説明

装着式動作補助装置及びその制御方法及びプログラム

【課題】本発明は装着者に装着される動作補助装着具をスムーズに動作させることを課題とする。
【解決手段】装着者20が右足を動作させようとすると、ソケット部60に設けられた生体電位センサ110は右足大腿部22の皮膚表面から生体電位を検出する。随意的制御手段212は、制御信号d1を生成し、駆動電流生成手段220は、制御信号d1に基づいてモータ駆動電流eを生成して動作補助装着具30のモータユニット90に出力する。義足80の歩行動作に伴って各物理量センサで検出されたセンサ信号fが感覚フィードバック信号生成手段230に入力されると、感覚フィードバック信号gが感覚フィードバック信号変換手段140に出力される。そして、装着者20は、感覚フィードバック信号変換手段140からの信号(振動、スピーカ音、視覚)を感覚的(皮膚接触感覚、聴覚、視覚など)に認知して義足80の動作状態を判別することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は装着式動作補助装置及びその制御方法及びプログラムに係り、特に義肢を装着した装着者の動作を補助または代行するように駆動力を発生させる装着式動作補助装置及びその制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から腕や足などの4肢を失った障害者の場合、失った部分に義手または義足を装着して見かけ上4肢を有するようにしている。さらに、近年は、義手または義足に駆動手段を設けることにより、少しでも障害を受ける前と同じように通常の動作が行えるように動作補助装置の開発が進められている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載された動作補助装置は、膝から上の部分で切断された障害者に装着されるもので、大腿部の切断部分が挿入保持されるソケットと、ソケットの下部に関節部を介して前後方向に回動可能に連結された足部とを有し、足部にはソケットと足部との間で駆動力を発生する液圧シリンダが設けられている。そして、この装置においては、ソケットの内部に取り付けられた圧力センサにより前後方向の体重移動を検出し、この圧力センサからの検出信号に基づいて液圧シリンダに供給される液圧を制御するバルブの絞り具合を調整することで、足部を前後方向に回動させる駆動力を発生させている。
【0004】
また、上記のものとは別の構成として特許文献2に記載されたものもある。この特許文献2に記載された動作補助装置は、義肢装着者の身体に表面電極を取付け、表面電極で残存する筋肉の筋電信号を検出し、筋電信号増幅器で増幅した後フィルタに通すことにより、残存する筋肉の擬似張力を3層パーセプトロンに与える。そして、3層パーセプトロンによって残存する筋肉の擬似張力を制御に必要な筋肉の擬似張力に拡張し、さらに拡張された擬似張力に対応する運動軌道を予め設定された身体ダイナミカルシステムモデルにより推定し、電動義肢が推定された運動軌道に沿って動作するように制御信号を出力する。
【特許文献1】特開2001−218778号公報
【特許文献2】特開平7−31638号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1においては、装着者が歩行する場合の体重移動に伴う圧力センサの検出信号に基づいて液圧シリンダを駆動するため、装着者が足を前に出そうと重心を前方にかけることにより足部が駆動されることになり、液圧シリンダを駆動タイミングが僅かに遅れる。そのため、装着者は、正常な他方の足を義足の動作に合わせて歩行することになってしまい、両足の動きがスムーズでなく、自分の足と義足とが同じテンポで動作しないので、疲れるという問題があった。
【0006】
また、上記特許文献2においては、装着者の身体から筋電信号を検出し、筋肉の擬似張力に対応した身体ダイナミカルシステムモデルの電動義肢を動作させる構成であるので、装着者は予め設定された身体ダイナミカルシステムモデルに対応する動作パターンしか義肢を動作させることができず、義肢を設定されていない動作パターンで動かすことができないという問題があった。
そこで、本発明は上記事情に鑑み、装着者の意思に従った動力を発生させることで上記課題を解決した装着式動作補助装置及びその制御方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は以下のような手段を有する。
(1)本発明は、義肢が装着された装着者の動作を補助あるいは代行する装着式動作補助装置であって、
義肢が装着された装着者の動作を補助あるいは代行する装着式動作補助装置であって、
前記義肢に対して動力を付与する駆動手段を有した動作補助装着具と、
前記義肢の動作に関する物理量を検出する物理量センサと、
前記義肢の装着箇所の生体信号を検出する生体信号センサと、
前記義肢を動作させるための指令信号を、前記生体信号センサにより検出された生体信号から取得する生体信号処理手段と、
前記生体信号処理手段により取得された指令信号を用い、前記装着者の意思に従った動力を前記駆動手段に発生させるための随意的制御信号を生成する随意的制御手段と、
前記随意的制御手段により生成された随意的制御信号に基づいて、前記生体信号の信号に応じた駆動信号を生成し、前記駆動手段に供給する駆動信号生成手段と、
前記物理量センサにより検出された物理情報信号に基づいて感覚フィードバック信号を生成する感覚フィードバック信号生成手段と、
該感覚フィードバック信号生成手段で生成された感覚フィードバック信号を前記装着者に伝達する感覚伝達手段と、
を備えることにより、上記課題を解決するものである。
(2)本発明は、請求項1に記載の装着式動作補助装置であって、
前記感覚伝達手段は、前記装着者の聴覚または皮膚の触覚または視覚に前記感覚フィードバック信号を伝達することにより、上記課題を解決するものである。
(3)本発明は、請求項1に記載の装着式動作補助装置であって、
さらにタスクとして分類した装着者の動作パターンを構成する一連の最小動作単位(フェーズ)の各々の基準パラメータを格納したデータベースを備え、
前記随意的制御手段は、前記物理量センサにより検出された物理量と前記データベースに格納された基準パラメータとを比較することにより、前記装着者のタスクのフェーズを推定し、このフェーズに応じた動力を前記駆動手段に発生させるための随意的制御信号を生成することにより、上記課題を解決するものである。
(4)本発明は、義肢が装着された装着者の動作を補助あるいは代行する装着式動作補助装置であって、
義肢が装着された装着者の動作を補助あるいは代行する装着式動作補助装置であって、
前記義肢に対して動力を付与する駆動手段を有した動作補助装着具と、
前記義肢の装着箇所の生体信号を検出する生体信号センサと、
前記義肢の動作に関する物理量を検出する物理量センサと、
前記生体信号センサにより検出された生体信号を用い、前記装着者の意思に従った動力を前記駆動手段に発生させるための随意的制御信号を生成する随意的制御手段と、
タスクとして分類した装着者の動作パターンを構成する一連の最小動作単位(フェーズ)の各々の基準パラメータを格納したデータベースと、
前記物理量センサにより検出された物理量と前記データベースに格納された基準パラメータとを比較することにより、前記装着者のタスクのフェーズを推定し、このフェーズに応じた動力を前記駆動手段に発生させるための制御信号を生成する自律的制御手段と、
前記随意的制御手段からの随意的制御信号および前記自律的制御手段からの自律的制御信号を合成する制御信号合成手段と、
前記制御信号合成手段により合成された総制御信号に応じた総駆動信号を生成し、前記駆動手段に供給する駆動信号生成手段と、
前記物理量センサにより検出された物理情報信号に基づいて感覚フィードバック信号を生成する感覚フィードバック信号生成手段と、
該感覚フィードバック信号生成手段で生成された感覚フィードバック信号を前記装着者に伝達する感覚伝達手段と、
を備えることにより、上記課題を解決するものである。
(5)本発明は、請求項4に記載の装着式動作補助装置であって、
前記感覚伝達手段は、前記装着者の聴覚または皮膚の触覚または視覚に前記感覚フィードバック信号を伝達することにより、上記課題を解決するものである。
(6)本発明は、請求項4に記載の装着式動作補助装置において、
前記データベースは、前記随意的制御信号と前記自律的制御信号との比(ハイブリッド比)を、前記フェーズの基準パラメータと所要の対応関係となるように格納し、
前記制御信号合成手段は、前記自律的制御手段により推定されたタスクのフェーズに応じ、前記対応関係に基づいて規定されるハイブリッド比となるように、前記随意的制御信号および前記自律的制御信号を合成することにより、上記課題を解決するものである。
(7)本発明は、請求項4乃至6の何れかに記載の装着式動作補助装置であって、
前記義肢の装着箇所の指令信号を、前記生体信号センサにより検出された生体信号から取得する生体信号処理手段を備え、
前記駆動信号生成手段は、前記生体信号処理手段により取得された指令信号に応じて生成したパルス電流の供給により、前記駆動手段の動作を開始させることにより、上記課題を解決するものである。
(8)本発明は、請求項4に記載の装着式動作補助装置であって、
前記随意的制御手段は、前記物理量センサにより検出された物理量と前記データベースに格納された基準パラメータとを比較することにより、前記装着者のタスクのフェーズを推定し、このフェーズに応じた動力を前記駆動手段に発生させるための制御信号を生成することにより、上記課題を解決するものである。
(9)本発明は、義肢が装着された装着者の動作を補助あるいは代行する装着式動作補助装置であって、
前記義肢に対して動力を付与する駆動手段を有した動作補助装着具と、
前記義肢の装着箇所の動作に関する物理量を検出する物理量センサと、
タスクとして分類した装着者の動作パターンを構成する一連の最小動作単位(フェーズ)の各々の基準パラメータを格納したデータベースと、
前記物理量センサにより検出された物理量と前記データベースに格納された基準パラメータとを比較することにより、前記装着者のタスクのフェーズを推定し、このフェーズに応じた動力を前記駆動手段に発生させるための自律的制御信号を生成する自律的制御手段と、
前記自律的制御信号に応じた駆動信号を生成し、前記駆動手段に供給する駆動信号生成手段と、
前記物理量センサにより検出された物理情報信号に基づいて感覚フィードバック信号を生成する感覚フィードバック信号生成手段と、
該感覚フィードバック信号生成手段で生成された感覚フィードバック信号を前記装着者に伝達する感覚伝達手段と、
を備えることにより、上記課題を解決するものである。
(10) 本発明は、請求項9に記載の装着式動作補助装置であって、
前記感覚伝達手段は、前記装着者の聴覚または皮膚の触覚または視覚に前記感覚フィードバック信号を伝達することにより、上記課題を解決するものである。
(11)本発明は、請求項1乃至8の何れかに記載された装着式動作補助装置であって、
前記駆動手段から付与された負荷としての駆動力に対する生体信号を前記生体信号センサによって検出し、この検出信号に基づいて補正値を設定するキャリブレーション手段を備えることにより、上記課題を解決するものである。
(12)本発明は、請求項11に記載された装着式動作補助装置であって、
前記キャリブレーション手段は、
前記動作補助装着具が前記装着者に装着された状態で前記駆動源からの所定の駆動力を外的負荷として付与する負荷発生手段と、
該負荷発生手段により付与された駆動力に抗して発生した生体信号を前記生体信号センサによって検出し、この検出信号に基づいて前記駆動信号生成手段が行う演算処理のパラメータを生成し、このパラメータを当該装着者固有の補正値として設定する補正値設定手段と、
を備えることにより、上記課題を解決するものである。
(13)本発明は、請求項12に記載された装着式動作補助装置であって、
