説明

被覆電線の端子接続部のインサート成形による保護方法

【課題】端子圧着後に、圧着付近部分に樹脂による保護を行った場合であっても、保護部分への異物の侵入を防止することができる被覆電線の端子接続部のインサート成形による保護方法を提供する。
【解決手段】端子が接続された被覆電線の端子接続部のインサート成形による保護方法において、前記端子接続部を金型内に導入する前に前記被覆電線の該端子接続部側とは反対の端部をアースする被覆電線の端子接続部のインサート成形による保護方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子が接続された被覆電線の端子接続部の樹脂による保護方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用ワイヤハーネス等に用いられる電線は、通常、両端に端子が接続され、これら端子はそれぞれ各種コネクタハウジングの端子収納室に収納されて、他のコネクタや端子接続箱、あるいは、各種機器と電気的に接続可能となっている。
【0003】
このような両端が端子に接続された電線(端子付電線)は被覆電線と端子とから次のようにして作製される。
【0004】
まず、被覆電線の一端の被覆部の除去(皮むき)して芯線の端部を露出させ、この露出した芯線端部を、端子に設けられた、かしめ部(電線接続部)に当接させ、ついで、特開平6−45047号公報などに記載された端子かしめ装置を用いてかしめ部を芯線端部を包むように変形させ、最終的にかしめ部により電線を圧接させて端子に電気的に接続させる。
【0005】
さらに、端子と電線とを接続した部分を防水のためにインサート成形等で部分的に樹脂により保護する(特開2001−167640公報(特許文献1))。
【0006】
このとき、加工後の目視による品質確認時に、樹脂で保護された部分に異物(微細なごみ)が付着していることがしばしば確認され、品質管理上問題となっていた。特に、糸ごみのような微細な繊維である場合、保護された部分の防水性能を損なっている可能性があり、防水信頼性を著しく低下させる恐れがある。そして、いわゆる3S活動、すなわち、整理、整頓、及び、清掃の行き届いた作業環境であっても、このような問題を完全に防止することはできなかった。
【0007】
ここで、クリーンルーム内で作業を行えば問題は解決するが、クリーンルームの作製は大幅なコストアップを引き起こす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−167640公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記した従来の問題点を改善する、すなわち、樹脂による保護部分への異物の侵入を防止することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の被覆電線の端子接続部のインサート成形による保護方法は上記課題を解決するため、請求項1に記載の通り、端子が接続された被覆電線の端子接続部のインサート成形による保護方法において、前記端子接続部を金型内に導入する前に前記被覆電線の該端子接続部側とは反対の端部をアースすることを特徴とする、被覆電線の端子接続部のインサート成形による保護方法である。
【0011】
また、本発明の被覆電線の端子接続部のインサート成形による保護方法は請求項2に記載の通り、請求項1に記載の被覆電線の端子接続部のインサート成形による保護方法において、前記反対の端部のアース接続をインサート成形が終了するまで継続することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の被覆電線の端子接続部のインサート成形による保護方法によれば、圧着部分及びその周辺への異物の付着が未然に防止されるために、その後での防水目的等のために樹脂成形による保護を行った場合にもこれらの内部への異物の混入が防止されるので品質管理(外観検査)上の問題が解消されるとともに、これら保護による防水効果が確実に担保される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は本発明の電線への端子の圧着方法を説明するための、端子付近を示す図である。図1(a)端子を示すモデル図(側面図及び正面図)である。図1(b)端子1の電線固定片1b2に電線2の端部を配置した状態を示すモデル図(側面図及び正面図)である。図1(c)圧着作業が終了した状態を示すモデル図(側面図及び正面図)である。
【図2】図2は被覆電線の端子接続部のインサート成形を行う際に、前記被覆電線の該端子接続部側とは反対の端部をアースしている状態をモデル的に示した図である。
【図3】インサート成形により防水加工された端子接続部付近の状態を示すモデル図である。
