説明

補助バイアスを備えたライター構造

【課題】電極先端に残留する磁界は、媒体への転移に悪影響を及ぼし、媒体上の一部分を消去する原因となる恐れがある。電極先端の動作を支援し、外部の磁界が媒体上の一部分を消去しないようにする。
【解決手段】記憶媒体を有する記録ヘッドであって、磁気電極と、磁気バイアス構造と、磁気電極と磁気バイアス構造との間に配置されたスペーサとを備えた記録ヘッドを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、データ記憶装置、および検索システムに関するものである。更に特定すれば、本発明は、記録ヘッドの支援動作に関するものである。
【0002】
電子データ記憶装置、および検索システムでは、変換ヘッドは、情報を磁気ディスク上に格納するライターと、磁気的に符号化された情報を磁気ディスクから取り出すリーダー(reader)とを含むことができる。磁気環境では、リーダーは2個のシールドと、シールド間に配置された磁気抵抗(MR)センサーとを含むことができる。ディスク表面からの磁束によって、MRセンサーの検知層の磁化ベクトルは回転し、MRセンサーの電気抵抗の変化を引き起こす。このMRセンサーの抵抗の変化は、MRセンサーに電流を通電させ、MRセンサー両端の電圧を測定することによって検出することができる。次に、外付け回路は電圧情報を適切な形式に変換し、その情報を必要に応じて処理する。
【0003】
ライター(writer)部は、上部電極と、1個または2個のリターン電極を含むことができる。これらのリターン電極は、ライターの空気座面においてギャップ層によって上部電極から分離され、後部ギャップによって空気座面からは末端の領域において互いに接続され、さらに後部ギャップ・クローザまたは後部バイアによって空気座面からは末端の領域において互いに接続される。上部電極とリターン電極との間には、絶縁層によって封じ込められた1つ以上の導電性コイル層が配置される。ライター部とリーダー部は、多くの場合、一体構造に構成され、共有電極はリーダー部における上部シールドとして、且つライター部における下部電極の両方として機能する。
【0004】
データを磁気媒体に書き込むには、電流を導電性コイルに通電させることによって磁界を上部電極から発生するよう誘導する。コイルを通過する電流の極性を逆にすることによって、磁気媒体に書き込まれるデータの極性もまた逆になる。書き込まれるデータのトラック幅は、空気座面における書き込みギャップ(write gap)近傍の上部電極の幅によって規定される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
磁気記録では、情報を記録し、且つ確実に読み取ることができる面密度の向上が望まれている。垂直記録設計は、記憶媒体の面密度の高度化に対応する可能性がある。それは、磁気転移を媒体上に格納する方法によってであり、また水平記録方式の場合よりも大きな書き込み領域が生成可能であるからである。垂直記録システムでは、磁気転移はディスク表面に垂直に記録され、ディスク利用容量は結果的には減少する。垂直記録ヘッドは、書き込み電極、書き込み電極、および/または後続のリターン電極に磁気結合された主要リターンまたは対向電極、および書き込み電極周囲の導電性励磁コイルを含むことができる。磁気転移を媒体上に記録する時は、コイルに電流を通電し、書き込み電極に磁束を作る。磁束はハード磁気層を通過して媒体内のソフトな下部層に、さらに反対側の対向電極に到達する。磁束は媒体上に転移を生ずる。垂直電極先端、および電極先端周囲部分は、残留状態といわれる電流を切った状態においても大きな磁界を作る可能性がある。電極先端に残る磁界は媒体上の転移に悪影響を及ぼし、媒体上の一部分(bits)を消去する恐れがある。従って、電極先端の動作を支援し、また外部の磁界が媒体上の一部分を消去させない設計が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、記憶媒体を備えた記録ヘッドに関するものである。ヘッドは、磁気電極、磁気バイアス構造、および磁気電極と磁気バイアス構造との間に配置されたスペーサを含む。
【0007】
本発明の別の態様では、後方端を有する基板と、基板の後方端に結合された磁気電極先端とを有し、さらに座面を規定するヘッドが提供されている。コイルは、磁気電極先端の磁界が座面にほぼ垂直となるように配向するように為されている。補助機構は電極先端から間隔を置いて配置され、補助的磁界を与えるように為されている。
