説明

被覆粒状肥料

【課題】優れた性能を有する被覆粒状肥料を影響すること。
【解決手段】肥料成分を含有する粒状物質の表面に被覆層が設けられてなる被覆粒状肥料であって、
該被覆層が、生分解性の樹脂からなる樹脂被覆層と、該樹脂被覆層の外側に設けられた抗菌剤及び植物硬化油を含む保護層とを有してなることを特徴とする被覆粒状肥料は、優れた性能を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆粒状肥料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、肥料の効能の長期化及び効能発現パターンの制御などを目的として、肥料成分を含有する粒状物質の表面に、ウレタン樹脂やエポキシ樹脂等の樹脂からなる被覆層が設けられてなる被覆粒状肥料が知られている。さらには被覆粒状肥料の肥料成分が溶出した後などに、前記被覆層に用いられた樹脂が土壌等に残留することを抑制するために、土壌等の自然環境下において容易に分解される、いわゆる生分解性の樹脂を用いた肥料用被覆組成物も開発されている(例えば、特許文献1参照)。
一方で、かかる生分解性の樹脂などを被覆層に適用した被覆粒状肥料は、土壌などへの施用により該樹脂被覆層が分解されるために、所望の肥料の効能の長期化及び効能発現パターンの制御が必ずしも十分に満足できるものではなく、その施用から一定期間の該樹脂被覆層の分解を抑制することが課題とされていた(例えば、特許文献1及び2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−1467号公報
【特許文献2】特開2009−62232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、土壌等の自然環境下において容易に分解される、いわゆる生分解性の樹脂を被覆層に適用した被覆粒状肥料を施用した後、溶出を終えるまでの一定期間の分解が抑制された、優れた性能を有する被覆粒状肥料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、優れた性能を有する粒状肥料を見出すべく検討の結果、特定の構成を有する肥料成分を含有する粒状物質の表面に被覆層が設けられてなる被覆粒状肥料が、優れた性能を有することを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1] 肥料成分を含有する粒状物質の表面に被覆層が設けられてなる被覆粒状肥料であって、
該被覆層が、生分解性の樹脂からなる樹脂被覆層と、該樹脂被覆層の外側に設けられた抗菌剤及び12−ヒドロキシステアリン酸を含む保護層とを有してなることを特徴とする被覆粒状肥料。
[2] 保護層における抗菌剤と12−ヒドロキシステアリン酸との重量比が0.5:99.5〜10:90である[1]記載の被覆粒状肥料。
[3] 樹脂被覆層と保護層に含有される抗菌剤との重量比が99.95:0.05〜95:5である[1]又は[2]記載の被覆粒状肥料。
[4] 抗菌剤が、水溶解度1000ppm以下である有機ヨウ素化合物又はイゾチアゾリン化合物である[1]〜[3]いずれか一項記載の被覆粒状肥料。
[5] 抗菌剤が、3−ヨード−2−プロパルギルブチルカルバミン酸、2,3,3−トリヨードアリルアルコール、1−ブロム−3−エトキシカルボニルオキシ−1,2−ジヨード−1−プロペン、ジヨードメチル−p−トリルスルホン、4−クロルフェノキシ−(3−ヨードプロパルギル)オキシメタン、2−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン及び1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンからなる群より選ばれる少なくとも一種である[1]〜[3]いずれか一項記載の被覆粒状肥料。
[6] 抗菌剤が、2,3,3−トリヨードアリルアルコールである[1]〜[3]いずれか一項記載の被覆粒状肥料。
[7] 肥料成分を含有する粒状物質が、粒状尿素である[1]〜[6]いずれか一項記載の被覆粒状肥料。
