説明

補強不織防火布帛、そのような布帛を製造するための方法、およびそれで防火された物品

本発明は、物品を防火するための薄い補強不織布、そのような布帛を含有する物品、ならびに布帛を製造するための方法、および物品を防火するための方法に関する。熱または火炎に曝されたとき、布帛は、その厚さを少なくとも3倍だけ増加させることができる。布帛は、上に圧縮され、かつ圧縮された状態で熱可塑性バインダーによって保持された捲縮耐熱性有機繊維を有するオープンメッシュスクリムを含んでなる。高熱または火炎に曝されたとき、構造中のバインダーは、軟化し流れ、拘束された捲縮繊維を放出し、かつ布帛の厚さが劇的に増加することを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱または火炎に曝されたときに嵩高化し(bulks)、かつ、マットレス、椅子張り(upholstery)などを防火するための構成要素として有用である、捲縮繊維の圧縮されたウェブ、および補強スクリムから製造された薄い補強不織布に関する。本発明は、さらに、この布帛を組入れる防火された物品に関する。本発明は、また、この補強不織布を製造するためのプロセス、および布帛を物品に組入れるためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
カリフォルニア州は、家庭、ホテル、および施設の火災で失われる死亡者の数を低減しようとする試みにおいて、マットレスおよびマットレスセットの可燃性を規制し低減する運動を導いている。特に、カリフォルニア州消費者問題局の家具および断熱部(The Bureau of Home Furnishings and Thermal Insulation of the Department of Consumer Affairs of the State of California)は、マットレスセットの可燃性性能を定量化するために、非特許文献1を発行した。多くの場合、マットレスメーカーは、防火層を含むことを望むが、その追加の層が、マットレスの既存の審美性を損なうことを望まない。したがって、ステープル繊維および薄い補強スクリム布帛の組合せなどの強い薄い布帛が、多くの場合に望ましく、というのは、それらは、耐久性があり、また、意図された使用において不快なものでありそうにないからである。
【0003】
ステープル繊維、およびステープル繊維を所定位置に固定するスクリム布帛を組合せるためのさまざまな方法が、当該技術において知られている。1つのそのようなプロセスは、また、ハイドロレース(hydrolacing)処理、スパンレース処理、およびウォータージェット処理として、さまざまな刊行物において知られている水流交絡(hydro−entangling)であり、高圧ウォータージェットがステープル繊維に衝突し、それらをスクリム中に追いやり、繊維およびスクリムをともに強固にする。このプロセスによって製造された不織シートは、ステープル繊維を、それら自体と、またはスクリムまたは両方と、機械的に交絡させ、加熱されるか火炎に曝されたときに嵩高化する布帛の能力を制限する。次の特許は、主として水流交絡プロセスによって製造された不織布を代表する。特許文献1は、複合テキスタイルグリッドの両面上に配列された不織ラップ(laps)からなるテキスタイル構造の内側に埋込まれた複合テキスタイルグリッドからなる多層テキスタイル材料を開示しており、ラップは水流交絡の力によって互いにおよびグリッドと交絡される。ワイス(Wyss)に付与された特許文献2は、スクリム、およびそのスクリム中に交絡される繊維のバットの高温フィルタフェルトを開示している。パトナム(Putnam)らに付与された特許文献3は、三次元画像を有する積層された布帛を開示しており、布帛は、水流交絡によってともに接合された耐熱性繊維の軽い層および重い層から形成される。
【0004】
ステープル繊維およびスクリム布帛を組合せるための当該技術において知られている別のプロセスは、ニードルパンチによる。このプロセスにおいて、バーブドニードル(barbed needles)がステープル繊維を掴み、それらをスクリム中にまたは内部繊維バッティング中に追いやり、構造をともに固定する。再び、このプロセスによって製造された不織シートは、それらのステープル繊維が、それら自体と、またはスクリムと機械的に交絡される、加熱されるか火炎に曝されたときに嵩高化する布帛の能力を制限する。ニードルパンチによって製造されるいくつかの製品を、水流交絡によって製造することができるか、またはその逆であり、というのは、両方の製品が、繊維の、スクリム、および布帛中の他の繊維との、ならびにそれらへの交絡を必要とするからである。次の特許は、主としてニードルパンチプロセスによって製造された不織布を代表する。リラニ(Lilani)らに付与された特許文献4は、安定化された織られたスクリムでともに合体された、アラミド繊維およびフェノール繊維を含んでなる少なくとも2つのフェルト化プライを含んでなる不織防火座席布帛を開示している。リン(Lin)らに付与された特許文献5は、層間に補強スクリムの層がある、不織耐温度性ステープル繊維の少なくとも2つの層を有するクッショニング材料を開示しており、構造全体は一体性のためにニードルパンチされ、1つの面がパターンでエンボス加工される。パーソンズ(Parsons)らに付与された特許文献6は、不織繊維をプラスチックグリッド材料の層中にニードルパンチすることによって形成された弾力的なテクスチャー加工された表面を有するテキスタイル構造を開示している。次に、グリッドは引っ込まされ、不織繊維をバットの平面からアーチ形にさせ、テクスチャー加工された表面を形成する。フォーステン(Forsten)らに付与された特許文献7は、ファイバーフィルバットと、ファイバーフィルバットの少なくとも1つの面と接触する耐火性アラミド繊維の層とを含んでなる、椅子張りを備えた(upholstered)家具およびマットレストップに有用な耐火性材料を開示している。別の防火材料が、水流交絡、ニードルパンチ、および/または化学的手段によって耐炎性繊維をスクリムにおよびスクリムと交絡させることによって製造され、レーサム(Latham)らに付与された特許文献8に開示されている。そのような材料は、航空機座席を防火するのに有用である。
【0005】
ステープル繊維およびスクリム布帛を組合せるための当該技術において知られているさらに別のプロセスは、接着剤積層またはバインダーの追加による。このプロセスにおいて、バインダーまたは接着剤が、層または個別の繊維をともに接着または結合するために使用される。次の特許は、このプロセスによって製造された不織布を代表する。アーブ(Erb)に付与された特許文献9および特許文献10は、可燃性熱可塑性バインダーによって結合された非熱可塑性繊維を有する非常に低い密度の絶縁材料を開示している。ヤマグチ(Yamaguchi)らに付与された特許文献11は、捲縮非弾性ステープル繊維の嵩高不織ウェブのマトリックス繊維と、白熱(glowing)テスト方法によってテストされるような少なくとも35%の残りの重量を示す捲縮難燃性繊維と、熱可塑性弾性繊維とを含んでなり、交差点の少なくともいくつかがマトリックス繊維と難燃性繊維との間にあり、熱可塑性繊維が溶融接合された耐熱性難燃性クッショニング構造を開示している。マトリックス繊維は、好ましくはポリエステルまたはアラミド繊維であるが、好ましくは、ポリエステルは難燃性化合物を含有し、好ましいアラミド繊維はメタ−アラミド繊維である。難燃性繊維は、好ましくは予め酸化されたアクリロニトリルポリマー繊維であるが、炭素繊維、架橋されたフェノール樹脂繊維、またはポリベニゾイミダゾール(polybenizimidazole)繊維であることができる。好ましい熱可塑性エラストマー繊維は、熱可塑性エラストマーおよび非弾性ポリエステルから製造されたシース/コア複合繊維である。アーブ(Erb)およびヤマグチ(Yamaguchi)特許は、両方とも、不織布が弾力を有するように不織布を嵩高な(lofted)または嵩高化形態で維持するためにバインダーを使用する。パールマン(Pearlman)らに付与された特許文献12は、カーペット裏当てを使用するための3層複合布帛を開示しており、複合布帛は、ガラス繊維スクリムに接着付着された、交絡されたナイロンフィラメントの2つの層から製造される。この布帛は、水流交絡またはニードルパンチされた布帛が有するのと同じ問題を有し、すなわち、繊維がともに機械的に交絡されるため、それらは、加熱されるか火炎に曝されたときに嵩高化するそれらの能力を失う。
