被覆鋼管の損傷評価データの処理方法及び損傷監視装置
【課題】被覆鋼管の被覆損傷有無の検出精度と計測の応答速度を向上させる。
【解決手段】計測区間毎のコンダクタンスを移動平均して損傷有無を判定する短期、中期、長期移動平均データの時系列データを作成する。模擬欠陥信号が入力したときに選択した短期移動平均データと他の移動平均データの時系列データから損傷コンダクタンスの時系列データを作成し、模擬欠陥の信号成分とノイズとのSN比から基準値となる移動平均データの最適データ平均個数を計測区間毎に選択する。選択された最適データ平均個数の基準値を使用して計測値である短期移動平均データのデータ平均個数を変化させて応答速度が最小となる短期移動平均データの最適データ平均個数を計測区間毎に選択し、選択した最適データ平均個数で移動平均した基準値と計測値により損傷コンダクタンスの時系列データを作成して被覆鋼管の損傷有無を評価する。
【解決手段】計測区間毎のコンダクタンスを移動平均して損傷有無を判定する短期、中期、長期移動平均データの時系列データを作成する。模擬欠陥信号が入力したときに選択した短期移動平均データと他の移動平均データの時系列データから損傷コンダクタンスの時系列データを作成し、模擬欠陥の信号成分とノイズとのSN比から基準値となる移動平均データの最適データ平均個数を計測区間毎に選択する。選択された最適データ平均個数の基準値を使用して計測値である短期移動平均データのデータ平均個数を変化させて応答速度が最小となる短期移動平均データの最適データ平均個数を計測区間毎に選択し、選択した最適データ平均個数で移動平均した基準値と計測値により損傷コンダクタンスの時系列データを作成して被覆鋼管の損傷有無を評価する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地中に埋設された被覆鋼管の損傷評価データの処理方法及び損傷監視装置、特に損傷検出精度と計測の応答速度の向上に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地中に埋設された被覆鋼管は鋼自体の腐食を防ぐため、外面を被覆して土壌と絶縁している。この被覆鋼管の被覆が例えば土木工事等で掘削機械等に接触して傷が付くと、鋼自体が土壌と接触して腐食する可能性がある。この鋼自体に腐食が生じることを防止するため地中に埋設された被覆鋼管の被覆に対する損傷の状態を常時監視することが必要である。
【0003】
この埋設された被覆鋼管の損傷の有無を監視する方法として、例えば特許文献1に示すように、交流電源により被覆鋼管に設けた基準点から被覆鋼管に一定の信号電流を流し、被覆鋼管の異なる2地点において被覆鋼管の対地電位である管対地電位を測定し、被覆鋼管の2地点間の電位差を利用し、電圧降下法により各地点毎に被覆鋼管に流れる管内電流を測定し、測定した2地点の管対地電位と電流値とにより被覆鋼管の2地点間の接地抵抗を演算し、この接地抵抗がある基準値より大きいときに、その2地点間の被覆に損傷があると判定している。そして被覆鋼管を管路に沿って多数の区間を設け、区間毎に接地抵抗を求め、区間接地抵抗や区間接地抵抗の逆数であるコンダクタンスの変化を基に被覆鋼管の被覆損傷の有無を判定し、損傷が生じた区間を特定するようにしている。
【0004】
前記のように被覆鋼管の各区間の接地抵抗(コンダクタンス)を求めるとき、接地抵抗は気候等により1日内や年間で変動する。また、接地抵抗を求めるために測定した管対地電位や管内電流に含まれるノイズによる接地抵抗の変化を埋設鋼管の損傷発生と誤認するおそれがある。この接地抵抗の変動やノイズによる損傷の誤検出を防止するため、特許文献2に示すように、測定した時系列データを移動平均し、移動平均したデータの現時点と過去の時点の値を比較して測定データの変化を検出している。
【特許文献1】特開平9−189505号公報
【特許文献2】特開平9−33474号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に示すように、例えば接地抵抗の時系列データを移動平均しても、移動平均データ個数により、図11に示すように、移動平均した時系列データは大きく異なる。図11において、Aは移動平均データ個数が10の場合、Bは移動平均データ個数が50の場合、Cは移動平均データ個数が300の場合、Dは移動平均データ個数が600の場合、Eは移動平均データ個数が1200の場合の時系列データを示す。この移動平均データ個数を適切に選択しないとSN比が悪くなるとともに、損傷を迅速に検出することができなくなってしまう。
【0006】
この発明は、このような短所を改善し、被覆鋼管の被覆損傷有無の検出精度と計測の応答速度を向上することができる被覆鋼管の損傷評価データの処理方法及び塗覆装損傷監視装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明における被覆鋼管の損傷評価データの処理方法は、被覆鋼管の損傷有無を検知する検知対象区間毎に設けられたセンサユニットから区間接地抵抗を入力して記憶するデータ入力工程と、入力した計測区間毎の接地抵抗の逆数であるコンダクタンスを移動平均して損傷有無を判定する短期、中期、長期移動平均データの時系列データを作成する移動平均工程と、初期設定時及び再設定時に、模擬欠陥信号が入力したときの短期移動平均データのいずれかを選択し、選択した短期移動平均データと他の移動平均データの時系列データから損傷コンダクタンスの時系列データを作成し、作成した損傷コンダクタンスの時系列データにおける模擬欠陥の信号成分と模擬欠陥信号が入力していない定常時におけるノイズとのSN比から基準値となる移動平均データの最適データ平均個数を計測区間毎に選択する最適基準値選択工程と、選択された最適データ平均個数の基準値を使用して計測値である短期移動平均データのデータ平均個数を変化させて模擬欠陥信号が入力したときの応答速度が最小となる短期移動平均データの最適データ平均個数を計測区間毎に選択する最適計測値選択工程と、被覆鋼管の損傷を評価するとき、計測区間毎に最適データ平均個数で移動平均した基準値と計測値により損傷コンダクタンスの時系列データを作成し、作成した計測値の損傷コンダクタンスと基準値の損傷コンダクタンスとの差があらかじめ定めた閾値を超えたか否により被覆鋼管の損傷有無を評価する損傷判定工程とを有することを特徴とする。