[8] 樹脂被覆層が、ポリイソシアネート成分とポリエステルポリオールを含有するポリオール成分とが重合されてなるウレタン樹脂からなる層である[1]〜[7]いずれか一項記載の被覆粒状肥料。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、土壌等の自然環境下において一定期間の生分解性の樹脂からなる樹脂被覆層の分解に起因する溶出期間や溶出パターンの変化が抑制された、優れた性能を有する被覆粒状肥料が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の被覆粒状肥料とは、肥料成分を含有する粒状物質の表面に被覆層が設けられてなる被覆粒状肥料であって、該被覆層が、生分解性の樹脂からなる樹脂被覆層と、該樹脂被覆層の外側に設けられた抗菌剤及び植物硬化油を含む保護層とを有してなる被覆粒状肥料である。
【0008】
本発明に用いられる、肥料成分を含有する粒状物質とは、肥料成分そのものが単独で造粒されたものであってもよく、また、肥料成分を担体に保持させた粒状物であってもよい。
【0009】
かかる肥料成分としては、例えば、尿素、硝酸アンモニウム、硝酸苦土アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸ソーダ、硝酸カルシウム、硝酸カリウム、石灰窒素、ホルムアルデヒド加工尿素(UF)、アセトアルデヒド加工尿素(CDU)、イソブチルアルデヒド加工尿素(IBDU)及びグアニール尿素(GU)等の窒素質肥料成分;過リン酸石灰、重過リン酸石灰、熔成リン、腐植酸リン、焼成リン、重焼リン、苦土過リン酸、ポリリン酸アンモニウム、メタリン酸カリウム、メタリン酸カルシウム、苦土リン酸、硫リン安、リン硝安カリウム及び塩リン安等のリン酸質肥料成分;塩化カリウム、硫酸カリウム、硫酸カリソーダ、硫酸カリ苦土、重炭酸カリウム及びリン酸カリウム等のカリウム質肥料成分;珪酸カルシウム等の珪酸質肥料成分;硫酸マグネシウム及び塩化マグネシウム等のマグネシウム質肥料成分;生石灰、消石灰及び炭酸カルシウム等のカルシウム質肥料成分;硫酸マンガン、硫酸苦土マンガン及び鉱さいマンガン等のマンガン質肥料成分;ホウ酸及びホウ酸塩等のホウ素質肥料成分;並びに、鉄鋼スラグ等の含鉄肥料成分が挙げられ、これらの肥料成分は1種を単独で用いてもよく、また2種以上の肥料成分を組み合わせて用いてもよい。
【0010】
肥料成分を保持させるために用いられる担体としては、例えば、カオリナイト等のカオリン鉱物、モンモリロナイト、スメクタイト、タルク、蝋石、シリカ、含水珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、ゼオライト及び酸性白土等の鉱物質担体;セルロース、籾殻、澱粉及び大豆粉等の植物質担体;乳糖、蔗糖、デキストリン、食塩及びトリポリリン酸ナトリウム等の水溶性担体;アジピン酸ジデシル、綿実油及びパーム油等の液体担体等が挙げられ、これらの担体は、肥料成分を保持した粒状物ができる形態であれば、単独で用いられてもよく、また2種以上の担体を組み合わせて用いてもよい。
【0011】
本発明に用いられる肥料成分を含有する粒状物質は、通常の粒状物の造粒方法により肥料成分そのものを単独造粒するか、肥料成分と担体とを混合して造粒することにより得られる。かかる造粒方法としては例えば、押出造粒法、流動層式造粒法、転動造粒法、圧縮造粒法、パン造粒法、被覆造粒法及び吸着造粒法が挙げられる。
本発明に用いられる肥料成分を含有する粒状物質の粒径は特に限定されるものではないが、通常は0.1〜15.0mmの範囲がである。これらは篩いを用いることにより、前記範囲内で任意の粒径を選択することができる。また該粒状物の形状は球状、角状、円柱状いずれでもかまわないが、球状に近いものが好ましい。
【0012】
本発明の被覆粒状肥料に設けられる保護層における生分解性の樹脂からなる樹脂被覆層に適用される生分解性の樹脂としては、例えば、土壌等の自然環境下のおいて速やかに分解されるものであれば特に限定されず、生分解性を有するポリウレタンが挙げられ、詳しくはポリエステルポリオールとポリイソシアネートとを反応させてなる生分解性をポリウレタンが挙げられる。
【0013】
ポリエステルポリオールとポリイソシアネートとを反応させてなる生分解性のポリウレタンは、例えば、特開2009−1467号公報及び特開2009−62232号公報に記載されているものが挙げられ、ポリエステルポリオール及びポリイソシアネートとしては詳しくはそれぞれ以下のものが挙げられる。
【0014】