【0006】
【特許文献1】国際公開第98/42905号パンフレット
【特許文献2】米国特許第4,840,838号明細書
【特許文献3】米国特許第6,596,658号明細書
【特許文献4】米国特許第4,743,495号明細書
【特許文献5】米国特許第5,691,036号明細書
【特許文献6】米国特許第3,819,465号明細書
【特許文献7】米国特許第5,578,368号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2002/0098753号明細書
【特許文献9】米国特許第6,579,396号明細書
【特許文献10】米国特許第6,383,623号明細書
【特許文献11】欧州特許EP622 332号明細書
【特許文献12】米国特許第5,470,648号明細書
【非特許文献1】技術報告(Technical Bulletin)603「大きい裸火に対する居住用マットレス/ボックススプリングセットの耐性の要件およびテスト手順(Requirements and Test Procedure for Resistance of a Residential Mattress/Box Spring Set to a Large Open−Flame)」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、必要なのは、火炎保護をもたらすが、軽量であり、通常の使用の際には薄いが、高熱または火炎に曝されたときに嵩高化する補強不織布である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、物品を防火するための補強不織布、および不織布で防火された物品に関し、布帛は、第1の面および第2の面を有するオープンメッシュスクリムを含んでなり、第1の面は、その上に捲縮耐熱性有機繊維が圧縮され、繊維は、圧縮された状態で熱可塑性バインダーによって保持され、布帛が熱または火炎に曝されたとき、布帛はその厚さを少なくとも3倍だけ増加させることができる。
【0009】
本発明は、また、物品を防火するための、熱または火炎中で嵩高化する補強不織布を製造するための方法であって、
a)捲縮耐熱性有機繊維と、バインダー繊維とを含んでなるマットを形成する工程と、
b)マットをオープンメッシュスクリムの第1の面と接触させて、布帛アセンブリを形成する工程であって、前記スクリムが第1および第2の面を有する工程と、
c)バインダー粉末を布帛アセンブリに付与する工程と、
d)布帛アセンブリを加熱して、バインダー繊維およびバインダー粉末を活性化する工程と、
e)布帛アセンブリを圧縮された状態に圧縮する工程と、
f)圧縮された状態の布帛アセンブリを冷却して、補強不織布を形成する工程とを含んでなる方法に関する。
【0010】
本発明は、さらに、外側布帛寝具用布層またはカバー布帛層と、補強不織布防火体(fire blocker)の1つもしくはそれ以上の層と、フォームまたは繊維バッティングのクッショニング層と、場合によりステッチ裏当て層とを含んでなる防火キルティング製品であって、補強不織布防火体が、その上に捲縮耐熱性有機繊維が圧縮されたオープンメッシュスクリムを含んでなり、繊維が、圧縮された状態で熱可塑性バインダーによって保持される防火キルティング製品に関する。
【0011】
本発明は、また、熱または火炎中で嵩高化する補強不織布層で物品を防火する方法であって、
a)補強不織布層、布帛寝具用布層または椅子張り布帛層、および場合によりクッショニング層を組合せる工程と、
b)層を縫い合わせて、防火された布帛キルティング製品を形成する工程と、
c)防火された布帛キルティング製品を物品に組入れる工程とを含んでなり、
補強不織布層が、第1の面および第2の面を有するオープンメッシュスクリムを含んでなり、第1の面が、その上に捲縮耐熱性有機繊維が圧縮され、繊維が、圧縮された状態で熱可塑性バインダーによって保持され、
布帛キルティング製品が熱または火炎に曝されたとき、不織布層がその厚さを少なくとも3倍だけ増加させることができる方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、物品を防火するための薄い補強不織布に関する。熱または火炎に曝されたとき、布帛は、その厚さを少なくとも3倍だけ増加させることができる。布帛は、第1の面および第2の面を有するオープンメッシュスクリムを含んでなり、第1の面は、捲縮耐熱性有機繊維が、その上に圧縮され、かつ圧縮された状態で熱可塑性バインダーによって保持される。好ましくは、有機繊維は、オープンメッシュスクリムの第1および第2の面の両方の上に圧縮される。高熱または火炎に曝されたとき、構造中のバインダーは、軟化し流れ、拘束された捲縮繊維を放出し、かつ布帛の厚さが劇的に増加することを可能にする。この増加は、布帛中の空気のポケットを作り、これは、布帛の熱性能を増加させると考えられる。
【0013】
布帛は、高熱または火炎に応じて、その厚さを増加させることができ、というのは、捲縮耐熱性有機繊維が、布帛中で、圧縮されるが、かなり交絡されないからであり、一方、先に開発された繊維−スクリムシートは、繊維の、スクリムとのおよびまたはシート中の他の繊維との良好な交絡を確実にすることに重点を置いている。典型的には、この良好な交絡は、繊維の嵩高(lofty)ウェブ、および/またはシートを形成するスクリム中にエネルギーを与えて、繊維を交絡させシートを高密度化することによって行われる。これが行われたとき、シートの繊維は、熱および火炎に曝されたときに自由に移動することができないほど交絡される。
【0014】
本発明の布帛は、シートを製造するのに十分なだけの繊維の交絡を有し、すなわち、繊維は、オープンメッシュスクリムで覆うかオープンメッシュスクリムと組合せることができる軽量ウェブを形成するために必要な程度に、互いに交絡されるだけである。繊維を互いにまたはスクリムと交絡させるために、追加のエネルギーがシートに与えられない。次に、軽量ウェブは、スクリムに、この組合せを加熱し圧縮し、次に組合せを冷却して構造を硬化させることによって積層され、捲縮繊維は圧縮され拘束される。嵩高シートをこのように圧縮することによって、バインダー材料が軟化されるか溶融するとき、シート中の繊維は、それらが圧縮前に有していたものと同様の外見的に(formally)嵩高な状態に自由に戻ることができる。