【実施例】
【0008】
図1は、本発明の実施形態が有用なディスク・ドライブ100の投影図である。ディスク・ドライブ100は、基板102と上部カバー(図示せず)とを備えたハウジングを含む。ディスク・ドライブ100は、さらにディスク・チャンプ108によってスピンドル・モータ(図示せず)上に搭載されたディスク・パック106を含む。ディスク・パック106は、中心軸109を中心として一緒に回転するように搭載された複数の個々のディスク107を含む。各ディスクの表面は連動スライダ110を有する。スライダ110はディスク・ドライブ100に搭載され、読み取り/書き込みヘッドを搬送して、ディスク表面と連通させる。読み取り/書き込みヘッドは、例えば、誘導ヘッド、磁気抵抗ヘッド、光ヘッド、または磁気光ヘッドといったあらゆる種類のヘッドを含むことができる。
【0009】
図1に示す例では、スライダ110は、サスペンション112によって支持され、サスペンション112は、アクチュエータ116のトラック・アクセス・アーム(track accessing arms)114に取り付けられている。図1に示すアクチュエータは、回転可動コイル・アクチュエータとして公知の種類のものであり、118において全体的に示すボイス・コイル・モータ(VCM)を含む。ボイス・コイル・モータ118は、アクチュエータに取り付けられたスライダ110と一緒にアクチュエータ116を枢軸120を中心として回転させ、ディスク内径124とディスク外径126との間の経路122に沿った所望のデータ・トラックの上にスライダ110を配置させる。ボイス・コイル・モータ118は、スライダ110とホスト・コンピュータ(図示せず)が生成した信号に基づいてサーボ・エレクトロニクス130によって駆動される。また、リニア・アクチュエータといった別の種類のアクチュエータも使用可能である。
【0010】
図2は、磁気読み取り/書き込みヘッド200、および読み取り/書き込みヘッド200の空気座面204に対して垂直な平面に沿った磁気ディスク202の断面図である。磁気読み取り/書き込みヘッド200の空気座面204は、磁気ディスク202の表面206に面している。磁気ディスク202は、矢印Aによって示すように、磁気読み取り/書き込みヘッド200に対する方向に移動または回転する。空気座面204とディスク表面206との間の間隔は、磁気読み取り/書き込みヘッド200と磁気ディスク202との間の接触を回避しながら、できるだけ小さくすることが好ましい。
【0011】
磁気読み取り/書き込みヘッド200のライター部は、上部電極208、ヨーク209、絶縁体210、導電性コイル212、および下部電極/上部シールド214を含む。導電性コイル212は、絶縁体210を用いることによってヨーク209と上部シールド214の間の所定の位置に保持される。導電性コイル212は、図2では一つのコイル層として示されているが、磁気読み取り/書き込みヘッド設計の分野ではよく知られているように、それよりも多いコイル層から構成することもできる。また、磁気読み取り/書き込みヘッド200の別の構成も本発明に従って用いることができる。例えば、読み取り/書き込みヘッド200は、下部電極214からの上部電極208の対向側に配置されるリターン電極を含むことができ、さらに/または下部電極は上部リーダー・シールドから分離することができる。
【0012】
磁気読み取り/書き込みヘッド200のリーダー部は、下部電極/上部シール214、上部ギャップ層215、メタル・コンタクト層216、下部ギャップ層217、下部シールド218、および巨大磁気抵抗効果(GMR)スタック220を含む。メタル・コンタクト層216は、上部ギャップ層215と下部ギャップ層217との間に配置される。GMRスタック220は、メタル・コンタクト層216の終端と下部ギャップ層217との間に配置される。上部ギャップ層215は、下部電極/上部シールド214とメタル・コンタクト層216との間に配置される。下部ギャップ層217は、メタル・コンタクト層216と下部シールド218との間に配置される。下部電極/上部シールド214はシールドとして、且つ上部電極208と一緒に用いられる共有電極の双方として機能する。
【0013】
