説明

裏当装置及びその搬送方法

【課題】 一体物として搬送することができ、搬送先での組立及び据え付け期間を短縮できる裏当ユニット構造体を提供する。
【解決手段】 仮止めされた被溶接材をその溶接線に沿って溶接する際に使用される裏当装置において、溶接線方向に延びる少なくとも2本の角パイプ状の台フレーム9とこれらの台フレーム9を相互に連結する連結フレーム23とを備えた台部2と、この台部2上に配置され溶接線に垂直の方向に被溶接材を移動させる移動装置4と、台部2上に搭載され被溶接材の溶接線の下方に配置される裏当部1と、を有し、各角パイプ状の台フレーム9は1体化された構造体である。これによって、裏当ユニット1と台部2とを組み合わせた裏当装置28を一体物として搬送し、据え付けることができ、据え付け期間を短縮して、生産性への悪影響を最小限とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、片面溶接に使用される長尺物である裏当部(以下、裏当ユニットという)及びこれを支持する台部とで構成される裏当装置を一体成形品として搬送することにより、据え付け現場での組立及び据え付け期間を短縮することができる裏当装置及びその搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、片面溶接方法を採用する各種製造工場におけるFCB(フラックス・カッパー・バッキング)装置に代表される裏当装置の導入は、老朽化した装置の更新が多く、稼働中の工場における入れ替え作業が主流となっている。従って、生産を一時中断して旧装置を撤去し、その後、新しい装置を据え付けることになり、据え付け時間をできるだけ短くする必要がある。
【0003】
片面溶接に使用される裏当ユニットは、例えば裏当銅板とその接続部品、裏当銅板受け、断熱シート、エアホース、裏当フレーム(ユニットフレーム)等で構成されており、組み上げ状態は、例えば24m程度の長さを有する細長い構造物である。裏当ユニットは、通常昇降フレーム及び長手方向に多数配置された昇降用駆動装置を介して車輪を有する台部に搭載されている。
【0004】
裏当ユニットが搭載される台部には、走行モータ、コンベアローラモータ、各種リミットスイッチ、電気配線、油空圧シリンダ及びその配管等が搭載されており、例えばその長さは約26mであり、床面に敷設されたレール上に、例えば約4m間隔に配置された車輪によって支持されている。
【0005】
図13乃至図18は、このような裏当ユニットを台部に搭載した従来の裏当装置を示す説明図であり、図13はその平面図、図14は図13の一部切欠側面図、図15は図14のC−C線矢視方向断面図、図16は図13の裏当銅板の拡大平面図、図17は図16の側面図、図18は図17のD−D線矢視方向断面図である。
【0006】
図13及び図14において、この裏当装置はFCB方式の裏当装置であり、中心部に裏当銅板101がその長さ方向に沿って多数1列に配列された裏当ユニット105と、これを支持する昇降フレーム108とから主として構成されている。図16及び図17において、裏当銅板101は銅板継手130及び銅板継手ピン131によって夫々連結されている。また、このように配列された裏当銅板101はローラチェイン112によって裏当装置の長さ方向に引っ張られるように支持されている。
【0007】
図18において、裏当銅板101の表面に裏当フラックスが散布されて裏当フラックス層が形成されている。
【0008】
図15において、裏当ユニット105には裏当銅板101と、この裏当銅板101を支持する裏当銅板受け102とが設けられており、裏当銅板受け102の下方には断熱シート103を介してエアホース104が配置されている。断熱シート103は裏当銅板102からエアホース104への熱移動を防止している。
【0009】
裏当銅板101、裏当銅板受け102、断熱シート103、エアホース104等を有する裏当ユニット105はユニットフレーム106上に載置されており、このユニットフレーム106は1対の車輪107を介して水平方向に移動可能に昇降フレーム108上に載置されている。これによってユニットフレーム106は昇降フレーム108と相対的に水平方向に移動可能となっている。昇降フレーム108は昇降装置109を介して図示省略した台部に搭載されている。なお、図15において、裏当ユニット105の右半分は、エアホース104に加圧空気を供給して裏当銅板101及びこれに支持された裏当フラックス層(図示省略)を上昇させた状態を示すものである。
【0010】
昇降フレーム108には断面三角形状のフラックス回収部110が設けられており、裏当銅板101から落下したフラックスはここで回収される。フラックス回収部110の底部中央部にはスクリューコンベア111が配置されており、フラックス回収部で回収されたフラックスはスクリューコンベア111によって系外に搬出される。
【0011】
図19は裏当装置を有する片面溶接装置を示す正面図である。図19において、裏当装置は被溶接材である仮止めされた複数の鋼板125の下方に配置される。裏当装置は裏当ユニット105とこれが搭載された台部115とで構成されている。
【0012】
走行レール120上に車輪119を有する台部115が搭載されている。台部115の底部を形成する基部材116は走行レール120に沿って水平に配置されている。基部材116の左右両端には車輪119が設けられており(片方図示省略)、その上部に夫々縦部材117が載置されている。縦部材117の上部には夫々走行レールに沿った幅方向に延びる横部材118が設けられている。
【0013】
左右の縦部材117及び横部材118相互間の空間部の上部に裏当銅板101を備えた裏当ユニット105が配置されており、この裏当ユニット105は昇降フレーム108上に載置されている。
【0014】