【0008】
この発明の被覆鋼管の損傷監視装置は、信号発生装置と複数のセンサユニット及び中央管理装置を有し、信号発生装置は、地中に埋設された被覆鋼管の検知対象区間の基準位置で地中に埋設された電極と被覆鋼管の管本体に接続され、監視信号を電極と管本体との間に印加し、複数のセンサユニットは、それぞれ被覆鋼管の配管ラインに沿って所定計測区間をおいて設けられ、被覆鋼管の管対地電位と管内電流を検出し、検出した管対地電位と管内電流により区間接地抵抗を算出して中央管理装置に送り、中央管理装置はデータ入力部とデータ記憶部と平均値演算部と最適基準値選択部と最適計測値選択部と最適値記憶部及び損傷判定部を有し、データ入力部は、各センサユニットから各種データを入力し、データ記憶部は、入力した各種データ及び処理データを記憶し、平均値演算部は、入力した計測区間毎の接地抵抗の逆数であるコンダクタンスを移動平均して損傷有無を判定する短期、中期、長期移動平均データの時系列データを作成し、最適基準値選択部は、初期設定時及び再設定時に、模擬欠陥信号が入力したときの短期移動平均データのいずれかを選択し、選択した短期移動平均データと他の移動平均データの時系列データから損傷コンダクタンスの時系列データを作成し、作成した損傷コンダクタンスの時系列データにおける模擬欠陥の信号成分と模擬欠陥信号が入力していない定常時におけるノイズとのSN比から基準値となる移動平均データの最適データ平均個数を計測区間毎に選択し、最適計測値選択部は、選択された最適データ平均個数の基準値を使用して計測値である短期移動平均データのデータ平均個数を変化させて模擬欠陥信号が入力したときの応答速度が最小となる短期移動平均データの最適データ平均個数を計測区間毎に選択し、最適値記憶部は、選択した基準値と計測値の最適データ平均個数を計測区間毎に記憶し、損傷判定部は、被覆鋼管の損傷有無を評価するとき、計測区間毎に最適データ平均個数で移動平均した基準値と計測値により損傷コンダクタンスの時系列データを作成し、作成した計測値の損傷コンダクタンスと基準値の損傷コンダクタンスとの差があらかじめ定めた閾値を超えたか否により被覆鋼管の損傷有無を評価することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明は、被覆鋼管の計測区間毎に基準値と計測値の移動平均データ個数を最適値に設定し、設定した移動平均データ個数により被覆鋼管の損傷を評価する移動平均データを作成するから、被覆鋼管の損傷を評価するときのSN比と計測の応答時間を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1はこの発明の損傷監視装置の構成を示すブロック図である。図に示すように、損傷監視装置1は地中2に埋設された被覆鋼管3の被覆損傷有無を評価するものであり、信号発生装置4と複数のセンサユニット5a〜5n及び中央管理装置6を有する。この損傷監視装置1で被覆鋼管3の損傷有無を検知する検知対象区間は、適当な間隔をおいて設けた複数の検出地点Ta〜Tnにより複数の測定区間に分割され、各検出地点Ta〜Tnに、被覆鋼管3の管本体に接続された計測線を有するターミナルを立ち上げている。
【0011】
信号発生装置4は、検知対象区間の基準位置Pで地中2に埋設された電極7と被覆鋼管3の管本体に接続され、監視信号を電極7と管本体との間に印加する。センサユニット5a〜5nは、それぞれ各検出地点Ta〜Tnに設けられ、被覆鋼管3の対地電位を示す管対地電位と隣接する検出地点間における被覆鋼管3の電位差を検出する。そして検出した電位差と被覆鋼管3の導体抵抗から隣接する検出地点間に流れる管内電流を演算し、管対地電位と管内電流により区間接地抵抗を算出して、算出した区間接地抵抗や管対地電位等のデータを伝送路から中央管理装置6に送る。
【0012】
損傷発生時にセンサユニット5a〜5nから入力する区間接地抵抗Rmは、損傷がないときの区間接地抵抗Rsと損傷抵抗Rdの並列合成抵抗になるとし、損傷抵抗Rdは下記(1)で求められる。
【0013】
【数1】
【0014】
この(1)式の区間接地抵抗Rm,Rsと損傷抵抗Rdの逆数であるコンダクタンスGm,Gsと損傷コンダクタンスGdに書き換えると下記(2)式になり、損傷コンダクタンスGdの変化により被覆鋼管3の損傷有無を評価することができる。
Gd=Gs−Gm (2)
【0015】
中央管理装置6は、センサユニット5a〜5nから入力する区間接地抵抗を基にして被覆鋼管3の各計測区間の損傷有無を評価するものであり、図2のブロック図に示すように、中央処理装置8と操作表示部9とデータ入力部10とデータ記憶部11と平均値演算部12と最適基準値選択部13と最適計測値選択部14と最適値記憶部15と損傷判定部16及び出力部17を有する。
【0016】
中央処理装置6は装置全体の処理を制御する。データ入力部10はセンサユニット5a〜5nから送られる区間接地抵抗等のデータを一定周期T、例えば10秒毎に入力する。データ記憶部11はデータ入力部10で入力した検知データを計測区間毎に記憶するとともに各種データを記憶する。
【0017】
平均値演算部12はデータ記憶部11に記憶した計測区間毎の接地抵抗の逆数であるコンダクタンスを移動平均して損傷有無を判定するデータを作成する。すなわち接地抵抗(コンダクタンス)の1日中や年間における変動やノイズの影響を小さくするため接地抵抗の逆数であるコンダクタンスの移動平均を下記(2)式で算出する。
【0018】
【数2】
【0019】
