説明

補修材

【課題】 鉄筋、鉄骨又は鋼ネツト等を内包したモルタルやコンクリートの腐食による劣化部の補修に適し、補修後は堅牢強固な性状の補修施工物になり、マクロセル腐食も発生し難いセメント系水硬性組成物の補修材を提供する。
【解決手段】 (A)セメント、(B)開口気孔に含水された開口気孔率5〜60%の多孔質骨材及び(C)メタカオリンを含有してなる水硬性組成物の凝結終結した固化体に、(D)無機系防錆剤を含浸せしめてなる補修材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強力な防錆能力を具備した水硬性組成物の補修材に関する。
【背景技術】
【0002】
ひび割れが発生したり、剥落を起こしたりした劣化が見られるモルタルやコンクリートの補修には、セメント系の補修材を劣化部分又は劣化部分をはつった箇所に充填・被覆することが行われている。補修材は、施工性等が特に考慮されるため、通常は補修対象とする既存モルタル・コンクリートと同一のものが用いられることは無く、補修対象物とは異なる電気特性のものとなるため、補修後に補修部と既存モルタル・コンクリートとの境界部に接する鉄筋や鉄骨にマクロセル腐食と称される再劣化が発生し易い。
一方、モルタル・コンクリートの中性化、モルタル・コンクリート中に残存する塩化物、又は微細空隙を通じて浸透する大気等の長年の影響によってモルタルやコンクリートに内包された鉄筋や鉄骨が錆化し腐食することがある。この腐食に対する防止手段として、例えば亜硝酸ナトリウム等の亜硝酸塩を始め、アルカリ金属のクロム酸塩、ケイ酸塩又はリン酸塩等を有効成分とする防錆剤を予めモルタルやコンクリートに混和させるか、モルタル・コンクリート硬化体表面への塗布が一般的に行われている。
【0003】
このような防錆剤は、前記のマクロセル腐食に対しても有効ではあるものの、一旦劣化によって外部に曝された部分がある鉄筋や鉄骨の防錆を十分達成することは容易でなく、一般に防錆成分中の例えば亜硝酸イオン等を鉄筋や鉄骨表面に十分な量を留め、速やかに酸化皮膜を表面に形成させねばならない。しかるに、補修材と補修対象となる既存のモルタル・コンクリートでは電気特性が異なるため補修対象の金属表面に亜硝酸イオン等が留まる量を十分確保するにはかなり大量の防錆成分の補修材への混入が必要となる。セメント系補修材では大量の防錆成分を直接混和させると、施工性が低下することに加え、注水後の凝結性に著しい支障を及ぼし、強度発現性が低下する。防錆成分の直接混入を避けた、大量混入手段も検討されており、例えばその特異な構造から種々の大きさの物質を大量に内包できるゼオライト系鉱物粉に防錆成分を内包させ、該ゼオライト系鉱物粉そのものを混和させることで大量の防錆成分を含有できることが知られている。(例えば、特許文献1〜2参照。)また、防錆成分を大量に内包させた多孔質骨材を配合したモルタルによって劣化部を補修することも知られている。(例えば、特許文献3参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05−43282号公報
【特許文献2】特開2008−297137号公報
【特許文献3】特開平09−317195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
防錆成分を内包或いは吸着させたゼオライトや開口性多孔質骨材等をモルタルやコンクリート組成物に混和させると、大量の防錆成分の含有が可能であるが、注水してスラリー化すると、ゼオライトや多孔質骨材に含ませた大量の防錆成分が水性スラリー中に溶出し、スラリー性状や凝結性等に影響を及ぼすことが避けられない。そして、このような組成物からなる補修材では施工性の低下や施工物の硬化体としての材料性状は概して低くなる。また、防錆成分のスラリー中への流出量が多くなるとマクロセル腐食等による再劣化に対して十分な防止効果が得られなくなる。本発明はこのような問題を鑑み、鉄筋、鉄骨又は鋼ネツト等を内包したモルタルやコンクリートの腐食による劣化部の補修に適し、補修後は堅牢強固な性状の補修施工物になり、マクロセル腐食も発生し難い補修材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記課題を解決のため検討を重ねた結果、少なくともセメントとメタカオリンと水を吸水させた開口気孔を有する多孔質細骨材とを含有させた水硬性組成物の凝結終結後の固化物に、液状防錆成分を含浸させてなる補修材が、凝結や硬化性状に支障を及ぼさずに、鉄筋や鉄骨を十分防錆できる大量の防錆成分を含有できるという知見を得、本発明を完成させた。