昇降フレーム108は昇降装置109を介して台部115の基部材116に昇降可能に搭載されている。これによって裏当ユニット105は被溶接材である鋼板125に対して昇降及び溶接線に対して直角方向に移動可能となっている。台部115の横部材118の上部にはパネル移動ローラ121及び支持ローラ123が設けられている。パネル移動ローラ121は駆動装置122によって駆動される。
【0015】
鋼板125の上部には、ガーダー本体126が水平移動可能に支持されており、このガーダー本体126に溶接ガイドフレーム127、自動溶接機128及びフラックス供給装置132が搭載されている。また、ガーダー本体126の上部には溶接機128に溶接ワイヤを供給するワイヤリール129が配置されている。
【0016】
このような構成の従来の片面溶接装置は次のように動作する。即ち、駆動装置122によって駆動されたパネル移動ローラ121は鋼板125の溶接線を裏当ユニット105の裏当銅板101の上部まで移送する。溶接線を裏当銅板101の上部まで移動させた後、裏当ユニット105のエアホース104に加圧空気を供給して裏当銅板101に載置された裏当フラックス層(図示省略)を前記溶接線の裏面に当接するように配置する。
【0017】
溶接線の裏面に裏当フラックス層を配置した後、自動溶接機128をガーダー本体126及び溶接ガイドフレーム127を用いて溶接線の上方まで移動させ、ワイヤリール129から供給される溶接ワイヤを使用して上方から溶接線に沿って片面自動溶接を施す。
【0018】
ところで、上記従来技術における裏当ユニット105及び台部115は共に複数の部材を組み立てたものであり、搬送に耐え得る強度を有するものではなかった。即ち、裏当ユニット105の裏当銅板101はその長さ方向に沿って例えば60個並べて連結したものであり、裏当銅板101を支持する裏当銅板受け102はその長さ方向に沿って、例えば6つに分割された構成部材が組み立てられたものである。更に、断熱シート103は一体ものであるが、エアホース104は2本の構成部材が連結されたものであり、ユニットフレーム106はその長さ方向に沿って3つに分割された構成部材が組み立てられたものである。従って、裏当ユニット105としての強度は小さく、一体物として搬送することは不可能であった。
【0019】
また、裏当ユニットが搭載された台部も複数の部材を組み合わせたものである。図20は、図19の裏当装置を示す拡大図である。
【0020】
図20において、走行レール120上に車輪119を有する台部115が搭載されている。台部115の左右の縦部材117及び横部材118相互間の空間部の上部に裏当銅板101を備えた裏当ユニット105が配置されており、この裏当ユニット105は昇降フレーム108に上に載置されている。
【0021】
昇降フレーム108は上述したように昇降装置109を介して台部115に昇降可能に搭載されている。これによって裏当ユニット105は被溶接材である鋼板125に対して昇降可能となっている。
【0022】
昇降フレーム108は断面図上一体物に見えるが、長さ方向に沿って例えば3分割されており、長さ約8mの3つの構成部材で構成されている。また、台部115を形成する基部材116はその中央部分で分割された左右2つの構成部材からなり、この2つの構成部材はその長さ方向に沿って例えば3分割されている。即ち、基部材116は長さ約8mの6つの構成部材で構成されていることになる。また縦部材117及び横部材118も左右が夫々分割された独立の部材であり、これら独立の部材はその長さ方向に沿って例えば3分割されており、夫々6つの構成部材で構成されている。なお、台部115は例えば約4m間隔に配置された車輪119によってレール120上に支持されており、4m間隔で支持された場合に耐え得る程度の強度しか有していない。
【0023】
このように、上記従来技術における裏当ユニット及び台部は、数多くの構成部材を組み立て接合したものであるために強度が不足し、一体物として吊り上げ又は搬送することは不可能であった。従って従来から、各構成部材を製作工場で製造した後、組立、作動テストを行い、その後、搬送のためだけに各構成部材毎に分解し、更に各々の接続を解体した後、梱包し、搬送し、搬送先の現場で再度組み立てることが行われていた。従って、据え付け作業が煩雑となり、また据え付け所要期間が長くなり、これによって装置停止期間が長くなって生産性が著しく低下するという問題点があった。
【0024】
なお、裏当ユニット又はこれを支持する台部等の長尺物を陸上輸送する場合、その幅方向及び高さ方向にも規制値が設けられており、長さ方向だけでなく幅方向についても分割が必要になる場合がある。
【0025】
片面溶接装置の裏当ユニットに関する従来技術としては、例えば特許文献1乃至3が挙げられる。特許文献1には、被溶接鋼板のクランプ位置を変更することにより、薄板を溶接する薄板溶接モードと、厚板を溶接する厚板溶接モードを切替え可能とした技術が開示されている(特許文献1、図1及び図2)。
【0026】
また、特許文献2には、裏当てフラックス散布回収手段を昇降手段により被溶接鋼板と干渉しないように退避させ、又被溶接鋼板の搬送後には裏当部まで裏当フラックス散布回収手段を進出できるようにした片面溶接装置が記載されている(特許文献2、図3乃至図5)。
【0027】
更に、特許文献3には、被溶接鋼板を拘束する手段が第1クランプ及び第2クランプからなり、第1クランプ及び第2クランプが被溶接鋼板上に夫々配置される第1及び第2磁性体と、これら磁性体の直下に配置され前記各被溶接鋼板及び各磁性体を吸着自在な磁気吸着装置とで構成した片側溶接装置が記載されている(特許文献3、図1及び図2)。
【0028】
【特許文献1】特開平10−128581号公報
【特許文献2】特開平11−33728号公報
【特許文献3】特開2000−288785号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
しかしながら、上記従来技術は、裏当装置の強度を向上させ、一体物として搬送可能とし、これによって搬送先での据え付け期間を短縮することを目的としたものではなく、裏当装置を搬送した場合、搬送現場における据え付け期間が長くなって生産性が低下するという上記問題点は未解決のままである。