(1)式において、GmAはコンダクタンスの移動平均値、Giは時刻i(秒)に求めたコンダクタンス、jは最新時刻、nは移動平均データ個数、nTは移動平均時間である。この移動平均データ個数nは区間接地抵抗(コンダクタンス)の変動周期を考慮し、例えばn=10,20,50の短期移動平均と、例えばn=100,300の中期移動平均と、例えばn=600,1000の長期移動平均を計算し、短期移動平均データGmASを損傷の有無を評価する計測値、中期移動平均データGmAMと長期移動平均データGmALを損傷の有無を評価する基準値とする。
【0020】
最適基準値選択部13は、初期設定時及び再設定時に、模擬欠陥信号が入力したときの短期移動平均データGmASのいずれかを選択し、選択した短期移動平均データGmASと他の移動平均データの時系列データから損傷コンダクタンスの時系列データを作成し、作成した損傷コンダクタンスの時系列データにおける模擬欠陥の信号成分Sと模擬欠陥信号が入力していない定常時におけるノイズNとのSN比から基準値となる中期移動平均データGmAMと長期移動平均データGmALの最適データ平均個数を計測区間毎に選択する。最適計測値選択部14は選択された最適データ平均個数の基準値を使用して計測値である短期移動平均データGmASのデータ平均個数を変化させて模擬欠陥信号をオンにしたときの応答速度が最小となる短期移動平均データGmASの最適データ平均個数を計測区間毎に選択する。最適値記憶部15は基準値の最適データ平均個数と計測値の最適データ平均個数を計測区間毎に記憶する。
【0021】
損傷判定部16は、被覆鋼管3の損傷有無を評価するとき、計測区間毎に最適データ平均個数で移動平均した基準値と計測値により損傷コンダクタンスGdAを算出し、算出した損傷コンダクタンスGdAがあらかじめ設定した閾値を超えたとき、被覆鋼管3に損傷が生じたと判定する。出力部17は損傷判定部16の判定結果を警報装置等に出力する。
【0022】
この損傷監視装置1に被覆鋼管3の損傷を評価するための基準値と計測値の最適な移動平均データ個数を設定するときの処理を図3のフローチャートを参照して説明する。
【0023】
中央管理装置6のデータ入力部10はセンサユニット5a〜5nから送られる区間接地抵抗のデータを一定周期T、例えば10秒毎に一定時間例えば24時間入力する。この区間接地抵抗のデータを中央管理装置6で入力しているとき、各測定区間で被覆鋼管3に模擬欠陥を与え、模擬欠陥信号も入力する。中央処理装置8は入力した区間接地抵抗のデータを測定区間毎にデータ記憶部11に逐次記憶する(ステップS1)。平均値演算部12はデータ記憶部11に記憶した区間接地抵抗の逆数であるコンダクタンスの移動平均データを複数の移動平均データ個数n、例えばn=20,50,300,600,1200を使用して作成する(ステップS2)。この状態で中央処理装置8は最適基準値選択部13の処理を開始させる。最適基準値選択部13は、まず、計測値となる移動平均データ、例えば移動平均データ個数n=20の短期移動平均データGmASを選択する(ステップS3)。次に、選択した移動平均データ個数n=20の短期移動平均データGmASとn=50,300,600,1200の中期移動平均データGmAMと長期移動平均データGmALにより、(2)式で損傷コンダクタンスGdAを演算して、図4に示すように、異動平均データ個数n=50,300,600,1200毎の損傷コンダクタンスGdAの時系列データを作成する(ステップS4)。最適基準値選択部13は作成した損傷コンダクタンスGdAの時系列データから模擬欠陥の信号成分Sを算出し、図5に示すように、移動平均データ個数に対する損傷コンダクタンスGdAの信号成分Sの変化を算出する(ステップS5)。次に、最適基準値選択部13は、図6に示すように、模擬欠陥信号が入力していない定常時における損傷コンダクタンスGdAの時系列データの標準偏差σを計算し(ステップS6)、算出した標準偏差σの3倍である3σをノイズ成分Nとして選択する(ステップS7)。そして信号成分Sとノイズ成分Nから、図7に示すように、損傷コンダクタンスGdAのSN比を算出し(ステップS8)、算出したSN比があらかじめ設定された閾値、例えば2以上となる移動平均データ個数、例えば約210以上を基準値となる移動平均データ個数の最適値として選択する(ステップS9)。
【0024】
中央処理装置8は最適基準値選択部13で選択した基準値となる移動平均データ個数を最適値記憶部15に記憶すると最適計測値選択部14の処理を開始させる。最適計測値選択部14は、まず、SN比が閾値、例えば2より十分に大きい移動平均データ個数、例えば600を基準値の移動平均データ個数として選択し、他の移動平均データ個数を変化させたときの損傷コンダクタンスGdAの時系列データを作成する(ステップS10)。そして図8に示すように、作成した損傷コンダクタンスGdAの模擬欠陥信号が入力してから定常時における損傷コンダクタンスGdAの時系列データの標準偏差σに対して一定倍数、例えば6倍を超えるまでの時間を計測の応答時間とし、図9に示すように、基準値に移動平均データ個数600より小さい移動平均データ個数毎に算出する(ステップS11)。この算出した移動平均データ個数の中から計測の応答時間が最小になる移動平均データ個数、例えば50を計測値となる移動平均データ個数の最適値として選択する(ステップS12)。
【0025】
中央処理装置8は最適基準値選択部13と最適計測値選択部14の処理を計測区間毎に実行させ、選択した基準値と計測値の移動平均データ個数を計測区間毎に最適値記憶部15に記憶して被覆鋼管3の損傷を評価するための基準値と計測値の最適な移動平均データ個数の設定処理を終了する。
【0026】
中央管理装置6で被覆鋼管3の損傷を評価するときの処理を図10のフローチャートを参照して説明する。
【0027】
