説明

補助パイルを形成する方法および装置

【課題】ノンストップパイル交換中に補助パイルを下側で受け止める補助パイル支持装置と、搬送システムから搬送されかつ解放されてパイル上に落下するシートの流れに隙間を形成するための、パイル領域の外側でパイルの縁部の手前に配置された複数のストッパ要素および仕切り要素とを備えるシート処理機械のデリバリにおいてパイルを交換する際に補助パイルを形成する方法を改良して、補助パイル支持体を挿入するための確実な隙間形成を保証する、自動でパイルを交換するものを提供する。
【解決手段】ストッパ要素28,29を、パイル21を降下させる直前に、パイル縁部の作業位置から、パイル縁部から距離を置いた待機位置へ移動させ、所定の距離だけパイルを降下させたあとで、シート後縁用のシート高位置保持要素38をパイル領域に進入させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート処理機械のデリバリでパイルを交換する際に補助パイルを形成する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ドイツ連邦共和国特許出願公開号102005058197号明細書において、請求項1の前提部に記載されたような方法および装置が公知である。そこでは前縁ストッパと後縁ストッパとの間に配置されたパイルが先ず特定の経路を降下するようになっており、これにより補助パイル支持体を収容するための隙間を形成することができる。パイルが降下したあとで、後方からつまりシート搬送方向に、かつ前方からつまりシート搬送方向とは逆向きに、シート高位置保持体が、後続のシートを短時間受け止めるために、スタック領域に進入する。次いで補助パイル支持体は、後方からスタック領域に進入する。最後のステップで、シート保持体は、スタック領域から離間され、これにより補助パイル支持体は、短時間保持されたシートを完全に収容する。
【0003】
前縁ストッパおよび後縁ストッパは、良好なパイル形成を実現するために、後方および前方のパイル側面に遊びなく当接する。
【0004】
パイルが降下する際に、パイルが前縁ストッパおよび後縁ストッパに掛止されたままになる可能性があるので、上側のシート層が簡単にはパイルに追従できない、という問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許出願第102005058197号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって本発明の課題は、補助パイル支持体を挿入するための確実な隙間形成を保証する、自動でパイルを交換する方法および装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決するための本発明の方法によれば、ノンストップパイル交換中に補助パイルを下側で受け止める補助パイル支持装置と、搬送システムから搬送されかつ解放されてパイル上に落下するシートの流れに隙間を形成するための、パイル領域の外側でパイルの縁部の手前に配置された複数のストッパ要素および仕切り要素とを備えるシート処理機械のデリバリにおいてパイルを交換する際に補助パイルを形成する方法であって、補助パイル支持装置のための隙間を形成するべくパイルを降下させるものにおいて、ストッパ要素を、パイルを降下させる直前に、パイル縁部の作業位置から、パイル縁部から距離を置いた待機位置へ移動させ、所定の距離だけパイルを降下させたあとで、シート後縁用のシート高位置保持要素をパイル領域に進入させる。
【0008】
好適には、パイル縁部用のストッパ要素を、再び作業位置に戻す。
【0009】
好適には、次いで、シート前縁用のシート高位置保持要素を、パイル領域に進入させる。
【0010】
好適には、次いで、補助パイル支持要素をパイル領域に進入させるまえに、パイルを、再び所定の距離だけ降下させる。
【0011】
好適には、全ての調節移動を、制御計算機により制御される遠隔操作可能な調節要素を用いて行う。
【0012】
この課題を解決するための本発明の装置によれば、ノンストップパイル交換中に補助パイルを下側で受け止める補助パイル支持装置と、搬送システムから搬送されかつ解放されてパイル上に落下するシートの流れに隙間を形成するための、パイル領域の外側でパイルの縁部の手前に配置された複数のストッパ要素および仕切り要素とを備えるシート処理機械のデリバリにおいてパイルを交換する際に補助パイルを形成する装置であって、ストッパ要素、シート高位置保持要素、パイル支持装置およびストローク要素を駆動する調節要素を備える。
【0013】
好適には、全ての調節要素は、遠隔操作可能に構成されていて、かつ制御計算機により制御可能である。
【0014】
好適には、シート処理機は、シート打抜き機または枚葉輪転印刷機である。
【発明の効果】
【0015】
格別な利点によれば、隙間形成のためにパイルを降下させるまえに、先ず遊びなくパイルに当接する前縁ストッパおよび後縁ストッパは、パイルから離間させられ、これにより上側のシート層は問題なくパイルに追従することができる。
【0016】
別の好適な方法ステップでは、良好な補助パイル形成を実現するために、好適にはシート高位置保持体がパイル領域から離間させられるまえに、ストッパは、再び補助パイルに対して遊びのない位置へ移動させられる。
【0017】
