説明

補強糸入りガムテープ

【課題】従来使用されている補強糸入りガムテープは、補強糸として水溶性糸が使用されていたが、水溶性糸の湿分に対する寸法安定性が製品の保管時や使用後の接合面が剥がれやすいというトラブルが発生していた。これらのトラブルの発生しにくい補強糸入りガムテープを提供する。
【解決手段】上紙と下紙の間に水溶性ステープルとセルロース系の天然繊維もしくはセルロース系の再生繊維ステープルから構成される混紡糸をタテ糸、ヨコ糸として配置するかもしくは該混紡糸からなる織物を配し、上紙と下紙を水溶性もしくは水分散性の接着剤で接合したものをガムテープ用基材を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補強糸入りガムテープに関し、さらに詳しくは水分散性良好で寸法安定性に優れたガムテープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガムテープの基材として紙が用いられているが、紙だけでは強度が弱く、強度の要求される用途では補強糸で補強した糸入りの紙が基材として用いられている。
【0003】
また、資源の再利用を目的としてダンボールなどの梱包材を原料として使用した場合において、ダンボールを溶解再利用しようとする際、ガムテープ材が水やアルカリ液に溶解しない場合、ガムテープを除去してから叩解槽に投入しなければならなかった。そこでこのような手間を省くこと、およびガムテープをも一緒に溶解して資源として利用しようとする試みもなされている。
【特許文献1】特許第3082775号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、ガムテープ材が水やアルカリ液に溶解するものであれば、ダンボールからテープを剥がすことなく叩解槽に投入できるので手間を省けるという効果があった。しかしながら、ガムテープの補強糸として水溶性糸を用いた場合には、水溶性糸は湿分の存在によって収縮を起こし、テープ全体が縮むという欠点を有していた。テープが縮むことはテープの保管時の湿度管理に注意を払わなければならなかったし、テープとダンボールなどの接合面の形状が崩れたりテープの剥離という現象も生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは湿分の影響を受けにくく、かつ、水やアルカリ液中でバラバラになりやすい補強糸入りガムテープ材を得るため鋭意研究した結果、補強糸を構成するタテ糸、ヨコ糸に水溶性糸とセルロース系繊維からなる混紡糸を用いること、および該混紡糸をタテ糸、ヨコ糸として配置したメッシュ品もしくは織物を用いることにより、目的とするガムテープ材が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明の要旨とするところは、上紙と下紙の間に水溶性ステープルとセルロース系の天然繊維もしくはセルロース系の再生繊維ステープルから構成される混紡糸をタテ糸、ヨコ糸として配置するか、もしくは平織組織の織物を配し、上紙と下紙の貼り合わせ用接着剤として水溶性または水分散性の接着剤を用いて接合してガムテープ用の基材とし、ガムテープ基材の片面に再湿性接着剤層を設けたことを特徴とする補強糸入りガムテープにある。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、水溶性糸のみからなる糸で補強したガムテープに比べ、湿分に対する寸法安定性に優れているため、保管時のトラブルも少なく、梱包材料として使用した際もテープの収縮による接合面での剥離という現象も起こりにくいガムテープが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に本発明を詳細に説明する。本発明でいうガムテープとは、通常用いられている片面に再湿性接着剤層を設けた紙製のテープのことである。テープは強度が弱いため、補強糸を用いることが多い。補強糸としては通常の天然繊維、再生繊維、合成繊維が用いられている。これらの補強糸を使ったガムテープは十分な強力を有し、湿分に対する寸法安定性にも優れているが、資源として再利用することはできなかった。
【0009】
すなわち、このようなガムテープを梱包材としてダンボールの梱包に用いた場合、ガムテープは水やアルカリ液に溶解しないため、使用済みのダンボールからガムテープを剥がしてから叩解槽に投入しなければならないという面倒な作業を経て初めてダンボールを資源として利用できるのであった。
【0010】
そこで考え出されたのが水溶性糸で補強したガムテープである。このガムテープを使用すれば使用済みのダンボールからガムテープを剥がすことなくそのまま叩解槽に投入し、資源として利用できるようになったのである。しかるに、水溶性糸は湿分に対する寸法安定性が悪く、テープが収縮するという現象が起こり、保管中のトラブルやダンボールとの接合面でテープが剥がれるという現象も生じていた。