【0015】
本発明の補強布帛の厚さは、高熱または火炎に曝されたとき、少なくとも3倍だけ増加する。一般に、温度が上昇されるにつれて、嵩高化(bulking)の速度は増加され、嵩高化の量も増加し、厚さは、圧縮された厚さが見られた25倍を超えて増加する。摂氏150度の低い温度が、嵩高化効果を開始するために必要であると考えられ、約摂氏225度の温度で嵩高化作用を開始することがすぐに進むと考えられる。布帛嵩高化の最大量は、布帛が火炎に直接曝されたときに達成され、布帛は、その元の厚さの約29倍嵩高化することが見られている。火炎に直接曝されたとき、布帛厚さは、好ましくは、その元の厚さの少なくとも5倍、好ましくは10倍増加する。
【0016】
本発明の圧縮された補強不織布は、好ましくは、総厚さが0.025〜0.12センチメートル(0.010〜0.050インチ)である。そのような布帛は、また、好ましくは、20〜136g/m(0.6〜4oz/yd)の範囲内坪量を有し、スクリム構成要素は、好ましくは3.4〜34g/m(0.1〜1.0oz/yd)を構成し、繊維ウェブ構成要素は、好ましくは1.7〜102g/m(0.5〜3.0oz/yd)である。
【0017】
本発明の補強不織布は、捲縮耐熱性有機繊維を含んでなる。そのような捲縮繊維は、好ましくは、0.4〜2.5インチ(1〜6.3cm)好ましくは0.75〜2インチ(1.9〜5.1cm)の範囲内の切断長さを有するステープル繊維であり、好ましくは1センチメートルあたり2〜5の捲縮(1インチあたり5〜12の捲縮)を有する。「耐熱性繊維」とは、繊維が、好ましくは、1分あたり20℃の速度で500℃に空気中で加熱されたときにその繊維重量の90パーセントを維持することを意味する。そのような繊維は、通常、耐炎性であり、繊維、または繊維から製造された布帛が、繊維または布帛が空気中で火炎を支持しないような限界酸素指数(LOI)を有することを意味し、好ましいLOI範囲は約26以上である。好ましい繊維は、火炎に曝されたときに過度に収縮せず、すなわち、繊維の長さは、火炎に曝されたときに著しく短くならない。1分あたり20℃の速度で500℃に空気中で加熱されたときに繊維重量の90パーセントを維持する有機繊維を含有する布帛は、衝突する火炎によって燃焼されたときに限られた量の亀裂および開口部を有する傾向があり、これは、防火体としての布帛の性能に重要である。
【0018】
本発明の補強不織防火布帛に有用な耐熱性の安定した繊維としては、パラ−アラミドポリマー、ポリベンザゾールポリマー、ポリベンゾイミダゾールポリマー、およびポリイミドポリマーから製造された繊維が挙げられる。好ましい耐熱性繊維は、アラミドポリマー、特にパラ−アラミドポリマーから製造される。
【0019】
ここで使用されるように、「アラミド」は、アミド(−CONH−)結合の少なくとも85%が2つの芳香環に直接結合されたポリアミドを意味する。「パラ−アラミド」は、2つの環またはラジカルが分子鎖に沿って互いにパラ配向されたことを意味する。添加剤をアラミドとともに使用することができる。実際に、他のポリマー材料10重量パーセントまでをアラミドとブレンドすることができること、または、他のジアミン10パーセントがアラミドのジアミンと置換されるか他の二酸塩化物10パーセントがアラミドの二酸塩化物と置換されたコポリマーを使用することができることがわかっている。本発明の実施において、好ましいパラ−アラミドはポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)である。本発明に有用なパラ−アラミド繊維を製造するための方法は、一般に、たとえば、米国特許第3,869,430号明細書、米国特許第3,869,429号明細書、および米国特許第3,767,756号明細書に開示されている。そのような芳香族ポリアミド有機繊維、およびこれらの繊維のさまざまな形態は、デラウェア州ウィルミントンのデュポン・カンパニー(DuPont Company, Wilmington, Delaware)から商標ケブラー(Kevlar)(登録商標)繊維で入手可能である。
【0020】
本発明に有用な市販のポリベンザゾール繊維としては、日本の東洋紡(Toyobo, Japan)から入手可能なザイロン(Zylon)PBO−AS(ポリ(p−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール)繊維、ザイロン(登録商標)PBO−HM(ポリ(p−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール))繊維が挙げられる。本発明に有用な市販のポリベンゾイミダゾール繊維としては、セラニーズ・アセテートLLC(Celanese Acetate LLC)から入手可能なPBI(登録商標)繊維が挙げられる。本発明に有用な市販のポリイミド繊維としては、ラプラス・ケミカル(LaPlace Chemical)から入手可能なP−84(登録商標)繊維が挙げられる。
【0021】
あるいは、「耐熱性繊維」としては、1分あたり20℃の速度で700℃に空気中で加熱されたときに繊維重量の少なくとも10パーセントを維持するセルロース繊維を挙げることができる。これらの繊維は、炭形成性であると言われている。10パーセントの無機化合物が繊維に組入れられた再生セルロース繊維が、好ましいセルロース繊維である。そのような繊維、およびそのような繊維を製造するための方法は、一般に、米国特許第3,565,749号明細書および英国特許第1,064,271号明細書に開示されている。本発明のための好ましい炭形成性再生セルロース繊維は、ケイ酸アルミニウムサイトを有するポリケイ酸の形態の二酸化ケイ素を含有するビスコース繊維である。そのような繊維、およびそのような繊維を製造するための方法は、一般に、米国特許第5,417,752号明細書および国際公開第9217629号パンフレットに開示されている。ケイ酸を含有し、かつ約31(±3)パーセントの無機材料を有するビスコース繊維が、フィンランドのサテリ・オイ・カンパニー(Sateri Oy Company of Finland)によって商標ビジル(Visil)(登録商標)で販売されている。
【0022】
耐熱性繊維は、他の繊維とブレンドすることができるが、他の繊維が、防炎体(flame blocker)として機能する布帛の能力を損なわないことが好ましい。たとえば、50パーセントまでのモダクリル繊維を耐熱性繊維とブレンドすることができる。モダクリル繊維は有用であり、というのは、この繊維は、燃焼されたときに火炎抑制ハロゲン含有ガスを放出するからである。モダクリル繊維とは、アクリロニトリルを含んでなるポリマーから製造されたアクリル合成繊維を意味する。好ましくは、このポリマーは、アクリロニトリル30〜70重量パーセントと、ハロゲン含有ビニルモノマー70〜30重量パーセントとを含んでなるコポリマーである。ハロゲン含有ビニルモノマーは、たとえば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、臭化ビニリデンなどから選択される少なくとも1つのモノマーである。共重合性ビニルモノマーの例は、アクリル酸、メタクリル酸、そのような酸の塩またはエステル、アクリルアミド、メチルアクリルアミド、酢酸ビニルなどである。
【0023】
