部が当接する部分と第二当接部が当接する部分との間で、剪断力を発生させることができる。このため、被破壊部材の破壊に必要なストロークが短くなる。
【0014】
(4)好ましくは、上記(1)ないし(3)のいずれかの構成において、前記センサ膜は、樹脂製の母材と、該母材中に充填される導電性フィラーと、を有する構成とする方がよい。本構成によると、母材がエラストマー製である場合(この場合も勿論上記(1)の構成に含まれる)と比較して、センサ膜の脆性を高くすることができる。このため、より検出感度を高くすることができる。
【0015】
(5)好ましくは、上記(1)ないし(4)のいずれかの構成において、前記センサ膜は、前記基材に印刷される構成とする方がよい。本構成によると、センサ膜を所定の位置に正確に配置することができる。また、センサ膜の寸法精度が高くなる。また、センサ膜の荷重伝達方向の肉厚を薄くすることができる。このため、センサ膜の脆性を高くすることができる。したがって、より検出感度を高くすることができる。
【0016】
(6)好ましくは、上記(1)ないし(5)のいずれかの構成において、前記センサ膜は、前記基材よりも、破断伸び量が小さい構成とする方がよい。本構成によると、センサ膜は、基材よりも、脆性が高くなる。このため、センサ膜が破壊されやすくなる。したがって、より検出感度を高くすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、破壊に至らない検出対象物の変形を検出可能で、検出感度を容易に調整することが可能な被破壊センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第一実施形態の被破壊センサの斜視図である。
【図2】同被破壊センサの左右方向断面図である。
【図3】同被破壊センサの回路図である。
【図4】同被破壊センサの荷重伝達時の左右方向断面図である。
【図5】同被破壊センサの破壊完了時の左右方向断面図である。
【図6】破壊誘起部材の移動量と同被破壊センサの応答電圧との関係を示すグラフである。
【図7】第二実施形態の被破壊センサの左右方向断面図である。
【図8】第三実施形態の被破壊センサの左右方向断面図である。
【図9】第四実施形態の被破壊センサの左右方向断面図である。
【図10】第五実施形態の被破壊センサの左右方向断面図である。
【図11】第六実施形態の被破壊センサの左右方向断面図である。
【図12】第七実施形態の被破壊センサの斜視図である。
【図13】第八実施形態の被破壊センサの斜視図である。
【図14】被破壊センサの破壊誘起部材付近の断面図である。
【図15】変形検出実験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の被破壊センサの実施の形態について説明する。
【0020】
<第一実施形態>
[被破壊センサの構成]
まず、本実施形態の被破壊センサの構成について説明する。図1に、本実施形態の被破壊センサの斜視図を示す。図2に、同被破壊センサの左右方向(長手方向)断面図を示す。以下に示す図中、前後方向は、本発明の「荷重伝達方向」に対応している。左右方向は、本発明の「直交方向」に対応している。前方は、本発明の「荷重伝達方向の一方」に対応している。後方は、本発明の「荷重伝達方向の他方」に対応している。
【0021】
図1、図2に示すように、本実施形態の被破壊センサ1は、被破壊部材2と破壊誘起部材3と支持部材4とを備えている。支持部材4は、ステンレス鋼製であって、直方体状を呈している。支持部材4の前面には、左右一対の第二当接部40L、40Rと、凹部41と、が配置されている。凹部41は、左右一対の第二当接部40L、40Rの間に配置されている。
【0022】
被破壊部材2は、基材20とセンサ膜21とを備えている。基材20は、ガラス製であって、長方形薄板状を呈している。ガラスは、本発明の「脆性材料」の概念に含まれる。基材20は、左右一対の第二当接部40L、40Rの間に架設された状態で、支持部材4の前面に積層されている
センサ膜21は、導電性を有している。センサ膜21は、長方形薄膜状を呈している。センサ膜21は、基材20の前面に印刷されている。センサ膜21は、基材20の前面の全体に亘って配置されている。
【0023】
センサ膜21は、以下の方法により、基材20に配置される。まず、脂環式エポキシとアミン系硬化剤とに、センサ膜21全体を100体積%として、カーボンビーズを45体積%混合したセンサ膜用塗料を、スクリーン印刷機により、基材20の前面に印刷する。次に、塗膜を110℃で硬化させる。このようにして、センサ膜21は、基材20に配置される。エポキシは、本発明の「樹脂」の概念に含まれる。カーボンビーズは、本発明の「導電性フィラー」の概念に含まれる。
【0024】
センサ膜21の左右両端には、各々、配線(図略)が接続されている。一対の配線は、制御装置(図略)に電気的に接続されている。制御装置の記憶部には、検出しきい値(電圧)が格納されている。
【0025】
破壊誘起部材3は、ステンレス鋼製であって、直方体状を呈している。破壊誘起部材3の後面には、長方形状の第一当接部30が配置されている。第一当接部30は、センサ膜21の前面の左右方向中央部分に当接している。破壊誘起部材3の左面、右面、上面、下面と、後面である第一当接部30と、の間の挟角は、90°である。
