補償要素を備えた無線周波数識別タグ
無線周波数識別(RFID)タグは補償要素を含んでいる。補償要素は、被補償RFIDタグが他のRFIDタグに近接している場合でも、他のタグが補償されているか補償されていないかに関わらず、被補償RFIDタグの動作を強化する。補償要素は、RFIDタグ・アンテナに追加された導電材料の閉ループを含んでいてよい。導電ループは、複数のRFIDタグが近接している場合にRFIDタグの性能を補償して、集積されたタグのグループの周波数応答を、RFIDシステムの動作周波数付近に実質的に集中した状態に保つ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、文書およびファイル管理用の無線周波数識別システムの利用に関し、より具体的には無線周波数識別システム用の無線周波数識別タグに関する。
【背景技術】
【0002】
無線周波識別(RFID)技術は、輸送、製造、廃棄物管理、郵便物追跡、航空手荷物照合、および高速道路通行料管理を含む、実際に全産業分野で広く利用されている。典型的なRFIDシステムには、RFIDタグ、アンテナを備えたRFID読取装置、及びコンピュータが含まれる。RFID読取装置は、タグにエネルギー、又は情報を提供可能な送信器、及びタグから識別情報、及びその他の情報を受信可能な受信器を含んでいる。コンピュータは、RFID読取装置が取得した情報を処理する。
【0003】
一般に、タグから受信される情報は特定のアプリケーションに固有であるが、タグが固定された物品を識別する場合が多い。物品とは、製造物、車両、動物または個人、或いは実質的に他の任意の有形物であってよい。物品には追加的なデータも与えることができる。タグを用いて、製造工程において、例えば製造中の自動車のシャーシの塗装色その他の有用な情報を示すことができる。
【0004】
送信器は、アンテナを介してRF信号を出力して、情報を搬送するRF信号をタグが返信できるよう電磁場を生成する。いくつかの構成において、送信器は通信を開始し、アンプを使って変調された出力信号によりアンテナを駆動し、RFIDタグと通信する。別の構成において、RFIDタグは、RFID読取装置から連続波信号を受信して、直ちに自身の情報を返信することにより通信を開始する。
【0005】
従来のタグは、内部電源を含む「アクティブ」タグ、又は電磁場からエネルギーを与えられる「パッシブ」タグであった。いずれの場合も、RFIDタグは所定のプロトコルを用いて通信を行い、RFID読取装置が1個以上のタグから情報を受信することができる。コンピュータはRFID読取装置から情報を受信して、データベースの更新または警報発信等何らかの動作を実行し、情報管理システムとして機能する。また、コンピュータは送信器を介してタグにプログラム・データを書き込む装置として機能する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
無線周波数識別(RFID)タグは補償要素(compensating elements)を含んでいる。補償要素30の機能は、被補償RFID(a compensated RFID)タグが他のRFIDタグのグループと混在している場合に発揮される。被補償RFIDタグ20が他のRFIDタグの近傍にある場合でも、これら他のRFIDタグが同様に補償されている、または異なる方式で補償されている、いないに関わらず、補償要素30により、被補償RFIDタグ20がRFIDシステムにより検知される可能性が高まる。
【0007】
補償要素は、RFIDタグ・アンテナに実質的に近接して置かれた導電材料の閉ループを含んでいてよい。使用時には、補償要素はRFIDタグ・アンテナと電磁気的に結合されているので、RFIDアンテナ内で誘導された一次電流が補償要素内で逆流する寄生電流を誘導する。この寄生電流により結果的に、被補償RFIDタグとグループ内の他のRFIDタグとの間におけるタグ同士の結合が弱くなる。
【0008】
本発明の一つ以上の実施形態の詳細を、添付の図面及び以下の説明により開示する。本発明の他の特徴、目的および利点は、以下の説明および図面、並びに特許請求の範囲から明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、RFIDシステム10の一例を示すブロック図である。このシステムにおいて、RFIDタグは本明細書に説明する技術による補償要素を有している。図1に示す例において、RFIDシステム10を用いて、書籍、文書、ファイルその他の物品を追跡する。RFIDシステムは例えば、図書館、法律事務所、政府機関の他、事業、犯罪および医療記録等の文書やファイルを生成および/または保存する施設に配置することができる。物品は、一意的に物品を識別するRFIDタグを含んでいる。さらに、各々のRFIDタグはまた、物品について記述する情報および物品の持ち出しが許可されているか否かを示す状態情報を含んでよい。RFIDタグを物品内に埋め込んでタグを見えなくすることにより、改ざんを減少、又は防止できる。
【0010】
図1に示すように、RFIDシステム10は、被保護領域からの物品の無断持ち出しを検知する出口制御システム15を含んでいる。例えば、被保護領域は図書館であってよく、物品は一般に図書館から借り出され、返却される書籍その他の物品であってよい。これらの技術はまた、本発明の範囲から逸脱することなく他の種類の物品に適用することができる。
【0011】
出口制御システム15は、被保護領域の出口の近くに設置された問い掛けゾーン(interrogation zone)、又は通路を規定するラティス19A、19Bを含んでいる。ラティス19A、19Bは、RFIDタグが通路を通過する際に、タグが取り付けられた物品の持出しが許可されているか否かを判定すべく問い掛けるためのアンテナを含んでいる。出口制御システム15は、少なくとも1個のRFID読取装置(図示せず)を用いてアンテナを駆動することができる。タグを検知するために、RF読取装置は、アンテナを介してRF電波を出力し、問い掛け通路内に電磁場を生成する。一般に、磁気部品をRFIDタグと結合して用いる際に、以下で用語「電磁場」と「磁場」を同義に用いる。
【0012】
RF読取装置は問い掛け通路内にタグが存在すれるとその情報を受信し、出口制御システム15は物品の持ち出しが許可されているか否かを判定する。物品の持ち出しが許可されていない場合、出口制御システム15は、音響警報を鳴らす、出口ゲートを閉鎖する等、何らかの適切なセキュリティ措置を発動する。
【0013】
また、RFIDシステム10は、権限を有する人物が物品の持出しまたは返却の処理を行なうチェックイン/チェックアウト区域11を含んでいる。特に、例えば、チェックイン/チェックアウト区域11には、物品に取り付けられたRFIDタグに問い掛けて、必要に応じてそれらの状態を変更、例えば物品のチェックイン、又はチェックアウトを行うRFID読取装置18が設けられている。チェックイン/チェックアウト区域11を用いて、例えばファイル室からファイル・フォルダを持ち出したり、図書館から書籍を借り出すことができる。
【0014】
また、図1に示すように、物品を各種の保管場所12、例えば開架棚12A、キャビネット12B、垂直ファイル・セパレータ12Cその他の場所に置くことができる。各々の保管場所12は、施設全体にわたり物品の追跡を可能にするタグ問い掛け機能を有している。事務所又は医療施設内のファイル・フォルダは、例えば、保管場所12を介して施設全体にわたり追跡することができる。図書館施設では例えば、チェックイン後、棚12Aにある間は書籍を追跡することが可能である。
【0015】
RFID問い掛け機能を提供すべく、保管場所12内に保管された各物品にはRFIDタグが関連付けられている。タグを物品内に埋め込んだり、物品又は物品の包装に取り付けることにより、タグが少なくとも実質的に見えないようにして、タグの検知や改ざん防止に役立てることができる。RFIDタグは、エンド・ユーザー側で取り付けてもよい、或いはファイル・フォルダ、文書、書籍等のように製造過程で物品に取り付けられてもよい。
【0016】
電磁スペクトルの高周波数(HF)領域、例えば3メガヘルツ(MHz)超で動作するRFIDシステム用の個々のタグは通常、直径が数ミリメートル(mm)から数10mmの間の誘導ループ・アンテナを使用する。誘導ループ・アンテナに取り付けられたシリコンダイは、信号送受信、データ処理、一意的な識別情報、およびデータ保存・照会をもつ電子機能を提供する。RFIDシステム10内、例えば出口制御システム15、チェックイン/チェックアウト区域11、および保管場所12に設置されたRFID読取装置又は問い掛け装置は、アンテナを用いて、電磁気的に(無線)送受信された信号を利用してRFIDタグと通信する。RFID読取装置は次いで、物品管理システム14と、無線リンク又は有線ケーブル接続のいずれかを介して通信する。
【0017】
RFIDタグは、電気化学電池(いわゆる「アクティブタグ」)により電力を供給されてよく、或いは、RFIDタグは読取装置が生成するRF場から全ての電力を引き出していてもよい(いわゆる「パッシブタグ」)。後者の場合、RFIDタグは電池または外部電源の保守を必要とせず、電源供給を受けることなく無制限に休眠状態であってよい。以下の説明は主にパッシブ(すなわち、電池無し)RFIDタグに焦点を当てているが、本発明がパッシブタグに限定されず、以下に説明する原理及び結果が誘導ループ・アンテナを備えたアクティブHF RFIDタグにも応用できる点を理解されたい。
【0018】
RFIDシステム10は、電磁放射に関する政府の規制により定義された電磁スペクトルの帯域で動作可能である。例えば、RFIDシステム10は、中心周波数13.56MH、許容周波数変動が巾±7kHzの、産業科学医療(ISM)世界共通標準帯域で動作可能である。しかし、RFIDアプリケーションに他の周波数を用いてもよく、本発明はこれに限定されない。例えば、倉庫等の大規模保管場所におけるRFIDシステムのいくつかは、約900MHzで動作するRFIDシステムを用いてもよい。当業者ならば類推によりRFIDシステム10の動作を他の周波数に拡張できる点を理解されたい。例えばHF帯域において13.56MHz以外の周波数で動作する誘導ループRFIDアンテナを、例えば125kHz〜138kHzの低周波数(LF)帯域に拡張できる。
【0019】
RFIDシステム10内に設置された読取装置および問い掛け装置のアンテナは通常、近接場磁気誘導(near−field magnetic induction)によりRFIDタグに結合している。読取装置が生成した時間変動(time−varying)RF場は、例えば、磁気誘導によりRFIDタグ上のループ・アンテナに結合して、RFIDタグ・アンテナの導電ループ又はループ群に起電力(「電圧」)を誘導する。誘導起電力はRFIDタグ・アンテナに電流を流す。RFIDタグ・アンテナが受取った電力は、RFIDダイにより、ダイの内蔵回路の動作に必要な電圧に変換される。読取装置は、搬送周波数を適当に変調し、RFIDダイと通信する。ダイは自身がRFIDタグ・アンテナに与える(present)負荷を変調することにより読取装置と通信して、RFIDタグを囲むRF場の変調された後方散乱(back−scatter)を引き起こす。読取装置の受信器は、RFIDタグからの後方散乱信号を検知する。読取装置がタグと確実に通信することができる距離、すなわち「読取り範囲」は読取装置の設計、放射エネルギー、RFIDダイの設計、RFIDタグ・アンテナ、および読取装置−タグ・アンテナの向きの関数である。
【0020】
RFIDタグをRFIDシステムの動作周波数付近で電気的に共振するように調整し、読み取り範囲を最大にすることができる。システム動作周波数へ調整することにより、RF場からRFIDタグへのエネルギー伝送を最大にできる。
【0021】
RFID問い掛け装置または読取装置は、物品管理システム14へ位置情報を転送する。物品管理システム14は位置情報を集めるための中央データストアを提供する。物品管理システム14は、ネットワーク化または別の仕方で1個以上のコンピュータに接続して、異なる場所に居る人物が物品に関するデータにアクセスできるようにする。
【0022】
位置情報の収集および統一化は様々な目的に役立つ。例えばユーザーは、ファイル又は一連の書籍等、特定の物品又は物品群の保管場所を照会することができる。物品管理システム14は、データストアから位置情報を取り出して、保管場所の一つの中で物品が最後に置かれた場所をユーザーに報告することができる。オプションとして、物品管理システム14は、物品の現在の保管場所を再び照会したり、別の仕方で再び取得して、当該物品がデータベースの示す場所に存在することを確かめることができる。
【0023】
上述のように、システム10の保管場所12の各々は、各保管場所にどの物品が存在するかの判定を支援し、物品に問い掛ける1個以上の読取装置アンテナを備えることができる。読取装置のアンテナの一例が、2003年3月3日出願の同時係属中であり、且つ本発明の譲受人に譲渡された米国特許第10/378,458号明細書に開示されており、本明細書にその全内容が援用される。1個以上のアンテナを開架棚12A内に設置して、電磁場を生成し、その中に保管された物品に関連付けられたRFIDタグと通信することができる。同様に、アンテナをキャビネット12B、垂直ファイル・セパレータ12C、デスクトップ読取装置12D内、又はその他の場所に設置してもよい。アンテナは、各々の棚の上また下或いは棚の裏側に、垂直に支持したりファイル間に挟む等、様々な仕方で設置することができる。アンテナは、既存の棚に後付けしても、或いは棚に組み込まれた状態でユニットとして購入してもよい。システムは、どのような仕方でも、RFIDタグに問い掛けまたは照会するように構成できる。例えば、アンテナは連続的にRFIDタグに照会したり、ユーザーが指定した順序でタグに照会したり、或いは必要な都度タグに照会することができる。
