説明

補正機能を有する屈曲部材の製造装置および屈曲部材の製造方法

【課題】補正機能を備えた屈曲部材の製造装置および屈曲部材の製造方法を提供する。
【解決手段】中間部材20を長手方向へ相対的に送りながら第1の位置Aで支持する支持手段11と、第2の位置Bで送られる中間部材20を部分的に加熱し、第3の位置Cで第2の位置Bで加熱された部分を冷却するとともに、第3の位置Cよりも下流の領域Dで、中間部材20を把持する把持手段の位置を二次元または三次元で変更して加熱された部分に曲げモーメントを与えることによって中間部材20に曲げ加工を行って屈曲部材21を製造する加工手段12と、屈曲部材21における曲げ加工部の三次元形状を計測する計測手段13と、計測手段13による計測結果に基づいてこの屈曲部材21の後に曲げ加工を行われる中間部材20の、曲げ加工前の三次元形状を補正する補正加工を行う補正加工手段14とを備える屈曲部材21の製造装置10である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補正機能を有する屈曲部材の製造装置および屈曲部材の製造方法に関し、具体的には、軽量かつ小型であるとともに優れた寸法精度を有する屈曲部材を製造することができる、補正機能を有する屈曲部材の製造装置および屈曲部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、自動車や各種機械等に用いられる、屈曲した形状を有する金属製の強度部材、補強部材または構造部材には、高強度、軽量かつ小型であること等が求められる。従来より、この種の屈曲部材は、例えば、プレス加工品の溶接、厚板の打ち抜き、さらには鍛造等により製造されてきた。しかし、これらの製造方法により製造される屈曲部材の軽量化および小型化には限界があり、その実現は容易なことではない。
【0003】
近年では、例えば非特許文献1に開示されるように、いわゆるチューブハイドロフォーミング工法によりこの種の屈曲部材を製造することも積極的に検討されている。非特許文献1の28頁にも記載されているように、チューブハイドロフォーミング工法は、素材となる材料の開発や成形可能な形状の自由度の拡大等といった課題を有しており、今後よりいっそうの開発が必要である。
【0004】
このような現状に鑑み、本出願人は、先に特許文献1により曲げ加工装置に係る発明を開示した。図7は、この曲げ加工装置1の概略を示す説明図である。
図7に示すように、この曲げ加工装置1は、基本的に、支持手段2、2によりその軸方向へ移動自在に支持された金属材3を上流側から下流側へ向けて送り装置4により送りながら、支持手段2、2の下流で曲げ加工を行う曲げ加工方法を用いて屈曲部材5を製造するものである。すなわち、支持手段2、2の下流で高周波加熱コイル6により金属材3を部分的に焼入れが可能な温度域に急速に加熱するとともに高周波加熱コイル6の下流に配置される水冷装置7により金属材3を急冷する。そして、金属材3を送りながら支持可能であるロール対8a、8aを少なくとも一組有する可動ローラダイス8の位置を二次元又は三次元で変更して金属材3の加熱された部分に曲げモーメントを付与することにより、金属材3に曲げ加工を行う。このため、曲げ加工装置1によれば、高い作業能率で屈曲部材5を製造することができる。
【0005】
この発明に係る曲げ加工装置1によれば、確かに、二次元又は三次元に屈曲する曲げ加工部と焼入れ部とを長手方向及び/又はこの長手方向と交叉する面内の周方向へ向けて断続的又は連続的に有する屈曲部材5を、高い作業能率で量産することが可能になる。
【0006】
さらに、非特許文献2には、特許文献1により開示された発明のように二次元または三次元の複雑な形状に加工するものではないとともに焼入れによる高強度化を意図するものでもないが、中空の閉断面形状を有するとともに長手方向へ一体に構成される金属製の長尺の扁平な素材を長手方向へ送りながら部分的に急速な加熱及び冷却を行うことにより、曲げ半径が一定の二次元形状に曲げ加工を行って得られる屈曲部材の各部の寸法が報告されている。
【0007】
図8は、非特許文献2により開示された曲げ加工の状況を示す説明図であり、図9は、この曲げ加工の前後における断面の寸法変化を示す説明図である。
図8及び図9に示すように、この曲げ加工は、図8に示すように、反対方向へ二回曲げ加工(曲げ半径R1、R2)を行うものである。幅W、高さHの矩形断面の異形管9aに曲げ加工を行うと、曲げ加工後の製品である屈曲部材9bの幅は曲げ加工前の幅Wよりも微小量ΔW減少してW(=W−ΔW)となる。また、曲げ加工の内周側であるB側の高さHは、曲げ加工前の高さHに比較して微小量ΔH増加する(H=H+ΔH)のに対し、曲げ加工の外周側であるA側の高さHは曲げ加工前の高さHに比較して微小量ΔH’減少する(H=H−ΔH’)。
【0008】
このように、中空の閉断面形状を有するとともに長手方向へ一体に構成される金属製の長尺の扁平な素材9aに曲げ加工を行って屈曲部材9bを製造すると、曲げ加工を行われた部分において、断面の幅と高さが曲げ加工前の寸法から若干ではあるものの変化し、寸法精度が低下することとなる。これらの寸法精度の低下の程度は、曲げ加工前の素材9aの寸法(幅W、高さH、肉厚t等)や、曲げ加工の条件(曲げ半径R、加熱幅b等)に影響される。したがって、屈曲部材9bに高い寸法精度が要求される場合には、曲げ加工に伴う寸法変化をできるだけ抑制する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2006/093006号パンフレット
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】自動車技術 Vol.57,No.6,2003 23〜28頁
【非特許文献2】塑性と加工(日本塑性加工学会誌)第28巻第313号(1987−2 214〜221頁 異形管のダイレス曲げ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1により開示された発明に係る曲げ加工装置1は、加工素材として円形等の定形の断面形状を有する金属材3を主な対象とする。このため、この発明に基づいて製造される屈曲部材5には、曲げ加工により成形可能な範囲があり、加工できない形状が存在することには変わりがなく、屈曲部材5のさらなる軽量化および小型化の実現には制約がある。
【0012】