【0030】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、搬送時に一体物として搬送することができ、搬送先での組み立て及び据え付け期間を短縮することができる裏当装置及びその搬送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本願第1発明に係る裏当装置は、仮止めされた被溶接材をその溶接線に沿って溶接する際に使用される裏当装置において、溶接線方向に延びる少なくとも2本の台フレームとこれらの台フレームを相互に連結する連結フレームとを備えた台部と、この台部上に配置され前記溶接線に垂直の方向に前記被溶接材を移動させる移動装置と、前記台部上に搭載され前記被溶接材の溶接線の下方に配置される裏当部と、を有し、前記各台フレームは1体化された構造物であることを特徴とする。
【0032】
本願第1発明に係る裏当装置において、この裏当装置は前記台部上に配置された昇降装置を有し、前記裏当部は前記昇降装置上に配置され、前記昇降装置により昇降するものであることが好ましい。
【0033】
本願第1発明に係る裏当装置において、前記裏当部は、前記昇降装置上に配置された第1フレームと、この第1フレーム上に前記溶接線に垂直の方向に移動可能に設けられた裏当材とを有することが好ましい。
【0034】
本願第1発明に係る裏当装置において、前記裏当部は、裏当フラックスを支持する裏当銅板と、この裏当銅板を上下動させる昇降装置とを有するフラックス・カッパー・バッキング(FCB)方式であることが好ましい。
【0035】
本願第1発明に係る裏当装置において、前記裏当部は、裏当フラックスを支持するフラックスコンベアと、このフラックスコンベアを上下動させる昇降装置とを有するレジン・フラックス(RF)方式の裏当部であってもよい。
【0036】
本願第1発明に係る裏当装置において、前記台フレームは、角パイプであることが好ましい。
【0037】
本願第1発明に係る裏当装置において、前記台フレームは、前記台部の幅方向に突出した被溶接材の支持部材を有し、この支持部材が着脱自在に設けられていることが好ましい。
【0038】
本願第2発明に係る裏当装置の搬送方法は、前記台部、台部上に配置された被溶接材の移動装置及び被溶接材の溶接線の下方に配置される裏当部とを有する裏当装置を一体として搬送する。
【0039】
また、本願第3発明に係る裏当装置の搬送方法は、前記被溶接材の溶接線の下方に配置される裏当部を前記第1フレームごと溶接機ビームに搭載して搬送する。
【発明の効果】
【0040】
本願第1発明に係る裏当装置によれば、台部が溶接線方向に延びる少なくとも2本の台フレームを有することにより、裏当装置全体としての吊り上げ強度及び搬送強度が向上する。従って、裏当装置を一体ものとして搬送することができ、搬送先における据え付け作業が容易となり、据え付け期間が短縮される。また、裏当装置据え付けのための溶接機停止期間を必要最小限とすることができるので、装置を停止することによる生産性の低下を最小限に抑えることができる。
【0041】
本願請求項2に係る裏当装置によれば、裏当装置が前記台部上に配置された昇降装置を有し、前記裏当部を前記昇降装置上に配置し、前記昇降装置により昇降するものとしたので、この裏当装置を縦流れ方式の片面溶接だけでなく、横流れ方式の片面溶接に適用することができる。
【0042】
本願請求項3に係る裏当装置によれば、前記裏当部が前記昇降装置上に配置された第1フレームと、この第1フレーム上に前記溶接線に垂直の方向に移動可能に設けられた裏当材とを有するので、溶接線に対する裏当部の水平方向位置を微調整することができる。
【0043】
本願請求項4に係る裏当装置によれば、裏当部をフラックス・カッパー・バッキング(FCB)方式としてので、被溶接材が比較的厚く、目違いがない場合の片面溶接に好適に使用することができる。
【0044】
本願請求項5に係る裏当装置によれば、裏当部をレジン・フラックス(RF)方式としたので、被溶接材の板厚、目違いの有無等を考慮し、被溶接材が比較的薄く、目違いがある場合に好適に使用することができる。
【0045】
本願請求項6に係る裏当装置によれば、台フレームを角パイプとしたので、裏当装置の総重量を増大させることなく、強度を向上させることができる。
【0046】
本願請求項7に記載の裏当装置によれば、台フレームが台部の幅方向に突出した被溶接材の支持部材を有し、この支持部材を着脱自在に設けたので、必要に応じて前記支持部材を取り外すことにより、幅方向の寸法を縮小して規制寸法内に収めることができる。
【0047】
本願第2発明に係る裏当装置の搬送方法によれば、台部と、この台部上に配置された被溶接材の移動装置及び被溶接材の溶接線の下方に配置される裏当部とを有する裏当装置を一体として搬送するので、搬送先での据え付け及び組み立て作業が軽減され、作動テストの一部を省略することができる。
【0048】
本願第3発明に係る裏当装置の搬送方法によれば、裏当部を第1フレームごと溶接機ビームに搭載して搬送するようにしたので、台部を有しない裏当装置であっても溶接機ビームを補強材として利用して一体物として搬送することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
以下、本発明の実施の形態について添付の図面を参照して詳細に説明する。図1乃至図4は、本発明の第1実施形態に係る裏当装置を示す説明図であり、図1はその平面図、図2は側面図、図3及び図4は夫々図2のA−A線矢視方向断面図であり、図3は昇降フレームが上昇位置にある場合、図4は、昇降フレームが下降位置にある場合を示す図である。
【0050】
図1及び図2において、この裏当装置28は細長い長尺物であって、その中央部分の裏当ユニット1と、この裏当ユニット1を支持する台部2とから主として構成されている。
【0051】
