補強金物及びその取付構造
【課題】簡単に製造することができるとともに構造材を破損することなく耐震できる補強金物及びその取付構造を提供する。
【解決手段】土台2に取り付けられる第一片部11と、柱3に取り付けられる第二片部12とでL字状に形成されたチャンネル状部材13と、第一片部11の先端部と第二片部12の先端部間を連結する連結部材14とを備え、チャンネル状部材13は、ウェブ131と、2つのリブ132,133と、第一片部11、第二片部12及びリブ132,133とで形成される角隅部に円形の孔13Cを備え、第一片部11及び第二片部12は、それぞれ、長手方向に沿って設けられ、ボルトBを締結可能な複数の取付孔を備え、連結部材14は、ウェブ141と、2つのリブ142,143と、取付孔に合わせた位置に設けられた複数の連結取付孔とを備える。
【解決手段】土台2に取り付けられる第一片部11と、柱3に取り付けられる第二片部12とでL字状に形成されたチャンネル状部材13と、第一片部11の先端部と第二片部12の先端部間を連結する連結部材14とを備え、チャンネル状部材13は、ウェブ131と、2つのリブ132,133と、第一片部11、第二片部12及びリブ132,133とで形成される角隅部に円形の孔13Cを備え、第一片部11及び第二片部12は、それぞれ、長手方向に沿って設けられ、ボルトBを締結可能な複数の取付孔を備え、連結部材14は、ウェブ141と、2つのリブ142,143と、取付孔に合わせた位置に設けられた複数の連結取付孔とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補強金物及びその取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
軸組建物は、柱、梁、土台等の躯体を構成する構造材同士が互いに直角に接続された構造である。この軸組建物には、構造材が耐震補強されているものがある。
従来、軸組建物の耐震補強は、筋交いと耐震金物を用いる構造が一般的である。耐震金物は、平板状で、柱と梁又は土台と、筋交いとの接合部を覆うように取付けられ、接合部の接合離れや外れを抑制するために用いられ、耐震性は、主に、筋交いが負っている。
【0003】
一方、筋交いを設ける代わりに、柱と梁、あるいは、柱と土台とが直角に接続される角部(コーナー)に、三角形状の金具を取り付けて開口壁体の耐震強度を補強する補強金物が知られている(特許文献1)。
この特許文献1に記載の補強金物は、L状固定部と、このL状固定部の先端部の間を連結する連結部とを備えた構造であり、これらの部材は土台と柱との角部に取り付けられるように直角に形成されている。そして、補強金物は、鉄板からL状固定部と連結部を平面に展開した板材を切り取り、それらを折り曲げ、さらに溶接等することで構成される。また、L状固定部の両端部と連結部の両端部には、それぞれ1つのボルト孔と、位置決めに使用されるボルト孔より小さな1つの釘孔が形成されている。連結部は、L状固定部を介し、1つのボルト孔を用いて、土台または柱に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−278295公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1で示される従来例では、板材を折り曲げて直角に形成するため、L状固定部の直角三角形の直角が正確に形成しにくい。しかも、L状固定部の先端部に連結部の両端部を溶接固定するため、金具全体として剛構造となる。このため、地震等の揺れが建物に加わった場合、柱と梁、あるいは、柱と土台との接続部の補強にはなるが、柱そのものに大きな負荷が掛かり、柱の折損を生じる可能性がある。さらに、連結部は、L状固定部を介し、各端部につき1つのボルト孔を用いて固定されているので、柱が土台から抜けようとする力を抑えるには不十分である。ボルト孔に隣接して釘孔が設けられているが、この釘孔はあくまで位置決めのためのものであり、補強金具を固定するには十分ではない。
このため、柱と梁、あるいは、柱と土台、等の躯体を構成する構造材同士の接続部の補強を行いつつ、地震などの揺れに対して、多少のゆがみを許容する粘りのある補強金物が望まれている。
【0006】
本発明の目的は、簡単に製造することができるとともに構造材を破損することなく耐震できる補強金物及びその取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の補強金物は、それぞれ躯体を構成する第一の構造材と第二の構造材とが互いに直角に接続される軸組み建物に用いられる補強金物であって、前記第一の構造材に取り付けられる第一片部と前記第二の構造材に取り付けられる第二片部とでL字状に形成されたチャンネル状部材と、前記第一片部の先端部と前記第二片部の先端部との間を連結する連結部材とを備え、前記チャンネル状部材は、ウェブと、前記ウェブの長手方向に沿った両側部において前記ウェブに対して立ち上がり、かつ、互いに対向して配置される一対のリブとを有し、前記第一片部と前記第二片部との接続部分において前記ウェブと前記一対のリブとで形成される角隅部に円形の孔が形成され、前記第一片部及び前記第二片部には、それぞれ、固定手段が挿通可能とされ略同一径の複数の取付孔が長手方向に沿って形成され、前記連結部材は、連結ウェブと、前記連結ウェブの長手方向に沿った両側部に対して立ち上がり、かつ、互いに対向して配置される一対の連結リブとを備え、前記連結ウェブには前記取付孔に合わせた位置に設けられた複数の略同一径の連結取付孔が形成されることを特徴とする。
【0008】
この構成の本発明では、補強金物が、L字状に形成されたチャンネル状部材と、このチャンネル状部材の先端部間を連結する連結部材とを備えるので、この補強金物を第一の構造材と第二の構造材との角部に設置した場合、チャンネル状部材のみの場合に比べて大きな補強効果が得られる。
しかも、第一片部及び第二片部が、それぞれ、長手方向に沿って設けられた複数の略同一径の取付孔を備え、連結材部もこれらの取付孔に合わせた位置に複数の略同一径の連結取付孔を備えるので、これらの複数の取付孔に挿通される固定手段(例えば、ボルト)を用いて補強金物を第一の構造材や第二の構造材に固定する際に、第一の構造材及び第二の構造材のそれぞれに複数の位置で固定できる。したがって、構造材同士の接続部の補強をより確実かつ強固にすることができる。また、連結部材を複数の位置で固定できるため、地震による振動が加わった場合でも、固定手段が一度にはずれたり、弛んだりして、連結部材がはずれることを防止できる。
また、前記第一片部と前記第二片部との接続部分において前記ウェブと前記一対のリブとで形成される角隅部に円形の孔が形成される。この補強金物を第一の構造材と第二の構造材との角部に設置し、これらの構造材とともに補強金物に地震による振動が加わると、連結部分に応力が集中するが、この応力は円形の孔の半径方向に放射状、あるいは、周方向に沿って分散して伝達されることになり、所定の箇所での集中が回避される。そのため、構造材同士の接続部の補強を行いつつ、地震の揺れに対して、多少のゆがみを許容する粘りのあるものとなり、第一の構造材や第二の構造材の破損を防止することができる。
【0009】
本発明の補強金物の取付構造は、前記補強金物を、前記第一の構造材と前記第二の構造材に取り付ける取付構造であって、前記補強金物は、前記第一の構造材と前記第二の構造材の少なくとも一方を挟んで配置される第一の補強金物と第二の補強金物とを備え、前記第一の補強金物に形成される前記取付孔と第二の補強金物に形成される前記取付孔とは、それぞれ、前記挟まれた第一の構造材と前記第二の構造材の少なくとも一方の構造材中心線に対して異なる側にずれて配置されたことを特徴とする。
【0010】
この構成の発明では、第一の構造材と第二の構造材の少なくとも一方を挟んで配置される第一の補強金物と第二の補強金物とを、それぞれの補強金物の取付孔が構造材中心線に対して異なる側にずらして配置したので、これらの補強金物をボルトなどの固定手段で構造材に取り付けた際に、固定手段が長くても、固定手段同士が構造材内で干渉し合うことがない。そのため、長さ寸法の大きな固定手段を用いても、確実に複数の補強金物を構造材に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態にかかる補強金物が取り付けられた軸組建物の要部を示す正面図。
