説明

補正情報算出装置、画像処理装置、画像表示システム、および画像補正方法

【課題】ユーザーの負担を最小限に抑さえつつ、撮影画像に写った特徴点と被投写面上での特徴点との対応関係を正確に求める。
【解決手段】本発明の補正情報算出装置6は、第1図形を含んだ第1測定用画像が投写されたときに被投写面上の第1図形を撮影した第1撮影画像の中の第1図形に対応付けられた位置を示す情報としてユーザーが入力した位置情報を取得する位置情報取得部62と、位置情報が示す位置を基準として第1撮影画像の中の第1図形の位置を検出したときの検出結果と、第1測定用画像の元データ上の第1図形の位置に対する第2測定用画像の元データ上の第2図形の位置の位置関係と、を用いて、第2撮影画像の中の前記第2図形の位置を検出する第2図形位置検出部65を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補正情報算出装置、画像処理装置、画像表示システム、および画像補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、画像表示装置の1つとしてプロジェクターが知られている。プロジェクターは、設置が容易であることや、大画面の画像を表示可能であること等の特長を有している。プロジェクターは、平面または曲面の被投写面に画像を表示する用途で使用される。また、複数のプロジェクターの各々から部分画像を投写させ、複数の部分画像の全体として1つの画像を表示させる用途で、プロジェクターが使用されることもある。近年、被投写面での画像の歪や、複数の部分画像の相対位置のずれを補正する画像補正方法が提案されている。
【0003】
上記の画像補正方法では、例えば以下の処理を行う。まず、特徴点を含んだ測定用パターンをプロジェクターに投写させ、被投写面上の測定用パターンを撮影する。そして、測定用パターンを示す画像データ上での特徴点の位置と、測定用パターンを撮影した撮影画像の中の特徴点の位置との対応関係に基づいて、画素の位置の補正量を示す補正情報を求める。視聴者向けの画像(以下、コンテンツ画像という)を表示するときに、この画像を示す画像データを上記の補正情報に基づいて補正し、補正した画像データに基づいて画像を表示させる。
【0004】
上記の処理を行う上で、特徴点の数や形状によっては、撮影画像に写った特徴点と投写した特徴点との対応関係を正確に特定することが難しくなることがある。対応関係の特定に失敗すると、処理のやり直しが必要になることや、極端な場合には処理を行うことができなくなることがある。このような不都合を解消する技術として、特許文献1に開示されている技術が挙げられる。特許文献1では、ユーザーに数個の特徴点の座標を指定させ、その数個の座標から残りの特徴点の座標を補完演算で予測している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第06/025191号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、ユーザーが特徴点自体の座標を指定し、指定対象の特徴点を探索する作業がユーザーに委ねられているので、下記の不都合を生じるおそれがある。
多数の特徴点を含む測定用パターンを用いる場合や、特徴点を示す図形がいずれも同じである場合等には、指定対象の特徴点の探索に多大な手間や時間を要してしまい、ユーザーに多大な負担を強いることになる。また、ユーザーが指定対象の特徴点を誤認しやすくなり、処理のロバスト性が低下するおそれもある。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑み成されたものであって、ユーザーの負担を最小限に抑さえつつ、撮影画像に写った特徴点と被投写面上での特徴点との対応関係を正確に求めることが可能な補正情報算出装置、画像処理装置、画像表示システム、および画像補正方法を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、上記の目的を達成するために以下の手段を採用している。
【0009】
本発明の補正情報算出装置は、第1図形を含んだ第1測定用画像がプロジェクターから被投写面に投写されたときに前記被投写面上の前記第1図形を撮影した第1撮影画像の中の前記第1図形に対応する位置を示す情報としてユーザーが入力した位置情報を取得する位置情報取得部と、前記第1図形とは形状と寸法の少なくとも一方が異なる第2図形を含んだ第2測定用画像が前記プロジェクターから前記被投写面に投写されたときに前記被投写面上の前記第2図形を撮影した第2撮影画像の中の前記第2図形の位置について、前記位置情報が示す位置を基準として前記第1撮影画像の中の前記第1図形の位置を検出したときの検出結果と、前記第1測定用画像の元データ上の前記第1図形の位置に対する前記第2測定用画像の元データ上の前記第2図形の位置の位置関係と、を用いて、前記第2撮影画像の中の前記第2図形の位置を検出する第2図形位置検出部と、前記第2図形位置検出部により検出された前記第2撮影画像の中の前記第2図形の位置と、前記第2測定用画像の元データ上の前記第2図形の位置とを比較して、前記被投写面上での画素の位置と、前記プロジェクターの画像形成素子での画素の位置との対応関係を示す補正情報を算出する補正情報演算部と、を備えていることを特徴とする。
【0010】
このようにすれば、ユーザーが入力した位置情報を用いて第1図形を検出するので、第1図形の検出の成功率が高くなり、第2図形の位置を正確に求めることができる。第2図形は、第1図形に対して形状と寸法の少なくとも一方が異なっており、ユーザーが第1図形を第2図形から区別しやすくなる。したがって、ユーザーによる第1図形の探索の手間を減らすことができ、ユーザーによる第1図形の誤認の発生を減らすことができる。よって、ユーザーの負担を最小限に抑さえつつ、撮影画像に写った特徴点と被投写面上での特徴点との対応関係を正確に求めることが可能になり、画像歪等を高精度に補正可能になる補正情報を少ない手間で取得可能になる。
【0011】
前記第1撮影画像の中の前記第1図形の位置を検出する第1図形位置検出部を備え、第2図形位置検出部は、前記第1図形位置検出部が前記第1図形の検出に成功したときに、前記第1図形位置検出部による検出結果を用いて前記第2撮影画像の中の前記第2図形の位置を検出し、前記第1図形位置検出部が前記第1図形の検出に失敗したときに、前記位置情報を用いて検出された前記第1図形の位置を用いて前記第2撮影画像の中の前記第2図形の位置を検出するとよい。
【0012】
このようにすれば、第1図形位置検出部が第1図形の位置の検出に成功した場合には、その検出結果を用いて第2図形位置検出部が第2図形を検出するので、第1図形位置検出部が第1図形の位置の検出に成功したときに、ユーザーによる位置情報の入力を省くことができる。したがって、ユーザーの負担を最小限に抑さえつつ、撮影画像に写った特徴点と被投写面上での特徴点との対応関係を正確に求めることが可能になる。
【0013】
前記位置情報は、前記第1図形の内側の位置を示す第1の位置情報と、前記第1撮影画像の中の前記第1図形の位置を規定する特徴点の位置を示す第2の位置情報とを含み、前記位置情報取得部は、前記第1の位置情報を用いた前記第1図形の位置の検出が失敗したときに、前記第2の位置情報を取得し、前記第2図形位置検出部は、前記位置情報取得部が前記第2の位置情報を取得したときに、前記第2の位置情報が示す特徴点に規定される前記第1図形の位置を前記第1撮影画像の中の前記第1図形の位置として用いて、前記第2撮影画像の中の前記第2図形の位置を検出するとよい。
【0014】
このようにすれば、ユーザーは第1図形の内側の位置を示す第1の位置情報を入力すればよいので、第1図形の検出の基準になる位置を簡便に指定することができ、ユーザーの負担を最小限に抑さえることができる。第1の位置情報が示す位置を基準とした第1撮影画像の中の第1図形の位置の検出に失敗したときに、第2図形位置検出部は、第2の位置情報が示す特徴点に規定される第1図形の位置を用いて第2図形を検出するので、第1図形の位置の検出の失敗に起因する処理の発散が回避される。
【0015】
前記第1測定用画像が前記第2図形を含み、第2図形位置検出部は、前記第1撮影画像を前記第2撮影画像として用いて前記第2撮影画像の中の前記第2図形の位置を検出するとよい。
【0016】
このようにすれば、第1測定用画像とは別に第2測定用画像を投写して撮影する場合よりも投写や撮影に要する手間や時間を減らすことができる。また、第1測定用画像の撮影と第2測定用画像の撮影との間に撮影装置等の位置ずれを生じる確率が低くなるので、撮影装置の位置ずれに起因する誤差を減らすことができる。
【0017】
前記第1図形の寸法が前記第2図形の寸法よりも大きく、前記第1測定用画像に含まれる前記第2図形の数が前記第1測定用画像に含まれる前記第1図形の数よりも多いとよい。
【0018】
