説明

被覆材料

本発明は、少なくとも1種のバインダー又はバインダー混合物を含有し、60℃〜120℃で、有利には70℃〜110℃で、特に80℃〜90℃で硬化可能である、フラットコンポーネント、ハイブリッド、SMDコンポーネントのための被覆材料、並びにその製造方法及びエレクトロニクスにおけるフラットコンポーネント、ハイブリッド、SMDコンポーネント及びアセンブリされたプリント基板のためのその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
この出願は、DE 10 2005 040 126.0-43の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、特にフラットコンポーネント(Flachbaugruppe)、ハイブリッド及びSMDコンポーネント及びアセンブリされたプリント基板(bestueckten Leiterplatten)の範囲における、被覆材料、その製造及びその使用に関する。
【0003】
フラットコンポーネント、ハイブリッド、SMDコンポーネント、並びに、プリント基板で使用される他のコンポーネントのための被覆材料は、湿分、化学薬品、粉塵その他からこのコーティングされた部分を保護することができなくてはならない。更に、この保護層は、電子的集成体(electronische Baugruppe)の気候安全性及びノントラッキング安全性を向上させることが望ましい。この熱負荷能は、使用範囲に適合されていなくてはならない。異なる基材に対する良好な付着は当然のこととされる。この加工は通常はセレクトコート(Select Coat)方法又は選択的浸漬方法において行われる。粘度を減少すべくこの材料の温度が高められる場合には、噴霧方法も吹付け方法も使用されることができる。この種の被覆材料を用いて数ミリメーターまでの、強度の点で傑出した乾燥皮膜が得られる。
【0004】
技術水準は、空気乾燥性又は炉乾燥性の塗料の使用である。このバインダーは通常はアルキド−、又はアクリル−、又はポリウレタン樹脂である。この塗料は、表面保護として以前から公知であり、かつ記載されている(W. Tillar Shugg, Handbook of Electrical and Electronic Insulating Materials, IEEE Press 1995)。通常は、この塗料は溶媒を50%又はそれより高いパーセントで含有する。この溶媒は硬化の際に大気に放出され、これは今日では不所望である。この使用のための溶媒系は、ポリウレタン樹脂及びエポキシド樹脂を基礎とする処方である。
【0005】
一成分系エポキシド樹脂の硬化機構は、これはルイス酸により重合されるが、文献中で十分に記載されている(S.A.Zahir, E. Hubler, D. Baumann, Th.Haug, K.Meier, Polymere, 273頁, B.G.Teubner Stuttgart 1997)。
【0006】
US 6,297,344及びUS 6,207,732中には、一成分系エポキシド樹脂が記載され、これは接着剤として使用される。この硬化温度は120℃である。
【0007】
WO 94/10223中には、エポキシド樹脂含有処方物が記載され、これはまずUV光で活性化され、この後に熱により150℃で一時間の間硬化される。電気的及び電子的部品のキャスティング、マスキング及び接着に適用される。
【0008】
US 20030200701には、140℃で硬化される処方物が記載されている。
【0009】
本発明は、熱不安定性基板、例えばフラットコンポーネント、例えばプリント基板、ハイブリッド、例えばハイブリッドマイクロシステム、SMDコンポーネントその他のコーティングのための低粘度の被覆材料であって、これまでの技術水準と比較して少ない熱的硬化エネルギー及び短い硬化時間を必要として、かつ慣用の装置で加工され、かつ保護被覆として使用可能である被覆材料を提供するとの課題を提示する。
【0010】
この課題は、バインダー又はバインダー混合物を含有し、60℃を上回りかつ120℃を下回る温度で硬化可能な被覆材料により解決される。70℃〜110℃、特に80℃〜90℃で硬化可能なバインダー又はバインダー混合物が特に有利である。
【0011】
有利には、本発明による被覆材料は、この被覆材料の硬化を、60℃を上回りかつ120℃を下回る温度、有利には70℃〜110℃、特に80℃〜90℃で可能にする複数の触媒を含有する。本発明により、硬化を挙げられた温度で50分間のうちに、有利には30分間のうちに可能にする触媒が使用される。20〜50分間のうちに、特に有利には25〜40分間のうちに硬化を可能にする触媒が特に有利である。本発明の主題は、これに応じて、熱不安定性基板のための被覆材料のための前記触媒の使用でもある。
【0012】
前述したバインダー及び触媒の他に、この被覆材料は更に慣用の助剤成分及び添加剤成分を含有することができる。
【0013】
本発明により、成分A、B、C及び場合によりDを含有する被覆材料が特に有利であり、その際、