【図2】前記軸組建物の要部を示す平面図。
【図3】補強金物の斜視図。
【図4】補強金物の正面図。
【図5】チャンネル状部材の一部を破断した図。
【図6】連結部材の斜視図。
【図7】(A),(B)チャンネル状部材の製造方法を説明する図。
【図8】(A),(B)チャンネル状部材の製造方法を説明する図。
【図9】(A),(B)チャンネル状部材の製造方法を説明する図。
【図10】連結部材の展開図。
【図11】本発明の変形例にかかる補強金物が取り付けられた軸組建物の要部を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態を図面に基づいて参照して説明する。ここで、各実施形態において、同一構成部材には同一符号を付して説明を省略もしくは簡略にする。
図1から図10には本発明の実施形態にかかる補強金物が示されている。
図1及び図2には本実施形態にかかる補強金物が取り付けられた軸組建物の要部が示されている。
図1において、基礎1の上には複数本(図1では1本のみ示す)の角材からなる土台2が設けられ、この土台2の上には互いに所定間隔離れた複数本(図1では3本)の柱3が設けられ、これらの柱3の上には梁4が設けられている。
これらの土台2、柱3及び梁4は、それぞれ建物の建造物の主要構造体部分である躯体であり、本実施形態では、土台2と梁4とがそれぞれ第一の構造材を構成し、柱3が第二の構造材を構成する。
本実施形態では、土台2と柱3とは互いに直角に接続されており、この直角の入隅部分に補強金物10が取り付けられている。
【0013】
第一の構造材である土台2と、第二の構造材である柱3との直角の入隅部に取り付けられた補強金物10について説明する。
図1及び図2に示される通り、補強金物10は、土台2に固定される長尺状の第一片部11と、柱3に固定される長尺状の第二片部12とを有するチャンネル状部材13と、第一片部11と第二片部12の先端部間を連結する連結部材14と、を備えている。このチャンネル状部材13及び連結部材14は冷間圧延鋼板(JIS3141)を折り曲げることにより形成される。
【0014】
図3及び図4には補強金物10の詳細な構成が示されている。また、図5にはチャンネル状部材13の詳細な構造が示され、図6には連結部材14の詳細な構造が示されている。
図3から図5に示される通り、チャンネル状部材13の第一片部11と第二片部12とは、それぞれ、ウェブ131の長手方向に延びた折曲線C1に沿って互いに直角かつ互いに対向するよう折り曲げられた2つのリブ132、133を有する。そして、第一片部11と第二片部12とを区画し折曲線C1と直交する線N1に沿ってL字状に折り曲げられている。また、この折曲線C1上には、ウェブ131の全長に渡って溶接(溶融)を行った溶接部T1が設けられている。折曲線C1を溶接(溶融)し、溶接部T1を設けることによって、鋼板の折曲線C1の強度を大きくすることができる。なお、この溶接部T1は連続して形成するものでもよいが、間欠的に形成するものでもよい。そして、溶接部T1は金属部材同士を接合するための溶接手段、例えば、アーク溶接により形成される。
第一片部11のウェブ131は取付孔13Hに固定手段としてのボルトBが挿通され土台2の上面に固定される。第一片部11のウェブ131の先端部は、固定部134とされ、長手方向に沿って二つの取付孔13H1が形成されている。これらの取付孔13H1には、後述する連結部材14の連結取付孔14Hとともに固定部材としてのボルトBが挿通され、土台2に固定される。ボルトBとしてコーチスクリューボルト等が用いられる。
第一片部11のリブ132,133はウェブ131及び土台2の上面に対して立ち上がって配置されている。リブ132の長手方向に沿った中心線WCは土台2の長手方向に沿った中心線CCと平面視で一致する(図2及び図3参照)。なお、隣り合う補強金物10では、ウェブ131が設けられる向きが土台2の中心線CCを挟んで相違する(図2参照)。
【0015】
第二片部12のウェブ131は取付孔13HにそれぞれボルトBが挿通され柱3の側面に固定される。第二片部12のウェブ131の先端部は、固定部134とされ、長手方向に沿って二つの取付孔13H1が形成されている。この取付孔13H1には、後述する連結部材14の連結取付孔14Hとともに固定部材としてのボルトBが挿通され、柱3に固定される。なお、二つの取付孔13H1の内径寸法は同じであるが、製造上の誤差による寸法の相違は同一として扱われる。
第二片部12のリブ132,133はウェブ131及び柱3の側面に対して立ち上がって配置されている。リブ132の長手方向に沿った中心線WCは柱3の長手方向に沿った中心線CCと側面視で一致する(図3参照)。
【0016】
第一片部11のリブ132,133の一端部には切欠縁辺部13Aが形成され、第二片部12のリブ132,133の一端部には切欠縁辺部13Aが形成され、同一リブに形成された一対の切欠縁辺部13Aは互いに対向している。これらの切欠縁辺部13Aは互いに当接した状態であってもよいが、隙間がある状態でもよい(図3及び図4では切欠縁辺部13Aが互いに当接された状態が示されている)。
一対の切欠縁辺部13Aは、後述するように、折曲線C1を始点とし一方の長辺に向かって拡開するV字型の切欠部13B(図7参照)を構成する。そして、切欠部13Bの中心線、つまり、一対の切欠縁辺部13Aの間の中間位置を示す線と折曲線C1との交差位置に円形の孔13Cが切欠部13Bと連続して形成されている。
なお、符号T2は切欠縁辺部13A同士を接合する溶接部である。この溶接部T2は第一片部11の一面であって、孔13Cを避けるように設けられている。
【0017】
図6に示される通り、連結部材14は、連結ウェブとしてのウェブ141の長手方向に延びた折曲線C2に沿って互いに直角かつ互いに対向するよう折り曲げられた2つの連結リブとしてのリブ142、143を有する。このリブ142,143は、ウェブ141の両先端部分には設けられておらず、ウェブ141の両先端部分には、リブ142,143と近接する方向、かつ互いに近接する方向に折り曲げられた固定部144が設けられている。この固定部144には、前述の固定部134に設けられた取付孔13H1の位置に合わせて、それぞれ2つの連結取付孔14Hが設けられている。連結取付孔14Hは取付孔13H1と同じ内径寸法である。
また、リブ142,143の辺縁部と固定部144の辺縁部とが交差する位置には円弧状の孔14Cが形成されている。
【0018】
補強金物10は、補強する構造材との関係で設定される。例えば、構造材が105mm×105mmの角材からなる場合では、チャンネル状部材13の第一片部11及び第二片部12の長さは370mmであり、そのウェブ131の幅寸法(長手方向と直交する方向の寸法)は45mmであり、リブ132,133の高さ寸法(長手方向と直交する方向の寸法)は30mmである。
ウェブ141は、チャンネル状部材13の両端部を結ぶ対角線に対し平行に取り付けられることが好ましく、ウェブ141の長さ及び固定部144の長さは、チャンネル状部材13の第一片部11及び第二片部12の長さによって決まる。チャンネル状部材13が上記の寸法の場合には、連結部材14のウェブ141の長さは407.3mmであり、固定部144の長さは82mmである。ウェブ141及び固定部144の幅寸法(長手方向と直交する方向の寸法)は40.4mmであり、リブ142,143の高さ寸法(長手方向と直交する方向の寸法)は30mmである。このとき、ウェブ141と固定部144との角度は45度である。二つの取付孔13H1は、例えば、14mmである。
【0019】
図1に示される通り、梁4と柱3とへの補強金物10の取付構造は、土台2と柱3とへの補強金物10と同じである。
つまり、補強金物10は、梁4に固定される第一片部11と、柱3に固定される第二片部12とを有するチャンネル状部材13を備えており、第一片部11と第二片部12の先端部間に連結部材14が設けられている。
第一片部11と第二片部12とは、それぞれ、ウェブ131と2つのリブ132,133を有し、かつ、L字状に形成されている。
第一片部11のウェブ131は梁4の下面に固定され、第一片部11のリブ132,133はウェブ131及び梁4の下面に対して立ち上がって配置されている。リブ132の長手方向に沿った中心線は梁4の長手方向に沿った中心線と一致する。