【0026】
図2に示すように、前方または後方から見て、第一当接部30と、左右一対の第二当接部40L、40Rと、は左右方向にずれて配置されている。すなわち、第一当接部30は、左右一対の第二当接部40L、40Rの間に、配置されている。また、前方または後方から見て、第一当接部30と凹部41とは重複して配置されている。検出対象物(図略)は、破壊誘起部材3の前方に配置されている。
【0027】
次に、本実施形態の被破壊センサの回路構成について説明する。図3に、本実施形態の被破壊センサの回路図を示す。図3に示すように、回路90は、電源900と第一抵抗体901と第二抵抗体902とを備えている。回路90は、制御装置に配置されている。
【0028】
第一抵抗体901の電気抵抗R1、第二抵抗体902の電気抵抗R2、電源900の電圧Eは、各々一定である。センサ膜21の左右方向(長手方向)両端間の電気抵抗をRsとして、検出点P1、P2間の電気抵抗Rtは、次式(1)により算出される。
Rt=(Rs・R2)/(Rs+R2) ・・・・・式(1)
また、検出点P1、P2間の応答電圧Vtは、次式(2)により算出される。
Vt=(Rt/(Rt+R1))・E ・・・・・式(2)
【0029】
[被破壊センサの動き]
次に、本実施形態の被破壊センサ1の動きについて説明する。図4に、本実施形態の被破壊センサの荷重伝達時の左右方向断面図を示す。図5に、同被破壊センサの破壊完了時の左右方向断面図を示す。図6に、破壊誘起部材の移動量と同被破壊センサの応答電圧との関係をグラフで示す。
【0030】
荷重は、前方から検出対象物に入力される。図4に白抜き矢印で示すように、検出対象物は、前方から破壊誘起部材3を押圧する。押圧された破壊誘起部材3は、前方から被破壊部材2を押圧する。
【0031】
図4に誇張して示すように、押圧された被破壊部材2は、第二当接部40Lの右縁40Lrと、第二当接部40Rの左縁40Rlと、の間で、後方に膨らむように撓む。つまり、被破壊部材2は、凹部41に没入するように撓む。被破壊部材2と比較して、破壊誘起部材3の第一当接部30は、撓みにくい。このため、第一当接部30の左縁30L(破壊誘起部材3の後面左角部)と右縁30R(破壊誘起部材3の後面右角部)とは、被破壊部材2の前面に線接触する。したがって、被破壊部材2の前面のうち、第一当接部30の左縁30L、右縁30Rが線接触する部分には、荷重が集中する。このように、被破壊部材2は、あたかも四点曲げ試験機にセットされた試験片のように、第二当接部40Lの右縁40Lrと、第二当接部40Rの左縁40Rlと、の間で、第一当接部30の左縁30L、右縁30Rにより、前方から押圧される。
【0032】
ここで、被破壊部材2の基材20はガラス製である。このため、脆い。したがって、第一当接部30の左縁30L、右縁30Rから集中的に入力される荷重により、被破壊部材2の前面には、左縁30Lおよび右縁30Rのうち少なくとも一方から、クラックが発生する。クラックが被破壊部材2の後面まで進展すると、図5に示すように、被破壊部材2が破断する。被破壊部材2は、ほとんど弾性変形することなく破断する。被破壊部材2のうち、破断した部分は、凹部41に没入する。
【0033】
被破壊部材2が破断すると、センサ膜21も破断する。このため、センサ膜21の左右両端間の電気抵抗Rsが無限大になる。したがって、式(1)からRt=R2になる。また、式(2)からVt=(R2/(R2+R1))・Eになる。すなわち、図6に示すように、応答電圧Vtが上昇し、検出しきい値Vthを超える。応答電圧Vtが検出しきい値を超えると、制御装置の演算部は、センサ膜21が導通状態から絶縁状態に切り替わったと判別する。つまり、検出対象物が変形したと判別する。このようにして、本実施形態の被破壊センサは、自身が破壊されることにより、検出対象物の変形を検出している。
【0034】
また、センサ膜21が短絡すると、センサ膜21の左右両端間の電気抵抗Rsが0になる。したがって、式(1)からRt=0になる。また、式(2)からVt=0になる。すなわち、図6に点線で示すように、応答電圧Vtが0になると、制御装置の演算部は、センサ膜21が導通状態から短絡状態に切り替わったと判別する。
【0035】
[作用効果]
次に、本実施形態の被破壊センサ1の作用効果について説明する。図2に示すように、本実施形態の被破壊センサ1は、被破壊部材2を備えている。図4、図5に示すように、検出対象物が変形する際、被破壊部材2は、第一当接部30からの荷重の入力により破壊される。このため、検出対象物の、破壊に至る変形は勿論、破壊に至らない変形も検出することができる。
【0036】
また、被破壊部材2の壊れやすさを調整することで、センサ膜21の断線(導通状態から絶縁状態になること)しやすさを容易に調整することができる。被破壊部材2を壊れやすくすると、検出対象物の変形量が小さい場合であっても、変形を検出することができる。すなわち、検出感度が高くなる。被破壊部材2を壊れにくくすると、検出対象物の変形量が大きい場合に、変形を検出することができる。すなわち、検出感度が低くなる。このように、本実施形態の被破壊センサ1によると、検出対象物の変形の有無を判別するための、検出感度を自在に調整することができる。
【0037】