前記生体信号センサにより検出された前記生体信号と前記駆動手段を制御する制御信号との対応関係のデータが格納されたデータベースを有し、
前記補正値設定手段は、前記データベースに格納された制御信号を前記補正値に補正することにより、上記課題を解決するものである。
(14)本発明は、義肢に対して動力を付与する駆動手段を有した動作補助装着具の動作を制御する装着式動作補助装置の制御方法であって、
前記義肢を動作させるための指令信号を生体信号センサにより検出された生体信号から取得する手順と、
前記生体信号から取得された指令信号を用い、前記装着者の意思に従った動力を前記義肢の駆動手段に発生させるための随意的制御信号を生成する手順と、
前記随意的制御信号に基づいて、前記生体信号の信号に応じた駆動信号を生成し、前記駆動手段に供給する手順と、
前記義肢の装着箇所に設けられた物理量センサにより前記義肢の動作に関する物理量を検出する手順と、
前記物理量センサにより検出された物理情報信号に基づいて感覚フィードバック信号を生成する手順と、
前記感覚フィードバック信号を前記装着者に伝達する手順と、
を実行することにより、上記課題を解決するものである。
(15)本発明は、請求項14に記載の装着式動作補助装置の制御方法であって、
タスクとして分類した装着者の動作パターンを構成する一連の最小動作単位(フェーズ)の各々の基準パラメータをデータベースに格納する手順と、
前記物理量センサにより検出された物理量と前記データベースに格納された基準パラメータとを比較することにより、前記装着者のタスクのフェーズを推定し、このフェーズに応じた動力を前記駆動手段に発生させるための制御信号を生成する手順と、
をさらに有することにより、上記課題を解決するものである。
(16)本発明は、義肢に対して動力を付与する駆動手段を有した動作補助装着具の動作を制御する装着式動作補助装置の制御方法であって、
タスクとして分類した装着者の動作パターンを構成する一連の最小動作単位(フェーズ)の各々の基準パラメータをデータベースに格納する手順と、
前記義肢を動作させるための指令信号を生体信号センサにより検出された生体信号から取得する手順と、
前記生体信号から取得された指令信号を用い、前記装着者の意思に従った動力を前記駆動手段に発生させるための随意的制御信号を生成する手順と、
前記義肢の装着箇所の動作に関する物理量を検出する物理量センサにより検出された物理量と前記データベースに格納された基準パラメータとを比較することにより、前記装着者のタスクのフェーズを推定し、このフェーズに応じた動力を前記駆動手段に発生させるための自律的制御信号を生成する手順と、
前記随意的制御信号と前記自律的制御信号とを合成する手順と、
合成された総制御信号に応じた駆動信号を生成し、前記駆動手段に供給する手順と、
前記義肢の装着箇所に設けられた物理量センサにより前記義肢の動作に関する物理量を検出する手順と、
前記物理量センサにより検出された物理情報信号に基づいて感覚フィードバック信号を生成する手順と、
前記感覚フィードバック信号を前記装着者に伝達する手順と、
を実行することにより、上記課題を解決するものである。
(17)本発明は、請求項16に記載の装着式動作補助装置の制御方法であって、
前記物理量センサにより検出された物理量と前記データベースに格納された基準パラメータとを比較することにより、前記装着者のタスクのフェーズを推定し、このフェーズに応じた動力を前記駆動手段に発生させるための制御信号を生成することにより、上記課題を解決するものである。
(18)本発明は、義肢に対して動力を付与する駆動手段を有した動作補助装着具の動作を制御する装着式動作補助装置の制御方法であって、
前記義肢の装着箇所の動作に関する物理量を物理量センサにより検出する手順と、
タスクとして分類した装着者の動作パターンを構成する一連の最小動作単位(フェーズ)の各々の基準パラメータをデータベースに格納する手順と、
前記物理量センサにより検出された物理量と前記データベースに格納された基準パラメータとを比較することにより、前記装着者のタスクのフェーズを推定し、このフェーズに応じた動力を前記駆動手段に発生させるための自律的制御信号を生成する手順と、
前記自律的制御信号に応じた駆動信号を生成し、該駆動信号を前記駆動手段に供給する手順と、
前記義肢の装着箇所に設けられた物理量センサにより前記義肢の動作に関する物理量を検出する手順と、
前記物理量センサにより検出された物理情報信号に基づいて感覚フィードバック信号を生成する手順と、
前記感覚フィードバック信号を前記装着者に伝達する手順と、
を実行することにより、上記課題を解決するものである。
(19)本発明は、請求項14乃至18に記載された装着式動作補助装置の制御方法であって、
前記駆動手段から付与された負荷としての駆動力に対する生体信号を前記生体信号センサによって検出し、この検出信号に基づいて補正値を設定するキャリブレーション処理を実行することにより、上記課題を解決するものである。
(20)本発明は、請求項14乃至19の何れかに記載された制御方法を、装着式動作補助装置を制御するためのコンピュータに実行させることにより、上記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、感覚フィードバック信号を装着者に伝達することで装着者が義肢の状態を把握することができ、これにより、義肢を駆動する駆動手段を随意的に制御することができるため、装着者は、自分の意思で義肢を自由に動作させることが可能になり、義肢を身体の一部として操ることができ、義肢の動作遅れがなくなって自然な動作となるように義肢を駆動することができる。
【0009】
また、本発明によれば、義肢を駆動する駆動手段を随意的及び自律的に制御することにより駆動手段により発生する駆動力を装着者の意思に対応させると共に義肢と身体とに動作バランスを安定化してスムーズな動作を行なうことができる。
【0010】
また、本発明によれば、装着者から生体信号を検出することができない場合は、物理量センサにより検出された物理量とデータベースに格納された基準パラメータとを比較することにより、装着者のタスクのフェーズを推定し、このフェーズに応じた動力を駆動手段に発生させるため、義肢の動作をスムーズに行なうことが可能になる。
【0011】
さらに、本発明によれば、駆動力に対する生体信号センサの検出信号に基づいて補正値を設定するキャリブレーション処理により装着者の意思に沿ったアシスト力が駆動源から付与され、アシスト力が過大になったり、過小になったりせず、装着者の動作を安定的にアシストして装着式動作補助装置の信頼性をより高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は本発明による装着式動作補助装置の装着状態の一実施例を示す斜視図である。尚、図1においては、例えば4肢のうち右足の大腿部より下の部分を失った装着者20に動作補助装着具を装着する場合を例に挙げて説明する。
【0014】
図1に示されるように、装着式動作補助装置10は、片足を失った身体障害者の歩行動作(以下では、説明の便宜上、歩行動作を動作の一例として例示して説明する)を補助する装置であって、装着者20の切断された右足の大腿部22に装着される動作補助装着具30と、動作補助装着具30を制御する制御回路を有する制御ユニット40と、電源ユニット50とから構成されている。動作補助装着具30は、装着者20の切断された大腿部22に嵌合するソケット部60と、ソケット部60の下部に連結された膝関節部70と、膝関節部70の下方に連結された義足80と、義足80を駆動するモータユニット90(駆動手段)とを有する。尚、動作補助装着具30を装着した場合の歩行動作以外の動作としては、例えば、椅子に腰掛けた状態で足を組んだり、あるいは歩行とは関係なく本人の足と同じように義足80をふらふらと揺動したり、あるいは階段の昇り降り動作等も行える。
【0015】
制御ユニット40と電源ユニット50は、ウエストベルト100により装着者20の背面側、左右側面に保持されている。電源ユニット50は、複数の充電式バッテリ52を有し、他の予備バッテリと容易に交換することができるように保持されている。
モータユニット90は、DCサーボモータ(以下「モータ」という)を有しており、膝関節部70に設けられている。制御ユニット40は、後述するように操作者20の意思に基づいて生成される随意的制御信号、または随意的制御信号及び自律的制御信号を合成した制御信号を生成し、このように演算処理された制御信号に応じた電流(駆動信号)をモータユニット90に印加して義足80を歩行動作させる。義足80は、靴を履く足首より下の足部82と、膝関節部70と足部82との間を連結する下リム部84と有する。
【0016】
図2は動作補助装着具30と制御装置210Aとの関係を模式的に示す制御システムの概念図である。図2に示されるように、動作補助装着具30は、ソケット部60の内壁に装着者20の右足太腿部22から生体電位を検出する生体電位センサ(生体信号センサ)110と、義足80の足部82の裏に貼付されて装着者20の重心の変化に応じた床反力を検出する床反力センサ(物理量センサ)120と、義足80の下リム部84に作用する応力を検出する応力センサ(物理量センサ)130と、義足80の回動動作(回動角度)に応じた感覚フィードバック信号を装着者20に出力するための感覚フィードバック信号変換手段(感覚伝達手段)140とを有する。
【0017】
装着者20は、右足大腿部22より下が切断されているが、脳からの神経系統では右足があるものとして神経伝達信号を発生する。そのため、生体電位センサ110は、装着者20が右足大腿部22の皮膚表面に接触することにより、右足の筋肉を動作させようとする生化学反応で発生するイオン電流を検出する。従って、生体電位センサ110を取り付ける際は、右足大腿部22の皮膚表面のうち、より強い生体電位信号を検出しやすい位置に生体電位センサ110を設けるようにする。
【0018】
また、上記生体電位センサ110により検出される生体電位以外の生体信号としては、例えば、心臓の心拍数や心電図を得るため検出される心電位や脳波などがある。
【0019】
制御ユニット40の制御装置210Aは、演算処理を行なうコンピュータであり、予め複数の制御プログラムが格納されたメモリを有しており、メモリから制御プログラムを読み込むことにより後述する各制御処理を実行する。本実施例において、制御装置210Aは、生体電位センサ110により検出された生体電位から指令信号を取得する生体電位処理手段(生体信号処理手段)200と、神経伝達信号および筋電位信号に基づいて動作補助装着具30のモータユニット90の駆動を制御する随意的制御手段212と、随意的制御手段212から出力された制御信号に応じた駆動電流(駆動信号)をモータユニット90に印加する駆動電流生成手段(駆動信号生成手段)220と、床反力センサ120及び応力センサ130の検出信号に基づいて義足80の動作に応じた感覚フィードバック信号を生成して感覚フィードバック信号変換手段140に出力する感覚フィードバック信号生成手段230とを有する。尚、本実施例においては、モータ制御方式として駆動信号としてモータに供給される電流を制御する方式を例に挙げて説明する。
【0020】
随意的制御手段212は、後述するように、装着者20の意思により右足を動作させる際に生じる生体電位から神経伝達信号および筋電位信号を生成する生体電位処理手段200からの指令信号に基づいて制御信号を駆動電流生成手段220に出力する。駆動電流生成手段220は、随意的制御手段212からの制御信号に応じた駆動電流を生成してモータユニット90に出力する。
【0021】
また、義足80がモータユニット90の駆動力により歩行動作すると、床反力センサ120及び応力センサ130が義足80の動作に応じた検出信号を出力し、この検出信号は、A/D変換器240によりデジタル信号に変換されて感覚フィードバック信号生成手段230に入力される。