第二片部12のリブ132,133はウェブ131及び柱3の側面に対して立ち上がって配置されている。リブ132の長手方向に沿った中心線は柱3の長手方向に沿った中心線と一致する。
【0020】
次に、本実施形態の補強金物10の製造方法について、図7から図10に基づいて説明する。まず、チャンネル状部材13の製造方法について説明する。
[短冊状平板の加工工程]
金属製の板材をミルシートにて板厚、数量等を確認した後、この板材を切断して短冊状平板とする。この短冊状平板の寸法を検査する。切断された短冊状平板130は、長手方向の寸法が740mm、長手方向と直交する幅寸法が105mm、厚さ寸法が4.3mmである。この設定通りに厚さ寸法、長さ寸法等を有するかを、ガバリスケール(測定治具)にて検査する。
【0021】
[孔明加工工程]
そして、図7に示される通り、検査済みの短冊状平板130に、V字型の切欠部13B、円形の孔13C、及び取付孔13H、13H1を同時に形成する。
この工程にあたり、まず、短冊状平板130の長手方向と直交する幅方向の中間位置で長手方向に沿って2本の折曲線C1を仮想線として設定する。この仮想線は、実際の線を短冊状平板130に刻設等で形成してもよい。折曲線C1は互いに対向する長辺の間の寸法の3等分の位置である。そして、短冊状平板130にV字型の切欠部13Bを、折曲線C1を始点とし互いに対向する長辺のうち一方の長辺に向かって拡開するように形成する。円形の孔13Cは切欠部13Bと折曲線C1との交差位置に切欠部13Bの基部と連続して形成される。
例えば、取付孔13H,13H1の直径(内径)は14mmである。円形の孔13Cの直径は8.6mmである。ここで、円形の孔13Cは真円が好ましく、その直径は短冊状平板130の厚さ寸法の2倍を基準として設定される。切欠部13BのV字は、90°の角度を持って設定され、かつ、その基端縁は折曲線C1の線上に位置する。円形の孔13Cの円中心は、切欠部13Bの基端縁と一致する。
また、取付孔13H1は、中心が短冊状平板130の長手方向の両端部からそれぞれ17mmの位置と55mmの位置に形成され、取付孔13H1間は38mmである。
孔明工程にあたっては、パンチングマシン、その他の適宜な装置を用いる。
【0022】
[ベンダー加工工程]
所定の位置に孔明加工が実施されたか検査した後、ベンダー加工工程を実施する。
切欠部13B、円形の孔13C、取付孔13H,13H1が正しい位置、径、並びに大きさに形成されたことをガバリスケール(測定器具)で確認した後、短冊状平板130を折り曲げてL字状のチャンネル状部材13を形成する。
つまり、図7に示される通り、短冊状平板130を1つの折曲線C1に沿ってベンダーマシン(図示せず)等を用いてL字状に折り曲げて、リブ132を形成し、その後、残りの1つの折曲線C1に沿って、短冊状平板130をL字状に折り曲げてリブ133を長手方向に沿って形成する。これにより、ウェブ131,リブ132,133が長手方向に沿って形成された断面コ字状のチャンネル状部材13が形成される(図8参照)。
なお、短冊状平板130を折り曲げる際に、その折曲線C1やこの線に直交する線N1を含む部位に応力が集中するが、この応力は円形の孔13Cによって分散される。つまり、応力は円形の孔13Cの半径方向に放射状、あるいは、周方向に沿って分散して伝達されることになり、所定の箇所での集中が回避される。
【0023】
[仮組溶接工程]
図9に示される通り、チャンネル状部材13を角度定規やスケール等で検査した後、折曲線C1と直交する線分であって切欠部13Bと孔13Cとの中心を通る線N1(図5参照)に沿ってチャンネル状部材13をL字状に折り曲げて第一片部11と第二片部12とを形成する。この際、切欠部13Bを構成する各切欠縁辺部13Aを対向させた状態とし、この対向部分の一面、ウェブ131が配置された側の面を溶接する。
さらに、第一片部11のウェブ131と第二片部12のウェブ131との接続部分を全長に渡って、折曲線C1上(すなわち、ウェブ131とリブ132の近接部分及びウェブ131とリブ133の近接部分)を溶接する。これにより、所定の厚さ寸法の溶接部T1が形成される。
【0024】
次に、連結部材14の製造方法について説明する。
[短冊状平板の加工工程]
図10に示される通り、検査済みの短冊状平板140に、リブ142,143の辺縁部14Aと固定部144の辺縁部144Aを構成する矩形の切欠部14B、円形の孔14C、及び連結取付孔14Hを同時に形成する。この形成にあたっては、パンチングマシン、その他の適宜な装置を用いる。
【0025】
[孔明加工工程]
そして、短冊状平板140に、2本の折曲線C2を仮想線として長手方向に沿って設定する。折曲線C2は互いに対向する長辺の間の寸法の3等分の位置である。一辺がこの折曲線C2上にある矩形の切欠部14Bを短冊状平板140の4隅にそれぞれ形成する。切欠部14Bの形成と同時に円形の孔14Cを形成する。この円形の孔14Cは切欠部14Bと折曲線C2との交差位置に切欠部14Bの基部と連続して形成する。
また、連結取付孔14Hは、中心が短冊状平板140の長手方向の両端部からそれぞれ17mmの位置と55mmの位置に形成され、連結取付孔14H間は38mmである。
【0026】
[ベンダー加工工程]
切欠部14Bと円形の孔14Cとが正しい位置に形成されたことを確認した後、短冊状平板140を折り曲げてウェブ141、及びリブ142,143を形成する。つまり、図10に示される通り、短冊状平板140を1つの折曲線C2に沿ってベンダーマシン(図示せず)等を用いてL状に折り曲げてウェブ141,リブ142を形成し、その後、残り1つの折曲線C2に沿って短冊状平板140をL字状に折り曲げてウェブ141とリブ143とを長手方向に沿って形成する。さらに、ウェブ141の短手方向に対向する円形の孔14Cを結ぶ仮想線N2に沿って、切欠部14Bにより形成されたウェブ141の辺縁部144Aがリブ142,143の辺縁部14Aに近接するように、ウェブ141を折り曲げ、固定部144を形成する。
連結部材14では、溶接工程は必ずしも必要ないが、ウェブ141の全長に渡って、折曲線C2上(すなわち、ウェブ141とリブ142の近接部分及びウェブ141とリブ143の近接部分)を溶接してもよい。
なお、必要に応じてチャンネル状部材13及び連結部材14に防錆処理をする。
【0027】
以上のように製造されたチャンネル状部材13及び連結部材14を軸組建物に取り付ける。
まず、土台2と柱3との入隅部分、並びに、梁4と柱3の入隅部分にチャンネル状部材13を配置するとともに、取付孔13HにおいてボルトBやねじ、ビスなどで固定する。チャンネル状部材13の設置にあたり、土台2、柱3及び梁4に、それぞれ長手方向の中心線に沿って線を引いておき、この線にチャンネル状部材13のリブ132の中心線を合わせる。
次に、固定したチャンネル状部材13の固定部134に、連結部材14の固定部144を合わせ、連結取付孔14Hから取付孔13H1にボルトBやねじ、ビスを挿通して、連結部材14、チャンネル状部材13を一体として梁4及び柱3に固定する。連結取付孔14H及び取付孔13H1は、補強金物10の両端部に2つずつ、合計4つ設けられているので、連結部材14は、チャンネル状部材13を介して、合計4つのボルトB等で軸組み建物に取り付けられることになる。
【0028】
補強金物10が設置された建物に地震が発生した際に、土台2と柱3に対して梁4が相対的に傾くが、土台2、柱3及び梁4にかかる力は補強金物10で受けることになる。補強金物10は、チャンネル状部材13の他に、連結部材14を備えているので、土台2、柱3及び梁4をより強固に補強できる。
補強金物10ではチャンネル状部材13の折り曲げられた部位に応力が集中するが、この応力は円形の孔13Cのほぼ全周に分散して伝達され、所定の箇所での応力集中がなくなる。
地震等によって、土台2に対して柱3が傾いて第一片部11と第二片部12とが変位した場合、これらの第一片部11と第二片部12とが取付孔13Hだけでなくそれぞれ2つずつある取付孔13H1に挿通されるボルトBを介して接続されているため、土台2から柱3が外れることがない。
【0029】
従って、本実施形態では次の作用効果を奏することができる。