また、非特許文献2に開示されるように、中空の閉断面形状を有するとともに長手方向へ一体に構成される金属製の長尺の扁平な素材9aに曲げ加工を行うと、屈曲部材9bにおける曲げ加工を行われた部分において、断面の幅と高さが曲げ加工前の寸法から若干ではあるものの変化し、寸法精度が低下する。このため、特許文献1により開示された発明により、中空の閉断面形状を有するとともに長手方向へ一体に構成される金属製の長尺の扁平な素材9aに曲げ加工を行って、優れた寸法精度を有する屈曲部材9bを製造するためには、上述した寸法精度の低下を抑制する必要がある。
【0013】
本発明は、このような従来の技術が有する課題に鑑みてなされたものであり、屈曲部材を高い寸法精度で製造することができる屈曲部材の製造装置および屈曲部材の製造方法を提供することを目的とし、さらには、扁平な断面形状を有することから軽量かつ小型である屈曲部材を、高い寸法精度で製造することができる、屈曲部材の製造装置および屈曲部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、特許文献1により開示された曲げ加工装置により扁平な素材に曲げ加工を行った場合に生じる寸法誤差は、例えば、素材に与えられる曲げモーメントや、加工時に素材に対して行われる加熱や冷却といった様々かつ複雑な要因に起因して発生し、これらの要因による寸法誤差を解消することは技術的に極めて困難であることを知見した。本発明者らはさらに検討した結果、素材における曲げ加工を行われた部分の三次元形状を計測または予測し、三次元形状の計測値または予測値と目標値との偏差に基づいて加工後の形状を予測し、素材における曲げ加工を行われていない部分の三次元形状を補正すれば、扁平な断面形状を有することから軽量かつ小型である屈曲部材を、高い寸法精度で製造することができるようになることを知見し、さらに検討を重ねて本発明を完成した。
【0015】
広義には、本発明は、(i)閉断面形状を有するとともに長手方向へ一体に構成される金属製の長尺の素材を、その長手方向へ相対的に送りながら第1の位置において支持する支持手段と、(ii)この素材の送り方向について第1の位置よりも下流の第2の位置において送られる素材を部分的に加熱し、素材の送り方向について第2の位置よりも下流の第3の位置において第2の位置で加熱された部分を冷却するとともに、素材の送り方向について第3の位置よりも下流の領域で、素材を把持する把持手段の位置を、二次元または三次元で変更して、素材における加熱された部分に曲げモーメントを与えることによって素材に曲げ加工を行って屈曲部材を製造する加工手段と、(iii)素材の送り方向について加工手段よりも上流に配置され、屈曲部材の後に曲げ加工を行われる素材の、曲げ加工前の三次元形状を補正する補正加工を行う補正加工手段とを備えることを特徴とする補正機能を有する屈曲部材の製造装置である。
【0016】
本発明は、さらに具体的には、本発明は、(i)閉断面形状を有するとともに長手方向へ一体に構成される金属製の長尺の素材を、その長手方向へ相対的に送りながら第1の位置において支持する支持手段と、(ii)この素材の送り方向について第1の位置よりも下流の第2の位置において送られる素材を部分的に加熱し、素材の送り方向について第2の位置よりも下流の第3の位置において第2の位置で加熱された部分を冷却するとともに、素材の送り方向について第3の位置よりも下流の領域で、素材を把持する把持手段の位置を、二次元または三次元で変更して、素材における加熱された部分に曲げモーメントを与えることによって素材に曲げ加工を行って屈曲部材を製造する加工手段と、(iii)素材の送り方向について加工手段よりも上流に配置され、曲げ加工を行われた屈曲部材における曲げ加工部の三次元形状の計測結果に基づいて、屈曲部材の後に曲げ加工を行われる素材の、曲げ加工前の三次元形状を補正する補正加工を行う補正加工手段とを備えることを特徴とする補正機能を有する屈曲部材の製造装置である。
【0017】
具体的には、本発明は、(i)閉断面形状を有するとともに長手方向へ一体に構成される金属製の長尺の素材を、その長手方向へ相対的に送りながら第1の位置において支持する支持手段と、(ii)素材の送り方向について第1の位置よりも下流の第2の位置において送られる素材を部分的に加熱し、素材の送り方向について第2の位置よりも下流の第3の位置において第2の位置で加熱された部分を冷却するとともに、素材の送り方向について第3の位置よりも下流の領域で、素材を把持する把持手段の位置を、二次元または三次元で変更して、素材における加熱された部分に曲げモーメントを与えることによって素材に曲げ加工を行って屈曲部材を製造する加工手段と、(iii)曲げ加工を行われた屈曲部材における曲げ加工部の三次元形状を計測する計測手段と、(iv)素材の送り方向について加工手段よりも上流に配置され、計測手段による計測結果に基づいて屈曲部材の後に曲げ加工を行われる素材の、曲げ加工前の三次元形状を補正する補正加工を行う補正加工手段とを備えることを特徴とする補正機能を有する屈曲部材の製造装置である。
【0018】
別の観点からは、本発明は、閉断面形状を有するとともに長手方向へ一体に構成される金属製の長尺の素材を、その長手方向へ相対的に送りながら第1の位置において支持し、この素材の送り方向について第1の位置よりも下流の第2の位置において送られる素材を部分的に加熱し、素材の送り方向について第2の位置よりも下流の第3の位置において第2の位置で加熱された部分を冷却するとともに、素材の送り方向について第3の位置よりも下流の領域で、素材を把持する把持手段の位置を、二次元または三次元で変更して、素材における加熱された部分に曲げモーメントを与えることによって素材に曲げ加工を行う屈曲部材の製造方法であって、曲げ加工を行われた屈曲部材における曲げ加工部の三次元形状を計測し、この三次元形状の計測結果に基づいて、屈曲部材の後に曲げ加工を行われる素材の、曲げ加工前の三次元形状を補正する補正加工を行うことを特徴とする屈曲部材の製造方法である。
【0019】
これらの本発明では、補正加工が、第2の位置よりも上流に配置された一対のロールにより、行われることが望ましい。
これらの本発明では、補正加工が、素材に与えられる曲げモーメント、第2の位置で行われる素材の加熱、または、第3の位置で行われる素材の冷却のうちの少なくとも一つに起因して発生する寸法誤差を相殺するように、行われることが望ましい。本発明によれば、円形閉断面形状の素材のみならず、扁平閉断面形状の素材に対しても優れた寸法精度で曲げ加工を行って屈曲部材を製造することができる。特に、扁平閉断面形状の素材は、素材に与えられる曲げモーメント、第2の位置で行われる素材の加熱、または、第3の位置で行われる素材の冷却の少なくとも一つに起因して発生する寸法変化を予測することが極めて困難であるため、本発明は産業上特に有用である。
