説明

製パン改良剤

【課題】風味が良好であって、パンのボリュームを増大させ、ソフトで歯切れが良いパンを得ることができる製パン改良剤、さらには、該特徴を有するパンを得るためのパン生地、さらには、該特徴を有するパンを提供すること。
【解決手段】固形分中のカルシウム含量が2質量%未満である乳清ミネラルを有効成分とする製パン改良剤、該製パン改良剤を、パン生地に含まれる穀粉類100質量部に対し、乳清ミネラルの固形分が0.001〜1質量%となる量を含有するパン生地、及び、該パン生地を加熱処理したパン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンのボリュームを増大させ、ソフトで歯切れが良く、風味良好なパンを提供することができる製パン改良剤に関する。
【背景技術】
【0002】
パンのボリュームを増大させ、ソフトで歯切れを良くするための製パン改良剤は古くから研究されており、さまざまな製パン改良剤が提案されている。
【0003】
その製パン改良機構としては、パンの吸水を増加させる方法、発酵によるpH変化を緩衝作用により調整する方法、焼成時の澱粉の固化を遅延させる方法、小麦粉グルテンを一部分解することで生地の伸展性を増大させる方法など、各種の方法がある。
【0004】
ここで、これらの製パン改良剤による製パン改良方法においては、しばしば製パン改良剤成分由来の風味悪化の問題が発生する。
【0005】
この問題を避けるために、製パン改良成分として風味が良好である、乳由来の成分を使用することが考えられ、例えば、ホエイ蛋白質濃縮物及びカルシウムを併用した製パン改良方法(例えば特許文献1参照)、カゼイネート及びホエイ蛋白質からなる製パン改良剤(例えば特許文献2参照)、乳固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料を含有することを特徴とする製パン改良用懸濁液(例えば特許文献3参照)などの製パン改良剤や製パン改良方法が提案されている。
【0006】
これらの特許文献からは、製パン改良成分として乳由来の成分を使用する場合は、ホエイ蛋白質よりもカゼイン蛋白質を使用すること、カゼイン蛋白質を溶解性の高い状態で使用すること、ホエイ蛋白質を多く配合するためにはカルシウムを多く配合すること、が必要なことがわかる。
【0007】
しかし、特許文献1に記載の方法では、ホエイ蛋白質を多量に添加するために使用するカルシウムは、水に不溶性の成分として添加する必要があり、製パン改良剤として添加する際は、パン生地への分散性が悪く、均質なパン生地が得られにくいという問題があり、また、特許文献2に記載の方法では、ホエイ蛋白質を多量に添加するために使用するカゼイネート(アルカリカゼイン)は風味が悪いため多量には配合できない問題があり、特許文献3に記載の方法は、特定の乳成分により乳化剤を代替する発明であるため該成分自体には風味を改良する効果が少なく、風味改良のためには乳清ミネラル等の風味成分を併用する必要があるという問題があった。
【特許文献1】特開2002−119196号公報
【特許文献2】特開2005−73547号公報
【特許文献3】特開2006−204130号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、風味が良好であって、パンのボリュームを増大させ、ソフトで歯切れが良いパンを提供することができる製パン改良剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、種々検討した結果、従来、風味改良の目的にしか使用されていなかった乳清ミネラルについて、カルシウムを多く使用した方が良好なパンを得ることができるという従来の一般的な常識と異なり、逆にカルシウムを減じた場合、意外にも上記問題を解決可能であることを知見した。
【0010】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、固形分中のカルシウム含量が2質量%未満である乳清ミネラルを有効成分とする製パン改良剤を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、上記の本発明の製パン改良剤を含有したパン生地並びに該パン生地を加熱処理したパンを提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の製パン改良剤を用いることにより、パンのボリュームを増大させ、ソフトで歯切れが良く、風味良好なパンを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の製パン改良剤について詳述する。
【0014】
まず、本発明で使用する乳清ミネラルについて詳述する。
【0015】
本発明で使用する乳清ミネラルとしては、パンのボリュームを増大させ、ソフトで歯切れが良く、風味良好なパンを得ることができる点で、固形分中のカルシウム含量が2質量%未満、特に1質量%未満の乳清ミネラルを使用する。尚、該カルシウム含量は低いほど好ましい。
【0016】
ここで、乳清ミネラルとは、乳又はホエイ(乳清)から、可能な限り蛋白質や乳糖を除去したものであり、高濃度に乳の灰分を含有するという特徴を有する。そのため、そのミネラル組成は、原料となる乳やホエイ中のミネラル組成に近い比率となる。よって、牛乳から通常の製法で製造された乳清ミネラルは、固形分中のカルシウム含量が5質量%以上である。
【0017】
そのため、本発明では通常の乳清ミネラルを使用することができない。