(1)補強金物10は、土台2又は梁4に固定される第一片部11と、柱3に固定される第二片部12とでL字状に形成されたチャンネル状部材13と、第一片部11の先端部と第二片部12の先端部間を連結する連結部材14とを備え、チャンネル状部材13は、ウェブ131と、ウェブ131の両端部において、ウェブ131に対して立ち上がり、かつ、互いに対向して配置される2つのリブ132,133と、第一片部11、第二片部12及びリブ132,133とで形成される角隅部に円形の孔13Cを備え、第一片部11及び第二片部12は、それぞれ、長手方向に沿って設けられ、ボルトBを挿通可能な2つの取付孔13H1を備え、連結部材14は、ウェブ141と、ウェブ141に対して立ち上がり、かつ、互いに対向して配置される2つのリブ142,143と、取付孔13H1に合わせた位置に設けられた合計4つの連結取付孔14Hとを備える構成である。
本実施形態では4つの連結取付孔14Hによって、連結部材14を、チャンネル状部材13を介して、土台2又は梁4と柱3にそれぞれ2箇所、合計4箇所で固定することができる。そのため、この補強金物10を土台2又は梁4と柱3との角部に設置した場合、チャンネル状部材13のみの場合に比べて大きな補強効果が得られる。また、チャンネル状部材13の第一片部11と第二片部12のそれぞれ2箇所、合計4箇所にボルトBを挿通することで、連結部材14を固定できるため、地震による振動が加わった場合でも、4つのボルトBが一度にはずれたり、弛んだりして、連結部材14がはずれることを防止できる。
【0030】
(2)補強金物10が第一片部11と第二片部12との連結部分とリブ132,133とで形成される角隅部に円形の孔13Cを備える。土台2や梁4と柱3との入隅角部に設置された補強金物10に地震による振動が加わると、チャンネル状部材13の折り曲げられた部位に応力が集中するが、この応力集中を円形の孔13Cで分散することになるので、構造材同士の接続部の補強を行いつつ、地震等の揺れに対して、多少のゆがみを許容する粘りのあるものとなり、土台2、柱3、梁4の破損を防止することができる。
(3)第一片部11の一方のウェブ131を土台2又は梁4に取り付け、第一片部11の他方のリブ132,133を土台2又は梁4に対して立ち上げて配置し、第二片部12の一方のウェブ131を柱3に取り付け、第二片部12の他方のリブ132,133を柱3に対して立ち上げて配置し、第一片部11と第二片部12の立ち上げたリブ132,133の長手方向に沿った中心線WCを、土台2又は梁4の中心線CCや梁4の中心線と一致させた。従って、地震によって、第一片部11と第二片部12の立ち上がったリブ132,133に力がかかるが、この力が土台2、梁4や柱3の中心線CCに沿って伝達されるので、耐震補強が確実に行われる。
【0031】
(4)短冊状平板130を折曲線C1に沿ってL字状に折り曲げ、これを折曲線と直交する線に沿ってさらに折り曲げる際に、折曲線やこの線に直交する線を含む部位に応力が集中するが、この応力集中が円形の孔13Cで分散され、短冊状平板130に皺やひび割れ等が生じることを防止できる。さらに、本実施形態では、短冊状平板130を正確に直角に折り曲げることができるので、補強金物を簡単に製造することができる。
(5)チャンネル状部材13を、短冊状平板130を折り曲げることにより製造したので、第一片部11と第二片部12が一体として構成され、接合不良などによる強度の低下が生じることがない。
【0032】
(6)連結部材14を、短冊状平板140を折り曲げることにより製造したので、接合不良などによる強度の低下が生じることがない。
(7)補強金物10の切欠部13Bを構成する各切欠縁辺部13Aが所定寸法離れた状態で対向した構成とすると、地震によって切欠縁辺部13A同士を接合する溶接部T2が剥がれた場合、互いに対向する切欠縁辺部13A同士が当接しない程度の小さな地震では、第一片部11と第二片部12とが接続されているため、土台2、基礎1と柱3の変位に伴って柔軟に変位することで、土台2や梁4から柱3が外れるということを回避することができる。しかも、大きな地震に伴って、切欠縁辺部13A同士が当接する場合、第一片部11と第二片部12との相対的な変位が規制されることになり、耐震効果を大きなものにできる。
【0033】
(8)折曲線C1に沿って、溶接部T1を設けたので、鋼板の強度を大きなものとすることができ、その結果、補強金物10の補強効果を大きなものにできる。つまり、溶接部T1の厚みにより、断面積が大きくなったことに加え、溶接による鋼板の急速な加熱に伴って金属組織が強化されるから、補強金物10の強度が大きなものとなる。特に、溶接部T1は力のかかるリブとウェブとの接続部分に形成されるので、より補強効果が大きなものとなる。
(9)溶接部T2はリブ132および133の片面に設けられているので、リブ132および133の他面に溶接による出っ張りがなくなり、外観が良好となる。
(10)ウェブ131とリブ132,133によってチャンネル状部材13を断面コ字状としたから、補強金物10での補強効果を大きなものにできる。
(11)連結部材14がリブ142,143を備え、ウェブ141とリブ142,143が断面コ字状となるよう形成したので、補強金物10での補強効果をより大きくすることができる。
【0034】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的及び効果を達成できる範囲内での変形や改良が、本発明の内容に含まれるものであることはいうまでもない。
例えば、前記実施形態では、躯体を構成する第一の構造材として、土台2又は梁4とし、同じく躯体を構成する第二の構造材として柱3として、鉛直面内での補強を行う補強金物10を説明したが、本発明を、水平面内での補強を行う補強金物としてもよい。つまり、図11に示される通り、躯体を構成する第一の構造材と第二の構造材とを、水平面内で互いに直交して接続される土台2としてもよく、あるいは、水平面内で互いに直交して接続される梁4としてもよい。
図11に示される通り、基礎1の上には複数本の角材からなる土台2が設けられている。これらの土台2は互いに直交配置されており、本発明の補強金物10はこれらの土台2の入隅に設置されている。
また、取付孔13H1を第一片部11および第二片部12にそれぞれ2つずつ形成し、取付孔13H1に合わせた連結取付孔14Hをそれぞれ2つずつ形成したが、本発明では、3つ以上を直列に配置する構成としてもよい。
そして、折曲線C1に沿って溶接(溶融)を行わず、溶接部T1を設けない構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、柱、梁、土台等の躯体を構成する構造材同士が互いに直角に接続された軸組建物に利用することができる。
【符号の説明】
【0036】
1…基礎、2…土台(第一の構造材)、3…柱(第二の構造材)、4…梁、10…補強金物、11…第一片部、12…第二片部、13…チャンネル状部材、13C…円形の孔、13H1…取付孔、14…連結部材、14H…連結取付孔、131…ウェブ、132,133…リブ、141…連結ウェブ、142,143…連結リブ、CC…中心線(構造材中心線)、WC…リブ中心線
【技術分野】
【0001】
本発明は、補強金物及びその取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
軸組建物は、柱、梁、土台等の躯体を構成する構造材同士が互いに直角に接続された構造である。この軸組建物には、構造材が耐震補強されているものがある。
従来、軸組建物の耐震補強は、筋交いと耐震金物を用いる構造が一般的である。耐震金物は、平板状で、柱と梁又は土台と、筋交いとの接合部を覆うように取付けられ、接合部の接合離れや外れを抑制するために用いられ、耐震性は、主に、筋交いが負っている。
【0003】
一方、筋交いを設ける代わりに、柱と梁、あるいは、柱と土台とが直角に接続される角部(コーナー)に、三角形状の金具を取り付けて開口壁体の耐震強度を補強する補強金物が知られている(特許文献1)。