【0022】
図3は動作補助装着具30の構成を示す概略構成図である。図3に示されるように、動作補助装着具30のソケット部60は、切断された大腿部が挿入されるように縦断面がU字状に形成されており、有底円筒形状に形成されている。さらに、ソケット部60の内周面には、大腿部22の切断部分を包むように密着すると共に、大腿部22に対する衝撃を緩和するように弾性を有するクッション材により形成された弾性層62が設けられている。そして、弾性層62の内周面の前後方向の夫々には、大腿部22の皮膚表面に接触して筋電位信号を検出する生体電位センサ110が取り付けられている。
【0023】
生体電位センサ110は、装着者20が大腿部22を前後方向に動作させようとしたときに発生する生体電位を検出する電極である。尚、生体電位センサ110は、上記のようにソケット部60の内部に設けても良いが、装着者20の大腿部22に直接貼り付けるようにしても良い。
【0024】
さらに、弾性層62の内周面の前後方向の夫々には、大腿部22の皮膚表面に接触して感覚フィードバック信号を装着者20に伝達する感覚フィードバック信号変換手段140が設けられている。この感覚フィードバック信号変換手段140としては、義足80の動作に応じた周期の振動を発生する振動素子、または弱い電気的刺激を与える低周波電流素子などが用いられ、振動子の振動を間欠的に発生させてその周期によって装着者に感覚フィードバック信号を伝達するものである。また、感覚フィードバック信号変換手段140は、ソケット部60の内部に設けても良いし、あるいは、装着者20の皮膚表面に貼り付けて、装着者20が直接振動を皮膚で感知するようにしても良い。
【0025】
そのため、装着者20は、右足大腿部22の皮膚表面に感覚フィードバック信号変換手段140からの振動(感覚フィードバック信号)が方向動作の速度に応じた周期で発せられることにより、義足80の動作状態を感覚的に知ることが可能になる。
【0026】
感覚フィードバック信号変換手段140から装着者20に伝達される感覚フィードバック信号は、例えば、歩行速度がゆっくりであるときは、振動の周期が長く、歩行速度が速くなるに連れて振動の周期が短くなるようにしてある。そのため、装着者20は、動作補助装着具30による歩行速度を感覚フィードバック信号によって感覚的に感知することができ、正常な左足の歩行速度と切断された右足の動作補助装着具30による歩行速度とが同一速度となるように自らの意思で調整することが可能になる。
【0027】
また、装着者20が大腿部22の皮膚表面で振動を判別することが難しい場合は、スピーカを感覚フィードバック信号変換手段140として用いることもできる。この場合、装着者20は、イヤホンが装着された耳でスピーカの発信音(例えば、ピッ、ピッというビープ音)を聞くことにより、発信音の長さや周期(間隔)を聴覚的に認識することが可能になり、動作補助装着具30による歩行速度を耳から得られた感覚フィードバック信号によって感覚的に感知することができる。尚、イヤホンを使用することにより、装着者20のみが感覚フィードバック信号として発信音を聞くことができ、他の人に聞かれずに済む。
【0028】
また、装着者20が聴覚の機能が低下している場合は、発光ダイオード等の光源を感覚フィードバック信号変換手段140として用いることもできる。この場合、装着者20は、光源の点滅を見ることにより、点滅の点灯時間や点滅周期を視覚的に認識することが可能になり、動作補助装着具30による歩行速度を光りの点滅から得られた感覚フィードバック信号によって視覚的に判別することができる。
【0029】
ソケット部60の底部には、上リム部64が固定されており、上リム部64の下端が膝関節部70に連結されている。膝関節部70のモータユニット90は、図3中において破線で示すようにモータ92の駆動力を減速ギヤを介して義足80に伝達する構成であり、上リム部64に対して下リム84を前後方向に回動させるように取り付けられている。
【0030】
また、モータユニット90は、モータ92により発生したトルクTを検出するトルクセンサ(物理量センサ)94と、モータ92に駆動される膝関節部70の回転角θを検出する角度センサ(物理量センサ)96とを内蔵している。トルクセンサ94としては、回転駆動力を伝達する軸の歪みを検出する磁歪式トルクセンサ、あるいはモータ92の駆動側ギヤと負荷側ギヤの位相差を電磁的に検出する電磁式トルクセンサなどが用いられる。また、角度センサ96としては、ロータリエンコーダ、あるいはポテンショメータなどが用いられる。
【0031】
これらのトルクセンサ94及び角度センサ96により検出されたトルクT及び回転角θの検出信号は、前述した床反力センサ120及び応力センサ130の検出信号と共に、A/D変換器240によりデジタル信号に変換されて随意的制御手段212に入力される。
【0032】
義足80の下リム部84の前側及び後側に設けられた応力センサ130は、歪みゲージからなり、歩行動作に伴う体重移動によって下リム部84に生じる応力を検出する。また、義足80の足部82の裏面(下側)に設けられた床反力センサ120は、荷重に応じた電気信号を出力する圧電素子などからなり、歩行動作に伴う床面(または地面)から受ける反力に応じた検出信号を出力する。
【0033】
図4は実施例1の装着式動作補助装置の制御系の信号処理を示すシステム系統図である。尚、図4においては、図2示すA/D変換器240が省略されている。図4に示されるように、制御装置210Aは、生体電位処理手段200、随意的制御手段212、駆動電流生成手段220、感覚フィードバック信号生成手段230を有する。
生体電位センサ110は、大腿の内部で発生する生体電位信号aを検出して生体電位処理手段200に入力する。生体電位処理手段200は、生体電位信号aから神経伝達信号bおよび筋電位信号cを抽出して随意的制御手段212に入力する。随意的制御手段212は、装着者20の意思で動作補助ユニット30が装着された右足を動作させる際に生じる生体電位信号aから得られた神経伝達信号bおよび筋電位信号cに基づいて随意的制御信号d1を生成する。
【0034】
すなわち、随意的制御手段212は、生体電位信号aに含まれる神経伝達信号bおよび筋電位信号c(切断された右足大腿部22の状態によって検出レベルが低下して検出できない場合もある)を用い、装着者20の意思に従った動力をモータユニット90に発生させるための随意的制御信号d1を生成する。随意的制御手段212での制御則としては、比例制御を適用することができる。この比例制御により随意的制御信号d1と駆動電流eとが比例関係になる。さらに、モータユニット90の特性により駆動電流値とモータユニット90の発生トルク値とが比例関係になる。尚、随意的制御手段212での制御則としては、比例制御と微分制御および/または積分制御とを組み合わせたものを適用しても良い。
【0035】
例えば、装着者20が右足を動作させようとすると、ソケット部60の内周面に設けられた生体電位センサ110は右足大腿部22の皮膚表面から生体電位を検出し、検出された生体電位に応じた生体電位aを生体電位処理手段200に出力する。生体電位処理手段200では、生体電位信号aから神経伝達信号bと筋電位信号cとからなる指令信号を生成して随意的制御手段212に出力する。随意的制御手段212は、神経伝達信号bと筋電位信号cから制御信号d1を生成して駆動電流生成手段220に出力する。
【0036】
駆動電流生成手段220は、随意的制御手段212からの制御信号dに基づいてモータ駆動電流eを生成して動作補助装着具30のモータユニット90に出力する。モータユニット90の駆動力により義足80が膝関節部70を中心に前後方向に回動動作(歩行動作)する。義足80の歩行動作に伴って各物理量センサ(トルクセンサ94、角度センサ96、床反力センサ120、応力センサ130)で検出されたセンサ信号fが感覚フィードバック信号生成手段230に入力されると、感覚フィードバック信号gが感覚フィードバック信号変換手段140に出力される。
【0037】
そして、装着者20は、感覚フィードバック信号変換手段140からの信号(振動、スピーカ音、光りの点滅)を感覚的(皮膚接触感覚、聴覚、視覚など)に認知して義足80の動作状態を判別することが可能になる。
【0038】
これにより、装着者20は、義足80を自分の足と同じように動作させて歩行することが可能になり、動作補助装着具30が装着された右足と自分の左足とが同じ速度で交互にバランス良く前後方向に動作することになり、スムーズな歩行が可能になる。
【0039】
図5は生体電位信号から各制御信号を生成する過程を示す図である。図5に示されるように、生体電位センサ110により検出された生体電位信号aは、神経伝達信号bおよび筋電位信号cを有する。神経伝達信号bは意思伝達信号とも言えるもので、筋電位信号の先頭領域と重なっている。神経伝達信号bの周波数は,一般に筋電位信号cの周波数より高いので、異なるバンドパスフィルタを用いることにより分離することができる。
【0040】
神経伝達信号bは、生体電位信号aを増幅器202により増幅した後、例えば33Hz〜数KHzの高帯域バンドパスフィルタ204により取り出すことができる。また、筋電位信号cは、生体電位信号aを増幅器202により増幅した後、例えば33Hz〜500Hzの中帯域バンドパスフィルタ206により取り出すことができる。尚、図5において、各フィルタ204,206は並列に接続されているがこれに限定されず、両フィルタ204,206が直列に接続されていても良い。
【0041】
また、神経伝達信号bは、筋電位信号cの先頭領域のみならず、先頭領域以降についても重なる場合が有り得る。この場合には、神経伝達信号bの先頭領域のみを後述するパルス電流の生成に利用するようにすれば良い。
【0042】
神経伝達信号bおよび筋電位信号cには、スムージング処理を行う。各電流は、生体信号処理手段200からの信号をスムージングして得た制御信号を入力とし、駆動電流生成手段220によって生成される。
【0043】
神経伝達信号bは、時間軸上の幅が狭いので、スムージング処理だけでもパルス状となり、この神経伝達信号bに基づいて駆動電流生成手段220によって生成される電流もパルス状となる。尚、神経伝達信号bに基づいて得られる電流(パルス電流)e1は、矩形波状となる。一方、筋電位信号cは、時間軸上の幅が広いので、スムージング処理することにより実質的に筋電位に比例する山状となり、この筋電位信号cに基づいて駆動電流生成手段220によって生成される電流e2も山状となる。
【0044】
神経伝達信号bに基づいて生成されるパルス電流e1と、筋電位信号cに基づいて比例的に生成される電流e2との総電流(随意的制御信号)eがモータユニット90に供給されると、この総電流eに比例する大きさのトルクをモータ92が発生する。モータユニット90のモータ92に入力される各電流e,e1,e2の大きさは、装着者20の動作時の感覚により適宜設定される。
【0045】
ここで、総電流eは十分に大きな電流で立ち上がるように設定してあるので、装着者20の動作意思に遅れなくモータユニット90が駆動され、装着者20は自分の意思に従った動作を違和感なく行うことができる。尚、パルス電流e1を特に大きく示しているが、これはその役割を強調するためで、実際のパルス電流と筋電位信号から得られた駆動電流e2との関係を示すものではない。
【0046】
ここで、図4に示す上記制御システムにおける制御装置210Aが実行する制御処理の手順について図6のフローチャートを参照して説明する。制御装置210Aは、メモリに格納された制御プログラムを読み込んで図6の制御処理を実行する。
【0047】
まず、装着者20は、切断された右足大腿部22に動作補助装着具30のソケット部60を嵌合させて装着作業が完了すると、制御ユニット40の電源スイッチをオンに操作する。
【0048】