また、被破壊部材2は、脆性の高いガラス製である。このため、破壊に必要なストロークが短くて済む。したがって、被破壊センサ1の前後方向の肉厚を薄くすることができる。また、凹部41の前後方向深さを浅くすることができる。
【0038】
また、図2に示すように、本実施形態の被破壊センサ1によると、前方または後方から見て、第一当接部30と第二当接部40L、40Rとは、左右方向にずれて配置されている。このため、荷重が伝達される際、被破壊部材2において、前方から荷重が入力される部分(第一当接部30が当接する部分)と、後方から荷重が入力される部分(第二当接部40L、40Rが当接する部分)と、が左右方向にずれることになる。したがって、被破壊部材2に破壊を誘起することができる。
【0039】
また、図4、図5に示すように、本実施形態の被破壊センサ1によると、荷重が伝達される際、被破壊部材2において、第一当接部30が当接する部分は、凹部41に進入する。このため、被破壊部材2の破壊に必要なストロークを確保することができる。また、第一当接部30は、被破壊部材2を、主に剪断力により破壊している。このため、被破壊部材2の破壊に必要なストロークが短くなる。
【0040】
また、本実施形態の被破壊センサ1によると、図6に示すように、導通状態から絶縁状態への変化のみならず、導通状態から短絡状態への変化を検出することができる。このため、被破壊センサ1の自己診断性が高い。
【0041】
また、本実施形態の被破壊センサ1によると、センサ膜21は、エポキシ樹脂製の母材とカーボンフィラーとを有している。このため、母材がエラストマー製である場合と比較して、センサ膜21の脆性を高くすることができる。したがって、より検出感度を高くすることができる。
【0042】
また、本実施形態の被破壊センサ1によると、スクリーン印刷法により、センサ膜21は、基材20に印刷されている。このため、センサ膜21を所定の位置に正確に配置することができる。また、センサ膜21の寸法精度が高くなる。また、センサ膜21の前後方向の肉厚を薄くすることができる。このため、センサ膜21の脆性を高くすることができる。したがって、より検出感度を高くすることができる。
【0043】
また、本実施形態の被破壊センサ1によると、センサ膜21は、基材20よりも、破断伸び量が小さい。このため、センサ膜21は、基材20よりも、脆性が高くなる。したがって、センサ膜21が破壊されやすい。
【0044】
<第二実施形態>
本実施形態の被破壊センサと第一実施形態の被破壊センサとの相違点は、被破壊部材の構成だけである。ここでは、相違点についてのみ説明する。図7に、本実施形態の被破壊センサの左右方向断面図を示す。なお、図2と対応する部位については、同じ符号で示す。図7に示すように、センサ膜21は、基材20の後方に配置されている。すなわち、センサ膜21は、外部(前方)に露出していない。
【0045】
本実施形態の被破壊センサ1は、構成が共通する部分に関しては、第一実施形態の被破壊センサと同様の作用効果を有する。また、本実施形態の被破壊センサ1によると、センサ膜21が外部に露出していない。このため、検出対象物に被破壊センサ1を取り付ける際など、隣接部材にセンサ膜21が干渉しにくい。したがって、誤ってセンサ膜21が断線しにくい。
【0046】
また、本実施形態の被破壊センサ1によると、前出図4に示すように、凹部41に没入するように被破壊部材2が膨らむ際、基材20の径方向外側にセンサ膜21が配置されることになる。このため、剪断力に加えて、左右方向からの引張力がセンサ膜21に加わる。したがって、センサ膜21が断線しやすい。
【0047】
<第三実施形態>
本実施形態の被破壊センサと第一実施形態の被破壊センサとの相違点は、破壊誘起部材と、被破壊部材および支持部材と、が別々に配置されている点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。
【0048】
図8に、本実施形態の被破壊センサの左右方向断面図を示す。なお、図2と対応する部位については、同じ符号で示す。図8に示すように、破壊誘起部材3は、検出対象物80の後面に取り付けられている。一方、被破壊部材2および支持部材4は、固定部材81に取り付けられている。
【0049】
取付状態(検出対象物80が変形していない状態)においては、第一当接部30は、被破壊部材2から距離L1だけ離間している。検出対象物80が後方に向かって変形すると、第一当接部30が被破壊部材2に衝突する。そして、被破壊部材2を破壊する。
【0050】
本実施形態の被破壊センサ1は、構成が共通する部分に関しては、第一実施形態の被破壊センサと同様の作用効果を有する。また、本実施形態の被破壊センサ1によると、破壊誘起部材3と、被破壊部材2および支持部材4と、が別々の部材(検出対象物80、固定部材81)に取り付けられている。このため、被破壊センサ1を構成する各部材の配置の自由度が高くなる。また、本実施形態の被破壊センサ1によると、加速された状態で、第一当接部30が被破壊部材2に衝突する。このため、被破壊部材2が破壊されやすくなる。
【0051】