【図4】端子接続部付近をインサート成形により防水加工する過程を示すモデル図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の電線への端子の圧着方法について、図面を用いて説明する。
図1(a)に端子1の側面図、上面図をそれぞれモデル的に示す。端子1には接続用孔1a1が設けられた接続板部1aと、圧着片1b1と電線固定片1b2とが設けられた電線圧着部1bと、が設けられている。
【0015】
このような端子1は例えば、特開平6−45047号公報で開示されているような端子かしめ装置の圧着用凹部と凸部とにセットされ、電線圧着部1bには図1(b)にモデル的に示すように、端部の被覆が除去されて芯線2aが露出された電線2の一方の端部が当接された状態で、圧着片1b1と電線固定片1b2とをかしめることにより端子1に電線2が圧着される。
【0016】
次いで図2にモデル的に示す成形装置3を用いて、図3に示す樹脂で保護された端子接続部におけるモールド樹脂部20を成形する。このとき、樹脂の保護される部分との密着性を向上させるために、プライマ処理を行っても良い。
【0017】
具体的に図4(a)に示すように型開きされた上金型10と下金型11との間、下金型の所定の位置に電線の一端が接続された端子をセットする。このとき、電線の他端1’を図2に示すように、成形装置3付近に設置された接地テーブル4に接触させてから端子をセットする。
【0018】
次いで図4(b)にモデル的に示すように型締めを行う。このとき電線2部分は上金型10に付属する(耐熱ゴムからなり弾性を有する)塞ぎ板12aと、下金型11に付属する(耐熱ゴムからなり弾性を有する)塞ぎ板12bとによって気密となるので、キャビティが形成され、次いで図4(c)に示されるようにランナ部分10aからモールド用の樹脂が射出されて、モールド樹脂部20が形成される。
【0019】
その後、モールド樹脂部20が成形された後、型開きされて樹脂で保護された端子接続部が型から取り出される。
【0020】
このようなアース処理により、成形作業中及びその前後での電線2及び端子1の対地電位が0となるために、端子1やその付近に異物の付着が防止されるので、モールド樹脂部20内部への異物の混入が防止されるので品質管理上の問題が解消されるとともに、これら保護による防水効果が確実に担保される。
【実施例】
【0021】
以下に本発明の電線への被覆電線の端子接続部のインサート成形による保護方法の実施例について具体的に説明する。
【0022】
自動車用ワイヤハーネス用途に用いるための、両端にそれぞれに端子を接続した電線(長さ3m)を製造した。電線(被覆電線)は銅芯線7本で断面積が2.5mm2、被覆層は酸化カルシウム配合の難燃性オレフィン系(いわゆる「ノンハロ」)樹脂組成物からなり、外径は2.8mmであるものを用いた。
【0023】
1ロット3本の電線について、両端に端子を圧着した。
まず、樹脂で保護する一端の端子接続部付近にオレフィン系のプライマ剤を塗布するプライマ処理を行った。
【0024】
次いで、上記でプライマ処理を行った端子接続部付近を図2に示す成形装置を用いて、モールド樹脂としてアドマー(透明)を用いて射出成形し、被覆電線の端子接続部のインサート成形による保護をおこなった。このとき、金型に電線が接続された端子をセットする際に、その電線の他端を図2に示すようにアースして行った。
【0025】
一方、上記同様に、ただし、接地テーブルによる接地を行わずに被覆電線の端子接続部のインサート成形による保護を行った電線では、1ロットにつき3本すべてについて異物(直径0.5mm程度)がスリーブ内に存在した。
【符号の説明】
【0026】
1 端子
1a 接続板部
1a1 接続用孔
1b 電線圧着部
1b1 圧着片
1b2 電線固定片
2 電線
2a 芯線
3 成形装置
4 接地テーブル
20 モールド樹脂部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子が接続された被覆電線の端子接続部のインサート成形による保護方法において、
前記端子接続部を金型内に導入する前に前記被覆電線の該端子接続部側とは反対の端部をアースすることを特徴とする、被覆電線の端子接続部のインサート成形による保護方法。
【請求項2】
前記反対の端部のアース接続をインサート成形が終了するまで継続することを特徴とする請求項1に記載の被覆電線の端子接続部のインサート成形による保護方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−84412(P2013−84412A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222807(P2011−222807)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】