図6のSA11において、制御ユニット40の電源スイッチがオンに操作されると、SA12に進み、生体電位センサ110により生体電位信号aが検出されたか否かをチェックする。ここで、装着者20が自らの意思で動作補助装着具30が装着された右足を動作させようとすると、生体電位センサ110により生体電位信号aが検出されるため、SA13の処理に進む。
【0049】
SA13では、生体電位センサ110により検出した生体電位信号aから神経伝達信号bおよび筋電位信号cを取得する(請求項1の生体電位処理手段)。続いて、SA14に進み、神経伝達信号bに基づいてパルス電流e1を生成し、且つ筋電位信号cに基づいて電流e2を生成する(請求項1の駆動電流生成手段)。
【0050】
次のSA15では、神経伝達信号bに応じたパルス電流e1がモータの駆動開始可能電流の下限値It以上か否かをチェックする。このSA15において、パルス電流e1がモータ92の駆動開始可能電流の下限値It以上でない場合(NOの場合)、SA16に進み、パルス電流e1が駆動開始可能電流の下限値It以上になるように、パルス電流e1を増幅する。
【0051】
また、SA15において、パルス電流e1がモータ92の駆動開始可能電流の下限値It以上の場合(YESの場合)、SA17に進み、パルス電流e1をモータ92に供給して義足80を駆動開始する。そして、SA18では、筋電位信号cに基づく電流e2によりモータ92を駆動する。これで、義足80は、モータ92の駆動力によって前後方向に歩行動作を行なう。
【0052】
次のSA19では、義足80の歩行動作に伴って各物理量センサ(トルクセンサ94、角度センサ96、床反力センサ120、応力センサ130)で検出されたセンサ信号fを読み取る。続いて、SA20に進み、センサ信号fが読み込まれると、センサ信号fに応じた感覚フィードバック信号gが生成され、感覚フィードバック信号gを感覚フィードバック信号変換手段140に出力する(請求項1の感覚フィードバック信号生成手段)。これにより、装着者20は、感覚フィードバック信号変換手段140からの信号(振動、スピーカ音、視覚)を感覚的(皮膚接触感覚、聴覚、視覚など)に認知して義足80の動作状態を判別することが可能になる。
【0053】
このSA11〜SA20の処理は、動作補助装着具30の電源スイッチがオフになるまで繰り返し実行される。これにより、動作補助装着具30のモータ92は、装着者20の意思に応じた動作を行なうように駆動制御される。
【実施例2】
【0054】
図7は実施例2の装着式動作補助装置の制御系の信号処理を示すシステム系統図である。尚、図7において、前述した実施例1の図4と同一部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0055】
図7に示す実施例2の制御装置210Bは、生体電位処理手段200、随意的制御手段212、データベース300、駆動電流生成手段220、感覚フィードバック信号生成手段230を有する。
制御装置210Bのデータベース300は、装着者20の各関節の回転角及び角速度等を、全タスクの全フェーズについて経験的に求め、それらの基準パラメータ(基準の回転角及び角速度等)を格納している。そして、随意的制御手段212は、動作補助装着具30(図1乃至図3を参照)のモータ92の随意的制御を行う際、装着者20の動作に関する物理量からデータベース300からタスクのフェーズを推定し、推定したフェーズに対応するパワーアシスト率となるように駆動力をモータ92に発生させる。
【0056】
ここで、上記タスク(Task)およびそのフェーズ(Phase)について説明する。タスクとは装着者20の各動作パターンを分類したもので、フェーズは各タスクを構成する一連の最小動作単位である。
【0057】
図8は、人間1の基本動作として、立ち上がり(タスクA)、歩行(タスクB)、座り(タスクC)、および階段の昇りまたは降り(タスクD)を例示する図である。尚、タスクは、図8に限定されるものではない。図8において、各タスクは上記フェーズからなり、例えば歩行タスクBは、両足が揃ったフェーズB1と、右足が前に出たフェーズB2と、左足が前にでて両足が揃った状態になったフェーズB3と、左足が前に出たフェーズB4からなる。
【0058】
このような一連のフェーズをフェーズ・シークエンス(Phase Sequence)という。装着者20の動作を補助するのに適切な動力はフェーズ毎に異なる。そのため、各フェーズによって異なるパワーアシスト率PAR1,PAR2,PAR3,PAR4を付与することにより、フェーズ毎に最適な動作補助を行うことができる。
【0059】
装着者20の動きを分析すると、各フェーズにおける各関節の回転角及び角速度、歩行速度及び加速度、姿勢、重心の移動等が決まっていることが分かる。例えば、装着者20の典型的な歩行パターンは決まっており、そのパターンで歩行するときに最も自然に感じる。従って、装着者20の各関節の回転角及び角速度等を、全タスクの全フェーズについて経験的に求め、それらを基準パラメータ(基準の回転角及び角速度等)としてデータべース300に格納しておけば良い。
【0060】
尚、片足が切断された障害者の場合、両足を交互に動作させて各関節の回転角及び角速度等を、全タスクの全フェーズについて求めることができないので、予め動作補助装着具30を装着する当該装着者20と身長及び体重が似ている別人から得た各フェーズにおける基準パラメータ(基準の回転角及び角速度等)を作成してデータべース300に格納するようにする。
【0061】
図9Aはデータベース300に格納されている各タスク及び各フェーズを模式的に示す図である。図9Bは、物理量を基準パラメータと比較することにより装着者が行おうとしているタスク、およびその中のフェーズを推定するプロセスを示す図である。図9A、図9Bに示すタスクおよびフェーズは、図8に示すものである。例示したタスクA(立上り)、タスクB(歩行)、タスクC(座り)・・・は、それぞれ、一連のフェーズ(フェーズA1、フェーズA2、フェーズA3・・・、フェーズB1、フェーズB2、フェーズB3・・・等)により構成されている。
【0062】
装着者が動作を開始すると、物理量センサとしてのトルクセンサ94、角度センサ96、応力センサ130で検出されたセンサ信号により得られた各種の物理量の実測値をデータベース300に格納された基準パラメータと比較する。この比較は、図9B中のグラフで概略的に示す。このグラフでは、膝の回転角θおよび角速度θ'、および重心位置COGおよび重心位置の移動速度COG'を示しているが、勿論比較する物理量はこれらに限定されない。
【0063】
一定の短い時間間隔で実測の物理量と基準パラメータとを比較する。この比較処理は、全てのタスク(A,B,C・・・)における一連のフェーズについて行う。つまり、図9Aの上部表に示す全てのフェーズ(A1,A2,A3・・・,B1,B2,B3・・・,C1,C2,C3・・・)をマトリックス状に取り出し、実測の物理量と比較することになる。
【0064】
図9Bのグラフに示すように、例えば時間t1,t2,t3・・・ごとに比較していくと、実測の物理量が全て一致する基準パラメータを有するフェーズを同定することができる。一致の誤差を排除するために、複数の時間で一致することを確認した後で、フェーズの同定を行えば良い。例えば図示の例で、実測値が複数の時間でフェーズA1の基準パラメータと一致したとすると、現在の動作はフェーズA1の動作であることが分かる。勿論、実測値と一致する基準パラメータを有するフェーズは、タスクの最初のフェーズ(A1,B1,C1等)とは限らない。
【0065】
更に、装着者20の腰に角度センサを設け、この角度センサによって腰関節の角度を検出して動作補助装着具30の制御に活用するようにしても良い。また、例えば、装着者20の健脚側の情報など、装着者本人から検出可能な他の身体情報(例えば、装着者20の左脚の情報)を活用することも可能である。
【0066】
これらの情報は、装着式動作補助装置10に角度センサ(腰用や健脚用など)が設けられている構成であっても良いし、あらかじめいくつかの動作のパターンや各種のフェーズに対応する各センサの検出値をサンプリングしておいて、データベース300として制御装置210B内に設けられたメモリに格納しておく方法でも良い。
【0067】
図10は実施例2の制御装置210Bでモータ駆動力を制御する場合の制御方法を示すフローチャートである。制御装置210Bは、メモリに格納された制御プログラムを読み込んで図10の制御処理を実行する。
【0068】
尚、図10のSB11,SB12およびSB14〜SB17、SB24,SB25は、実質的に図6のSA11〜SA16、SA19,SA20と同じ処理であるので、それらの説明は省略し、ここではSB13、SB18〜SB23の処理について主に説明する。
【0069】
図10に示すSB13では、義足80の歩行動作に伴って発生する各物理量(トルク、回転角、床反力、応力)を検出したセンサ信号をトルクセンサ94、角度センサ96、床反力センサ120、応力センサ130から読み取る。
【0070】
SB18では、各センサにより検出された物理量(実測値)とデータベース300に格納された各フェーズの基準パラメータと順次比較する。図9を参照して説明したように、全てのタスクおよび各タスク毎のフェーズは、マトリックス状に存在するので、物理量の実測値と各フェーズの基準パラメータとを、例えばA1,A2,A3・・・,B1,B2,B3・・・,C1,C2,C3・・・との順番で順次比較する。データベース300に格納された基準パラメータは、全てのタスクのフェーズ(以下では、単に「タスク/フェーズ」という)の間で重複しないように設定されているので、全てのタスクのフェーズの基準パラメータとの比較を行うと、物理量の実測値と一致する基準パラメータを有するタスクのフェーズを抽出することができる。
【0071】
次のSB19では、各センサにより検出された物理量(実測値)とデータベース300に格納された各フェーズの基準パラメータとが一致したか否かをチェックしており、不一致の場合は上記SB18の処理に戻り、SB18,SB19の処理を繰り返す。また、SB19において、各センサにより検出された物理量(実測値)とデータベース300に格納された各フェーズの基準パラメータとが一致した場合は、SB20に進み、センサにより検出された物理量(実測値)とデータベース300に格納された各フェーズの基準パラメータとが一致した回数が予め設定された所定回数に達したか否かをチェックする。
【0072】
上記SB20において、一致した回数が予め設定された所定回数に達しない場合は、上記SB18の処理に戻り、SB18〜SB20の処理を繰り返す。また、上記SB20において、一致した回数が予め設定された所定回数に達した場合は、SB21に進み、物理量の実測値に一致した基準パラメータに対応するタスクのフェーズを選択し、装着者20の動作を選択したタスクのフェーズと推定する。
【0073】
次のSB22は、データベース300を参照することにより、補助すべき動作に対応するフェーズに割り付けたパワーアシスト率を選択し、このパワーアシスト率となる動力をモータユニット90に発生させるように上記随意的制御信号を調整する(請求項3の随意的制御手段)。
【0074】
続いて、SB23に進み、調整後の随意的制御信号に応じた電流(総電流e)を生成し、この総電流の供給によりモータユニット90を駆動する(請求項1の駆動電流生成手段)。この後は、前述したSA19,SA20と同様なSB24,SB25で感覚フィードバック信号gを生成し、感覚フィードバック信号gを感覚フィードバック信号変換手段140に出力する。
【0075】
このように、実施例2の制御処理によれば、各センサから得られた物理量に基づいて装着者20の動作を推定し、この推定されたフェーズ毎に最適化されたパワーアシスト率となるように随意的制御信号を生成するため、モータユニット90がこの随意的制御信号に応じた動力付与を行うことにより、正常な足の歩行動作と同じように義足80の歩行動作がスムーズな動作となり、装着者20が片足に動作補助装着具30を装着した状態で歩行する際に違和感のない歩行動作補助を行うことができる。