【0020】
また、本発明は、閉断面形状を有するとともに長手方向へ一体に構成される金属製の長尺の素材を、その長手方向へ相対的に送りながら第1の位置において支持する支持手段と、この素材の送り方向について第1の位置よりも下流の第2の位置において送られる素材を部分的に加熱し、素材の送り方向について第2の位置よりも下流の第3の位置において第2の位置で加熱された部分を冷却するとともに、素材の送り方向について第3の位置よりも下流の領域で、素材を把持する把持手段の位置を、二次元または三次元で変更して、素材における加熱された部分に曲げモーメントを与えることによって素材に曲げ加工を行って屈曲部材を製造する加工手段と、素材の送り方向について加工手段よりも上流に配置され、曲げ加工を行われた屈曲部材における曲げ加工部の三次元形状の予測結果に基づいて、屈曲部材の後に曲げ加工を行われる素材の、曲げ加工前の三次元形状を補正する補正加工を行う補正加工手段とを備えることを特徴とする補正機能を有する屈曲部材の製造装置である。
【0021】
これらの本発明では、閉断面形状を有するとともに長手方向へ一体に構成される金属製の長尺の扁平な素材に曲げ加工を行う場合に、与えられる曲げモーメント、第2の位置で行われる素材の加熱、または、第3の位置で行われる素材の冷却の少なくとも一つに起因して発生する、素材における曲げ加工を行われた部分の三次元の寸法変化を計測手段により測定または算出し、それを補正するために補正加工手段によって、この後に曲げ加工を行われる素材の、曲げ加工前の三次元形状を補正する補正加工を行う。なお、素材における曲げ加工を行われた部分の三次元の寸法変化を算出する手法としては、例えば、目的の寸法、形状と実測した寸法、形状との偏差を、素材の材質や厚みによって統計処理して得られる関数に基づいて、算出することが挙げられる。
【0022】
例えば、屈曲部材から測定して求めた、幅W、高さHの矩形断面の素材における曲げ加工を行われた部分に発生した差異量ΔW、ΔHを加味して、曲げ加工後の幅、高さが目標寸法W’、高さH’となるように、曲げ加工前の素材の幅を(W+ΔW)とし、曲げ外周側であるA側の高さを(H+ΔH)とし、曲げ外周側であるB側の高さを(H−ΔH’)として、曲げ加工を行う。なお、三次元形状の補正は、3つの座標系の内一つの座標系のみが変化する場合は一次元、二つの座標系が変化する場合には二次元、全ての座標系において変数が変化する場合には三次元での補正になる。
【0023】
特に、素材の断面が丸断面ではなくて矩形断面や偏平断面である場合には、曲げモーメントを与えられることによる寸法変化のみならず、図5(a)および図5(b)を参照しながら後述するように、第2の位置で行われる素材の加熱や、第3の位置で行われる素材の冷却の不均一に起因すると考えられる寸法変化も発生することがあるので、本発明は特に有効である。
【0024】
これらの本発明により製造される屈曲部材は、長手方向へ向けて少なくとも第1の部分および第2の部分を備え、第1の部分に含まれる一対の長辺と、第2の部分に含まれる一対の長辺とが互いに異なる平面内に存在するように、第1の部分と第2の部分との間にねじれ部および/または曲げ部を有することが例示される。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、曲げ加工を行われた屈曲部材における曲げ加工部の三次元形状を計測し、この三次元形状の計測結果に基づいて、屈曲部材の後に曲げ加工を行われる素材の、曲げ加工前の三次元形状を補正する補正加工を行うので、優れた寸法精度を有する屈曲部材を製造することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本発明に係る製造装置の構成例を模式的に示す説明図である。
【図2】図2は、中間部材及び屈曲部材の横断面形状の一例を示す説明図である。
【図3】図3は、水平ロールにより加工されて中間部材が製造される状況を示す説明図である。
【図4】図4(a)および図4(b)は、いずれも、高周波加熱装置による加熱や冷却装置による冷却の不均一に起因して屈曲部材に発生する寸法変化の一例を模式的に示す説明図である。
【図5】図5(a)、図5(b)は、それぞれ、図4(a)、図4(b)に示す寸法変化が発生した屈曲部材に対する従来の補正手段の一例を模式的に示す説明図である。
【図6】図6は、本発明により製造される屈曲部材の構成例を、簡略化および概念化して示す説明図である。
【図7】図7は、特許文献1により曲げ加工装置の概略を示す説明図である。
【図8】図8は、非特許文献2により開示された曲げ加工の状況を示す説明図である。
【図9】図9は、非特許文献2により開示された曲げ加工の前後における断面の寸法変化を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以降の説明では、本発明により製造される屈曲部材が、鋼製であって、自動車や各種機械に用いられる強度部材、補強部材または構造部材である場合を例にとる。
【0028】
図1は、本発明に係る補正機能を有する屈曲部材21の製造装置(以下、単に「製造装置」という)10の構成例を模式的に示す説明図である。
図1に示すように、この製造装置10は、支持手段11と、補正加工手段14と、加工手段12と、計測手段13とを備えるので、これらの構成要素を順次説明する。
【0029】
(i)支持手段11
図1に示すように、はじめに、中空の円形の閉断面形状15aを有するとともに長手方向へ一体に構成される鋼製の長尺の素材である鋼管15を、送り装置16によりその長手方向へ送る。
【0030】
送り装置16は、鋼管15をその長手方向へ送るためのものである。このような送り装置16としては、電動サーボシリンダーを用いたタイプが例示されるが、特定の型式のものに限定する必要はなく、ボールネジを用いたタイプやタイミングベルトやチェーンを用いたタイプなど、この種の送り装置として公知のものであれば等しく用いることができる。
【0031】
