説明

補助スタータ付き電源装置

【課題】手動式始動手段を備えた電源装置について、バッテリを用いることなく始動時の労力を軽減可能として、取り扱い容易なものとする。
【解決手段】エンジン10の駆動軸に発電手段20を連結してなる発電ユニット2と、エンジン10の駆動軸に連結され手動で発電ユニット2を始動させるための手動式始動手段11と、発電ユニット2が作動することにより生じた電気を整流する整流回路と、手動式始動手段11を用いた始動動作をアシストするための電動式の補助スタータ7とを備えた電源装置において、その整流回路に電気二重層コンデンサ4が接続されて発電した電力を蓄えるものとされ、始動時に電気二重層コンデンサ4に電力が所定量以上残存している場合にその電力を補助スタータ7の駆動に使用し、始動後の運転時には電気二重層コンデンサ4に蓄えた電力を負荷5に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補助スタータ付き電源装置に関し、殊に、手動で発電ユニットを始動させる際に始動動作をアシストする補助スタータを備えた、補助スタータ付き電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
草刈り機や農耕機、或いは電源装置(発電機)等において多用される汎用エンジンにおいては、その始動にスタータモータを使用せずに例えば特開2003−129925号公報に記載されているように、エンジンのクランク軸に直結したリコイルリールから延出したリコイルロープを手動で引っ張る方式の手動式始動手段でエンジンを始動させるようにして、装置の軽量化やコストの低廉化を実現しているものが多い。
【0003】
また、このように手動でエンジンを始動させる方式は、バッテリを使用しないという点で取り扱いが容易で経済面で有利であり、且つ、メンテナンスの手間も軽減されやすいメリットがある。しかし、この方式においては、エンジンの始動を人力により行うものであることから、取り扱い者が比較的大きな力を瞬発的に発揮することが要求されることになり、女性や力の弱い人では始動に手間取ったり始動に失敗したりする場合も多い。
【0004】
特に、非常時や屋外での電源供給に用いる電源装置(発電機)においては、電力使用のピーク時にも対応可能な容量の発電ユニット(エンジン及び発電手段)を装備することが必要になるところ、容量が大きくなるに従ってエンジンを回転させる際の負荷が増えるので始動に際し大きなエネルギーが必要となる。したがって、手動による始動方式を採用した電源装置ではその始動時に大きな労力を要することになるため、取り扱いの容易さという観点では改善の余地が大きいものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−129925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような問題を解決しようとするものであり、手動式始動手段を備えた電源装置について、バッテリを用いることなく始動時の労力を軽減可能として、取り扱い容易なものとすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明は、エンジンの駆動軸に発電手段を連結してなる発電ユニットと、エンジンの駆動軸に連結され手動で発電ユニットを始動させるための手動式始動手段と、その発電ユニットが作動することで発生した電気を整流する整流回路と、手動式始動手段を用いた始動動作をアシストするための電動式の補助スタータとを備えた補助スタータ付き電源装置を、その整流回路に電気二重層コンデンサが接続されて発電ユニットで発電した電力を蓄えるものとし、発電ユニットの始動時に電気二重層コンデンサに電力が所定量以上残存している場合にその電力を補助スタータの駆動に使用し、始動後の運転時には電気二重層コンデンサに蓄えた電力を供給することとして前記課題を解決するための手段とした。
【0008】
電気二重層コンデンサは、小型でも比較的大きな静電容量が得られるのに加え、回路中に電子部品として配置可能であり頻繁な充電・放電を繰り返しても劣化が少ない点で取り扱いが極めて容易なものであるが、このように補助スタータとともに配置することで、バッテリを用いることなく手動による始動動作をアシスト可能なものとなり、始動後は電気二重層コンデンサに電力を蓄えながら比較的大きな電力の供給が可能となるため、発電ユニットの容量を大きくすることなくピーク時の電力消費量にも対応することを可能とした。
【0009】