図3は、磁気読み取り/書き込みヘッド200の空気座面204の層図である。図3は、磁気的に重要な要素が図2の磁気読み取り/書き込みヘッド200の空気座面204に沿って現れる際、磁気読み取り/書き込みヘッド200におけるその磁気的に重要な要素の位置を示す。図3では、わかりやすくするために、磁気読み取り/書き込みヘッド200の間隔、および絶縁層は何れも省略してある。下部シールド218と下部リターン電極/上部シールド214は、間隔を置いて配置され、GMRスタック220の位置に対応している。GMRスタック220は、メタル・コンタクト層216に隣接するGMRスタック220の部分として規定される2つの受動領域を有する。GMRスタック220の活性領域は、GMRススタック220の2つの受動領域間に位置するGMRスタック220の部分として規定される。GMRスタック220の活性領域は、読み取りセンサーの幅を規定する。別の実施形態では、シールドがリーダーに電気的に接触しているトンネル・リーダーを用いることができる。
【0014】
本発明の実施形態に従って磁気補助素子を利用することによって、上部電極208、および特に電極先端222の磁気化方向づけを支援する。補助素子を利用すると、結果としてヘッド200の動作は向上する。一例では、導電性コイル212に対する電流を切ったとき、電極先端222の所望の磁気化バイアスは維持される。バイアスは、電極先端222に隣接するトラックの不必要な消去を防止するのを支援する。単一のまたは多数のバイアス構造、および/またはバイアス・コイルを用いることができる。これについては以下で論ずる。
【0015】
図4は、本発明に従って用いることができるバイアス構造の一例の概略ブロック図である。バイアス構造240は、補助バイアスを設定する多層構造を含む。本実施形態では、構造240は電極先端222の磁気化を支援するハード・バイアス構造である。多層構造240は、シード層242、ハード磁気膜244、およびスペーサ層246を含む。一実施形態では、シード層242はスライダ110(図1)の基板に適用可能である。層242、244、および246は、構造240が所望の厚みになるまで繰り返される。層242、244、および246の各々は異なる材料で構成されて所望のバイアスを設定する。一実施形態では、シード層242は、クロム(Cr)で構成され、ハード磁気膜244は、コバルト・プラチナ(CoPt)で、スペーサ層246は酸化アルミニュウム(Al)で構成される。スペーサ層246はハード磁気膜の厚みの減少を考慮し、構造240の保磁力を維持する。
【0016】
図5は、本発明に従ったバイアス構造260の別の一例の概略ブロック図である。構造260は、シード層262、反強磁性層264、および強磁性層266を含んだソフト磁気バイアス構造である。この構造は、残留状態において明確な異方性を有し、電極先端222を磁気化するのを支援する。一実施形態では、シード層262はニッケルクロム(NiCr)から成り、反強磁性層264はイリジウム・マンガン(IrMn)またはプラチナ・マンガン(PtMn)から成り、強磁性材266はニッケル鉄合金(NiFe)またはコバルト−鉄(CoFe)から成る。
【0017】
本発明に従って、バイアス構造の一例240、および260を利用すると、読み取り/書き込みヘッドの電極先端をバイアスするのを支援することができる。例えば、電極先端に隣接した一部分の不必要な消去を防止することができる。図6は、ディスクの表面から見た読み取り/書き込みヘッド300の一例の概略図である。電極先端302、スペーサ304、およびバイアス層306と308が基板310に据えられている。電極先端302は、矢印312が示す方向に配向された磁界を含む。図示したように、磁界312は、読み取り/書き込みヘッド300の座面と平行である。書き込みコイルに電流が誘導されると、磁界312はディスク表面方向に配向され、磁気転移をディスク表面上に変える。書き込みコイル内の電流が取り除かれると、図6に示すように、バイアス層306および308は、磁界312を座面と平行となるように配向するのを支援する。本実施形態ではスペーサ304を非磁性として、バイアス層306および308から電極先端302を磁気分離することができ、これによって電極先端がディスクへ書き込む際に干渉を防止することができる。バイアス層306、および308はスペーサ層304の両側に位置する。スペーサ層304は、誘電体膜、半導体膜、および金属膜などの多種多様な異なる材料から構成することができる。図7は、台形形状の電極先端を利用した本発明の別の実施形態を示す。図7では、同一または類似の要素には、図6において用いたのと同じ参照符号を用いている。図7では、電極先端322の形状は台形であって、台形の幅は基板310から遠くなるにつれて広くなる。
【0018】