【0011】
本発明のガムテープは上記のトラブルをすべて解決する。本発明では補強用織物として水溶性ステープルとセルロース系繊維ステープルとの混紡糸を使用する。本発明で使用する水溶性糸のステープルとしては、80℃以下、好ましくは50℃以下の温度で溶解する糸が使用される。すなわち、叩解処理温度で溶解すればよい。低ケン化のポリビニルアルコール系繊維、カルボキシメチルセルロース繊維、カチオン可染ポリエステル繊維、アルギン酸繊維等が挙げられるが、なかでも工業的に生産されている低ケン化のポリビニルアルコール系繊維が好ましく用いられる。繊維の原料となるポリビニルアルコールのケン化度は80モル%以上、97モル%以下のものが好ましい。低ケン化ポリビニルアルコールは通常の湿式紡糸法、半溶融紡糸法、乾式紡糸法などの方法で糸条化される。得られた糸は所望の長さにカットして使用される。
【0012】
本発明で使用されるセルロース系繊維とは、紙の原料として用いられるものが好ましい。具体的には天然繊維では綿、再生繊維ではレーヨンステープルが挙げられる。水溶性ステープルとセルロース系繊維ステープルの混紡比は重量比で20:80〜80:20が好ましく、より好ましくは40:60〜60:40である。水溶性ステープルの混率が20%未満では湿分に対する寸法安定性は良くなるが水溶性ステープルが溶解した後のセルロース系繊維ステープルのバラけ程度が悪くなるので好ましくなく、80%を超えるとバラけやすくなるが湿分に対する寸法安定性が悪くなるので好ましくない。
【0013】
混紡糸の撚数は製織に耐えられる撚数であればよい。撚数が少ないほど水溶性ステープルが溶解した後のバラけはよくなる。撚数が多いほどバラけにくくなるので撚数は100T/M〜400T/Mが好ましいが特段の制限はない。混紡糸の太さは製織に耐えられるなら細いほど好ましいが、補強の効果が示される強度を持たせる太さにしなければならない。
【0014】
ガムテープに用いられる上紙、下紙は通常ガムテープに用いられている材質のものを用いることができる。また補強糸を間に挟んで上紙と下紙を貼り合わせる接着剤は水溶性接着剤が好ましく用いられる。例示すれば、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリビニルエーテル、セルロース誘導体、加工デンプン、ニカワ等が挙げられる。
【0015】
本発明で用いられる再湿性接着剤層を構成する接着剤としては、水分散性の良好な接着剤を用いることができる。例示すれば、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステルなどの水溶性樹脂からなる水溶性接着剤が挙げられ、その他にも水分散性のよい酢酸ビニル系接着剤、水溶性ホットメルト樹脂等が挙げられる。
【0016】
本発明で用いる補強糸の形態は、混紡糸を製織した平織のメッシュ組織のものを上紙と下紙の間に挟んで接着剤で一体化するという方法で本発明の目的を達することができる。また該混紡糸をタテ糸、ヨコ糸とし、それをほぼ直角に交差させ、上紙と下紙に挟んで接着剤にて一体化するという方法をも採用できる。
【実施例】
【0017】
以下、実施例にて本発明を説明する。
【0018】
(実施例1)
ケン化度93モル%のポリビニルアルコールの33%水溶液を乾式紡糸し、カットして得られた水溶性ステープル50部と綿50部からなる紡績糸を作製した。紡績糸の繊度は200 dtex×3、撚数は上撚/下撚=S300/Z400T/Mであった。この紡績糸を水温20℃から60℃まで変化させて、定長下で片端を固定し、もう一方の糸端は引張試験機のセンサー部に連結させ、温水中に浸漬した際に生じる収縮力の最大値を測定した。
【0019】
また、この紡績糸を用いて、上記温水中に浸漬した際の収縮率を測定した。測定法は次の通りである。試料の片端に0.01cN/dtexの荷重を掛けて原糸長を測定し、その後荷重をかけたまま、それぞれの各温度の水中に浸漬した際の糸長を測定し、各水温での収縮率を算出した。結果を表1に示した。
【0020】
(比較例1)
ケン化度93モル%のポリビニルアルコールの33%水溶液を乾式紡糸して得られた水溶性フィラメントの3本合撚糸を作製した。合撚糸の繊度は200×3dtex、撚数は上撚/下撚=S200/Z300T/Mであった。この合撚糸を水温20℃から60℃まで変化させて、定長下で片端を固定し、もう一方の糸端は引張試験機のセンサー部に連結させ、温水中に浸漬した際に生じる収縮力の最大値を測定した。
【0021】
また、この合撚糸を用いて、実施例1と同様の方法で収縮率を算出した。結果を表1に示した。
【0022】
【表1】