また、この補助スタータ付き電源装置を、発電ユニットの発電手段と電気二重層コンデンサとを接続する配線の途中に第1の接続切替手段を配設するとともに、電気二重層コンデンサと補助スタータとを接続する配線の途中に第2の接続切替手段を配設したものとし、且つ、所定の切替操作手段で両接続切替手段を操作するものとして、始動時に第1の接続切替手段を非接続状態としながら第2の接続切替手段を接続状態とし、始動後の運転時に第2の接続切替手段を非接続状態としながら第1の接続切替手段を接続状態とすることにより、前述した機能を充分に発揮することができる。
【0010】
さらに、この場合、第1の接続切替手段及び第2の接続切替手段を、通常は非接続状態となるものとし、第1の接続切替手段を、発電ユニットの発電による電圧を検出する機能を有した切替操作手段の1つにより、その電圧が所定レベル以上となることで接続状態とされ電圧が所定レベル以下になることで非接続状態とされるものであり、第2の接続切替手段は、手動式始動手段の動作に連動して作動する切替操作手段の他の1つにより、手動式始動手段の作動時に接続状態とされ手動式始動手段の非作動時に非接続状態とされるものとすれば、比較的簡易な構成で前述した作用を確実に発揮することができる。
【0011】
さらにまた、上述した補助スタータ付き電源装置において、電気二重層コンデンサによる電圧に基づいて補助スタータでアシスト可能なレベルについての表示を行う残量表示手段を備えたものとすれば、補助スタータが使用可能であるか否か、及び始動時において取扱者に要求される力の大きさについて判断がしやすいものとなる。
【0012】
この場合、その残量表示手段は、手動式始動手段を作動させるのに要する力を低減できる量として表示するものとすれば、始動時に取り扱い者に必要な力の大きさについての判断が、一層容易なものとなる。
【発明の効果】
【0013】
始動時に電気二重層コンデンサで補助スタータを駆動させ、運転時に電気二重層コンデンサに電力を蓄えながら出力して供給するように接続を切り替える本発明によると、バッテリを用いることなく始動時の労力を軽減可能とし、取り扱い容易なものとすることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明における実施の形態である補助スタータ付き電源装置の配置図である。
【図2】図1の電圧検出手段において切替え操作のための判断基準としての電圧を示すグラフである。
【図3】図1の残量表示手段で表示される引っ張り力の低減可能量について説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。
【0016】
図1は、本実施の形態である補助スタータ付き電源装置1の簡略化した配置図を示している。この補助スタータ付き電源装置1は、ガソリン等で駆動するエンジン10の駆動軸に連結機構13で発電手段(発電機)20を連結してなる発電ユニット2を有しており、この発電ユニット2が出力する電気を整流する整流回路が接続されて、電気機器等の負荷5の電源として電力を供給するものである。
【0017】
本実施の形態では、その発電ユニット2を始動させるために、エンジン10の駆動軸に連結されたリコイルリール11aとこれから延出されたリコイルロープ11bからなる手動式始動手段11が設けられており、手動でリコイルロープ11bを取り扱い者が引っ張ることによる始動動作で、発電ユニット2(エンジン10)が始動するようになっている。
【0018】
このように、手動式始動手段11により発電ユニット2を始動する方式としたことにより、取り扱いとメンテナンスに手間を要しやすいバッテリを用いないで済み、装置全体としてコンパクト且つ低廉なものとすることができる。しかし、上述したように、電源として使用する場合に電力消費のピーク時に対応可能とするためには、発電ユニット2の容量をある程度確保することが必要であるところ、発電ユニット2を大容量化すると、手動でこれを始動させるには大きな力が必要となって、取り扱いの容易さが損なわれてしまうという問題があった。
【0019】
一方、近年においては、バッテリに代わるものとして電気二重層コンデンサが普及しつつある。この電気二重層コンデンサは、活性炭と電解液の界面に発生する電気二重層を動作原理として利用するコンデンサであり、その特徴として、小型で比較的大きな静電容量が得られ、特別な充電回路や放電時の制約もなく、電子部品として回路中に配設することができ、且つ、過充電や過放電、或いは頻繁な充電・放電によっても劣化しにくいものであり、安定的な蓄電手段・電力供給手段として利便性に優れるとともに取り扱いが容易である点が挙げられる。
【0020】
そこで本発明においては、補助スタータ付き電源装置1に電動式の補助スタータ7と前述した電気二重層コンデンサ4を設けて、発電ユニット2の始動時に電気二重層コンデンサ4に残存している電力を利用して補助スタータ7を駆動させることにより取り扱い者における始動動作をアシストし、始動後の運転時には発電ユニット2で発電した電気を電気二重層コンデンサ4に蓄えるとともに、負荷スイッチ10を介して負荷5に出力して供給するものとした。