本発明の別の実施形態にしたがってソフト磁気シールドを用いると、関連する電極先端の磁界の傾きを改善することができる。図8は、読み取り/書き込みヘッド340の実施形態の一例の概略図である。電極先端342、スペーサ344、ならびにバイアス層346および348が基板350に据えられている。電極342は矩形形状で、読み取り/書き込みヘッド340の座面に対し平行に配向された磁界352を含む。ソフト磁気シールド354は、スペーサ344、およびバイアス層346と348に、基板350からは離れて据えられている。スペーサ344は、非磁気性スペーサであるため、バイアス層346と348、および磁気シールド354を電極先端342から磁気分離させる。図8に示す実施形態には、台形の電極先端もまた使用可能である。図9は、図8の実施形態において電極先端356が台形である場合を示している。図9では、図8の中の要素と同一または類似の要素には、同様の番号を付している。
【0019】
本発明に従って、ソフト磁気シールドは別の位置に配置することもできる。図10−図13は、読み取り/書き込みヘッドと共にソフト磁気シールドを含んだ種々の実施形態を示している。図10は基板360を示す。バイアス層362と364、ソフト磁気シールド366と368、および電極先端370ならびに非磁性スペーサ372が基板360に据えられている。ソフト磁気シールド366と368は、電極先端370の両側に配置され、非磁性スペーサ372によって電極先端370から磁気分離されている。バイアス層362と364は、シールド366と368とにそれぞれ隣接して配置されている。図11は類似の実施形態を示し、図10内の要素と同一または類似の要素には同様の番号が付されている。本実施形態では、台形形状の電極先端374が用いられている。
【0020】
図12、および図13は、3辺が電極先端を取り囲んだソフト磁気シールドを示す。図12は、基板380、バイアス層382および384、ソフト・シールド386、388、および390、非磁性スペーサ392、ならびに電極先端394を含む。電極先端394は、読み取り/書き込みヘッドの座面と平行な向きの磁界396を含む。シールド386、388、および390は非磁性スペーサ392を取り囲み、非磁性スペーサ392は電極先端394をシールド386、388、および390から磁気分離する。バイアス層382および384は、シールド386および388にそれぞれ隣接して配置される。図13が示す実施形態は図12とほぼ同じであるが、用いられている電極先端398は台形である。
【0021】
本発明の別の実施形態に従って、バイアス層は、例えば基板の後方端から見た場合に、様々な大きさとすることができる。図14では、電極先端400は、磁気バイアス層402、および404によってバイアスされる。非磁性スペーサ406は、電極先端400をバイアス層402、および404からそれぞれ磁気分離する。一実施形態では、バイアス層402、および404の高さは、関連の基板の後方端の高さのほぼ25%であるが、所望のバイアスを与えるために別の高さを用いることができる。図15は、別の実施形態を示しており、同一またはほぼ同一の要素には図14で用いられたのと同じ参照符号が用いられている。図15のバイアス層410、および412は、図14の層402、および404に比して高くなっている。一実施形態では、バイアス層410、および412は関連の基板の後方端の高さのほぼ75%である。但し所望のバイアスを与えるために別の高さを用いることもできる。また、図16には、ソフト磁気シールドの基板の後方端からの配置も示されている。図16に示すように、ソフト磁気シールド420、および422を電極先端400の両側に、バイアス層422、および426にそれぞれ隣接して配置することができる。
【0022】
本発明の別の実施形態に従って、電極先端は磁気異方性を含むことができる。磁気異方性は、基板から、基板から離れた位置の方向に延び、電極先端に隣接する一部分の不必要なサイド・トラック(sidetrack)消去を防止する。図17は、後方端441、および矩形の電極先端442を有する基板440を示す。電極先端442は矢印444が示すように、基板440から延び、基板440から遠ざかり、且つ後方端441に対し垂直な方向の異方性を有する。異方性を方向付けることによって、基板440の後方端441に平行な方向の磁気傾斜に起因する可能性のあるサイド・トラック消去を低減させることができる。図18は、台形の電極先端もまた使用可能であることを示している。図18は、基板450、後方端451、電極先端452、および後方端451に垂直な矢印454によって示される異方性を示している。一実施形態では、関連の後方端から遠ざかって延びるように方向付けられた「インスタック」(“in−stack”)バイアス構造によって、異方性を生じさせることができる。別の実施形態では、電極先端の形状を変えることによって、所望の方向の異方性を生じさせることができる。例えば、電極先端の長さを関連の後方端から離れるように延ばすことによって異方性を生じさせることができる。