中央管理装置6のデータ入力部10はセンサユニット5a〜5nから送られる区間接地抵抗のデータを一定周期T、例えば10秒毎に一定時間例えば24時間入力して測定区間毎にデータ記憶部11に逐次記憶する(ステップS21)。損傷判定部16はデータ記憶部11に記憶した計測区間毎の区間接地抵抗の時系列データに対して計測区間毎に最適値記憶部15に記憶した基準値と計測値の移動平均データ個数を使用して接地抵抗の逆数であるコンダクタンスの移動平均データを作成する(ステップS22)。そして作成した基準値の移動平均データと計測値の移動平均データにより損傷コンダクタンスを作成し(ステップS23)、作成した計測値の損傷コンダクタンスと基準値の損傷コンダクタンスとの差があらかじめ定めた閾値を超えたか否により被覆鋼管3の損傷有無を評価する(ステップS25)。中央処理装置8はこの評価結果を操作表示部9に表示するとともに出力部17から出力する。
【0028】
このように基準値と計測値の移動平均データ個数を最適値に設定し、設定した移動平均データ個数により被覆鋼管3の損傷を評価する移動平均データを作成することにより、SN比と計測の応答時間を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明の損傷監視装置の構成を示すブロック図である。
【図2】中央管理装置の構成を示すブロック図である。
【図3】基準値と計測値の最適移動平均データ個数の選択処理を示すフローチャートである。
【図4】短期移動平均データ個数20の場合における損傷コンダクタンスの時系列信号を示す変化特性図である。
【図5】移動平均データ個数に対する損傷コンダクタンスの変化特性図である。
【図6】移動平均データ個数に対する定常時における損傷コンダクタンスの標準偏差の変化特性図である。
【図7】短期移動平均データ個数20の場合における損傷コンダクタンスのSN比の変化特性図である。
【図8】欠陥を計測するときの応答時間を示す応答コンダクタンスの変化特性図である。
【図9】移動平均データ個数に対する応答時間の変化特性図である。
【図10】欠陥有無の評価処理を示すフローチャートである。
【図11】異なる移動平均データ個数で移動平均した接地抵抗の時系列データを示す変化特性図である。
【符号の説明】
【0030】
1;損傷監視装置、2;地中、3;被覆鋼管、4;信号発生装置、
5;センサユニット、6;中央管理装置、7;電極、8;中央処理装置、
9;操作表示部、10;データ入力部、11;データ記憶部、
12;平均値演算部、13;最適基準値選択部、14;最適計測値選択部、
15;最適値記憶部、16;損傷判定部、17;出力部。
【技術分野】
【0001】
この発明は、地中に埋設された被覆鋼管の損傷評価データの処理方法及び損傷監視装置、特に損傷検出精度と計測の応答速度の向上に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地中に埋設された被覆鋼管は鋼自体の腐食を防ぐため、外面を被覆して土壌と絶縁している。この被覆鋼管の被覆が例えば土木工事等で掘削機械等に接触して傷が付くと、鋼自体が土壌と接触して腐食する可能性がある。この鋼自体に腐食が生じることを防止するため地中に埋設された被覆鋼管の被覆に対する損傷の状態を常時監視することが必要である。
【0003】
この埋設された被覆鋼管の損傷の有無を監視する方法として、例えば特許文献1に示すように、交流電源により被覆鋼管に設けた基準点から被覆鋼管に一定の信号電流を流し、被覆鋼管の異なる2地点において被覆鋼管の対地電位である管対地電位を測定し、被覆鋼管の2地点間の電位差を利用し、電圧降下法により各地点毎に被覆鋼管に流れる管内電流を測定し、測定した2地点の管対地電位と電流値とにより被覆鋼管の2地点間の接地抵抗を演算し、この接地抵抗がある基準値より大きいときに、その2地点間の被覆に損傷があると判定している。そして被覆鋼管を管路に沿って多数の区間を設け、区間毎に接地抵抗を求め、区間接地抵抗や区間接地抵抗の逆数であるコンダクタンスの変化を基に被覆鋼管の被覆損傷の有無を判定し、損傷が生じた区間を特定するようにしている。
【0004】
前記のように被覆鋼管の各区間の接地抵抗(コンダクタンス)を求めるとき、接地抵抗は気候等により1日内や年間で変動する。また、接地抵抗を求めるために測定した管対地電位や管内電流に含まれるノイズによる接地抵抗の変化を埋設鋼管の損傷発生と誤認するおそれがある。この接地抵抗の変動やノイズによる損傷の誤検出を防止するため、特許文献2に示すように、測定した時系列データを移動平均し、移動平均したデータの現時点と過去の時点の値を比較して測定データの変化を検出している。
【特許文献1】特開平9−189505号公報
【特許文献2】特開平9−33474号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に示すように、例えば接地抵抗の時系列データを移動平均しても、移動平均データ個数により、図11に示すように、移動平均した時系列データは大きく異なる。図11において、Aは移動平均データ個数が10の場合、Bは移動平均データ個数が50の場合、Cは移動平均データ個数が300の場合、Dは移動平均データ個数が600の場合、Eは移動平均データ個数が1200の場合の時系列データを示す。この移動平均データ個数を適切に選択しないとSN比が悪くなるとともに、損傷を迅速に検出することができなくなってしまう。
【0006】