また、本実施形態の被破壊センサ1によると、第一当接部30とセンサ膜21前面との間の距離L1を調整することで、検出感度を調整することができる。距離L1を短くすると、検出対象物80の変形量が小さい場合であっても、変形を検出することができる。すなわち、検出感度が高くなる。距離L1を長くすると、検出対象物80の変形量が大きい場合に、変形を検出することができる。すなわち、検出感度が低くなる。
【0052】
<第四実施形態>
本実施形態の被破壊センサと第三実施形態の被破壊センサとの相違点は、破壊誘起部材および被破壊部材と、支持部材と、が別々に配置されている点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。
【0053】
図9に、本実施形態の被破壊センサの左右方向断面図を示す。なお、図8と対応する部位については、同じ符号で示す。図9に示すように、破壊誘起部材3および被破壊部材2は、検出対象物80の後面に取り付けられている。一方、支持部材4は、固定部材81に取り付けられている。
【0054】
取付状態(検出対象物80が変形していない状態)においては、被破壊部材2は、第二当接部40L、40Rから距離L2だけ離間している。検出対象物80が後方に向かって変形すると、相対的に、第二当接部40L、40Rが被破壊部材2に衝突する。そして、被破壊部材2を破壊する。
【0055】
本実施形態の被破壊センサ1は、構成が共通する部分に関しては、第三実施形態の被破壊センサと同様の作用効果を有する。また、本実施形態の被破壊センサ1によると、破壊誘起部材3および被破壊部材2と、支持部材4と、が別々の部材(検出対象物80、固定部材81)に取り付けられている。このため、被破壊センサ1を構成する各部材の配置の自由度が高くなる。また、本実施形態の被破壊センサ1によると、加速された状態で、第二当接部40L、40Rが被破壊部材2に衝突する。このため、被破壊部材2が破壊されやすくなる。
【0056】
また、本実施形態の被破壊センサ1によると、第二当接部40L、40Rと基材20後面との間の距離L2を調整することで、検出感度を調整することができる。距離L2を短くすると、検出対象物80の変形量が小さい場合であっても、変形を検出することができる。すなわち、検出感度が高くなる。距離L2を長くすると、検出対象物80の変形量が大きい場合に、変形を検出することができる。すなわち、検出感度が低くなる。
【0057】
<第五実施形態>
本実施形態の被破壊センサと第一実施形態の被破壊センサとの相違点は、支持部材が一対の支持片を有する点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。図10に、本実施形態の被破壊センサの左右方向断面図を示す。なお、図2と対応する部位については、同じ符号で示す。図10に示すように、支持部材4は、左右一対の支持片41L、41Rを備えている。左右一対の支持片41L、41Rは、各々、ステンレス鋼製であって、直方体状を呈している。左右一対の支持片41L、41Rは、固定部材82の前面に固定されている。支持片41Lの第二当接部40Lは、被破壊部材2の左端後面に当接している。支持片41Rの第二当接部40Rは、被破壊部材2の右端後面に当接している。凹部41は、一対の支持片41L、41R間に区画されている。
【0058】
本実施形態の被破壊センサ1は、構成が共通する部分に関しては、第一実施形態の被破壊センサと同様の作用効果を有する。また、本実施形態の被破壊センサ1によると、支持部材4の構造が簡単になる。
【0059】
<第六実施形態>
本実施形態の被破壊センサと第一実施形態の被破壊センサとの相違点は、被破壊部材に一対のスリットが形成されている点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。図11に、本実施形態の被破壊センサの左右方向断面図を示す。なお、図2と対応する部位については、同じ符号で示す。図11に示すように、被破壊部材2の基材20の後面には、左右一対のスリット200L、200Rが凹設されている。スリット200L、200Rは、各々、V字溝状を呈している。スリット200Lは、第一当接部30の左縁30Lに、前後方向に対向している。スリット200Rは、第一当接部30の右縁30Rに、前後方向に対向している。
【0060】
本実施形態の被破壊センサ1は、構成が共通する部分に関しては、第一実施形態の被破壊センサと同様の作用効果を有する。また、本実施形態の被破壊センサ1によると、より被破壊部材2が破壊されやすくなる。このため、検出感度を高くすることができる。また、被破壊部材2の被破壊箇所を、左縁30Lとスリット200Lとの間の部分、または右縁30Rとスリット200Rと間の部分に、誘導することができる。このため、複数の被破壊センサ1間において、検出感度のばらつきが小さくなる。
【0061】
<第七実施形態>
本実施形態の被破壊センサと第一実施形態の被破壊センサとの相違点は、センサ膜が基材に一筆書き状に印刷されている点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。図12に、本実施形態の被破壊センサの斜視図を示す。なお、図1と対応する部位については、同じ符号で示す。また、説明の便宜上、破壊誘起部材3を透過して示す。また、センサ膜21にハッチングを施す。
【0062】