裏当ユニット1の長さ方向に沿って裏当銅板3が多数1列に配置されている。裏当銅板3を挟むように台部2には所定の間隔で、その長さ方向に沿って上下に2本ずつ平行に配置された角パイプ状の台フレーム9が合計4本配置されている。角パイプ状の台フレーム9は連結フレーム23によって相互に連結されて台部2を形成している。
【0052】
上側の2本の角パイプ状の台フレーム9にはパネル移動ローラ4及び電磁マグネット5が所定間隔で多数配置されている。パネル移動ローラ4は被溶接材としての鋼板をパネルパスライン26上で平行移動させて開先線を裏当銅板3上に一致させる。一方、電磁マグネット5は被溶接材を電磁力によって下方に引きつけることによって固定する。
【0053】
裏当ユニット1の上方にはフラックス供給装置27が設けられており、このフラックス供給装置27はパネルパスライン26に平行に移動して裏当装置1の裏当銅板3上に裏当フラックスを散布する。
【0054】
図3及び図4において、裏当ユニット1には裏当銅板3と、この裏当銅板3を支持する裏当銅板受け11とが設けられており、裏当銅板受け11の下方には断熱シート12を介してエアホース13が配置されている。断熱シート12は裏当銅板3とエアホース13との間の熱移動を防止する。
【0055】
エアホース13に高圧空気を導入することにより、裏当銅板受け11に支持された裏当銅板3上が上昇し、これによって裏当銅板3上に散布された裏当フラックス層(図示省略)が被溶接材の開先線の裏面に当接するように配置される(図3右側参照)。一方、エアホース13に供給した加圧空気を排出させることにより、裏当銅板受け11に支持された裏当銅板3が下降し、これによって裏当銅板3上に散布された裏当フラックス(図示省略)が開先線の裏面から離れる(図3左側参照)。
【0056】
裏当銅板3、裏当銅板受け11、断熱シート12、エアホース13等を有する裏当ユニット1はユニットフレーム14上に載置されており、このユニットフレーム14は1対の車輪15を介して水平方向に移動可能に昇降フレーム(第1フレーム)16に載置されている。これによってユニットフレーム14は昇降フレーム16と相対的に水平方向に移動可能に設けられている。
【0057】
昇降フレーム16には断面三角形状のフラックス回収部17が設けられており、このフラックス回収部17の底部中央部にスクリューコンベア18が配置されている。裏当ユニット1の裏当銅板3上に散布された裏当フラックスのうち裏当銅板3から落下したフラックスはフラックス回収部17で受け取られ、スクリューコンベア18によって系外に排出、回収される。
【0058】
昇降フレーム16は、昇降装置19を介して車輪を有する台部2に搭載されている。即ち、昇降フレーム16に取り付けられた昇降装置19の下端は台部2の基部材6を貫通して台車本体22まで達しており、これによって昇降フレーム16は台部2に対して昇降可能に支持されている。
【0059】
台部2は走行レール20上に載置された1対の車輪21を有する台車本体22と、この台車本体22に載置され上部が解放された箱型のフレームとから主として構成されている。箱型のフレームは基部材6と、この基部材6の両端部に夫々配置された縦部材7と、この縦部材7の上端部に夫々連結するように配置された横部材8とで主として構成されている。
【0060】
台部2の基部材6と縦部材7の下端部とが交わる部分及び縦部材7の上端部と横部材8とが交わる部分には裏当装置の長さ方向に沿って角パイプ状の台フレーム9が配置されている。これによって、裏当ユニット1とこれを支持する台部2とで構成される裏当装置の吊り上げ強度及び搬送強度が向上し、裏当装置を一体物として吊り上げ、搬送することができるようになる。各台フレーム9は、例えば複数本のフレームを溶接等によって接合して1体化させた構造体であり、強度及び剛性が高い。
【0061】
台部2の上部側に平行に配列された2本の角パイプ状の台フレーム9上にパネル移動ローラ4及び電磁マグネット5が所定間隔で取り付けられている。パネル移動ローラ4は隣接して設けられた駆動源としてのモータ25によって駆動される。支持ローラ10は夫々支持部材を介して台部2の横部材8から台部2の幅方向に突出するように設けられている。被溶接材の支持部材としての支持ローラ10は、例えばボルトナット等の固定具によって着脱自在に設けられている。支持ローラ10は、パネルパスライン26に沿って平行移動する被溶接材をサポートする。
【0062】
以下、このような構成の本発明の第1実施形態に係る裏当装置の動作を説明する。
【0063】
本実施形態に係る裏当装置は昇降フレーム16毎上下に昇降可能であり、被溶接材を溶接線と直交する方向に移動させる横流れ方式の片面溶接に適用される。図5は、横流れ方式の片面溶接における被溶接材と裏当装置との位置関係を示す図である。図5(a)において、仮止めされた4枚の被溶接材60に対し、その溶接線61、62、63と同一方向に縦長の裏当銅板3が配置されている。
【0064】
横流れ方式の片面溶接においては、第1の溶接線61を溶接した後、第2の溶接線62を溶接する必要があるので、第1溶接線61を溶接した後も裏当ユニット1の上方には被溶接材60が存在し、開放されない。従って裏当銅板3上に裏当フラックスを散布する際、被溶接材60が邪魔になる。従って、本実施形態に係る裏当装置は裏当ユニット1を昇降フレーム16毎昇降させる昇降装置19を有する。
【0065】
このような裏当装置を使用した片面溶接(サブマージアーク溶接)は、以下のように行われる。先ず、被溶接材が裏当ユニット1の上部に配置される前に、裏当ユニット1の上方のフラックス供給装置27(図2参照)を裏当銅板3の上部まで移動し、裏当ユニット1の長さ方向に沿って移動して裏当銅板3上にフラックスを均一に散布して裏当フラックス層を形成する。
【0066】
次に、パネル移動ローラ4及び支持ローラ10を駆動し、仮止めされた被溶接材60を裏当ユニット1の上部のパネルライン26に沿って移動し、第1溶接線61が裏当ユニット1の裏当銅板3と重なる位置で停止する。このとき、昇降フレーム16に載置された1対の車輪15によって被溶接材60の第1溶接線61に対する裏当銅板3の相対位置を微調整する。