特に好適には、本発明に係る方法を実施するために設けられる全ての構成要素が遠隔調節可能に構成されているので、完全に自動化されたパイルの交換を行うことができる。別の好適な態様は、従属請求項に記載されている。
【0018】
本発明は、シート打抜き機にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】枚葉輪転印刷機の概略断面図である。
【図2】枚葉輪転印刷機のデリバリの概略断面図である。
【図3】1つの位置で枚葉輪転印刷機のデリバリを示す概略断面図である。
【図4】1つの位置で枚葉輪転印刷機のデリバリを示す概略断面図である。
【図5】1つの位置で枚葉輪転印刷機のデリバリを示す概略断面図である。
【図6】1つの位置で枚葉輪転印刷機のデリバリを示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図示の態様に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0021】
シート7を処理する機械例えば印刷機1は、フィーダ2と少なくとも1つの印刷ユニット3,4とデリバリ6とを備える。シート7は、パイル8から取り出され、個別化されるかまたは刺身状にされてフィーダボード9を介して印刷ユニット3,4に供給される。印刷ユニット3,4は、公知のように版胴11,12をそれぞれ備える。版胴11,12は、フレキシブルな刷版を取り付ける装置をそれぞれ備える。さらに各版胴11,12に対応して半自動または全自動の刷版交換装置が配置されている。
【0022】
パイル8は、昇降制御可能な紙積み台10を備えている。シート7の取出しは、パイル8の上側から、いわゆるサッカヘッド18を用いて行われ、サッカヘッド18は、とりわけシート7を個別化するための幾つかの持上げサッカおよび運出しサッカを備える。さらに上側のシート層をさばくための吹出し装置およびパイルを後方からガイドする接触要素が設けられている。パイル8特にパイル8の上側のシート7を位置合わせするために、幾つかの側方のストッパおよび後方のストッパが設けられている。
【0023】
デリバリ6においてノンストップパイル交換を行うために、補助パイル装置22が新たなパイル23を形成する間に、主パイル21をデリバリ6から取り出すことができるようになっている。
【0024】
主パイル装置24は、ストロークモータ25により駆動可能なストロークチェン26に鉛直方向運動可能に懸下されていて、補助パイル装置22も同様に駆動可能なストロークチェン(図示していない)に鉛直方向運動可能に懸下されている。
【0025】
主パイル21を形成するために、前縁ストッパ28および後縁ストッパ29が設けられており、前縁ストッパ28および後縁ストッパ29は、図2に示すように、調節手段31,32により遊びなくパイル前縁もしくはパイル後縁に当接されている。調節手段31は、例えばニューマチックシリンダとして構成されたアクチュエータである。調節手段32は、例えば後縁ストッパ29を水平方向にスライドさせるためのリニアガイドとチェンとを備えた被駆動軸として構成されたアクチュエータである。
【0026】
パイル形成を中断することなくデリバリ6から主パイル21を取り出すために、パイル領域に供給されたシートは、補助パイル装置22により受け取る必要がある。そのために例えば支持板、レーキまたはロールシャッタとして構成された補助パイル支持体33がパイル領域に進入させられる。パイル形成を妨害することなくこのような動作を行うために、先ず前縁ストッパおよび後縁ストッパ28,29は、アクチュエータ31,32により、パイル後縁もしくはパイル前縁から離間移動させられる。図3に示す好適な態様では、前縁ストッパ28は、補助パイル支持体33の高さで補助パイル支持装置22に配置された旋回軸34を中心に主パイル21から離間旋回させられる。
【0027】
次いで、図4に示すように、主パイル21は、所定のシート高位置保持要素37,38のための隙間を形成するために、第1の距離aを降下する。
【0028】
隙間検出センサ39が、隙間検出時に、主パイル8を、降下された位置で停止させ、シートパイル領域に後方のシート高位置保持要素38が進入するための信号を形成する。シート後縁用のシート高位置保持要素38は、仕切りベルトとして構成されており、仕切りベルトの縁部は、好適にはシート搬送方向に対して横方向にスタック領域に進入する。仕切りベルトを駆動するためにアクチュエータ40が設けられている。
【0029】
図5に示すように、後方のシート高位置保持要素38が進入したあとで、パイル前縁ストッパおよび後縁ストッパ28,29は、再び処理しようとする用紙サイズ長さに戻される。
【0030】
後続のステップで、シート搬送方向に対して横向きに相並んで配置された幾つかのフィンガから成るシート前縁用のシート高位置保持要素37がシートパイル領域に進入する。フィンガは、遠隔操作可能な調節手段36例えばニューマチックシリンダとして構成されたアクチュエータにより2つの終了位置に移動可能に形成されている。
【0031】
補助パイル支持体としての補助パイル支持板33を収容し得るために比較的大きな隙間を形成するために、主パイル21は、追加的な距離bを降下し、これにより補助パイル支持板33は、パイル領域に進入することができる。
【0032】
補助パイル支持板33の進入および退出のために、補助パイル支持板33は、調節モータ35により駆動される、水平方向にガイドされるチェンとして構成された調節手段(図示していない)を備える。