【0024】
棚の上のファイル・フォルダ等、RFIDタグ付きの物品群は、RFIDシステム10の読取装置または問い掛け装置に近接して置かれている場合が多い。RFIDシステム動作周波数f0において最適に機能すべく調整されたタグを含む従来方式のRFIDタグは、互いに近接している場合、顕著な干渉、すなわちタグ同士の結合を示す傾向がある。この干渉の結果、群内の個々のRFIDタグの一部又は全部を「読み取る」又は識別することが不可能になる。その結果、従来方式のRFIDタグが取り付けられた個々の物品の位置に関する正確な、又は最新の情報が得られない恐れがある。
【0025】
対照的に、RFIDシステム10は、補償要素30を組み込んだ「被補償RFIDタグ」を利用する。被補償RFIDタグは、例えば、互いに近接するRFIDタグのグループを読取りたい場合に有用である。例えば、タグを含む物品が棚の上、又は引き出し内に保管されているか、或いは出口制御システムを通過して持ち出される場合、ファイル・フォルダ、又は書籍に取り付けられたRFIDタグは他のRFIDタグに近接していてよい。被補償RFIDタグは、各々の被補償RFIDタグが他のRFIDタグに近接している場合でも、これら他のRFIDタグが同様の、又は異なる方式で補償されている、或いはいないかに関わらず、個別読み取り可能に設計されている。
【0026】
ここで、補償要素および被補償RFIDタグの各種の例示である実施形態を図2〜12に示す。補償要素および被補償RFIDタグの各種の例示である実施形態の動作の詳細説明を、図13〜17を参照しつつ以下により詳述する。
【0027】
図2は、補償要素30を備えたRFIDタグ20の例示である実施形態を示す模式図である。補償要素を備えたRFIDタグ20を以下で一般に「被補償RFIDタグ20」または「被補償RFIDタグ」と呼ぶ。当分野で知られている従来方式の無補償RFIDタグを「無補償RFIDタグ」と呼ぶ。表示の便宜上、図2では補償要素30をアンテナ24の最も内側のループ24Aの内側に全体が配置されている状態で示す。しかし、図2の実施形態に示す補償要素30の特定の位置は、補償要素をアンテナ24に対して配置できる多くの実施形態の一つであって、本発明がこれに限定されない点を理解されたい。被補償RFIDタグ20および補償要素30の他の実施形態を以下に示し、詳述する。
【0028】
基板22はアンテナ24、補償要素30、および被補償RFIDタグ20の他の構成要素を載置する。アンテナ24は、複数のループを有するマルチ・ターン誘導ループ・アンテナであり、最も内側のループ24Aおよび最も外側のループ24Bを含んでいる。これらの図ではアンテナ24をマルチ・ターン誘導ループ・アンテナとして示しているが、アンテナ24が単一ループを備えていても、或いは図に明示されているより多くのまたは少ない数のループを備えていてもよく、且つアンテナ24のループ数に本発明が限定されない点を理解されたい。アンテナ24は、数種類の導電パターン技術の内の任意のものを用いて基板22上に形成しても、或いは別個に形成してから基板に転写してもよい。1個以上の調整コンデンサ(図示せず)をアンテナ24に接続して電気共振回路を形成することができる。アンテナ24の複数のループは、1個以上のビア(via)接続部28を介して閉じられる。RFIDダイ26は、導電接着剤、はんだ、または金属間接触等、数種類の相互接続技術の内の任意の一つを用いてアンテナ24に接続することができる。
【0029】
図2に示す実施形態において、補償要素30は導電材料の閉ループである。一実施形態において、補償要素30は、自身が補償するアンテナ24の平面に平行かつ近接する平面に実質的に存在する。別の実施形態において、補償要素30は、自身が補償するアンテナ24と同一平面に実質的に存在する(すなわち実質的に同一平面上に存在する)。被補償RFIDタグ20および補償要素30と他の実施形態について以下に詳述する。
【0030】
図2に示す補償要素30の実施形態は、形状が実質的に直線で、アンテナ24と同様の形状である。しかし、補償要素30は他の様々な形状であってよく、アンテナ24と類似の形状である必要がない点を理解されたい。従って用語「閉ループ」は、電流がループを流れるように自身が閉じている任意の形状、例えば正方形、長方形、円形、楕円形、三角形、その他任意の自身で閉じている多角または曲線形状として定義することができる。補償要素30および被補償RFIDタグ20の実施形態は、当業者が本明細書を読めば容易に理解できよう。
【0031】
補償要素30の機能は、被補償RFIDタグ20が少なくとも1個の他のRFIDタグと共に存在する場合に意味を持つ。使用時には、補償要素30はRFIDタグ・アンテナ24に電磁的に結合して、一次電流(RFIDアンテナ24内で誘導された)が補償要素30内に逆流する寄生電流を誘導する。この寄生電流により、被補償RFIDタグと、グループ内の他のRFIDタグとの間におけるタグ同士の結合が減少する。被補償RFIDタグ20が他のRFIDタグと近接している場合でも、これら他のRFIDタグが同様の、または異なる方式で補償されている、或いは、いないに関わらず、補償要素30はこのように、被補償RFIDタグ20がRFIDシステム10により検知される可能性を高める。補償要素30の動作を図13〜17を参照しつつ以下に更に詳述する。
【0032】
補償要素30は、いくつかの方法の内の任意のもので形成されていてよい。一つの方法は、製造において、基本アンテナ構造の製造に用いるのと同じやり方でRFIDタグ・アンテナ24の一部として補償要素30を形成することである。回路形成動作の例は、金属箔のダイカッティングまたはパターニング、導電性金属の電気メッキ、導電性インクの印刷、後で加熱または乾燥することにより導電状態になる先駆物質(precursor materials,例:有機金属化合物)の印刷等を含むが、これには限定されない。基板22は、ポリマーフィルム、紙、剛性プラスチック・フィルム、電子回路基板、または他の同様の非導電材料であってよい。
【0033】
別の方法は、製造工程においてアンテナの製造とは分離して、パターン付き導電アンテナ24の製造に用いたのと同じ処理、或いは異なる処理を用いて、補償要素30をRFIDアンテナ24の第1または第2表面に形成するものである。
【0034】
更に別の方法は、前記の各種導電性パターン形成技術のいずれかにより、補償要素30を別個の回路として形成するものである。補償要素30は、RFIDタグ20に近接して、しかし取り付けずに配置することができる。或いは、補償要素30は、例えば接着フィルム、硬化性粘着ペースト、両面感圧粘着テープ等を用いてRFIDタグ・アンテナ24に取り付けて単一ユニットを形成して、RFIDタグ・アンテナ24に近接した補償要素30を適当に構成することができる。
【0035】
図3は、補償要素30を備えた被補償RFIDタグ20の別の実施形態を示す。再び、表示の便宜上、本実施形態では、補償要素30はアンテナ24の最も内側のループ24Aの内側に全体が配置されている状態で示されている。図3において、補償要素30は、導電ジャンパー(短絡回路)32を介して、アンテナ24に電気的に接続されている。同導電ジャンパー32は最も内側のコイル24Aを、補償要素30の周辺部の一箇所で補償要素30に接続する。換言すれば、補償要素30は、RFIDタグ・アンテナ24と電気的に接触していながら、依然として本明細書に記述する補償機能を実行することができる。
【0036】
図2では、補償要素30は、アンテナ24と電気的に接続していない。補償要素30がRFIDタグ・アンテナ24と電気的に接続していても、或いはRFIDタグ・アンテナ24に近接しているが電気的に絶縁されていてもよい点を理解されたい。補償要素30がRFIDタグ・アンテナ24と電気的に接続されていても、或いは電気的に絶縁されていても、どちらの構成でも補償要素30は結果的に本明細書に記述する補償効果を有することができる。
【0037】
図4に、被補償RFIDタグ20の別の例である実施形態を示す。ここで、補償要素30はアンテナ24のループ間に配置されている。実際、補償要素30は、アンテナ24のどのループの間に配置されていても、依然として本明細書に記述する補償効果を有することができる。
【0038】
図5に、被補償RFIDタグ20の別の実施形態を示す。本実施形態において、補償要素30はアンテナ24の最も外側のループ24Bの外側に配置されている。図2〜5に示す実施形態は、補償要素30をアンテナ24のループの内側に全体を配置しても、間に配置しても、或いは外側に全体を配置しても本発明の範囲から逸脱しないことを示す。
【0039】
図6に、アンテナ24の軸(axis)と実質的に整列した(aligned)軸を有する補償要素30を含む被補償RFIDタグ20を示す。すなわち、補償要素30のラインは、アンテナ24の対応するラインと実質的に平行である。
【0040】
図7に、アンテナ24の軸に対して約45度の「オフセット角」34をなす軸を有する補償要素30を備えた被補償RFIDタグ20の別の実施形態を示す。いくつかのRFIDタグ・アプリケーションにおいて、図6に示すような実施形態を用いてもよい。例えば、製造時に補償要素30をRFIDタグに組み込む際に、補償要素30とRFIDタグ・アンテナ24が実質的に整列されていることを保証することができる。その場合、補償要素30は単にRFIDタグ20の製造作業の一環として組み込むことができるため、補償要素30をRFIDタグ・アンテナ24の軸と実質的に整列させることができる。
【0041】
他のアプリケーションでは、図7に示すような実施形態が適しているかもしれない。例えば、補償要素30を従来方式の無補償RFIDタグに追加する際に、人為的な誤りまたは設計に起因して、補償要素30をアンテナ24の軸に対してオフセット角度34で配置する場合がある。従って、アンテナ24の軸に対する補償要素30の配置角度は本発明の限定要因ではなく、アンテナ24の軸に対して補償要素30を任意の角度で配置しても本発明の範囲に含まれる点を理解されたい。
【0042】
図8は、被補償RFIDタグ20の別の例である実施形態を示す。この一例である実施形態において、補償要素30は、図2〜7に関して上で述べた直線的形状ではなく、円形である。実際、補償要素30は三角形、楕円、正方形、長方形、或いはその他任意の多角形または曲線で囲まれた閉じた形状を含め、実質的に任意の形状であってよく、しかも補償機能を実行することができる。従って、補償要素30の形状は本発明の目的の限定要素ではなく、補償要素30が本発明の範囲から逸脱することなく実質的に任意の形状であってよい点を理解されたい。図8に示すような円形の補償要素20の配置は、円形ループがループの中心の回りで円周対称であるため、角度に依存しない。補償回路要素20の効果は、補償回路要素20の幾何学中心がRFIDタグ・アンテナ24の幾何学的中心と一致する場合に最大となる。
【0043】
図9Aは付属補償物品21の一例である実施形態の上面図、図9Bは側面図である付属補償物品(a supplemental compensating article)21は、基板23の上面に配置された補償要素30を含み、基板23の反対側に接着材面(adhesive surface)25が配置されている。付属補償物品21を用いて、図10に示す仕方で従来方式の無補償RFIDタグに補償を加えることができる。接着材面25は、接着フィルム、硬化性粘着ペースト、両面粘着テープ等であってよい。
【0044】
図10は、基板37上にRFIDアンテナ35が配置された、従来方式の無補償RFIDタグ33の斜視図である。付属補償物品21を無補償RFIDタグ33に接着し、無補償RFIDタグ33の性能を向上させることができる。付属補償物品21の基板23の裏側の接着材面25は、無補償RFIDタグ33と接触する。非回転的独立形状(例:正方形、長方形、楕円形等)の場合、補償要素30は、RFIDアンテナ35の軸に対して、実質的に整列して、またはオフセット角度で配置することができる。或いは、接着材面25を補償要素30と基板23の間に、または補償要素30の上に配置してもよい。次いで付属補償物品21が適切に取り付けられる。付属補償物品21を利用することにより、従来方式の無補償RFIDタグのユーザーは、全く新規のタグの組を購入する必要なしに、手持ちの従来方式の無補償RFIDタグに補償要素を容易に追加することができる。
【0045】
図11A、11B、11Cは、被補償RFIDタグ20の一例である実施形態の側面図である。図11A、11B、11Cは各々、基板22およびRFIDアンテナ24を備えた被補償RFIDタグ20を示す。図11A〜11Cの各々の補償要素30は、実質的にアンテナ24の平面内に配置されている。補償要素30は、最も内側のループ24Aの内側に全体が配置されていても(図11A)、ループ間に配置されていても(図11B)、或いは最も外側のループ24Bの外側に全体が配置されていても(図11C)よい。
【0046】