【0067】
第1溶接線61に対する裏当銅板3の相対位置を決定した後、裏当銅板3の下方に設けられたエアホース13に加圧空気を導入してエアホース13を膨張させ、これにより裏当銅板3に載置された裏当てフラックス層(図示省略)を被溶接材60の第1溶接線61の下面に押しつけるように配置する(図3右側参照)。このとき磁気マグネット5を起動し、上方に押し上げられるように付勢された被溶接材60を磁気によって下方に引きつけて固定する。
【0068】
第1溶接線61の裏面に裏当ユニット1を配置し、且つ被溶接材60の固定が終了した後、図示省略した溶接トーチを使用して、例えばV形開先の上方から片面サブマージアーク溶接を施して第1溶接線61を溶接する。このとき、鋼板を貫通した溶接金属は裏当フラックスによって支えられ、裏ビートの形状が整えられる。
【0069】
第1溶接線61の溶接が終了した後、被溶接材60を溶接線61に直交する方向(図5中右方向)に移動し、次の第2溶接線62が裏当ユニット1の裏当銅板3と重なる位置で停止する。この状態で、昇降装置19を駆動して裏当ユニット1を昇降フレーム16ごと下降させ(図4参照)、被溶接材60、即ちパネルライン26と裏当ユニット1の上部との間に所定の空間を設ける。被溶接材60と裏当ユニット1との間に空間を設けた後、フラックス供給装置27(図2参照)を裏当銅板3の上方まで移動し、上記と同様にして裏当銅板3上に裏当フラックスを散布して新しい裏当フラックス層を形成する。新しいフラックス層を形成した後、フラックス供給装置27を水平移動して裏当銅板3及び溶接線62から遠ざける。
【0070】
次いで、昇降装置19によって裏当ユニット1を昇降フレーム16ごと上方向に移動させ(図3参照)、裏当ユニット1の裏当銅板3を被溶接材60の第2溶接線62の裏面近傍で停止する(図3左側参照)。次に、エアホース13に加圧空気を導入してこれを膨張させその上部の裏当銅板3上に形成された裏当フラックス層(図示省略)を第2溶接線62の裏面に配置して(図3右側参照)同様に第2溶接線62に対して片面サブマージアーク溶接を施す。その後、同様の操作を繰り返して第3溶接線に対して片面サブマージアーク溶接を施し、被溶接材60の3つの溶接線の溶接を終了する。
【0071】
本実施形態によれば、台部2の長さ方向に沿って始端から終端まで延びる4本の角パイプ状の台フレーム9を設けたことにより、総重量を大幅に増大することなく、裏当ユニット1を支持する台部2の強度を向上させることができる。これによって裏当装置としての吊り上げ強度及び搬送強度が向上する。従って、裏手装置を一体ものとして吊り上げて例えばポールトレーラに搭載して搬送することができるようになり、搬送先における据え付け作業が容易となり、据え付け期間を短縮することができる。また、裏当ユニット据え付けのための溶接機停止期間を必要最小限として生産性の低下を極力少なくすることができる。
【0072】
本実施形態によれば、裏当装置を製造工場で検査調整された状態のまま解体することなく搬送し、そのまま搬送先に据え付けることができるので、現地での検査、調整の一部を省略することができる。
【0073】
図6は、本実施形態の裏当装置を一体ものとして天井走行クレーンで吊り上げた状態を示す説明図である。図6において、本実施形態における裏当装置28は吊り上げワイヤ30を介して天井走行クレーン29によって一体ものとして吊り上げられている。
【0074】
本実施形態によれば、裏当装置の完成重量をクレーンで吊り上げられる限度内、例えば30t(トン)以内とすることができ、且つその強度を向上させることができるので、中央付近の2点吊りによって吊り上げることができる。また、本実施形態の裏当装置は輸送車に載せた両端近傍の2点支持によっても撓みが少なく、内部応力が許容範囲内になり、長距離輸送中の振動にも共振することなく十分耐えられる強度を有するものとなる。
【0075】
本実施形態において、台部2の上部の幅方向に突出するように配置された被溶接材の支持部材としての補助ローラ10をこの補助ローラ10を支持するローラフレームごと着脱自在に設けたことにより、台部2の幅方向寸法が陸上輸送時の限界寸法である例えば2.5mを超える場合に、前記補助ローラ10をローラフレームごと取り外して輸送限界値内とすることができる。なお、長さ寸法の輸送限界値は例えば25mであり、本実施形態に係る裏当装置はこれをクリアすることができる。
【0076】
本実施形態において、裏当装置は、裏当銅板3、裏当銅板受け11、断熱シート12、エアホース13をはじめとする接続又は付属部品、油空圧配管、電気配線等が所定位置に配置され又は連結された状態のまま搬送することができる。これによって、機体の接続、配線、配管等が不要となり、外部からの配線及び配管を行うだけで、据え付けが完了し、据え付け時間をより短縮することができる。
【0077】
本実施形態においては、角パイプ状の台フレーム9を、上下に夫々平行に設けた合計4本としたが、台部2の高さが低い場合は、角パイプ状の台フレーム9を1段とし、平行に配置した2本とすることができる。これによって総重量をそれほど増加させることなく強度を向上させることができる。なお、強度が不足する場合は適宜角パイプ状の台フレーム9の本数を増加させればよい。
【0078】
次に、本発明の第2実施形態に係る裏当装置について図7を参照して説明する。図7は本発明の第2実施形態に係る裏当装置の正面図である。図7において、本実施形態に係る裏当装置は、被溶接材の開先線の裏面に裏当フラックスを配置する2方式の裏当ユニットを有し、この裏当ユニットの水平方向位置調整装置を共通に設けたものである。
【0079】
図7において、走行レール31上に1対の車輪32を有する台部33が搭載されている。台部33は走行レール31に沿って水平に設けられた基部材34と、この基部材34上に均等に立設された3本の垂直部材を有している。