本発明に使用される好ましいモダクリル繊維は、塩化ビニリデンと組合されたアクリロニトリルのコポリマーであり、このコポリマーは、向上された難燃性のために1つまたは複数の酸化アンチモンをさらに有する。そのような有用なモダクリル繊維としては、2重量パーセントの三酸化アンチモンを有する、米国特許第3,193,602号明細書に開示された繊維、少なくとも2重量パーセント、好ましくは8重量パーセント以下の量で存在するさまざまな酸化アンチモンで製造された、米国特許第3,748,302号明細書に開示された繊維、ならびにアンチモン化合物8〜40重量パーセントを有する、米国特許第5,208,105号明細書および米国特許第5,506,042号明細書に開示された繊維が挙げられるが、これらに限定されない。好ましいモダクリル繊維は、10〜15重量の酸化アンチモンを含有すると言われている、日本の株式会社カネカ(Kaneka Corporation, Japan)からの、市販されたプロテックス(Protex)Cであるが、6重量パーセント以下の範囲内の、より少ない酸化アンチモンを有する繊維も使用することができる。
【0024】
捲縮有機繊維は、30重量部までのバインダー材料で所定位置に保持される。好ましいバインダー材料は、熱を加えることによって活性化される、バインダー繊維およびバインダー粉末の組合せである。バインダー繊維は、典型的には、繊維ブレンド中の他のステープル繊維のいずれの軟化点より低い温度で流れる(すなわち、より低い軟化点を有する)熱可塑性材料から製造される。シース/コア複合繊維、特に、日本のユニチカ株式会社(Unitika Co., Japan)から一般に入手可能である(たとえば、商標メルティ(MELTY)(登録商標)で販売される)ような、ポリエステルホモポリマーのコアと、バインダー材料であるコポリエステルのシースとを有する複合バインダー繊維が、バインダー繊維として好ましい。有用なタイプのバインダー繊維としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、またはポリエステルポリマーまたはコポリマーから製造されるもの、そのポリマーまたはコポリマーのみを含有する繊維、または並んだ構成もしくはシース/コア構成の複合繊維として含有する繊維を挙げることができる。好ましくは、バインダー繊維は、補強不織布の20パーセントまでの量で存在する。バインダー粉末は、好ましくは、補強不織布の30パーセントまでの量で存在する。好ましいバインダー粉末は、コポリエステルグリルテックス(Griltex)EMS 6E接着剤粉末などの熱可塑性バインダー粉末である。
【0025】
本発明の補強不織布は、また、オープンメッシュスクリムを含有する。そのようなスクリムは、好ましくは、3.4〜34g/m(0.1〜1.0oz/yd)の範囲内の坪量を有し、「オープンメッシュ」スクリムと呼ばれ、というのは、これらのスクリムは、1センチメートルあたり0.8〜6の端部(1インチあたり2〜15の端部)だけを有するからである。最も好ましいオープンメッシュスクリムは、6.8〜17g/m(0.2〜0.5oz/yd)の範囲内の坪量を有し、かつ経糸方向および緯糸方向の両方において、好ましくは1センチメートルあたり1〜4の端部(1インチあたり3〜10の端部)を有する。好ましくは、メッシュは、バインダーコーティングを有する2組のクロスプライ(cross−plied)ポリエステル連続フィラメントまたは連続フィラメントヤーンをともに結合することによって製造される。代表的なオープンメッシュスクリムが、ニューヨーク州ナイアガラフォールズのサンゴバン・テクニカル・ファブリックス(Saint−Gobain Technical Fabrics of Niagara Falls, New York)からベイエックス(Bayex)(登録商標)スクリム・ファブリック(Scrim Fabrics)の名称で入手可能である。ベイエックス(登録商標)オープンメッシュスクリムの2つのスタイルが、本発明の補強不織布に特に有用である。ベイエックス(登録商標)製品番号KPM4410/P3が、経糸方向および緯糸方向の両方において78dtex(70デニール)の連続ポリエステルフィラメントから製造され、かつ両方の方向において1cmあたり1.6の端部(1インチあたり4の端部)を有する。それは、坪量が6.8g/m(0.2oz/yd)であり、連続フィラメントは、クロスプライフィラメントを所定位置に保持する熱可塑性コーティングを有する。また、ベイエックス(登録商標)製品番号KPM10510/P3が、経糸における78dtex(70デニール)の連続ポリエステルフィラメント、および緯糸方向における167dtex(150デニール)の連続ポリエステルフィラメントから製造され、かつ経糸方向における1cmあたり4の端部(1インチあたり10の端部)、および緯糸方向における1cmあたり2の端部(1インチあたり5の端部)を有する。それは、坪量が12.1g/m(0.36oz/yd)であり、連続フィラメントは、クロスプライフィラメントを所定位置に保持する熱可塑性コーティングを有する。
【0026】
このタイプのスクリムは、適切な強度をもたらし、可燃性に過度に寄与しない。オープンメッシュが、また、布帛が高熱に曝されたときの布帛中の空気のオープンポケットの形成に寄与するとまた考えられ、というのは、メッシュスクリムが、繊維ウェブとの小さい数の結合点によって、より少ない耐熱性繊維を拘束するはずだからである。スクリムは、熱可塑性または非熱可塑性フィラメントから構成することができ、アラミド、ナイロン、ガラス、またはポリエステルであることができる。スクリムがポリエステルなどの熱可塑性樹脂である場合、不織布が燃焼されたとき、捲縮耐熱性繊維が嵩高化しているので、このメッシュは、燃焼された領域において本質的に見えなくなる。
【0027】
本発明は、また、物品を防火するための、熱または火炎中で嵩高化する補強不織布を製造するためのプロセスであって、
a)捲縮耐熱性有機繊維と、バインダー繊維とを含んでなるマットを形成する工程と、
b)マットをオープンメッシュスクリムの第1の面と接触させて、布帛アセンブリを形成する工程であって、前記スクリムが第1および第2の面を有する工程と、
c)バインダー粉末を布帛アセンブリに付与する工程と、
d)布帛アセンブリを加熱して、バインダー繊維およびバインダー粉末を活性化する工程と、
e)布帛アセンブリを圧縮された状態に圧縮する工程と、
f)圧縮された状態の布帛アセンブリを冷却して、補強不織布を形成する工程とを含んでなるプロセスに関する。
【0028】
マットは、低密度ウェブを作ることができる任意の方法によって形成することができる。たとえば、繊維の梱(bales)から得られた捲縮ステープル繊維およびバインダー繊維の塊を、ピッカなどのデバイスによってほぐす(opened)ことができる。好ましくは、これらの繊維は、線密度が、1フィラメントあたり約0.55〜約110dtex(1フィラメントあたり0.5〜100デニール)、好ましくは0.88〜56dtex/フィラメント(0.8〜50デニール/フィラメント)であるステープル繊維であり、約1〜33dtex/フィラメント(0.9〜30デニール/フィラメント)の線密度範囲が最も好ましい。
【0029】