図12A、12B、12Cは、被補償RFIDタグ20の更なる例である実施形態の側面図である。図12A、12B、12Cの各々は、基板22およびRFIDアンテナ24を備えた被補償RFIDタグ20を示す。図12A〜12Cの各々の補償要素30は、アンテナ24の平面に実質的に平行且つ近接する平面内に配置されている。これらの図において、補償要素30は、基板層23により物理的に分離されていてもよいが、必須ではない。再び、補償要素30は、最も内側のループ24Aの内側に全体が配置されていても(図12A)、ループ間に配置されていても(図12B)、或いは最も外側のループ24Bの外側に全体が配置されていても(図12C)よい。
【0047】
ここで物品のグループ、例えば、棚の上に置かれて、従来方式の無補償RFIDタグで印を付けられたファイル・フォルダを考える。従来方式の無補償RFIDタグが、他のRFIDタグ(棚に置かれたフォルダまたは類似の物品のグループに配置されている可能性がある)に近接している場合、第1の無補償RFIDタグからの電磁場が他の近接するRFIDタグと相互作用してこれらに結合する。相互作用する無補償RFIDタグの集合体(collection)の有効共振周波数は下方シフトされる。RFIDシステムの動作帯域幅外へシフトされる場合もある。無補償RFIDタグの集合体の共振周波数が、システムの動作周波数外へシフトされる場合、読取装置と無補償RFIDタグのグループとの間で通信が劣化するまたは完全に途絶する恐れがある。
【0048】
被補償RFIDタグ20の補償要素30は、被補償RFIDタグ・アンテナ24の有効インダクタンスLを修正する。被補償RFIDタグ20の共振周波数fTAGは、他のRFIDタグが物理的に近接して存在していても、さほど影響を受けない。これは、グループ内の他のRFIDタグが同様の、または異なる方式で補償されている、或いは、いないに関わらず、グループ内の各々の被補償RFIDタグ20に対して成り立つ。
【0049】
被補償RFIDタグ20を調整し、その共振周波数fTAGがRFIDシステム10の動作周波数f0付近に集中し、他のRFIDタグとは分離され読み取り可能にすることができる。被補償RFIDタグ20が、補償の有無に関わらず、他のRFIDタグのグループの1個である場合、被補償RFIDタグ応答fTAGはシステム動作周波数付近に調整されたままである。被補償RFIDタグ20が被補償RFIDタグのグループの1個である場合、各々の補償タグに対する被補償RFIDタグ応答はシステム動作周波数付近に調整されたままであり、グループ応答fGROUPもまたシステム動作周波数付近に調整されたままである。このようにして、RFIDシステム10がグループ内の特定のRFIDタグの存在を検知する可能性は、グループ内の他のタグが同様の、または異なる方式で補償されている、いないかに関わらず、当該タグが被補償RFIDタグである場合に高まる。同様に、グループ内の全てのタグが被補償RFIDタグである場合、RFIDシステム10がグループ内の全てのタグの存在を検知する可能性が大きくなる。
【0050】
図13は、被補償RFIDタグ内を流れる電流の方向を描いた図である。動作時には、RFIDシステム10のRFID読取装置が生成した外部磁気問い掛け場からの磁束は、一次電流(アンテナ24内を反時計回りに流れる)を誘導する。これを図13の例では、線42で示す。この一次電流42は電磁結合により、補償要素30内を逆向きに流れる寄生電流を誘導する。これを線44で示す。寄生電流44が誘導された結果、有効インダクタンスの低下、共振周波数fTAGの増大、RF読取装置が磁場に与える応答または感度の低下、およびタグ間結合の減少等がRFIDタグ・アンテナ24に生じる。結果として、RFIDシステム10がRFIDタグのグループ内の各被補償RFIDタグ20を検知する可能性がより大きくなる。
【0051】
図14に被補償RFIDタグ20に対する応答を示す。曲線40は、RFIDシステム10の応答を示す。単一タグの被補償RFIDタグ応答(曲線52)は、約14.5MHz付近(システム動作周波数f0=13.56MHzより僅かに高い)に集中するように調整された。しかし、被補償RFIDタグ20を13.56MHzにより近く、例えば13.56±1MHzとなるように調整できる点を理解されたい。第2の被補償RFIDタグが、第1の被補償RFIDタグから0.5インチ以内の距離に同軸的(coaxially)に整列されている場合、曲線54で示すように当該ペアの共振周波数は13.8MHzへ下方シフトされる。5個の被補償RFIDタグが曲線56で示すように一まとめにされている場合、グループの中心共振周波数14.0MHzはペア共振(曲線54)から殆ど変化せず、応答振幅は単一の被補償RFIDタグ応答(曲線52)から0.5dB以内にある。被補償RFIDタグが10個積み重ねられている場合、応答曲線58はグループ共振周波数が14.3MHzでピークに達し、2個および5個の被補償RFIDタグの場合と殆ど変わらないことを示す。このように、グループ内の被補償RFIDタグの各々は、単一のRFID読取装置により個別に読み取り可能である。図14に、補償要素30が結果的に、システム動作周波数で動作するRFID読取装置により1個、2個、または多数のタグを読み取ることができる被補償RFIDタグとなることを示す。
【0052】
補償要素30を被誘導的結合RFIDタグ・アンテナ(an inductively coupled RFID tag antenna)24に追加すると、被補償RFIDタグ20と、RFエネルギー場の磁場成分との相互作用が修正される。このRFエネルギー場はアンテナ24により生成され、補償要素30へ入射するものである。インダクタンスLは、RFIDタグ・アンテナ24内で誘導された電流と、アンテナ24を通る磁束との結合を特徴付ける。磁束は、磁場B、アンテナの面積A、およびアンテナ内のターン数Nの関数である。磁場Bは、読取装置が生成した場、RFIDタグ内で誘導された電流、および隣接するRFIDタグ内の電流のベクトル和である。補償要素30は、被補償RFIDタグを流れる正味電流に寄与し、RFIDアンテナ24の見掛け上のインダクタンスLを減らすことにより、補償されている、いないに関わらず、隣接するRFIDタグの存在を「補償する」。
【0053】
図15Aに、被補償RFIDタグ20の周波数および振幅応答に対する(Versus)補償要素30の大きさのグラフを示す。これらの結果は、標準的な無補償RFIDタグ(大きさが変化する直線状補償要素30を含むように修正された)から取得された。試験用RFIDタグの最も内側のループの直径は約25mm、最も外側のループの直径は約45mmであった。図15Aに示すように、直径が22.5mm未満の補償要素30の場合、補償要素30は被試験RFIDの応答には何ら影響がなかった。しかし、補償要素30の直径が、被試験タグの最も内側のループの直径に近い場合、顕著な影響が見られた。すなわち、周波数応答が上方シフトされ、補償要素30の直径が40mmに近づいた時に最大になる。
【0054】
図15Bに、被補償RFIDタグ20の周波数および振幅応答に対する(Versus)円形補償要素30の大きさのグラフを示す。同じような大きさの直線状補償要素30に対する結果も示す。直線状の補償要素と同様に、補償要素の直径が被試験タグの最も内側のループの直径に近づいたならば、顕著な効果が見られた。再び、周波数応答は上方シフトされ、円形の補償要素と、正方形の補償要素の直径が共に約40mmであるときに最大である。図15A、15Bから、補償要素30が実質的に任意の形状であってよく、しかも本明細書に述べる補償機能を実行できるものと推論することができる。
【0055】
図15A、15Bはまた、補償要素30の影響が近接結合による影響であることも示す。すなわち、補償要素30は、RFIDタグ・アンテナ24に近接結合(proximity coupled)されている。補償要素30は結合寄生電流を流す。この寄生電流はRFIDタグ・アンテナ24の電流により駆動されるものである。補償要素30はこのように、RFID読取装置アンテナが生成する問い掛け磁場とは対照的に、RFIDタグ・アンテナ24と電磁気的に結合している。この近接結合効果を生成するために、補償要素30をRFIDタグ・アンテナと電磁結合するように、配置することができる。すなわち、アンテナ24内の一次電流が補償要素30内に寄生電流を誘導するように配置することができる。補償要素30を、アンテナ24の少なくとも1個のループの10導線幅内に配置することができる。このために補償要素を近接結合効果を生じるようにRFIDタグ・アンテナ24と電磁結合する位置に配置する。用語「導線幅」は、アンテナ24の近接結合されたループまたはループ群の線幅を指す。補償要素30がアンテナ24の少なくとも1個のループの比較的近くに配置された場合、例えば補償要素30がアンテナ24の少なくとも1個のループから1〜2本の導線幅以内に配置された場合に、より強い近接結合が実現される。しかし、補償要素30とアンテナ24が電磁結合のために配置されている限り、それらが置かれている間隔の正確な距離は本発明の限定要素にならない。
【0056】
図16に、実質的に直線状のアンテナ24の軸に対する、実質的に直線状の補償要素30の角変位の効果を示す。補償要素は、RFIDタグ・アンテナの複数のループの平均エッヂ長さにほぼ等しいエッヂ長さ(edge length)を有するように選ばれた。図に示すように、近接結合効果は、角変位または角オフセットが0度のときに最大(図6、7参照)である。角変位が増すにつれて、近接結合効果は角変位が約10度に達するまで非線形に減少する。角変位が10度を超えた場合、近接結合効果は角変位が45度になるまで緩慢に減少する。
【0057】
図16は、角変位が0度のときにfTAGに対する近接結合効果が最も大きく、その後角変位が約10度まで増大するのに伴い低下する。角変位が10度を超えた場合、角変位が変動してもRFIDタグ応答にはさほど影響を及ぼさない。これは、補償要素30が従来方式の無補償RFIDタグに取り付けられているアプリケーションでは、補償要素30を無補償RFIDタグに取り付ける際に、アンテナ24のループに対して「直角(square)」ではなく、所定の角度をなす方が、より安定した予測可能な結果が得られることを意味する。図16が実質的に正方形の補償要素およびRFIDアンテナ24に関して測定されているものの、他の非回転独立形状でも同様の結果が得られる点を理解されたい。回転独立形状(例えば円)の場合に、角変位は何ら影響しない。
【0058】
ここで被補償RFIDタグ20および補償要素30の更なる実施形態について図17を参照しつつ記述する。図17に、異なる補償要素30の構成を備えた被補償RFIDタグの周波数応答fTAG101および振幅103を示す。図17の被補償RFIDタグは、「短絡」コイルまたはアンテナ24のループの各種の組合せである。すなわち、アンテナ24内のループまたはコイルの異なる組合せが、アンテナ24の他のループと電気的に接続または短絡されている。このように、図17に応答を示す補償要素30は、RFIDタグ・アンテナと電気的に接続しているものの、RFIDタグ・アンテナの内端から外端へ直接辿られる電気径路(回路)の一部ではない点で、図3に示した上述のものと類似している。換言すれば、補償要素30(図17に応答を示す)はRFIDタグ・アンテナと電気的に接続しているものの、RFIDタグ・アンテナ自身の一部を構成するものではない。アンテナのコイルには、1(最も内側のループまたはコイル)から9(最も外側のループまたはコイル)まで番号が付けられている。短絡コイルおよび付随する応答は、以下のように図17に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
図17から、いくつかの一般化を行なうことができる。例えば、任意のアンテナ・ループを別のアンテナ・ループに、最も内側から最も外側へ短絡させることにより、補償要素効果が生じる。また、複数のコイルを、隣接コイルまたは非隣接コイルのいずれかに短絡させても補償要素効果が生じる。図17に、補償機能を実現可能な短絡コイルの多くの可能な組合せを示す。従って、これらおよび他の短絡コイルの補償要素としての組合せが本発明の範囲に含まれることが理解されよう。
【0061】
このように、2種類の異なる補償要素30について述べてきた。一つの種類は図2〜6に関して上述したものであり、補償要素30はRFIDアンテナ24とは物理的に別個に形成されている。この物理的に別個の補償要素30は、RFIDアンテナ24と電気的に接続または電気的に絶縁(すなわち非接続に)されていてよい。別の種類は図17に関して上述したものであり、アンテナ24自身の物理コイルまたはループが、アンテナ24の他のコイルまたはループに短絡され、補償要素30を形成する。連続ループ補償要素30を形成する各々のコイルまたはループは、アンテナ24のコイルまたはループと単一の電気的接点において接続されている。補償要素30のタイプの選択は、すなわち物理的に別個の要素として形成されているか、またはRFIDタグ・アンテナ自身の一部として形成されているかの選択は、RFIDタグを使用する特定のアプリケーション、被補償RFIDタグの所望の共振周波数、RFIDタグの生産に用いる製造方法、および、補償要素30が製造時にRFIDタグに組み込まれるか、或いは図10に関して上で述べた仕方で既存の無補償RFIDタグに追加されるかに依存する。
【0062】