【0023】
表1から、比較例1のポリビニルアルコールの合撚糸はかなり大きな収縮力および収縮率を示すが、実施例1の混紡糸はこれに比べて収縮力も収縮率も小さいものとなることを確認した。
【0024】
(実施例2)
実施例1で作製したポリビニルアルコール系水溶性ステープルと綿糸からなる混紡糸を用いて補強糸入りガムテープを作製した。紙巾は50mmであった。補強糸入りガムテープの製法は従来法と同様で、補強糸として上記混紡糸を10mm間隔で斜め格子状の織布をテープ素材でサンドイッチして接合した。テープ片面に粘着剤を塗布して補強糸入りガムテープとした。
【0025】
段ボール紙を50×250mmに切取り、作製した混紡糸補強ガムテープを150mm貼り合わせ、高湿度下(30℃、80%RH雰囲気下)で1日放置した場合における形態安定性を観察した。
【0026】
また、上記と同様に段ボールと貼り合わせたテープに水を噴霧して形態安定性を観察した。さらに、下記の温湿度条件に放置し、剥離強力を測定した。水噴霧は霧吹き容器にて20℃の水道水を噴霧した。水噴霧後30分間放置し、その後20℃、65%RHの雰囲気中で1日乾燥させたものを試料とした。剥離強力の測定は、定速引張試験機を使用した。つかみ間隔は200mm、引張速度は100mm/min.であった。測定結果を表2に示した。
【0027】
【表2】

【0028】
(比較例2)
比較例1で用いたポリビニルアルコール系フィラメント糸からなる合撚糸を実施例2と同様にして補強糸入りガムテープを作製し、実施例2と同様の試験を実施した。結果を表2に示した。
【0029】
表2に示す結果より、比較例2のポリビニルアルコール系フィラメント糸からなる補強糸入りガムテープは、高湿度下で合撚糸が収縮することで接着面が変形し、一部剥離するという不具合が条件によっては認められ、この条件下で放置した比較例2の補強糸入りガムテープは剥離強力も低下した。これに対し、実施例2のポリビニルアルコール系ステープルと綿糸で作製した混紡糸を補強糸とするガムテープは、高湿度下でも外観上の変形は認められず、また、水噴霧→乾燥過程での変形も軽微にとどまり、剥離強力の低下も微少であることを確認した。
【0030】
(実施例3)
実施例2および比較例2で作製した補強糸入りガムテープを再生可能な段ボールに貼り付け、再生時のパルプ離解性を観察したところ、両方のサンプルともに再生時のパルプの離解性は問題なく、分散性は良好であり、再生可能なパルプ叩解液が調製できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上紙と下紙の間に水溶性ステープルとセルロース系の天然繊維もしくはセルロース系の再生繊維ステープルから構成される混紡糸をタテ糸、ヨコ糸として配置するか、もしくは平織組織の織物を配し、上紙と下紙の貼り合わせ用接着剤として水溶性または水分散性の接着剤を用いて接合してガムテープ用の基材とし、ガムテープ基材の片面に再湿性接着剤層を設けたことを特徴とする補強糸入りガムテープ。

【公開番号】特開2009−235308(P2009−235308A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−85753(P2008−85753)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000134936)株式会社ニチビ (13)
【Fターム(参考)】