図12に示すように、基材20の前面には、センサ膜21が、一筆書き状にジグザグに蛇行して印刷されている。センサ膜21の右上端および左下端には、各々、配線(図略)が接続されている。本実施形態の被破壊センサ1は、構成が共通する部分に関しては、第一実施形態の被破壊センサと同様の作用効果を有する。本実施形態の被破壊センサ1のように、基材20の前面に、部分的にかつ冗長的にセンサ膜21を配置してもよい。
【0063】
<第八実施形態>
本実施形態の被破壊センサと第七実施形態の被破壊センサとの相違点は、五本のセンサ膜が基材に印刷されている点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。図13に、本実施形態の被破壊センサの斜視図を示す。なお、図12と対応する部位については、同じ符号で示す。
【0064】
図13に示すように、基材20の前面には、左右方向に延在する五本のセンサ膜21が、互いに平行に印刷されている。センサ膜21の左右両端には、各々、配線(図略)が接続されている。すなわち、五本のセンサ膜21は、互いに電気的に並列に接続されている。本実施形態の被破壊センサ1は、構成が共通する部分に関しては、第七実施形態の被破壊センサと同様の作用効果を有する。本実施形態の被破壊センサ1のように、基材20の前面に、複数のセンサ膜21を配置してもよい。
【0065】
<その他>
以上、本発明の被破壊センサの実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0066】
上記実施形態においては、前後方向を本発明の「荷重伝達方向」に、左右方向を本発明の「直交方向」に、それぞれ対応させた。しかしながら、これらの対応関係は特に限定しない。上下方向、左右方向を本発明の「荷重伝達方向」に対応させてもよい。また、上下方向、前後方向を本発明の「直交方向」に対応させてもよい。
【0067】
破壊誘起部材3の形状は特に限定しない。図14(a)〜(e)に、被破壊センサの破壊誘起部材付近の断面図を示す。なお、図2と対応する部位については、同じ符号で示す。図14(a)に示すように、破壊誘起部材3は、被破壊部材2に、長方形枠状に当接してもよい。すなわち、第一当接部30が長方形枠状を呈していてもよい。図14(b)に示すように、破壊誘起部材3が三角柱状(楔状)を呈していてもよい。図14(c)に示すように、破壊誘起部材3が半円柱状を呈していてもよい。すなわち、第一当接部30が線状を呈していてもよい。また、図14(d)に示すように、破壊誘起部材3がカミソリの刃状を呈していてもよい。また、図14(e)に示すように、破壊誘起部材3が針状を呈していてもよい。また、第二当接部40L、40Rを、上記第一当接部30のような形状にしてもよい。第一当接部30、第二当接部40L、40Rの配置数は特に限定しない。
【0068】
上記実施形態においては、被破壊センサ1により、検出対象物80の変形の有無を検出した。しかしながら、検出対象物80の変位(検出対象物80の変形を伴わない変位を含む)の有無を検出してもよい。また、検出対象物80の変形の原因が、検出対象物80に入力される荷重の場合は、検出対象物80の変形を介して、検出対象物80に入力される荷重の有無を検出してもよい。
【0069】
上記実施形態においては、図3に示す回路90を制御装置に配置したが、被破壊センサ1に配置してもよい。また、回路90のうち、電源900を制御装置に、第一抵抗体901、第二抵抗体902を被破壊センサ1に、分離して配置してもよい。
【0070】
センサ膜21の形状、大きさなどは特に限定しない。これらは、被破壊センサ1の用途などに応じて適宜決定すればよい。例えば、センサ膜21の前後方向の肉厚は、被破壊センサ1の小型化、薄型化などの観点から、10μm以上500μm以下とすることが望ましい。250μm以下がより好適である。センサ膜21の肉厚を小さくすると、センサ膜21が破壊されやすくなる。
【0071】
センサ膜21の材質は特に限定しない。母材は、樹脂、エラストマーの中から、導電性フィラーとの相溶性などを考慮して、適宜選択すればよい。特に、センサ膜用塗料からセンサ膜21を形成する場合には、塗料化が可能な材料を選択することが望ましい。すなわち、自身が液状の材料、あるいは溶剤などに可溶な材料を選択するとよい。
【0072】
例えば、熱可塑性樹脂として、PE、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、ポリビニルアセテート(PVAc)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、PET、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、非晶質フッ素樹脂、非晶質ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂などが挙げられる。なかでも、溶剤に可溶であるという理由から、ポリアミド、非晶質フッ素樹脂、非晶質ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂などが好適である。
【0073】