【0021】
即ち、発電手段20の出力配線は電気二重層コンデンサ4に接続されているが、その出力配線の途中に第1の接続切替手段としてのリレー3が配置されており、このリレー3の接続状態を切替え操作する切替操作手段としての電圧検出回路6が、発電ユニット2の始動時にリレー3をOFF(非接続状態)とし、始動後にはON(接続状態)となるように操作するようになっている。これにより、発電ユニット2の始動時における電気的負荷を軽減して始動を容易なものとし、発電ユニット2始動後の運転時には、発電ユニット4が発電した電気を電気二重層コンデンサ4に電力として蓄えることができる。
【0022】
また、電気二重層コンデンサ4は、配線で補助スタータ7に接続されて始動アシスト時の電力を供給するようになっているが、その配線の途中には第2の接続切替手段としてのリレー8が配設されている。そして、手動式始動手段11のリコイルロープ11bは一部が分岐してマイクロスイッチ9にも接続されており、この両者でもう1つの切替操作手段を構成している。
【0023】
このもう1つの切替操作手段では、リコイルロープ11bを引く動作に連動してマイクロスイッチ9がONとなることにより、その出力信号でリレー8がON(接続状態)となって補助スタータ7を駆動させ、リコイルロープ11bを引くのをやめるとマイクロスイッチ9がOFFとなってリレー8をOFFにし、補助スタータ7を停止させるようになっている。
【0024】
さらに、本実施の形態の補助スタータ付き電源装置1には、電気二重層コンデンサ4に残存している電力の量(電圧)に基づいて補助スタータ7でアシスト可能なレベルについての表示を行う残量表示手段12が配設されており、取り扱い者がこの表示を確認することにより、始動時に補助スタータ7を使用できるか否か、できる場合に手動による駆動力(リコイルロープ11bを引く力)をどの程度軽減できるかについて判断できるようになっており、この点が本発明における第2の特徴部分となっている。
【0025】
この残量表示手段12による表示方法としては、例えば電気二重層コンデンサ4による電圧を電圧検出回路6が検出し、その電圧のレベルに応じて残量表示手段12おける表示灯の明暗で表示したり、所定のメーターや液晶により数値的に表示したりすることが想定され、さらには、電圧検出回路6が検出した電圧を基に予め電圧検出回路6に設定したMAP等を使用してリコイルロープ11bを引く力を低減可能な量として導出して表示するようにしてもよく、このようにすることで、取り扱い者が始動時にどの程度の力でリコイルロープ11bを引っ張れば良いかを、容易に判断できるようになる。
【0026】
次に、本実施の形態の補助スタータ付き電源装置1を使用する際の具体的な手順及びその作用について、図面を用いながら詳細に説明する。先ず、この補助スタータ付き電源装置1の発電ユニット2を始動させる前に、取り扱い者は、残量表示手段12の表示を確認して補助スタータ7が作動するだけの電力残量があるか否かを確認するとともに、その残量からリコイルロープ11bを引く力がどの程度軽減されるかについて認識する。
【0027】
そして、取り扱い者が始動に必要と思われる力(必要最小限の力)でリコイルロープ11bを引き始めると、リコイルロープ11bの動作に連動してマイクロスイッチ9がONになる。すると、マイクロスイッチ9による出力信号でOFFになっていたリレー8がONとなって接続状態となり、電気二重層コンデンサ4に残存した電力が供給されて補助スタータ7が作動を開始して、手動による始動動作をアシストする。このとき、発電手段20と電気二重層コンデンサ4とを繋ぐ出力配線の途中に配置したリレー3はOFFになっているため、始動時の電力負荷は軽減されて短時間での始動が可能である。
【0028】
始動が完了してリコイルロープ11bを引く動作をやめると、マイクロスイッチ9はOFFになるとともにリレー8もOFFになり、補助スタータ7への電力供給は停止される。一方、始動したことにより発電ユニット2は発電を開始し、切替操作手段としての電圧検出回路6は、発電ユニット2から出力される電圧を連続的に検出するとともに、その電圧が予め設定した図2のグラフに示すV2以上になっているか否かを判定し、なっていればリレー3をONとして発電ユニット2と電気二重層コンデンサ4とを接続状態として、充電を開始する。
【0029】
そして、負荷スイッチ10を手動でON状態になるように操作することにより、電気二重層コンデンサ4に溜めた電力を負荷5に供給して駆動させることができる。この場合、電気機器である負荷5は、ラッシュカレントなピーク電流が流れた場合でも、電気二重層コンデンサ4の特性により充分な電力が供給される。したがって、発電ユニット2を比較的小さな容量に抑えた小型の装置とした場合でも、比較的大きな負荷変動に対応することが可能である。尚、発電ユニット2の停止後は、電圧検出回路6で検出する電圧が予め設定した図2のグラフに示すV1以下になることにより、リレー3はOFFに切り替えられる。
