説明

被覆粉体及び該被覆粉体を含有する皮膚外用剤

【課題】光学的反射効果と透過効果とを化粧目的に適合させ、コントロールする技術を提供する。
【解決手段】1)硫酸バリウムの表面に、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、シリカ、酸化ジルコニウム、酸化鉄乃至はそれらの複合化物から選択される1種乃至は2種以上を被覆してなる粉体及び該複合粉体を含有する皮膚外用剤により課題が解決される。前記硫酸バリウムは板状の形態を有することが好ましく、前記金属酸化物乃至は複合酸化物は微粒子の形態であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は被覆粉体及び該被覆粉体を含有してなる皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
厚ぼったさのない、隠蔽化粧料の開発はメークアップ化粧料に於いては永年の課題であり、その改善は日進月歩で為されているが、隠蔽力と透明感の創出と言った相反する課題を同時に解決しなければならないことから、完全な調和には未だ至っていない。この様な透明感と隠蔽性のバランスには半透明粉体の介在が重要であることは既に知られている(例えば、特許文献1を参照)。即ち、透明感と隠蔽性を更に向上せしめる技術の開発が望まれていたと言える。これは、即ち、光学的反射効果と透過効果とを任意にコントロールする方法の創出と言い換えることも出来る。この様な技術は、隠蔽力と透明感のバランシングに留まらず、みずみずしさの創出や、優れた化粧映えなどのメークアップ全般のコントロール技術でもある。
【0003】
一方、硫酸バリウムは化粧料の粉体として汎用されており、その中でも薄片状のものは、マイカ、タルク 、シリカ、アルミナ、アルミニウム、酸化チタン、雲母チタン、チッ化ホウ素、合成マイカ、ハイドロキシアパタイト等と同様に被覆される基体として使用しやすいことが知られている(例えば、特許文献2を参照)。又、被覆する粉体として酸化チタンを使用する技術も既に知られている(例えば、特許文献3)。しかしながら、この様な粉体に隠蔽力、透明感のバランシングのような光学的反射効果と透過効果とのコントロールとの関係性については言及も検討もされていない。
【0004】
【特許文献1】特開平10−62338号公報
【特許文献2】特開2008−239588号公報
【特許文献3】特開2003−277217号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、この様な状況下為されたものであり、光学的反射効果と透過効果とを化粧目的に適合させ、コントロールする技術を提供すること課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この様な状況に鑑みて、本発明者らは、光学的反射効果と透過効果とを化粧目的に適合させ、コントロールする技術を求めて、鋭意研究努力を重ねた結果、1)硫酸バリウムの表面に、2)下記に示される金属酸化物乃至はそれらの複合化物から選択される1種乃至は2種以上を被覆してなる粉体がその様な生業特性を有しており、該粉体を化粧料に含有せしめることにより、この様なコントロールが出来ることを見出し、発明を完成させるに至った。。
(金属酸化物)二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、シリカ、酸化ジルコニウム、酸化鉄
即ち、本発明は以下に示すとおりである。
<1>1)硫酸バリウムの表面に、2)下記に示される金属酸化物乃至はそれらの複合化物から選択される1種乃至は2種以上を被覆してなる粉体。
(金属酸化物)二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、シリカ、酸化ジルコニウム、酸化鉄
<2>前記硫酸バリウムは板状の形態を有することを特徴とする、<1>に記載の粉体。
<3>前記金属酸化物乃至はそれらの複合化物は、微粒子の形態であることを特徴とする、<1>又は<2>に記載の粉体。
<4><1>〜<3>何れか1項に記載の粉体を含有してなる皮膚外用剤。
<5>化粧料であることを特徴とする<4>に記載の皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、光学的反射効果と透過効果とを化粧目的に適合させ、コントロールする技術を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(1)本発明の被覆粉体
本発明の被覆粉体は硫酸バリウムの表面を二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、シリカ、酸化ジルコニウム、酸化鉄からなる群から選択される金属酸化物乃至はこれらの複合化物から選択される一種乃至は二種以上で被覆されていることを特徴とする。かかる被覆は硫酸バリウム1質量部に対して、金属酸化物乃至はその複合化物を総量で0.01質量部から2質量部被覆することが好ましい。被覆は、メカノケミカルに行うことも出来るが、この場合には通常以上の質量エネルギーを付加することが好ましい。また、シリカなどのバインダーを硫酸バリウムの表面に沈着させ、これに金属酸化物乃至はその複合化物を沈積させ、加温して溶融・接着させることも出来る。また、金属酸化物その複合化物乃至は水酸化物などの前駆体を硫酸バリウム上に沈積させ、加温、溶融、接着させても良い。複合粉体の母粉体である硫酸バリウムは板状の形態を有することが好ましい。被覆される金属酸化物乃至はその複合化物において、第一の好ましい形態としては微粒子の形態をとることが好ましく例示でき、第二の好ましい形態としては、酸化チタンの表面に酸化亜鉛、シリカ、アルミナ、ジルコニアを被覆、溶着させたものが例示できる。また、金属酸化物乃至はその複合化物としては二酸化チタンを主たる成分とするものが好ましい。酸化チタンを主たる成分とするものとは、当該金属酸化物が酸化チタン単品である場合と金属酸化物の複合化物において、その酸化チタンの含有量が50質量%以上のものを意味する。
【0009】
本発明の被覆粉体は製造方法は特に限定されず、常法に従って調製することできる。例えば、母粉体となる硫酸バリウム粒子を水乃至は水性溶媒等に分散させ、これに被覆する金属酸化物を構成する金属の可溶性塩を添加し、中和等の手段により、母粉体の硫酸バリウム表面に目的の金属酸化物乃至は複合酸化物粒子を沈積させる方法が例示できる。かかる粉体は、他の粉体とともに化粧料に含有させた場合、二酸化チタン並みの隠ぺい力を有しながら、透明感に優れるなどの特性を発揮し、光学的反射効果と透過効果とを調整する作用を有する。このような作用を発現するためには、かかる粉体は化粧料全量に対して、総量で0.1〜90質量%含有させることが好ましい。
【0010】
(2)本発明の皮膚外用剤
本発明の皮膚外用剤は前記被覆粉体を必須成分として含有する。本発明の皮膚外用剤としては化粧料であることが好ましく、アンダーメーク、ファンデーション、プレストパウダー、チークカラー、アイカラー等のメークアップ化粧料であることがさらに好ましい。本発明の皮膚外用剤の製造方法は特に限定されず常法に従って製造することができる。
【0011】
さらに本発明の皮膚外用剤には必須成分の複合粉体以外に通常皮膚外用剤に用いられる成分を任意成分として含有させることができる。かかる、任意成分としては、炭化水素類、エステル類、トリグリセライド類等の油剤、ワックス類、活性剤類、染料、顔料等の色素類、体質顔料類、ビタミン等の有効成分等が好適に例示される。かかる皮膚外用剤はその求める光学機能にあわせて、前記複合粉体の含有量を設定することが出来る。
【0012】
以下実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明が実施例のみに限定されないことは言うまでもない。
【実施例】
【0013】
<実施例1及び比較例1>
以下に示す行程に従って、本発明の皮膚外用剤であるパウダーファンデーション1及び比較例としてのパウダーファンデーション2を作成した。すなわち、(イ)成分を混合した後、パルベライザーで粉砕した。その後、再びヘンシェルミキサーを用いて、この混合物を攪拌しながら、(ロ)成分を混合した。その後この混合物を再びパルベライザーで粉砕した後、金型を用いて 半自動プレス機によりアルミ中皿に充填して目的のパウダーファンデーションを得た。なお、表中の数字は質量%を表す。
【0014】
【表1】