また、熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン、PIなどが挙げられる。なかでも、エポキシ樹脂が好適である。エポキシ樹脂の硬化前樹脂には、比較的低粘度の液状のものが多い。よって、溶剤を使用せずに塗料化可能である。また、導電性フィラーとの相溶性も良好である。このため、導電性フィラーを、略単粒子状態でかつ高充填率で配合しやすい。エポキシ樹脂としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂(A型、F型、AD型)、脂環式エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、多価アルコール類とエピクロルヒドリンとを反応させて得られるポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0074】
また、エラストマーは、ゴムおよび熱可塑性エラストマーから適宜選択することができる。例えば、ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)、エチレン−プロピレン共重合ゴム(エチレン−プロピレン共重合体(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)など)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(Cl−IIR、Br−IIRなど)、水素化ニトリルゴム(H−NBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリルゴム(AR)、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム(CSM)、ヒドリンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、合成ラテックスなどが挙げられる。また、熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系、オレフィン系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、フッ素系などの各種熱可塑性エラストマー、およびこれらの誘導体が挙げられる。なかでも、導電性フィラーとの相溶性が良好なEPDM、NBR、シリコーンゴムが好適である。また、液状IR、液状BR、RTV型(室温硬化型)シリコーンゴムは、硬化前に液状であり、溶剤を使用せずに塗料化可能である点で、好適である。
【0075】
導電性フィラーは、導電性を有するものであれば、特に限定しない。例えば、炭素材料、金属などの微粒子が挙げられる。これらのうち、一種を単独で、あるいは二種以上を併せて用いることができる。センサ膜21の破断伸び量を、より小さくするという観点から、導電性フィラーとして、真球あるいは極めて真球に近い形状(略真球状)の粒子を採用するとよい。
【0076】
また、導電性フィラーの充填率は、センサ膜21の体積を100体積%とした場合の30体積%以上であることが望ましい。30体積%未満の場合には、導電性フィラーが導電パスを形成しにくく、所望の導電性が発現しにくい。35体積%以上であるとより好適である。反対に、導電性フィラーの充填率は、センサ膜21の体積を100体積%とした場合の65体積%以下であることが望ましい。65体積%を超えると、母材への混合が困難となり、成形加工性が低下する。さらに、センサ膜用塗料を調製しにくくなる。55体積%以下であるとより好適である。
【0077】
母材中、導電性フィラーは、できるだけ凝集せず一次粒子の状態で存在することが望ましい。よって、導電性フィラーを選択する際には、平均粒子径や母材との相溶性などを考慮するとよい。例えば、一次粒子の状態で存在する導電性フィラーの平均粒子径は、0.05μm以上100μm以下であることが望ましい。0.05μm未満の場合には、凝集して二次粒子を形成しやすい。0.5μm以上、さらには1μm以上であると好適である。反対に、平均粒子径が100μmを超えると、センサ膜21の肉厚を小さくしにくくなる。60μm以下、さらには30μm以下であると好適である。
【0078】
導電性フィラーとしては、銀、金、銅、ニッケル、ロジウム、パラジウム、クロム、チタン、白金、鉄、およびこれらの合金、カーボン等から適宜選択すればよい。とりわけ、カーボンビーズが好適である。カーボンビーズは、導電性が良好で、比較的安価である。また、略真球状を呈しているため、高充填率で配合することができる。具体的には、大阪ガスケミカル社製のメソカーボンマイクロビーズ(MCMB6−28(平均粒子径約6μm)、MCMB10−28(平均粒子径約10μm)、MCMB25−28(平均粒子径約25μm))、日本カーボン社製のカーボンマイクロビーズ:ニカビーズ(登録商標)ICB、ニカビーズPC、ニカビーズMC、ニカビーズMSB(ICB0320(平均粒子径約3μm)、ICB0520(平均粒子径約5μm)、ICB1020(平均粒子径約10μm)、PC0720(平均粒子径約7μm)、MC0520(平均粒子径約5μm))、日清紡社製のカーボンビーズ(平均粒子径約10μm)などが挙げられる。
【0079】
