説明

補聴器用補助器具

【課題】補聴器未使用時において、空気電池の劣化防止のために空気孔を塞ぎ、かつ補聴器内部に浸入した水分を乾燥させることを容易に行える小型の補聴器用補助器具を提供する。
【解決手段】一端側に作用点、他端側に力点、その間に支点を有する対向配置された二つの押圧片と、これら二つの押圧片のそれぞれの作用点に対向配置された弾性体と、前記二つの押圧片の支点と力点間に設けられ前記対向配置された弾性体を接近方向に付勢するバネと、前記二つの押圧片の支点と作用点間に設けられ前記対向配置された弾性体の当接を阻止するストッパとを備えたことにより小型化を実現した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補聴器の未使用時における、空気電池の消耗防止および、補聴器本体の乾燥を行うために活用する補聴器用補助器具に関する。
【背景技術】
【0002】
補聴器は、補聴器本体から電池ケースを引き出し自在に設けており、この電池ケース内には空気電池が収められている。そして、睡眠時などの補聴器未使用状態においては、空気電池の空気孔を塞ぐことで電池の消耗を防ぎ、かつ、補聴器使用中に本体内に浸入した汗や雨などの水分を乾かすことで、電池接点の腐食を防ぐために、まず補聴器本体から電池ケースを引き出し、次に電池ケースから空気電池を取り出し、その後空気電池の空気孔を塞ぐようにしている。
【0003】
この、空気孔を塞ぐ方法としては、挟持部にゴム板片を利用した洗濯バサミ形状の補聴器用補助器具により、空気電池の空気孔面を、挟持部のゴム板片が押し付けるように挟み込んでいる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、補聴器に浸入した水分を乾かすために、補聴器保管時には乾燥ボックスに入れることが記載されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−270096号公報
【特許文献2】特開平9−108025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したごとく、特許文献1に記載された従来の洗濯バサミ形状の補聴器用補助器具は、空気電池の空気孔面を、挟持部のゴム板片が押し付けるように挟み込むことで、この空気電池の空気孔を覆うようにしている。また、この洗濯バサミ形状の補聴器用補助器具は、空気電池の空気孔面をはさまない不使用時に、対向するゴム板片同士が強く当接し、塑性変形不可の状態にならぬようにするために、ゴム板片の先端側にストッパを設けている。
【0007】
しかしながら、このようにゴム板片の先端側にストッパを設けると、補聴器用補助器具として形状が大きくなり、このように大きな補聴器用補助器具と補聴器を特許文献2のごとく乾燥ボックスに入れるためには、この乾燥ボックスが大型化してしまう。
【0008】
そこで本発明は、補聴器用補助器具のコンパクト化を図ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そしてこの目的を達成するために本発明は、一端側に作用点、他端側に力点、その間に支点を有する対向配置された二つの押圧片と、これら二つの押圧片のそれぞれの作用点に対向配置された弾性体と、前記二つの押圧片の支点と力点間に設けられ前記対向配置された弾性体を接近方向に付勢するバネと、前記二つの押圧片の支点と作用点間に設けられ前記対向配置された弾性体の当接を阻止するストッパとを備えた構成とし、これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0010】
以上のように本発明は、一端側に作用点、他端側に力点、その間に支点を有する対向配置された二つの押圧片と、これら二つの押圧片のそれぞれの作用点に対向配置された弾性体と、前記二つの押圧片の支点と力点間に設けられ前記対向配置された弾性体を接近方向に付勢するバネと、前記二つの押圧片の支点と作用点間に設けられ前記対向配置された弾性体の当接を阻止するストッパとを備えた構成としたものであるので、コンパクト化を図ることができるものとなる。
【0011】
すなわち、本発明においては、前記二つの押圧片の支点と作用点間に設けられ前記対向配置された弾性体の当接を阻止するストッパを設けたものであるので、二つの押圧片の長さが短くなることで、コンパクト化を図ることができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態における補聴器用補助器具の斜視図
【図2】空気電池の説明図
【図3】本発明の実施の形態における使用説明図
【図4】本発明の実施の形態における使用説明図
【図5】補聴器電池ケースの拡大図
【図6】補聴器の端子説明図
【図7】補聴器乾燥状態の説明図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の補聴器用補助器具の実施の形態を図面とともに詳細に説明する。
【0014】
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態にかかる補聴器用補助器具を示している。以下、この図が示す本体1の構成を説明する。
【0015】