【実施例3】
【0076】
図11は実施例3の装着式動作補助装置の制御系の信号処理を示すシステム系統図である。尚、図11において、前述した図4及び図7と同一部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0077】
図11に示す実施例3の制御装置210Cは、生体電位処理手段200、随意的制御手段212、データベース300、自律的制御手段310、制御信号合成手段320、駆動電流生成手段220、感覚フィードバック信号生成手段230を有する。
制御装置210Cの自律的制御手段310は、各センサにより検出されたセンサ信号f(物理情報信号)とデータベース300に格納された基準パラメータとを比較することにより、装着者20のタスクのフェーズを推定し、推定したフェーズに応じた駆動力をモータ92に発生させるための自律的制御信号d2を生成する。また、制御信号合成手段320は、随意的制御手段212からの随意的制御信号d1および自律的制御手段7からの自律的制御信号d2とを合成して制御信号dを生成する。
【0078】
自律的制御手段310は、図8および図9に示すように、動作補助装着具30(図1乃至図3を参照)を装着した装着者20が歩行動作する際、トルクセンサ94、角度センサ96、床反力センサ120、応力センサ130により検出されたトルク、回転角、反力、応力の物理量とデータベース300に格納された各タスクの各フェーズの基準パラメータとを比較することにより、装着者20のタスクのフェーズを推定し、このフェーズに応じた動力をモータ92に発生させるための自律的制御信号d2を生成する。
【0079】
制御信号合成手段320は、随意的制御手段212からの随意的制御信号d1と自律的制御手段310からの自律的制御信号d2とを合成する。自律的制御では、例えばフェーズ毎に一定の動力を付与する。従って、制御信号合成手段320で合成された制御信号dは、動作の開始から終了まで変化する随意的制御による動力と、フェーズ毎に一定の自律的制御による動力とを加算した動力とをモータ92に発生させるように形成されている。
【0080】
図12は実施例3の制御装置210Cでモータ駆動力を制御する場合の制御方法を示すフローチャートである。制御装置210Cは、メモリに格納された制御プログラムを読み込んで図12の制御処理を実行する。
【0081】
尚、図12のSC11〜SC13,SC15〜SC17,SC22,SC23は、実質的に図10のSB11〜SB13,SB18〜SB20,SB24,SB25と同じ処理であるので、それらの説明は省略し、ここではSC14、SC18〜SC21の処理について主に説明する。
【0082】
図12に示すSC14では、生体電位センサ110により検出された生体電位信号aを用い、装着者20の意思に従った駆動力をモータ92に発生させるための随意的制御信号d1を生成する(随意的制御手段)。尚、随意的制御信号d1は、前述した第1、2実施例と同様に、神経伝達信号に応じたパルス電流および筋電位信号に応じた駆動電流を生成するためのものとする。
【0083】
SC18では、物理量の実測値に一致した基準パラメータに対応するタスクのフェーズを選択し、装着者20の動作を選択したタスクのフェーズと推定すると共に、このタスクのフェーズに対応するハイブリッド比(随意的制御信号/自律的制御信号)を規定する。また、ハイブリッド比は、各タスクのフェーズ毎に、装着者1の動作を違和感なくアシストできるように予め設定され、データベース300に格納される。このハイブリッド比は、各センサによる実測の物理量とデータベース300に格納された基準パラメータとの比較によりフェーズが推定されると、上述したように制御装置210Cによって自動的に規定される。
【0084】
続いて、SC19に進み、推定したフェーズに応じた駆動力をモータ92に発生させるための自律的制御信号を生成する(自律的制御手段)。
【0085】
次のSC20では、規定したハイブリッド比となるように随意的制御信号d1および自律的制御信号d2を合成して総制御信号dを生成する(制御信号合成手段)。
【0086】
さらに、SC21に進み、この総制御信号dに応じて生成した駆動電流eの供給によりモータ82を駆動する。総制御信号dは、随意的制御信号/自律的制御信号の割合から得られる所要のハイブリッド比となるように生成される。そのため、動作補助装着具30のモータユニット90は、総制御信号に応じた駆動電流eを供給されることにより、随意的制御信号及び自律的制御信号に応じた駆動力を発生することができ、義足80の歩行動作が正常な足の歩行動作と同じようにスムーズな動作となる。よって、装着者20は、片足に動作補助装着具30を装着した状態で歩行する際にスムーズな歩行動作を行うことができる。
【実施例4】
【0087】
図13は実施例4の装着式動作補助装置の制御系の信号処理を示すシステム系統図である。尚、図13において、前述した図4及び図7及び図11と同一部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0088】
図13に示す実施例4の制御装置210Dは、生体電位処理手段200、随意的制御手段212、データベース300、自律的制御手段310、制御信号合成手段320、駆動電流生成手段220、感覚フィードバック信号生成手段230を有する。
制御装置210Dの随意的制御手段212および自律的制御手段310は、各センサにより検出された物理量とデータベース300に格納された基準パラメータとを比較することにより、装着者20が行おうとしているタスクのフェーズを推定し、このフェーズに応じたハイブリッド比およびパワーアシスト率となるように、随意的制御信号d1および自律的制御信号d2を生成する機能を有する。
【0089】
従って、随意的制御手段212は、神経伝達信号および筋電位信号に基づいてモータユニット90(図1乃至図3を参照)の駆動を制御する制御信号と、各センサにより検出された装着者20の動作に関する物理量からデータベース300からタスクのフェーズを推定し、推定したフェーズに対応するパワーアシスト率となるように駆動力をモータ92に発生させる制御信号とを生成する。
【0090】
図14は実施例4の制御装置210Dでモータ駆動力を制御する場合の制御方法を示すフローチャートである。制御装置210Dは、メモリに格納された制御プログラムを読み込んで図14の制御処理を実行する。
【0091】
尚、図14のSD11〜SD17,SD21〜SD23は、実質的に図12のSC11〜SC17,SC21〜SC23と同じ処理であるので、それらの説明は省略し、ここではSD18〜SD20の処理について主に説明する。
【0092】
図14に示すSD18では、物理量の実測値に一致した基準パラメータに対応するタスクのフェーズを選択し、装着者20の動作を選択したタスクのフェーズと推定すると共に、このタスクのフェーズに対応するハイブリッド比(随意的制御信号/自律的制御信号)を規定する。さらに、データベース300を参照することにより、補助すべき動作に対応するフェーズに割り付けたパワーアシスト率を規定する。
【0093】
次のSD19では、このフェーズに応じた動力でモータ92を駆動するための自律的制御信号を生成する。
【0094】
続いて、SD20に進み、上記のように規定されたハイブリッド比およびパワーアシスト率となるように随意的制御信号d1および自律的制御信号d2を合成して総制御信号dを生成する。これにより、規定されたハイブリッド比及びパワーアシスト率となる動力をモータユニット90に発生させることが可能になる。
【0095】
そのため、動作補助装着具30(図1乃至図3を参照)のモータユニット90は、上記のように規定されたハイブリッド比およびパワーアシスト率となるように総制御信号に応じた駆動電流eを供給されることにより、随意的制御信号及び自律的制御信号に応じた駆動力を発生することができ、義足80の歩行動作が正常な足の歩行動作と同じようにスムーズな動作となる。よって、装着者20は、片足に動作補助装着具30を装着した状態で歩行する際にスムーズな歩行動作を行うことができる。
【実施例5】
【0096】
図15は実施例5の装着式動作補助装置の制御系の信号処理を示すシステム系統図である。尚、図15において、前述した図4、図7、図11、図13と同一部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0097】
図15に示す実施例5では、装着者20から生体電位信号aが得られない場合の制御システムであり、生体電位センサ110を用いない制御方法でモータユニット90(図1乃至、図3を参照)の駆動力を制御する。
【0098】
実施例5の制御装置210Eは、データベース300、自律的制御手段310、駆動電流生成手段220、感覚フィードバック信号生成手段230を有する。制御装置210Eは、装着者20から生体電位信号aが得られないため、随意的制御手段212が設けられていなく、自律的制御手段310によって生成される自律制御信号d2が駆動電流生成手段220に供給される。
【0099】
自律的制御手段310は、各センサにより検出された物理量とデータベース300に格納された基準パラメータとを比較することにより、装着者20が行おうとしているタスクのフェーズを推定し、このフェーズに応じたハイブリッド比およびパワーアシスト率となるように、自律的制御信号d2を生成する。そのため、駆動電流生成手段220は、自律的制御信号d2に応じた電流を生成し、モータユニット90に供給する。
【0100】
図16は実施例5の制御装置210Eがモータ駆動力を制御する場合の制御方法を示すフローチャートである。制御装置210Eは、メモリに格納された制御プログラムを読み込んで図16の制御処理を実行する。
【0101】
尚、図16のSE11〜SE21は、実質的に図14のSD12,SD14を除いた処理手順であり、SD11,SD12,SD13〜SD17,AD19〜SD23と同じ処理であるので、それらの説明は省略する。ここでは、SE18の処理について説明する。
【0102】
SE18では、規定されたハイブリッド比およびパワーアシスト率となるように自律的制御信号d2を生成する。これにより、規定されたハイブリッド比及びパワーアシスト率となる動力をモータユニット90に発生させることが可能になる。
【0103】
このように、実施例5の制御装置210Eは、装着者20から生体電位信号aが得られない場合には、自律的制御手段310によって生成される自律制御信号d2に応じてモータユニット90のモータ92から駆動力が得られるので、義足80の歩行動作がスムーズな動作となる。よって、装着者20は、片足に動作補助装着具30(図1乃至、図3を参照)を装着した状態で歩行する際にスムーズな歩行動作を行うことができる。
【実施例6】
【0104】
図17は実施例6の装着式動作補助装置の制御系の信号処理を示すシステム系統図である。尚、図17において、前述した図4、図7、図11、図13、図15と同一部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0105】
制御装置210Fは、前述した駆動電流生成手段220、感覚フィードバック信号生成手段230の他に、キャリブレーションデータベース400、フェーズ特定手段410、差分導出手段420、パラメータ補正手段430、キャリブレーション制御手段440を有する。
キャリブレーションデータベース400は、装着者20が発生する筋力に対する筋電位(生体電位)の検出感度に応じて制御信号のパラメータを補正するためのデータ記憶手段である。
【0106】
すなわち、キャリブレーションデータベース400は、動作補助装着具30(図1乃至図3を参照)を装着した装着者20が発する筋力および筋電位信号(生体電位信号)の第1の対応関係を予め格納した第1記憶領域と、装着者20が所定の基本動作を行う過程で発する筋力および筋電位信号(生体電位信号)の第2の対応関係を予め格納した第2記憶領域とを有する。