【0080】
この3本の垂直部材は裏当ユニットの長さ方向の始端から終端まで延びる角パイプ状の台フレーム35によって構成されている。各角パイプ状の台フレーム35は1体的な構造体である。これによって台部33の強度が増し一体物として吊り上げ及び搬送に耐えられるようになる。
【0081】
角パイプ状の台フレーム35からなる3本の垂直部材の上部には被溶接材を支持し水平方向に移動させるパネル移動ローラ38又は被溶接材を磁気によって吸引し、固定する磁気マグネット39が設けられている。また3本の垂直部材相互間には夫々水平の連結フレーム41、42が掛け渡されている。連結フレーム41、42上には中央の垂直部材を貫通させるようにユニットフレーム43が搭載されており、このユニットフレーム43上に走行レール1の長さ方向に沿って第1裏当ユニット44及び第2裏当ユニット45が並設されている。
【0082】
第1裏当ユニット44には、溶接線に沿って延びる桶状のフラックス容器46と、このフラックス容器46の下方に設けられフラックス容器46を上方に向かって押し上げるエアホース47が設けられている。一方、第2裏当ユニット45には溶接線に沿って延びる銅板48と、この銅板48の下方に配置され銅板48を上方に向かって押し上げるエアホース49が設けられている。
【0083】
第1裏当ユニット44の下方の水平の連結フレーム41には第1裏当ユニット44のフラックス容器46から溢れたフラックスを受けて回収するためホッパ状のフラックス回収部51が設けられ、第2裏当ユニット45の下方の水平の連結フレーム42には第2裏当ユニット45の銅板48から溢れたフラックスを受けて回収するためホッパ状のフラックス回収部52が設けられている。ホッパ状のフラックス回収部51及び52の底部には夫々回収したフラックスを系外に排出するスクリューコンベア53及び54が設けられている。
【0084】
2つの裏当ユニット44及び45が搭載されたユニットフレーム43とその下方の台部33との間にはユニットフレーム43を台部33に対して相対的に水平方向に移動させるためギヤ装置の組み合わせとその駆動モータとからなる位置調整装置55が設けられており、この位置調整装置55によって2つの裏当ユニットのフラックス容器46及び銅板48の溶接線に対する相対的位置を微調整する。
【0085】
第1裏当ユニット44のフラックス容器46の上方及び第2裏当ユニット45の銅板48の上方には溶接線に沿って移動可能にホッパ状のフラックス供給装置56が配置されており、このフラックス供給装置56をフラックス容器46又は銅板48の上方まで移動させた後、その長さ方向に沿って移動させることによってフラックス容器46又は銅板48上に裏当てフラックスが散布され、裏当フラックス層が形成される。
【0086】
次に、このように構成された本発明の第2実施形態に係る裏当装置の動作を第1実施形態に係る装置の動作との相違点に着目して説明する。
【0087】
この裏当装置は被溶接材を溶接線と同一方向に移動させる縦流れ方式の片面溶接を行うものである。
【0088】
実際の溶接操作を開始する前に、被溶接材の板厚、目違いの有無等を考慮し、被溶接材が比較的薄く、目違いがある場合はRF方式の第1の裏当ユニット44を使用する。
【0089】
図8(a)、(b)は、本実施形態装置が適用される縦流れ方式の片面溶接における被溶接材と裏当ユニットのフラックス容器との位置関係を示す模式図である。図8(a)において、仮止めされた2枚の被溶接材60に対して溶接線61と同一方向にフラックス容器46が配置されており、被溶接材60は溶接線61と同一の方向に移動する。
【0090】
溶接を開始するに際し、裏当ユニット44の上方に設けられたフラックス供給装置56を用いてフラックス容器46内に裏当てフラックスを均一に散布してフラックス層を形成する。
【0091】
次に、パネル移動ローラ38によって被溶接材60をパネルライン57に沿って移動し、被溶接材60の溶接線61をフラックス容器46と重なる位置で停止する(図8(b))。このとき、位置調整装置55によってフラックス容器46の溶接線61に対する位置を微調整する。
【0092】
溶接線61に対するフラックス容器46の相対位置の微調整が終了した後、エアホース47に加圧空気を導入してこれを膨張させてフラックス容器46内のフラックス層を溶接線の裏面に配置し、以下、第1実施形態の場合と同様にして溶接線61に対して片面サブマージアーク溶接を施す。このとき、裏当フラックス層は鋼板を貫通した溶接金属を支え、裏ビードの形状を整える。溶接線61の溶接が終了した後、被溶接材60を溶接線61と同一方向(図8中右方向)に移動させることにより溶接装置から外して片面サブマージアーク溶接を終了する。
【0093】
本実施形態において、被溶接材60が比較的厚く、目違いがない場合はFCB方式の第2の裏当ユニット45を使用する。この場合も溶接を開始するに際し、裏当て装置45の上方に設けられたフラックス供給装置56を用いて銅板48上に裏当てフラックスを均一に散布してフラックス層を形成する。
【0094】
次に、パネル移動ローラ38によって次の被溶接材60をパネルライン57に沿って移動し、次の被溶接材60の溶接線61が銅板48と重なる位置で停止する。このとき、位置調整装置55によって銅板48の溶接線61に対する位置を微調整する。
【0095】
溶接線61に対する銅板48の相対位置の微調整が終了した後、エアホース49に加圧空気を導入してこれを膨張させ、銅板48上に形成され、この銅板48で裏打ちされたフラックス層(図示省略)を溶接線61の裏面に配置し、以下、第1裏当ユニット44を用いた場合に準じて溶接線61に対して片面サブマージアーク溶接を施す。
【0096】