なお、図1に示す製造装置10では、円形の横断面形状15aを有する鋼管15を加工素材として用いた場合を例にとるが、本発明における加工素材は、鋼管15に限定されるものではなく、例えば矩形、楕円形、長円形、正方形さらには各種異形の横断面形状を有する中空の金属材に対しても、鋼管15と同様に適用可能である。
【0032】
この鋼管15は、つかみ部17で保持されながら、送り装置16によって、所定の送り速度でその軸方向(長手方向)へ送られる。図1に示す製造装置10では、つかみ部17の下流に補正加工手段14が配置されるが、製造装置10の理解を容易にするため、補正加工手段14の説明は、支持手段11の説明を行った後に行う。
【0033】
支持手段11は、後述する補正加工手段14により加工された中間部材20を、第1の位置Aにおいて支持する。すなわち、支持手段11は、送り装置16によりその軸方向へ送られる中間部材20を、第1の位置Aにおいて移動自在に支持するためのものである。この製造装置10では、支持手段11として、対向して配置される一対の孔型の従動ロール11a、11bを2組並設して用いるが、特定の型式のものに限定する必要はなく、この種の支持装置として公知のものであれば等しく用いることができる。このようにして中間部材20は、支持手段11の設置位置Aを通過して、その軸方向へ送られる。
【0034】
なお、支持手段11に、後述する水平ロール18a、18bによる扁平閉断面形状20aへの加工機能(補正加工手段)を兼備させてもよい。これによれば、水平ロール18a、18bを、つかみ部17と支持手段11との間に配置する必要がなくなるので、製造装置10全体を小型化することができる。
【0035】
また、図1に示すように、水平ロール18a、18bを、つかみ部17と支持手段11との間に配置して扁平閉断面形状20aへの加工を行う場合には、支持手段11が支持する中間部材20は中空の扁平閉断面形状20aを有することから、支持手段11の開度を、この扁平閉断面形状20aに適合させて、例えば油圧やエアーを用いて調整可能に構成することが望ましい。
【0036】
このように、支持手段11は、扁平閉断面形状20aを有するとともに長手方向へ一体に構成される金属製の長尺の素材である中間部材20を、その長手方向へ相対的に送りながら第1の位置Aにおいて支持するものである。
【0037】
(ii)補正加工手段14
補正加工手段14は、鋼管15の送り方向について後述する加工手段12よりも上流側に配置される。この製造装置10における補正加工手段14は、対向配置される上下一対の水平ロール18a、18bによって、構成される。このような水平ロール18a、18bは、特定の型式のものに限定する必要はなく、この種の加工に供される周知慣用のロールを用いればよい。例えば、多角形あるいは異形の鋼管を用いた場合には、3方ロール、4方ロールなどとして、補正を行えばよい。
【0038】
この補正加工手段14は二つの機能を有する。第1の機能は、送り装置16により送られる鋼管15を、対向して配置される一対の長辺19、19を有する中空の扁平閉断面形状20aを有する鋼製の長尺の中間材20に加工する機能であり、第2の機能は、送り装置16により送られる鋼管15を支持する機能である。図1に示す例は、素材が円形の横断面形状15aを有する鋼管15であるので、補正加工手段14が第1の機能を有するように構成したが、これとは異なり、送り装置16により送られる素材がはじめから扁平閉断面形状20aを有するものである場合には、補正加工手段14がこの第1の機能を有する必要はなく、第2の機能のみを有すればよい。
【0039】
本発明に係る製造装置10における補正加工手段14は、後述する計測手段13による、曲げ加工を行われた屈曲部材21における曲げ加工部の三次元形状の計測結果に基づいて、この屈曲部材21の後に曲げ加工を行われる中間部材20の、曲げ加工前の三次元形状を補正する補正加工を行う。この製造装置10の最大の特徴は、補正加工手段14が、この補正加工を行う点であるので、以下詳細に説明する。
【0040】
図2は、中間部材20及び屈曲部材21の横断面形状の一例を示す説明図である。また、図3は、水平ロール18a、18bにより加工されて中間部材20が製造される状況を示す説明図である。
【0041】
本発明では、後述する計測手段13によって屈曲部材21の屈曲部において不可避的に発生する寸法変化を補正するため、水平ロール18a、18bによってこの屈曲部材21の後に曲げ加工を行われる中間部材20を、図2に示す非対称の断面形状に補正加工しておく。例えば、図9を参照しながら説明したように幅W、高さHの矩形断面の曲げ加工で発生する目標値との差異量ΔW、ΔH、ΔH’を加味して、曲げ加工後の幅、高さが目標寸法W’、高さH’となるように、曲げ加工前の素材20の幅を(W+ΔW)とし、曲げ外周側であるA側の高さを(H+ΔH)とし、曲げ外周側であるB側の高さを(H−ΔH’)となるように、水平ロール18a、18bによって鋼管15に部分的に成形を行って、中間部材20とする。
【0042】
なお、差異量ΔW、ΔH、ΔH’は、例えば、中空の閉断面形状を有するとともに長手方向へ一体に構成される金属製の長尺の扁平な素材に実際に曲げ加工を行い、曲げ加工に起因した寸法変化量を実測することにより算出すればよく、または熱処理解析(シミュレーション)を行って素材の温度分布を求め、さらにその温度分布データを用いたひずみ解析(シミュレーション)を行って算出するようにしてもよい。
【0043】
以上の説明では、幅W、高さHの矩形断面の屈曲部材21を例にとったが、本発明は、この例に限定されるものではなく、あらゆる異形断面に適用できる。異形断面の屈曲部材の製造方法では、屈曲変形部で不可避的に発生する差異量を補正することができるように、補正加工手段14によって、適切な方向から部分的に成形を加えればよい。この場合には、図1に示すように一対の水平ロール18a、18bに限定されるものではなく、3つあるいは4つあるいはそれ以上のロールの組み合わせでもよいし、ロールによる多段成形やプレス成形を行うことにより、所望の断面の中間部材20としてもよい。
【0044】
また、以上の説明では、鋼管15の長手方向の全部に、水平ロール18a、18bによる加工を行う場合を例にとったが、本発明はこの場合に限定されるものではなく、長手方向の必要な一部に、水平ロール18a、18bによる加工を行うこととしてもよい。
【0045】