【0107】
各物理量センサによって検出された関節角度及び生体電位センサ110によって検出された筋電位信号は、キャリブレーションデータベース400に入力される。
【0108】
そして、キャリブレーション制御手段440は、動作補助装着具30が装着者20に装着される都度、装着者20による基本動作において発生する生体信号と第2の対応関係とに基づいて、第1の対応関係を満たすように生体電位信号に応じたモータ92(図1乃至図3を参照)による駆動力(トルク)の補正を行う。
【0109】
すなわち、キャリブレーション制御手段440は、装着者20が動作補助装着具30を装着して電源スイッチがオンに操作されたときに、所定の負荷を動作補助装着具30に印加させてキャリブレーション制御処理を実行し、モータ92からの駆動力を印加された負荷と拮抗させる。この駆動力が拮抗する負荷としては、例えば、装着者20に装着された動作補助装着具30の何処かに、規定重量を有する標準のおもりを取り付ける。
【0110】
そして、装着者は、所定の重量を有するおもりの荷重と釣り合うような筋力を発生させようとする。キャリブレーション制御手段440は、その時に生じた生体電位信号を測定すると共に、このおもりの荷重に釣り合うような駆動力をモータ92から発生させて対応させることで、あたかも装着者20がおもりの荷重に釣り合う筋力を発生させたのと同じ状況をつくる。
【0111】
また、おもりを動作補助装着具30に取付けることが難しい場合は、床や壁など固定された場所に動作補助装着具30の一部を押し付けるなどして、装着者20の生体電位信号と、動作補助装着具30に取り付けられた応力センサ130で検出される力とを対応させるという方法も考えられる。また、床などに押し付ける代わりに、例えば、自分自身の手や足で動作補助装着具30に負荷をかける方法を用いても良い。
【0112】
このように、装着者20は、印加された負荷に拮抗するようにモータ92からの駆動力を発生させた後、予め決められた所定のキャリブレーション動作(例えば、タスクA:着席状態から立ち上がる動作)を行う。これにより、上記キャリブレーション動作に伴って角度センサ96(図3参照)が関節角度を検出すると共に、生体電位センサ110が切断された右足大腿部22の筋電位信号を検出する。
【0113】
そして、フェーズ特定手段410では、角度センサ96により検出した関節角度をキャリブレーションデータベース400に格納された関節角度と比較することにより、装着者20のキャリブレーション動作パターンのフェーズを特定する。
【0114】
また、差分導出手段420では、キャリブレーション制御処理の開始により、モータ92の負荷(入力トルク)と、生体電位センサ110により検出された右足大腿部22の筋電位信号(実測値)に対応する筋力(推定トルク)とを比較し、両者の差分を求め上記第2の対応関係を求める。
【0115】
また、パラメータ補正手段430では、フェーズ特定手段410によって特定されたフェーズにおける差分導出手段420によって算出された負荷(入力トルク)と筋力(推定トルク)との差に基づいて、上記第1の対応関係を満足するようにパラメータKを補正する。また、前述したように動作補助装着具30に取付けたおもりや動作補助装着具30を床や壁に当接させたり、あるいは動作補助装着具30に自分自身の手や足などで負荷を入力した状態で、この負荷に対するモータ92からの入力トルクと、生体電位センサ110により検出された筋電位信号(実測値)に対応する筋力との差がないときは、基準パラメータを補正しない。
【0116】
しかし、おもり等の負荷を入力した状態でモータ92からの入力トルクと、生体電位センサ110により検出された筋電位信号(実測値)に対応する筋力との差があるときは、両者が一致するようにパラメータKを補正する。その際、補正パラメータK’は、入力トルクと推定トルクとが等しくなるように設定される。
【0117】
そして、キャリブレーション制御手段440は、パラメータ補正手段430によって補正されたパラメータを当該装着者20のパラメータとして設定し、次のフェーズに対するキャリブレーションを行う。
【0118】
このように、キャリブレーションによって設定されたパラメータを用いて生体電位センサ110によって検出された生体電位信号に応じたアシスト力を発生するようにモータ92を制御するため、装着者20のその日の状態(皮膚の抵抗値)や生体電位センサ110の取付位置のずれなどに拘り無くパワーアシスト率が所定値を保つように制御することが可能になる。
【0119】
また、制御装置210Fには、角度センサ96によって検出された関節角度及び生体電位センサ110によって検出された筋電位信号が供給されており、関節角度及び筋電位信号に応じた各フェーズ毎のモータ92からの駆動力をキャリブレーション制御手段440によって設定された補正パラメータK’を用いて演算し、その演算結果から得られた制御信号を駆動電流生成手段220に供給する。
【0120】
また、キャリブレーション制御手段440は、制御ユニット40の電源スイッチがオンに操作される度にキャリブレーション制御処理を実行するようにしても良いし、あるいは、専用のキャリブレーションスイッチ460を設けることで、操作者が自らの操作でキャリブレーション制御処理を実行するようにしても良い。また、タイマスイッチ470を設けることで、予め設定された任意の時間(例えば、毎朝8時、あるいは月曜の8時といった具合)になるとキャリブレーション制御処理を自動的に実行することも可能である。
【0121】
このキャリブレーション制御処理は、装着者20が動作補助装着具30を装着して歩行動作を練習する過程で動力補正を行なうために頻繁に実行されることが望ましいが、練習開始から1週間以上経過した場合には、任意の時間毎に実行するように切替えることができる。そのため、電源スイッチやキャリブレーションスイッチ460やタイマスイッチ470を使用回数(練習回数)に応じて使い分けるようにしても良いし、あるいはキャリブレーションスイッチ460またはタイマスイッチ470を適宜操作するようにしても良い。
【0122】
ここで、実施例6の制御装置210Fが実行するキャリブレーション制御処理の手順について図18に示すフローチャートを参照して説明する。このキャリブレーション制御処理を実行する際は、装着者20は、動作補助装着具30の何処かに、規定重量を有する標準のおもりを取り付けたり、あるいは床や壁など固定された場所に動作補助装着具30の一部を押し付けたり、あるいは自分自身の手や足で動作補助装着具30に負荷をかけるといった動作(姿勢)を行なう。
【0123】
図18に示されるように、制御装置210Fは、S111で動作補助装着具30(図1乃至図3を参照)が装着者20の右足大腿部22に装着されて電源スイッチ(図示せず)がオンに操作されると、S112に進み、電源オン操作が初回かどうかをチェックする。S112において、初回である場合には、初期設定モードに移行する。すなわち、S113に進み、モータ92に所定電流(初期設定用に設定された低電流)を供給してモータトルクを発生させて初期設定キャリブレーション処理(請求項10のキャリブレーション手段)を実行する。
【0124】
続いて、S114に進み、モータ92の駆動力(トルク)に対する応力センサ130の検出値を読み込む。次のS115では、応力センサ130の検出値から推定されたトルクがモータ92の駆動力(トルク)と釣り合うか否かをチェックする。
【0125】
S115において、応力センサ130の検出値から推定されたトルクがモータ92の駆動力(トルク)と釣り合わない場合(NOの場合)、S116に移行してモータ92の駆動力(トルク)を1ランク上げる。そして、S114に戻り、再度、1ランク上げたモータ92の駆動力(トルク)に対する応力センサ130の検出値を読み込む。応力センサ130の検出値は、負荷とモータトルクとの力関係によって決まる歪みを検出した値である。応力センサ130の検出値から推定されたトルクがモータ92の駆動力(トルク)と釣り合うまで上記S114〜S116の処理を繰り返す。
【0126】
上記S115において、応力センサ130の検出値から推定されたトルクがモータ92の駆動力(トルク)と釣り合った場合(YESの場合)、S117に進み、生体電位を各生体電位センサ110から出力された表面筋電位の検出信号によって検出し、この検出信号に基づいて補正値を求め、上記キャリブレーションで得られたパラメータK’を設定する。
【0127】
さらに、S117では、動作補助装着具30を装着した装着者20が静止状態でのキャリブレーションによって得られた装着者20の筋力に応じた補正値(パラメータK’)を生成し、このパラメータを当該装着者固有の補正値としてデータベース400に格納する。
【0128】
これにより、動作補助装着具30が装着者20に装着される都度、装着者20が所定の基本動作(キャリブレーション動作)を行う過程で発する動力および生体電位信号の対応関係(第2の対応関係)とに基づいて、装着者20が発する動力および生体電位信号の対応関係(第1の対応関係)を満たすように生体信号に応じたモータ92の駆動力の補正を行うことが可能になる。
【0129】
その後は、S118に進み、通常の制御処理を実行する制御モードに移行する。そして、S119において、電源スイッチがオフに操作されるまで、通常の制御モードが継続される。
【0130】
また、上記S112において、電源オン操作が2回目以降である場合には、S120に進み、前述した再設定モードに移行する。そして、S121では、装着者20がワンモーション(1回の動作)での補正値設定キャリブレーション(請求項10のキャリブレーション手段)を実行し、所定のキャリブレーション動作(例えば、椅子に座った状態から立ち上がる動作に移行する動作パターン)を行うのに伴って得られた装着者20の筋力に応じた補正値(パラメータK’)を設定する。その後は、上記S117〜S119の処理を実行する。
【0131】
尚、本実施例では、2回目以降ワンモーションによるキャリブレーションを行うものとしたが、これに限らず、2回目以降も初回と同様に静止状態のまま補正値設定キャリブレーションを行うようにしても良い。
【0132】
次に、各補正値設定モード毎の制御処理について図19乃至図21を参照して説明する。
図19は初期設定を行う初回キャリブレーションの制御手順を示すフローチャートである。尚、初回キャリブレーションの場合、前述したように、装着者20は、動作補助装着具30の何処かに、規定重量を有する標準のおもりを取り付けたり、あるいは床や壁など固定された場所に動作補助装着具30の一部を押し付けたり、あるいは自分自身の手や足で動作補助装着具30に負荷をかけるといった動作(姿勢)を行なうことにより補正値の設定を行なう。
【0133】
図19に示されるように、制御装置210Fは、S131において、装着者20が上記キャリブレーションの動作を行なうのに応じてモータ92に所定駆動電流を供給して駆動力(入力トルク)を発生させる。
【0134】
次のS132では、装着者20の右足大腿部の筋電位信号(生体電位信号)を生体電位センサ110から取得する。次のS133では、応力センサ130により実測された応力検出値から発生トルクを演算して推定する。
【0135】
その後、S134に進み、トルクセンサ94によって検出されたモータ92の入力トルクと上記応力センサ130の検出値から演算された仮想トルクとを比較する。そして、S135において、入力トルクと仮想トルクとの比率を求める。次のS136では、キャリブレーションデータベース400に格納された各フェーズ毎の負荷に対するパラメータを読み出し、このパラメータに上記比率をかけて駆動電流生成手段220に供給される制御信号の補正値(補正パラメータ)を求める。続いて、S137に進み、補正パラメータを自律的制御のパラメータとして設定する。
【0136】