本実施形態によれば、車輪を有する台部33の3つの垂直部材を裏当ユニット構造体の長さ方向の始端から終端に至る角パイプ状の台フレーム35で構成したことにより、総重量を増大させることなく、裏当装置を一体として吊り下げ、搬送するための強度が得られる。従って、裏当装置を一体として搬送できるだけでなく、搬送先における据え付け作業が容易となり、据え付け時間が短縮し、溶接装置停止時間を必要最小限として溶接効率の低下を防止することができる。
【0097】
次に本発明の第3実施形態に係る裏当ユニットの搬送方法ついて説明する。
【0098】
本発明の第3実施形態に係る裏当装置の搬送方法は、台部2と、この台部2上に配置された被溶接材の移動装置4及び被溶接材の溶接線の下方に配置される裏当部1とを有する裏当装置(図2参照)を一体として例えば天井走行クレーンで吊り上げ(図6参照)例えばポールトレーラに載せて目的地まで搬送する。これによって、製造現場で組み立て動作試験を行った裏当装置をそのままの状態で搬送することができ、搬送先での据え付け及び組み立て作業が軽減され、動作テストの一部を省略することができる。
【0099】
次に本発明の第4実施形態に係る裏当装置の搬送方法ついて説明する。片面溶接装置の中には、パネルを輸送するコンベアの中に裏当ユニットのみを配置し、その上方に溶接機を走行させる溶接機ビームを設け、これによって片面溶接を行うものがある。
【0100】
図9は、このような片面溶接装置を示す平面図、図10はその正面図である。
【0101】
図9及び図10において、パネル搬送コンベア70、70の間に裏当ユニット71が配置されている。このパネル搬送コンベア70にはパネル移動装置74及び電磁マグネット75が所定間隔で設けられている。パネル搬送コンベア70とは所定間隔隔てた上方に搬送コンベアに平行且つ水平方向に移動可能に溶接機ビーム73が設けられており、この溶接機ビーム73はその両端が図示省略した柱に支持された状態でパネル搬送コンベア70上に張り渡されている。溶接機72は溶接機ビーム73に水平移動可能に取り付けられている。
【0102】
裏当ユニットの昇降には既設の油圧ユニット81が使用され、裏当ユニットは昇降フレームに載置された状態で油圧ユニット81に搭載して使用される。
【0103】
このような片面溶接装置に適用する裏当装置において台部は不要である。従って、裏当ユニットは台部を有しない昇降フレームに載置した状態の裏当装置として搬入され、昇降フレームには裏当ユニットを載せた状態で吊り上げできるような強度が要求される。
【0104】
従って、本実施形態においては、裏当ユニットを載置した昇降フレームを裏当ユニット毎溶接機ビームに搭載して一体化して搬送する。
【0105】
図11及び図12は、溶接機ビームに裏当装置を載置した状態を示す説明図であり、図11は側面図、図12は図11のB−B線矢視方向断面図であって、クレーンで吊り上げた状態を示す図である。図11及び図12において、溶接機ビーム73の長さ方向に沿って、長尺物である裏当装置71が載置されており、溶接機ビーム73と裏当装置71の昇降フレーム76との隙間には、ショクアブソーバとしての木材77が配置されている。図12において、裏当装置71は溶接機ビーム73に載置された状態で吊り上げ補助具79及び吊り上げワイヤ78によって吊り上げられている。なお、溶接機ビーム73と昇降フレーム76との固定は、例えば荷締めベルト等によって行われる。
【0106】
裏当ユニットを載置した昇降フレームを輸送車に載せる場合は両端支持に近いので、クレーンによる吊り上げである中間支持に比べてより大きな強度が要求されるが、裏当装置71を溶接機ビーム73に載置して一体化することにより、両端支持に耐え得る強度を確保できるので、昇降フレーム76の強度としては吊り上げ時に耐えられる強度を有すれば足りる。従って、強度向上のために総重量を大幅に増大させることがなく軽量化を実現できる。また、これによって、例えば1台のポールトレーラに搭載できる数量が多くなるので、輸送車台数を節約することもできる。
【0107】
搬送先に搬入された裏当装置は、溶接機ビーム73から取り外し、既設の油圧ユニット81装置に搭載して使用される。一方、溶接機ビーム73は、例えばパネル搬送コンベア70上に掛け渡され、溶接機72のガイド部材として使用される。
【0108】
溶接機ビームは溶接装置を稼働させる際には重要な部材であり他に代用することはできないが、搬送中は特別な作用を発揮するものではないので、溶接機ビームを搬送時の裏当装置の補強材として利用する。
【0109】
本実施形態によれば、溶接機ビーム73に裏当ユニットと昇降フレームとを一体化した裏当装置71を搭載して搬送するようにしたことにより、強度部材である溶接機ビーム73を有効利用することができるうえ、裏当ユニットを搬送するための特別な補強部材を不要とし、裏当装置の効率的な搬送が可能となる。
【0110】
本実施形態において、溶接機ビーム73は各種部品、油空圧配管、電気配線、溶接ケーブルなどを収納したケーブル処理装置、レール、ラック等の付属物を付設したままの状態で使用し、この状態の溶接機ビーム73に裏当ユニット及び昇降フレームからなる裏当装置を載置することが好ましい。これによって、搬送先での溶接機ビームの組み立て及び据え付けがより容易となる。
【産業上の利用可能性】
【0111】
搬送時に一体物として搬送することができ、搬送先での組み立て及び据え付け期間を短縮することができる本発明の裏当装置は、裏当装置を使用する片面溶接の分野で特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明の第1実施形態に係る裏当装置の平面図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】図2のA−A線矢視方向断面図(昇降フレームを上昇させた状態)である。
【図4】図2のA−A線矢視方向断面図(昇降フレームを下降させた状態)である。
【図5】横流れ方式の片面溶接における被溶接材と裏当ユニットとの位置関係を示す図である。
【図6】裏当装置の吊り上げ状態を示す説明図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る裏当装置の正面図である。