ポリイソシアネートとしては、例えば4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと略称することがある)、トルエンジイソシアネート(以下、TDIと略称することがある)、キシリレンジイソシアネート(以下、XDIと略称することがある)、トリジンイソシアネート(以下、TODIと略称することがある)、テトラメチレンキシリレンジイソシアネート(以下、TMXDIと略称することがある)、ナフタレンジイソシアネート(以下、NDIと略称することがある)、ヘキサメチレンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネートを挙げることができ、必要に応じてこれらの混合物を用いることができる。この中でも、ベンゼン環やナフタレン環を有する芳香族ポリイソシアネート化合物が好ましく、MDI、TDIまたはこれらから誘導されるオリゴマー体(ポリメリックMDI、ポリメリックTDI等)が好適に用いられる。
【0015】
ポリオール化合物としては、例えば、ポリメチレングリコール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリアクリル酸ポリオール、ポリカーボネートポリオール並びに天然ポリオール及びその変性物等が挙げられ、これらのポリオール化合物のうち1種を単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。例えば、ポリオール化合物として、脂肪族ポリエステルポリオールとポリメチレングリコールとを組み合わせて用いてもよい。以下、このポリオール化合物の組み合わせについて説明する。
【0016】
脂肪族ポリエステルポリオールとしては、例えば分子の何れかの末端が下記の式(1)又は式(2)の構造である脂肪族ポリエステルポリオールが挙げられる。
−[O−C(=O)−CHR−(CH)]−OH (1)
〔式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、pは0〜9の整数を表し、mは1以上の整数を表す。〕
−[O−C(=O)−Q−C(=O)−O−(CH)]−OH (2)
〔式中、Qは炭素数1〜10アルキレン基を表し、rは2〜10の整数を表し、nは1以上の整数を表す。〕
【0017】
分子の何れかの末端が式(1)の構造である脂肪族ポリエステルポリオールとしては、例えば、低分子ポリオールにラクチドモノマー又はラクトンモノマーを開環重合させることにより得られるラクトン系ポリエステルポリオールが挙げられる。ラクトンモノマーとしては、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等が挙げられる。
【0018】
分子の何れかの末端が式(2)の構造である脂肪族ポリエステルポリオールとしては、例えば、低分子ジオールとジカルボン酸とを縮重合させることにより得られる縮合系ポリエステルポリオールが挙げられる。そのような縮合系ポリエステルポリオールとしては、具体的にはエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール等の低分子ポリオールと、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸とを縮重合させることにより得られるものが挙げられる。
【0019】
脂肪族ポリエステルポリオールは、式(1)又は式(2)で示される末端構造を1分子中に2〜3個有するポリエステルポリオール、即ち水酸基をポリエステルポリオール1分子当り2〜3個の割合で有するポリエステルポリオールであることが好ましい。またポリエステルポリオールは、分子量が300〜5000の範囲であることが好ましい。尚、本発明において複数種の化合物を含む混合物における分子量は、数平均分子量を意味する。ポリマーにおける数平均分子量は、例えばゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)、末端基定量法等の一般的な方法によって求めることができる。
【0020】