このように、右足大腿部22に動作補助装着具30が装着された装着者20は、その日の状態に応じた生体信号のキャリブレーションを自動的に行うことができる。そのため、キャリブレーションに要する労力と時間を大幅に削減することが可能になる。
【0137】
さらに、装着者20に対してキャリブレーションを行うために余計な負担を強いることがなく、当該装着者20の状態に応じた補正値を設定し、装着者20の筋電位信号に基づく駆動力を装着者20の動作に連動して正確に付与することが可能になる。
【0138】
よって、キャリブレーションを行う際に装着者20の意思に沿ったアシスト力がモータ92から付与され、アシスト力が過大になったり、過小になったりせず、装着者20の動作を安定的にアシストして装着式動作補助装置の信頼性をより高めることができる。
【0139】
特に装着者20が初心者の場合のように、装着された動作補助装着具30を思うように使うことが難しいと思われる状況においても、装着者20は安心してキャリブレーションを行うことができる。
【0140】
次に前述した再設定モード1(図18のS120参照)のキャリブレーション制御処理について図20を参照して説明する。
【0141】
図20はワンモーション(1回の動作)による再設定キャリブレーションの制御手順を示すフローチャートである。尚、ワンモーションによるキャリブレーションを行う場合、装着者20は、着席したまま動作補助装着具30におもりを取り付けられて膝関節部70を上げ下げする動作を1回だけ行なうことになる。また、メモリ130には、キャリブレーションの動作に対応する基準筋電位が予め格納されている。
【0142】
図20に示されるように、制御装置210Fは、S141において、膝関節部70の角度センサ96からの検出信号の有無を確認する。そして、装着者20が着席状態で動作補助装着具30の膝関節部70を動作させるのに伴って膝関節部70の関節角度の動きを角度センサ96によって検出されると、S142に進み、角度センサ96からの検出信号に基づいて膝関節部70の動作角度を設定する。
【0143】
続いて、S143に進み、膝関節部70の動作角度に応じた基準筋電位をメモリから読み込む。次の、S144では、装着者20の右足大腿部22の筋電位の実測値を生体電位センサ110から読み込む。そして、S145では、基準筋電位と筋電位の実測値とを比較する。
【0144】
次の、S146では、基準筋電位と筋電位の実測値との比率を求める。そして、S147では、前述したキャリブレーションデータベース400に格納された膝関節部70の動作角度に応じたパラメータを読み出し、このパラメータに上記比率をかけて駆動電流生成手段220に供給される制御信号の補正値(補正パラメータ)を求める。続いて、S148に進み、補正パラメータを随意的制御のパラメータとして設定する。
【0145】
このように、2回目以降のキャリブレーションは、着席した状態で膝関節部70を回動させる動作(ワンモーション)によってパラメータK’を補正することができるので、装着者20の体力的な負担を大幅に軽減できると共に、動作補助装着具30を装着してからキャリブレーションに要する準備時間を短縮することが可能になる。そのため、2回目以降のキャリブレーションでは、歩行開始が速やかに行えることになる。
【0146】
次に前述した再設定モード2のキャリブレーション制御処理について図21を参照して説明する。この再設定モード2では、装着者20が着席状態から立ち上がり動作(フェーズA1〜A4)を基準動作として行い、そして、再び着席動作(フェーズA4〜A1)を行うものとする(図8を参照)。
【0147】
図21に示されるように、制御装置210Fは、S151において、動作補助装着具30に設けられた角度センサ96からの検出信号の有無を確認する。そして、装着者20が図8に示すような着席状態から立上がり状態に移行する動作を行うのに伴って膝関節部70の角度の動きを角度センサ96からの検出信号によって検出すると、S152に進み、角度センサ96からの検出信号に基づいてキャリブレーションデータベース400に格納されたタスクを選択し、装着者20の基準動作を設定する。
【0148】
次のS153では、着席状態から立上がり状態に移行する動作に応じた基準筋電位をメモリから読み込む。続いて、S154に進み、装着者20の筋電位の実測値を生体電位センサ110から読み込む。そして、S155では、基準筋電位と筋電位の実測値とを比較する。
【0149】
次の、S156では、基準筋電位と筋電位の実測値との比率を求める。そして、S157では、前述したキャリブレーションデータベース400に格納された膝関節の動作角度に応じたパラメータを読み出し、このパラメータに上記比率をかけて駆動電流生成手段220に供給される制御信号の補正値(補正パラメータ)を求める。続いて、S158に進み、補正パラメータを随意的制御のパラメータとして設定する。
【0150】
次のS159では、キャリブレーション動作のタスクが終了したかどうかを確認する。S159において、まだキャリブレーション動作のフェーズが残っている場合は、S160に進み、次のフェーズに更新して上記S153以降の処理を再度実行する。
【0151】
また、上記S159において、キャリブレーション動作のタスクが終了した場合は、今回のキャリブレーション処理を終了する。
【0152】
このように、2回目以降のキャリブレーションは、着席した状態でパラメータK’を補正することができるので、装着者20の体力的な負担を大幅に軽減できると共に、動作補助装着具30を装着してからキャリブレーションに要する準備時間を短縮することが可能になる。
【0153】
従って、キャリブレーションの動作は、装着者20が屈伸動作を行うことで表面筋電位のキャリブレーションを行っても良いし、あるいは、装着者20が椅子に座った状態で膝関節の曲げ伸ばし動作を基準動作としても良いし、その個人に合ったキャリブレーションを行うことができるので、装着者20が身体障害者の場合には動作可能な任意の動作でキャリブレーションを行うことも可能であり、他の動作(タスク)を基準動作とすることも可能である。
【0154】
尚、実施例6においては、前述した実施例1の制御装置にキャリブレーション制御処理を付加した構成について説明したが、このキャリブレーション制御処理は、他の実施例2〜5においても同様に実行することができるように組み合わせることも可能であるが、その制御処理は上記図18〜図21に示す制御処理と同様であるので、他の実施例2〜5に係るキャリブレーション制御処理の説明は省略する。
【産業上の利用可能性】
【0155】
尚、上記実施例では、装着者20の右足大腿部22に動作補助装着具30を装着した場合を一例として挙げたが、これに限らず、左足大腿部または右腕、左腕の何れかに装着される場合、あるいは両腕、両足に動作補助装着具が装着される場合にも本発明が適用できるのは勿論である。すなわち、本発明は、装着者20の両足、両腕の4肢の何れかあるいは全てに装着される動作補助装着具の駆動手段を制御するのに好適である。
【0156】
また、上記実施例では、電動モータの駆動トルクで義足を駆動して歩行する構成について説明したが、電動モータ以外の駆動手段(例えば、超音波モータやエアシリンダ等)を用いて動作補助装着具を動作させる場合にも適用することができるのは勿論である。
【0157】
また、上記実施例では、膝関節部70をモータ92で駆動する構成を一例として挙げたが、これに限らず、例えば、膝関節部及び足首の関節部の夫々を各モータで駆動する構成の多関節構造のものにも本発明が適用できるのは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0158】
【図1】本発明による装着式動作補助装置の装着状態の一実施例を示す斜視図である。
【図2】動作補助装着具30と制御装置210Aとの関係を模式的に示す制御システムの概念図である。
【図3】動作補助装着具30の構成を示す概略構成図である。
【図4】実施例1の装着式動作補助装置の制御系の信号処理を示すシステム系統図である。
【図5】生体電位信号から各制御信号を生成する過程を示す図である。
【図6】制御装置210Aが実行する制御処理の手順を説明するためのフローチャートである。
【図7】実施例2の装着式動作補助装置の制御系の信号処理を示すシステム系統図である。
【図8】人間1の基本動作として、歩行(タスクA)、立ち上がり(タスクB)、座り(タスクC)、および階段の昇りまたは降り(タスクD)を例示する図である。
【図9A】データベース300に格納されている各タスク及び各フェーズを模式的に示す図である。
【図9B】物理量を基準パラメータと比較することにより装着者が行おうとしているタスク、およびその中のフェーズを推定するプロセスを示す図である。
【図10】実施例2の制御装置210Bでモータ駆動力を制御する場合の制御方法を示すフローチャートである。
【図11】実施例3の装着式動作補助装置の制御系の信号処理を示すシステム系統図である。
【図12】実施例3の制御装置210Cでモータ駆動力を制御する場合の制御方法を示すフローチャートである。
【図13】実施例4の装着式動作補助装置の制御系の信号処理を示すシステム系統図である。
【図14】実施例4の制御装置210Dでモータ駆動力を制御する場合の制御方法を示すフローチャートである。
【図15】実施例5の装着式動作補助装置の制御系の信号処理を示すシステム系統図である。
【図16】実施例5の制御装置210Eがモータ駆動力を制御する場合の制御方法を示すフローチャートである。
【図17】実施例6の装着式動作補助装置の制御系の信号処理を示すシステム系統図である。
【図18】実施例6の制御装置210Fが実行する制御処理の手順を説明するためのフローチャートである。
【図19】初期設定を行う初回キャリブレーションの制御手順を示すフローチャートである。
【図20】ワンモーション(1回の動作)による再設定キャリブレーションの制御手順を示すフローチャートである。
【図21】設定モード2のキャリブレーション制御処理を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0159】
10 装着式動作補助装置
20 装着者
22 右足大腿部
30 動作補助装着具
40 制御ユニット
50 電源ユニット
60 ソケット部
70 膝関節部
80 義足
90 モータユニット
92 モータ
94 トルクセンサ
96 角度センサ
110 生体電位センサ
120 床反力センサ
130 応力センサ
140 感覚フィードバック信号変換手段
200 生体電位処理手段
210A〜210F 制御装置
212 随意的制御手段
220 駆動電流生成手段
230 感覚フィードバック信号生成手段
300 データベース
310 自律的制御手段
320 制御信号合成手段
400 キャリブレーションデータベース
410 フェーズ特定手段
420 差分導出手段
430 パラメータ補正手段
440 キャリブレーション制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
義肢が装着された装着者の動作を補助あるいは代行する装着式動作補助装置であって、
前記義肢に対して動力を付与する駆動手段を有した動作補助装着具と、
前記義肢の動作に関する物理量を検出する物理量センサと、
前記義肢の装着箇所の生体信号を検出する生体信号センサと、
前記義肢を動作させるための指令信号を、前記生体信号センサにより検出された生体信号から取得する生体信号処理手段と、
前記生体信号処理手段により取得された指令信号を用い、前記装着者の意思に従った動力を前記駆動手段に発生させるための随意的制御信号を生成する随意的制御手段と、
前記随意的制御手段により生成された随意的制御信号に基づいて、前記生体信号の信号に応じた駆動信号を生成し、前記駆動手段に供給する駆動信号生成手段と、
前記物理量センサにより検出された物理情報信号に基づいて感覚フィードバック信号を生成する感覚フィードバック信号生成手段と、