次に、ほぐされた繊維混合物を、空気搬送などの任意の利用可能な方法によってブレンドして、より均一な混合物を形成することができる。あるいは、ピッカの繊維ほぐし前、繊維をブレンドして均一な混合物を形成することができる。次に、繊維のブレンドを、カードなどのデバイスの使用によって繊維ウェブに変えることができるが、繊維のエアレイなどの他の方法を用いることができる。繊維ウェブが、クロスラッピング(crosslapping)を少しも伴わずに、カードから直接使用されることが好ましい。しかし、望ましい場合、繊維ウェブを、コンベヤによってクロスラッパー(crosslapper)などのデバイスに送って、個別のウェブを互いの上にジグジグ(zig−zig)構造に層状に重ねることによって、クロスラップ(crosslapped)構造を作ることができる。
【0030】
次に、1つもしくはそれ以上のカードからの繊維ウェブ、およびオープンメッシュスクリムを、輸送ベルト上で集めることができる。好ましくは、スクリムは2つのウェブの間に挿入されて2ウェブ構造を製造するが、スクリムを1つのウェブの上に、または1つのウェブをスクリムの上に置くことによって、1ウェブ構造を製造することができる。必要な場合は、追加のウェブを1または2ウェブ構造のいずれかの上に置くことができる。好ましくは、最終構造は、オープンメッシュスクリムの一方の面上の2つのカーディングされたウェブと、スクリムの他方の面上の1つのカーディングされたウェブとを有する。次に、バインダー粉末が、約3.4〜24g/m(0.1〜0.7oz/yd)の好ましい量で、組合されたウェブおよびスクリムに付与される。次に、組合されたウェブ、バインダー粉末、およびスクリムは、バインダー繊維および粉末を軟化させ部分的に溶融し、それが繊維をともに接着するのを可能にするのに十分な温度におけるオーブンを通して搬送される。オーブン出口において、シートは、好ましくは、2つの鋼ロールの間で圧縮されて、層を強固にして結合力のある布帛にする。次に、布帛は、この圧縮された状態で冷却される。
【0031】
本発明は、さらに、物品を防火する方法であって、(1)補強不織防火体布帛の層、布帛寝具用布層または椅子張り布帛層、および場合によりクッショニング層を組合せる工程と、(2)層を縫い合わせて、防火されたキルティング製品布帛または椅子張り布帛を形成する工程と、(3)防火されたキルティング製品布帛または椅子張り布帛を物品に組入れる工程とを含んでなる方法に関する。補強不織防火体布帛は、第1の面および第2の面を有するオープンメッシュスクリムを含んでなり、第1の面は、その上に捲縮耐熱性有機繊維が圧縮され、繊維は、圧縮された状態で熱可塑性バインダーによって保持され、布帛が熱または火炎に曝されたとき、布帛はその厚さを少なくとも3倍だけ増加させることができる。好ましくは、有機繊維は、オープンメッシュスクリムの第1および第2の面の両方の上に圧縮される。
【0032】
補強不織防火体布帛、布帛寝具用布層または椅子張り布帛層、および場合によりクッショニング層の組合せは、ともに縫われるかステッチされて、予めステッチされたキルティング製品を形成し、これらのキルティング製品は多くの形態を有することができる。キルティング製品の基本的な例は、順に、外側布帛寝具用布層またはカバー布帛層と、本発明の補強不織布防火体の1つもしくはそれ以上の層と、フォームまたは繊維バッティングのクッショニング層と、ステッチ裏当て層とを含んでなる。これらの層は、組合され、次に、任意の一般的なステッチパターン、典型的にはキルティングパターンを用いてともにステッチされて、必要に応じてマットレスボーダーおよびパネルに使用されるキルティング製品を形成する。
【0033】
外側布帛寝具用布層またはカバー布帛層として有用な布帛は、通常、任意の数の織りを用いる非常に耐久性のある、織られたまたは編まれた布帛であり、1平方ヤードあたり2〜8オンス(1平方メートルあたり68〜271グラム)の範囲内の坪量を有する傾向がある。寝具用布帛は、綿、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、またはレーヨン繊維を含有することができるが、これらに限定されない。
【0034】
フォームまたは繊維バッティングの任意のクッショニング層としては、所望の表面効果またはクッションをもたらす、1つもしくはそれ以上の低密度繊維バッティングまたはフォーム、またはそれらの組合せを挙げることができる。バッティングおよび/またはフォームは、寝具用布の下の枕のように作用し、非常に触感的なクッショニングをもたらし、単にマットレスに触れるかマットレスを横切って人の手を走らせることによって容易に認めることができるタイプである。好ましい繊維バッティング材料は、ポリエステル(PET)バッティングであり、典型的には、1平方フィートあたり約0.5〜2.0オンス(153〜610グラム/平方メートル)の量で存在する。限定することが意図されないが、クッショニング材料が繊維バッティングである場合、そのようなバッティングとしては、たとえば国際公開第2003049581号パンフレットに開示されているような垂直にひだをつけられた(pleated)構造、またはたとえば米国特許第3,118,750号明細書に開示されているような繊維のバッティングを挙げることができる。フォームが使用される場合、それは、一般にポリウレタンまたはラテックスフォームであり、典型的には厚さが0.5〜3インチ(1.2〜7.6cm)である。
【0035】
ステッチ裏当て層は、典型的には、クッショニング材料が、ステッチを保持するのに十分に相当でないとき、キルティング製品の、寝具用布と反対の面上のステッチを保持するために使用される。典型的には、ステッチ裏当て層は、1平方ヤードあたり0.5オンス(1平方メートルあたり17グラム)の範囲内の坪量を有する軽量布帛であり、ポリプロピレンなどの材料から製造される。
【0036】
代替キルティング製品層構成が、順に、外側寝具用布層または椅子張り層、クッショニング材料の層、および補強不織布防火体の1つもしくはそれ以上の層であることができ、クッショニング材料は、防火体と寝具用布との間に挟まれる。このキルティング製品において、ステッチ裏当ては必要でなく、というのは、防火体が、ステッチを保持するという目的を果たすからである。キルティング製品の別のものを、クッショニング材料の多数の層で製造することができる。たとえば、外側寝具用布帛または椅子張り布帛、クッショニング材料の層、補強不織布防火体の1つもしくはそれ以上の層、クッショニング材料の別の層、および次にステッチ裏当て層を順に組合せることによって、キルティング製品を形成することができる。
【0037】
別の可能なキルティング製品構成は、本発明の補強不織布防火体の1つの層が外側カバー布帛の下に直接配置され、次いでクッショニング層が配置され、補強不織布防火体の第2の層がクッショニング層の下にあるものである。この構成において、補強不織布防火体の最後の層は、また、ステッチ裏当てとして機能する。この特定のキルティング製品構成の代替のものにおいて、クッショニングの別の層を、カバー布帛と補強不織布防火体との間に配置することができる。
【0038】
さらに別のキルティング製品構成を、実質的なクッショニング層なしで、外側寝具用布層または椅子張り層、および本発明の補強不織布防火体の1つもしくはそれ以上の層から構成することができる。わかり得るように、多くの異なったキルティング製品が可能であり、キルティング製品の防火性能が悪影響されない限り、キルティング製品において材料の他の層を組合せることができる。
【0039】