この特許文献1に記載の補強金物は、L状固定部と、このL状固定部の先端部の間を連結する連結部とを備えた構造であり、これらの部材は土台と柱との角部に取り付けられるように直角に形成されている。そして、補強金物は、鉄板からL状固定部と連結部を平面に展開した板材を切り取り、それらを折り曲げ、さらに溶接等することで構成される。また、L状固定部の両端部と連結部の両端部には、それぞれ1つのボルト孔と、位置決めに使用されるボルト孔より小さな1つの釘孔が形成されている。連結部は、L状固定部を介し、1つのボルト孔を用いて、土台または柱に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−278295公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1で示される従来例では、板材を折り曲げて直角に形成するため、L状固定部の直角三角形の直角が正確に形成しにくい。しかも、L状固定部の先端部に連結部の両端部を溶接固定するため、金具全体として剛構造となる。このため、地震等の揺れが建物に加わった場合、柱と梁、あるいは、柱と土台との接続部の補強にはなるが、柱そのものに大きな負荷が掛かり、柱の折損を生じる可能性がある。さらに、連結部は、L状固定部を介し、各端部につき1つのボルト孔を用いて固定されているので、柱が土台から抜けようとする力を抑えるには不十分である。ボルト孔に隣接して釘孔が設けられているが、この釘孔はあくまで位置決めのためのものであり、補強金具を固定するには十分ではない。
このため、柱と梁、あるいは、柱と土台、等の躯体を構成する構造材同士の接続部の補強を行いつつ、地震などの揺れに対して、多少のゆがみを許容する粘りのある補強金物が望まれている。
【0006】
本発明の目的は、簡単に製造することができるとともに構造材を破損することなく耐震できる補強金物及びその取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の補強金物は、それぞれ躯体を構成する第一の構造材と第二の構造材とが互いに直角に接続される軸組み建物に用いられる補強金物であって、前記第一の構造材に取り付けられる第一片部と前記第二の構造材に取り付けられる第二片部とでL字状に形成されたチャンネル状部材と、前記第一片部の先端部と前記第二片部の先端部との間を連結する連結部材とを備え、前記チャンネル状部材は、ウェブと、前記ウェブの長手方向に沿った両側部において前記ウェブに対して立ち上がり、かつ、互いに対向して配置される一対のリブとを有し、前記第一片部と前記第二片部との接続部分において前記ウェブと前記一対のリブとで形成される角隅部に円形の孔が形成され、前記第一片部及び前記第二片部には、それぞれ、固定手段が挿通可能とされ略同一径の複数の取付孔が長手方向に沿って形成され、前記連結部材は、連結ウェブと、前記連結ウェブの長手方向に沿った両側部に対して立ち上がり、かつ、互いに対向して配置される一対の連結リブとを備え、前記連結ウェブには前記取付孔に合わせた位置に設けられた複数の略同一径の連結取付孔が形成されることを特徴とする。
【0008】
この構成の本発明では、補強金物が、L字状に形成されたチャンネル状部材と、このチャンネル状部材の先端部間を連結する連結部材とを備えるので、この補強金物を第一の構造材と第二の構造材との角部に設置した場合、チャンネル状部材のみの場合に比べて大きな補強効果が得られる。
しかも、第一片部及び第二片部が、それぞれ、長手方向に沿って設けられた複数の略同一径の取付孔を備え、連結材部もこれらの取付孔に合わせた位置に複数の略同一径の連結取付孔を備えるので、これらの複数の取付孔に挿通される固定手段(例えば、ボルト)を用いて補強金物を第一の構造材や第二の構造材に固定する際に、第一の構造材及び第二の構造材のそれぞれに複数の位置で固定できる。したがって、構造材同士の接続部の補強をより確実かつ強固にすることができる。また、連結部材を複数の位置で固定できるため、地震による振動が加わった場合でも、固定手段が一度にはずれたり、弛んだりして、連結部材がはずれることを防止できる。
また、前記第一片部と前記第二片部との接続部分において前記ウェブと前記一対のリブとで形成される角隅部に円形の孔が形成される。この補強金物を第一の構造材と第二の構造材との角部に設置し、これらの構造材とともに補強金物に地震による振動が加わると、連結部分に応力が集中するが、この応力は円形の孔の半径方向に放射状、あるいは、周方向に沿って分散して伝達されることになり、所定の箇所での集中が回避される。そのため、構造材同士の接続部の補強を行いつつ、地震の揺れに対して、多少のゆがみを許容する粘りのあるものとなり、第一の構造材や第二の構造材の破損を防止することができる。
【0009】
本発明の補強金物の取付構造は、前記補強金物を、前記第一の構造材と前記第二の構造材に取り付ける取付構造であって、前記補強金物は、前記第一の構造材と前記第二の構造材の少なくとも一方を挟んで配置される第一の補強金物と第二の補強金物とを備え、前記第一の補強金物に形成される前記取付孔と第二の補強金物に形成される前記取付孔とは、それぞれ、前記挟まれた第一の構造材と前記第二の構造材の少なくとも一方の構造材中心線に対して異なる側にずれて配置されたことを特徴とする。
【0010】
この構成の発明では、第一の構造材と第二の構造材の少なくとも一方を挟んで配置される第一の補強金物と第二の補強金物とを、それぞれの補強金物の取付孔が構造材中心線に対して異なる側にずらして配置したので、これらの補強金物をボルトなどの固定手段で構造材に取り付けた際に、固定手段が長くても、固定手段同士が構造材内で干渉し合うことがない。そのため、長さ寸法の大きな固定手段を用いても、確実に複数の補強金物を構造材に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態にかかる補強金物が取り付けられた軸組建物の要部を示す正面図。
【図2】前記軸組建物の要部を示す平面図。
【図3】補強金物の斜視図。
【図4】補強金物の正面図。
【図5】チャンネル状部材の一部を破断した図。
【図6】連結部材の斜視図。
【図7】(A),(B)チャンネル状部材の製造方法を説明する図。
【図8】(A),(B)チャンネル状部材の製造方法を説明する図。
【図9】(A),(B)チャンネル状部材の製造方法を説明する図。
【図10】連結部材の展開図。
【図11】本発明の変形例にかかる補強金物が取り付けられた軸組建物の要部を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態を図面に基づいて参照して説明する。ここで、各実施形態において、同一構成部材には同一符号を付して説明を省略もしくは簡略にする。
図1から図10には本発明の実施形態にかかる補強金物が示されている。
図1及び図2には本実施形態にかかる補強金物が取り付けられた軸組建物の要部が示されている。
図1において、基礎1の上には複数本(図1では1本のみ示す)の角材からなる土台2が設けられ、この土台2の上には互いに所定間隔離れた複数本(図1では3本)の柱3が設けられ、これらの柱3の上には梁4が設けられている。
これらの土台2、柱3及び梁4は、それぞれ建物の建造物の主要構造体部分である躯体であり、本実施形態では、土台2と梁4とがそれぞれ第一の構造材を構成し、柱3が第二の構造材を構成する。
本実施形態では、土台2と柱3とは互いに直角に接続されており、この直角の入隅部分に補強金物10が取り付けられている。
【0013】
第一の構造材である土台2と、第二の構造材である柱3との直角の入隅部に取り付けられた補強金物10について説明する。
図1及び図2に示される通り、補強金物10は、土台2に固定される長尺状の第一片部11と、柱3に固定される長尺状の第二片部12とを有するチャンネル状部材13と、第一片部11と第二片部12の先端部間を連結する連結部材14と、を備えている。このチャンネル状部材13及び連結部材14は冷間圧延鋼板(JIS3141)を折り曲げることにより形成される。
【0014】
図3及び図4には補強金物10の詳細な構成が示されている。また、図5にはチャンネル状部材13の詳細な構造が示され、図6には連結部材14の詳細な構造が示されている。
図3から図5に示される通り、チャンネル状部材13の第一片部11と第二片部12とは、それぞれ、ウェブ131の長手方向に延びた折曲線C1に沿って互いに直角かつ互いに対向するよう折り曲げられた2つのリブ132、133を有する。そして、第一片部11と第二片部12とを区画し折曲線C1と直交する線N1に沿ってL字状に折り曲げられている。また、この折曲線C1上には、ウェブ131の全長に渡って溶接(溶融)を行った溶接部T1が設けられている。折曲線C1を溶接(溶融)し、溶接部T1を設けることによって、鋼板の折曲線C1の強度を大きくすることができる。なお、この溶接部T1は連続して形成するものでもよいが、間欠的に形成するものでもよい。そして、溶接部T1は金属部材同士を接合するための溶接手段、例えば、アーク溶接により形成される。