【0023】
また、バイアス構造を用いることによって、電極先端の異方性に基板の後方端に垂直な方向にバイアスをかけ、書き込みコイルを切ったときに所望の状態となるようにすることができる。図19は、基板460、および矢印464によって示される方向の異方性を有する電極先端462を示す。バイアス層466、および468を用いることによって電極先端462の磁気バイアスを支援することができる。電極先端462を取り囲む磁性スペーサ470を用いることによって、電極先端462をバイアス層466、および468から磁気分離することができる。また、図20に示すように、電極先端472のような台形電極先端も使用可能である。図20では、同一または類似の要素に対しては図19において用いられたのと同じ参照符号を用いている。
【0024】
本発明の別の実施形態に従って、バイアス・コイル474を用いることによって電流除去後の電極先端の磁界の向きを所望の方向とすることができる。図21は、ヨーク472に結合された書き込み電極470を概略的に示している。コイル474は電流を生成して磁界476を誘導し、さらにこの磁界を書き込み電極470に戻して所望の状態、例えば磁界は矢印478が示す方向に向く状態、にするのを支援する。図22は、別の実施形態による読み取り/書き込みヘッド480の概略図である。読み取り/書き込みヘッド480は、読み取り電極482、およびリターン電極484を含む。書き込みコイル486は、転移を媒体に書き込みながら書き込み電極482の磁界を方向付けるために設けられている。バイアス・コイル488は、ライター・コイル486を通過する電流が除去された時に書き込み電極482の磁界を方向付けるために設けられている。
【0025】
別の実施形態では、書き込み電極を補助無線周波数(RF)磁界によって支援をすることができる。RF磁界は、必要な書き込み磁界強度を下げ、書き込み動作を行うのに必要な時間を短縮することができる。図23−図31は、書き込み電極の動作のための支援メカニズムとしてRF磁界を含む実施形態の一例を示す。
【0026】
例示の実施形態では、RF磁界をライターの主電極先端、およびその関連の書き込み領域近傍に局在化することができる。このようにRF磁界が主電極先端に近接していることは、主電極の磁界強度を高め、電極先端から遠ざかるRF磁界との相互作用を最小限に抑えるのに役立つことができる。この相互作用は、望ましくない消去の結果となるおそれがある。RF磁界は、両ビット極性に対し同等に作用するように発生させることができる。RF発振器を用いることによって、RF磁界を素早く(例えば、データ速度より早く)切り換えられるように駆動し、書き込み中には支援を行い、読み取り中には支援を行わず、消去、およびその他のノイズを低減させることができる。さらに、FR磁界周波数は、高いQ係数によって発生させ、発振器を媒体の共振周波数に合わせるために調整可能な周波数を有することができる。
【0027】
RF発振器は、スピンの運動量移動を利用して、GHz範囲の局所的、且つ同調整可能な磁界を生成するタイプのものとすることができる。この発信装置は、膜面に垂直に電流を流す巨大磁気抵抗(CPP GMR)スピン・バルブと類似のものである。CPP GMR装置を作成する方法を利用することによって、RF発振器を開発することができる。生成されたRF磁界は、必要な媒体切り替え磁界を大幅に削減することができ、そのため垂直媒体の書き込み可能性を高めることができる。
【0028】
RF発振器は、図23−図31に示すように、層磁化の配列で構成することができる。RF発振器は、発振層、およびスペーサによって分離された偏光層を含むことができる。偏光層、および発振層における平均的磁化は、互いに直交するように配向することができる。偏光層は適切なバイアスによって向きを固定し、強い電子スピン偏光特性を有することができる。一実施形態では、およそ5E−7A/cm2の電流を上回るスピンの運動量移動は磁化発振を発振層内に誘導することができる。この電流によって発振が行われ、発振が行われるとRF磁界を素早くオン・オフする簡単な手段が得られる。さらに、発振周波数(ω)は、電流Iの関係式(ω=[I*g/e*α*M]、スカラ関数g、減衰α、電子電荷e、および磁化Mに応じて調整可能である。種々の電流、および材料の変化によって、1−10GHxの範囲の発振器の周波数が可能となる。周波数を調整できることによって媒体磁化共振を一致させる重要な調整が可能となり、これによって書き込み可能性を最大活用することができる。RF発振器のQ係数を高める(例えば、1000より大きく)ことは可能である。さらに、RF発振器の大きさ、および幅を主電極とほぼ同じとすることができる。この大きさよって、高密度の低電流、および発振層の動作のような単一領域が得られる。