次に、予めステッチされたキルティング製品を、1つの家具などの物品、または好ましくはマットレスおよびファウンデーションセットに組入れることができる。マットレスを防火する1つの方法は、マットレスコアのパネルおよびボーダーを予めステッチされたキルティング製品で完全に被覆し、シームにおいてキルティング製品を縫い合わせて、マットレスを封入することによる。これは、どのパネルまたはボーダーが火炎に曝されるかに関わらず、マットレスが防火されることを確実にする。ほとんどクッショニングを有さないキルティング製品を、マットレスのボーダーに使用することができ、かなりの量のクッショニングを有するキルティング製品を、同じマットレスのトップおよびボトムパネルに使用することができるなど、さまざまなタイプの予めステッチされたキルティング製品を物品に組入れることができる。ボックススプリングなどのファウンデーションは、通常、完全に防火される必要はないが、一般に、ボーダー上に防火を有する必要があるだけであり、防火は、ファウンデーションのトップ面またはパネルについては任意である。このファウンデーションパネルは、通常マットレスと接触し、したがって、一般に火炎から遮蔽され、そのため、ファウンデーションパネルに使用される材料は、典型的には、マットレスのパネルと同じ程度の防火を有する必要はない。さらに、マットレスファウンデーションは、ボーダーおよび/またはパネルに大きい程度のクッショニング材料を有さないであろう。しかし、本発明の補強不織布は、必要に応じて、ファウンデーションボーダーまたはパネルに使用することができる。
【0040】
補強不織布は、2003年7月に発行されたカリフォルニア州技術報告(California Technical Bulletin)603に合格することができない物品への適切な防火を提供して、その物品が、化学難燃性材料を加えることなく、2003年7月に発行されたカリフォルニア州技術報告603に合格することを可能にする。補強不織布は、マットレスなどの物品に、そのマットレスが、他の態様で合格しない場合にテストに合格することを可能にするいかなる態様でも組入れることができる。
【0041】
テスト方法
熱重量分析(ThermoGravametric Analysis)
本発明に使用される繊維は、特定の加熱速度で高温に加熱されたときにそれらの繊維重量の一部を維持する。この繊維重量を、デラウェア州ニューアーク(Newark, Delaware)のTAインスツルメンツ(TA Instruments)(ウォーターズコーポレーション(Waters Corporation)の1事業部)から入手可能なモデル2950熱重量分析器(Thermogravimetric Analyzer)(TGA)を使用して測定した。TGAは、サンプル重量損失対上昇温度のスキャンを与える。TA汎用分析(Universal Analysis)プログラムを使用して、パーセント重量損失を任意の記録温度で測定することができる。プログラムプロファイルは、サンプルを50℃で平衡させ、温度を1分あたり10または20℃から50から1000℃で上昇させ、10ml/分で供給されるガスとして空気を使用し、500マイクロリットルのセラミックカップ(PN 952018.910)サンプルコンテナを使用することからなる。
【0042】
テスト手順は次の通りである。TGAを、TAシステムズ(Systems)2900コントローラ(Controller)上のTGAスクリーンを使用してプログラムした。サンプルIDを入力し、1分あたり20度の計画された温度上昇プログラムを選択した。空のサンプルカップを、機器の風袋機能を使用して風袋を計った。繊維サンプルを約1/16インチ(0.16cm)の長さに切断し、サンプルパンをサンプルで緩く充填した。サンプル重量は10〜50mgの範囲内でなければならない。TGAはバランスを有し、したがって、厳密な重量を予め定める必要はない。サンプルのいずれも、パンの外側にあってはならない。充填されたサンプルパンをバランスワイヤ上に装填し、熱電対がパンの頂縁に近いがそれに触れていないことを確かめた。炉をパンの上に上昇させ、TGAを開始する。いったんプログラムが完了すると、TGAは、自動的に炉を低下させ、サンプルパンを除去し、冷却モードになる。次に、TAシステムズ2900汎用分析プログラムを使用して、分析し、温度の範囲にわたるパーセント重量損失についてのTGAスキャンを生成する。
【0043】
マットレス燃焼性能
カリフォルニア州消費者問題局の家具および断熱部(The Bureau of Home Furnishings and Thermal Insulation of the Department of Consumer Affairs of the State of California)(米国95660−5595カリフォルニア州ノースハイランズ、オレンジグローブアベニュー3485(3485 Orange Grove Avenue, North Highlands, California 95660−5595, USA))は、マットレスセットの可燃性性能を定量化するために、2003年2月付の技術報告(Technical Bulletin)603「大きい裸火に対する居住用マットレス/ボックススプリングセットの耐性の要件およびテスト手順(Requirements and Test Procedure for Resistance of a Residential Mattress/Box Spring Set to a Large Open−Flame)」を発行した。この報告は、後に、2003年7月に改訂され、ピーク放熱速度(Peak Heat Release Rate)(PHRR)の限界が200キロワット未満であり、10分における総放熱(Total Heat release)限界が25メガジュール未満であることを必要とした。このプロトコルは、マットレスおよびファウンデーションが十分に換気された条件下で特定の燃える点火源に曝されたときに特定の火災テスト反応を測定することによって、マットレス/ファウンデーションセットの燃焼挙動を定める手段を提供する。それは、2003年2月付の「1対のガスバーナを使用してマットレス/ファウンデーションセットをテストするプロトコル(Protocol of Testing Mattress/Foundation Sets Using a Pair of Gas Burners)」という題の国立標準技術研究所刊行物(the National Institute of Standards and Technology Publication)に基く。
【0044】
点火の時点から、(1)スリープセットの燃焼がすべて止まる、(2)30分の期間が経過する、または(3)テスト室のフラッシュオーバが避けられないと思われるまで、特定の対のガスバーナを加える間およびその後の燃焼を説明するテストデータが得られる。燃焼テスト標本からの放熱(火災によって発生されたエネルギー)の速度を、酸素消費熱量測定によって測定する。原理、制限、および必要な計装の説明が、ASTM E 1590「マットレスの火災テストの標準テスト方法(Standard Test Method of Fire Testing of Mattresses)」に見出される。テストと関連する専門用語は、ASTM E 176「火災標準の標準専門用語(Standard Terminology of Fire Standards)」に定義される。
【0045】
一般に、テストプロトコルは、寝具を燃焼することによってマットレスおよびファウンデーションに課される熱流束レベルおよび持続期間を模倣するように設計された1対のプロパンバーナを使用する。バーナは、異なる流束を異なる時間の間マットレストップおよびマットレス/ファウンデーションの側面に課す。このように曝す間およびその後、テスト標本から時間依存放熱速度の測定を行う。