また、以上の説明では、ライン内に配置される水平ロール18a、18bによって鋼管15をオンラインでフィードバック制御により扁平に加工することによって、中空の扁平閉断面形状20aを有する中間部材20を製造する場合を例にとったが、本発明はこの場合に限定されるものではなく、先の鋼管15の加工実績に基づいて後の鋼管15を扁平に加工することによって中間部材20を製造することもでき、さらに本発明に係る製造装置10にセットする前に、オフラインで中空の扁平閉断面形状20aを有するように鋼管15に対する加工を事前に行っておき、その後に図1に示す送り装置16にセットして送るようにしてもよい。
【0046】
また、以上の説明では、水平ロール18a、18bによる圧下により中空の扁平閉断面形状20aを有する中間部材20を製造する場合を例にとったが、本発明はこの場合に限定されるものではなく、例えばプレス等の、中空の扁平閉断面形状20aに加工できる手段であれば、如何なる手段でも適用可能である。
【0047】
また、以上の説明では、水平ロール18a、18bを、つかみ部17と後述する支持手段11との間に配置した場合を例にとったが、本発明はこの場合に限定されるものではなく、支持手段11と後述する高周波加熱装置22との間に配置してもよい。ただし、水平ロール18a、18bを支持手段2と高周波加熱装置22との間に配置する場合には、水平ロール18a、18bの設置スペースが制限される点に十分留意する必要がある。
【0048】
なお、補正加工手段14による鋼管15に対する補正加工は、製造するロットの最初においては鋼管15をダミーとして中間部材20に適宜加工し、その後には、ダミーとして最初に加工された鋼管15のデータに基づいて、それ以降の鋼管15を中間部材20に補正加工すればよい。
【0049】
このように、本発明に係る製造装置10は、補正加工手段14を備えることにより、屈曲部材21の補正機能を有するものである。
【0050】
(iii)加工手段12
加工手段12は、中間部材20に曲げ加工を行って屈曲部材21を製造する。すなわち、この中間部材20の送り方向について第1の位置Aよりも下流の第2の位置Bにおいて送られる中間部材20を、高周波加熱装置22により部分的に加熱する。
【0051】
高周波加熱装置22は、送られる中間部材20の送り方向について第1の位置Aよりも下流に位置する第2の位置Bにおいて、送られる中間部材20を部分的に加熱するためのものである。この高周波加熱装置22としては、中間部材20を高周波誘導加熱することができるコイルを有するものを用いればよく、この種の高周波加熱装置として公知のものであれば等しく用いることができる。
【0052】
中間部材20の軸方向と直交する方向と平行な方向に関する、中間部材20に対する高周波加熱装置22の加熱コイルの距離を変更することによって、送り出される中間部材20の一部をその周方向へ不均一に加熱することもできる。
【0053】
高周波加熱装置22の上流側に少なくとも1つ以上設けられる中間部材20の予熱手段を併用することによって、中間部材20を複数回加熱することもできる。
さらに、高周波加熱装置22の上流側に少なくとも1つ以上設けられる中間部材20の予熱手段を併用することによって、送り出される中間部材20の一部をその周方向へ不均一に加熱することもできる。このようにして、中間部材20は、高周波加熱装置22により、部分的に急速に加熱される。
【0054】
冷却装置23は、高周波加熱装置22により加熱された中間部材20の送り方向について第2の位置Bよりも下流の第3の位置Cにおいて第2の位置Bで加熱された部分を冷却する。
【0055】
冷却装置23は、中間部材20の送り方向について第2の位置Bよりも下流の第3の位置Cにおいて、送られる中間部材20を、第2の位置Bで加熱された部分を冷却するためのものである。すなわち、中間部材20は位置B〜位置C間において高温に加熱されて変形抵抗が大幅に低下した状態にある。
【0056】
冷却装置23としては、所望の冷却速度が得られるものであればよく、特定の方式の冷却装置に限定する必要はない。一般的には、冷却水を中間部材20の外周面の所定の位置へ向けて噴射することにより中間部材20を冷却する水冷装置を用いることが例示される。
【0057】
冷却水は、中間部材20が送り出される方向へ向けて傾斜して吹き付けられるとともに、中間部材20の軸方向と直交する方向と平行な方向に関する、この中間部材20に対する冷却手段の距離を変更することによって、この中間部材20の加熱される軸方向の領域を調整することができる。このようにして、中間部材20は、冷却装置23により、高周波加熱装置22により加熱された部分を急速に冷却される。
【0058】
図4(a)および図4(b)は、いずれも、高周波加熱装置22による加熱や冷却装置23による冷却の不均一に起因して屈曲部材21に発生する寸法変化の一例を模式的に示す説明図である。
【0059】
屈曲部材21には、高周波加熱装置22による加熱や冷却装置23による冷却の不均一に起因して、図4(a)に示すように扁平閉断面形状を構成する各辺21a〜21dがその内側へ向けて膨出する寸法変化や、図4(b)に示すように各辺21a〜21dがその外側へ向けて膨出する寸法変化が発生することがある。
【0060】
このような寸法変化は、高周波加熱装置22による加熱や冷却装置23による冷却の際に、扁平閉断面形状を構成する各辺21a〜21dや各頂点21e〜21hが有する熱容量が不可避的に一定でないことや、扁平閉断面形状を構成する各辺21a〜21dや各頂点21e〜21hに噴射される冷却水の噴射量が、例えば各頂点21e〜21hにおける冷却水の跳ね返りの程度が一定しないこと等に起因して、狙い通りになり難いことに依るものと解される。
【0061】
図5(a)、図5(b)は、それぞれ、図4(a)、図4(b)に示す寸法変化が発生した屈曲部材21に対する従来の補正手段の一例を模式的に示す説明図である。
一般的には、熱処理された部分は、硬度が上昇しているため、図5(a)に示すように、図4(a)に示す寸法変化が発生した屈曲部材21に対しては、上下一対の鼓状の水平ロール25a、25bおよび左右一対の鼓状の垂直ロール26a、26bを備える圧下装置24による圧下を行う形状矯正や、また、図5(b)に示すように、図4(b)に示す寸法変化が発生した屈曲部材21に対しては、図示しない上型および下型27bを備えるプレス機27による圧下を行う形状矯正を行うこととなるが、このような対策では、発生した寸法誤差を適正な値に補正することは極めて難しい。
【0062】