押圧片2aは、一端側に作用点としての挟持部3a、他端側には力点としての把持部4a、挟持部3a、把持部4a間には支点部としての回動支点ピン5が設けられている。また、回動支点ピン5近傍には挟持部3a側に突き出したストッパ6aを有している。つまり、ストッパ6aは作用点と支点部間に設けられている。また、柔軟性のあるスポンジ素材のパット7aと薄いシリコン素材のシート8aとの二層構造とした弾性体9aを挟持部3aに固着している。
【0016】
押圧片2bは、一端側に作用点としての挟持部3b、他端側には力点としての把持部4b、挟持部3b、把持部4b間には支点部としての回動支点ピン5が設けられている。また、回動支点ピン5近傍には挟持部3b側に突き出したストッパ6bを有している。つまり、ストッパ6bは作用点と支点部間に設けられている。また、柔軟性のあるスポンジ素材のパット7bと薄いシリコン素材のシート8bとの二層構造とした弾性体9bを挟持部3bに固着している。
【0017】
これら押圧片2a、2bは、それらの弾性体9a、9b及びストッパ6a、6bが当接するように対向配置されており、その際回動支点ピン5が共用された状態となっている。そして、この状態で回動支点ピン5に装着したバネ10で前記弾性体9a、9b及びストッパ6a、6bが当接するように付勢している。なお、この状態においてバネ10は弾性体9a、9bの支点と力点間に配置された構造となっている。
【0018】
次に、図2を用いて空気電池20について説明する。空気電池20は、略円柱形状しており、片面が負極23で他面及び側面が正極22となっている。正極22には空気孔21が空けられており、そこから電池内に空気を取り入れることで化学反応を起こし電気が発生する。空気電池購入時は、空気孔21の上に予めシールが張られており、そのシールをはがすことで空気電池20が使用可能となる。この状態で放置しておくと、補聴器を使用していないときでも電池の消耗が進んでいくが、再び空気孔21を塞ぐことで消耗を防ぐことができ、空気電池20を長持ちさせることができる。特に乾燥した状態に放置されると、空気電池20内部の電解液が蒸発して空気孔21を通って外部に蒸散する為、空気電池20の消耗が激しくなる。
【0019】
図3、図4は、実際の使用形態を表している。まず、通常就寝前などで補聴器の装用をやめるときには、電池の消耗を防ぐために空気電池20の空気孔21を塞いだ状態で保存することが必要になる。本実施形態の補聴器用補助器具を使用する場合には、図3のように電池ケース30を引き出し、その状態のままで空気電池20および電池ケース30ごと挟圧する。
【0020】
図4を用いてさらに詳細に説明する。図4(a)は未使用時の補聴器用補助器具を示している。このときは、バネ10により弾性体9a、9bをお互いに当接しあう方向に付勢しているが、先にストッパ6a、6bが当接することにより、弾性体9a、9bが当接することは無い。これにより、補聴器用補助器具未使用時に長時間弾性体9a、9bが互いに当接することによる変形を防ぐことができる。なお、ストッパ6a、6bは、挟持部より先端に設けることもできるが、この構成だと挟持部より先端が長くなり、補聴器用補助器具のサイズが大きくなってしまう。特に後述する弾性体の厚さを実現するためには現実的ではない。したがって、ストッパ6a、6bは回転支点から弾性体9a、9bまでの間に設けることで補聴器用補助器具のサイズをコンパクトにすることができるのである。
【0021】
図4(b)は、補聴器用補助器具を使用する過程を示している。把持部4a、4bを当接方向に指で押さえることにより、回動支点を軸として、挟持部3a、3bが離反する。そして、補聴器本体から電池ケース30を開いた状態で、その電池ケース30を覆うように弾性体9a、9bを位置させた後、指を離すことにより電池ケース30を挟圧する。
【0022】
図4(c)は、補聴器用補助器具を使用した状態を示している。この図で示す通り、弾性体9a、9bは電池ケース30及び補聴器本体の一部を含めた状態で空気電池20を挟圧している。ここで重要なのは、弾性体9a、9bの厚さと直径である。弾性体9a、9bの直径は、空気電池20の直径と同じにすると、補聴器用補助器具使用状態において電池ケース30がぐらついて安定性に欠ける。そこで、空気電池20と電池ケース30と補聴器本体の一部をまとめて挟圧できるサイズにするのが望ましい。例えば、図5に示すとおり、弾性体9a、9bの直径を、空気電池20の直径であるD2もしくは、電池ケース30の直径であるD1にすると、補聴器用補助器具本体ごと電池ケース30の回動支点で大きく動いてしまう。そこで、補聴器本体を含め固定するために、弾性体9a、9bの直径をD1より大きくすることが重要になる。こうすることで、補聴器用補助器具使用状態においてぐらつくことなく電池ケース30を引き出した状態で安定して固定することができる。
【0023】
さらに図5に示すように、このとき弾性体9a、9bが接する面の、空気電池20、電池ケース30、補聴器本体のそれぞれには段差T1が生じるため、弾性体にはそれら段差T1を吸収できる厚さが必要となる。そこで、弾性体の厚さを、少なくとも空気電池20から補聴器本体までの段差T1より厚くする。
【0024】