【0033】
別のステップでは、シート後縁用の仕切りベルト38およびシート前縁用のシート高位置保持要素37は、パイル領域から待機位置に戻し移動させられる。
【0034】
図6に示すように、補助パイル23が、前縁ストッパおよび後縁ストッパ28,29により画定されて補助パイル支持板33上で形成される間に、主パイル21は、デリバリから取り出すことができる。
【0035】
補助パイル23を主パイル21の紙積み台41に載置するために、紙積み台41または紙積み台41上に配置されたパレット42は、ストロークチェン26により、補助パイル支持板33の下にぴったりと接するまで持ち上げられる。パイル領域から待機位置への補助パイル支持板33の離間運動により、補助パイル23は、パレット42または紙積み台41に載置される。その時点で、補助パイル23は、新たな主パイル21となる。
【0036】
ノンストップパイル交換に関与する全ての調節モータおよび調節手段を遠隔調節可能に自動制御するために、調節モータおよび調節手段は、制御計算機43と接続されている。
【符号の説明】
【0037】
1 印刷機、 2 フィーダ、 3 印刷ユニット、 4 印刷ユニット、 6 デリバリ、 7 シート、 8 パイル、 9 フィーダボード、 10 紙積み台、 11 版胴、 12 版胴、 13 刷版取付け装置、 14 刷版取付け装置、 16 刷版交換装置、 17 刷版交換装置、 18 サッカヘッド、 19 持上げサッカ、 21 主パイル、 22 補助パイル装置、 23 パイル、 24 主パイル装置、 25 ストロークモータ(26)、 26 ストロークチェン(41)、 28 前縁ストッパ、 29 後縁ストッパ、 31 調節手段(28)、 32 調節手段(29)、 33 補助パイル支持体、 34 旋回軸(28)、 35 調節モータ(33)、 36 調節手段(37)、 37 シート高位置保持要素(前縁)、 38 シート高位置保持要素(後縁)、 39 隙間センサ、 40 アクチュエータ、 41 紙積み台、 42 パレット、 43 制御計算機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノンストップパイル交換中に補助パイルを下側で受け止める補助パイル支持装置と、搬送システムから搬送されかつ解放されてパイル上に落下するシートの流れに隙間を形成するための、パイル領域の外側でパイルの縁部の手前に配置された複数のストッパ要素および仕切り要素とを備えるシート処理機械のデリバリにおいてパイルを交換する際に補助パイルを形成する方法であって、補助パイル支持装置のための隙間を形成するべくパイルを降下させるものにおいて、
前記ストッパ要素(28,29)を、前記パイル(21)を降下させる直前に、パイル縁部の作業位置から、パイル縁部から距離を置いた待機位置へ移動させ、
前記パイル(21)を所定の距離(a)だけ降下させたあとで、シート後縁用のシート高位置保持要素(38)を前記パイル領域に進入させることを特徴とする、シート処理機械のデリバリでパイルを交換する際に補助パイルを形成する方法。
【請求項2】
パイル縁部用の前記ストッパ要素(28,29)を、再び作業位置に戻す、請求項1記載の方法。
【請求項3】
次いで、シート前縁用のシート高位置保持要素(37)を、パイル領域に進入させる、請求項2記載の方法。
【請求項4】
次いで、補助パイル支持要素(33)をパイル領域に進入させるまえに、パイル(21)を、再び所定の距離(b)だけ降下させる、請求項3記載の方法。
【請求項5】
全ての調節移動を、制御計算機(43)により制御される遠隔操作可能な調節要素を用いて行う、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
ノンストップパイル交換中に補助パイルを下側で受け止める補助パイル支持装置と、搬送システムから搬送されかつ解放されてパイル上に落下するシートの流れに隙間を形成するための、パイル領域の外側でパイルの縁部の手前に配置された複数のストッパ要素および仕切り要素とを備えるシート処理機械のデリバリにおいてパイルを交換する際に補助パイルを形成する装置であって、
ストッパ要素(28,29)、シート高位置保持要素(37,38)、パイル支持装置(33)およびストローク要素(26)を駆動する調節要素を備えることを特徴とする、シート処理機械のデリバリでパイルを交換する際に補助パイルを形成する装置。
【請求項7】
全ての調節要素は、遠隔操作可能に構成されていて、かつ制御計算機(43)により制御可能である、請求項6記載の装置。
【請求項8】
前記シート処理機械は、シート打抜き機または枚葉輪転印刷機である、請求項6記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−112528(P2013−112528A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−252915(P2012−252915)
【出願日】平成24年11月19日(2012.11.19)
【出願人】(390009232)ハイデルベルガー ドルツクマシーネン アクチエンゲゼルシヤフト (347)
【氏名又は名称原語表記】Heidelberger Druckmaschinen AG
【住所又は居所原語表記】Kurfuersten−Anlage 52−60, D−69115 Heidelberg, Germany
【Fターム(参考)】