これに対し、本発明により製造しようとする屈曲部材21が高い寸法精度を要求される場合に、特に中間部材20の断面が丸断面ではなくて矩形断面や偏平断面であるときには、曲げモーメントを与えられることによる寸法変化のみならず、図4(a)および図4(b)に例示する、加熱や冷却の不均一が原因と考えられる寸法変化もできるだけ抑制するために、曲げ加工を行われた屈曲部材21における曲げ加工部の三次元形状を計測し、三次元形状の計測値および目標値との偏差に基づいて、この屈曲部材21の後に曲げ加工を行われる中間部材20の、曲げ加工前の三次元形状を補正する補正加工を行うことによって、加熱や冷却の不均一に起因する寸法変化をも補正することができるように曲げ加工前の中間部材20の扁平閉断面形状20aの各部寸法を変更する。
【0063】
また、冷却装置23による水冷の開始温度および冷却速度を適宜調整することにより、中間部材20における急速冷却部の一部または全部を焼入れることも可能である。これにより、中間部材20の一部または全部の強度を、例えば1500MPa以上と大幅に高めることが可能である。
【0064】
このようにして、長手方向へ送られる中間部材20の一部に、高周波加熱装置22により部分的に加熱されて変形抵抗が大幅に低下した部分を形成してから、中間部材20の送り方向について第3の位置Cよりも下流の領域で、中間部材20を把持する把持手段である可動ローラダイス28における一対の可動ロール28a、28aの位置を、中間部材20における少なくとも一対の長辺19、19と略平行な面内で二次元または三次元の方向へ変更して、中間部材20における加熱された部分に曲げモーメントを与える。
【0065】
把持手段は、中間部材20の送り方向について第3の位置Cよりも下流の領域Dで、送られる中間部材20を支持しながら、第1の位置Aよりも中間部材20の送り方向の上流側において、少なくとも中間部材20の送り方向を含む二次元または三次元の方向へ移動することによって、中間部材20における、高周波加熱装置22により加熱された部分に曲げモーメントを与えるためのものである。
【0066】
把持手段としては、上述した可動ローラダイス28以外に、中間部材20を把持するチャック機構を用いることができる。
把持手段を、中間部材20における少なくとも一対の長辺19、19と略平行な面内で二次元または三次元に移動することにより、後述する図6に実線で示す屈曲部材21を製造することができるが、この把持手段を捻じるように移動するとともにこれに高周波加熱装置22および冷却装置23を同調させて動作させることにより、同じく図6に破線で示す形状の屈曲部材21を製造することもできる。このように捻じり部を形成することにより、中間部材20の剛性をさらに高めることができる。さらに、把持手段を上下方向にも移動するとともにこれに高周波加熱装置22および冷却装置23を同調させて動作させることにより、図6に一点鎖線で示す、面外変形した形状の屈曲部材21を製造することもできる。
【0067】
なお、以上の説明では、加工素材である鋼管15をその長手方向へ送るとともに、上下一対の水平ロール18a、18b、支持手段11、高周波加熱装置22および冷却装置23を、鋼管15の送り方向に対して固定して配置する態様を例にとったが、これに限定されるものではなく、これとは逆に、加工素材である鋼管15を固定して配置するとともに、上下一対の水平ロール18a、18b、支持手段11、高周波加熱装置22および水冷装置23を、鋼管15の長手方向に対して移動自在に配置するようにしてもよい。
【0068】
このように、加工手段12は、中間部材20の送り方向について第2の位置Bよりも下流の第3の位置Cにおいて第2の位置Bで加熱された部分を冷却するとともに、中間部材20の送り方向について第3の位置Cよりも下流の領域で、中間部材20を把持する可動ローラダイス28の位置を、二次元または三次元で変更して、中間部材20における加熱された部分に曲げモーメントを与えることによって中間部材20に曲げ加工を行う。
【0069】
(iv)計測手段13
計測手段13は、加工手段12により曲げ加工を行われた部分の三次元形状を計測するためのものであり、特定の型式のものには限定されない。また、計測手段としてはレーザー等を利用した非接触の三次元計測機が好ましいが、加工形状によっては一次元計測機、二次元計測機や接触式等、等しく適用可能である。
【0070】
図1に示す計測手段13は、加工手段12により曲げ加工を行われた屈曲部材21の屈曲部全周の三次元形状を計測する計測部29a、29b、29cと、計測部29a、29b、29cの出力に基づいて演算を行うことによって加工手段12により曲げ加工を行われた部分全周の三次元形状を求め、求めた演算結果に基づいて、この屈曲部材21の後に曲げ加工を行われる中間部材20の、曲げ加工前の三次元形状を補正する補正加工を行う補正加工手段14に制御信号を出力して、中間部材20の補正加工を行う演算制御部30とを有する。
【0071】
なお、以上の説明では、計測手段13が本発明に係る製造装置10にオンライン設置された形態を例にとった。しかし、本発明はこの形態に限定されるものではなく、補正加工手段14が、この製造装置10により製造された屈曲部材21の後に曲げ加工を行われる素材15の、曲げ加工前の三次元形状を補正する補正加工を行うものであること、具体的には、補正加工手段14が、この製造装置10により曲げ加工を行われた屈曲部材21における曲げ加工部の三次元形状の計測結果に基づいて、屈曲部材21の後に曲げ加工を行われる素材15の、曲げ加工前の三次元形状を補正する補正加工を行うものであることが望ましい。
【0072】
例えば、この製造装置10により曲げ加工を行われてオフラインされた屈曲部材21における曲げ加工部の三次元形状を、例えば作業者が手動で計測し、この計測結果に基づいて補正加工手段14の設定値を新たな値に変更して、この屈曲部材21の後に製造装置10により曲げ加工を行われる素材15の、曲げ加工前の三次元形状を補正する補正加工を行うようにしてもよい。これによれば、上述した計測手段13を製造装置10にオンライン設置する必要がなくなるので、設備費の上昇をできるだけ抑制することが可能である。
【0073】
本発明に係る製造装置10は、以上のように構成される。次に、本発明に係る製造装置10により屈曲部材21を製造する状況を説明する。
はじめに、閉断面形状を有するとともに長手方向へ一体に構成される長尺の素材である鋼管15が、送り装置16によりその長手方向へ相対的に送られながら、水平ロール18a、18bによって、対向して配置される一対の長辺19、19を有する中空の扁平閉断面形状20aを有する鋼製の長尺の中間部材20に加工される。