この発明は、このような短所を改善し、被覆鋼管の被覆損傷有無の検出精度と計測の応答速度を向上することができる被覆鋼管の損傷評価データの処理方法及び塗覆装損傷監視装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明における被覆鋼管の損傷評価データの処理方法は、被覆鋼管の損傷有無を検知する検知対象区間毎に設けられたセンサユニットから区間接地抵抗を入力して記憶するデータ入力工程と、入力した計測区間毎の接地抵抗の逆数であるコンダクタンスを移動平均して損傷有無を判定する短期、中期、長期移動平均データの時系列データを作成する移動平均工程と、初期設定時及び再設定時に、模擬欠陥信号が入力したときの短期移動平均データのいずれかを選択し、選択した短期移動平均データと他の移動平均データの時系列データから損傷コンダクタンスの時系列データを作成し、作成した損傷コンダクタンスの時系列データにおける模擬欠陥の信号成分と模擬欠陥信号が入力していない定常時におけるノイズとのSN比から基準値となる移動平均データの最適データ平均個数を計測区間毎に選択する最適基準値選択工程と、選択された最適データ平均個数の基準値を使用して計測値である短期移動平均データのデータ平均個数を変化させて模擬欠陥信号が入力したときの応答速度が最小となる短期移動平均データの最適データ平均個数を計測区間毎に選択する最適計測値選択工程と、被覆鋼管の損傷を評価するとき、計測区間毎に最適データ平均個数で移動平均した基準値と計測値により損傷コンダクタンスの時系列データを作成し、作成した計測値の損傷コンダクタンスと基準値の損傷コンダクタンスとの差があらかじめ定めた閾値を超えたか否により被覆鋼管の損傷有無を評価する損傷判定工程とを有することを特徴とする。
【0008】
この発明の被覆鋼管の損傷監視装置は、信号発生装置と複数のセンサユニット及び中央管理装置を有し、信号発生装置は、地中に埋設された被覆鋼管の検知対象区間の基準位置で地中に埋設された電極と被覆鋼管の管本体に接続され、監視信号を電極と管本体との間に印加し、複数のセンサユニットは、それぞれ被覆鋼管の配管ラインに沿って所定計測区間をおいて設けられ、被覆鋼管の管対地電位と管内電流を検出し、検出した管対地電位と管内電流により区間接地抵抗を算出して中央管理装置に送り、中央管理装置はデータ入力部とデータ記憶部と平均値演算部と最適基準値選択部と最適計測値選択部と最適値記憶部及び損傷判定部を有し、データ入力部は、各センサユニットから各種データを入力し、データ記憶部は、入力した各種データ及び処理データを記憶し、平均値演算部は、入力した計測区間毎の接地抵抗の逆数であるコンダクタンスを移動平均して損傷有無を判定する短期、中期、長期移動平均データの時系列データを作成し、最適基準値選択部は、初期設定時及び再設定時に、模擬欠陥信号が入力したときの短期移動平均データのいずれかを選択し、選択した短期移動平均データと他の移動平均データの時系列データから損傷コンダクタンスの時系列データを作成し、作成した損傷コンダクタンスの時系列データにおける模擬欠陥の信号成分と模擬欠陥信号が入力していない定常時におけるノイズとのSN比から基準値となる移動平均データの最適データ平均個数を計測区間毎に選択し、最適計測値選択部は、選択された最適データ平均個数の基準値を使用して計測値である短期移動平均データのデータ平均個数を変化させて模擬欠陥信号が入力したときの応答速度が最小となる短期移動平均データの最適データ平均個数を計測区間毎に選択し、最適値記憶部は、選択した基準値と計測値の最適データ平均個数を計測区間毎に記憶し、損傷判定部は、被覆鋼管の損傷有無を評価するとき、計測区間毎に最適データ平均個数で移動平均した基準値と計測値により損傷コンダクタンスの時系列データを作成し、作成した計測値の損傷コンダクタンスと基準値の損傷コンダクタンスとの差があらかじめ定めた閾値を超えたか否により被覆鋼管の損傷有無を評価することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明は、被覆鋼管の計測区間毎に基準値と計測値の移動平均データ個数を最適値に設定し、設定した移動平均データ個数により被覆鋼管の損傷を評価する移動平均データを作成するから、被覆鋼管の損傷を評価するときのSN比と計測の応答時間を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1はこの発明の損傷監視装置の構成を示すブロック図である。図に示すように、損傷監視装置1は地中2に埋設された被覆鋼管3の被覆損傷有無を評価するものであり、信号発生装置4と複数のセンサユニット5a〜5n及び中央管理装置6を有する。この損傷監視装置1で被覆鋼管3の損傷有無を検知する検知対象区間は、適当な間隔をおいて設けた複数の検出地点Ta〜Tnにより複数の測定区間に分割され、各検出地点Ta〜Tnに、被覆鋼管3の管本体に接続された計測線を有するターミナルを立ち上げている。
【0011】
信号発生装置4は、検知対象区間の基準位置Pで地中2に埋設された電極7と被覆鋼管3の管本体に接続され、監視信号を電極7と管本体との間に印加する。センサユニット5a〜5nは、それぞれ各検出地点Ta〜Tnに設けられ、被覆鋼管3の対地電位を示す管対地電位と隣接する検出地点間における被覆鋼管3の電位差を検出する。そして検出した電位差と被覆鋼管3の導体抵抗から隣接する検出地点間に流れる管内電流を演算し、管対地電位と管内電流により区間接地抵抗を算出して、算出した区間接地抵抗や管対地電位等のデータを伝送路から中央管理装置6に送る。
【0012】
損傷発生時にセンサユニット5a〜5nから入力する区間接地抵抗Rmは、損傷がないときの区間接地抵抗Rsと損傷抵抗Rdの並列合成抵抗になるとし、損傷抵抗Rdは下記(1)で求められる。
【0013】
【数1】
【0014】
この(1)式の区間接地抵抗Rm,Rsと損傷抵抗Rdの逆数であるコンダクタンスGm,Gsと損傷コンダクタンスGdに書き換えると下記(2)式になり、損傷コンダクタンスGdの変化により被覆鋼管3の損傷有無を評価することができる。
Gd=Gs−Gm (2)
【0015】
中央管理装置6は、センサユニット5a〜5nから入力する区間接地抵抗を基にして被覆鋼管3の各計測区間の損傷有無を評価するものであり、図2のブロック図に示すように、中央処理装置8と操作表示部9とデータ入力部10とデータ記憶部11と平均値演算部12と最適基準値選択部13と最適計測値選択部14と最適値記憶部15と損傷判定部16及び出力部17を有する。
【0016】