【0015】
<試験例1>パウダーファンデーションの官能評価
実施例1のパウダーファンデーション1及び比較例1のパウダーファンデーション2を肌に塗布した場合のメークアップ効果について評価した。すなわち、樹レンした評価者5人により、パウダーファンデーション1及び2をはだに塗布した場合の光学的反射効果を肌のシミ及びくすみのカバーの程度として、透明感を自然な素肌感として5段階で評価した。評価はパウダーファンデーション2の評点をを3点としてパウダーファンデーション1の評価を行い、評価者5人の平均点をパウダーファンデーション1の評点とした。評価基準を下記に、結果を表2に示す。

(1)シミくすみのカバー パウダーファンデーション2と比較して、かなりカバーされている;5、よりカバーされている;4、同等;3、ややカバーされていない;2 カバーされていない;1
(2)素肌感 パウダーファンデーション2と比較して、かなりある;5、ある;4、同等;3、ややない;2、ない;1
【0016】
【表2】

【0017】
表2の結果から明らかなように本発明皮膚外用剤であるパウダーファンデション1は従来のパウダーファンデーション2と比較して光学的反射効果と透過効果とがコントロールされており、その結果としてシミ、くすみのカバー力及び素肌感ある仕上がりともに優れていることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0018】
皮膚外用剤、特に化粧料に有効に活用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)硫酸バリウムの表面に、2)下記に示される金属酸化物乃至はそれらの複合化物から選択される1種乃至は2種以上を被覆してなる粉体。
(金属酸化物)二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、シリカ、酸化ジルコニウム、酸化鉄
【請求項2】
前記硫酸バリウムは板状の形態を有することを特徴とする、請求項1に記載の粉体。
【請求項3】
前記金属酸化物乃至はそれらの複合化物は、微粒子の形態であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の粉体。
【請求項4】
請求項1〜3何れか1項に記載の粉体を含有してなる皮膚外用剤。
【請求項5】
化粧料であることを特徴とする請求項4に記載の皮膚外用剤。

【公開番号】特開2010−150182(P2010−150182A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−329844(P2008−329844)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【Fターム(参考)】