成分A
a)少なくとも1種のバインダーを含有し、
成分B
b)1種又は複数種の反応性希釈剤、
成分C
c)本発明による被覆材料の硬化を60℃〜120℃、有利には70℃〜110℃、特に80℃〜90℃で可能にする触媒、
及び成分D
d)腐食防止剤、消泡剤、流れ調整剤及び湿潤剤からなる群から選択された1種又は複数種の物質
を含有する。
【0014】
本発明による有利な一実施態様において、前記被覆材料は成分A〜Dからなることができる。同様に、成分Bが反応性希釈剤から、成分Cが硬化触媒、そして成分Dが前述の腐食防止剤、消泡剤、流れ調整剤及び湿潤剤からなることもできる。
【0015】
本発明により、成分Aは有利には、脂環式ジエポキシド樹脂の分類からなるバインダーを含有する。特に有利には、前記成分はこの種の樹脂からなる。この樹脂の例は、例えば、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジパート又は3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシラートである。この樹脂は単独で又は混合して使用されることができる。前述の樹脂の他に、類似の特性を有するバインダーも考慮される。即ち、このバインダーは、60℃を上回りかつ120℃を下回る温度で、有利には70℃〜100℃、特に80℃〜90℃で硬化すべく、そのつど単独で又は混合して、又は触媒の存在下で適していなくてはならない。
【0016】
成分Bとして有利には、本発明によるエポキシド樹脂とカチオン共重合する化合物が考慮される。このような化合物は例えば、モノエポキシドであることができ、例えばリモネンオキシド、更にはエポキシノボラックである。同様に、線状の又は分枝した構造を有するポリエチレン−又はポリプロピレングリコールの種類のポリオール、ホモ−又はコポリマーが使用されることができる。更に、天然に存在するOH官能化油、例えばヒマシ油が使用可能である。ビニルエーテル、例えばトリエチレングリコール−又はシクロヘキサンジメタノールジビニルエーテルも同様に使用可能である。更に、アルキレンカルボナート、例えばプロピレンカルボナートが考慮される。本発明により適しているのは、エポキシド樹脂のための反応性希釈剤として、オキセタン、例えば3−エチル−ヒドロキシメチルオキセタン、テレフタラートビスオキセタン又はビスフェニレンビスオキセタンである。
【0017】
成分Cは、この被覆材料を60℃を上回りかつ120℃を下回る温度、有利には70℃〜110℃、特に80℃〜90℃で硬化させるのに適する少なくとも1種の触媒を含有する。この硬化触媒は、有利には50分間のうちに硬化を可能にする。特に有利には20〜50分間のうちの、特に有利には25〜40分間うちの、最も有利には30分間のうちの硬化である。本発明により有利には、第四級アンモニウムヘキサフルオロアンチモナートを使用することである。有利にはこの際、(4−メトキシベンジル)ジメチルフェニルアンモニウムヘキサフルオロアンチモナートの硬化触媒としての使用である。前記触媒は、本発明による被覆材料の硬化を、前述の温度で及び前述の期間のうちに可能にする。
【0018】
成分Dは、腐食防止剤、消泡剤、流れ調整剤及び湿潤剤からなる群から選択される1種又は複数種の物質を含有する。
【0019】
本発明による被覆材料は、成分A〜Dを相互に混合し、引き続き貯蔵するか又はその使用に供給することにより製造されることができる。本発明による被覆材料が数週間にわたり貯蔵安定性であることが試験により示された。本発明により、成分Aに応じたエポキシド樹脂含有バインダーが他の成分と有利には均質に混合される。これにより、この組成に依存して様々な粘度を有することができる被覆材料が得られる。通常は、適用、加工技術及び所望の層厚に応じて、エレクトロニクスにおけるフラットコンポーネント、ハイブリッド及びSMDコンポーネントのコーティングのために用いられる被覆材料は、300mPa.s〜600mPa.sの粘度を25℃で測定して有する。本発明による被覆材料は特に、エレクトロニクスにおけるフラットコンポーネント、例えばプリント基板、ハイブリッド、例えばハイブリッドマイクロシステム、及びSMDコンポーネント、及びまたアセンブリされたプリント基板のコーティングのために適している。この被覆体は傑出した硬度を有し、かつVOC不含であるか又はVOCをほとんど有しない。その上更に本発明による被覆材料は、電気的巻線の含浸のためにも、又は、電気的巻線のための保護層としても使用されることができる。
【0020】
以下に本発明を、実施例を参酌してより詳細に記載する。この試験をDIN及びIEC規格に応じて行った。実施例1及び比較例5からの処方の塗装膜の特性は比較可能な値を示した。これは、本発明による触媒を用いた90℃での硬化が、これまでの技術水準に応じた150℃での硬化と同等であることを意味する。
【0021】
実施例
例1