【0046】
マットレス/ファウンデーションを、キャッチ表面上に位置する短いベッドフレームの上に配置する。テストの間、立ち昇る煙は、放熱速度を測定するように計装されたフードによって捕えられる。実用性のため、ツインサイズのマットレスおよびファウンデーションをテストする。バーナによる点火後、標本を、十分に換気された条件下で自由に燃焼させる。
【0047】
テスト標本は、ファウンデーション上に配置されたマットレスを含み、T字形バーナが、標本を燃焼するようにセットされる。1つのバーナが、マットレスの頂面上に火炎を衝突させ、マットレスの表面から39mmにセットされる。第2のバーナは、マットレス/ファウンデーション組合せの側面上に垂直に火炎を衝突させ、標本の側面から42mmにセットされる。サイドバーナおよびトップバーナは、標本の長さに沿って同じ場所にセットされないが、長さに沿って約18〜20cm別のものの上からオフセットである。バーナは、テスト方法ごとに特別に構成され整列される。
【0048】
テスト標本を、摂氏12度(華氏54度)を超える周囲温度および70パーセント未満の相対湿度でテスト前24時間状態調整する。マットレスおよびファウンデーションのテスト標本を、互いの上にならびにフレームおよびキャッチ表面上に中心に置く。マットレスがファウンデーションより1〜2cm狭い場合、マットレスを、マットレスおよびファウンデーションの側面が垂直に整列されるまで移動することができる。バーナを、標準ごとに整列させ標本から隔置する。データ記録およびロギングデバイスを、点火の少なくとも1分前にオンにする。バーナを点火し、トップバーナを70秒間燃焼させ、サイドバーナを50秒間燃焼させ(可能であれば)、次に、それらを領域から除去する。燃焼およびくすぶりのしるしがすべて終わるまで、または1時間が経過するまで、データ収集を続ける。
【0049】
垂直火炎テスト
補強不織布の垂直火炎性能を、ASTM D6413−99を用いて測定した。
【0050】
厚さ
嵩高化前の本発明の補強布帛の厚さ測定を、ASTM D1777−96オプション(Option)1を用いて測定することができる。しかし、厚さ測定のほとんどの標準方法は、サンプル上の何らかのタイプの重量の付与が測定されることを必要とする。したがって、厚さの真の読みを得て、かつ高熱または火炎を受けた嵩高化サンプルの「嵩高さ(bulkiness)」を乱さないために、実施例2の厚さ結果は、切断されたサンプルの走査型電子顕微鏡法(SEM)測定に基いた。テストサンプルを、鋭いはさみによって切断し、SEMサンプルスタッド上に装着した。
【実施例】
【0051】
実施例1
補強不織布を次のように準備した。90重量部2.2dpf、2インチの切断長さのタイプ970ケブラー(Kevlar)(登録商標)ブランドステープル繊維、および10部4dpf、2インチの切断長さのタイプ4080ユニチカ(Unitika)バインダー繊維を、梱(bales)から3つのカードに供給されるときブレンドした。3つのカードからの繊維ウェブを輸送ベルト上で集めて、坪量が約1.1oz/ydの繊維マットを作った。ポリエステルフィラメントヤーンのオープンメッシュスクリムを、最初の2つのカードによって形成された2つのウェブの間に挿入した。オープンメッシュスクリムは、サンゴバン(Saint Gobain)5×10スクリム(緯糸方向における150デニールのポリエステルの5の端部/インチ、および経糸方向における70デニールのポリエステルの10の端部/インチを有するタイプKPMR10510/P3)であり、坪量が0.37oz/ydであった。結果として生じる構造は、オープンメッシュスクリムの一方の面上の2つのカーディングされたウェブと、スクリムの他方の面上の1つのカーディングされたウェブとを有した。
【0052】
グリルテックス(Griltex)763305 20 EMS接着剤粉末を、総シート重量を2oz/ydにする量で、組合されたウェブおよびスクリムに付与した。組合されたウェブ、バインダー粉末、およびスクリムを、285℃におけるオーブンを通して搬送して、バインダー繊維および粉末を溶融した。オーブン出口において、シートを0インチの間隙で2つの鋼ロールの間で圧縮し、これは、構成要素を強固にして結合力のある布帛にした。次に、布帛はこの圧縮された状態で冷却した。
【0053】
布帛の最終組成は、約50%のケブラー(登録商標)繊維、6%のバインダー繊維、19%のポリエステルスクリム、および25%のバインダー繊維であった。布帛は、ASTM D1777−96オプション(Option)1に従って約23ミルの厚さを有した。布帛は、経糸方向における30lbの力、および緯糸方向における22lbの力の掴み強度(grab strength)を有した。12秒垂直燃焼テストにおいて、炭長さは、経糸方向における5.6秒の後火炎(afterflame)で、3.7インチであり、炭長さは、緯糸方向における1.3秒の後火炎で、2.2インチであった。ドリッピングは観察されなかった。火炎の熱が、火炎の近傍における材料の厚さが布帛の元の厚さの3倍を超えて視覚的に増加することを引起すことが認められた。
【0054】
布帛を、TB 603に従って片面および両面マットレス中のファイヤバリヤ(fire barrier)としてテストした。マットレスのキルティングされたトップパネルの場合、ファイヤバリヤを、寝具用布の下の3/4インチのポリエステルバッティングの層の下に位置決めした。マットレスボーダーおよびボックススプリングボーダーの場合、ファイヤバリヤ布帛を、寝具用布の下の3/16インチのフォームの層の下に位置決めした。マットレスはIBCセレブリティ(Celebrity)構造であった。
【0055】
片面マットレスの場合、トップパネルキルティング製品は、順に、ポリエステル繊維およびポリプロピレン繊維のモザイク(Mosaic)スタイルを有する白色の織られた寝具用布の層、3/4インチのポリエステルバッティングの層、本発明の防火体布帛、各層が7/16インチの厚さを有するポリエステルフォームの3つの層、ならびに最後にポリステッチ(polystitch)裏当て層(キルティング製品の裏面上のステッチングを保持するため)である、ステッチされた層から構成された。
【0056】
片面マットレスのトップパネルは、トップパネルキルティング製品、1/1/2インチの回旋状ポリウレタンフォームの層、7/16インチのポリウレタンフォームの層、および522ハイプロ(Highpro)マットレススプリングに対して位置決めされた灰色フェルト絶縁体パッドから構成された。マットレスのボトムパネルは、マットレススプリングから外方に、スプリングに対する灰色フェルト絶縁体パッド、1−/3/4インチのポリウレタンフォームの層、ならびに25%のケブラー(登録商標)アラミド繊維および75%のビジル(Visil)(登録商標)33APセルロース繊維から製造された4oz/ydのスパンレース布帛から構成された外側スキッドパッドで構成された。ボーダーキルティング製品は、順に、ポリエステル繊維およびポリプロピレン繊維のモザイクスタイルを有する白色の織られた寝具用布の層、3/16インチのポリウレタンフォームの層、本発明の防火体布帛、ならびに最後にポリステッチ裏当て層(キルティング製品の裏面上のステッチングを保持するため)である、ステッチされた層から構成された。マットレスパネルを非FR糸でキルティングし、シームをケブラー(登録商標)アラミド糸で縫い、FRポリエステルテープをシームで使用した。