【0007】
即ち、本発明は、次の[1]〜[4]で表す補修材である。
[1](A)セメント、(B)開口気孔に含水された開口気孔率5〜60%の多孔質骨材及び(C)メタカオリンを含有してなる水硬性組成物の凝結終結した固化体に、(D)無機系防錆剤を含浸せしめてなる補修材。
[2]多孔質骨材が、開口端の開口気孔径が10μm未満である請求項1記載の補修材。
[3]無機系防錆剤が、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の亜硝酸塩、クロム酸塩、ケイ酸塩又はリン酸塩の何れか1種又は2種以上である請求項1又は2記載の補修材。
[4]水硬性組成物が、さらに(E)ポリマーディスパージョン又は再乳化形粉末樹脂を含有したものである請求項1〜3何れか記載の補修材。
【発明の効果】
【0008】
本発明の補修材は、施工性、凝結性及び硬化性状等に支障を引き起こすことなく大量の防錆成分を担持させることが可能なため、鉄筋や鉄骨等を内包するコンクリートの劣化部分の補修に用いると強力な防錆作用を付与することができ、化学的に補修対象コンクリートに近似したものにしなくともマクロセル腐食等の発生を十分抑制できる。また、補修後の補修施工物は堅牢で耐久性に優れたものとなる。さらに、本発明の補修材は、一般的には低容重の多孔質骨材を用いるため、軽量化でき、補修対象の方向等に拘わらず自重に起因する変形、剥落等が生じ難い。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の補修材において、水硬性組成物の作製に使用する(A)セメントは、何れのセメントでも良く、例えば普通、早強、中庸熱、低熱等の各種ポルトランドセメント、高炉セメント等の混合セメント、アルミナセメントやエコセメント等の特殊セメントなどが挙げられ、2種以上を併用しても良い。例えば鉄筋、鉄骨、鋼ネット等を内包するモルタルやコンクリート用としては経済性観点から普通ポルトランドセメントが推奨され、またモルタル・コンクリート劣化部位の補修用としては工期短縮化の観点から例えば早強又は超早強ポルトランドセメント、アルミナセメントと他のポルトランドセメントの併用なども推奨されるが、記載例に限定されるものではない。
【0010】
本発明の補修材において、水硬性組成物の作製に使用する(B)開口気孔に含水された開口気孔率5〜60%の多孔質骨材は、骨材表面に開口した気孔を有し、開口した気孔部の気孔率が5〜60%の多孔質骨材を使用する。開口気孔率は、例えばJIS A 1509「陶磁器質試験方法−第3節:吸水率、見掛け気孔率およびかさ密度の測定方法の真空法による場合」に規定された方法で測定することができる。尚、本発明で用いる多孔質骨材において骨材表面に非連通の閉口気孔の存在有無は特に問わない。また補修材が軽量であると施工後の自重による変形・剥落等が起こり難く、施工作業も容易になるので、本発明ではかさ容積0.8Kg/リットル以下の多孔質骨材の使用が好ましい。多孔質骨材の材質は、モルタルやコンクリートに使用できるもの、即ち水やアルカリに実質不活性なものであれば何れのものでも良い。好ましくは、耐久性が得やすいことから、火成岩等の天然鉱物、人工の鉱物質無機物質、硬質樹脂などの材質からなる骨材とし、具体的には、例えば火山礫、沸石類、黒曜石や真珠岩の加熱発泡粒(パーライト)、各種スラグ骨材、アルミノシリケートセラミックス、ポリプロピレン、ポリエチレン、四弗化エチレンなどの高分子樹脂が挙げられ、このうち開口気孔率が5〜60%のものを使用すれば良い。