図18に、被補償RFIDタグ20の別のアプリケーションを示す。図18は、導電基板160上の被補償RFIDタグ20を示す図である。被補償RFIDタグ20は、基板22、アンテナ24、オプションのRFIDダイ(図示せず)、補償要素基板23、および補償要素30を含んでいる。誘電スペーサ164は、被補償RFIDタグ20と、タグ付けされる導電面160とを物理的および電磁気的に分離する。再び、表示の便宜上、補償要素30を、アンテナ24の最も内側のループ24Aの内側に全体が配置されている状態で示す。補償要素30が、図2〜12に関して示して記述したものを含め、いくつかの可能な形状の任意のものであってよい点を理解されたい。
【0063】
被補償RFIDタグ20を用いて、金属その他の導電面を有する物品のタグ付けまたはラベル付けを行うことができる。被補償RFIDタグ20は、標準の無補償RFIDタグと比較して、RFIDタグが金属その他の導電面に取り付けられて磁気誘導結合RFIDシステムにより検知される場合に性能の向上を示す。
【0064】
読取り範囲、すなわちRFID読取装置がRFIDタグを検知して通信することができる距離を、RFIDタグの効力の定量化可能な尺度として用いることができる。導電面160が存在する場合は、誘電スペーサ164上の被補償RFIDタグ20は、同様の導電面上の同様の誘電スペーサ上に装着された同等の従来方式無補償RFIDタグよりも広い読み取り範囲を示す。
【0065】
導電面にラベル付けを行なう場合、RFIDタグの電流分布に応答して、導電面に形成される電気的「イメージ電流」分布の影響も考慮に入れるべきである。RFIDタグおよび導電面が近接している場合、イメージ電流はRFIDタグ内の電流分布を無効化する。タグとイメージ電流を合わせた効果により、RFID読取装置に対する見掛けのタグ応答を低下させることができ、読取装置はこれを「タグが存在しない」と解釈する。
【0066】
誘電スペーサ164は、導電面内の誘導イメージ電流から、RFIDタグ内の電流を分離する。誘電スペーサ164の有効電気厚さ(物理的厚さtと誘電率εの積)は、実際の物理的厚さt、又は誘電率εを増すことにより、大きくすることができる。RFIDタグをラベルとして用いるアプリケーションの場合、誘電スペーサが厚いと、物品にマーク付けする実用的ソリューションにはRFIDタグが厚くなり過ぎる。導電面上の被補償RFIDタグの場合、誘電スペーサは、例えば一実施形態ではε<10、別の実施形態ではε<3のように適度に低いεを有する誘電体材料を作成することができる。このような材料の例として、例えば、発泡ポリマーフィルム、或いはポリエチレンまたはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の低εマトリクス内の中空気体充満レンズまたはポリマー気泡が含まれる。誘電スペーサ164の厚さは、導電面160上の被補償RFIDタグ20に対して所望の読み取り範囲を実現するのに十分でなければならない。例えば、厚さがt<10mm、または厚さがt<5mmである誘電スペーサである。総括すれば、被補償RFIDタグ20によって、より薄い誘電スペーサ164の利用が可能になるので、RFIDラベルの突出が少なくなる。
【0067】
補償RFIDタグ20は結果的に、導電面上の被補償RFIDタグの読み取り機能の効果を向上させる。第一に、被補償RFIDタグを使うと、電気的に薄い誘電スペーサに対し導電面でより広い読み取り範囲が得られる。導電面上の被補償RFIDタグは、物理的により薄い構造で同等の読み取り範囲が得られる。また、導電面上の被補償RFIDタグにより、従来方式の無補償RFIDタグと比較して、より小さいタグで同等の性能が得られる。
【0068】
本発明の各種の実施形態について述べてきた。これらおよび他の実施形態は添付の請求項の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】RFIDタグが本明細書に記述する技術に従い補償要素を組み込んだ無線周波数識別(RFID)システムを示すブロック図である。
【図2】本明細書に記述する技術による被被補償RFIDタグの一つの例の実施形態の模式図である。
【図3−10】被補償RFIDタグの別の一例の実施形態の模式図である。
【図11A−11C】被補償RFIDタグの別の一例の実施形態の側面斜視図である。
【図12A−12C】被補償RFIDタグの別の一例の実施形態の側面斜視図である。
【図13】被補償RFIDタグ内の電流の方向を一般的に示す図である。
【図14】問い掛け領域が存在する場合の5個の被補償RFIDタグの応答例を示すグラフである。
【図15A】直線被補償RFIDタグの共振周波数対補償要素の大きさを示すグラフである。
【図15B】直線被補償RFIDタグの共振周波数対補償要素の大きさ、および円形被補償RFIDタグの共振周波数対補償要素の大きさを示すグラフである。
【図16】被補償RFIDタグの共振周波数対補償要素の角変位を示すグラフである。
【図17】共振周波数および振幅対被補償RFIDタグ内の各種な短絡コイルの組合せを示すグラフである。
【図18】導電性基板上に補償要素を備えたRFIDタグを示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、文書およびファイル管理用の無線周波数識別システムの利用に関し、より具体的には無線周波数識別システム用の無線周波数識別タグに関する。
【背景技術】
【0002】
無線周波識別(RFID)技術は、輸送、製造、廃棄物管理、郵便物追跡、航空手荷物照合、および高速道路通行料管理を含む、実際に全産業分野で広く利用されている。典型的なRFIDシステムには、RFIDタグ、アンテナを備えたRFID読取装置、及びコンピュータが含まれる。RFID読取装置は、タグにエネルギー、又は情報を提供可能な送信器、及びタグから識別情報、及びその他の情報を受信可能な受信器を含んでいる。コンピュータは、RFID読取装置が取得した情報を処理する。
【0003】
一般に、タグから受信される情報は特定のアプリケーションに固有であるが、タグが固定された物品を識別する場合が多い。物品とは、製造物、車両、動物または個人、或いは実質的に他の任意の有形物であってよい。物品には追加的なデータも与えることができる。タグを用いて、製造工程において、例えば製造中の自動車のシャーシの塗装色その他の有用な情報を示すことができる。
【0004】
送信器は、アンテナを介してRF信号を出力して、情報を搬送するRF信号をタグが返信できるよう電磁場を生成する。いくつかの構成において、送信器は通信を開始し、アンプを使って変調された出力信号によりアンテナを駆動し、RFIDタグと通信する。別の構成において、RFIDタグは、RFID読取装置から連続波信号を受信して、直ちに自身の情報を返信することにより通信を開始する。
【0005】
従来のタグは、内部電源を含む「アクティブ」タグ、又は電磁場からエネルギーを与えられる「パッシブ」タグであった。いずれの場合も、RFIDタグは所定のプロトコルを用いて通信を行い、RFID読取装置が1個以上のタグから情報を受信することができる。コンピュータはRFID読取装置から情報を受信して、データベースの更新または警報発信等何らかの動作を実行し、情報管理システムとして機能する。また、コンピュータは送信器を介してタグにプログラム・データを書き込む装置として機能する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
無線周波数識別(RFID)タグは補償要素(compensating elements)を含んでいる。補償要素30の機能は、被補償RFID(a compensated RFID)タグが他のRFIDタグのグループと混在している場合に発揮される。被補償RFIDタグ20が他のRFIDタグの近傍にある場合でも、これら他のRFIDタグが同様に補償されている、または異なる方式で補償されている、いないに関わらず、補償要素30により、被補償RFIDタグ20がRFIDシステムにより検知される可能性が高まる。
【0007】
補償要素は、RFIDタグ・アンテナに実質的に近接して置かれた導電材料の閉ループを含んでいてよい。使用時には、補償要素はRFIDタグ・アンテナと電磁気的に結合されているので、RFIDアンテナ内で誘導された一次電流が補償要素内で逆流する寄生電流を誘導する。この寄生電流により結果的に、被補償RFIDタグとグループ内の他のRFIDタグとの間におけるタグ同士の結合が弱くなる。
【0008】
本発明の一つ以上の実施形態の詳細を、添付の図面及び以下の説明により開示する。本発明の他の特徴、目的および利点は、以下の説明および図面、並びに特許請求の範囲から明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、RFIDシステム10の一例を示すブロック図である。このシステムにおいて、RFIDタグは本明細書に説明する技術による補償要素を有している。図1に示す例において、RFIDシステム10を用いて、書籍、文書、ファイルその他の物品を追跡する。RFIDシステムは例えば、図書館、法律事務所、政府機関の他、事業、犯罪および医療記録等の文書やファイルを生成および/または保存する施設に配置することができる。物品は、一意的に物品を識別するRFIDタグを含んでいる。さらに、各々のRFIDタグはまた、物品について記述する情報および物品の持ち出しが許可されているか否かを示す状態情報を含んでよい。RFIDタグを物品内に埋め込んでタグを見えなくすることにより、改ざんを減少、又は防止できる。
【0010】
図1に示すように、RFIDシステム10は、被保護領域からの物品の無断持ち出しを検知する出口制御システム15を含んでいる。例えば、被保護領域は図書館であってよく、物品は一般に図書館から借り出され、返却される書籍その他の物品であってよい。これらの技術はまた、本発明の範囲から逸脱することなく他の種類の物品に適用することができる。
【0011】
出口制御システム15は、被保護領域の出口の近くに設置された問い掛けゾーン(interrogation zone)、又は通路を規定するラティス19A、19Bを含んでいる。ラティス19A、19Bは、RFIDタグが通路を通過する際に、タグが取り付けられた物品の持出しが許可されているか否かを判定すべく問い掛けるためのアンテナを含んでいる。出口制御システム15は、少なくとも1個のRFID読取装置(図示せず)を用いてアンテナを駆動することができる。タグを検知するために、RF読取装置は、アンテナを介してRF電波を出力し、問い掛け通路内に電磁場を生成する。一般に、磁気部品をRFIDタグと結合して用いる際に、以下で用語「電磁場」と「磁場」を同義に用いる。
【0012】
RF読取装置は問い掛け通路内にタグが存在すれるとその情報を受信し、出口制御システム15は物品の持ち出しが許可されているか否かを判定する。物品の持ち出しが許可されていない場合、出口制御システム15は、音響警報を鳴らす、出口ゲートを閉鎖する等、何らかの適切なセキュリティ措置を発動する。
【0013】
また、RFIDシステム10は、権限を有する人物が物品の持出しまたは返却の処理を行なうチェックイン/チェックアウト区域11を含んでいる。特に、例えば、チェックイン/チェックアウト区域11には、物品に取り付けられたRFIDタグに問い掛けて、必要に応じてそれらの状態を変更、例えば物品のチェックイン、又はチェックアウトを行うRFID読取装置18が設けられている。チェックイン/チェックアウト区域11を用いて、例えばファイル室からファイル・フォルダを持ち出したり、図書館から書籍を借り出すことができる。
【0014】
また、図1に示すように、物品を各種の保管場所12、例えば開架棚12A、キャビネット12B、垂直ファイル・セパレータ12Cその他の場所に置くことができる。各々の保管場所12は、施設全体にわたり物品の追跡を可能にするタグ問い掛け機能を有している。事務所又は医療施設内のファイル・フォルダは、例えば、保管場所12を介して施設全体にわたり追跡することができる。図書館施設では例えば、チェックイン後、棚12Aにある間は書籍を追跡することが可能である。
【0015】
RFID問い掛け機能を提供すべく、保管場所12内に保管された各物品にはRFIDタグが関連付けられている。タグを物品内に埋め込んだり、物品又は物品の包装に取り付けることにより、タグが少なくとも実質的に見えないようにして、タグの検知や改ざん防止に役立てることができる。RFIDタグは、エンド・ユーザー側で取り付けてもよい、或いはファイル・フォルダ、文書、書籍等のように製造過程で物品に取り付けられてもよい。
【0016】
電磁スペクトルの高周波数(HF)領域、例えば3メガヘルツ(MHz)超で動作するRFIDシステム用の個々のタグは通常、直径が数ミリメートル(mm)から数10mmの間の誘導ループ・アンテナを使用する。誘導ループ・アンテナに取り付けられたシリコンダイは、信号送受信、データ処理、一意的な識別情報、およびデータ保存・照会をもつ電子機能を提供する。RFIDシステム10内、例えば出口制御システム15、チェックイン/チェックアウト区域11、および保管場所12に設置されたRFID読取装置又は問い掛け装置は、アンテナを用いて、電磁気的に(無線)送受信された信号を利用してRFIDタグと通信する。RFID読取装置は次いで、物品管理システム14と、無線リンク又は有線ケーブル接続のいずれかを介して通信する。
【0017】
RFIDタグは、電気化学電池(いわゆる「アクティブタグ」)により電力を供給されてよく、或いは、RFIDタグは読取装置が生成するRF場から全ての電力を引き出していてもよい(いわゆる「パッシブタグ」)。後者の場合、RFIDタグは電池または外部電源の保守を必要とせず、電源供給を受けることなく無制限に休眠状態であってよい。以下の説明は主にパッシブ(すなわち、電池無し)RFIDタグに焦点を当てているが、本発明がパッシブタグに限定されず、以下に説明する原理及び結果が誘導ループ・アンテナを備えたアクティブHF RFIDタグにも応用できる点を理解されたい。