中央処理装置6は装置全体の処理を制御する。データ入力部10はセンサユニット5a〜5nから送られる区間接地抵抗等のデータを一定周期T、例えば10秒毎に入力する。データ記憶部11はデータ入力部10で入力した検知データを計測区間毎に記憶するとともに各種データを記憶する。
【0017】
平均値演算部12はデータ記憶部11に記憶した計測区間毎の接地抵抗の逆数であるコンダクタンスを移動平均して損傷有無を判定するデータを作成する。すなわち接地抵抗(コンダクタンス)の1日中や年間における変動やノイズの影響を小さくするため接地抵抗の逆数であるコンダクタンスの移動平均を下記(2)式で算出する。
【0018】
【数2】
【0019】
(1)式において、GmAはコンダクタンスの移動平均値、Giは時刻i(秒)に求めたコンダクタンス、jは最新時刻、nは移動平均データ個数、nTは移動平均時間である。この移動平均データ個数nは区間接地抵抗(コンダクタンス)の変動周期を考慮し、例えばn=10,20,50の短期移動平均と、例えばn=100,300の中期移動平均と、例えばn=600,1000の長期移動平均を計算し、短期移動平均データGmASを損傷の有無を評価する計測値、中期移動平均データGmAMと長期移動平均データGmALを損傷の有無を評価する基準値とする。
【0020】
最適基準値選択部13は、初期設定時及び再設定時に、模擬欠陥信号が入力したときの短期移動平均データGmASのいずれかを選択し、選択した短期移動平均データGmASと他の移動平均データの時系列データから損傷コンダクタンスの時系列データを作成し、作成した損傷コンダクタンスの時系列データにおける模擬欠陥の信号成分Sと模擬欠陥信号が入力していない定常時におけるノイズNとのSN比から基準値となる中期移動平均データGmAMと長期移動平均データGmALの最適データ平均個数を計測区間毎に選択する。最適計測値選択部14は選択された最適データ平均個数の基準値を使用して計測値である短期移動平均データGmASのデータ平均個数を変化させて模擬欠陥信号をオンにしたときの応答速度が最小となる短期移動平均データGmASの最適データ平均個数を計測区間毎に選択する。最適値記憶部15は基準値の最適データ平均個数と計測値の最適データ平均個数を計測区間毎に記憶する。
【0021】
損傷判定部16は、被覆鋼管3の損傷有無を評価するとき、計測区間毎に最適データ平均個数で移動平均した基準値と計測値により損傷コンダクタンスGdAを算出し、算出した損傷コンダクタンスGdAがあらかじめ設定した閾値を超えたとき、被覆鋼管3に損傷が生じたと判定する。出力部17は損傷判定部16の判定結果を警報装置等に出力する。
【0022】
この損傷監視装置1に被覆鋼管3の損傷を評価するための基準値と計測値の最適な移動平均データ個数を設定するときの処理を図3のフローチャートを参照して説明する。
【0023】
中央管理装置6のデータ入力部10はセンサユニット5a〜5nから送られる区間接地抵抗のデータを一定周期T、例えば10秒毎に一定時間例えば24時間入力する。この区間接地抵抗のデータを中央管理装置6で入力しているとき、各測定区間で被覆鋼管3に模擬欠陥を与え、模擬欠陥信号も入力する。中央処理装置8は入力した区間接地抵抗のデータを測定区間毎にデータ記憶部11に逐次記憶する(ステップS1)。平均値演算部12はデータ記憶部11に記憶した区間接地抵抗の逆数であるコンダクタンスの移動平均データを複数の移動平均データ個数n、例えばn=20,50,300,600,1200を使用して作成する(ステップS2)。この状態で中央処理装置8は最適基準値選択部13の処理を開始させる。最適基準値選択部13は、まず、計測値となる移動平均データ、例えば移動平均データ個数n=20の短期移動平均データGmASを選択する(ステップS3)。次に、選択した移動平均データ個数n=20の短期移動平均データGmASとn=50,300,600,1200の中期移動平均データGmAMと長期移動平均データGmALにより、(2)式で損傷コンダクタンスGdAを演算して、図4に示すように、異動平均データ個数n=50,300,600,1200毎の損傷コンダクタンスGdAの時系列データを作成する(ステップS4)。最適基準値選択部13は作成した損傷コンダクタンスGdAの時系列データから模擬欠陥の信号成分Sを算出し、図5に示すように、移動平均データ個数に対する損傷コンダクタンスGdAの信号成分Sの変化を算出する(ステップS5)。次に、最適基準値選択部13は、図6に示すように、模擬欠陥信号が入力していない定常時における損傷コンダクタンスGdAの時系列データの標準偏差σを計算し(ステップS6)、算出した標準偏差σの3倍である3σをノイズ成分Nとして選択する(ステップS7)。そして信号成分Sとノイズ成分Nから、図7に示すように、損傷コンダクタンスGdAのSN比を算出し(ステップS8)、算出したSN比があらかじめ設定された閾値、例えば2以上となる移動平均データ個数、例えば約210以上を基準値となる移動平均データ個数の最適値として選択する(ステップS9)。
【0024】
中央処理装置8は最適基準値選択部13で選択した基準値となる移動平均データ個数を最適値記憶部15に記憶すると最適計測値選択部14の処理を開始させる。最適計測値選択部14は、まず、SN比が閾値、例えば2より十分に大きい移動平均データ個数、例えば600を基準値の移動平均データ個数として選択し、他の移動平均データ個数を変化させたときの損傷コンダクタンスGdAの時系列データを作成する(ステップS10)。そして図8に示すように、作成した損傷コンダクタンスGdAの模擬欠陥信号が入力してから定常時における損傷コンダクタンスGdAの時系列データの標準偏差σに対して一定倍数、例えば6倍を超えるまでの時間を計測の応答時間とし、図9に示すように、基準値に移動平均データ個数600より小さい移動平均データ個数毎に算出する(ステップS11)。この算出した移動平均データ個数の中から計測の応答時間が最小になる移動平均データ個数、例えば50を計測値となる移動平均データ個数の最適値として選択する(ステップS12)。