【0029】
発振器は、図23−図27に示すように(空気座面に沿って)縦方向に、または図28−図31に示すように水平方向に(空気座面に対し垂直に)構成することができる。主要な書き込み領域は、標準的な誘導性ライター主電極に生成される。発振装置は、主電極の前方端近傍に局所的なRF支援磁界を生成する。
【0030】
図23、および図24は、軸状または平面発振器として開発が可能な、垂直に配向された発振器を示す。ヘッド500は、媒体501上方に配置され、リーダー部502、およびライター部504を含む。ライター部504は、主電極506、ヨーク508、クローザ(closer)510、コイル512、およびリターン・コイル514を含む。RF発振器516は、主電極506の磁化を支援する。RF発振器516は、発振層518、スペーサ520、および偏光層522を含む。偏光層522内の矢印は、層522の磁気バイアスの方向を示す。発振器は、発振器516を駆動する電流を与える導体524に結合されている。RF発振器516は、軸状のまたは平面磁界を誘導するようになすことができる。
【0031】
図25に示す軸状発振器の場合、偏光(規準)層522はABSと平行に固定され、直交発振層は偏光層の磁化軸を中心に回転する。発振器576によって引き起こされる磁界528は媒体磁化に作用して媒体内に歳差運動を生じ、これによって主電極が生成した書き込み磁界のために必要な切り換え磁界を低減させる。この歳差運動は、媒体501における一部分の磁化に関する斜めの矢印によって示される。磁界の角振幅は、発振層磁化の無秩序な切り替えを防ぐように設定可能である。図26は、中程度の発振振幅に限定されない平面様式の発振器を示す。本実施形態において発振器516を通過する電流経路は、主電極506を含むまたは含まないように構成可能である。磁界530は生成されると偏光層522の磁化軸に直交する軸を中心に回転する。図27に示す実施形態では、別の軸状発振器が示されている。この発振器では、ヘッドは離散的発振層を有していないが、主電極の磁化にあたっては、代わりに電流が発振を直接駆動する。直交RF支援磁界が、媒体磁化の垂直方向の双方の配向おいて、歳差運動に与える影響は、均等であることは注目に値する。発振層の磁化は、それが静止(非発振、非書き込み)状態における消去に影響しないように選択可能である。
【0032】
図28、および図29は、主電極の前方端近傍の水平方式の発振器を示す。ヘッド550は媒体551の上方に配置され、リーダー部552、およびライター部554を含む。ライター部554は、主電極556、クローザ558、リターン電極560、およびコイル562を含む。RF発振器564は媒体551への書き込みを支援する支援磁界を与える導体566に結合される。発振器564は、発振層568、スペーサ570、および偏光層572を含む。図30は、磁界574を生ずる軸方式の発振器を示す。図31は、磁界576を生ずる平面方式の発振器を示す。
【0033】
電流駆動方式の磁化発振を最適化するために、種々の大きさ(通常は<100nm)、および形状(例えば、楕円形)のRF発振器を作成することができることは理解されよう。さらに、発振器は、磁化発振が生成する効果的なRF磁界照射パターンを最適化するようになすことができる。この照射パターンは、発振器の形状、および対応する媒体によって決定することができる。
【0034】
これまで例示の実施形態を参照しながら本発明を説明してきたが、本発明の趣旨、および範囲から逸脱することなく、形状、および細部について変更が可能であることを当業者は認めるであろう。例えば、磁気電極先端の支援動作においては、種々の支援構造を用いることができる。また、磁気電極先端、バイアス構造、発振器、および/または磁気シールドの構造、および大きさは、読み取り/書き込みヘッドの個々の要求に応じて変更可能である。さらに、本稿で開示した読み取り/書き込みヘッドの設計は、水平記録システム、および垂直システムのような種々のシステムに適用可能である。