以上説明した脂肪族ポリエステルポリオールの中でも、低分子ポリオールとε−カプロラクトンを開環重合させることにより得られるポリカプロラクトンポリオールが特に好ましい。ポリカプロラクトンポリオールは1分子中に(1−オキソヘキサ−1,6−ジイル)オキシ構造(-C(=O)-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-O-)を1以上有するポリオールである。ポリカプロラクトンポリオールは、出発原料として用いる低分子ポリオールの種類およびε‐カプロラクトンの重合度により、得られるポリカプロラクトンポリオールの種類が異なる。1分子中の水酸基の数が2又は3個であるポリカプロラクトンポリオール(ポリカプロラクトンジオール又はポリカプロラクトントリオール)の典型的な構造を下記の式(3)及び式(4)に示す。
【0021】

〔上記の式中、mは0以上の整数、nは1以上の整数、Rは2価の有機残基(例えば、
エチレン基、テトラメチレン基等)を表す。〕
【0022】

〔上記の式中、mおよびpは0以上の整数、nは1以上の整数、Rは3価の有機残基(
例えば、プロパン−1,2,3−トリイル基等)を表す。〕
【0023】
ポリカプロラクトンポリオールの製造において、原料として用いられる低分子ポリオールは、1分子中に水酸基を2個有する化合物として例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4‐ブタンジオール、1,5‐ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8‐オクタンジオールが挙げられ、1分子中に水酸基を3個有するポリオールとして例えば、2‐エチル‐2‐(ヒドロキシメチル)‐1,3‐プロパンジオール(トリメチロールプロパン)、2‐(ヒドロキシメチル)‐1,3‐プロパンジオール、グリセリン及びトリエタノールアミンが挙げられる。
【0024】
次に、ポリメチレングリコールとしては炭素数2〜8のものが好ましく、例えばエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール及び1,8−オクタンジオールが挙げられる。この中でも、1,4−ブタンジオール及び1,6−ヘキサンジオールが好ましい。
【0025】
脂肪族ポリエステルポリオールとポリメチレングリコールとのモル比は特に制限がないが、好ましくは1:8〜8:1である。
【0026】
本発明においてポリオール化合物が、脂肪族ポリエステルポリオールを含む分子量300〜5000のポリオール化合物と、ポリメチレングリコールとから実質的になる場合、肥料成分の溶出制御の観点から、ポリオール化合物は1分子中の水酸基の数が2個であるジオール化合物、及び、1分子中の水酸基の数が3個であるトリオール化合物が好ましい。該ジオール化合物としては、ポリメチレングリコール及びポリカプロラクトンジオール等の脂肪族ポリエステルジオールが挙げられる。該ポリオール化合物としては、ポリカプロラクトントリオール等の脂肪族ポリエステルトリオールが挙げられる。
【0027】
更に、本発明において、ポリオール成分が脂肪族ポリエステルポリオールを含む分子量300〜5000のポリオールと、ポリメチレングリコールとから実質的になり、分子量300〜5000のポリオールが1分子中の水酸基の数が2個のポリオール及び1分子中の水酸基の数が3個のポリオールからなる場合、下式で示される架橋密度指数が0.02〜0.07の範囲となるように、1分子中の水酸基の数が3個のポリオールが含有されていることが好ましい。
【0028】
架橋密度指数=〔分子量300〜5000のポリオール中における、1分子中の水酸基の数が3個のポリオールの重量%〕/〔ポリオールの数平均分子量〕
ただし、分子量300〜5000のポリオール中に1分子中の水酸基の数が3個のポリオールを複数含有する場合は、各成分の架橋密度指数の合計を、ここでの架橋密度指数とする。
【0029】
本発明において、脂肪族ポリエステルポリオールがポリカプロラクトンポリオールである場合、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物との合計量に対して、ポリカプロラクトンポリオールは通常15〜80重量%の範囲が好ましく、より好ましくは20〜70重量%である。
【0030】
本発明において、ポリイソシアネート化合物が、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートである場合、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物との合計量に対して、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートは通常10〜49重量%の範囲が好ましい。