センサ膜21は、例えば、次のようにして製造することができる。母材に熱可塑性樹脂を選択した場合には、加熱溶融した熱可塑性樹脂に、導電性フィラー、必要に応じて添加剤を加えて混合した後、プレス成形、射出成形などを行う。また、母材に熱硬化性樹脂を選択した場合には、硬化前樹脂に、硬化剤、必要に応じて添加剤を加えて混合した後、プレス成形などにより硬化させる。一方、母材にエラストマーを選択した場合は、まず、エラストマーに、加硫助剤、軟化剤などの添加剤を添加して、混練りする。続いて、導電性フィラーを加えて混練りした後、さらに、架橋剤、加硫促進剤を加えて混練りし、エラストマー組成物とする。次に、エラストマー組成物をシート状に成形し、それを金型に充填してプレス加硫する。
【0080】
センサ膜21の肉厚を小さくするためには、センサ膜用塗料からセンサ膜21を形成することが望ましい。すなわち、まず、樹脂またはエラストマーなどの母材の形成成分を含むセンサ膜用塗料を調製する。次に、調製したセンサ膜用塗料を、基材20に塗布し、乾燥させる。なお、熱硬化樹脂を使用した場合は、センサ膜用塗料を塗布した後、硬化させればよい。また、エラストマーを使用した場合は、乾燥と同時に、あるいは乾燥後に、架橋反応を進行させればよい。
【0081】
センサ膜用塗料の塗布方法は、種々の方法を採用することができる。例えば、インクジェット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、パッド印刷、リソグラフィーなどの印刷法の他、ディップ法、スプレー法、バーコート法、ディスペンサー法などが挙げられる。例えば、印刷法を採用すると、塗布する部分と塗布しない部分との塗り分けを、容易に行うことができる。また、大きな面積、細線、複雑な形状の印刷も容易である。さらに、センサ膜21以外の配線などを同様の方法で形成することができるため、各部品を集積化しやすい。印刷法の中でも、高粘度の塗料も使用可能であり、塗膜の肉厚の調整が容易であるという理由から、スクリーン印刷法が好適である。また、センサ膜21の材質として、市販の銀ペースト、銅ペーストなどを用いてもよい。
【実施例1】
【0082】
以下、本発明の被破壊センサに対して行った変形検出実験について説明する。実験に用いた被破壊センサの構成は、第一実施形態の被破壊センサの構成と同様である。まず、実験に用いた被破壊センサの寸法について、図1、図2を援用しながら説明する。
【0083】
図1、図2に示すように、破壊誘起部材3の第一当接部30の左右方向全長は52mm、上下方向全長は25mmとした。被破壊部材2の基材20の左右方向全長は120mm、上下方向全長は25mm、前後方向肉厚は1.15mmとした。センサ膜21の左右方向全長は120mm、上下方向全長は25mm、前後方向肉厚は0.5mmとした。支持部材4の凹部41の左右方向全長は76mm、上下方向全長は25mm、前後方向深さは3mmとした。
【0084】
次に、実験方法について説明する。実験においては、図1、図2の前後方向が上下方向になるように、つまり破壊誘起部材3が上に、支持部材4が下に、それぞれ配置されるように、被破壊センサ1を配置した。そして、破壊誘起部材3を1mm/分の速度で下降させた。図15に、変形検出実験の結果をグラフで示す。図15中、横軸は時間を示す。左縦軸は、破壊誘起部材3が被破壊部材2に加える荷重を示す。右縦軸は、破壊誘起部材3の下方への移動量、および式(2)から算出される、図3の検出点P1、P2間の応答電圧Vtを示す。
【0085】
図15に示すように、破壊誘起部材3が移動するのに従って、破壊誘起部材3が被破壊部材2に加える荷重は徐々に大きくなる。そして、被破壊部材2が一気に破断する。この際、応答電圧Vtは、2.5Vから一気に3.3Vに変化する。2.5Vと3.3Vとの間(例えば2.9V)に検出しきい値Vthを設定することで、応答電圧Vtの変化から、検出対象物の変形を検出することができる。
【0086】
本実施例の場合、図3の電源900の電圧Eは5Vである。また、センサ膜21の初期の電気抵抗Rsは、Rs=2・R1=R2となるように、設定されている。このため、初期の検出点P1、P2間の電気抵抗Rtは、式(1)から、Rt=Rs/2となる。また、初期の検出点P1、P2間の応答電圧Vtは、式(2)から、Vt=2.5Vとなる。
【0087】
また、被破壊部材2が破断すると、センサ膜21も破断する。このため、センサ膜21の電気抵抗Rsが無限大になる。したがって、式(1)からRt=R2になる。また、式(2)から、Vt=3.3Vとなる。よって、被破壊センサ1の検出レンジのフルスケールはΔVt=0.8V(=3.3V−2.5V)となる。
【0088】
これに対して、センサ膜の初期の電気抵抗Rsを、Rs=(1/2)・R1=(1/5)・R2となるように、設定する。この場合、初期の検出点P1、P2間の電気抵抗Rtは、式(1)から、Rt=5Rs/6となる。また、初期の検出点P1、P2間の応答電圧Vtは、式(2)から、Vt=1.5Vとなる。
【0089】
また、被破壊部材2が破断すると、センサ膜21も破断する。このため、センサ膜21の電気抵抗Rsが無限大になる。したがって、式(1)からRt=R2になる。また、式(2)から、Vt=3.6Vとなる。よって、被破壊センサ1の検出レンジのフルスケールはΔVt=2.1V(=3.6V−1.5V)となる。このように、図3の回路90の回路定数を調整することにより、被破壊センサ1の検出レンジのフルスケールを調整することができる。
【符号の説明】