このようにすれば、第1図形の寸法が第2図形の寸法よりも大きいので、ユーザーが第1図形を第2図形から区別しやすくなり、第1図形の検索に要するユーザーの負担を最小限に抑えることができる。第1測定用画像に含まれる第2図形の数が第1図形の数よりも多いので、第2撮影画像の中の第2図形の位置と、第1測定用画像の元データに規定された第2図形の位置との比較を多点にて行うことが可能になり、補正情報を高精度に求めることができる。
【0019】
前記第1測定用画像において前記第1図形の色調が前記第2図形の色調と異なっており、前記第1図形の色調が前記第2図形の色調と区別されるように前記被投写面上の前記第1測定用画像を撮影した撮像画像を前記第1撮影画像として用いるとよい。
【0020】
このようにすれば、被投写面上の第1図形の色調が第2図形の色調と異なるようになり、ユーザーが第1図形を第2図形から区別しやすくなるので、第1図形の検索に要するユーザーの負担を最小限に抑えることができる。また、第1撮影画像上で第1図形の色調と第2図形の色調が異なるので、第1図形を検出するときに第2図形の影響を加味しないように色の違いを利用したフィルタリングを施すことが可能になる。これにより、第1図形の検出の成功率を高めることができる。同様に、第2図形を検出するときに、第1図形の影響を加味しないようにフィルタリングすることが可能になり、第2図形の検出の成功率を高めることができる。
【0021】
本発明の画像処理装置は、本発明に係る補正情報算出装置と、前記補正情報算出装置により算出された前記補正情報を参照して、補正後の前記画像データに基づいて前記プロジェクターにより前記被投写面上に投写される画像が補正前の前記画像データが示す画像と略一致するように前記画像データを補正する画像補正部と、
を備えていることを特徴とする。
【0022】
本発明の補正情報算出装置によれば、高精度の補正情報を少ない手間で取得可能であるので、本発明の画像処理装置は、補正情報を取得する上での手間を省きつつ、部分画像の歪や相対位置のずれを高精度に補正可能なものになる。
【0023】
本発明の画像表示システムは、本発明に係る画像処理装置と、記画像処理装置により補正された前記補正後の画像データに基づいて画像を投写する複数のプロジェクターと、を備えていることを特徴とする。
【0024】
本発明の画像処理装置によれば、補正情報を取得する上での手間省きつつ、部分画像の歪や相対位置のずれを高精度に補正可能になるので、本発明の画像表示システムは、利便性が高く、しかも高品質な画像を表示可能なものになる。
【0025】
本発明の画像補正方法は、第1図形を含んだ第1測定用画像をプロジェクターから被投写面に投写するステップと、前記被投写面上の前記第1図形を撮影して第1撮影画像を取得するステップと、前記第1撮影画像の中の前記第1図形に対応する位置を示す情報としてユーザーが入力した位置情報を取得するステップと、前記第1図形とは形状と寸法の少なくとも一方が異なる第2図形を含んだ第2測定用画像を前記プロジェクターから前記被投写面に投写するステップと、前記被投写面上の前記第2図形を撮影して第2撮影画像を取得するステップと、前記第2撮影画像の中の前記第2図形の位置について、前記位置情報が示す位置を基準として前記第1撮影画像の中の前記第1図形の位置を検出するステップと、前記第1撮影画像の中の前記第1図形の位置の検出結果と、前記第1測定用画像の元データ上の前記第1図形の位置に対する前記第2測定用画像の元データ上の前記第2図形の位置の位置関係とを用いて、前記第2撮影画像の中の前記第2図形の位置を検出するステップと、前記第2撮影画像の中の前記第2図形の位置の検出結果と、前記第2測定用画像の元データ上の前記第2図形の位置とを比較して、前記被投写面上での画素の位置と、前記プロジェクターの画像形成素子での画素の位置との対応関係を示す補正情報を算出するステップと、前記補正情報を参照して、補正後の前記画像データに基づいて前記プロジェクターにより前記被投写面上に投写される画像が補正前の前記画像データが示す画像と略一致するように前記画像データを補正するステップと、
を備えていることを特徴とする。
【0026】
このようにすれば、ユーザーの負担を最小限に抑さえつつ、撮影画像に写った特徴点と被投写面上での特徴点との対応関係を正確に求めることが可能になり、補正情報を取得する上での手間を省きつつ、画像歪等を高精度に補正可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態に係る画像表示システムを示す概略図である。
【図2】被投写面上の投写領域の位置関係を示す説明図である。
【図3】画像表示システムの構成を示す図である。
【図4】測定用パターンの一例を示す説明図である。
【図5】コンテンツ画像を表示するまでの処理フローを示す図である。
【図6】第1の位置情報の入力方法の一例を示す説明図である。
【図7】第2の位置情報の入力方法の一例を示す説明図である。
【図8】補正情報の算出方法の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。説明に用いる図面において、特徴的な部分を分かりやすく示すために、図面中の構造の寸法や縮尺を実際の構造に対して異ならせている場合がある。また、実施形態において同様の構成要素については、同じ符号を付して図示し、その詳細な説明を省略する場合がある。
【0029】
図1は、本発明の一実施形態である画像表示システムの概念図、図2は被投写面に投写された画像と投写領域との関係を示す説明図である。
【0030】
図1に示すように画像表示システム1は、複数のプロジェクター2、画像処理装置3、および撮影装置4を備えている。画像表示システム1は、例えば信号源8から入力された画像データが示すコンテンツ画像Pを複数のプロジェクター2で分担して、スクリーンや壁等の被投写面9に投写する。ここでは、複数のプロジェクター2として第1のプロジェクター21、第2のプロジェクター22、第3のプロジェクター23、および第4のプロジェクター24が設けられているとして説明する。本発明の適用範囲は、プロジェクターの数や配置に限定されない。例えば、平面状または曲面状の被投写面に1台のプロジェクターにより投写する場合にも本発明を適用可能である。なお、以下の説明では、複数のプロジェクターの各々から投写された画像を、「部分画像」と称することがある。また、以下の説明では、部分画像を示す画像データを「部分画像データ」と称することがある。
【0031】
プロジェクター2は、供給された画像データ(ここでは部分画像データ)に基づいて画像(ここでは部分画像)を表示可能である。本発明の適用範囲は、プロジェクター2の構成に限定されない。例えば、プロジェクター2は、単板式のプロジェクターであってもよいし、三板式のプロジェクター等の複数の画像形成素子を含んだものであってもよい。また、プロジェクター2は、被投写面9に対して視聴者と同じ側から投写するフロント投写型のものであってもよいし、被投写面9を挟んで視聴者と反対側から投写するリア投写型のものであってもよい。
【0032】
本実施形態の複数のプロジェクター2は、光源、画像形成素子、および投写光学系を有している。画像形成素子は、二次元的に配列された複数の画素を有するものである。画像形成素子としては、例えば透過型または反射型の液晶ライトバルブや、デジタルミラーデバイス(DMD)等が挙げられる。各プロジェクターにおいて、光源から射出された光は、画像形成素子に入射する。画像形成素子は、このプロジェクターへ入力された部分画像データの画素ごとのデータ(以下、画素データという)に基づいて、複数の画素を互いに独立して制御する。画素に入射した光は、画素ごとに変調されて画素データに規定された光量の光になる。複数の画素により変調された光が全体として光学像(画像)になり、この光学像が投写光学系により被投写面9に投写される。ここでは、複数のプロジェクターで、画像形成素子の画素数および画素の配列が一致している。
【0033】
各プロジェクターが被投写面9上に投写可能な領域である投写領域は、複数のプロジェクター2で異ならせて設定されている。図2に示すように、第1〜第4投写領域A1〜A4は、互いの周縁部が重なり合うように設定されており、全体として全体投写領域を構成している。すなわち、第1〜第4投写領域A1〜A4の各々は、隣接する他の投写領域と重畳された重畳領域A5を含んでいる。
【0034】
第1のプロジェクター21の投写領域(第1投写領域A1)は、第2のプロジェクター22の投写領域(第2投写領域A2)と被投写面9上の水平方向に並んでいる。この水平方向において、第1投写領域A1の端部は、第2投写領域A2の端部と重ね合わされている。第3のプロジェクター23による投写領域(第3投写領域A3)と、第4のプロジェクター24による投写領域(第4投写領域A4)との水平方向の位置関係については、第1、第2投写領域A1、A2の水平方向の位置関係と同様になっている。
【0035】
第1投写領域A1は、被投写面9上の水平方向と直交する垂直方向に第3投写領域A3と並んでいる。この垂直方向において、第1投写領域A1の端部(周縁部)は第3投写領域A3の端部(周縁部)と重ね合わされている。第2投写領域A2と第4投写領域A4との垂直方向の位置関係については、第1、第3投写領域A1、A3の垂直方向の位置関係と同様になっている。