【0031】
本発明において、ポリイソシアネート化合物におけるイソシアネート基のモル数と、ポリオール化合物における水酸基のモル数との比率は、好ましくは1:0.9〜1:1.3であり、より好ましくは1:1〜1:1.2である。
【0032】
本発明において、肥料成分を含有する粒状物質の表面をウレタン樹脂の被膜で被覆するには、従来公知の何れの方法を用いてもよく、例えば、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物、そして必要により触媒とを混合して未硬化ウレタン樹脂を作製し、これを流動状態又は転動状態にある肥料成分を含有する粒状物質に添加すればよい。
【0033】
ここで使用する触媒としては、例えば、酢酸カリ、酢酸カルシウム、スタナスオクトエート、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジクロライド、ジブチルチンジラウレート、ジブチルチオチン酸、オクチル酸第一チン、ジ−n−オクチルチンジラウレート、イソプロピルチタネート、ビスマス2−エチルヘキサノエート、ホスフィン、Znネオデカノエート等の有機金属、トリエチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリン、N,N−ジメチルジドデシルアミン、N−ドデシルモルホリン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N−エチルモルホリン、ジメチルエタノールアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、テトラブチルチタネート、オキシイソプロピルバナデート、n−プロピルジルコネート、2,4,6‐トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等のアミン触媒が挙げられる。
【0034】
肥料成分を含有する粒状物質を流動状態又は転動状態とする装置としては、加温された空気が下方から送風される噴流塔装置、加温装置が付設された回転パンまたはドラム装置等の公知の装置が使用可能である。未硬化ウレタン樹脂の添加方法としては、各成分を混合した後にすばやく添加するか、各成分を別々に添加する方法のいずれでもよい。その後、肥料成分を含有する粒状物質の流動状態又は転動状態を維持して、ポリイソシアネート化合物におけるイソシアネート基とポリオール化合物における水酸基との反応を進行させ、肥料成分を含有する粒状物質の表面をウレタン樹脂の被膜で被覆する。このときの反応温度としては通常0〜200℃の範囲であり、好ましくは50〜150℃の範囲である。この一回の操作にて形成される被膜の厚みが通常0.1〜20μmとなるように、添加する未硬化ウレタン樹脂の添加量を調整するのが好ましい。被膜の厚みが更に必要である場合は、上記の操作を繰り返すことにより、ウレタン樹脂の被膜の厚みを増加させればよい。
【0035】
本発明の被覆粒状肥料において、生分解性の樹脂からなる樹脂被覆層の厚さは通常1〜600μmの範囲が好ましく、より好ましくは8〜400μmの範囲である。
また、本発明の被覆粒状肥料全量に対する生分解性を有する樹脂からなる樹脂被覆層の含有量は、通常1〜50重量%、好ましくは3〜20重量%である。
【0036】
本発明に用いられる抗菌剤としては例えば25℃における水溶解度が1000ppm以下である抗菌剤が挙げられ、具体的には例えば、3−ヨード−2−プロパルギルブチルカルバミン酸、2,3,3−トリヨードアリルアルコール、1−ブロム−3−エトキシカルボニルオキシ−1,2−ジヨード−1−プロペン、ジヨードメチル−p−トリルスルホン及び4−クロルフェノキシ−(3−ヨードプロパギル)オキシメタン等の有機ヨウ素化合物、並びに、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン及び1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン等のイソチアゾリン化合物が挙げられる。
【0037】