【0035】
これまでの説明において、本発明の種々の実施形態に関する多数の特徴、および利点を、本発明の種々の実施形態の構造と機能に関する詳細と一緒に明示してきたが、この開示は単に例示のためであって、特に構造の問題、および部品の配置においては本発明の原理の範囲を超えなることなく、特許請求の範囲が表現されている言葉の広範且つ一般的な意味によって示される限度において、細部にわたり変更可能であることは理解されてしかるべきである。例えば、個々の要素は、本発明の範囲、および趣旨から逸脱することなく、ほぼ同じ機能性を維持しながら、データ記憶システムの個々の用途に応じて変化する場合がある。さらに、本稿で開示した好適な実施形態は、垂直記録用のデータ記憶システムを対象としているが、本発明の教示は、本発明の範囲、および趣旨から逸脱することなく水平記録にも適用可能であることを当業者は認めるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、ディスク・ドライブの投影図である。
【図2】図2は、磁気読み取り/書き込みヘッド、および書き込み/読み取りヘッドの空気座面に垂直な平面に沿った磁気ディスクの断面図である。
【図3】図3は、磁気読み取り/書き込みヘッドの空気座面の層図である。
【図4】図4は、書き込み電極にバイアスをかけるのを支援するために用いられるバイアス構造の一例のブロック図である。
【図5】図5は、書き込み電極にバイアスをかけるのを支援するために用いられるバイアス構造の一例のブロック図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態による読み取り/書き込みヘッドの一例の概略図である。
【図7】図7は、本発明の実施形態による読み取り/書き込みヘッドの一例の概略図である。
【図8】図8は、本発明の実施形態による読み取り/書き込みヘッドの一例の概略図である。
【図9】図9は、本発明の実施形態による読み取り/書き込みヘッドの一例の概略図である。
【図10】図10は、本発明の実施形態による読み取り/書き込みヘッドの一例の概略図である。
【図11】図11は、本発明の実施形態による読み取り/書き込みヘッドの一例の概略図である。
【図12】図12は、本発明の実施形態による読み取り/書き込みヘッドの一例の概略図である。
【図13】図13は、本発明の実施形態による読み取り/書き込みヘッドの一例の概略図である。
【図14】図14は、本発明の実施形態による読み取り/書き込みヘッドの一例の概略図である。
【図15】図15は、本発明の実施形態による読み取り/書き込みヘッドの一例の概略図である。
【図16】図16は、本発明の実施形態による読み取り/書き込みヘッドの一例の概略図である。
【図17】図17は、本発明の実施形態による読み取り/書き込みヘッドの一例の概略図である。
【図18】図18は、本発明の実施形態による読み取り/書き込みヘッドの一例の概略図である。
【図19】図19は、本発明の実施形態による読み取り/書き込みヘッドの一例の概略図である。
【図20】図20は、本発明の実施形態による読み取り/書き込みヘッドの一例の概略図である。
【図21】図21は、書き込み電極にバイアスをかけるのを支援するバイアス・コイルを利用した読み取り/書き込みヘッドの一例の概略図である。
【図22】図22は、書き込み電極にバイアスをかけるのを支援するバイアス・コイルを利用した読み取り/書き込みヘッドの一例の概略図である。
【図23】図23は、本発明の別の実施形態による読み取り/書き込みヘッド、および発振器の断面図である。
【図24】図24は、図23の読み取り/書き込みヘッドの空気座面の層図である。
【図25】図25は、図23−図24の読み取り/書き込みヘッドの平面発振器の断面図である。
【図26】図26は、図23−図24の読み取り/書き込みヘッドの軸状発振器の断面図である。
【図27】図27は、図23−図24の読み取り/書き込みヘッドの平面発振器の断面図である。
【図28】図28は、本発明の別の実施形態による読み取り/書き込みヘッド、および発振器の断面図である。
【図29】図29は、図28の読み取り/書き込みヘッド空気座面の層図である。
【図30】図30は、図28−図29の読み取り/書き込みヘッドの平面発振器の断面図である。
【図31】図31は、図28−図29の読み取り/書き込みヘッドの軸状発振器の断面図である。
【符号の説明】
【0037】