【0036】
ところで、通常は全体投写領域A0の外形が矩形にならない。これは、第1〜第4のプロジェクター21〜24の配置に起因して、第1〜第4投写領域A1〜A4の歪や相対位置のずれを生じるからである。ここでは、全体投写領域A0に収まる略矩形の領域を実際に画像の投写に用いる領域(有効投写領域A)としている。第1〜第4のプロジェクター21〜24は、各投写領域のうちで有効投写領域Aに収まる領域に対して部分画像を投写するようになっている。
【0037】
例えば、第1のプロジェクター21から投写された光により、第1投写領域A1のうちで有効投写領域Aに収まる領域に、第1の部分画像P1が表示される。以下同様に、第2〜第4のプロジェクター22〜24により、第2〜第4の部分画像P2〜P4が表示される。第1〜第4の部分画像P1〜P4は、互いに端部を重ね合わされて被投写面9上に表示され、全体としてコンテンツ画像Pを構成する。
【0038】
図1の説明に戻り、画像処理装置3は、コンテンツ画像Pを示す画像データを例えば信号源8から受け取る。画像処理装置3は、画像データに各種処理(後述する)を施すとともに、画像データに基づいて複数の部分画像データを生成する。各部分画像データは、第1〜第4の部分画像P1〜P4のいずれかを示すデータである。画像処理装置3は、第1〜第4のプロジェクター21〜24の各々に、各プロジェクターが担当する部分画像を示す部分画像データを供給する。第1〜第4のプロジェクター21〜24は、画像処理装置3から入力された部分画像データに基づいて、被投写面9上に第1〜第4の部分画像P1〜P4を投写する。
【0039】
画像処理装置3は、上記の各種処理の1つとして、第1〜第4の部分画像P1〜P4の各々の画像歪を補正するとともに、第1〜第4の部分画像P1〜P4の相対位置のずれを補正する処理(以下、位置補正処理という)を行う。画像処理装置3は、画像表示システム1の設置時や、画像表示システム1の設置時から所定期間が経過したメンテナンス時等の適宜選択されるタイミングに、位置補正処理に用いる補正情報を算出する。
【0040】
上記の画像歪の1例として、例えば被投写面9に対する第1〜第4のプロジェクター21〜24の各々の投写方向、すなわち垂直方向の仰角や俯角、水平方向の煽り角等に応じて発生する画像歪(例えばキーストン歪)が挙げられる。画像歪の他の例として、例えば布状のスクリーンのたわみ等により、被投写面9が局所的に歪んでいることにより発生する画像歪が挙げられる。上記の第1〜第4の部分画像P1〜P4の相対位置のずれは、第1〜第4のプロジェクター21〜24で、例えば、投写方向が一致しないことや相対位置のずれること等に起因する。
【0041】
本発明に係る画像処理装置は、例えば下記の第1〜第3の態様のように、多様な態様を取りうる。
第1の態様の画像処理装置として、各種処理を行うASIC等の1以上のロジック回路による構成が挙げられる。第1の態様の画像処理装置は、その一部または全部が、第1〜第4のプロジェクター21〜24、撮影装置4、信号源8のいずれかと一体化されていてもよい。
第2の態様の画像処理装置として、プログラムが実装されたコンピューターによる構成が挙げられる。すなわち、プログラムにより各種処理をコンピューターに実行させることにより、画像処理装置3の機能を実現することができる。例えば、メモリーやCPUを協働させて各処理における演算を実行させ、演算結果をハードディスクやメモリー等の記憶部に保存しておき、必要に応じて演算結果を読出して他の処理に供することにより、ロジック回路等を用いる場合と同様の処理結果が得られる。なお、第2の態様の画像処理装置3において、各種処理を複数のコンピューターに分担させて行わせるようにしてもよい。 第3の態様の画像処理装置として、各種処理の一部の処理を行うロジック回路と、プログラムにより各種処理の他の処理を行うコンピューターとを組み合わせた構成が挙げられる。
【0042】
このように、本発明に係る画像処理装置は、各種処理を行う独立した装置としての態様の他に、各種処理の一部を行う複数の機能部の集合としての態様もとりえる。すなわち、複数の機能部が、別体の複数の装置に分かれて設けられており、互いに協働して処理を行う態様であってもよい。
【0043】
撮影装置4は、全体投写領域A0の全体を含む被投写面9上の領域を撮影した撮影画像を取得可能である。撮影装置4は、例えばCCDカメラ等の二次元イメージセンサーにより構成される。二次元イメージセンサーは、フォトダイオード等からなる複数の受光素子が二次元的に配列された構造を有している。本実施形態の撮影装置4は、撮影対象の色調の違いを撮影画像に反映可能なフルカラーの二次元イメージセンサーにより構成されている。
【0044】
上記の補正情報を算出するときに、撮影装置4は、第1〜第4のプロジェクター21〜24の各々により被投写面9に投写された第1測定用画像と第2測定用画像とを同時にまたは別々に撮影し、撮影結果を示す撮影画像データを画像処理装置3へ出力する。ここでは、「第1測定用画像」が第1図形を含み、「第2測定用画像」が第2図形を含むものとする。以下の説明では、第1測定用画像及び第2測定用画像を「測定用パターン」という。また、第1測定用画像がプロジェクターから被投写面9に投写されたときに被投写面9上の第1図形を撮影した撮像画像を「第1撮影画像」と称する。さらに、第2測定用画像がプロジェクターから被投写面9に投写されたときに被投写面9上の第2図形を撮影した第2撮影画像を「第2撮影画像」と称する。詳しくは後述するが、本実施形態の測定用パターンとして用いられる第1測定用画像は、第1図形および第2図形を含んでいる。すなわち、本実施形態の第1測定用画像は第2測定用画像を兼ねており、被投写面9に投写された第1測定用画像を撮影した撮影画像は、第1撮影画像と第2撮影画像のいずれにも用いることができる。また、第1撮影画像と第2撮影画像との区別が必要ない場合に、第1撮影画像と第2撮影画像をいずれも単に撮影画像と称することがある。
【0045】
本実施形態の撮影装置4は、1回の撮影により全体投写領域A0の全体を撮影可能なように配置されている。複数回の撮影による撮影画像を合わせて全体投写領域A0の全体を撮影する場合と比較して、撮影と撮影の間の撮影装置の移動等による誤差をなくすことができる。全体投写領域A0の寸法やアスペクト比によっては、全体投写領域A0の全体が撮影装置の画角に収まらない場合もありえる。この場合には、撮影装置を三脚等に据えること等により、被投写面9に対する撮影装置の相対位置を略固定した状態で全体投写領域A0を部分ごとに撮影し、2回以上の撮影結果を合わせて全体投写領域A0の全体を撮影した撮影画像を取得してもよい。
【0046】
以上のように複数のプロジェクター2によりコンテンツ画像Pを表示すると、コンテンツ画像Pを大画面、高解像度、高輝度で表示にすることができる。例えば、一台のプロジェクターにより表示する場合と比較して、1台のプロジェクターの画素数が同じである条件では、解像度を下げることなく大画面でコンテンツ画像Pを表示することができる。また、同じ画面サイズでコンテンツ画像Pを表示する条件で比較すると、プロジェクターの数に応じて画素数を増すことができ、高解像度でコンテンツ画像を表示することができる。1台のプロジェクターの出力光量が同じである条件で比較すると、表示に寄与する光の光量をプロジェクターの数に応じて増すことができ、高輝度でコンテンツ画像Pを表示することができる。
【0047】
これらの効果を得るためにプロジェクターの画素数や出力を増す手法と比較すると、各プロジェクターのコストを飛躍的に下げることができるので、プロジェクターの数を加味しても装置コストを低減する効果が期待できる。また、通常時はプロジェクターごとに例えば別の場所(例えば小会議室)に設置して使用し、用途に応じて、例えば大会議室に画像表示システムを構築して、コンテンツ画像を大画面、高解像度、高輝度で表示することも可能である。このように、プロジェクターを単独で使用するか、複数のプロジェクターを組み合わせて使用するかを用途に応じて選択可能になるので、1台のプロジェクターで上記の効果を得ようとする場合と比較して、利便性が高くなる。
【0048】
また、画像処理装置3により位置補正処理が施された画像データに基づいてコンテンツ画像Pが表示されるので、各部分画像の画像歪や複数の部分画像での相対位置のずれが低減される。したがって、画像歪が少なく、しかも部分画像の継ぎ目が認識されにくい状態でコンテンツ画像Pを表示することができ、コンテンツ画像Pを高品質な画像として表示可能になる。本発明では、部分画像の画像歪や相対位置のずれを高精度に補正することができ、しかも補正情報を効率よく算出することが可能になっている。これにより、例えば画像表示システムの設置に要する手間や時間を減らすことができ、画像表示システムの利便性を高めることができる。
【0049】
次に、図3、図4を参照しつつ、本発明に係る画像処理装置3の構成要素について詳しく説明する。図3は、画像処理装置3の機能構成を示す図、図4は測定用パターンの一例を示す説明図である。