第一片部11のウェブ131は取付孔13Hに固定手段としてのボルトBが挿通され土台2の上面に固定される。第一片部11のウェブ131の先端部は、固定部134とされ、長手方向に沿って二つの取付孔13H1が形成されている。これらの取付孔13H1には、後述する連結部材14の連結取付孔14Hとともに固定部材としてのボルトBが挿通され、土台2に固定される。ボルトBとしてコーチスクリューボルト等が用いられる。
第一片部11のリブ132,133はウェブ131及び土台2の上面に対して立ち上がって配置されている。リブ132の長手方向に沿った中心線WCは土台2の長手方向に沿った中心線CCと平面視で一致する(図2及び図3参照)。なお、隣り合う補強金物10では、ウェブ131が設けられる向きが土台2の中心線CCを挟んで相違する(図2参照)。
【0015】
第二片部12のウェブ131は取付孔13HにそれぞれボルトBが挿通され柱3の側面に固定される。第二片部12のウェブ131の先端部は、固定部134とされ、長手方向に沿って二つの取付孔13H1が形成されている。この取付孔13H1には、後述する連結部材14の連結取付孔14Hとともに固定部材としてのボルトBが挿通され、柱3に固定される。なお、二つの取付孔13H1の内径寸法は同じであるが、製造上の誤差による寸法の相違は同一として扱われる。
第二片部12のリブ132,133はウェブ131及び柱3の側面に対して立ち上がって配置されている。リブ132の長手方向に沿った中心線WCは柱3の長手方向に沿った中心線CCと側面視で一致する(図3参照)。
【0016】
第一片部11のリブ132,133の一端部には切欠縁辺部13Aが形成され、第二片部12のリブ132,133の一端部には切欠縁辺部13Aが形成され、同一リブに形成された一対の切欠縁辺部13Aは互いに対向している。これらの切欠縁辺部13Aは互いに当接した状態であってもよいが、隙間がある状態でもよい(図3及び図4では切欠縁辺部13Aが互いに当接された状態が示されている)。
一対の切欠縁辺部13Aは、後述するように、折曲線C1を始点とし一方の長辺に向かって拡開するV字型の切欠部13B(図7参照)を構成する。そして、切欠部13Bの中心線、つまり、一対の切欠縁辺部13Aの間の中間位置を示す線と折曲線C1との交差位置に円形の孔13Cが切欠部13Bと連続して形成されている。
なお、符号T2は切欠縁辺部13A同士を接合する溶接部である。この溶接部T2は第一片部11の一面であって、孔13Cを避けるように設けられている。
【0017】
図6に示される通り、連結部材14は、連結ウェブとしてのウェブ141の長手方向に延びた折曲線C2に沿って互いに直角かつ互いに対向するよう折り曲げられた2つの連結リブとしてのリブ142、143を有する。このリブ142,143は、ウェブ141の両先端部分には設けられておらず、ウェブ141の両先端部分には、リブ142,143と近接する方向、かつ互いに近接する方向に折り曲げられた固定部144が設けられている。この固定部144には、前述の固定部134に設けられた取付孔13H1の位置に合わせて、それぞれ2つの連結取付孔14Hが設けられている。連結取付孔14Hは取付孔13H1と同じ内径寸法である。
また、リブ142,143の辺縁部と固定部144の辺縁部とが交差する位置には円弧状の孔14Cが形成されている。
【0018】
補強金物10は、補強する構造材との関係で設定される。例えば、構造材が105mm×105mmの角材からなる場合では、チャンネル状部材13の第一片部11及び第二片部12の長さは370mmであり、そのウェブ131の幅寸法(長手方向と直交する方向の寸法)は45mmであり、リブ132,133の高さ寸法(長手方向と直交する方向の寸法)は30mmである。
ウェブ141は、チャンネル状部材13の両端部を結ぶ対角線に対し平行に取り付けられることが好ましく、ウェブ141の長さ及び固定部144の長さは、チャンネル状部材13の第一片部11及び第二片部12の長さによって決まる。チャンネル状部材13が上記の寸法の場合には、連結部材14のウェブ141の長さは407.3mmであり、固定部144の長さは82mmである。ウェブ141及び固定部144の幅寸法(長手方向と直交する方向の寸法)は40.4mmであり、リブ142,143の高さ寸法(長手方向と直交する方向の寸法)は30mmである。このとき、ウェブ141と固定部144との角度は45度である。二つの取付孔13H1は、例えば、14mmである。
【0019】
図1に示される通り、梁4と柱3とへの補強金物10の取付構造は、土台2と柱3とへの補強金物10と同じである。
つまり、補強金物10は、梁4に固定される第一片部11と、柱3に固定される第二片部12とを有するチャンネル状部材13を備えており、第一片部11と第二片部12の先端部間に連結部材14が設けられている。
第一片部11と第二片部12とは、それぞれ、ウェブ131と2つのリブ132,133を有し、かつ、L字状に形成されている。
第一片部11のウェブ131は梁4の下面に固定され、第一片部11のリブ132,133はウェブ131及び梁4の下面に対して立ち上がって配置されている。リブ132の長手方向に沿った中心線は梁4の長手方向に沿った中心線と一致する。
第二片部12のリブ132,133はウェブ131及び柱3の側面に対して立ち上がって配置されている。リブ132の長手方向に沿った中心線は柱3の長手方向に沿った中心線と一致する。
【0020】
次に、本実施形態の補強金物10の製造方法について、図7から図10に基づいて説明する。まず、チャンネル状部材13の製造方法について説明する。
[短冊状平板の加工工程]
金属製の板材をミルシートにて板厚、数量等を確認した後、この板材を切断して短冊状平板とする。この短冊状平板の寸法を検査する。切断された短冊状平板130は、長手方向の寸法が740mm、長手方向と直交する幅寸法が105mm、厚さ寸法が4.3mmである。この設定通りに厚さ寸法、長さ寸法等を有するかを、ガバリスケール(測定治具)にて検査する。
【0021】
[孔明加工工程]
そして、図7に示される通り、検査済みの短冊状平板130に、V字型の切欠部13B、円形の孔13C、及び取付孔13H、13H1を同時に形成する。
この工程にあたり、まず、短冊状平板130の長手方向と直交する幅方向の中間位置で長手方向に沿って2本の折曲線C1を仮想線として設定する。この仮想線は、実際の線を短冊状平板130に刻設等で形成してもよい。折曲線C1は互いに対向する長辺の間の寸法の3等分の位置である。そして、短冊状平板130にV字型の切欠部13Bを、折曲線C1を始点とし互いに対向する長辺のうち一方の長辺に向かって拡開するように形成する。円形の孔13Cは切欠部13Bと折曲線C1との交差位置に切欠部13Bの基部と連続して形成される。
例えば、取付孔13H,13H1の直径(内径)は14mmである。円形の孔13Cの直径は8.6mmである。ここで、円形の孔13Cは真円が好ましく、その直径は短冊状平板130の厚さ寸法の2倍を基準として設定される。切欠部13BのV字は、90°の角度を持って設定され、かつ、その基端縁は折曲線C1の線上に位置する。円形の孔13Cの円中心は、切欠部13Bの基端縁と一致する。
また、取付孔13H1は、中心が短冊状平板130の長手方向の両端部からそれぞれ17mmの位置と55mmの位置に形成され、取付孔13H1間は38mmである。
孔明工程にあたっては、パンチングマシン、その他の適宜な装置を用いる。
【0022】
[ベンダー加工工程]
所定の位置に孔明加工が実施されたか検査した後、ベンダー加工工程を実施する。
切欠部13B、円形の孔13C、取付孔13H,13H1が正しい位置、径、並びに大きさに形成されたことをガバリスケール(測定器具)で確認した後、短冊状平板130を折り曲げてL字状のチャンネル状部材13を形成する。
つまり、図7に示される通り、短冊状平板130を1つの折曲線C1に沿ってベンダーマシン(図示せず)等を用いてL字状に折り曲げて、リブ132を形成し、その後、残りの1つの折曲線C1に沿って、短冊状平板130をL字状に折り曲げてリブ133を長手方向に沿って形成する。これにより、ウェブ131,リブ132,133が長手方向に沿って形成された断面コ字状のチャンネル状部材13が形成される(図8参照)。