304 スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記憶媒体と共に用いられる記録ヘッドであって、
磁気電極と、
磁気バイアス構造と、
前記磁気電極と前記磁気バイアス構造との間に配置されたスペーサとを含む記録ヘッド。
【請求項2】
請求項1記載の記録ヘッドにおいて、前記スペーサは前記磁性電極、および前記磁性バイアス層が磁気分離されるように非磁性である記録ヘッド。
【請求項3】
請求項1記載の記録ヘッドにおいて、前記磁気バイアス構造は、シード層、ハード磁性膜層、およびスペーサ層を含む記録ヘッド。
【請求項4】
請求項1記載の記録ヘッドにおいて、前記バイアス構造は、シード層、反強磁性層、および強磁性層を含む記録ヘッド。
【請求項5】
請求項1記載の記録ヘッドであって、さらに、
ソフト磁気シールドを含み、前記スペーサは、前記磁気電極と前記ソフト磁気シールドとの間に配置される記録ヘッド。
【請求項6】
請求項5記載の記録ヘッドにおいて、前記ソフト磁気シールドは前記磁気バイアス構造と前記磁気電極との間に配置される記録ヘッド。
【請求項7】
ヘッドであって、
後方端を有する基盤と、
前記基板の後方端に結合された磁気電極先端と、
前記磁気電極先端の磁界を配向するようになされたコイルと、
前記電極先端から離間して配置され、補助磁界を与えるようになされた補助機構とを備えたヘッド。
【請求項8】
請求項7記載の記録ヘッドにおいて、前記補助機構は、
前記磁気電極先端の第1側に配置された第1磁気バイアス構造と、
前記磁気電極先端の第2側に配置された第2磁気バイアス構造であって、前記第2側は前記第1側よりも前記後方端から離れている、第2磁気バイアス構造とを含むヘッド。
【請求項9】
請求項7記載の記録ヘッドにおいて、前記補助機構は、
前記基板の後方端に結合された第1磁気バイアス構造と、
前記基板の後方端に結合された第2磁気バイアス構造と、
前記第1バイアス構造と前記第2バイアス構造が前記磁気電極から磁気分離されるように配置された非磁性スペーサとを含むヘッド。
【請求項10】
請求項7記載の記録ヘッドにおいて、前記補助機構はバイアス・コイルを含むヘッド。
【請求項11】
請求項7記載の記録ヘッドにおいて、前記補助機構は、前記磁気電極先端の磁界を前記基板の後方端とほぼ平行となるように配向させるようになされたヘッド。
【請求項12】
請求項7記載の記録ヘッドにおいて、前記補助機構は、前記磁気電極の磁界が前記基板の後方端にほぼ垂直となるように配向させるようになされたヘッド。
【請求項13】
請求項7記載の記録ヘッドにおいて、前記補助機構はRF発振器を含むヘッド。
【請求項14】
請求項7記載の記録ヘッドにおいて、前記RF発振器は発振層、および偏光層を含むヘッド。
【請求項15】
データ記憶アッセンブリであって、
記憶媒体と、
転移を記憶媒体上に変えるように為された座面を有する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドの補助動作に補助磁界を提供する手段とを備えたデータ記憶アッセンブリ。
【請求項16】
請求項15記載のデータ記憶アッセンブリにおいて、前記提供手段は、前記記録ヘッドの磁界を前記座面と平行となるように配向する手段を含むデータ記憶アッセンブリ。
【請求項17】
請求項15記載のデータ記憶アッセンブリにおいて、前記配向手段は、前記記録ヘッドから磁気分離された磁気バイアス構造を含むデータ記憶アッセンブリ。
【請求項18】
請求項16記載のデータ記憶アッセンブリにおいて、前記配向手段は、磁界を前記記録ヘッドに誘導するようになされたバイアス・コイルを含むデータ記憶アッセンブリ。
【請求項19】
請求項15記載のデータ記憶アッセンブリであって、さらに、前記記録ヘッドを磁気遮蔽するための手段を備えるデータ記憶アッセンブリ。
【請求項20】
請求項16記載のデータ記憶アッセンブリにおいて、前記提供手段は、前記転移の磁化方向を配向させるRF発振器を含むデータ記憶アッセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2006−244693(P2006−244693A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−53218(P2006−53218)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(500373758)シーゲイト テクノロジー エルエルシー (278)
【Fターム(参考)】