【0050】
図3に示すように画像処理装置3は、画像制御装置5および補正情報算出装置6を有している。補正情報算出装置6は、主として補正情報を算出する。画像制御装置5は、各種処理を行うとともに、補正情報を用いて各種処理の1つとして画像データに位置補正処理を施す。本実施形態では、画像制御装置5が、第1のコンピューターの一部として構成されており、補正情報算出装置6が第1のコンピューターと別体の第2のコンピューターのCPUや記憶部等を利用して構成されている。
【0051】
画像制御装置5は、画像入力部51、画像保存部52、画像補正部53、および画像出力部54を有している。画像入力部51は、例えばビデオキャプチャーボード等により構成される。画像入力部51は、必要に応じて画像制御装置5の外部のDVDプレイヤーや通信機器等の信号源8からコンテンツ画像を受け取る。画像保存部52は、例えばコンピューターに内蔵あるいは外付されたハードディスク等の記憶装置により構成され、コンテンツ画像Pを示す画像データを保存可能である。画像入力部51へ入力された画像データや、画像保存部52に保存されている画像データは、コンテンツ画像Pを表示するときに画像補正部53へ出力される。
【0052】
なお、画像制御装置5は、画像入力部51と画像保存部52の一方のみが設けられた構成であってもよい。画像入力部51から入力された画像データを画像保存部52に保存しておき、この画像データを適宜読出して画像補正部53へ入力する構成であってもよい。
【0053】
画像補正部53は、その詳細な構成を図示しないが、演算部および記憶部を含んでいる。演算部は、例えばグラフィックス・プロセッシング・ユニット(GPU)等により構成される。記憶部は、ビデオメモリー(VRAM)や不揮発メモリー等により構成される。画像補正部53は、補正情報を参照して、補正後の画像データに基づいてプロジェクター21〜24により被投写面9上に投写される画像が補正前の画像データが示す画像と略一致するように、信号源8から入力された画像データを補正する。
【0054】
演算部は、記憶部を画像バッファ等に利用しつつ、演算部へ入力された画像データにガンマ補正や色調補正等の各種処理を行う。プログラムを用いて、上記のGPUに代えてコンピューターのCPUに演算させることにより、各種処理を行わせるようにしてもよい。なお、画像入力部51や画像保存部52から入力された画像データ上での画素の配列が、プロジェクター2の画像形成素子の画素の配列と整合していない場合、例えば、画像データに含まれる画素数が画像形成素子の画素数と異なる場合もありえる。この場合に演算部は、入力された画像データに対して補間処理やレンダリング処理等を施して、補正後の画像データが画像形成素子の画素の配列に整合するように画像データを補正する。これらの処理については、各プロジェクターに処理部を設けておき、プロジェクターごとにこの処理部に処理させてもよい。
【0055】
演算部は、補正情報を参照して画像データに位置補正処理を施すとともに部分画像データを生成する。補正情報は、上記の記憶部(例えば不揮発メモリー)に記憶されている。補正情報は、被投写面9上での全体投写領域A0(図2参照)に占める各画素の位置と、複数のプロジェクター2の各々の画像形成素子における画素の配列に占める各画素の位置との対応関係を示す情報である。
【0056】
補正情報は、例えば画像形成素子の画素ごとの値としてテーブル形式で記憶されている。すなわち、テーブル(補正情報)を参照すれば、全体投写領域A0の所定の位置に所定の画素が表示されるようにする上で、各画素データを画像形成素子のいずれの画素へ入力すればよいのか分かる。
【0057】
演算部は、位置補正処理による補正前の画像データが示す画像、すなわち表示すべきコンテンツ画像が有効投写領域Aに表示されるように、例えば以下のような処理を行う。演算部は、全体投写領域A0の内側であって有効投写領域Aの外側の各画素(以下、非表示画素という)について、補正情報により各非表示画素と対応付けられた画像形成素子の各画素に供給するデータを、非表示用のマスクデータ(例えば黒を示すデータ)にする。また、有効投写領域Aの内側の各画素(以下、表示画素という)について、補正情報により表示画素と対応付けられた画像形成素子の画素に供給するデータを、この表示画素用の画素データとして画像データに規定されたデータにする。
【0058】
表示画素の位置が格子状の画素配列の格子点位置からずれている場合には、必要に応じて補間処理を行う。例えば、表示画素に対応する画像データ上の画素の周囲の画素の画素データを用いて、表示画素の位置に応じた画素データを補間により求める。補間のときに参照する周囲の画素の位置や、補間のときに周囲の画素の画素データに乗じる重み付けの係数(補間係数)等は、補正情報の一部として予め求めておくとよい。このような処理を、各投写領域に含まれる表示画素および非表示画素について行うことにより、各投写領域を担当するプロジェクター用の部分画像データが得られる。
【0059】
画像補正部53は、演算部により生成された部分画像データを画像出力部54へ出力する。画像出力部54は、画像補正部53から出力された部分画像データを、各部分画像データを担当するプロジェクターへ出力する。例えば、画像出力部54は、図1に示した第1の部分画像P1を示す部分画像データを第1のプロジェクター21へ出力する。画像出力部54は、以下同様に、第2〜第4の部分画像P2〜P4を示す部分画像データを第2〜第4のプロジェクター22〜24へ出力する。
【0060】
本実施形態の補正情報算出装置6は、プログラムを用いて上記の第2のコンピューターに所定の処理(後述する)を行わせることにより、その機能を実現するものである。第2のコンピューターは、画像制御装置5が実装されている第1のコンピューターと別体になっており、例えばバスケーブル等により第1のコンピューターと電気的に接続されている。補正情報算出装置6により補正情報を算出した後に、バスケーブルを介して補正情報を画像制御装置5へ出力した上で、第2のコンピューター(補正情報算出装置6)および撮影装置4を取外した状態で、複数のプロジェクター2および画像制御装置5によりコンテンツ画像Pを表示させることも可能である。また、プロジェクター2に位置ずれを生じたときに、第2のコンピューター(補正情報算出装置6)および撮影装置4を再度設置して、補正情報を再度算出し、補正情報を更新することも可能である。
【0061】
補正情報算出装置6は、機能ブロックとして補正情報演算部61、位置情報取得部62、記憶部63、第1図形位置検出部64、および第2図形位置検出部65を有している。記憶部63は、第2のコンピューターのハードディスクやメモリーにより構成される。記憶部63には、補正情報の算出に用いる第1測定用画像及び第2測定用画像(測定用パターン)を示す測定用画像データ(元データ)が記憶されている。各プロジェクター用の測定用パターンは、複数のプロジェクター2で同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。本実施形態では、複数のプロジェクター2で互いに異なる測定用パターンを採用している。測定用画像データは、第1のコンピューターの記憶部やその他の記憶部に記憶されていてもよい。
【0062】
図4に示すように、各測定用パターンは、i方向およびj方向に配列された画素の配列により構成されている。測定用画像データは、各プロジェクターに供給された段階で画像形成素子の画素の配列に整合した形式になっている。例えば、画像形成素子の画素の配列が1920×1080個である場合に、測定用画像データは、i方向に1920個の画素が並び、j方向に1080の画素が並ぶ画像の画像データとしてプロジェクターに供給される。
【0063】
第1のプロジェクター用の第1の測定用パターンD11は、1つの第1図形D111、および複数の第2図形D121を含んでいる。本例の第1図形D111は、矩形状のものであり、第1の測定用パターンD11の概ね中央に配置されている。第2図形D121は、第1図形D111とは形状と寸法の少なくとも一方が異なる。
【0064】
第2図形D121は、特徴図形により構成されている。特徴図形とは、エッジ検出処理やパターン認識処理等の画像処理技術により検出可能な形状や輝度分布の図形であり、特徴図形を検出したときに特徴図形を代表する点を特徴点として求めることが可能な図形である。特徴図形については、その形状を検出可能であり、その形状と関連づけられた位置を特徴点の位置として特定可能な形状であれば、特に限定されない。特徴図形の形状としては、例えば互いに交差した線分(クロスハッチ)や正方形等であってもよい。
【0065】
本例の第2図形は、ドット形状(スポット形状)の特徴図形により構成されている。例えば、特徴図形がドット形状である場合には、上記の画像処理技術によりドット形状の輪郭または輝度分布を検出することにより、ドット形状の中心点が求まり、中心点を特徴点とすることができる。特徴図形が矩形状である場合には、その中心点をドット形状と同様に特徴点として用いることができる他に、4つの頂点をそれぞれ特徴点として用いることができる。つまり、矩形の各辺に相当する線分をハフ変換等により検出することができ、検出した線分の交点である4つの頂点を、それぞれ特徴点として求めることができる。すなわち、第1図形D111は、4つの特徴点を含む特徴図形として用いることもできる。