【0057】
マットレスとともに使用されたボックススプリングのトップパネルは、厚紙に固定された、25%のケブラー(登録商標)アラミド繊維および75%のビジル(登録商標)33APセルロース繊維から製造された4oz/ydのスパンレース布帛である、表面上のノンスキッドパッドを有した。材料を側面の約1インチ下に延在させ、トップを、2インチのコンチネンタルボーダーでボーダーに固定した。ボックススプリングに使用されたボーダーは、マットレスに使用されたものと同じであった。シームを、ケブラー(登録商標)アラミド糸を使用して縫い、FRポリエステルテープをシームで使用した。
【0058】
両面マットレスの場合、トップおよびボトムパネルキルティング製品の両方を、片面マットレスのためのトップパネルキルティング製品と同じように構成した。ボーダーキルティング製品も、片面マットレスのためのものと同じように構成し、パネルを、片面マットレスと同様にキルティングし縫った。ボックススプリングを片面マットレスの場合と同じように準備した。
【0059】
片面および両面マットレスの両方は、TB 603に従って燃焼し、バーナ点火から30分における200kW未満のピーク放熱の基準を満たした。
【0060】
実施例2
この実施例は、本発明の補強布帛の嵩高化挙動を示す。補強不織布を実施例1と同様に準備した。この布帛は、初期厚さが0.32mm(12ミル)であった。布帛のサンプルを、異なった温度で動作する加熱されたオーブン内に配置し、サンプルの初期嵩高化が目視検出されたとき時間を書き留めた。サンプルの目視監視を続け、時間対サンプルの本質的に完全な嵩高化は温度とともに変わり、本質的な完全な嵩高化は、150℃でテストされたサンプルの場合の約5分から、250℃でテストされたサンプルの場合の約1.5分に起こった。サンプルはオーブン内に合計15分間残り、最終嵩高化厚さは記録した。さらに、サンプルを火炎中で保持し、それは、本質的にその最大厚さにすぐに嵩高化した。その最終厚さは9.38mmに増加し、29倍の増加であった。嵩高化布帛を横に切り、厚さをSEMを用いて測定することによって、最終嵩高化厚さを測定した。
【0061】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を防火するための補強不織布であって、第1の面および第2の面を有するオープンメッシュスクリムを含んでなり、第1の面が、その上に捲縮耐熱性有機繊維が圧縮され、繊維が、圧縮された状態で熱可塑性バインダーによって保持され、
布帛が熱または火炎に曝されたとき、布帛がその厚さを少なくとも3倍だけ増加させることができる補強不織布。
【請求項2】
布帛が熱または火炎に曝されたとき、布帛がその厚さを少なくとも5倍だけ増加させることができる請求項1に記載の補強不織布。
【請求項3】
布帛が熱または火炎に曝されたとき、布帛がその厚さを少なくとも10倍だけ増加させることができる請求項1に記載の補強不織布。
【請求項4】
繊維が、圧縮された状態で、熱可塑性バインダーおよび熱可塑性オープンメッシュスクリムの組合せによって保持される請求項3に記載の補強不織布。
【請求項5】
スクリムの第2の面上に圧縮された捲縮耐熱性有機繊維をさらに含んでなり、繊維が、圧縮された状態で熱可塑性バインダーによって保持される請求項1に記載の補強不織布。
【請求項6】
オープンメッシュスクリムが熱可塑性材料を含んでなる請求項1に記載の補強不織布。
【請求項7】
熱可塑性バインダーがバインダー繊維である請求項1に記載の補強不織布。
【請求項8】
熱可塑性バインダーがバインダー繊維およびバインダー粉末の組合せを含んでなる請求項7に記載の補強不織布。
【請求項9】
耐熱性有機繊維がパラ−アラミド繊維である請求項1に記載の補強不織布。
【請求項10】
熱可塑性バインダーがポリエステルバインダー粉末およびポリエステルバインダー繊維の組合せであり、オープンメッシュスクリムが同じまたは異なったポリエステルポリマーから製造される請求項9に記載の補強不織布。
【請求項11】
請求項1に記載の補強不織布を含んでなる防火された物品。
【請求項12】
請求項1に記載の補強不織布を含んでなる防火されたマットレス。
【請求項13】
物品を防火するための、熱または火炎中で嵩高化する補強不織布を製造するための方法であって、
a)捲縮耐熱性有機繊維と、バインダー繊維とを含んでなるマットを形成する工程と、
b)マットをオープンメッシュスクリムの第1の面と接触させて、布帛アセンブリを形成する工程であって、前記スクリムが第1および第2の面を有する工程と、
c)バインダー粉末を布帛アセンブリに付与する工程と、
d)布帛アセンブリを加熱して、バインダー繊維およびバインダー粉末を活性化する工程と、
e)布帛アセンブリを圧縮された状態に圧縮する工程と、
f)圧縮された状態の布帛アセンブリを冷却して、補強不織布を形成する工程とを含んでなる方法。
【請求項14】
オープンメッシュスクリムの第2の面を、耐熱性有機繊維と、バインダー繊維とを含んでなる第2の繊維マットと接触させる、工程c)の前の追加の工程を有する請求項13に記載の方法。
【請求項15】
外側布帛寝具用布層またはカバー布帛層と、補強不織布防火体の1つもしくはそれ以上の層と、フォームまたは繊維バッティングのクッショニング層と、場合によりステッチ裏当て層とを含んでなる防火キルティング製品であって、
補強不織布防火体が、その上に捲縮耐熱性有機繊維が圧縮されたオープンメッシュスクリムを含んでなり、繊維が、圧縮された状態で熱可塑性バインダーによって保持される防火キルティング製品。
【請求項16】
熱または火炎中で嵩高化する補強不織布層で物品を防火する方法であって、
a)補強不織布層、布帛寝具用布層または椅子張り布帛層、および場合によりクッショニング層を組合せる工程と、
b)層を縫い合わせて、防火された布帛キルティング製品を形成する工程と、
c)防火された布帛キルティング製品を物品に組入れる工程とを含んでなり、
補強不織布層が、第1の面および第2の面を有するオープンメッシュスクリムを含んでなり、第1の面が、その上に捲縮耐熱性有機繊維が圧縮され、繊維が、圧縮された状態で熱可塑性バインダーによって保持され、
布帛キルティング製品が熱または火炎に曝されたとき、補強不織布層がその厚さを少なくとも3倍だけ増加させることができる方法。
【請求項17】
物品がマットレスである請求項16に記載の物品を防火する方法。
【請求項18】
補強不織布が、スクリムの第2の面上に圧縮された捲縮耐熱性有機繊維をさらに含んでなり、繊維が、圧縮された状態で熱可塑性バインダーによって保持される請求項16に記載の物品を防火する方法。
【請求項19】
物品がマットレスである請求項18に記載の物品を防火する方法。

【公表番号】特表2007−530806(P2007−530806A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−505050(P2007−505050)
【出願日】平成17年3月21日(2005.3.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/009283
【国際公開番号】WO2006/022857
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】