該感覚フィードバック信号生成手段で生成された感覚フィードバック信号を前記装着者に伝達する感覚伝達手段と、
を備えることを特徴とする装着式動作補助装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装着式動作補助装置であって、
前記感覚伝達手段は、前記装着者の聴覚または皮膚の触覚または視覚に前記感覚フィードバック信号を伝達することを特徴とする装着式動作補助装置。
【請求項3】
請求項1に記載の装着式動作補助装置であって、
さらにタスクとして分類した装着者の動作パターンを構成する一連の最小動作単位(フェーズ)の各々の基準パラメータを格納したデータベースを備え、
前記随意的制御手段は、前記物理量センサにより検出された物理量と前記データベースに格納された基準パラメータとを比較することにより、前記装着者のタスクのフェーズを推定し、このフェーズに応じた動力を前記駆動手段に発生させるための随意的制御信号を生成することを特徴とする装着式動作補助装置。
【請求項4】
義肢が装着された装着者の動作を補助あるいは代行する装着式動作補助装置であって、
前記義肢に対して動力を付与する駆動手段を有した動作補助装着具と、
前記義肢の装着箇所の生体信号を検出する生体信号センサと、
前記義肢の動作に関する物理量を検出する物理量センサと、
前記生体信号センサにより検出された生体信号を用い、前記装着者の意思に従った動力を前記駆動手段に発生させるための随意的制御信号を生成する随意的制御手段と、
タスクとして分類した装着者の動作パターンを構成する一連の最小動作単位(フェーズ)の各々の基準パラメータを格納したデータベースと、
前記物理量センサにより検出された物理量と前記データベースに格納された基準パラメータとを比較することにより、前記装着者のタスクのフェーズを推定し、このフェーズに応じた動力を前記駆動手段に発生させるための制御信号を生成する自律的制御手段と、
前記随意的制御手段からの随意的制御信号および前記自律的制御手段からの自律的制御信号を合成する制御信号合成手段と、
前記制御信号合成手段により合成された総制御信号に応じた総駆動信号を生成し、前記駆動手段に供給する駆動信号生成手段と、
前記物理量センサにより検出された物理情報信号に基づいて感覚フィードバック信号を生成する感覚フィードバック信号生成手段と、
該感覚フィードバック信号生成手段で生成された感覚フィードバック信号を前記装着者に伝達する感覚伝達手段と、
を備えることを特徴とする装着式動作補助装置。
【請求項5】
請求項4に記載の装着式動作補助装置であって、
前記感覚伝達手段は、前記装着者の聴覚または皮膚の触覚または視覚に前記感覚フィードバック信号を伝達することを特徴とする装着式動作補助装置。
【請求項6】
請求項4に記載の装着式動作補助装置において、
前記データベースは、前記随意的制御信号と前記自律的制御信号との比(ハイブリッド比)を、前記フェーズの基準パラメータと所要の対応関係となるように格納し、
前記制御信号合成手段は、前記自律的制御手段により推定されたタスクのフェーズに応じ、前記対応関係に基づいて規定されるハイブリッド比となるように、前記随意的制御信号および前記自律的制御信号を合成することを特徴とする装着式動作補助装置。
【請求項7】
請求項4乃至6の何れかに記載の装着式動作補助装置であって、
前記義肢を動作させるための指令信号を、前記生体信号センサにより検出された生体信号から取得する生体信号処理手段を備え、
前記駆動信号生成手段は、前記生体信号処理手段により取得された指令信号に応じて生成したパルス電流の供給により、前記駆動手段の動作を開始させることを特徴とする装着式動作補助装置。
【請求項8】
請求項4に記載の装着式動作補助装置であって、
前記随意的制御手段は、前記物理量センサにより検出された物理量と前記データベースに格納された基準パラメータとを比較することにより、前記装着者のタスクのフェーズを推定し、このフェーズに応じた動力を前記駆動手段に発生させるための随意的制御信号を生成することを特徴とする装着式動作補助装置。
【請求項9】
義肢が装着された装着者の動作を補助あるいは代行する装着式動作補助装置であって、
前記義肢に対して動力を付与する駆動手段を有した動作補助装着具と、
前記義肢の動作に関する物理量を検出する物理量センサと、
タスクとして分類した装着者の動作パターンを構成する一連の最小動作単位(フェーズ)の各々の基準パラメータを格納したデータベースと、
前記物理量センサにより検出された物理量と前記データベースに格納された基準パラメータとを比較することにより、前記装着者のタスクのフェーズを推定し、このフェーズに応じた動力を前記駆動手段に発生させるための自律的制御信号を生成する自律的制御手段と、
前記自律的制御信号に応じた駆動信号を生成し、前記駆動手段に供給する駆動信号生成手段と、
前記物理量センサにより検出された物理情報信号に基づいて感覚フィードバック信号を生成する感覚フィードバック信号生成手段と、
該感覚フィードバック信号生成手段で生成された感覚フィードバック信号を前記装着者に伝達する感覚伝達手段と、
を備えることを特徴とする装着式動作補助装置。
【請求項10】
請求項9に記載の装着式動作補助装置であって、
前記感覚伝達手段は、前記装着者の聴覚または皮膚の触覚または視覚に前記感覚フィードバック信号を伝達することを特徴とする装着式動作補助装置。
【請求項11】
請求項1乃至8の何れかに記載された装着式動作補助装置であって、
前記駆動手段から付与された負荷としての駆動力に対する生体信号を前記生体信号センサによって検出し、この検出信号に基づいて補正値を設定するキャリブレーション手段を備えたことを特徴とする装着式動作補助装置。
【請求項12】
請求項11に記載された装着式動作補助装置であって、
キャリブレーション手段は、
前記動作補助装着具が前記装着者に装着された状態で前記駆動源からの所定の駆動力を外的負荷として付与する負荷発生手段と、
該負荷発生手段により付与された駆動力に抗して発生した生体信号を前記生体信号センサによって検出し、この検出信号に基づいて前記駆動信号生成手段が行う演算処理のパラメータを生成し、このパラメータを当該装着者固有の補正値として設定する補正値設定手段と、
を備えたことを特徴とする装着式動作補助装置。
【請求項13】
請求項12に記載された装着式動作補助装置であって、
前記生体信号センサにより検出された前記生体信号と前記駆動手段を制御する制御信号との対応関係のデータが格納されたデータベースを有し、
前記補正値設定手段は、前記データベースに格納された制御信号を前記補正値に補正することを特徴とする装着式動作補助装置。
【請求項14】
義肢に対して動力を付与する駆動手段を有した動作補助装着具の動作を制御する装着式動作補助装置の制御方法であって、
前記義肢を動作させるための指令信号を生体信号センサにより検出された生体信号から取得する手順と、
前記生体信号から取得された指令信号を用い、前記装着者の意思に従った動力を前記義肢の駆動手段に発生させるための随意的制御信号を生成する手順と、
前記随意的制御信号に基づいて、前記生体信号の信号に応じた駆動信号を生成し、前記駆動手段に供給する手順と、
前記義肢に設けられた物理量センサにより前記義肢の動作に関する物理量を検出する手順と、
前記物理量センサにより検出された物理情報信号に基づいて感覚フィードバック信号を生成する手順と、
前記感覚フィードバック信号を前記装着者に伝達する手順と、
を実行することを特徴とする装着式動作補助装置の制御方法。
【請求項15】
請求項14に記載の装着式動作補助装置の制御方法であって、
タスクとして分類した装着者の動作パターンを構成する一連の最小動作単位(フェーズ)の各々の基準パラメータをデータベースに格納する手順と、
前記物理量センサにより検出された物理量と前記データベースに格納された基準パラメータとを比較することにより、前記装着者のタスクのフェーズを推定し、このフェーズに応じた動力を前記駆動手段に発生させるための制御信号を生成する手順と、
をさらに有することを特徴とする装着式動作補助装置の制御方法。
【請求項16】
義肢に対して動力を付与する駆動手段を有した動作補助装着具の動作を制御する装着式動作補助装置の制御方法であって、
タスクとして分類した装着者の動作パターンを構成する一連の最小動作単位(フェーズ)の各々の基準パラメータをデータベースに格納する手順と、
前記義肢を動作させるための指令信号を生体信号センサにより検出された生体信号から取得する手順と、
前記生体信号から取得された指令信号を用い、前記装着者の意思に従った動力を前記駆動手段に発生させるための随意的制御信号を生成する手順と、
前記義肢の動作に関する物理量を検出する物理量センサにより検出された物理量と前記データベースに格納された基準パラメータとを比較することにより、前記装着者のタスクのフェーズを推定し、このフェーズに応じた動力を前記駆動手段に発生させるための自律的制御信号を生成する手順と、
前記随意的制御信号と前記自律的制御信号とを合成する手順と、
合成された総制御信号に応じた駆動信号を生成し、前記駆動手段に供給する手順と、
前記義肢に設けられた物理量センサにより前記義肢の動作に関する物理量を検出する手順と、
前記物理量センサにより検出された物理情報信号に基づいて感覚フィードバック信号を生成する手順と、
前記感覚フィードバック信号を前記装着者に伝達する手順と、
を実行することを特徴とする装着式動作補助装置の制御方法。
【請求項17】
請求項16に記載の装着式動作補助装置の制御方法であって、
前記物理量センサにより検出された物理量と前記データベースに格納された基準パラメータとを比較することにより、前記装着者のタスクのフェーズを推定し、このフェーズに応じた動力を前記駆動手段に発生させるための制御信号を生成することを特徴とする装着式動作補助装置の制御方法。
【請求項18】
義肢に対して動力を付与する駆動手段を有した動作補助装着具の動作を制御する装着式動作補助装置の制御方法であって、
前記義肢の動作に関する物理量を物理量センサにより検出する手順と、
タスクとして分類した装着者の動作パターンを構成する一連の最小動作単位(フェーズ)の各々の基準パラメータをデータベースに格納する手順と、
前記物理量センサにより検出された物理量と前記データベースに格納された基準パラメータとを比較することにより、前記装着者のタスクのフェーズを推定し、このフェーズに応じた動力を前記駆動手段に発生させるための自律的制御信号を生成する手順と、
前記自律的制御信号に応じた駆動信号を生成し、該駆動信号を前記駆動手段に供給する手順と、
前記義肢に設けられた物理量センサにより前記義肢の動作に関する物理量を検出する手順と、
前記物理量センサにより検出された物理情報信号に基づいて感覚フィードバック信号を生成する手順と、
前記感覚フィードバック信号を前記装着者に伝達する手順と、
を実行することを特徴とする装着式動作補助装置の制御方法。
【請求項19】
請求項14乃至18に記載された装着式動作補助装置の制御方法であって、
前記駆動手段から付与された負荷としての駆動力に対する生体信号を前記生体信号センサによって検出し、この検出信号に基づいて補正値を設定するキャリブレーション処理を実行することを特徴とする装着式動作補助装置の制御方法。
【請求項20】
請求項14乃至19の何れかに記載された制御方法を、装着式動作補助装置を制御するためのコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2009−60946(P2009−60946A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−228868(P2007−228868)
【出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【出願人】(504171134)国立大学法人 筑波大学 (510)
【Fターム(参考)】