説明

被踏部材および被踏部材の製造方法

【課題】 パッドの表面をパッドカバーで覆った被踏部材において、パッドカバーがパッドから浮き上がって操作フィーリングが悪化するのを防止する。
【解決手段】 アクセルペダル11の合成樹脂製のペダルパッド12の表面の一部が金属製のパッドカバー13のブリッジ部13e,13gにより覆われるを部分に、その表面から裏面に貫通する貫通孔12cを形成したので、ペダルパッド12にパッドカバー13を組み付ける際に、ペダルパッド12およびパッドカバー13のブリッジ部13e,13g間のエアーを前記貫通孔12cから逃がし、ペダルパッド12からのパッドカバー13の浮き上がらないようにして打音の発生を防止することができる。またパッドカバー13の周縁部にペダルパッド12の裏面側にカシメられるカシメ部11hを設けたので、ボルトやリベットを用いることなくペダルパッド12にパッドカバー13を固定することが可能となり、部品点数の削減および外観の向上を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者の足に当接するパッドと、前記パッドの表面少なくも一部を覆うパッドカバーとを備える被踏部材と、その被踏部材の製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用のアクセルペダルやブレーキペダル等のペダルを、合成樹脂(ゴム)製のペダル本体と、ペダル本体の表面の一部を覆うアルミ基板とで構成したものが、下記特許文献1により公知である。
【特許文献1】特開2006−236179号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、アクセルペダルのペダルパッドにパッドカバーを組み付けるとき、ペダルパッドの表面にパッドカバーの裏面を完全に密着させるのが困難であり、ペダルパッドおよびパッドカバー間に隙間が発生する場合があった。このようにペダルパッドおよびパッドカバー間に隙間が発生すると、運転者の足でアクセルペダルを踏んだときに、パッドカバーが撓んで打音が発生することがあり、操作フィーリングが低下する問題がある。
【0004】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、パッドの表面をパッドカバーで覆った被踏部材において、パッドカバーがパッドから浮き上がって足で踏んだ際のフィーリングが悪化するのを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、運転者の足に当接するパッドと、前記パッドの表面の少なくも一部を覆うパッドカバーとを備える被踏部材において、前記パッドが前記パッドカバーにより覆われる部分に、その表面から裏面に貫通する貫通孔を形成したことを特徴とする被踏部材が提案される。
【0006】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記パッドカバーの周縁部は、前記パッドの裏面側にカシメられるカシメ部を備えることを特徴とする被踏部材が提案される。
【0007】
また請求項3に記載された発明によれば、請求項2に記載の被踏部材の製造方法であって、前記パッドの表面に前記パッドカバーを重ね合わせる工程と、前記貫通孔を通して前記パッドカバーの裏面のエアーを吸引する工程と、前記パッドカバーの周縁部を前記パッドの裏面側にカシメて固定する工程とを備えることを特徴とする被踏部材の製造方法が提案される。
【0008】
尚、実施の形態のペダルパッド12およびフットレストパッド34は本発明のパッドに対応する。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の構成によれば、被踏部材のパッドがパッドカバーにより覆われる部分に、その表面から裏面に貫通する貫通孔を形成したので、パッドにパッドカバーを組み付ける際に、パッドおよびパッドカバー間のエアーをパッドに形成した貫通孔から逃がし、パッドからパッドカバーが浮き上がらないようにして打音の発生を防止し、足で踏んだ際のフィーリングの悪化を防止することができる。
【0010】
また請求項2の構成によれば、パッドカバーの周縁部にパッドの裏面側にカシメられるカシメ部を設けたので、ボルトやリベットを用いることなくパッドにパッドカバーを固定することが可能となり、部品点数の削減および外観の向上を図ることができる。
【0011】
また請求項3の構成によれば、パッドの表面にパッドカバーを重ね合わせ、パッドの貫通孔を通してパッドカバーの裏面のエアーを吸引し、パッドカバーの周縁部をパッドの裏面側にカシメて固定するので、パッドにパッドカバーを密着させた状態でパッドにパッドカバーを固定することができ、しかもボルトやリベットを用いることなくパッドにパッドカバーを固定して部品点数の削減および外観の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を添付の図面に基づいて説明する。