【0090】
1:被破壊センサ、2:被破壊部材、3:破壊誘起部材、4:支持部材。
20:基材、21:センサ膜、30:第一当接部、30L:左縁、30R:右縁、40L:第二当接部、40Lr:右縁、40R:第二当接部、40Rl:左縁、41:凹部、41L:支持片、41R:支持片、80:検出対象物、81:固定部材、82:固定部材、90:回路。
200L:スリット、200R:スリット、900:電源、901:第一抵抗体、902:第二抵抗体。
P1:検出点、P2:検出点、Vt:応答電圧、Vth:検出しきい値。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脆性材料製の基材と、該基材に積層され導電性を有するセンサ膜と、を有する被破壊部材と、
該被破壊部材に荷重が伝達される方向を荷重伝達方向、該荷重伝達方向に直交する方向を直交方向として、
該被破壊部材の該荷重伝達方向の一方に配置され、荷重伝達時に該被破壊部材に部分的に当接する第一当接部を有する第一当接部材と、
該被破壊部材の該荷重伝達方向の他方に配置され、荷重伝達時に該被破壊部材に部分的に当接する第二当接部を有する第二当接部材と、
を備え、
該荷重伝達方向から見て、該第一当接部と該第二当接部とは、該直交方向にずれて配置され、
該被破壊部材の破壊前後において、該センサ膜の電気抵抗が変化することを基に、検出対象物の変形を検出する被破壊センサ。
【請求項2】
前記第一当接部材は、前記被破壊部材に部分的に荷重を入力することにより、該被破壊部材に破壊を誘起する前記第一当接部を有する破壊誘起部材であり、
前記第二当接部材は、荷重伝達時に該被破壊部材を部分的に支持する複数の前記第二当接部と、複数の該第二当接部間に区画され、該被破壊部材の破壊に必要なストロークを確保する凹部と、を有する支持部材である請求項1に記載の被破壊センサ。
【請求項3】
前記第一当接部は、前記被破壊部材に部分的に前記荷重を入力することにより剪断力を発生させる請求項1または請求項2に記載の被破壊センサ。
【請求項4】
前記センサ膜は、樹脂製の母材と、該母材中に充填される導電性フィラーと、を有する請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の被破壊センサ。
【請求項5】
前記センサ膜は、前記基材に印刷される請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の被破壊センサ。
【請求項6】
前記センサ膜は、前記基材よりも、破断伸び量が小さい請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の被破壊センサ。
【請求項1】
脆性材料製の基材と、該基材に積層され導電性を有するセンサ膜と、を有する被破壊部材と、
該被破壊部材に荷重が伝達される方向を荷重伝達方向、該荷重伝達方向に直交する方向を直交方向として、
該被破壊部材の該荷重伝達方向の一方に配置され、荷重伝達時に該被破壊部材に部分的に当接する第一当接部を有する第一当接部材と、
該被破壊部材の該荷重伝達方向の他方に配置され、荷重伝達時に該被破壊部材に部分的に当接する第二当接部を有する第二当接部材と、
を備え、
該荷重伝達方向から見て、該第一当接部と該第二当接部とは、該直交方向にずれて配置され、
該被破壊部材の破壊前後において、該センサ膜の電気抵抗が変化することを基に、検出対象物の変形を検出する被破壊センサ。
【請求項2】
前記第一当接部材は、前記被破壊部材に部分的に荷重を入力することにより、該被破壊部材に破壊を誘起する前記第一当接部を有する破壊誘起部材であり、
前記第二当接部材は、荷重伝達時に該被破壊部材を部分的に支持する複数の前記第二当接部と、複数の該第二当接部間に区画され、該被破壊部材の破壊に必要なストロークを確保する凹部と、を有する支持部材である請求項1に記載の被破壊センサ。
【請求項3】
前記第一当接部は、前記被破壊部材に部分的に前記荷重を入力することにより剪断力を発生させる請求項1または請求項2に記載の被破壊センサ。
【請求項4】
前記センサ膜は、樹脂製の母材と、該母材中に充填される導電性フィラーと、を有する請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の被破壊センサ。
【請求項5】
前記センサ膜は、前記基材に印刷される請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の被破壊センサ。
【請求項6】
前記センサ膜は、前記基材よりも、破断伸び量が小さい請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の被破壊センサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−137401(P2012−137401A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290530(P2010−290530)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】
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