【0030】
図3は、本実施の形態の補助スタータ付き電源装置1において、始動時の取り扱い者に求められる引っ張り力を低減可能な領域としてグラフで示したものであるが、電気二重層コンデンサ4に残存した電力量に基づく電圧値が大きくなるのに伴いスタータ補助力が大きくなり、取り扱い者によるリコイルロープ11bを引っ張る力の低減量が大きくなることが分かる。
【0031】
そのため、本実施の形態においては、取り扱い者が残量表示手段12を目視で確認して、電気二重層コンデンサ4における電力残量レベルを認識することにより、例えば比較的多量の電力が残っている場合には、補助スタータ7のみでも始動できることが分かり、この場合はリコイルロープ11bでマイクロスイッチ9をONにするだけの力で引けばよく、或いは、手動による駆動が必要であっても、電気二重層コンデンサ4の電力残存レベルに応じて必要最小限の力を使えばよいことが分かるため、始動時に取り扱い者が無駄な労力を費やすことを回避しやすい。
【0032】
以上、述べたように、手動による始動方式の電源装置について、本発明により、バッテリを用いることなく始動時の労力を軽減可能として、取り扱いが極めて容易なものとなった。
【符号の説明】
【0033】
1 補助スタータ付き電源装置、2 発電ユニット、3,8 リレー、4 電気二重層コンデンサ、5 負荷、6 電圧検出回路、7 補助スタータ、9 マイクロスイッチ、10 エンジン、11 手動式始動手段、11a リコイルリール、11b リコイルロープ、12 残量表示手段、20 発電手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの駆動軸に発電手段を連結してなる発電ユニットと、前記駆動軸に連結され手動で前記発電ユニットを始動させるための手動式始動手段と、前記発電ユニットが作動することで発生した電気を整流する整流回路と、前記手動式始動手段を用いた始動動作をアシストするための電動式の補助スタータとを備えた電源装置において、前記整流回路に電気二重層コンデンサが接続されて前記発電ユニットで発電した電力を蓄えるものとされ、前記発電ユニットの始動時に前記電気二重層コンデンサに電力が所定量以上残存している場合に前記電力を前記補助スタータの駆動に使用し、前記発電ユニット始動後の運転時には前記電気二重層コンデンサに蓄えた電力を供給することを特徴とする補助スタータ付き電源装置。
【請求項2】
前記発電手段と前記電気二重層コンデンサとを接続する配線の途中に第1の接続切替手段が配設されているとともに、前記電気二重層コンデンサと前記補助スタータとを接続する配線の途中に第2の接続切替手段が配設され、且つ、所定の切替操作手段で前記両接続切替手段を操作するものとされ、前記始動時に前記第1の接続切替手段を非接続状態としながら前記第2の接続切替手段を接続状態とし、前記始動後の運転時に前記第2の接続切替手段を非接続状態としながら前記第1の接続切替手段を接続状態とすることを特徴とする請求項1に記載した補助スタータ付き電源装置。
【請求項3】
前記第1の接続切替手段及び前記第2の接続切替手段は、通常は非接続状態になるものとされ、前記第1の接続切替手段は、前記発電ユニットの発電による電圧を検出する機能を有した前記切替操作手段の1つにより、前記電圧が所定レベル以上となることで接続状態とされ前記電圧が所定レベル以下になることで非接続状態とされるものであり、前記第2の接続切替手段は、前記手動式始動手段の動作に連動して作動する前記切替操作手段の他の1つにより、前記手動式始動手段の作動時に接続状態とされ前記手動式始動手段の非作動時に非接続状態とされることを特徴とする請求項2に記載した補助スタータ付き電源装置。
【請求項4】
前記電気二重層コンデンサによる電圧に基づいて前記補助スタータでアシスト可能なレベルについての表示を行う残量表示手段を備えていることを特徴とする請求項1,2または3に記載した補助スタータ付き電源装置。
【請求項5】
前記残量表示手段は、前記手動式始動手段を作動させるのに要する力を低減できる量として表示することを特徴とする請求項4に記載した補助スタータ付き電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−168938(P2010−168938A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−10598(P2009−10598)
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【出願人】(000153122)株式会社ニッキ (296)
【Fターム(参考)】