【0025】
中央処理装置8は最適基準値選択部13と最適計測値選択部14の処理を計測区間毎に実行させ、選択した基準値と計測値の移動平均データ個数を計測区間毎に最適値記憶部15に記憶して被覆鋼管3の損傷を評価するための基準値と計測値の最適な移動平均データ個数の設定処理を終了する。
【0026】
中央管理装置6で被覆鋼管3の損傷を評価するときの処理を図10のフローチャートを参照して説明する。
【0027】
中央管理装置6のデータ入力部10はセンサユニット5a〜5nから送られる区間接地抵抗のデータを一定周期T、例えば10秒毎に一定時間例えば24時間入力して測定区間毎にデータ記憶部11に逐次記憶する(ステップS21)。損傷判定部16はデータ記憶部11に記憶した計測区間毎の区間接地抵抗の時系列データに対して計測区間毎に最適値記憶部15に記憶した基準値と計測値の移動平均データ個数を使用して接地抵抗の逆数であるコンダクタンスの移動平均データを作成する(ステップS22)。そして作成した基準値の移動平均データと計測値の移動平均データにより損傷コンダクタンスを作成し(ステップS23)、作成した計測値の損傷コンダクタンスと基準値の損傷コンダクタンスとの差があらかじめ定めた閾値を超えたか否により被覆鋼管3の損傷有無を評価する(ステップS25)。中央処理装置8はこの評価結果を操作表示部9に表示するとともに出力部17から出力する。
【0028】
このように基準値と計測値の移動平均データ個数を最適値に設定し、設定した移動平均データ個数により被覆鋼管3の損傷を評価する移動平均データを作成することにより、SN比と計測の応答時間を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明の損傷監視装置の構成を示すブロック図である。
【図2】中央管理装置の構成を示すブロック図である。
【図3】基準値と計測値の最適移動平均データ個数の選択処理を示すフローチャートである。
【図4】短期移動平均データ個数20の場合における損傷コンダクタンスの時系列信号を示す変化特性図である。
【図5】移動平均データ個数に対する損傷コンダクタンスの変化特性図である。
【図6】移動平均データ個数に対する定常時における損傷コンダクタンスの標準偏差の変化特性図である。
【図7】短期移動平均データ個数20の場合における損傷コンダクタンスのSN比の変化特性図である。
【図8】欠陥を計測するときの応答時間を示す応答コンダクタンスの変化特性図である。
【図9】移動平均データ個数に対する応答時間の変化特性図である。
【図10】欠陥有無の評価処理を示すフローチャートである。
【図11】異なる移動平均データ個数で移動平均した接地抵抗の時系列データを示す変化特性図である。
【符号の説明】
【0030】
1;損傷監視装置、2;地中、3;被覆鋼管、4;信号発生装置、
5;センサユニット、6;中央管理装置、7;電極、8;中央処理装置、
9;操作表示部、10;データ入力部、11;データ記憶部、
12;平均値演算部、13;最適基準値選択部、14;最適計測値選択部、
15;最適値記憶部、16;損傷判定部、17;出力部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設された被覆鋼管の損傷有無を検知する検知対象区間毎に設けられたセンサユニットから区間接地抵抗を入力して記憶するデータ入力工程と、
入力した計測区間毎の接地抵抗の逆数であるコンダクタンスを移動平均して損傷有無を判定する短期、中期、長期移動平均データの時系列データを作成する移動平均工程と、
初期設定時及び再設定時に、模擬欠陥信号が入力したときの短期移動平均データのいずれかを選択し、選択した短期移動平均データと他の移動平均データの時系列データから損傷コンダクタンスの時系列データを作成し、作成した損傷コンダクタンスの時系列データにおける模擬欠陥の信号成分と模擬欠陥信号が入力していない定常時におけるノイズとのSN比から基準値となる移動平均データの最適データ平均個数を計測区間毎に選択する最適基準値選択工程と、
選択された最適データ平均個数の基準値を使用して計測値である短期移動平均データのデータ平均個数を変化させて模擬欠陥信号が入力したときの応答速度が最小となる短期移動平均データの最適データ平均個数を計測区間毎に選択する最適計測値選択工程と、
被覆鋼管の損傷を評価するとき、計測区間毎に最適データ平均個数で移動平均した基準値と計測値により損傷コンダクタンスの時系列データを作成し、作成した計測値の損傷コンダクタンスと基準値の損傷コンダクタンスとの差があらかじめ定めた閾値を超えたか否により被覆鋼管の損傷有無を評価する損傷判定工程とを有することを特徴とする被覆鋼管の損傷評価データの処理方法。
【請求項2】
信号発生装置と複数のセンサユニット及び中央管理装置を有し、
信号発生装置は、地中に埋設された被覆鋼管の検知対象区間の基準位置で地中に埋設された電極と被覆鋼管の管本体に接続され、監視信号を電極と管本体との間に印加し、
複数のセンサユニットは、それぞれ被覆鋼管の配管ラインに沿って所定計測区間をおいて設けられ、被覆鋼管の管対地電位と管内電流を検出し、検出した管対地電位と管内電流により区間接地抵抗を算出して中央管理装置に送り、
中央管理装置は、データ入力部とデータ記憶部と平均値演算部と最適基準値選択部と最適計測値選択部と最適値記憶部及び損傷判定部を有し、
データ入力部は、各センサユニットから各種データを入力し、
データ記憶部は、入力した各種データ及び処理データを記憶し、
平均値演算部は、入力した計測区間毎の接地抵抗の逆数であるコンダクタンスを移動平均して損傷有無を判定する短期、中期、長期移動平均データの時系列データを作成し、