開口気孔率が5%未満の骨材では内包可能な遅延成分量が少なくなりすぎるため好ましくなく、また開口気孔率が60%を超える骨材では強度が低く、施工時に破損したり、補修後も堅牢・高耐久の施工物が得られないので好ましくない。また、開口端の開口気孔径が10μmの多孔質骨材を使用するのが好ましい。より好ましくは気孔経が5オングストローム以上で10μmのものとする。開口端部の気孔径が10μmを超えると比表面積の低下により内包物を担持する吸着力が不足し、流出し易くなるので適当ではない。また5オングストローム未満では水分子が大き過ぎて通過が困難となる。本発明では、このような多孔質骨材を含水させ、開口気孔部に水が保持された多孔質骨材をセメント等との配合に供する。開口気孔部への含水方法は例えば前記多孔質骨材を水中に浸漬する。含水状態は、概ね開口気孔容積の60%以上が水で満たされていれば良い。60%未満だと注水後のセメント系スラリーが開口部から大量に侵入し、そのまま凝結して気孔が閉塞される虞があるので適当ではない。本発明の補修材において、水硬性組成物の作製に使用する多孔質骨材の配合量は、水を含有していない絶乾状態で換算した質量で、セメント配合量100質量部に対し、1〜100質量部が好ましい。より好ましくは、20〜40質量部とする。1質量部未満では必要量の防錆成分を担持できないので適当でなく、100質量部を超えると補修施工物の強度・耐久性が低下することがあるので適当でない。
【0011】
本発明の補修材において、水硬性組成物の作製に使用する(C)メタカオリンは、含水珪酸塩鉱物であるカオリナイトを通常550〜1200℃で加熱して得られる脱水構造となった中間体である。好ましくは、より強固な硬化体が得られ易くなることから、カオリンを700〜1000℃で焼成したものを使用する。メタカオリンの粉末は高活性であり、ゼオライトや高気孔率の多孔質骨材を多く含ませるほど起こり易い脆弱化を補い、また他の活性シリカやポゾラン反応性物質の大量使用では往々に見られる硬化物の大規模な体積減少を引き起こすこともなく、強固な硬化体を得るのに有用である。メタカオリンの配合量はセメント配合量100質量部に対し、5〜20質量部が好ましい。5質量部未満では強固な水硬性組成物が得られないことがあるため適当ではなく、また、20質量部を超えると例えば鉄筋コンクリートの打設用やモルタル・コンクリート劣化部位の補修用として使用する際の施工性が低下するので適当ではない。
【0012】
本発明の補修材において、水硬性組成物の作製に用いる成分は、前記(A)〜(C)を必須とするが、これに加えてさらに(E)ポリマーディスパージョン又は再乳化形粉末樹脂を用いることができる。ポリマーディスパージョン又は再乳化形粉末樹脂を用いることにより、補修材として多様な施工手段に対する適性が増し、また補修部位に対する施工付着性の向上、さらに補修後の施工物は高い化学的耐久性を有するものとなる。使用するポリマーディスパージョンや再乳化粉末樹脂は、何れもポリマーモルタルやポリマーコンクリートと称されるものに使用できるものであれば良く、好ましくは、JIS A 6203の「セメント混和用ポリマーディスパージョン及び再乳化粉末樹脂」に記載されているものが使用できる。より好ましくは、アクリル系ポリマーエマルション、酢酸ビニル系ポリマーエマルション、スチレンブタジエンゴムラテックス、酢酸ビニル系再乳化粉末樹脂、ベオバ系再乳化粉末樹脂が使用できる。ポリマーディスパージョン又は再乳化形粉末樹脂の配合量はセメント配合量100質量部に対し、固形分換算で0.5〜5質量部が好ましい。0.5質量部未満では配合効果が殆ど得られず、また5質量部を超えると防錆剤が含浸し難くなるので適当ではない。
【0013】
本発明の補修材において、水硬性組成物の作製に用いる成分として、前記(A)〜(C)及び(E)以外にも、本発明の効果を実質喪失させないものであれば使用することができる。このような成分として、例えばモルタルやコンクリートに使用できる減水剤類、増粘剤、短繊維、開口気孔率1%未満の骨材、乾燥収縮低減剤、膨張材、凝結調整剤、速硬剤、急結剤、消泡剤などが挙げられる。
【0014】