本発明の被覆粒状肥料に設けられる保護層は、肥料成分を含有する粒状物質の表面に生分解性の樹脂からなる樹脂被覆層が設けられた粒状物に対して、抗菌剤と12−ヒドロキシステアリン酸とを別々に被覆することによって形成できる。また抗菌剤と12−ヒドロキシステアリン酸を予め混合し、該混合物を用いて、肥料成分を含有する粒状物質の表面に生分解性の樹脂からなる樹脂被覆層が設けられた粒状物を被覆することにより形成することが、抗菌剤と12−ヒドロキシステアリン酸との均一分散性や、製造効率の点から好ましく、前記した肥料成分を含有する粒状物質を流動状態又は転動状態により生分解性を有する樹脂からなる樹脂被覆層を形成した後、該流動状態又は該転動状態を維持したまま、次いで、抗菌剤と12−ヒドロキシステアリン酸と被覆させることが好ましく、抗菌剤と12−ヒドロキシステアリン酸とは混合して、溶液または均一な分散液の状態で同時に被覆させることがより好ましい。
【0038】
本発明の被覆粒状肥料に設けられる保護層における抗菌剤と12−ヒドロキシステアリン酸との含有割合は重量比で、通常0.5:99.5〜10:90であり、好ましくは1:99〜5:95である。
本発明の被覆粒状肥料全量に対する保護層の含有量は、通常0.1〜10重量%、好ましくは2〜10重量%である。
本発明の被覆粒状肥料における、生分解性の樹脂からなる樹脂被覆層と保護層に含有される抗菌剤との重量比は、通常99.95:0.05〜95:5であり、好ましくは99.9:0.1〜99:1である。
【0039】
本発明の被覆粒状肥料の粒径は特に限定されるものではないが、通常粒径は0.1〜15mmの範囲である。
【実施例】
【0040】
次に、本発明を製造例および試験例を挙げてより詳細に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。
【0041】
参考例1
平均分子量が1200のポリカプロラクトンジオール[ダイセル化学工業(株)製、商品名:Placcel212]1859.0gを70℃にて加熱溶融し、70℃に加温したひまし油[豊国製油(株)製、商品名:工業用一号ひまし油]1308.5gおよび1,4−ブタンジオール[BASF出光(株)製、商品名:1,4−BDO]279.5gと混合し、ポリオール混合物を得た。粒状尿素(大粒尿素、粒径約3mm)50000.0gを回転槽に仕込み、転動状態にして、該粒状尿素を熱風により約66℃まで加熱した後、流動パラフィン[(株)松村石油研究所製、商品名:モレスコホワイトP−260]500gを添加し、10分間転動状態を継続した。次に、70℃に加温した前述のポリオール混合物689.4gと70℃に加温した芳香族ジイソシアネート[住化バイエルウレタン(株)製、商品名:Sumidur44S]310.7gを素早く攪拌混合した未硬化ウレタンを添加し、8分間以上、加熱条件下で転動状態を維持した。更に、未硬化ウレタン樹脂の添加、及び加熱条件下での転動状態の維持を繰り返して、添加した未硬化ウレタン樹脂の総量が5000.5gになるまで行った。その後、室温付近まで冷却し、被覆粒状肥料(以下、被覆粒状肥料(A)と記す。)を得た。
【0042】
参考例2
被覆粒状肥料(A)444.0gを回転槽に仕込み、転動状態にして、被覆粒状肥料(A)を熱風により約70℃まで加熱した。その後、あらかじめ2,3,3−トリヨードアリルアルコール[三愛石油(株)製抗菌剤、商品名:SK−TIAA] 0.20gとクレー[近江鉱産(株)製、商品名:ミラクレーP−300]0.80gを乳鉢でよく混合した混合粉末を添加し、5分間加熱条件下で転動状態を維持した。その後、室温付近まで冷却し、抗菌剤とクレーとの混合粉末で被覆した被覆粒状肥料(以下、被覆粒状肥料(B)と記す。)を得た。
【0043】
参考例3
被覆粒状肥料(A)444.0gを回転槽に仕込み、転動状態にして、被覆粒状肥料(A)を熱風により約70℃まで加熱した。その後、100℃で溶融した12−ヒドロキシステアリン酸[伊藤製油(株)製、商品名:12−ヒドロキシステアリン酸、融点:約85℃]12.0gを添加し、5分間加熱条件下で転動状態を維持した。その後、室温付近まで冷却し、12−ヒドロキシステアリン酸で被覆した被覆粒状肥料(以下、被覆粒状肥料(C)と記す。)を得た。
【0044】
製造例1