最適基準値選択部は、初期設定時及び再設定時に、模擬欠陥信号が入力したときの短期移動平均データのいずれかを選択し、選択した短期移動平均データと他の移動平均データの時系列データから損傷コンダクタンスの時系列データを作成し、作成した損傷コンダクタンスの時系列データにおける模擬欠陥の信号成分と模擬欠陥信号が入力していない定常時におけるノイズとのSN比から基準値となる移動平均データの最適データ平均個数を計測区間毎に選択し、
最適計測値選択部は、選択された最適データ平均個数の基準値を使用して計測値である短期移動平均データのデータ平均個数を変化させて模擬欠陥信号が入力したときの応答速度が最小となる短期移動平均データの最適データ平均個数を計測区間毎に選択し、
最適値記憶部は、選択した基準値と計測値の最適データ平均個数を計測区間毎に記憶し、
損傷判定部は、被覆鋼管の損傷有無を評価するとき、計測区間毎に最適データ平均個数で移動平均した基準値と計測値により損傷コンダクタンスの時系列データを作成し、作成した計測値の損傷コンダクタンスと基準値の損傷コンダクタンスとの差があらかじめ定めた閾値を超えたか否により被覆鋼管の損傷有無を評価することを特徴とする損傷監視装置。
【請求項1】
地中に埋設された被覆鋼管の損傷有無を検知する検知対象区間毎に設けられたセンサユニットから区間接地抵抗を入力して記憶するデータ入力工程と、
入力した計測区間毎の接地抵抗の逆数であるコンダクタンスを移動平均して損傷有無を判定する短期、中期、長期移動平均データの時系列データを作成する移動平均工程と、
初期設定時及び再設定時に、模擬欠陥信号が入力したときの短期移動平均データのいずれかを選択し、選択した短期移動平均データと他の移動平均データの時系列データから損傷コンダクタンスの時系列データを作成し、作成した損傷コンダクタンスの時系列データにおける模擬欠陥の信号成分と模擬欠陥信号が入力していない定常時におけるノイズとのSN比から基準値となる移動平均データの最適データ平均個数を計測区間毎に選択する最適基準値選択工程と、
選択された最適データ平均個数の基準値を使用して計測値である短期移動平均データのデータ平均個数を変化させて模擬欠陥信号が入力したときの応答速度が最小となる短期移動平均データの最適データ平均個数を計測区間毎に選択する最適計測値選択工程と、
被覆鋼管の損傷を評価するとき、計測区間毎に最適データ平均個数で移動平均した基準値と計測値により損傷コンダクタンスの時系列データを作成し、作成した計測値の損傷コンダクタンスと基準値の損傷コンダクタンスとの差があらかじめ定めた閾値を超えたか否により被覆鋼管の損傷有無を評価する損傷判定工程とを有することを特徴とする被覆鋼管の損傷評価データの処理方法。
【請求項2】
信号発生装置と複数のセンサユニット及び中央管理装置を有し、
信号発生装置は、地中に埋設された被覆鋼管の検知対象区間の基準位置で地中に埋設された電極と被覆鋼管の管本体に接続され、監視信号を電極と管本体との間に印加し、
複数のセンサユニットは、それぞれ被覆鋼管の配管ラインに沿って所定計測区間をおいて設けられ、被覆鋼管の管対地電位と管内電流を検出し、検出した管対地電位と管内電流により区間接地抵抗を算出して中央管理装置に送り、
中央管理装置は、データ入力部とデータ記憶部と平均値演算部と最適基準値選択部と最適計測値選択部と最適値記憶部及び損傷判定部を有し、
データ入力部は、各センサユニットから各種データを入力し、
データ記憶部は、入力した各種データ及び処理データを記憶し、
平均値演算部は、入力した計測区間毎の接地抵抗の逆数であるコンダクタンスを移動平均して損傷有無を判定する短期、中期、長期移動平均データの時系列データを作成し、
最適基準値選択部は、初期設定時及び再設定時に、模擬欠陥信号が入力したときの短期移動平均データのいずれかを選択し、選択した短期移動平均データと他の移動平均データの時系列データから損傷コンダクタンスの時系列データを作成し、作成した損傷コンダクタンスの時系列データにおける模擬欠陥の信号成分と模擬欠陥信号が入力していない定常時におけるノイズとのSN比から基準値となる移動平均データの最適データ平均個数を計測区間毎に選択し、
最適計測値選択部は、選択された最適データ平均個数の基準値を使用して計測値である短期移動平均データのデータ平均個数を変化させて模擬欠陥信号が入力したときの応答速度が最小となる短期移動平均データの最適データ平均個数を計測区間毎に選択し、
最適値記憶部は、選択した基準値と計測値の最適データ平均個数を計測区間毎に記憶し、
損傷判定部は、被覆鋼管の損傷有無を評価するとき、計測区間毎に最適データ平均個数で移動平均した基準値と計測値により損傷コンダクタンスの時系列データを作成し、作成した計測値の損傷コンダクタンスと基準値の損傷コンダクタンスとの差があらかじめ定めた閾値を超えたか否により被覆鋼管の損傷有無を評価することを特徴とする損傷監視装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−250613(P2006−250613A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−65357(P2005−65357)
【出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【出願人】(000221834)東邦瓦斯株式会社 (440)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【出願人】(000231132)JFE工建株式会社 (54)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【出願人】(000221834)東邦瓦斯株式会社 (440)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【出願人】(000231132)JFE工建株式会社 (54)
【Fターム(参考)】
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