【図8】縦流れ方式の片面溶接における被溶接材と裏当ユニットとの位置関係を示す図である。
【図9】本発明の裏当装置が適用される片面溶接装置の1例を示す平面図である。
【図10】図9の正面図である。
【図11】溶接機ビームに裏当装置を搭載した状態を示す図である。
【図12】図11のB−B線矢視方向断面図である。
【図13】従来の裏当装置を示す平面図である。
【図14】図13の一部切欠側面図である。
【図15】図14のC−C線矢視方向断面図である。
【図16】図13の裏当銅板の拡大図である。
【図17】図16の側面図である。
【図18】図17のD−D線矢視方向断面図である。
【図19】従来技術における裏当装置の使用状況を示す正面図である。
【図20】図19における裏当装置の拡大図である。
【符号の説明】
【0113】
1:裏当ユニット
2:台部
3:裏当銅板
4:パネル移動ローラ
5:電磁マグネット
6:基部材
7:縦部材
8:横部材
9:角パイプ状の台フレーム
10:支持ローラ
11:裏当銅板受け
12:断熱シート
13:エアホース
14:ユニットフレーム
15:車輪
16:昇降フレーム
17:フラックス回収部
18:スクリューコンベア
19:昇降装置
20:走行レール
21:車輪
22:台車本体
23:連結フレーム
25:モータ
26:パネルパスライン
27:フラックス供給装置
28:裏当装置
29:天井走行クレーン
30:吊り上げワイヤ
31:走行レール
32:車輪
33:台部
34:基部材
35:角パイプ状の台フレーム
36:垂直部材
37:垂直部材
38:パネル移動ローラ
39:電磁マグネット
41:連結フレーム
42:連結フレーム
43:ユニットフレーム
44:第1裏当ユニット
45:第2裏当ユニット
46:フラックス容器
47:エアホース
48:銅板
49:エアホース
51:フラックス回収部
52:フラックス回収部
53:スクリューコンベア
54:スクリューコンベア
55:位置調整装置
56:フラックス供給装置
57:パネルパスライン
60:被溶接材
61:溶接線
62:溶接線
63:溶接線
70:パネル搬送コンベア
71:裏当装置
72:溶接機
73:溶接機ビーム
74:パネル移動ローラ
75:電磁マグネット
76:昇降フレーム
77:木材
78:吊り上げワイヤ
79:吊り上げ補助具
80:パネル搬送方向を示す矢印
81:油圧ユニット
101:裏当銅板
102:裏当銅板受け
103:断熱シート
104:エアホース
105:裏当ユニット
106:ユニットフレーム
107:車輪
108:昇降フレーム
109:昇降装置
110:フラックス回収部
111:スクリューコンベア
112:ローラチェイン
115:台部
116:基部材
117:縦部材
118:横部材
119:車輪
120:走行レール
121:パネル移動ローラ
122:駆動装置
125:鋼板
126:ガーダー本体
127:溶接ガイドフレーム
128:自動溶接機
129:ワイヤリール
130:銅板継手
131:銅板継手ピン
132:フラックス供給装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮止めされた被溶接材をその溶接線に沿って溶接する際に使用される裏当装置において、溶接線方向に延びる少なくとも2本の台フレームとこれらの台フレームを相互に連結する連結フレームとを備えた台部と、この台部上に配置され前記溶接線に垂直の方向に前記被溶接材を移動させる移動装置と、前記台部上に搭載され前記被溶接材の溶接線の下方に配置される裏当部と、を有し、前記各台フレームは1体化された構造体であることを特徴とする裏当装置。
【請求項2】
前記台部上に配置された昇降装置を有し、前記裏当部は前記昇降装置上に配置され、前記昇降装置により昇降することを特徴とする請求項1に記載の裏当装置。
【請求項3】
前記裏当部は、前記昇降装置上に配置された第1フレームと、この第1フレーム上に前記溶接線に垂直の方向に移動可能に設けられた裏当材とを有することを特徴とする請求項2に記載の裏当装置。
【請求項4】
前記裏当部は、裏当フラックスを支持する裏当銅板と、この裏当銅板を上下動させる昇降装置とを有するフラックス・カッパー・バッキング(FCB)方式であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の裏当装置。
【請求項5】
前記裏当部は、裏当フラックスを支持するフラックスコンベアと、このフラックスコンベアを上下動させる昇降装置とを有するレジン・フラックス(RF)方式であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の裏当装置。
【請求項6】
前記台フレームは、角パイプであることを特徴する請求項1乃至5のいずれか1項に記載の裏当装置。
【請求項7】
前記台フレームは、前記台部の幅方向に突出した被溶接材の支持部材を有し、この支持部材が着脱自在に設けられていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の裏当装置。
【請求項8】
請求項1に記載の台部、この台部上に配置された被溶接材の移動装置及び被溶接材の溶接線の下方に配置される裏当部とを有する裏当装置を一体として搬送することを特徴とする裏当装置の搬送方法。
【請求項9】
請求項3に記載の裏当部を第1フレーム毎溶接機ビームに搭載して搬送することを特徴とする裏当装置の搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2006−51529(P2006−51529A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−236169(P2004−236169)
【出願日】平成16年8月13日(2004.8.13)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】