被覆粒状肥料(A)444.0gを回転槽に仕込み、転動状態にして、被覆粒状肥料(A)を熱風により約70℃まで加熱した。その後、あらかじめ100℃で溶融した12−ヒドロキシステアリン酸[伊藤製油(株)製、商品名:12−ヒドロキシステアリン酸、融点:約85℃]12.0gに2,3,3−トリヨードアリルアルコール[三愛石油(株)製抗菌剤、商品名:SK−TIAA]0.20gを溶解した2,3,3−トリヨードアリルアルコール含有12−ヒドロキシステアリン酸を添加し、5分間加熱条件下で転動状態を維持した。その後、室温付近まで冷却し、2,3,3−トリヨードアリルアルコール及び12−ヒドロキシステアリン酸の混合物で被覆した被覆粒状肥料(以下、被覆粒状肥料(1)と記す。)を得た。
【0045】
試験例1 (水中溶出試験)
サンプル瓶に、供試する被覆粒状肥料2.5g(60〜80粒)を入れて、ここに水100mlを加え、25℃で静置した。所定時間経過後、サンプル瓶中の水0.6mlを取り、尿素濃度を測定した。測定した尿素濃度に基づき供試した被覆粒状肥料からの尿素の溶出率を計算した。
【0046】
試験例2 (土中溶出試験)
兵庫県の土壌333.0gをカップに入れ、ここに供試する被覆粒状肥料2.5gを入れて、被覆肥料が寄り集まらないようにスパチュラで軽く混合した後、25℃でインキュベートした。14日後、カップ内に203mlの水に入れて25℃で静置し、所定時間後に供試した被覆粒状肥料を全量回収し、回収した被覆粒状肥料における尿素の残存量を測定した。測定した尿素の残存量に基づき、供試した被覆粒状肥料からの尿素の溶出率を計算した。なおデータは、土中に供試した被覆粒状肥料を投入した日を0日目とした。
【0047】
所定時間後における土中溶出試験の溶出率と水中溶出試験の溶出率との差を表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
被覆粒状肥料(1)は、被覆粒状肥料(A)、(B)及び(C)と比較して、土中に供試した場合にも土壌微生物等による被覆層の分解が抑制され、水中における溶出パターンとの相違が抑制される。従って、本発明の被覆粒状肥料は、施用場面の相違に起因する溶出パターン変化の発生が抑制された優れた性能を有するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肥料成分を含有する粒状物質の表面に被覆層が設けられてなる被覆粒状肥料であって、
該被覆層が、生分解性の樹脂からなる樹脂被覆層と、該樹脂被覆層の外側に設けられた抗菌剤及び12−ヒドロキシステアリン酸を含む保護層とを有してなることを特徴とする被覆粒状肥料。
【請求項2】
保護層における抗菌剤と12−ヒドロキシステアリン酸との重量比が0.5:99.5〜10:90である請求項1記載の被覆粒状肥料。
【請求項3】
樹脂被覆層と保護層に含有される抗菌剤との重量比が99.95:0.05〜95:5である請求項1又は2記載の被覆粒状肥料。
【請求項4】
抗菌剤が、水溶解度1000ppm以下である有機ヨウ素化合物又はイゾチアゾリン化合物である請求項1〜3いずれか一項記載の被覆粒状肥料。
【請求項5】
抗菌剤が、3−ヨード−2−プロパルギルブチルカルバミン酸、2,3,3−トリヨードアリルアルコール、1−ブロム−3−エトキシカルボニルオキシ−1,2−ジヨード−1−プロペン、ジヨードメチル−p−トリルスルホン、4−クロルフェノキシ−(3−ヨードプロパルギル)オキシメタン、2−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン及び1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンからなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項1〜3いずれか一項記載の被覆粒状肥料。
【請求項6】
抗菌剤が、2,3,3−トリヨードアリルアルコールである請求項1〜3いずれか一項記載の被覆粒状肥料。
【請求項7】
肥料成分を含有する粒状物質が、粒状尿素である請求項1〜6いずれか一項記載の被覆粒状肥料。
【請求項8】
樹脂被覆層が、ポリイソシアネート成分とポリエステルポリオールを含有するポリオール成分とが重合されてなるウレタン樹脂からなる層である請求項1〜7いずれか一項記載の被覆粒状肥料。

【公開番号】特開2011−178580(P2011−178580A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−41897(P2010−41897)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】