【0074】
次に、扁平閉断面形状20aを有する中間部材20は、第1の位置Aにおいて支持部材11により支持され、鋼管15の送り方向について第1の位置Aよりも下流の第2の位置Bにおいて高周波加熱装置22により部分的に加熱される。
【0075】
次に、高周波加熱装置22により部分的に加熱された中間部材20は、第2の位置Bよりも下流の第3の位置Cにおいて冷却装置23により第2の位置Bで加熱された部分を冷却される。
【0076】
さらに、第3の位置Cにおいて冷却された中間部材20は、第3の位置よりも下流の領域Dにおいて、把持される把持手段の位置が二次元または三次元で変更されることにより、中間部材20における加熱された部分に曲げモーメントを与えられることによって中間部材20に素材に曲げ加工を行われて、所望の形状を有する屈曲部材21に加工される。
【0077】
この際に、本発明では、中間部材20における曲げ加工を行われた部分の三次元形状を計測手段13の計測部29a、29b、29cにより計測し、演算制御部30により、三次元形状の計測値および目標値との偏差に基づいて補正加工手段14に制御信号を出力することによって、中間部材20における曲げ加工を行われていない部分の三次元形状を補正する補正加工を行うことによって、屈曲部材21を製造する。
【0078】
例えば、素材である金属製の長尺の扁平な素材に曲げ加工を行う場合に、与えられる曲げモーメント、第2の位置Bで行われる素材の加熱、または、第3の位置Cで行われる素材の冷却の少なくとも一つに起因して発生する屈曲部材21における曲げ加工部の三次元の寸法変化を、計測手段13により測定し、それを補正するために補正加工手段14によって、この屈曲部材21の後に曲げ加工を行われる中間部材21の、曲げ加工前の三次元形状を補正する補正加工を行う。例えば、幅W、高さHの矩形断面の素材における曲げ加工を行われた部分に発生した差異量ΔW、ΔHを加味して、曲げ加工後の幅、高さが目標寸法W’、高さH’となるように、曲げ加工前の素材の幅を(W+ΔW)とし、曲げ外周側であるA側の高さを(H+ΔH)とし、曲げ外周側であるB側の高さを(H−ΔH’)として、曲げ加工を行う。
【0079】
このため、本発明によれば、円形閉断面形状の素材のみならず、扁平閉断面形状の素材に対しても優れた寸法精度を実現することができる。特に、扁平閉断面形状の素材は、中間部材20に与えられる曲げモーメント、第2の位置Bで行われる中間部材20の加熱、または、第3の位置Cで行われる中間部材20の冷却の少なくとも一つに起因して発生する寸法変化を予測することが極めて困難であるため、本発明は産業上特に有用である。
【0080】
図6は、本発明により製造される屈曲部材21の構成例を、簡略化および概念化して示す説明図である。
同図に示すように、この屈曲部材21は、長手方向へ一体に構成される鋼製の長尺の部材である。屈曲部材21は、対向して配置される一対の長辺19、19を有する中空の扁平閉断面形状20aを、その長手方向の全域で有する。
【0081】
この屈曲部材21は、少なくとも、一対の長辺19、19と略平行な面31内で、二次元または三次元に屈曲する屈曲部32を有する。
さらに、この屈曲部材21は、長手方向へ向けて少なくとも第1の部分33および第2の部分34を備え、第1の部分33に含まれる一対の長辺19、19と、第2の部分34に含まれる一対の長辺19、19とが互いに異なる平面内に存在するように、第1の部分33と第2の部分34との間にねじり部35や、あるいは曲げ部36を有していてもよい。図6において、屈曲部材21が破線で示す輪郭を有する場合がねじり部35を有する場合であり、屈曲部材21が一点鎖線で示す輪郭を有する場合が曲げ部36を有する場合である。
【0082】
本発明により製造される屈曲部材21は、中空の扁平閉断面形状を有することから軽量かつ小型であるとともに、上述したように冷却装置23による水冷の開始温度および冷却速度を適宜調整して引張強度を例えば1500MPa以上と大幅に高めることによって、いっそうの小型化、軽量化さらには高強度化を図ることができる。
【0083】
また、この屈曲部材21は、上述したように冷却装置23による水冷の開始温度および冷却速度を適宜調整して焼入れを行われることによって、その外表面に圧縮の残留応力が発生するため、疲労強度も向上する。
【0084】
また、この屈曲部材21の本発明に係る製造工程は、図1を参照しながら説明したように極めて簡便であり、低コストで製造することが可能である。
さらに、本発明では、図2や図4を参照しながら説明したように、曲げモーメントを与えられることによる寸法変化と、加熱や冷却の不均一が原因と考えられる寸法変化とをいずれも加味して、曲げ加工後の幅、高さが目標寸法W’、高さH’となるように、曲げ加工前の扁平閉断面形状の各部寸法を決定することにより、極めて高い寸法精度を有する屈曲部材21を製造することもできる。
【0085】
この本発明に係る製造方法により製造される屈曲部材21は、例えば、以下に例示する用途(i)〜(vii)に対して適用可能である。
(i)自動車のサスペンションのロアーアームやブレーキペダルといった自動車の強度部材、
(ii)自動車の各種レインフォース、ブレース等の補強部材、
(iii)サイドメンバー、サスペンションマウントメンバー、ピラー、サイドシル等の自動車の構造部材、
(iv)自転車や自動二輪車等のフレーム、クランク
(v)電車等の車輛の補強部材、台車部品(台車枠、各種梁等)
(vi)船体等のフレーム部品、補強部材、
(vii)家電製品の強度部材、補強部材または構造部材
このようにして、本発明に係る製造装置10によれば、曲げ加工を行われた屈曲部材21における曲げ加工部の三次元形状を計測し、三次元形状の計測結果に基づいて、この屈曲部材21の後に曲げ加工を行われる中間部材20の、曲げ加工前の三次元形状を補正する補正加工を行うので、優れた寸法精度を有する屈曲部材21を製造することが可能になる。
【符号の説明】
【0086】
1 特許文献1により開示された曲げ加工装置
2 支持手段
3 金属材
4 送り装置
5 屈曲部材
6 高周波加熱コイル
7 水冷装置
8 可動ロールダイス
8a ロール
9a 異形管
9b 屈曲部材
10 本発明に係る製造装置
11 支持手段
11a、11b 従動ロール
12 加工手段
13 計測手段
14 補正加工手段
15 鋼管
15a 閉断面形状
16 送り装置
17 つかみ部
18a、18b 水平ロール