3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシラート2031.0gにLupranol(R) 3300 55.0g(BASF社のポリエーテルポリオール)及びプロピレンカルボナート7g中の(4−メトキシベンジル)ジメチルフェニルアンモニウム−ヘキサフルオロアンチモナート7gの溶液を撹拌下で添加した。この被覆材料は数週間貯蔵安定性であり、かつ500mPas/コーン/Dの粘度を25℃で有した。
【0022】
この被覆材料は4mmの層厚で30分間の間に90℃で欠陥なく硬化した。この硬化損失は0.1%より少なかった。0.1mmの層厚において、この塗膜は欠陥なしに脱脂された薄板に付着した。マンドレル曲げ試験(3mm)は問題無しに合格した。この体積抵抗は23℃で1.7E+15ohm*cmであった。7日間の水貯蔵(Wasserlagerung)後に体積抵抗は23℃で1.8E+14ohm*cmであった。この絶縁破壊の強さは230kV/mm(23℃で)及び228kV/mm(155℃で)であった。
【0023】
この塗料を用いて穴あけロッドをIEC 61033(方法A)に応じて含浸させ、この硬化(30分間90℃で)後に焼成抵抗性(Verbackungsfestigkeit)を測定した。これは23℃で290Nであった。
【0024】
例2
3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシラート1722.0g、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジパート390.0g、Lupranol(R) 2042 210.0g、Lupranol(R) 3300(BASF社のポリエーテルポリオール) 63.0g及びプロピレンカルボナート7.9g中の(4−メトキシベンジル)ジメチルフェニルアンモニウム−ヘキサフルオロアンチモナートの溶液を撹拌下で均質に混合した。この被覆材料は数週間貯蔵安定性であり、かつ580mPasの粘度を25℃で有した。
【0025】
この材料を層厚4mmで、30分間/90℃で循環空気炉中で柔軟なフィルムへと硬化させた。この硬化損失は0.2%より少なかった。0.1mmの層厚において、この塗膜は欠陥なしに脱脂された薄板に付着した。マンドレル曲げ試験(3mm)は問題無しに合格した。この体積抵抗は23℃で4.5E+14ohm*cmであった。7日間の水貯蔵後に体積抵抗は23℃で8.5E+13ohm*cmであった。この絶縁破壊の強さは221kV/mm(23℃で)及び210kV/mm(155℃で)であった。
【0026】
この塗料を用いて穴あけロッドをIEC 61033(方法A)に応じて含浸させ、この硬化(30分間90℃で)後に焼成抵抗性を測定した。これは23℃で190Nであった。
【0027】
例3
ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジパート2100g、Lupranol(R) 3530(BASF社のポリエーテルポリオール) 400g及びプロピレンカルボナート12.5g中の(4−メトキシベンジル)ジメチルフェニルアンモニウム−ヘキサフルオロアンチモナート12.5gの溶液から被覆材料を撹拌下で製造した。この処方物は貯蔵安定性であり、かつ25℃で600mPas/コーンの粘度を有した。4mmの層厚で30分間の間に90℃でこの処方物は循環空気炉中で極めて柔軟なフィルムへと硬化した。
【0028】
例4
ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジパート1900g、ヒマシ油600.0g及びプロピレンカルボナート12.5g中の(4−メトキシベンジル)ジメチルフェニルアンモニウム−ヘキサフルオロアンチモナート12.5gの溶液から被覆材料を撹拌下で製造した。この被覆材料は25℃で600mPas/コーンの粘度を有した。この材料は4mmの層厚で30分間で90℃で循環空気炉中で極めて柔軟なフィルムへと硬化した。
【0029】
比較例5
例1からの試験を繰り返したが、触媒として市販の三フッ化ホウ素オクチルアミノ錯体を使用した。
【0030】
90℃ではこの材料は、炉中でのより長い貯蔵でも硬化しなかった。この材料は強制空気炉中で150℃で50分間で硬化した。この硬化損失は1.8%の大きさであった。0.1mmの層厚において、この塗膜は欠陥なしに脱脂された薄板に付着した。マンドレル曲げ試験(3mm)は問題無しに合格した。体積抵抗は23℃で8.5E+14ohm*cm、そして7日間の水貯蔵後に23℃で1.1E+13ohm*cmであった。この絶縁破壊の強さはそのつど225kV/mm(23℃で)及び212kV/mm(155℃で)であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
120℃を下回りかつ60℃を上回る温度で硬化可能な、少なくとも1種のバインダー又はバインダー混合物を含有する、熱不安定性基板、特にフラットコンポーネント、ハイブリッド、SMDコンポーネントのための被覆材料。
【請求項2】