【0018】
RFIDシステム10は、電磁放射に関する政府の規制により定義された電磁スペクトルの帯域で動作可能である。例えば、RFIDシステム10は、中心周波数13.56MH、許容周波数変動が巾±7kHzの、産業科学医療(ISM)世界共通標準帯域で動作可能である。しかし、RFIDアプリケーションに他の周波数を用いてもよく、本発明はこれに限定されない。例えば、倉庫等の大規模保管場所におけるRFIDシステムのいくつかは、約900MHzで動作するRFIDシステムを用いてもよい。当業者ならば類推によりRFIDシステム10の動作を他の周波数に拡張できる点を理解されたい。例えばHF帯域において13.56MHz以外の周波数で動作する誘導ループRFIDアンテナを、例えば125kHz〜138kHzの低周波数(LF)帯域に拡張できる。
【0019】
RFIDシステム10内に設置された読取装置および問い掛け装置のアンテナは通常、近接場磁気誘導(near−field magnetic induction)によりRFIDタグに結合している。読取装置が生成した時間変動(time−varying)RF場は、例えば、磁気誘導によりRFIDタグ上のループ・アンテナに結合して、RFIDタグ・アンテナの導電ループ又はループ群に起電力(「電圧」)を誘導する。誘導起電力はRFIDタグ・アンテナに電流を流す。RFIDタグ・アンテナが受取った電力は、RFIDダイにより、ダイの内蔵回路の動作に必要な電圧に変換される。読取装置は、搬送周波数を適当に変調し、RFIDダイと通信する。ダイは自身がRFIDタグ・アンテナに与える(present)負荷を変調することにより読取装置と通信して、RFIDタグを囲むRF場の変調された後方散乱(back−scatter)を引き起こす。読取装置の受信器は、RFIDタグからの後方散乱信号を検知する。読取装置がタグと確実に通信することができる距離、すなわち「読取り範囲」は読取装置の設計、放射エネルギー、RFIDダイの設計、RFIDタグ・アンテナ、および読取装置−タグ・アンテナの向きの関数である。
【0020】
RFIDタグをRFIDシステムの動作周波数付近で電気的に共振するように調整し、読み取り範囲を最大にすることができる。システム動作周波数へ調整することにより、RF場からRFIDタグへのエネルギー伝送を最大にできる。
【0021】
RFID問い掛け装置または読取装置は、物品管理システム14へ位置情報を転送する。物品管理システム14は位置情報を集めるための中央データストアを提供する。物品管理システム14は、ネットワーク化または別の仕方で1個以上のコンピュータに接続して、異なる場所に居る人物が物品に関するデータにアクセスできるようにする。
【0022】
位置情報の収集および統一化は様々な目的に役立つ。例えばユーザーは、ファイル又は一連の書籍等、特定の物品又は物品群の保管場所を照会することができる。物品管理システム14は、データストアから位置情報を取り出して、保管場所の一つの中で物品が最後に置かれた場所をユーザーに報告することができる。オプションとして、物品管理システム14は、物品の現在の保管場所を再び照会したり、別の仕方で再び取得して、当該物品がデータベースの示す場所に存在することを確かめることができる。
【0023】
上述のように、システム10の保管場所12の各々は、各保管場所にどの物品が存在するかの判定を支援し、物品に問い掛ける1個以上の読取装置アンテナを備えることができる。読取装置のアンテナの一例が、2003年3月3日出願の同時係属中であり、且つ本発明の譲受人に譲渡された米国特許第10/378,458号明細書に開示されており、本明細書にその全内容が援用される。1個以上のアンテナを開架棚12A内に設置して、電磁場を生成し、その中に保管された物品に関連付けられたRFIDタグと通信することができる。同様に、アンテナをキャビネット12B、垂直ファイル・セパレータ12C、デスクトップ読取装置12D内、又はその他の場所に設置してもよい。アンテナは、各々の棚の上また下或いは棚の裏側に、垂直に支持したりファイル間に挟む等、様々な仕方で設置することができる。アンテナは、既存の棚に後付けしても、或いは棚に組み込まれた状態でユニットとして購入してもよい。システムは、どのような仕方でも、RFIDタグに問い掛けまたは照会するように構成できる。例えば、アンテナは連続的にRFIDタグに照会したり、ユーザーが指定した順序でタグに照会したり、或いは必要な都度タグに照会することができる。
【0024】
棚の上のファイル・フォルダ等、RFIDタグ付きの物品群は、RFIDシステム10の読取装置または問い掛け装置に近接して置かれている場合が多い。RFIDシステム動作周波数f0において最適に機能すべく調整されたタグを含む従来方式のRFIDタグは、互いに近接している場合、顕著な干渉、すなわちタグ同士の結合を示す傾向がある。この干渉の結果、群内の個々のRFIDタグの一部又は全部を「読み取る」又は識別することが不可能になる。その結果、従来方式のRFIDタグが取り付けられた個々の物品の位置に関する正確な、又は最新の情報が得られない恐れがある。
【0025】
対照的に、RFIDシステム10は、補償要素30を組み込んだ「被補償RFIDタグ」を利用する。被補償RFIDタグは、例えば、互いに近接するRFIDタグのグループを読取りたい場合に有用である。例えば、タグを含む物品が棚の上、又は引き出し内に保管されているか、或いは出口制御システムを通過して持ち出される場合、ファイル・フォルダ、又は書籍に取り付けられたRFIDタグは他のRFIDタグに近接していてよい。被補償RFIDタグは、各々の被補償RFIDタグが他のRFIDタグに近接している場合でも、これら他のRFIDタグが同様の、又は異なる方式で補償されている、或いはいないかに関わらず、個別読み取り可能に設計されている。
【0026】
ここで、補償要素および被補償RFIDタグの各種の例示である実施形態を図2〜12に示す。補償要素および被補償RFIDタグの各種の例示である実施形態の動作の詳細説明を、図13〜17を参照しつつ以下により詳述する。
【0027】
図2は、補償要素30を備えたRFIDタグ20の例示である実施形態を示す模式図である。補償要素を備えたRFIDタグ20を以下で一般に「被補償RFIDタグ20」または「被補償RFIDタグ」と呼ぶ。当分野で知られている従来方式の無補償RFIDタグを「無補償RFIDタグ」と呼ぶ。表示の便宜上、図2では補償要素30をアンテナ24の最も内側のループ24Aの内側に全体が配置されている状態で示す。しかし、図2の実施形態に示す補償要素30の特定の位置は、補償要素をアンテナ24に対して配置できる多くの実施形態の一つであって、本発明がこれに限定されない点を理解されたい。被補償RFIDタグ20および補償要素30の他の実施形態を以下に示し、詳述する。
【0028】
基板22はアンテナ24、補償要素30、および被補償RFIDタグ20の他の構成要素を載置する。アンテナ24は、複数のループを有するマルチ・ターン誘導ループ・アンテナであり、最も内側のループ24Aおよび最も外側のループ24Bを含んでいる。これらの図ではアンテナ24をマルチ・ターン誘導ループ・アンテナとして示しているが、アンテナ24が単一ループを備えていても、或いは図に明示されているより多くのまたは少ない数のループを備えていてもよく、且つアンテナ24のループ数に本発明が限定されない点を理解されたい。アンテナ24は、数種類の導電パターン技術の内の任意のものを用いて基板22上に形成しても、或いは別個に形成してから基板に転写してもよい。1個以上の調整コンデンサ(図示せず)をアンテナ24に接続して電気共振回路を形成することができる。アンテナ24の複数のループは、1個以上のビア(via)接続部28を介して閉じられる。RFIDダイ26は、導電接着剤、はんだ、または金属間接触等、数種類の相互接続技術の内の任意の一つを用いてアンテナ24に接続することができる。
【0029】
図2に示す実施形態において、補償要素30は導電材料の閉ループである。一実施形態において、補償要素30は、自身が補償するアンテナ24の平面に平行かつ近接する平面に実質的に存在する。別の実施形態において、補償要素30は、自身が補償するアンテナ24と同一平面に実質的に存在する(すなわち実質的に同一平面上に存在する)。被補償RFIDタグ20および補償要素30と他の実施形態について以下に詳述する。
【0030】
図2に示す補償要素30の実施形態は、形状が実質的に直線で、アンテナ24と同様の形状である。しかし、補償要素30は他の様々な形状であってよく、アンテナ24と類似の形状である必要がない点を理解されたい。従って用語「閉ループ」は、電流がループを流れるように自身が閉じている任意の形状、例えば正方形、長方形、円形、楕円形、三角形、その他任意の自身で閉じている多角または曲線形状として定義することができる。補償要素30および被補償RFIDタグ20の実施形態は、当業者が本明細書を読めば容易に理解できよう。
【0031】
補償要素30の機能は、被補償RFIDタグ20が少なくとも1個の他のRFIDタグと共に存在する場合に意味を持つ。使用時には、補償要素30はRFIDタグ・アンテナ24に電磁的に結合して、一次電流(RFIDアンテナ24内で誘導された)が補償要素30内に逆流する寄生電流を誘導する。この寄生電流により、被補償RFIDタグと、グループ内の他のRFIDタグとの間におけるタグ同士の結合が減少する。被補償RFIDタグ20が他のRFIDタグと近接している場合でも、これら他のRFIDタグが同様の、または異なる方式で補償されている、或いは、いないに関わらず、補償要素30はこのように、被補償RFIDタグ20がRFIDシステム10により検知される可能性を高める。補償要素30の動作を図13〜17を参照しつつ以下に更に詳述する。
【0032】
補償要素30は、いくつかの方法の内の任意のもので形成されていてよい。一つの方法は、製造において、基本アンテナ構造の製造に用いるのと同じやり方でRFIDタグ・アンテナ24の一部として補償要素30を形成することである。回路形成動作の例は、金属箔のダイカッティングまたはパターニング、導電性金属の電気メッキ、導電性インクの印刷、後で加熱または乾燥することにより導電状態になる先駆物質(precursor materials,例:有機金属化合物)の印刷等を含むが、これには限定されない。基板22は、ポリマーフィルム、紙、剛性プラスチック・フィルム、電子回路基板、または他の同様の非導電材料であってよい。
【0033】
別の方法は、製造工程においてアンテナの製造とは分離して、パターン付き導電アンテナ24の製造に用いたのと同じ処理、或いは異なる処理を用いて、補償要素30をRFIDアンテナ24の第1または第2表面に形成するものである。
【0034】
更に別の方法は、前記の各種導電性パターン形成技術のいずれかにより、補償要素30を別個の回路として形成するものである。補償要素30は、RFIDタグ20に近接して、しかし取り付けずに配置することができる。或いは、補償要素30は、例えば接着フィルム、硬化性粘着ペースト、両面感圧粘着テープ等を用いてRFIDタグ・アンテナ24に取り付けて単一ユニットを形成して、RFIDタグ・アンテナ24に近接した補償要素30を適当に構成することができる。
【0035】
図3は、補償要素30を備えた被補償RFIDタグ20の別の実施形態を示す。再び、表示の便宜上、本実施形態では、補償要素30はアンテナ24の最も内側のループ24Aの内側に全体が配置されている状態で示されている。図3において、補償要素30は、導電ジャンパー(短絡回路)32を介して、アンテナ24に電気的に接続されている。同導電ジャンパー32は最も内側のコイル24Aを、補償要素30の周辺部の一箇所で補償要素30に接続する。換言すれば、補償要素30は、RFIDタグ・アンテナ24と電気的に接触していながら、依然として本明細書に記述する補償機能を実行することができる。
【0036】
図2では、補償要素30は、アンテナ24と電気的に接続していない。補償要素30がRFIDタグ・アンテナ24と電気的に接続していても、或いはRFIDタグ・アンテナ24に近接しているが電気的に絶縁されていてもよい点を理解されたい。補償要素30がRFIDタグ・アンテナ24と電気的に接続されていても、或いは電気的に絶縁されていても、どちらの構成でも補償要素30は結果的に本明細書に記述する補償効果を有することができる。
【0037】
図4に、被補償RFIDタグ20の別の例である実施形態を示す。ここで、補償要素30はアンテナ24のループ間に配置されている。実際、補償要素30は、アンテナ24のどのループの間に配置されていても、依然として本明細書に記述する補償効果を有することができる。
【0038】
図5に、被補償RFIDタグ20の別の実施形態を示す。本実施形態において、補償要素30はアンテナ24の最も外側のループ24Bの外側に配置されている。図2〜5に示す実施形態は、補償要素30をアンテナ24のループの内側に全体を配置しても、間に配置しても、或いは外側に全体を配置しても本発明の範囲から逸脱しないことを示す。
【0039】
図6に、アンテナ24の軸(axis)と実質的に整列した(aligned)軸を有する補償要素30を含む被補償RFIDタグ20を示す。すなわち、補償要素30のラインは、アンテナ24の対応するラインと実質的に平行である。
【0040】