【0066】
第1図形D111は、第2図形D121よりも上記の画像処理技術により検出しやすい図形に設定するとよい。一般に検出対象の図形は、大判になるほどすなわち測定用パターンに対する特徴図形の寸法の比率が大きくなるほど検出しやすくなる。また、検出対象の図形が、単純形状(例えば矩形や円形)であるほど、またエッジでの明るさのジャンプが顕著であるほど検出しやすくなる。本例では、第1図形D111が第2図形D121よりも大判になっており、検出しやすい図形になっている。
【0067】
本例では、測定用画像データに規定された第1図形D111の色調が、第2図形D121の色調と異なっている。第2図形D121の色調は、第1図形D111の色調よりも視感度(人間の錐体細胞の光吸収率)が高い色調、例えば緑に設定される。第1図形D111の色調は、例えば青または赤に設定される。
【0068】
複数の第2図形D121は、i方向に所定のピッチで配列されており、また、j方向にも所定のピッチで配列されている。すなわち、直交格子の格子点上に各特徴図形の特徴点が位置するように、複数の第2図形D121が規則的に配列されている。
【0069】
第2〜第4のプロジェクター用の測定用パターンは、第2図形の配置を除いて第1の測定用パターンD11と同様になっている。すなわち、第2のプロジェクター用の第2の測定用パターンD12は、1つの第1図形D112および複数の第2図形D122を含んでいる。第3のプロジェクター用の第3の測定用パターンD13は、1つの第1図形D113および複数の第2図形D123を含んでいる。第4のプロジェクター用の第4の測定用パターンD14は、1つの第1図形D114および複数の第2図形D124を含んでいる。第1図形D111〜D114は、いずれも同様の形状および寸法になっている。第2図形D121〜D124は、各測定用パターンにおいて、二次元的に規則的に配列されている。
【0070】
互いに隣り合う一対の投写領域に投写される一対の測定用パターンにおいて、互いの端部を位置ずれなく重ね合わせた状態で、端部に配置されている第2図形が互いに重ならないように、第2図形の配置が設定されている。詳しくは、第1の測定用パターンD11と第2の測定用パターンD12を、j方向の位置を揃えてi方向に並べた状態から互いに接近させて、互いの端部を重ね合わせたとする。この状態で、第1の測定用パターンD11の端部に配置された第2図形D121と、第2の測定用パターンD12の端部に配置された第2図形D122とが交互にj方向に並ぶように、第2図形D121の配置と第2図形D122の配置との関係が設定されている。第3、第4の測定用パターンD13、D14についても、同様の条件を満たすように、第2図形D123の配置と第2図形D124の配置との関係が設定されている。
【0071】
また、第1の測定用パターンD11と第3の測定用パターンD13を、i方向の位置を揃えてj方向に並べた状態から互いに接近させて、互いの端部を重ね合わせたとする。この状態で、第1の測定用パターンD11の端部に配置された第2図形D121と、第3の測定用パターンD13の端部に配置された第2図形D123とが交互にi方向に並ぶように、第2図形D121の配置と第2図形D123の配置との関係が設定されている。第2、第4の測定用パターンD12、D14についても、同様の条件を満たすように、第2図形D122の配置と第2図形D124の配置との関係が設定されている。
【0072】
第1の測定用パターンD11は、第1のプロジェクター21により投写されて、被投写面9の第1投写領域A1に第1の投写測定用パターンT11を表示する。第1の投写測定用パターンT11には、第1図形D111に相当する第1投写図形T111、および第2図形D121に相当する第2投写図形T121が含まれる。同様に、第2〜第4の測定用パターンD12〜D14は、第2〜第4のプロジェクター22〜24により投写されて、被投写面9の第2〜第4投写領域A2〜A4に第2〜第4の投写測定用パターンT12〜T14を表示する。第2〜第4の投写測定用パターンT12〜T14には、第1図形D112〜D114に相当する第1投写図形T112〜T114、および第2図形D122〜D124に相当する第2投写図形T122〜T124が含まれる。本実施形態では、上述のように第2図形の配置の関係が設定されているので、互いの端部が重畳される一対の投写領域で端部に表示された第2投写図形が互いに重なり合わないようになっている。
【0073】
図3の説明に戻り補正情報演算部61、位置情報取得部62、第1図形位置検出部64、および第2図形位置検出部65は、第2のコンピューターのCPUおよびメモリー等により構成される。補正情報演算部61は、第2図形位置検出部65により検出された第2撮影画像の中の第2図形の位置と、第2測定用画像の元データ上の第2図形の位置とを比較して、被投写面9上での画素の位置と、プロジェクターの画像形成素子での画素の位置との対応関係を示す補正情報を算出する。補正情報演算部61は、補正情報を算出するときに、記憶部63に記憶されている測定用画像データを読出して直接的にまたは間接的に各プロジェクターへ出力する。ここでは、補正情報演算部61が、測定用画像データを画像制御装置5の画像補正部53へ出力する。測定用画像データは、画像制御装置5を介して間接的に各プロジェクターへ出力される。画像制御装置5は、必要に応じて、測定用画像データを画像形成素子の画素の配列に整合する形式に補正する。第1〜第4のプロジェクター21〜24は、供給された測定用画像データに基づいて、被投写面9に測定用パターンを投写する。
【0074】
第1図形位置検出部64は、被投写面9上に投写された測定用パターンを撮影した撮影画像を示す撮影画像データを受け取る。第1図形位置検出部64は、例えばエッジ処理やパターン認識処理等を撮影画像データに施して、撮影画像に写っている測定用パターン(以下、撮影パターンという)を検出する。第1図形位置検出部64は、検出した撮影パターンを示す画像データを記憶部63に格納する。
【0075】
第1図形位置検出部64は、撮影パターンに含まれている各第1図形の位置を検出する1回目の処理を行う。本実施形態の第1図形位置検出部64は、ハフ変換を利用して矩形状の第1図形の4つの頂点を検出し、撮影パターンに占める4つの頂点の位置を示すデータの組を各第1図形の情報として第2図形位置検出部65へ出力する。
【0076】
第1図形位置検出部64は、1回目の処理で第1図形の位置の検出に失敗したときに、検出失敗を示す情報を位置情報取得部62に出力する。第1図形位置検出部64は、第1図形の位置の検出に失敗したときに、位置情報取得部62から第1の位置情報を受取る。第1の位置情報は、撮影パターンの中で第1図形が占める概ねの位置、例えば第1図形の内側の位置としてユーザーが選択した位置を示す情報である。
【0077】
第1図形位置検出部64は、第1の位置情報が示す位置を基準として、各第1図形の位置を検出する2回目の処理を行う。2回目の処理では、探索する範囲を基準の位置の周囲に限定して、1回目の処理よりも探索の単位領域を狭めて精査する。これにより、演算の負荷を増すことなく探索の精度を高めることができ、1回目の処理よりも第1図形の位置の検出の成功率が高くなる。第1図形位置検出部64は、2回目の処理で第1図形の位置の検出に成功したときに、上記の各第1図形の情報を第2図形位置検出部65へ出力する。
【0078】
第1図形位置検出部64は、2回目の処理で第1図形の位置の検出に失敗したときに、検出失敗を示す情報を位置情報取得部62に出力し、位置情報取得62から第2の位置情報を受取る。第2の位置情報は、撮影パターンの中で第1図形の特徴点の位置(ここでは矩形の4つの頂点の位置)としてユーザーが指定した位置を示す情報である。第1図形位置検出部64は、受取った第2の位置情報が示す特徴点の位置を、上記の各第1図形の情報として第2図形位置検出部65へ出力する。このように、第1の位置情報及び第2の位置情報は、第1撮影画像の中の第1図形に対応する位置を示す情報としてユーザーが入力した位置情報である。
【0079】
位置情報取得部62は、第1図形位置検出部64から1回目あるいは2回目の処理での検出失敗を示す情報が出力されたときに、グラフィカルユーザーインターフェース(以下、GUIという)66を介して、ユーザーに検出失敗を通知し、第1の位置情報の入力を受付ける。GUI66は、例えば第2のコンピューターのモニターを利用して各種処理の経過や結果を示す情報を表示する。ユーザーは、各種処理の経過や結果に応じて、第2のコンピューターに接続されたキーボードやマウス等の入力デバイスを利用して、必要に応じて第1、第2の位置情報などの入力を行うことが可能である。ここでは、位置情報取得部62は、第1図形位置検出部64から1回目あるいは2回目の処理での検出成功を示す情報を受取り、GUI66を介してユーザーに検出成功を通知する。