さらに弾性体9a、9bには、これら空気電池20、電池ケース30、補聴器本体のそれぞれに生じる段差T1を柔軟に吸収しつつ、空気電池20の空気孔21を塞ぐことを兼ね備えた弾性体9a、9bが必要になる。そこで、本実施の形態では、パット7a、7bには柔軟性と復元力を兼ね備えたスポンジを用いて段差を吸収しつつ、シート8a、8bは空気孔21を塞ぐために十分な密度であり、パット7a、7bの弾性を損なわない薄いシリコンゴムを貼り付けた2層構造としている。このような構成により、空気電池20、電池ケース30、補聴器本体のそれぞれに生じる段差を柔軟に吸収しつつ、空気電池20の空気孔21を塞ぐことができる。また、弾性体9a、9bの厚さと直径に関して、装着を想定した幾つかの補聴器のうち、最も大きな補聴器にあわせることで、特定の補聴器に限定されることなく柔軟に適応することができる。なお、本実施の形態では、弾性体9a、9bを二つの部材で構成しているが、柔軟性及び密度の高さを兼ね備えた素材を用いることにより一部材で構成することもできる。
【0025】
次に、補聴器の乾燥に関して図6、図7を用いて説明する。図6は、補聴器内部の電気接点を示している。補聴器には、+端子31と−端子32を備えており、電池ケース30を閉じ、電池ケース30に収められた空気電池20の負極23が−端子32に、正極22が+端子31に接触することで通電が始まる。電池ケース30と補聴器本体の間にはわずかながら隙間が生じており、そこから、雨や汗などの水分が浸入してくる。その水分が+端子31及び−端子32に付着したまま放置すると、それら端子の腐食が進んでしまう。そこで、図7に示すように、補聴器未使用時には乾燥ボックス41に入れて保管することになる。乾燥ボックスには、上下2つの部屋に分かれており、そのうちの下の部屋には乾燥剤43を備え、上の部屋には補聴器を格納する。それぞれの部屋を仕切る壁には通気孔42を設けてあり、上の部屋の空気を下の部屋に通じさせ、乾燥ボックス内の空気全体を乾燥させている。このとき、電池ケース30は補聴器本体からオープン状態にして、+端子31及び−端子32を外気に露出しておくことが望ましい。そのためには、電池ケース30をオープンにしたまま固定でき、+端子31及び−端子32が乾燥ボックス41内の空気と接することのできる開口を確保できる本発明の補聴器用補助器具が有効となる。また、上述の通り、ストッパを支点と作用点の間に設けることで補聴器用補助器具をコンパクトにしているため、小型の乾燥ボックスを利用することもできる。
【0026】
以上の構成をとることにより、補聴器本体、電池ケース30、空気電池20の段差を吸収しつつ空気電池20の空気孔21を塞ぎ、かつ電池ケース30を開いた状態で固定することで、空気電池20を補聴器から取り出すことなく空気電池20の劣化防止と乾燥保管が容易にできる。また、回転支点から弾性体の取り付け位置の間にストッパ6a、6bを配置することで、弾性体の変形を防ぎ、かつ、コンパクトにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明にかかる補聴器用補助器具は、
一端側に作用点、他端側に力点、その間に支点を有する対向配置された二つの押圧片と、これら二つの押圧片のそれぞれの作用点に対向配置された弾性体と、前記二つの押圧片の支点と力点間に設けられ前記対向配置された弾性体を接近方向に付勢するバネと、前記二つの押圧片の支点と作用点間に設けられ前記対向配置された弾性体の当接を阻止するストッパとを備えたことにより、弾性体の変形を防ぎ、かつ、補聴器用補助器具をコンパクトにすることができる。
【0028】
また、弾性体の外径を電池ケース外径より大きくし、また、弾性体の厚さを電池ケースに収められた電池面から補聴器本体までの厚さより大きくすることで、補聴器本体に空気電池を装着し、電池ケースを開いた状態のまま本発明の補聴器用補助器具を使用することができるため、空気電池の劣化防止及び乾燥保管が容易になる。
【符号の説明】
【0029】
1 本体
2a、2b 押圧片
3a、3b 挟持部
4a、4b 把持部
5 回動支点ピン
6a、6b ストッパ
7a、7b パット
8a、8b シート
9a、9b 弾性体
10 バネ
20 空気電池
21 空気孔
22 正極
23 負極
30 電池ケース
31 +端子
32 −端子
41 乾燥ボックス
42 通気孔
43 乾燥剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側に作用点、他端側に力点、その間に支点を有する対向配置された二つの押圧片と、
これら二つの押圧片のそれぞれの作用点に対向配置された弾性体と、
前記二つの押圧片の支点と力点間に設けられ前記対向配置された弾性体を接近方向に付勢するバネと、
前記二つの押圧片の支点と作用点間に設けられ前記対向配置された弾性体の当接を阻止するストッパとを備えた補聴器用補助器具。
【請求項2】
対向配置された前記弾性体は、それぞれの押圧片の作用点側に設けた多孔質体と、
この多孔質体の他の押圧片側に設けた非多孔質体とにより構成した請求項1記載の補聴器用補助器具。
【請求項3】
引き出し可能な電池ケースを備えた補聴器に用いる請求項1または2に記載の補聴器用補助器具であって、前記弾性体の外径は、電池ケース外径より大きいことを特徴とする補聴器用補助器具。
【請求項4】
前記弾性体の厚さは、電池ケースに収められた電池面から補聴器本体までの厚さより大きいことを特徴とする請求項3記載の補聴器用補助器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−175827(P2011−175827A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38347(P2010−38347)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】