図7に、アンテナ24の軸に対して約45度の「オフセット角」34をなす軸を有する補償要素30を備えた被補償RFIDタグ20の別の実施形態を示す。いくつかのRFIDタグ・アプリケーションにおいて、図6に示すような実施形態を用いてもよい。例えば、製造時に補償要素30をRFIDタグに組み込む際に、補償要素30とRFIDタグ・アンテナ24が実質的に整列されていることを保証することができる。その場合、補償要素30は単にRFIDタグ20の製造作業の一環として組み込むことができるため、補償要素30をRFIDタグ・アンテナ24の軸と実質的に整列させることができる。
【0041】
他のアプリケーションでは、図7に示すような実施形態が適しているかもしれない。例えば、補償要素30を従来方式の無補償RFIDタグに追加する際に、人為的な誤りまたは設計に起因して、補償要素30をアンテナ24の軸に対してオフセット角度34で配置する場合がある。従って、アンテナ24の軸に対する補償要素30の配置角度は本発明の限定要因ではなく、アンテナ24の軸に対して補償要素30を任意の角度で配置しても本発明の範囲に含まれる点を理解されたい。
【0042】
図8は、被補償RFIDタグ20の別の例である実施形態を示す。この一例である実施形態において、補償要素30は、図2〜7に関して上で述べた直線的形状ではなく、円形である。実際、補償要素30は三角形、楕円、正方形、長方形、或いはその他任意の多角形または曲線で囲まれた閉じた形状を含め、実質的に任意の形状であってよく、しかも補償機能を実行することができる。従って、補償要素30の形状は本発明の目的の限定要素ではなく、補償要素30が本発明の範囲から逸脱することなく実質的に任意の形状であってよい点を理解されたい。図8に示すような円形の補償要素20の配置は、円形ループがループの中心の回りで円周対称であるため、角度に依存しない。補償回路要素20の効果は、補償回路要素20の幾何学中心がRFIDタグ・アンテナ24の幾何学的中心と一致する場合に最大となる。
【0043】
図9Aは付属補償物品21の一例である実施形態の上面図、図9Bは側面図である付属補償物品(a supplemental compensating article)21は、基板23の上面に配置された補償要素30を含み、基板23の反対側に接着材面(adhesive surface)25が配置されている。付属補償物品21を用いて、図10に示す仕方で従来方式の無補償RFIDタグに補償を加えることができる。接着材面25は、接着フィルム、硬化性粘着ペースト、両面粘着テープ等であってよい。
【0044】
図10は、基板37上にRFIDアンテナ35が配置された、従来方式の無補償RFIDタグ33の斜視図である。付属補償物品21を無補償RFIDタグ33に接着し、無補償RFIDタグ33の性能を向上させることができる。付属補償物品21の基板23の裏側の接着材面25は、無補償RFIDタグ33と接触する。非回転的独立形状(例:正方形、長方形、楕円形等)の場合、補償要素30は、RFIDアンテナ35の軸に対して、実質的に整列して、またはオフセット角度で配置することができる。或いは、接着材面25を補償要素30と基板23の間に、または補償要素30の上に配置してもよい。次いで付属補償物品21が適切に取り付けられる。付属補償物品21を利用することにより、従来方式の無補償RFIDタグのユーザーは、全く新規のタグの組を購入する必要なしに、手持ちの従来方式の無補償RFIDタグに補償要素を容易に追加することができる。
【0045】
図11A、11B、11Cは、被補償RFIDタグ20の一例である実施形態の側面図である。図11A、11B、11Cは各々、基板22およびRFIDアンテナ24を備えた被補償RFIDタグ20を示す。図11A〜11Cの各々の補償要素30は、実質的にアンテナ24の平面内に配置されている。補償要素30は、最も内側のループ24Aの内側に全体が配置されていても(図11A)、ループ間に配置されていても(図11B)、或いは最も外側のループ24Bの外側に全体が配置されていても(図11C)よい。
【0046】
図12A、12B、12Cは、被補償RFIDタグ20の更なる例である実施形態の側面図である。図12A、12B、12Cの各々は、基板22およびRFIDアンテナ24を備えた被補償RFIDタグ20を示す。図12A〜12Cの各々の補償要素30は、アンテナ24の平面に実質的に平行且つ近接する平面内に配置されている。これらの図において、補償要素30は、基板層23により物理的に分離されていてもよいが、必須ではない。再び、補償要素30は、最も内側のループ24Aの内側に全体が配置されていても(図12A)、ループ間に配置されていても(図12B)、或いは最も外側のループ24Bの外側に全体が配置されていても(図12C)よい。
【0047】
ここで物品のグループ、例えば、棚の上に置かれて、従来方式の無補償RFIDタグで印を付けられたファイル・フォルダを考える。従来方式の無補償RFIDタグが、他のRFIDタグ(棚に置かれたフォルダまたは類似の物品のグループに配置されている可能性がある)に近接している場合、第1の無補償RFIDタグからの電磁場が他の近接するRFIDタグと相互作用してこれらに結合する。相互作用する無補償RFIDタグの集合体(collection)の有効共振周波数は下方シフトされる。RFIDシステムの動作帯域幅外へシフトされる場合もある。無補償RFIDタグの集合体の共振周波数が、システムの動作周波数外へシフトされる場合、読取装置と無補償RFIDタグのグループとの間で通信が劣化するまたは完全に途絶する恐れがある。
【0048】
被補償RFIDタグ20の補償要素30は、被補償RFIDタグ・アンテナ24の有効インダクタンスLを修正する。被補償RFIDタグ20の共振周波数fTAGは、他のRFIDタグが物理的に近接して存在していても、さほど影響を受けない。これは、グループ内の他のRFIDタグが同様の、または異なる方式で補償されている、或いは、いないに関わらず、グループ内の各々の被補償RFIDタグ20に対して成り立つ。
【0049】
被補償RFIDタグ20を調整し、その共振周波数fTAGがRFIDシステム10の動作周波数f0付近に集中し、他のRFIDタグとは分離され読み取り可能にすることができる。被補償RFIDタグ20が、補償の有無に関わらず、他のRFIDタグのグループの1個である場合、被補償RFIDタグ応答fTAGはシステム動作周波数付近に調整されたままである。被補償RFIDタグ20が被補償RFIDタグのグループの1個である場合、各々の補償タグに対する被補償RFIDタグ応答はシステム動作周波数付近に調整されたままであり、グループ応答fGROUPもまたシステム動作周波数付近に調整されたままである。このようにして、RFIDシステム10がグループ内の特定のRFIDタグの存在を検知する可能性は、グループ内の他のタグが同様の、または異なる方式で補償されている、いないかに関わらず、当該タグが被補償RFIDタグである場合に高まる。同様に、グループ内の全てのタグが被補償RFIDタグである場合、RFIDシステム10がグループ内の全てのタグの存在を検知する可能性が大きくなる。
【0050】
図13は、被補償RFIDタグ内を流れる電流の方向を描いた図である。動作時には、RFIDシステム10のRFID読取装置が生成した外部磁気問い掛け場からの磁束は、一次電流(アンテナ24内を反時計回りに流れる)を誘導する。これを図13の例では、線42で示す。この一次電流42は電磁結合により、補償要素30内を逆向きに流れる寄生電流を誘導する。これを線44で示す。寄生電流44が誘導された結果、有効インダクタンスの低下、共振周波数fTAGの増大、RF読取装置が磁場に与える応答または感度の低下、およびタグ間結合の減少等がRFIDタグ・アンテナ24に生じる。結果として、RFIDシステム10がRFIDタグのグループ内の各被補償RFIDタグ20を検知する可能性がより大きくなる。
【0051】
図14に被補償RFIDタグ20に対する応答を示す。曲線40は、RFIDシステム10の応答を示す。単一タグの被補償RFIDタグ応答(曲線52)は、約14.5MHz付近(システム動作周波数f0=13.56MHzより僅かに高い)に集中するように調整された。しかし、被補償RFIDタグ20を13.56MHzにより近く、例えば13.56±1MHzとなるように調整できる点を理解されたい。第2の被補償RFIDタグが、第1の被補償RFIDタグから0.5インチ以内の距離に同軸的(coaxially)に整列されている場合、曲線54で示すように当該ペアの共振周波数は13.8MHzへ下方シフトされる。5個の被補償RFIDタグが曲線56で示すように一まとめにされている場合、グループの中心共振周波数14.0MHzはペア共振(曲線54)から殆ど変化せず、応答振幅は単一の被補償RFIDタグ応答(曲線52)から0.5dB以内にある。被補償RFIDタグが10個積み重ねられている場合、応答曲線58はグループ共振周波数が14.3MHzでピークに達し、2個および5個の被補償RFIDタグの場合と殆ど変わらないことを示す。このように、グループ内の被補償RFIDタグの各々は、単一のRFID読取装置により個別に読み取り可能である。図14に、補償要素30が結果的に、システム動作周波数で動作するRFID読取装置により1個、2個、または多数のタグを読み取ることができる被補償RFIDタグとなることを示す。
【0052】
補償要素30を被誘導的結合RFIDタグ・アンテナ(an inductively coupled RFID tag antenna)24に追加すると、被補償RFIDタグ20と、RFエネルギー場の磁場成分との相互作用が修正される。このRFエネルギー場はアンテナ24により生成され、補償要素30へ入射するものである。インダクタンスLは、RFIDタグ・アンテナ24内で誘導された電流と、アンテナ24を通る磁束との結合を特徴付ける。磁束は、磁場B、アンテナの面積A、およびアンテナ内のターン数Nの関数である。磁場Bは、読取装置が生成した場、RFIDタグ内で誘導された電流、および隣接するRFIDタグ内の電流のベクトル和である。補償要素30は、被補償RFIDタグを流れる正味電流に寄与し、RFIDアンテナ24の見掛け上のインダクタンスLを減らすことにより、補償されている、いないに関わらず、隣接するRFIDタグの存在を「補償する」。
【0053】
図15Aに、被補償RFIDタグ20の周波数および振幅応答に対する(Versus)補償要素30の大きさのグラフを示す。これらの結果は、標準的な無補償RFIDタグ(大きさが変化する直線状補償要素30を含むように修正された)から取得された。試験用RFIDタグの最も内側のループの直径は約25mm、最も外側のループの直径は約45mmであった。図15Aに示すように、直径が22.5mm未満の補償要素30の場合、補償要素30は被試験RFIDの応答には何ら影響がなかった。しかし、補償要素30の直径が、被試験タグの最も内側のループの直径に近い場合、顕著な影響が見られた。すなわち、周波数応答が上方シフトされ、補償要素30の直径が40mmに近づいた時に最大になる。
【0054】
図15Bに、被補償RFIDタグ20の周波数および振幅応答に対する(Versus)円形補償要素30の大きさのグラフを示す。同じような大きさの直線状補償要素30に対する結果も示す。直線状の補償要素と同様に、補償要素の直径が被試験タグの最も内側のループの直径に近づいたならば、顕著な効果が見られた。再び、周波数応答は上方シフトされ、円形の補償要素と、正方形の補償要素の直径が共に約40mmであるときに最大である。図15A、15Bから、補償要素30が実質的に任意の形状であってよく、しかも本明細書に述べる補償機能を実行できるものと推論することができる。
【0055】
図15A、15Bはまた、補償要素30の影響が近接結合による影響であることも示す。すなわち、補償要素30は、RFIDタグ・アンテナ24に近接結合(proximity coupled)されている。補償要素30は結合寄生電流を流す。この寄生電流はRFIDタグ・アンテナ24の電流により駆動されるものである。補償要素30はこのように、RFID読取装置アンテナが生成する問い掛け磁場とは対照的に、RFIDタグ・アンテナ24と電磁気的に結合している。この近接結合効果を生成するために、補償要素30をRFIDタグ・アンテナと電磁結合するように、配置することができる。すなわち、アンテナ24内の一次電流が補償要素30内に寄生電流を誘導するように配置することができる。補償要素30を、アンテナ24の少なくとも1個のループの10導線幅内に配置することができる。このために補償要素を近接結合効果を生じるようにRFIDタグ・アンテナ24と電磁結合する位置に配置する。用語「導線幅」は、アンテナ24の近接結合されたループまたはループ群の線幅を指す。補償要素30がアンテナ24の少なくとも1個のループの比較的近くに配置された場合、例えば補償要素30がアンテナ24の少なくとも1個のループから1〜2本の導線幅以内に配置された場合に、より強い近接結合が実現される。しかし、補償要素30とアンテナ24が電磁結合のために配置されている限り、それらが置かれている間隔の正確な距離は本発明の限定要素にならない。
【0056】
図16に、実質的に直線状のアンテナ24の軸に対する、実質的に直線状の補償要素30の角変位の効果を示す。補償要素は、RFIDタグ・アンテナの複数のループの平均エッヂ長さにほぼ等しいエッヂ長さ(edge length)を有するように選ばれた。図に示すように、近接結合効果は、角変位または角オフセットが0度のときに最大(図6、7参照)である。角変位が増すにつれて、近接結合効果は角変位が約10度に達するまで非線形に減少する。角変位が10度を超えた場合、近接結合効果は角変位が45度になるまで緩慢に減少する。