なお、短冊状平板130を折り曲げる際に、その折曲線C1やこの線に直交する線N1を含む部位に応力が集中するが、この応力は円形の孔13Cによって分散される。つまり、応力は円形の孔13Cの半径方向に放射状、あるいは、周方向に沿って分散して伝達されることになり、所定の箇所での集中が回避される。
【0023】
[仮組溶接工程]
図9に示される通り、チャンネル状部材13を角度定規やスケール等で検査した後、折曲線C1と直交する線分であって切欠部13Bと孔13Cとの中心を通る線N1(図5参照)に沿ってチャンネル状部材13をL字状に折り曲げて第一片部11と第二片部12とを形成する。この際、切欠部13Bを構成する各切欠縁辺部13Aを対向させた状態とし、この対向部分の一面、ウェブ131が配置された側の面を溶接する。
さらに、第一片部11のウェブ131と第二片部12のウェブ131との接続部分を全長に渡って、折曲線C1上(すなわち、ウェブ131とリブ132の近接部分及びウェブ131とリブ133の近接部分)を溶接する。これにより、所定の厚さ寸法の溶接部T1が形成される。
【0024】
次に、連結部材14の製造方法について説明する。
[短冊状平板の加工工程]
図10に示される通り、検査済みの短冊状平板140に、リブ142,143の辺縁部14Aと固定部144の辺縁部144Aを構成する矩形の切欠部14B、円形の孔14C、及び連結取付孔14Hを同時に形成する。この形成にあたっては、パンチングマシン、その他の適宜な装置を用いる。
【0025】
[孔明加工工程]
そして、短冊状平板140に、2本の折曲線C2を仮想線として長手方向に沿って設定する。折曲線C2は互いに対向する長辺の間の寸法の3等分の位置である。一辺がこの折曲線C2上にある矩形の切欠部14Bを短冊状平板140の4隅にそれぞれ形成する。切欠部14Bの形成と同時に円形の孔14Cを形成する。この円形の孔14Cは切欠部14Bと折曲線C2との交差位置に切欠部14Bの基部と連続して形成する。
また、連結取付孔14Hは、中心が短冊状平板140の長手方向の両端部からそれぞれ17mmの位置と55mmの位置に形成され、連結取付孔14H間は38mmである。
【0026】
[ベンダー加工工程]
切欠部14Bと円形の孔14Cとが正しい位置に形成されたことを確認した後、短冊状平板140を折り曲げてウェブ141、及びリブ142,143を形成する。つまり、図10に示される通り、短冊状平板140を1つの折曲線C2に沿ってベンダーマシン(図示せず)等を用いてL状に折り曲げてウェブ141,リブ142を形成し、その後、残り1つの折曲線C2に沿って短冊状平板140をL字状に折り曲げてウェブ141とリブ143とを長手方向に沿って形成する。さらに、ウェブ141の短手方向に対向する円形の孔14Cを結ぶ仮想線N2に沿って、切欠部14Bにより形成されたウェブ141の辺縁部144Aがリブ142,143の辺縁部14Aに近接するように、ウェブ141を折り曲げ、固定部144を形成する。
連結部材14では、溶接工程は必ずしも必要ないが、ウェブ141の全長に渡って、折曲線C2上(すなわち、ウェブ141とリブ142の近接部分及びウェブ141とリブ143の近接部分)を溶接してもよい。
なお、必要に応じてチャンネル状部材13及び連結部材14に防錆処理をする。
【0027】
以上のように製造されたチャンネル状部材13及び連結部材14を軸組建物に取り付ける。
まず、土台2と柱3との入隅部分、並びに、梁4と柱3の入隅部分にチャンネル状部材13を配置するとともに、取付孔13HにおいてボルトBやねじ、ビスなどで固定する。チャンネル状部材13の設置にあたり、土台2、柱3及び梁4に、それぞれ長手方向の中心線に沿って線を引いておき、この線にチャンネル状部材13のリブ132の中心線を合わせる。
次に、固定したチャンネル状部材13の固定部134に、連結部材14の固定部144を合わせ、連結取付孔14Hから取付孔13H1にボルトBやねじ、ビスを挿通して、連結部材14、チャンネル状部材13を一体として梁4及び柱3に固定する。連結取付孔14H及び取付孔13H1は、補強金物10の両端部に2つずつ、合計4つ設けられているので、連結部材14は、チャンネル状部材13を介して、合計4つのボルトB等で軸組み建物に取り付けられることになる。
【0028】
補強金物10が設置された建物に地震が発生した際に、土台2と柱3に対して梁4が相対的に傾くが、土台2、柱3及び梁4にかかる力は補強金物10で受けることになる。補強金物10は、チャンネル状部材13の他に、連結部材14を備えているので、土台2、柱3及び梁4をより強固に補強できる。
補強金物10ではチャンネル状部材13の折り曲げられた部位に応力が集中するが、この応力は円形の孔13Cのほぼ全周に分散して伝達され、所定の箇所での応力集中がなくなる。
地震等によって、土台2に対して柱3が傾いて第一片部11と第二片部12とが変位した場合、これらの第一片部11と第二片部12とが取付孔13Hだけでなくそれぞれ2つずつある取付孔13H1に挿通されるボルトBを介して接続されているため、土台2から柱3が外れることがない。
【0029】
従って、本実施形態では次の作用効果を奏することができる。
(1)補強金物10は、土台2又は梁4に固定される第一片部11と、柱3に固定される第二片部12とでL字状に形成されたチャンネル状部材13と、第一片部11の先端部と第二片部12の先端部間を連結する連結部材14とを備え、チャンネル状部材13は、ウェブ131と、ウェブ131の両端部において、ウェブ131に対して立ち上がり、かつ、互いに対向して配置される2つのリブ132,133と、第一片部11、第二片部12及びリブ132,133とで形成される角隅部に円形の孔13Cを備え、第一片部11及び第二片部12は、それぞれ、長手方向に沿って設けられ、ボルトBを挿通可能な2つの取付孔13H1を備え、連結部材14は、ウェブ141と、ウェブ141に対して立ち上がり、かつ、互いに対向して配置される2つのリブ142,143と、取付孔13H1に合わせた位置に設けられた合計4つの連結取付孔14Hとを備える構成である。
本実施形態では4つの連結取付孔14Hによって、連結部材14を、チャンネル状部材13を介して、土台2又は梁4と柱3にそれぞれ2箇所、合計4箇所で固定することができる。そのため、この補強金物10を土台2又は梁4と柱3との角部に設置した場合、チャンネル状部材13のみの場合に比べて大きな補強効果が得られる。また、チャンネル状部材13の第一片部11と第二片部12のそれぞれ2箇所、合計4箇所にボルトBを挿通することで、連結部材14を固定できるため、地震による振動が加わった場合でも、4つのボルトBが一度にはずれたり、弛んだりして、連結部材14がはずれることを防止できる。
【0030】
(2)補強金物10が第一片部11と第二片部12との連結部分とリブ132,133とで形成される角隅部に円形の孔13Cを備える。土台2や梁4と柱3との入隅角部に設置された補強金物10に地震による振動が加わると、チャンネル状部材13の折り曲げられた部位に応力が集中するが、この応力集中を円形の孔13Cで分散することになるので、構造材同士の接続部の補強を行いつつ、地震等の揺れに対して、多少のゆがみを許容する粘りのあるものとなり、土台2、柱3、梁4の破損を防止することができる。
(3)第一片部11の一方のウェブ131を土台2又は梁4に取り付け、第一片部11の他方のリブ132,133を土台2又は梁4に対して立ち上げて配置し、第二片部12の一方のウェブ131を柱3に取り付け、第二片部12の他方のリブ132,133を柱3に対して立ち上げて配置し、第一片部11と第二片部12の立ち上げたリブ132,133の長手方向に沿った中心線WCを、土台2又は梁4の中心線CCや梁4の中心線と一致させた。従って、地震によって、第一片部11と第二片部12の立ち上がったリブ132,133に力がかかるが、この力が土台2、梁4や柱3の中心線CCに沿って伝達されるので、耐震補強が確実に行われる。
【0031】
(4)短冊状平板130を折曲線C1に沿ってL字状に折り曲げ、これを折曲線と直交する線に沿ってさらに折り曲げる際に、折曲線やこの線に直交する線を含む部位に応力が集中するが、この応力集中が円形の孔13Cで分散され、短冊状平板130に皺やひび割れ等が生じることを防止できる。さらに、本実施形態では、短冊状平板130を正確に直角に折り曲げることができるので、補強金物を簡単に製造することができる。