【0080】
第2図形位置検出部65は、記憶部63から撮影パターンを示す画像データを読出し、第1図形位置検出部64から出力された上記の記の各第1図形の情報を参照して第2図形を検出する処理を行う。例えば、第2図形位置検出部65は、第1図形位置検出部64から出力された各第1図形の情報を参照し、各第1図形が投写された投写領域の撮影パターン上での範囲を推定する。第2図形位置検出部65は、推定した各投写領域の範囲の内側を探索して第2図形を検出し、検出された各第2図形に規定される特徴点の撮影パターン上での位置を求める。第2図形位置検出部65は、求めた各特徴点の位置を対象の特徴点が属する投写領域ごとのデータとして補正情報演算部61に出力する。
【0081】
なお、測定用画像データに規定されている第1図形に対する各第2図形の相対位置を用いて、例えば第2図形位置検出部65に撮影パターン上での各第2図形の略位置を推定させてもよい。推定した略位置の周囲を解析して各第2図形を検出させると、演算負荷を増すことなく精査させることができ、第2図形を高精度に検出することが可能になる。また、いずれかの第2図形について検出に失敗したときに、この第2図形の略位置として推定した値を用いて、この第2図形に規定される特徴点の位置を例えば第2図形位置検出部65に算出させてもよい。これにより、第2図形の検出失敗による処理の発散を回避することができる。
【0082】
すなわち、第2図形位置検出部65は、第1測定用画像の元データ上の第1図形の位置に対する第2測定用画像の元データ上の第2図形の位置の位置関係を用いて、第2推定画像の中の第2図形の位置を検出することができる。また、本実施形態では第1図形及び第2図形はいずれも測定用パターンに含まれているため、元データにおける両者の位置関係を把握することが容易である。なお、第1図形を含む第1測定用画像と第2図形を含む第2測定用画像が別の画像であったとしても、それぞれの画像の元データを構成する画素の対応関係が既知であれば、第1図形及び第2図形の位置関係を把握することが可能である。したがって、1枚の画像を第1測定用画像及び第2測定用画像を兼ねるものとして使用してもよく、異なる2枚の画像をそれぞれ第1測定用画像及び第2測定用画像として使用しても良い。
【0083】
このように、第2図形位置検出部65は、第1の位置情報又は第2の位置情報が示す位置を基準として第1撮影画像の中の第1図形の位置を第1図形位置検出部64が検出したときの検出結果と、第1測定用画像の元データ上の第1図形の位置に対する第2測定用画像の元データ上の第2図形の位置の位置関係と、を用いて、第2撮影画像の中の第2図形の位置を検出することができる。
【0084】
補正情報演算部61は、第2図形位置検出部65により検出された特徴点の位置と、測定用画像データ上での特徴点の位置とを比較して、補正情報を算出する。補正情報演算部61は、算出した補正情報を画像制御装置5へ出力する。画像制御装置5は、補正情報算出装置6から出力された補正情報を画像補正部53の記憶部に格納し、補正情報を更新する。
【0085】
図5は、コンテンツ画像Pを表示するまでの処理フローを示すフローチャート、図6は第1の位置情報の入力方法の一例を示す説明図、図7は第2の位置情報の入力方法の一例を示す説明図である。図6、図7では、第2図形の図示を省略している。ここでは、画像表示システム1の設置時に補正情報を算出する例について説明する。
【0086】
なお、下記のステップS4〜S12の処理を行うことにより、本発明に係る画像処理方法の一態様を行うことができる。また、ステップS6、S7、S10、S11の処理をコンピューターに行わせるプログラムを用いることにより、本発明に係る補正情報算出装置の機能を実現することができる。ステップS6、S7、S10〜S12の処理をコンピューターに行わせるプログラムを用いることにより、本発明に係る画像処理装置の機能を実現することもできる。
【0087】
図5に示すように、まず、被投写面9に対して複数のプロジェクター2を配置し、必要に応じて各プロジェクターの配置を粗調整する(ステップS1)。ステップS1では、例えば、第1〜第4のプロジェクター21〜24の各々から、各プロジェクターの投写領域(以下、部分投写領域という)の輪郭を示す配置用ガイドを被投写面9に投写させる。そして、配置用ガイドを参照しつつ各プロジェクターを移動させて、全体投写領域A0に占める各投写領域の位置を粗調整する。画像表示システム1の設置後、例えば画像表示システム1のメンテナンス時に補正情報を算出する場合には、上記のステップS1を省くこともできる。
【0088】
次いで、補正情報算出装置6の補正情報演算部61は、各プロジェクター用の測定用パターンを示す測定用画像データを対象となるプロジェクターに供給する。そして、第1〜第4のプロジェクター21〜24の各々に、供給された測定用画像データに基づいて測定用パターンを被投写面9に投写させる(ステップS2)。ここでは、第1〜第4のプロジェクター21〜24で並行して測定用パターンを投写させる。
【0089】
次いで、撮影装置4は、被投写面9上の投写測定用パターンT11〜T14を含んだ領域を撮影する(ステップS3)。
次いで、補正情報算出装置6の第1図形位置検出部64は、撮影装置4により撮影された撮影画像の中の測定用パターン(撮影パターン)を検出し、また撮影パターンの中の第1図形の位置を検出する処理を行う(ステップS4)。
【0090】
次いで、第1図形位置検出部64は、第1図形の位置を検出する1回目の処理の成否を判定する(ステップS5)。例えば、検出された第1図形の特徴点の数が、測定用画像データに規定された第1図形の形状の特徴点の数と一致しない場合や、第1図形の数がプロジェクターの数と整合しない場合、検出された第1図形の特徴点を結んだ図形と測定用画像データに規定された第1図形の形状との相関を求め、相関が閾値未満である場合に、1回目の処理で第1図形の位置の検出が失敗であると判定する。
【0091】
第1図形位置検出部64は、1回目の処理で第1図形の位置の検出が成功であると判定した場合(ステップS5;Yes)に、検出した第1図形の位置を第2図形位置検出部65に出力する。
第1図形位置検出部64は、1回目の処理で第1図形の位置の検出が失敗であると判定した場合(ステップS5;No)に、1回目の処理の検出失敗を示す情報を位置情報取得部62に出力する。
【0092】
位置情報取得部62は、1回目の処理の検出失敗を示す情報を受け取ると、GUI66を介してユーザーに検出失敗を通知し、第1の位置情報の入力を受け付ける(ステップS6)。
図6に示すように、例えばGUI66は第2のコンピューターのモニター上に、撮影パターンに相当する画像を表示させる。また、GUI66は測定用画像データに規定されている各第1図形をアイコンM1〜M4として、撮影パターンと重ねて表示する。ユーザーは、例えば第4の投写測定用パターンT14に含まれる第1投写図形T114を対象として、モニターに表示されている第1投写図形T114の内側まで、第1投写図形T114に対応するアイコンM4をマウスでドラッグしてドロップする。GUI66は、アイコンM4がドロップされた位置を示す情報を第1の位置情報として位置情報取得部62に出力する。位置情報取得部62は、ユーザーが入力した第1の位置情報を、GUI66を介して取得して第1図形位置検出部64に出力する。第1図形位置検出部64は、位置情報取得部62から出力された第1の位置情報を用いて第1図形の位置を検出する2回目の処理を行う(ステップS7)。
【0093】
第1図形位置検出部64は、第1図形の位置を検出する2回目の処理の成否を、ステップS5と同様にして判定する(ステップS8)。
第1図形位置検出部64は、2回目の処理で第1図形の位置の検出が成功であると判定した場合(ステップS8;Yes)に、検出した第1図形の位置を第2図形位置検出部65に出力する。例えば、GUI66は、第1図形の位置の検出成功を示す情報を受け取り、図6に示したモニター上の第1投写図形T114の色を変化させるとともに、第1図形の位置として検出された値を用いてモニター上に第1図形を表示させ、ユーザーに第1図形の位置の検出成功を通知する。ユーザーは、モニター上に撮影パターンと重ねて表示された検出結果の第1図形により、検出の成否を確認することができる。
第1図形位置検出部64は、2回目の処理で第1図形の位置の検出が失敗であると判定した場合(ステップS8;No)に、2回目の処理の検出失敗を示す情報を位置情報取得部62に出力する。
【0094】