【0057】
図16は、角変位が0度のときにfTAGに対する近接結合効果が最も大きく、その後角変位が約10度まで増大するのに伴い低下する。角変位が10度を超えた場合、角変位が変動してもRFIDタグ応答にはさほど影響を及ぼさない。これは、補償要素30が従来方式の無補償RFIDタグに取り付けられているアプリケーションでは、補償要素30を無補償RFIDタグに取り付ける際に、アンテナ24のループに対して「直角(square)」ではなく、所定の角度をなす方が、より安定した予測可能な結果が得られることを意味する。図16が実質的に正方形の補償要素およびRFIDアンテナ24に関して測定されているものの、他の非回転独立形状でも同様の結果が得られる点を理解されたい。回転独立形状(例えば円)の場合に、角変位は何ら影響しない。
【0058】
ここで被補償RFIDタグ20および補償要素30の更なる実施形態について図17を参照しつつ記述する。図17に、異なる補償要素30の構成を備えた被補償RFIDタグの周波数応答fTAG101および振幅103を示す。図17の被補償RFIDタグは、「短絡」コイルまたはアンテナ24のループの各種の組合せである。すなわち、アンテナ24内のループまたはコイルの異なる組合せが、アンテナ24の他のループと電気的に接続または短絡されている。このように、図17に応答を示す補償要素30は、RFIDタグ・アンテナと電気的に接続しているものの、RFIDタグ・アンテナの内端から外端へ直接辿られる電気径路(回路)の一部ではない点で、図3に示した上述のものと類似している。換言すれば、補償要素30(図17に応答を示す)はRFIDタグ・アンテナと電気的に接続しているものの、RFIDタグ・アンテナ自身の一部を構成するものではない。アンテナのコイルには、1(最も内側のループまたはコイル)から9(最も外側のループまたはコイル)まで番号が付けられている。短絡コイルおよび付随する応答は、以下のように図17に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
図17から、いくつかの一般化を行なうことができる。例えば、任意のアンテナ・ループを別のアンテナ・ループに、最も内側から最も外側へ短絡させることにより、補償要素効果が生じる。また、複数のコイルを、隣接コイルまたは非隣接コイルのいずれかに短絡させても補償要素効果が生じる。図17に、補償機能を実現可能な短絡コイルの多くの可能な組合せを示す。従って、これらおよび他の短絡コイルの補償要素としての組合せが本発明の範囲に含まれることが理解されよう。
【0061】
このように、2種類の異なる補償要素30について述べてきた。一つの種類は図2〜6に関して上述したものであり、補償要素30はRFIDアンテナ24とは物理的に別個に形成されている。この物理的に別個の補償要素30は、RFIDアンテナ24と電気的に接続または電気的に絶縁(すなわち非接続に)されていてよい。別の種類は図17に関して上述したものであり、アンテナ24自身の物理コイルまたはループが、アンテナ24の他のコイルまたはループに短絡され、補償要素30を形成する。連続ループ補償要素30を形成する各々のコイルまたはループは、アンテナ24のコイルまたはループと単一の電気的接点において接続されている。補償要素30のタイプの選択は、すなわち物理的に別個の要素として形成されているか、またはRFIDタグ・アンテナ自身の一部として形成されているかの選択は、RFIDタグを使用する特定のアプリケーション、被補償RFIDタグの所望の共振周波数、RFIDタグの生産に用いる製造方法、および、補償要素30が製造時にRFIDタグに組み込まれるか、或いは図10に関して上で述べた仕方で既存の無補償RFIDタグに追加されるかに依存する。
【0062】
図18に、被補償RFIDタグ20の別のアプリケーションを示す。図18は、導電基板160上の被補償RFIDタグ20を示す図である。被補償RFIDタグ20は、基板22、アンテナ24、オプションのRFIDダイ(図示せず)、補償要素基板23、および補償要素30を含んでいる。誘電スペーサ164は、被補償RFIDタグ20と、タグ付けされる導電面160とを物理的および電磁気的に分離する。再び、表示の便宜上、補償要素30を、アンテナ24の最も内側のループ24Aの内側に全体が配置されている状態で示す。補償要素30が、図2〜12に関して示して記述したものを含め、いくつかの可能な形状の任意のものであってよい点を理解されたい。
【0063】
被補償RFIDタグ20を用いて、金属その他の導電面を有する物品のタグ付けまたはラベル付けを行うことができる。被補償RFIDタグ20は、標準の無補償RFIDタグと比較して、RFIDタグが金属その他の導電面に取り付けられて磁気誘導結合RFIDシステムにより検知される場合に性能の向上を示す。
【0064】
読取り範囲、すなわちRFID読取装置がRFIDタグを検知して通信することができる距離を、RFIDタグの効力の定量化可能な尺度として用いることができる。導電面160が存在する場合は、誘電スペーサ164上の被補償RFIDタグ20は、同様の導電面上の同様の誘電スペーサ上に装着された同等の従来方式無補償RFIDタグよりも広い読み取り範囲を示す。
【0065】
導電面にラベル付けを行なう場合、RFIDタグの電流分布に応答して、導電面に形成される電気的「イメージ電流」分布の影響も考慮に入れるべきである。RFIDタグおよび導電面が近接している場合、イメージ電流はRFIDタグ内の電流分布を無効化する。タグとイメージ電流を合わせた効果により、RFID読取装置に対する見掛けのタグ応答を低下させることができ、読取装置はこれを「タグが存在しない」と解釈する。
【0066】
誘電スペーサ164は、導電面内の誘導イメージ電流から、RFIDタグ内の電流を分離する。誘電スペーサ164の有効電気厚さ(物理的厚さtと誘電率εの積)は、実際の物理的厚さt、又は誘電率εを増すことにより、大きくすることができる。RFIDタグをラベルとして用いるアプリケーションの場合、誘電スペーサが厚いと、物品にマーク付けする実用的ソリューションにはRFIDタグが厚くなり過ぎる。導電面上の被補償RFIDタグの場合、誘電スペーサは、例えば一実施形態ではε<10、別の実施形態ではε<3のように適度に低いεを有する誘電体材料を作成することができる。このような材料の例として、例えば、発泡ポリマーフィルム、或いはポリエチレンまたはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の低εマトリクス内の中空気体充満レンズまたはポリマー気泡が含まれる。誘電スペーサ164の厚さは、導電面160上の被補償RFIDタグ20に対して所望の読み取り範囲を実現するのに十分でなければならない。例えば、厚さがt<10mm、または厚さがt<5mmである誘電スペーサである。総括すれば、被補償RFIDタグ20によって、より薄い誘電スペーサ164の利用が可能になるので、RFIDラベルの突出が少なくなる。
【0067】
補償RFIDタグ20は結果的に、導電面上の被補償RFIDタグの読み取り機能の効果を向上させる。第一に、被補償RFIDタグを使うと、電気的に薄い誘電スペーサに対し導電面でより広い読み取り範囲が得られる。導電面上の被補償RFIDタグは、物理的により薄い構造で同等の読み取り範囲が得られる。また、導電面上の被補償RFIDタグにより、従来方式の無補償RFIDタグと比較して、より小さいタグで同等の性能が得られる。
【0068】
本発明の各種の実施形態について述べてきた。これらおよび他の実施形態は添付の請求項の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】RFIDタグが本明細書に記述する技術に従い補償要素を組み込んだ無線周波数識別(RFID)システムを示すブロック図である。
【図2】本明細書に記述する技術による被被補償RFIDタグの一つの例の実施形態の模式図である。
【図3−10】被補償RFIDタグの別の一例の実施形態の模式図である。
【図11A−11C】被補償RFIDタグの別の一例の実施形態の側面斜視図である。
【図12A−12C】被補償RFIDタグの別の一例の実施形態の側面斜視図である。
【図13】被補償RFIDタグ内の電流の方向を一般的に示す図である。
【図14】問い掛け領域が存在する場合の5個の被補償RFIDタグの応答例を示すグラフである。
【図15A】直線被補償RFIDタグの共振周波数対補償要素の大きさを示すグラフである。
【図15B】直線被補償RFIDタグの共振周波数対補償要素の大きさ、および円形被補償RFIDタグの共振周波数対補償要素の大きさを示すグラフである。
【図16】被補償RFIDタグの共振周波数対補償要素の角変位を示すグラフである。
【図17】共振周波数および振幅対被補償RFIDタグ内の各種な短絡コイルの組合せを示すグラフである。
【図18】導電性基板上に補償要素を備えたRFIDタグを示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導ループ・アンテナに電磁結合するための大きさを有する導電材料の閉ループを含む補償要素。
【請求項2】
前記誘導ループ・アンテナへの電磁結合に応答して前記補償要素内で寄生電流が誘導される、請求項1に記載の補償要素。
【請求項3】
前記導電材料が、ダイカットされた金属箔、パターン付き金属箔、電気メッキされた導電性金属、印刷された導電性インク、および導電状態に還元された印刷先駆物質のうち少なくとも一つを含む、請求項1に記載の補償要素。
【請求項4】
実質的に直線状(recti linear)である、請求項1に記載の補償要素。
【請求項5】
実質的に円形である、請求項1に記載の補償要素。
【請求項6】
前記閉ループが上に配置された基板を更に含む、請求項1に記載の補償要素。
【請求項7】
前記基板の一方の面に配置された接着層を更に含む、請求項6に記載の補償要素。
【請求項8】
前記補償要素と前記接着層が前記基板の同一面に配置されている、請求項7に記載の補償要素。
【請求項9】
前記補償要素と前記接着層が前記基板の反対面に配置されている、請求項7に記載の補償要素。
【請求項10】
誘導ループ・アンテナと、
前記誘導ループ・アンテナに電磁結合すべく配置された補償要素と、
を含む無線周波数識別(RFID)タグ。
【請求項11】
前記誘導ループ・アンテナ内の一次電流により前記補償要素内で寄生電流が誘導される、請求項10に記載のRFIDタグ。
【請求項12】
前記補償要素が前記誘導ループ・アンテナと電磁気的に結合すべく配置されていることにより、前記被補償RFIDタグが他のRFIDタグに近接している場合に、RFIDシステム問い掛けアンテナが前記被補償RFIDタグを検知可能である、請求項10に記載のRFIDタグ。
【請求項13】
内部に識別情報が格納されているRFIDダイを更に含む、請求項10に記載のRFIDタグ。
【請求項14】
前記補償要素が導電材料の閉ループを含む、請求項10に記載のRFIDタグ。
【請求項15】
前記閉ループが実質的に直線状(recti linear)である、請求項14に記載のRFIDタグ。
【請求項16】
前記閉ループが実質的に円形である、請求項14に記載のRFIDタグ。
【請求項17】
前記閉ループが前記誘導ループ・アンテナから電気的に絶縁されている、請求項14に記載のRFIDタグ。
【請求項18】
前記閉ループが前記誘導ループ・アンテナと電気的に接続している、請求項14に記載のRFIDタグ。
【請求項19】
前記閉ループが前記誘導ループ・アンテナの最も内側のループの内側に配置されている、請求項14に記載のRFIDタグ。
【請求項20】
前記閉ループが前記誘導ループ・アンテナのループ間に配置されている、請求項14に記載のRFIDタグ。
【請求項21】
前記閉ループが前記誘導ループ・アンテナの最も外側のループの外側に配置されている、請求項14に記載のRFIDタグ。
【請求項22】
前記補償要素が、前記誘導ループ・アンテナの軸に対して0〜45度の範囲の角変位を有する、請求項14に記載のRFIDタグ。
【請求項23】
前記導電材料が、ダイカットされた金属箔、パターン付き金属箔、電気メッキされた導電性金属、印刷された導電性インク、および導電状態にされた印刷先駆物質のうち少なくとも一つを含む、請求項14に記載のRFIDタグ。
【請求項24】
前記閉ループが、前記誘導ループ・アンテナの少なくとも1個のループの10線幅以内に配置されている、請求項14に記載のRFIDタグ。
【請求項25】
前記閉ループが、前記誘導ループ・アンテナの少なくとも1個のループの2線幅以内に配置されている、請求項14に記載のRFIDタグ。
【請求項26】
前記補償要素が、前記誘導ループ・アンテナの軸と実質的に整列した軸を有する、請求項10に記載のRFIDタグ。
【請求項27】
前記補償要素が実質的に、前記誘導ループ・アンテナの平面に平行且つ近接している平面上にある、請求項10に記載のRFIDタグ。
【請求項28】
前記補償要素が、前記誘導ループ・アンテナと実質的に同一平面上にある、請求項10に記載のRFIDタグ。
【請求項29】
前記RFIDタグが、約13.56±1.0MHzの周波数で共振する、請求項10に記載のRFIDタグ。
【請求項30】
前記補償要素が、誘導ループ・アンテナとは物理的に別個である、請求項10に記載のRFIDタグ。
【請求項31】