【0013】
図1〜図5は本発明の第1の実施の形態を示すもので、図1はアクセルペダルの表面を示す図、図2はアクセルペダルの裏面を示す図、図3は図1の2方向矢視図、図4はペダルパッドにパッドカバーを組み付ける工程の説明図、図5はペダルパッドおよびパッドカバー間の隙間に充填材を注入する工程の説明図である。
【0014】
図1〜図3に示すように、本発明の被踏部材である自動車のアクセルペダル11は合成樹脂製のペダルパッド12と、その表面の一部を覆うパッドカバー13とを備える。アクセルペダル11の下端は、フロア14に固定された支持部材15にヒンジ16を介して前後揺動可能に枢支される。ペダルパッド12の裏面上端に設けたブラケット17にピン18を介してリンク19が枢支されており、リンク19は図示せぬアクセル開度センサに接続される。
【0015】
パッドカバー13は、ペダルパッド12の上下左右の側面および表面外周部を覆う断面L字状の上枠部13aと、下枠部13bと、左枠部13cと、右枠部13dとを備えており、左枠部13cおよび右枠部13dを左右方向に連結する第1ブリッジ部13e、第2ブリッジ部13fおよび第3ブリッジ部13gがペダルパッド12の表面の一部を覆っている。第3ブリッジ部13gは下枠部13bにも連なっている。第1〜第3ブリッジ部13e〜13gの表面に対し、それら第1〜第3ブリッジ部13e〜13gに覆われないペダルパッド12の表面は若干高くなっており、第1、第2ブリッジ部13e,13fの間に露出するペダルパッド12の表面には3本の滑り止め用の溝12a…が形成される。
【0016】
ペダルパッド12の裏面の上下方向中間部および下部に、それぞれ左右一対合計4個のボス12b…が突設される。またボス部12b…の近傍であって、パッドカバー13の第1、第3ブリッジ部13e,13gの裏面に対応する部分に、それぞれ2個合計4個の貫通孔12c…が形成される。パッドカバー13の左枠部13cおよび右枠部13dから、それぞれ2個合計4個のカシメ部13h…が突設され、それらのカシメ部13h…に開口13i…が形成される。
【0017】
次に、アクセルペダル11の組立手順を説明する。先ず、カシメ部13h…をカシメる前のパッドカバー13をペダルパッド12の表面側から嵌合させる。このとき、パッドカバー13の比較的に幅広の第1、第3ブリッジ部13e,13gの裏面とペダルパッド12の表面との間に空間ができる可能性があるが、第1、第3ブリッジ部13e,13gの裏面に対向するペダルパッド12に貫通孔12c…を形成したことにより、貫通孔12c…を通して前記エアーを外部に排出し、パッドカバー13をペダルパッド12に密着させて打音の発生を防止することができる。
【0018】
パッドカバー13をペダルパッド12に更に確実に密着させるべく、図4に示すようにパッドカバー13を仮組みしたペダルパッド12の裏面を治具20に装着すると、治具20に設けた4個の空気通路20a…が4個の貫通孔12c…に連通する。この状態で負圧源21により治具20の空気通路20a…および貫通孔12c…を空気を吸引することで、パッドカバー13をペダルパッド12に更に確実に密着させることができる。
【0019】
続いて、パッドカバー13の4個のカシメ部13h…をペダルパッド12の裏面側に折り曲げ、カシメ部13h…の開口13i…をペダルパッド12の裏面のボス部12b…に係止するとともに、ボス部12b…を熱カシメして開口13i…から抜けないように固定ことで、パッドカバー13をペダルパッド12に一体化する。このように、パッドカバー13の周縁部にペダルパッド12の裏面側にカシメられるカシメ部13h…を設けたので、リベットを用いることなくペダルパッド12にパッドカバー13を固定することが可能となり、部品点数の削減および外観の向上を図ることができる。
【0020】
更に、図5に示すように、ペダルパッド12の表面とパッドカバー12の第1、第3ブリッジ部13e,13gの裏面との間に.治具20の空気通路20a…および貫通孔12c…を介して前記隙間に充填材22を充填することで、アクセルペダル11の操作フィーリングの悪化および操作打音の発生を一層確実に防止することができる。
【0021】
図6〜図8は本発明の第2の実施の形態を示すもので、図6はフットレストの側面図、図7は図6の7方向矢視図、図8は図6の8−8線矢視図である。
【0022】