位置情報取得部62は、2回目の処理の検出失敗を示す情報を受取り、GUI66を介してユーザーに検出失敗を通知し、第2の位置情報の入力を受け付ける(ステップS9)。図7に示すように、ユーザーは、モニター上の第1投写図形T114の内側に表示されているアイコンM4の各頂点を、例えばマウスでドラックして移動させ、モニター上の第1投写図形T114の各頂点の位置でドロップする。GUI66は、アイコンM4の各頂点がドロップされた位置を示す情報を第2の位置情報として位置情報取得部62に出力する。位置情報取得部62は、ユーザーが入力した第2の位置情報を、GUI66を介して取得して第1図形位置検出部64に出力する。なお、第1図形位置検出部64が1回目または2回目の処理で第1図形の位置の検出が成功であると判定した場合でも、実際には検出に失敗していることもありえる。上述したように、ユーザーは、モニター上で検出の成否を確認することが可能になっている。第1図形位置検出部64が第1図形の位置の検出が成功であると判定した場合でも、ユーザーは自身の判断により、上記の方法で第2の位置情報を入力し、第1図形位置検出部64の検出結果を第2の位置情報に更新することが可能になっている。
位置情報取得部62は、ユーザーが入力した第2の位置情報を、GUI66を介して取得して第1図形位置検出部64に出力する。第1図形位置検出部64は、位置情報取得部62から出力された第2の位置情報が示す特徴点の位置を第2図形位置検出部65に出力する。
【0095】
第2図形位置検出部65は、第1図形位置検出部64から出力された第1図形の特徴点の位置を用いて第2図形の位置を検出し、検出した第2図形の特徴点の位置を補正情報演算部61に出力する(ステップS10)。
補正情報演算部61は、第2図形位置検出部65から出力された第2図形の各特徴点の位置を、被投写面9上での特徴点の位置として、測定用画像データに規定された第2図形の各特徴点の位置と比較し、被投写面9上の画素の位置と各プロジェクターの画像形成素子の画素の位置との対応関係を示す補正情報を算出する(ステップS11)。
【0096】
補正情報の算出方法としては、各プロジェクターの画像形成素子での画素の位置と、被投写面9上での画素の位置との対応関係を示す情報が得られる方法であれば、特に限定されない。例えば、補正情報の算出方法として下記の2つの方法が挙げられる。
【0097】
第1の方法では、補正情報演算部61が、測定用画像データに規定された測定用パターンを撮影パターンに変換する射影変換を求める。この射影変換により画像データ上の各画素の座標(i,j)を変換して、画素ごとのデータのテーブルとして補正情報を算出する。なお、撮影パターンを測定用画像データに規定された測定用パターンに変換する射影変換を求める場合でも、画像形成素子上での画素の座標と、被投写面での画素の位置との対応関係を示す補正情報が得られる。
【0098】
図8は、補正情報の算出方法の一例を示す説明図である。図8には、測定画像用データに規定された測定用パターンDの一部と、画像データ上での撮影パターンTとを概念的に図示している。図8において、符号D1〜D4は、測定用パターンDに含まれる特徴点を示す。特徴点D1〜D4は、各特徴点を順に結んだ線が領域D5の輪郭をなすように選択される。図8において、符号T1〜T4は、撮影パターンTに含まれる特徴点を示す。特徴点T1〜T4は、投写された測定用パターンDにおける特徴点D1〜D4に相当する特徴点である。特徴点T1〜T4を順に結んだ線は領域T5の輪郭をなしている。
【0099】
射影変換の変換式は、下記の式(1)、式(2)で表すことができる。式(1)、式(2)において、(x,y)は変換前の任意の点のij座標(i,j)を示し、(X,Y)はこの点の変換先のij座標(i,j)を示す。a〜hは変換係数を示し、a〜hを求めることにより、1つの射影変換が求まる。
X=(ax+by+c)/(gx+hy+1)・・・(1)
Y=(dx+ey+f)/(gx+hy+1)・・・(2)
【0100】
特徴点D1〜D4の各々の座標は、測定用画像データに規定されるので既知である。特徴点T1〜T4の各々の座標は、撮影パターンTから特徴点を検出することにより、既知になっている。式(1)、式(2)の(x,y)に特徴点D1の座標を代入し、(X,Y)に特徴点T1の座標を代入すると、a〜hの関係式が2つ得られる。同様に特徴点D2、T2の組、特徴点D3、T3の組、特徴点D4、T4の組のそれぞれの座標を代入することにより、a〜hの8つの未知数に対して8つの関係式が得られる。この8元1次方程式を解くことにより、領域D5を領域T5に変換する射影変換のa〜hが得られる。得られた射影変換に対して、領域D5の周上および内側に含まれる各画素の座標を(x,y)に代入することにより、領域D5の各画素と1対1で対応する領域T5での各画素の座標が求まる。
【0101】
ここでは、測定用パターンに含まれる特徴点から特徴点D1〜D4を選択して、測定用パターンDの一部をなす領域D5に対する射影変換を求める。そして、異なる特徴点を特徴点D1〜D4として選択することにより、領域D5を異ならせて射影変換を求める。得られた射影変換を用いて、上述のようにして領域D5の各画素と1対1で対応する領域T5での各画素の座標を求める。以下同様にして測定用パターンの部分ごとの射影変換を求め、測定用パターンの各画素の座標と、画素ごとに対応する撮影パターンの画素の座標を求める。測定用パターンの各画素の座標は、プロジェクターの画像形成素子における画素の位置と対応関係がある。また、撮影パターンの画素の座標は、被投写面での画素の位置と対応関係がある。したがって、結果的に画像形成素子上での画素の座標と、被投写面での画素の位置との対応関係を示す補正情報が得られる。
【0102】
例えば、画像形成素子の各画素の座標に対して上記の射影変換を行うことにより、被投写面9上での画素(以下、変換画素という)の座標が求まる。変換画素の座標の最大値や最小値を参照することにより、有効投写領域Aの範囲が自動または手動で設定される。そして、有効投写領域Aの中に、コンテンツ画像の形式や画素数に応じた画素(表示画素)の配列を配置するものとして、被投写面9上での各表示画素の座標を上記の有効投写領域Aの範囲の設定値から求める。表示画素の座標が変換画素の座標からずれる場合には、表示画素の周囲に位置する変換画素に供給される画素データを用いて表示画素の画素データを補間により求めるべく、周囲の変換画素と表示画素との距離に応じた補間の重み付けを示す補間係数を求めておいてもよい。この補間係数は表示画素ごとの固定値になるので、補正情報の一部として保存しておくとよい。
【0103】
第2の方法では、撮影パターンを測定用画像データに規定された測定用パターンに変換する射影変換(第1の方法での射影変換の逆変換)を求める。また、例えば撮影パターンに含まれる特徴点の位置を用いて全体投写領域A0の範囲を推定し、有効投写領域Aの範囲を自動または手動で設定する。そして、有効投写領域Aの中に、コンテンツ画像の形式や画素数に応じた表示画素の配列を配置するものとして、被投写面9上での各表示画素の座標を上記の有効投写領域Aの範囲の設定値から求める。得られた各表示画素の座標を射影変換により変換することにより、被投写面9上での各表示画素に対応する画像形成素子上の画素(以下、変調単位という)の位置が求まる。得られた変調単位の位置が、実際の変調単位の位置と整合しない場合、すなわち変調単位に2以上の表示画素が対応する場合には、必要に応じて各変調単位に入力される画素データを補間により求めるべく、補間係数を求めておいてもよい。上述のように、求めた補間係数は補正情報の一部として保存しておくとよい。
【0104】
図5の説明に戻り、コンテンツ画像Pを表示するときに画像制御装置5は、コンテンツ画像Pを示す画像データに基づいて各プロジェクター用の部分画像データを作成するとともに、画像データに対して補正情報を用いて位置補正処理を施す(ステップS12)。
【0105】
次いで、画像処理装置3は、位置補正処理の補正後の部分画像データを、対象となるプロジェクターに供給する。第1〜第4のプロジェクター21〜24の各々は、供給された部分画像データに基づいて部分画像を投写する(ステップS13)。このようにして、第1〜第4の部分画像P1〜P4からなるコンテンツ画像Pが表示される。
【0106】
本実施形態の補正情報算出装置6にあっては、ユーザーが入力した位置情報を用いて第1図形を検出するので、第1図形の検出の成功率が高くなり、第2図形の位置を正確に求めることができる。第1図形と第2図形とで、形状や寸法が異なっているので、ユーザーは、第1図形を第2図形から区別しやすくなる。したがって、ユーザーによる第1図形の探索の手間を減らすことができ、ユーザーによる第1図形の誤認の発生を減らすことができる。よって、ユーザーの負担を最小限に抑さえつつ、撮影画像に写った特徴点と被投写面上での特徴点との対応関係を正確に求めることが可能になる。
【0107】
また、第1図形位置検出部64が第1図形の位置の検出に成功したときに、ユーザーによる位置情報の入力を省くことができ、ユーザーの負担を最小限に抑さえることができる。また、ユーザーは第1図形の内側の位置を示す第1の位置情報を入力すればよいので、第1図形の検出の基準になる位置を簡便に指定することができる。さらに、第1図形位置検出部64が第1図形の位置を検出する2回目の処理で失敗したときに、第2の位置情報を用いて処理が継続されるので、処理のロバスト性を高めることができる。
【0108】