本発明の補修材は、上記のような成分を配合し、これにセメントとメタカオリンの合計量100質量部に対し、50〜65質量部の量の注水を行い、混練した水硬性組成物を凝結させた固化体に、(D)無機系防錆剤を含浸させたものである。ここで注水量には配合する含水多孔質骨材中の水分量は含めない。水硬性組成物の混練物は補修対象部に施工する。施工法は左官施行が推奨されるが、急結成分や速硬成分等を併用して吹き付け施工することも可能である。また、刷毛で鉄筋並びに駆体との界面に塗り付けることも可能である。施工した水硬性組成物が凝結した固化体はできる限り乾燥させた後、無機系防錆剤を含浸させる。これは固化体中の多孔質骨材の開口気孔に含まれる水分を十分消失させ、気孔中の空隙領域が増大した時点で無機系防錆剤を含浸させると、補修材中に防錆成分の担持場所が多く確保され大量の無機系防錆剤が含有できることによる。無機系防錆剤の含浸方法は特に限定されないが、例えば防錆有効成分濃度が50%以上とした高濃度水溶液を調整し、これを乾燥させた水硬性組成物の固化体表面に塗布する。補修施工部が傾斜部や天井部などでは、垂れや剥落を防ぐために、例えば酢酸ビニル等の水溶性糊剤等を該水溶液に適宜加えて接着性を付与したものを使用する。
【0015】
本発明の補修材に用いる(D)無機系防錆剤は、鉄や鋼に対する防錆能がある無機物質であって、例えば常温で少なくとも濃度20%程度の水溶液を作成できるものであれば特に限定されない。好ましくはアルカリ金属の亜硝酸塩、クロム酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩の何れか又はアルカリ土類金属の亜硝酸塩を挙げることができ、2種以上併用しても良い。より好ましい無機系防錆剤はアルカリ金属の亜硝酸塩である。無機系防錆剤の使用量は、補修対象に内包された鉄筋や鉄骨の量、補修部分の大きさ等に応じて決定すれば良いが、補修材内部に担持できる量は、多孔質骨材の開口気孔の総容積を概ね上限とし、それを超える量では含浸されないことがあるので適当でない。
【0016】
使用するゼオライトは、特に限定されるものではないが、例えば数十オングストローム以下となるような極微結晶空洞が主体となる構造のものでは大量の防錆成分を担持し難く、また吸着能が強くなり過ぎて放出がスムーズに行い難い虞がある。また、開口性多孔質骨材としては、モルタルやコンクリートに使用できる骨材のうち、表面に開口端を有す多孔質骨材であれば良く、各気孔が互いに連通しているか否かは問わない。好ましくは開口端における口径が0.2μm以下であって、見掛け気孔率が10%以上の細骨材が、より大量の防錆成分を担持できるので好ましい。該骨材の材質は天然又は人工の鉱物、硬質樹脂等
【実施例】
【0017】
以下、実施例により本発明を具体的に詳しく説明するが、本発明はここに表す実施例に限定されるものではない。
【0018】
絶乾状態の多孔質骨材を約25℃の水中に浸漬し、真空含浸させることによって、次の表1に表す含水状態の多孔質細骨材B1〜B5を得た。但し、B3は吸水させない絶乾状態のままで使用した。また、B6は比較のため開口気孔を実質有しない緻密質骨材を用いた。
【0019】
【表1】

【0020】
含水させた多孔質骨材と次に示す各材料を表2に表す配合となるよう秤量・調合したものに表2に表す量の水(多孔質骨材中の含水分は含まず)を添加し、ホバートミキサーで約2分間混練して水硬性組成物を得た。
A;普通ポルトランドセメント(市販品)
C1;メタカオリン(米国産カオリンを800℃で2時間焼成したもの。)
C2;シリカフューム(ブレーン比表面積200000cm2/g、市販品)
E1;スチレンブタジエンゴムラテックス系ポリマー(固型分45%、商品名「太平洋CXB」、太平洋マテリアル株式会社製)
E2;エチレン酢酸ビニル共重合体系再乳化粉末樹脂(商品名「ビナパス7055」、旭化成ケミカルズ株式会社製)
F;天然6号ケイ砂
G;ポリカルボン酸系高性能減水剤(商品名「コアフローNP−5」、太平洋マテリアル株式会社製)
【0021】
【表2】

【0022】