前記補償要素が、前記誘導ループ・アンテナの少なくとも1個の他のループと電気的に接続している前記誘導ループ・アンテナの少なくとも1個のループを含む、請求項10に記載のRFIDタグ。
【請求項32】
前記閉ループが、前記誘導ループ・アンテナの少なくとも2個のループを含み、前記誘導ループ・アンテナの2個のループの各々が、前記誘導ループ・アンテナの異なる他の1個のループと電気的に接続している、請求項31に記載のRFIDタグ。
【請求項33】
前記誘導ループ・アンテナの少なくとも1個の他のループと電気的に接続している、前記誘導ループ・アンテナの少なくとも2個のループが隣接ループである、請求項32に記載のRFIDタグ。
【請求項34】
前記誘導ループ・アンテナの少なくとも1個の他のループと電気的に接続している、前記誘導ループ・アンテナの少なくとも2個のループが非隣接ループである、請求項32に記載のRFIDタグ。
【請求項35】
前記誘導ループ・アンテナの少なくとも1個のループが、前記誘導ループ・アンテナの少なくとも1個の他のループへ電気的に短絡されている、請求項31に記載のRFIDタグ。
【請求項36】
複数のRFIDタグの少なくとも1個が被補償RFIDタグであって、前記複数のRFIDタグの1個が各々に関連付けられた複数の物品を保管する保管場所と、
前記保管場所に近接していて、前記複数のRFIDタグからの応答を誘導するのに十分な呼び掛け電磁場を生じる問い掛けアンテナと、
前記問い掛けアンテナに結合されて前記アンテナへの電力を制御すると共に、前記問い掛けアンテナにより伝送されたRFIDタグからの情報を受信するRFID読取装置とを含み、
前記被補償RFIDタグが、誘導ループ・アンテナおよび前記誘導ループ・アンテナに電磁結合すべく配置された補償要素を含んでいることにより、前記補償RFIDタグが他のRFIDタグと混在している場合でも、前記呼び掛けアンテナが前記被補償RFIDタグと通信可能である、無線周波数識別(RFID)システム。
【請求項37】
前記誘導ループ・アンテナ内の一次電流により、前記補償要素内で寄生電流が誘導される、請求項36に記載のシステム。
【請求項38】
前記RFID読取装置から情報を受信し、前記情報をデータベースに保管する物品管理システムを更に含む、請求項36に記載のシステム。
【請求項39】
遠隔ユーザーに情報を提示すべく、前記物品管理システムに接続されたリモート・コンピュータを更に含む、請求項36に記載のシステム。
【請求項40】
前記保管場所が、棚ユニット、キャビネット、垂直ファイル・セパレータ、スマートカート、およびデスクトップ読取装置のうち少なくとも一つを含む、請求項36に記載のシステム。
【請求項41】
前記情報が、前記保管場所内における物品の位置情報を含む、請求項36に記載のシステム。
【請求項42】
RFIDタグが関連付けられた前記物品が、ファイルと文書のうち少なくとも一つを含む、請求項36に記載のシステム。
【請求項43】
前記補償要素が、前記誘導ループ・アンテナの少なくとも1個のループの10線幅以内に配置されている、請求項36に記載の被補償RFIDタグ。
【請求項44】
前記他のRFIDタグの少なくとも一部が無補償RFIDタグである、請求項36に記載の被補償RFIDタグ。
【請求項45】
前記他のRFIDタグの少なくとも一部が被補償RFIDタグである、請求項36に記載の被補償RFIDタグ。
【請求項46】
導電面上に配置する無線周波数識別(RFID)タグであって、
基板と、
前記基板上に配置された誘導ループ・アンテナと、
前記誘導ループ・アンテナと電磁結合すべく配置された補償要素と、
前記基板と前記導電面の間に配置された誘電スペーサとを含むRFIDタグ。
【請求項47】
前記誘電スペーサの誘電率が10未満である、請求項46に記載のRFIDタグ。
【請求項48】
前記誘電スペーサの誘電率が3未満である、請求項47に記載のRFIDタグ。
【請求項49】
前記誘電スペーサの厚さが10mm未満である、請求項46に記載のRFIDタグ。
【請求項50】
前記誘電スペーサの厚さが5mm未満である、請求項49に記載のRFIDタグ。
【請求項1】
誘導ループ・アンテナに電磁結合するための大きさを有する導電材料の閉ループを含む補償要素。
【請求項2】
前記誘導ループ・アンテナへの電磁結合に応答して前記補償要素内で寄生電流が誘導される、請求項1に記載の補償要素。
【請求項3】
前記導電材料が、ダイカットされた金属箔、パターン付き金属箔、電気メッキされた導電性金属、印刷された導電性インク、および導電状態に還元された印刷先駆物質のうち少なくとも一つを含む、請求項1に記載の補償要素。
【請求項4】
実質的に直線状(recti linear)である、請求項1に記載の補償要素。
【請求項5】
実質的に円形である、請求項1に記載の補償要素。
【請求項6】
前記閉ループが上に配置された基板を更に含む、請求項1に記載の補償要素。
【請求項7】
前記基板の一方の面に配置された接着層を更に含む、請求項6に記載の補償要素。
【請求項8】
前記補償要素と前記接着層が前記基板の同一面に配置されている、請求項7に記載の補償要素。
【請求項9】
前記補償要素と前記接着層が前記基板の反対面に配置されている、請求項7に記載の補償要素。
【請求項10】
誘導ループ・アンテナと、
前記誘導ループ・アンテナに電磁結合すべく配置された補償要素と、
を含む無線周波数識別(RFID)タグ。
【請求項11】
前記誘導ループ・アンテナ内の一次電流により前記補償要素内で寄生電流が誘導される、請求項10に記載のRFIDタグ。
【請求項12】
前記補償要素が前記誘導ループ・アンテナと電磁気的に結合すべく配置されていることにより、前記被補償RFIDタグが他のRFIDタグに近接している場合に、RFIDシステム問い掛けアンテナが前記被補償RFIDタグを検知可能である、請求項10に記載のRFIDタグ。
【請求項13】
内部に識別情報が格納されているRFIDダイを更に含む、請求項10に記載のRFIDタグ。
【請求項14】
前記補償要素が導電材料の閉ループを含む、請求項10に記載のRFIDタグ。
【請求項15】
前記閉ループが実質的に直線状(recti linear)である、請求項14に記載のRFIDタグ。
【請求項16】
前記閉ループが実質的に円形である、請求項14に記載のRFIDタグ。
【請求項17】
前記閉ループが前記誘導ループ・アンテナから電気的に絶縁されている、請求項14に記載のRFIDタグ。
【請求項18】
前記閉ループが前記誘導ループ・アンテナと電気的に接続している、請求項14に記載のRFIDタグ。
【請求項19】
前記閉ループが前記誘導ループ・アンテナの最も内側のループの内側に配置されている、請求項14に記載のRFIDタグ。
【請求項20】
前記閉ループが前記誘導ループ・アンテナのループ間に配置されている、請求項14に記載のRFIDタグ。
【請求項21】
前記閉ループが前記誘導ループ・アンテナの最も外側のループの外側に配置されている、請求項14に記載のRFIDタグ。
【請求項22】
前記補償要素が、前記誘導ループ・アンテナの軸に対して0〜45度の範囲の角変位を有する、請求項14に記載のRFIDタグ。
【請求項23】
前記導電材料が、ダイカットされた金属箔、パターン付き金属箔、電気メッキされた導電性金属、印刷された導電性インク、および導電状態にされた印刷先駆物質のうち少なくとも一つを含む、請求項14に記載のRFIDタグ。
【請求項24】
前記閉ループが、前記誘導ループ・アンテナの少なくとも1個のループの10線幅以内に配置されている、請求項14に記載のRFIDタグ。
【請求項25】
前記閉ループが、前記誘導ループ・アンテナの少なくとも1個のループの2線幅以内に配置されている、請求項14に記載のRFIDタグ。
【請求項26】
前記補償要素が、前記誘導ループ・アンテナの軸と実質的に整列した軸を有する、請求項10に記載のRFIDタグ。
【請求項27】
前記補償要素が実質的に、前記誘導ループ・アンテナの平面に平行且つ近接している平面上にある、請求項10に記載のRFIDタグ。
【請求項28】
前記補償要素が、前記誘導ループ・アンテナと実質的に同一平面上にある、請求項10に記載のRFIDタグ。
【請求項29】
前記RFIDタグが、約13.56±1.0MHzの周波数で共振する、請求項10に記載のRFIDタグ。
【請求項30】
前記補償要素が、誘導ループ・アンテナとは物理的に別個である、請求項10に記載のRFIDタグ。
【請求項31】
前記補償要素が、前記誘導ループ・アンテナの少なくとも1個の他のループと電気的に接続している前記誘導ループ・アンテナの少なくとも1個のループを含む、請求項10に記載のRFIDタグ。
【請求項32】
前記閉ループが、前記誘導ループ・アンテナの少なくとも2個のループを含み、前記誘導ループ・アンテナの2個のループの各々が、前記誘導ループ・アンテナの異なる他の1個のループと電気的に接続している、請求項31に記載のRFIDタグ。
【請求項33】
前記誘導ループ・アンテナの少なくとも1個の他のループと電気的に接続している、前記誘導ループ・アンテナの少なくとも2個のループが隣接ループである、請求項32に記載のRFIDタグ。
【請求項34】
前記誘導ループ・アンテナの少なくとも1個の他のループと電気的に接続している、前記誘導ループ・アンテナの少なくとも2個のループが非隣接ループである、請求項32に記載のRFIDタグ。
【請求項35】
前記誘導ループ・アンテナの少なくとも1個のループが、前記誘導ループ・アンテナの少なくとも1個の他のループへ電気的に短絡されている、請求項31に記載のRFIDタグ。
【請求項36】
複数のRFIDタグの少なくとも1個が被補償RFIDタグであって、前記複数のRFIDタグの1個が各々に関連付けられた複数の物品を保管する保管場所と、
前記保管場所に近接していて、前記複数のRFIDタグからの応答を誘導するのに十分な呼び掛け電磁場を生じる問い掛けアンテナと、
前記問い掛けアンテナに結合されて前記アンテナへの電力を制御すると共に、前記問い掛けアンテナにより伝送されたRFIDタグからの情報を受信するRFID読取装置とを含み、
前記被補償RFIDタグが、誘導ループ・アンテナおよび前記誘導ループ・アンテナに電磁結合すべく配置された補償要素を含んでいることにより、前記補償RFIDタグが他のRFIDタグと混在している場合でも、前記呼び掛けアンテナが前記被補償RFIDタグと通信可能である、無線周波数識別(RFID)システム。
【請求項37】
前記誘導ループ・アンテナ内の一次電流により、前記補償要素内で寄生電流が誘導される、請求項36に記載のシステム。
【請求項38】
前記RFID読取装置から情報を受信し、前記情報をデータベースに保管する物品管理システムを更に含む、請求項36に記載のシステム。
【請求項39】
遠隔ユーザーに情報を提示すべく、前記物品管理システムに接続されたリモート・コンピュータを更に含む、請求項36に記載のシステム。
【請求項40】
前記保管場所が、棚ユニット、キャビネット、垂直ファイル・セパレータ、スマートカート、およびデスクトップ読取装置のうち少なくとも一つを含む、請求項36に記載のシステム。
【請求項41】
前記情報が、前記保管場所内における物品の位置情報を含む、請求項36に記載のシステム。
【請求項42】
RFIDタグが関連付けられた前記物品が、ファイルと文書のうち少なくとも一つを含む、請求項36に記載のシステム。
【請求項43】
前記補償要素が、前記誘導ループ・アンテナの少なくとも1個のループの10線幅以内に配置されている、請求項36に記載の被補償RFIDタグ。
【請求項44】
前記他のRFIDタグの少なくとも一部が無補償RFIDタグである、請求項36に記載の被補償RFIDタグ。
【請求項45】
前記他のRFIDタグの少なくとも一部が被補償RFIDタグである、請求項36に記載の被補償RFIDタグ。
【請求項46】
導電面上に配置する無線周波数識別(RFID)タグであって、
基板と、
前記基板上に配置された誘導ループ・アンテナと、
前記誘導ループ・アンテナと電磁結合すべく配置された補償要素と、
前記基板と前記導電面の間に配置された誘電スペーサとを含むRFIDタグ。
【請求項47】
前記誘電スペーサの誘電率が10未満である、請求項46に記載のRFIDタグ。
【請求項48】
前記誘電スペーサの誘電率が3未満である、請求項47に記載のRFIDタグ。
【請求項49】
前記誘電スペーサの厚さが10mm未満である、請求項46に記載のRFIDタグ。
【請求項50】
前記誘電スペーサの厚さが5mm未満である、請求項49に記載のRFIDタグ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【図17】
【図18】
【公表番号】特表2007−531392(P2007−531392A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−504962(P2007−504962)
【出願日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【国際出願番号】PCT/US2005/005035
【国際公開番号】WO2005/104296
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【国際出願番号】PCT/US2005/005035
【国際公開番号】WO2005/104296
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】
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