第1図形と第2図形とで色調が異なるのでユーザーが第1図形を第2図形から区別しやすくなり、第1図形の検索に要するユーザーの負担を最小限に抑えることができる。また、第1図形と第2図形の一方の図形の位置を検出するときに、他方の図形の影響を加味しないように色の違いを利用したフィルタリングを施すことが可能になる。これにより、第1図形の位置や第2図形の位置の検出の成功率を高めることができる。
【0109】
上述の理由により、本実施形態の画像処理装置3は、補正情報を取得する上での手間を省きつつ、部分画像の歪や相対位置のずれを補正可能になっている。また、本実施形態の画像表示システムは1、利便性が高く、しかも高品質な画像を表示可能なものになる。また、本実施形態の画像処理方法は、ユーザーの負担を最小限に抑えつつ、撮影画像に写った特徴点と被投写面上での特徴点との対応関係を正確に求めることが可能であるので、補正情報を取得する上での手間を省きつつ、画像歪等を高精度に補正可能になっている。
【0110】
なお、本発明の技術範囲は下記の実施形態に限定されるものではない。本発明の主旨を逸脱しない範囲内で多様な変形が可能である。例えば、上記の実施形態では第1図形と第2図形とを含んだ測定用画像を用いているが、第1図形のみを含んだ第1測定用画像と、第2図形のみを含んだ第2測定画像を併用してもよい。
【符号の説明】
【0111】
1・・・画像表示システム、2・・・プロジェクター、3・・・画像処理装置、
4・・・撮影装置、5・・・画像制御装置、6・・・補正情報算出装置、
8・・・信号源、9・・・被投写面、21・・・第1のプロジェクター、
22・・・第2のプロジェクター、23・・・第3のプロジェクター、
24・・・第4のプロジェクター、51・・・画像入力部、52・・・画像保存部、
53・・・画像補正部、54・・・画像出力部、61・・・補正情報演算部、
62・・・位置情報取得部、63・・・記憶部、64・・・第1図形位置検出部、
65・・・第2図形位置検出部、A・・・有効投写領域、A0・・・全体投写領域、
A1・・・第1投写領域、A2・・・第2投写領域、A3・・・第3投写領域、
A4・・・第4投写領域、D・・・測定用パターン、D1〜D4・・・特徴点、
D5・・・領域、D11〜D14・・・測定用パターン、
D111〜D114・・・第1図形、D121〜D124・・・第2図形、
P・・・コンテンツ画像、P1・・・第1の部分画像、P2・・・第2の部分画像、
P3・・・第3の部分画像、P4・・・第4の部分画像、P5・・・重畳領域、
M1〜M4・・・アイコン、S1〜S13・・・ステップ、T・・・撮影パターン、
T1〜T4・・・特徴点、T5・・・領域、T11〜T14・・・投写測定用パターン、
T111〜T114・・・第1投写図形、T121〜T124・・・第2投写図形

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1図形を含んだ第1測定用画像がプロジェクターから被投写面に投写されたときに前記被投写面上の前記第1図形を撮影した第1撮影画像の中の前記第1図形に対応する位置を示す情報としてユーザーが入力した位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記第1図形とは形状と寸法の少なくとも一方が異なる第2図形を含んだ第2測定用画像が前記プロジェクターから前記被投写面に投写されたときに前記被投写面上の前記第2図形を撮影した第2撮影画像の中の前記第2図形の位置について、前記位置情報が示す位置を基準として前記第1撮影画像の中の前記第1図形の位置を検出したときの検出結果と、前記第1測定用画像の元データ上の前記第1図形の位置に対する前記第2測定用画像の元データ上の前記第2図形の位置の位置関係と、を用いて、前記第2撮影画像の中の前記第2図形の位置を検出する第2図形位置検出部と、
前記第2図形位置検出部により検出された前記第2撮影画像の中の前記第2図形の位置と、前記第2測定用画像の元データ上の前記第2図形の位置とを比較して、前記被投写面上での画素の位置と、前記プロジェクターの画像形成素子での画素の位置との対応関係を示す補正情報を算出する補正情報演算部と、
を備えていることを特徴とする補正情報算出装置。
【請求項2】
前記第1撮影画像の中の前記第1図形の位置を検出する第1図形位置検出部を備え、
第2図形位置検出部は、前記第1図形位置検出部が前記第1図形の検出に成功したときに、前記第1図形位置検出部による検出結果を用いて前記第2撮影画像の中の前記第2図形の位置を検出し、前記第1図形位置検出部が前記第1図形の検出に失敗したときに、前記位置情報を用いて検出された前記第1図形の位置を用いて前記第2撮影画像の中の前記第2図形の位置を検出することを特徴とする請求項1に記載の補正情報算出装置。
【請求項3】
前記位置情報は、前記第1図形の内側の位置を示す第1の位置情報と、前記第1撮影画像の中の前記第1図形の位置を規定する特徴点の位置を示す第2の位置情報とを含み、
前記位置情報取得部は、前記第1の位置情報を用いた前記第1図形の位置の検出が失敗したときに、前記第2の位置情報を取得し、
前記第2図形位置検出部は、前記位置情報取得部が前記第2の位置情報を取得したときに、前記第2の位置情報が示す特徴点に規定される前記第1図形の位置を前記第1撮影画像の中の前記第1図形の位置として用いて、前記第2撮影画像の中の前記第2図形の位置を検出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の補正情報算出装置。
【請求項4】
前記第1測定用画像が前記第2図形を含み、
第2図形位置検出部は、前記第1撮影画像を前記第2撮影画像として用いて前記第2撮影画像の中の前記第2図形の位置を検出することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の補正情報算出装置。
【請求項5】
前記第1図形の寸法が前記第2図形の寸法よりも大きく、前記第1測定用画像に含まれる前記第2図形の数が前記第1測定用画像に含まれる前記第1図形の数よりも多いことを特徴とする請求項4に記載の補正情報算出装置。
【請求項6】
前記第1測定用画像において前記第1図形の色調が前記第2図形の色調と異なっており、前記第1図形の色調が前記第2図形の色調と区別されるように前記被投写面上の前記第1測定用画像を撮影した撮像画像を前記第1撮影画像として用いることを特徴とする請求項4または請求項5のいずれか一項に記載の補正情報算出装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の補正情報算出装置と、
前記補正情報算出装置により算出された前記補正情報を参照して、補正後の前記画像データに基づいて前記プロジェクターにより前記被投写面上に投写される画像が補正前の前記画像データが示す画像と略一致するように前記画像データを補正する画像補正部と、
を備えていることを特徴とする画像処理装置。
【請求項8】
請求項7に記載の画像処理装置と、
前記画像処理装置により補正された前記補正後の画像データに基づいて画像を投写する複数のプロジェクターと、
を備えていることを特徴とする画像表示システム。
【請求項9】
第1図形を含んだ第1測定用画像をプロジェクターから被投写面に投写するステップと、
前記被投写面上の前記第1図形を撮影して第1撮影画像を取得するステップと、
前記第1撮影画像の中の前記第1図形に対応する位置を示す情報としてユーザーが入力した位置情報を取得するステップと、
前記第1図形とは形状と寸法の少なくとも一方が異なる第2図形を含んだ第2測定用画像を前記プロジェクターから前記被投写面に投写するステップと、
前記被投写面上の前記第2図形を撮影して第2撮影画像を取得するステップと、
前記第2撮影画像の中の前記第2図形の位置について、前記位置情報が示す位置を基準として前記第1撮影画像の中の前記第1図形の位置を検出するステップと、
前記第1撮影画像の中の前記第1図形の位置の検出結果と、前記第1測定用画像の元データ上の前記第1図形の位置に対する前記第2測定用画像の元データ上の前記第2図形の位置の位置関係とを用いて、前記第2撮影画像の中の前記第2図形の位置を検出するステップと、
前記第2撮影画像の中の前記第2図形の位置の検出結果と、前記第2測定用画像の元データ上の前記第2図形の位置とを比較して、前記被投写面上での画素の位置と、前記プロジェクターの画像形成素子での画素の位置との対応関係を示す補正情報を算出するステップと、
前記補正情報を参照して、補正後の前記画像データに基づいて前記プロジェクターにより前記被投写面上に投写される画像が補正前の前記画像データが示す画像と略一致するように前記画像データを補正するステップと、
を備えていることを特徴とする画像補正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−180251(P2011−180251A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42465(P2010−42465)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】