前記水硬性組成物の混練物を、内寸が直径50mmで高さ100mmのアクリル製型枠に充填し、24時間放置した後、脱型して得た成形物を80℃の乾燥器中で24時間乾燥後、表3に表す固形分濃度25%の防錆剤水溶液(液温20℃)に24時間浸漬した。浸漬による吸液量(浸漬前後の質量測定による増加質量に相当)と圧縮強度(JIS A 1108に準拠した方法で測定。)を調べた。その結果も表3に表す。
【0023】
【表3】

【0024】
質量比で普通ポルトランドセメント:砕石系粗骨材:川砂系細骨材:水:塩化ナトリウム(市販試薬)=100:347:313:65:1.4の質量比となるよう配合混練してなるベースコンクリートに、直径約13mmの鉄筋1本をかぶり厚さ10mmの位置で内包する外寸100×100×400mmの鉄筋コンクリート試験体を作製し、試験体作製から7日後に該鉄筋の径方向の約50%が露出するようハツリ取りした。24時間、20℃−湿度60%の空気中に曝した試験体のハツリ部(大きさがおよそ100×20×400mm)に、露出鉄筋が完全に覆われるように前記水硬性組成物の混練物を鏝で塗布し、ハツリ前の外寸形状(100×100×400mm)となるよう施工物を形成させた。常温で14日間経過させて乾燥固化した施工物の表面に、表3に表す固形分濃度25%の防錆剤水溶液を塗り付け、塗付け量は前記表3の含浸可能量以下とした。含浸の確認は目視で行い、施工物表面に塗物が実質残存しないことで判断した。表4に防錆剤水溶液の塗付け量を表す。防錆剤を塗り付けた試験体は、平均気温18℃の屋外で3年間暴露した後、鉄筋周囲のコンクリートを慎重に取り外し、一旦露出され、施工物によって覆われた部分の鉄筋表面、露出されずにコンクリート中に内包されていた部分の鉄筋表面における、それぞれ鉄筋腐食の状況を、目視による錆の発生有無により調べた。錆の発生が見られたものを腐食「有」と判断した。併せて、施工物の状況も目視で観察し、耐久性の観点から著しい不具合が認められたものを特記した。これらを表4に纏めて表す。尚、補修材No.15は水硬性組成物No.1と同じ配合成分からなるベース水硬性組成物に、亜硝酸リチウム水溶液(固形分濃度25%)をセメントとメタカオリンの合計100質量部に対し、5質量部を混和配合して作製したもので、硬化後の施工物に防錆剤等の塗付けは行っていない。また、補修材No.14は防錆剤を塗り付けも混和配合も行っていない。
【0025】
【表4】

【0026】
表3の結果より、本発明の補修材を用いて補修した鉄筋コンクリートはコンクリートに内包された鉄筋部及び本補修材で覆われた鉄筋部ともに、錆が発生し易い環境下に長期間置かれても、錆の発生が見られず、非常に高い防錆能力を付与できるものであることがわかる。また、表4の結果より、本発明の補修材は従来の防錆剤よりも大量の防錆成分を凝結性や硬化体性状に支障を及ぼすこと無く保持できることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)セメント、(B)開口気孔に含水された開口気孔率5〜60%の多孔質骨材及び(C)メタカオリンを含有してなる水硬性組成物の凝結終結した固化体に、(D)無機系防錆剤を含浸せしめてなる補修材。
【請求項2】
多孔質骨材が、開口端の開口気孔径が10μm未満である請求項1記載の補修材。
【請求項3】
無機系防錆剤が、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の亜硝酸塩、クロム酸塩、ケイ酸塩又はリン酸塩の何れか1種又は2種以上である請求項1記載の補修材。
【請求項4】
水硬性組成物が、さらに(E)ポリマーディスパージョン又は再乳化形粉末樹脂を含有したものである請求項1〜3何れか記載の補修材。

【公開番号】特開2011−136887(P2011−136887A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−298980(P2009−298980)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(501173461)太平洋マテリアル株式会社 (307)
【Fターム(参考)】