19 長辺
20 中間部材
20a 扁平閉断面形状
21 屈曲部材
21a〜21d 辺
21e〜21h 頂点
22 高周波加熱装置
23 冷却装置
24 圧下装置
25a、25b 水平ロール
26a 26b垂直ロール
27 プレス機
27b 下型
28 可動ローラダイス
28a 可動ロール
29a、29b、29c 計測部
30 演算制御部
31 面
32 屈曲部
33 第1の部分
34 第2の部分
35 ねじり部
36 曲げ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉断面形状を有するとともに長手方向へ一体に構成される金属製の長尺の素材を、その長手方向へ相対的に送りながら第1の位置において支持する支持手段と、
該素材の送り方向について前記第1の位置よりも下流の第2の位置において送られる素材を部分的に加熱し、素材の送り方向について前記第2の位置よりも下流の第3の位置において前記第2の位置で加熱された部分を冷却するとともに、素材の送り方向について前記第3の位置よりも下流の領域で、前記素材を把持する把持手段の位置を、二次元または三次元で変更して、前記素材における前記加熱された部分に曲げモーメントを与えることによって該素材に曲げ加工を行って屈曲部材を製造する加工手段と、
前記素材の送り方向について前記加工手段よりも上流に配置され、前記屈曲部材の後に曲げ加工を行われる素材の、曲げ加工前の三次元形状を補正する補正加工を行う補正加工手段と
を備えることを特徴とする補正機能を有する屈曲部材の製造装置。
【請求項2】
閉断面形状を有するとともに長手方向へ一体に構成される金属製の長尺の素材を、その長手方向へ相対的に送りながら第1の位置において支持する支持手段と、
該素材の送り方向について前記第1の位置よりも下流の第2の位置において送られる素材を部分的に加熱し、素材の送り方向について前記第2の位置よりも下流の第3の位置において前記第2の位置で加熱された部分を冷却するとともに、素材の送り方向について前記第3の位置よりも下流の領域で、前記素材を把持する把持手段の位置を、二次元または三次元で変更して、前記素材における前記加熱された部分に曲げモーメントを与えることによって該素材に曲げ加工を行って屈曲部材を製造する加工手段と、
前記素材の送り方向について前記加工手段よりも上流に配置され、前記曲げ加工を行われた屈曲部材における曲げ加工部の三次元形状の計測結果に基づいて、前記屈曲部材の後に曲げ加工を行われる素材の、曲げ加工前の三次元形状を補正する補正加工を行う補正加工手段と
を備えることを特徴とする補正機能を有する屈曲部材の製造装置。
【請求項3】
閉断面形状を有するとともに長手方向へ一体に構成される金属製の長尺の素材を、その長手方向へ相対的に送りながら第1の位置において支持する支持手段と、
該素材の送り方向について前記第1の位置よりも下流の第2の位置において送られる素材を部分的に加熱し、素材の送り方向について前記第2の位置よりも下流の第3の位置において前記第2の位置で加熱された部分を冷却するとともに、素材の送り方向について前記第3の位置よりも下流の領域で、前記素材を把持する把持手段の位置を、二次元または三次元で変更して、前記素材における前記加熱された部分に曲げモーメントを与えることによって該素材に曲げ加工を行って屈曲部材を製造する加工手段と、
前記曲げ加工を行われた屈曲部材における曲げ加工部の三次元形状を計測する計測手段と、
前記素材の送り方向について前記加工手段よりも上流に配置され、前記計測手段による計測結果に基づいて前記屈曲部材の後に曲げ加工を行われる素材の、曲げ加工前の三次元形状を補正する補正加工を行う補正加工手段と
を備えることを特徴とする補正機能を有する屈曲部材の製造装置。
【請求項4】
閉断面形状を有するとともに長手方向へ一体に構成される金属製の長尺の素材を、その長手方向へ相対的に送りながら第1の位置において支持し、該素材の送り方向について前記第1の位置よりも下流の第2の位置において送られる素材を部分的に加熱し、素材の送り方向について前記第2の位置よりも下流の第3の位置において前記第2の位置で加熱された部分を冷却するとともに、素材の送り方向について前記第3の位置よりも下流の領域で、前記素材を把持する把持手段の位置を、二次元または三次元で変更して、前記素材における前記加熱された部分に曲げモーメントを与えることによって前記素材に曲げ加工を行う屈曲部材の製造方法であって、
前記曲げ加工を行われた屈曲部材における曲げ加工部の三次元形状を計測し、該三次元形状の計測結果に基づいて、前記屈曲部材の後に曲げ加工を行われる素材の、曲げ加工前の三次元形状を補正する補正加工を行うこと
を特徴とする屈曲部材の製造方法。
【請求項5】
前記補正加工は、前記第2の位置よりも上流に配置された一対のロールにより、行われる請求項4に記載された屈曲部材の製造方法。
【請求項6】
前記補正加工は、前記素材に与えられる前記曲げモーメント、前記第2の位置で行われる前記素材の加熱、または、前記第3の位置で行われる前記素材の冷却のうちの少なくとも一つに起因して発生する寸法誤差を相殺するように、行われる請求項4または請求項5に記載された屈曲部材の製造方法。
【請求項7】
閉断面形状を有するとともに長手方向へ一体に構成される金属製の長尺の素材を、その長手方向へ相対的に送りながら第1の位置において支持する支持手段と、
該素材の送り方向について前記第1の位置よりも下流の第2の位置において送られる素材を部分的に加熱し、素材の送り方向について前記第2の位置よりも下流の第3の位置において前記第2の位置で加熱された部分を冷却するとともに、素材の送り方向について前記第3の位置よりも下流の領域で、前記素材を把持する把持手段の位置を、二次元または三次元で変更して、前記素材における前記加熱された部分に曲げモーメントを与えることによって該素材に曲げ加工を行って屈曲部材を製造する加工手段と、
前記素材の送り方向について前記加工手段よりも上流に配置され、前記曲げ加工を行われた屈曲部材における曲げ加工部の三次元形状の予測結果に基づいて、前記屈曲部材の後に曲げ加工を行われる素材の、曲げ加工前の三次元形状を補正する補正加工を行う補正加工手段と
を備えることを特徴とする補正機能を有する屈曲部材の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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