(5)チャンネル状部材13を、短冊状平板130を折り曲げることにより製造したので、第一片部11と第二片部12が一体として構成され、接合不良などによる強度の低下が生じることがない。
【0032】
(6)連結部材14を、短冊状平板140を折り曲げることにより製造したので、接合不良などによる強度の低下が生じることがない。
(7)補強金物10の切欠部13Bを構成する各切欠縁辺部13Aが所定寸法離れた状態で対向した構成とすると、地震によって切欠縁辺部13A同士を接合する溶接部T2が剥がれた場合、互いに対向する切欠縁辺部13A同士が当接しない程度の小さな地震では、第一片部11と第二片部12とが接続されているため、土台2、基礎1と柱3の変位に伴って柔軟に変位することで、土台2や梁4から柱3が外れるということを回避することができる。しかも、大きな地震に伴って、切欠縁辺部13A同士が当接する場合、第一片部11と第二片部12との相対的な変位が規制されることになり、耐震効果を大きなものにできる。
【0033】
(8)折曲線C1に沿って、溶接部T1を設けたので、鋼板の強度を大きなものとすることができ、その結果、補強金物10の補強効果を大きなものにできる。つまり、溶接部T1の厚みにより、断面積が大きくなったことに加え、溶接による鋼板の急速な加熱に伴って金属組織が強化されるから、補強金物10の強度が大きなものとなる。特に、溶接部T1は力のかかるリブとウェブとの接続部分に形成されるので、より補強効果が大きなものとなる。
(9)溶接部T2はリブ132および133の片面に設けられているので、リブ132および133の他面に溶接による出っ張りがなくなり、外観が良好となる。
(10)ウェブ131とリブ132,133によってチャンネル状部材13を断面コ字状としたから、補強金物10での補強効果を大きなものにできる。
(11)連結部材14がリブ142,143を備え、ウェブ141とリブ142,143が断面コ字状となるよう形成したので、補強金物10での補強効果をより大きくすることができる。
【0034】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的及び効果を達成できる範囲内での変形や改良が、本発明の内容に含まれるものであることはいうまでもない。
例えば、前記実施形態では、躯体を構成する第一の構造材として、土台2又は梁4とし、同じく躯体を構成する第二の構造材として柱3として、鉛直面内での補強を行う補強金物10を説明したが、本発明を、水平面内での補強を行う補強金物としてもよい。つまり、図11に示される通り、躯体を構成する第一の構造材と第二の構造材とを、水平面内で互いに直交して接続される土台2としてもよく、あるいは、水平面内で互いに直交して接続される梁4としてもよい。
図11に示される通り、基礎1の上には複数本の角材からなる土台2が設けられている。これらの土台2は互いに直交配置されており、本発明の補強金物10はこれらの土台2の入隅に設置されている。
また、取付孔13H1を第一片部11および第二片部12にそれぞれ2つずつ形成し、取付孔13H1に合わせた連結取付孔14Hをそれぞれ2つずつ形成したが、本発明では、3つ以上を直列に配置する構成としてもよい。
そして、折曲線C1に沿って溶接(溶融)を行わず、溶接部T1を設けない構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、柱、梁、土台等の躯体を構成する構造材同士が互いに直角に接続された軸組建物に利用することができる。
【符号の説明】
【0036】
1…基礎、2…土台(第一の構造材)、3…柱(第二の構造材)、4…梁、10…補強金物、11…第一片部、12…第二片部、13…チャンネル状部材、13C…円形の孔、13H1…取付孔、14…連結部材、14H…連結取付孔、131…ウェブ、132,133…リブ、141…連結ウェブ、142,143…連結リブ、CC…中心線(構造材中心線)、WC…リブ中心線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ躯体を構成する第一の構造材と第二の構造材とが互いに直角に接続される軸組み建物に用いられる補強金物であって、
前記第一の構造材に取り付けられる第一片部と前記第二の構造材に取り付けられる第二片部とでL字状に形成されたチャンネル状部材と、前記第一片部の先端部と前記第二片部の先端部との間を連結する連結部材とを備え、
前記チャンネル状部材は、
ウェブと、前記ウェブの長手方向に沿った両側部において前記ウェブに対して立ち上がり、かつ、互いに対向して配置される一対のリブとを有し、前記第一片部と前記第二片部との接続部分において前記ウェブと前記一対のリブとで形成される角隅部に円形の孔が形成され、
前記第一片部及び前記第二片部には、それぞれ、固定手段が挿通可能とされ略同一径の複数の取付孔が長手方向に沿って形成され、
前記連結部材は、連結ウェブと、前記連結ウェブの長手方向に沿った両側部に対して立ち上がり、かつ、互いに対向して配置される一対の連結リブとを備え、前記連結ウェブには前記取付孔に合わせた位置に設けられた複数の略同一径の連結取付孔が形成される
ことを特徴とする補強金物。
【請求項2】
請求項1に記載された補強金物を、前記第一の構造材と前記第二の構造材に取り付ける取付構造であって、
前記補強金物は、前記第一の構造材と前記第二の構造材の少なくとも一方を挟んで配置される第一の補強金物と第二の補強金物とを備え、
前記第一の補強金物に形成される前記取付孔と第二の補強金物に形成される前記取付孔とは、それぞれ、前記挟まれた第一の構造材と前記第二の構造材の少なくとも一方の構造材中心線に対して異なる側にずれて配置された
ことを特徴とする補強金物の取付構造。
【請求項1】
それぞれ躯体を構成する第一の構造材と第二の構造材とが互いに直角に接続される軸組み建物に用いられる補強金物であって、
前記第一の構造材に取り付けられる第一片部と前記第二の構造材に取り付けられる第二片部とでL字状に形成されたチャンネル状部材と、前記第一片部の先端部と前記第二片部の先端部との間を連結する連結部材とを備え、
前記チャンネル状部材は、
ウェブと、前記ウェブの長手方向に沿った両側部において前記ウェブに対して立ち上がり、かつ、互いに対向して配置される一対のリブとを有し、前記第一片部と前記第二片部との接続部分において前記ウェブと前記一対のリブとで形成される角隅部に円形の孔が形成され、
前記第一片部及び前記第二片部には、それぞれ、固定手段が挿通可能とされ略同一径の複数の取付孔が長手方向に沿って形成され、
前記連結部材は、連結ウェブと、前記連結ウェブの長手方向に沿った両側部に対して立ち上がり、かつ、互いに対向して配置される一対の連結リブとを備え、前記連結ウェブには前記取付孔に合わせた位置に設けられた複数の略同一径の連結取付孔が形成される
ことを特徴とする補強金物。
【請求項2】
請求項1に記載された補強金物を、前記第一の構造材と前記第二の構造材に取り付ける取付構造であって、
前記補強金物は、前記第一の構造材と前記第二の構造材の少なくとも一方を挟んで配置される第一の補強金物と第二の補強金物とを備え、
前記第一の補強金物に形成される前記取付孔と第二の補強金物に形成される前記取付孔とは、それぞれ、前記挟まれた第一の構造材と前記第二の構造材の少なくとも一方の構造材中心線に対して異なる側にずれて配置された
ことを特徴とする補強金物の取付構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−154047(P2012−154047A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12194(P2011−12194)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(510230595)恒栄テクノサービス株式会社 (4)
【出願人】(594046754)山崎金属株式会社 (6)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(510230595)恒栄テクノサービス株式会社 (4)
【出願人】(594046754)山崎金属株式会社 (6)
【Fターム(参考)】
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