自動車のフロアパネル31に設けたベース部材32の上面に、本発明の被踏部材であるフットレスト33が固定される。フットレスト33は、合成樹脂製のフットレストパッド34と、その表面の一部を覆うパッドカバー35とを備える。フットレスト33は、そのフットレストパッド34の裏面に設けた2個のクリップ36,36でベース部材32の上面に固定される。
【0023】
パッドカバー35は、フットレストパッド34の上下左右の側面および表面外周部を覆う断面L字状の上枠部35aと、下枠部35bと、左枠部35cと、右枠部35dとを備えており、左枠部35cおよび右枠部35dを左右方向に連結する第1ブリッジ部35e、第2ブリッジ部35fおよび第3ブリッジ部35gがフットレストパッド34の表面の一部を覆っている。第3ブリッジ部35gは下枠部35bにも連なっている。第1〜第3ブリッジ部35e〜35gの表面に対し、それら第1〜第3ブリッジ部35e〜35gに覆われないフットレストパッド34の表面は若干高くなっており、上枠部35a、第1ブリッジ部35eおよび第2ブリッジ部35fの間に露出するフットレストパッド34の表面には複数本の滑り止め用の溝34a…が形成される。
【0024】
パッドカバー35の第1ブリッジ部35eの裏面に対応する部分に、2個の貫通孔34c,34cが形成される。パッドカバー35の上枠部35a、下枠部35b、左枠部35cおよび右枠部35dから合計7個のカシメ部35h…が突設されており、それらのカシメ部35h…をフットレストパッド34の裏面側に折り曲げることで、パッドカバー25がフットレストパッド34に一体化される。
【0025】
パッドカバー25をフットレストパッド34に組付ける際に、フットレストパッド34の貫通孔34c,34cから空気を吸引し、また前記貫通孔34c,34cから充填材22を充填してパッドカバー35をフットレストパッド34に確実に密着させることは、第1の実施の形態と同じである。
【0026】
この第2の実施の形態によっても、第1の実施の形態と同様に、フットレスト33を踏んだ際のフィーリングを向上し、かつ打音の発生を確実に防止することができる。
【0027】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0028】
例えば、実施の形態ではアクセルペダル11およびフットレスト33について説明したが、本発明はブレーキペダルに対しても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】第1の実施の形態に係るアクセルペダルの表面を示す図
【図2】アクセルペダルの裏面を示す図
【図3】図1の2方向矢視図
【図4】ペダルパッドにパッドカバーを組み付ける工程の説明図
【図5】ペダルパッドおよびパッドカバー間の隙間に充填材を注入する工程の説明図
【図6】第2の実施の形態に係るフットレストの側面図
【図7】図6の7方向矢視図
【図8】図6の8−8線矢視図
【符号の説明】
【0030】
12 ペダルパッド(パッド)
12c 貫通孔
13 パッドカバー
13h カシメ部
34 フットレストパッド(パッド)
34c 貫通孔
35 パッドカバー
35h カシメ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者の足に当接するパッド(12,34)と、前記パッド(12,34)の表面の少なくも一部を覆うパッドカバー(13,35)とを備える被踏部材において、
前記パッド(12,34)が前記パッドカバー(13,35)により覆われる部分に、その表面から裏面に貫通する貫通孔(12c,34c)を形成したことを特徴とする被踏部材。
【請求項2】
前記パッドカバー(13,35)の周縁部は、前記パッド(12,34)の裏面側にカシメられるカシメ部(13h,35h)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の被踏部材。
【請求項3】
請求項2に記載の被踏部材の製造方法であって、
前記パッド(12,34)の表面に前記パッドカバー(13,35)を重ね合わせる工程と、
前記貫通孔(12c,34c)を通して前記パッドカバー(13,35)の裏面のエアーを吸引する工程と、
前記パッドカバー(13,35)の周縁部を前記パッド(12,34)の裏面側にカシメて固定する工程と、
を備えることを特徴とする被踏部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−282956(P2009−282956A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−334396(P2008−334396)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】