バインダー又はバインダー混合物は70℃〜110℃で、特に80℃〜90℃で硬化可能であることを特徴とする、請求項1記載の被覆材料。
【請求項3】
硬化触媒を含有することを特徴とする、請求項1又は2記載の被覆材料。
【請求項4】
少なくとも1種の反応性希釈剤及び場合により腐食防止剤、消泡剤、流れ調整剤及び湿潤剤を含有する、請求項1から3までのいずれか1項記載の被覆材料。
【請求項5】
バインダーとしてエポキシド樹脂を含有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の被覆材料。
【請求項6】
バインダーとして脂環式エポキシド樹脂を含有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の被覆材料。
【請求項7】
バインダーとしてビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジパート又は3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサン−カルボキシラート又はこれらの混合物を含有することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の被覆材料。
【請求項8】
20〜50分間、有利には30分間のうちに硬化を可能にする触媒を含有することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の被覆材料。
【請求項9】
触媒として第四級アンモニウムヘキサフルオロアンチモナートを含有することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の被覆材料。
【請求項10】
(4−メトキシベンジル)ジメチルフェニルアンモニウム−ヘキサフルオロアンチモナートを触媒として含有することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の被覆材料。
【請求項11】
反応性希釈剤として、エポキシド樹脂とカチオン重合する化合物を含有することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の被覆材料。
【請求項12】
反応性希釈剤として、モノエポキシド、ポリエチレン−又はポリプロピレングリコールの種類のポリオールを含有することを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の被覆材料。
【請求項13】
反応性希釈剤として天然に存在するOH官能化した油、有利にはヒマシ油を含有することを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載の被覆材料。
【請求項14】
反応性希釈剤として、ビニルエーテル、有利にはトリエチレングリコール−又はシクロヘキサンジメタノールジビニルエーテルを含有することを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項記載の被覆材料。
【請求項15】
反応性希釈剤として、アルキレンカルボナート、有利にはプロピレンカルボナートを含有することを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項記載の被覆材料。
【請求項16】
反応性希釈剤として、オキセタン、有利には3−エチル−ヒドロキシメチルオキセタン、テレフタラートビスオキセタン又はビスフェニレンビスオキセタンを含有することを特徴とする、請求項1から14までのいずれか1項記載の被覆材料。
【請求項17】
電気的巻線の含浸のための又は電気的巻線のための保護層としての、フラットコンポーネント、ハイブリッド、SMDコンポーネントのための請求項1から16までのいずれか1項記載の被覆材料の使用。
【請求項18】
請求項1から15までのいずれか1項記載の被覆材料を基板に設け、60℃を上回りかつ120℃を下回る温度で硬化させる、熱不安定性基板のコーティング方法。

【公表番号】特表2009−506153(P2009−506153A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−527465(P2008−527465)
【出願日】平成18年8月23日(2006.8.23)
【国際出願番号】PCT/EP2006/065572
【国際公開番号】WO2007/023165
【国際公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(503402633)アルタナ エレクトリカル インシュレイション ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (7)
【氏名又は名称原語表記】Altana Electrical Insulation GmbH
【住所又は居所原語表記】Abelstr. 45, D−46483 Wesel, Germany
【Fターム(参考)】