本発明で使用するカルシウム含量が2質量%未満の乳清ミネラルは、乳又はホエイから、膜分離及び/又はイオン交換、さらには冷却により、乳糖及び蛋白質を除去して乳清ミネラルを得る際に、あらかじめカルシウムを低減した乳を使用した酸性ホエイを用いる方法、あるいは、甘性ホエイから乳清ミネラルを製造する際にカルシウムを除去する工程を挿入することで得ることができるが、工業的に実施する上での効率やコストの点で、甘性ホエイから乳清ミネラルを製造する際にある程度ミネラルを濃縮した後に、カルシウムを除去する工程を挿入することで得る方法を採ることが好ましい。ここで使用する脱カルシウムの方法としては、特に限定されず、調温保持による沈殿法等の公知の方法を採ることができる。
【0018】
本発明の製パン改良剤における上記乳清ミネラルの配合割合は、製パン改良剤のパン生地への添加量に依存するため、特に限定されるものではなく、0.001〜100質量%の範囲から適宜選択可能である。
【0019】
ここで、0.001質量%未満であると、少ない添加量で製パン改良効果を付与するという製パン改良剤としての意義がなくなるおそれがある。
【0020】
本発明の製パン改良剤は、蛋白質を、乳清ミネラルの固形分1質量部に対し、好ましくは1〜50質量部、より好ましくは4〜20質量部、さらに好ましくは6〜15質量部含有する。
【0021】
蛋白質の割合が1質量部未満であると、パンのボリューム改善効果が、特にリーンな配合のパンで発揮されない問題があり、また50質量部を超えると、得られるパンの食感が硬いものとなってしまったり、パン生地の伸展性が劣るものとなってしまう問題がある。
【0022】
ここで使用する蛋白質としては特に限定されず、例えば、ホエイ蛋白質、カゼイン蛋白質、その他の乳蛋白質、低密度リポ蛋白質、高密度リポ蛋白質、ホスビチン、リベチン、リン糖蛋白質、オボアルブミン、コンアルブミン、オボムコイド等の卵蛋白質、グリアジン、グルテニン等の小麦蛋白質、プロラミン、グルテリン等の米蛋白質、その他動物性及び植物性蛋白質等の蛋白質が挙げられる。これらの蛋白質は、目的に応じて一種ないし二種以上の蛋白質として、あるいは一種ないし二種以上の蛋白質を含有する食品素材の形で添加してもよい。
【0023】
なお、本発明の製パン改良剤では、上記の蛋白質として乳蛋白質を用いるのが好ましい。
【0024】
上記の乳蛋白質としては、ホエイ蛋白質のみ、カゼイン蛋白質のみ、カゼイン蛋白質とホエイ蛋白質との併用のいずれでもよいが、ホエイ蛋白質とカゼイン蛋白質とを併用するのが好ましい。
【0025】
上記カゼイン蛋白質としては、αs1−カゼイン、αs2−カゼイン、β−カゼイン、γ−カゼイン、κ−カゼインの各単体や、これらの混合物、若しくはこれらを含有する食品素材であるアルカリカゼイン(カゼイネート)、酸カゼイン等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
【0026】
上記ホエイ蛋白質としては、ラクトアルブミン、βラクトグロブリン、血清アルブミン、免疫グロブリン、プロテオースペプトンの各単体や、これらの混合物、若しくはこれらを含有する食品素材として、乳清蛋白質、ホエイ、ホエイパウダー、脱乳糖ホエイ、脱乳糖ホエイパウダー、ホエイ蛋白質濃縮物(WPC及び/又はWPI)等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
【0027】
上記カゼイン蛋白質及び上記ホエイ蛋白質の両方を含有する食品素材として、例えば、生乳、牛乳、加糖練乳、加糖脱脂れん乳、無糖れん乳、無糖脱脂れん乳、脱脂乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、バターミルク、バターミルクパウダー、トータルミルクプロテイン(TMP)、脱脂粉乳、全粉乳、ミルクプロテインコンセントレート(MPC)、クリーム、クリームチーズ、ナチュラルチーズ、プロセスチーズ、ヨーグルト、乳酸菌飲料、サワークリ―ム、醗酵乳等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
【0028】
本発明では、必要に応じ、水、油脂、ゲル化剤や安定剤、乳化剤、金属イオン封鎖剤、糖類・甘味料、澱粉類、上記乳蛋白質を含有する食品原料以外の乳や乳製品、卵製品、穀類、無機塩、有機酸塩、キモシン等の蛋白質分解酵素、トランスグルタミナーゼ、ラクターゼ(β−ガラクトシダーゼ)、α―アミラーゼ、グルコアミラーゼ等の糖質分解酵素、ジグリセライド、植物ステロール、植物ステロールエステル、果汁、濃縮果汁、果汁パウダー、乾燥果実、果肉、野菜、野菜汁、香辛料、香辛料抽出物、ハーブ、直鎖デキストリン・分枝デキストン・環状デキストン等のデキストリン類、カカオ及びカカオ製品、コーヒー及びコーヒー製品、その他各種食品素材、着香料、苦味料、調味料等の呈味成分、着色料、保存料、酸化防止剤、pH調整剤、強化剤等を配合してもよい。
【0029】
上記油脂としては、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、菜種油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油、バター、バターオイル等の各種植物油脂、動物油脂並びにこれらを水素添加、分別及びエステル交換から選択される一又は二以上の処理を施した加工油脂が挙げられる。本発明では、上記の油脂の中から選ばれた1種または2種以上を用いることができる。
【0030】
上記ゲル化剤や安定剤としては、アルギン酸、アルギン酸塩、ペクチン、LMペクチン、HMペクチン、海藻抽出物、海藻エキス、寒天、グルコマンナン、ローカストビーンガム、グアーガム、ジェランガム、タラガントガム、キサンタンガム、カラギーナン、カードラン、タマリンドシードガム、カラヤガム、タラガム、トラガントガム、アラビアガム、カシアガムが挙げられる。本発明では、上記ゲル化剤や安定剤の中から選ばれた1種または2種以上を用いることができる。
【0031】
上記乳化剤としては、レシチン、酵素処理レシチンなどの天然乳化剤、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等の合成乳化剤が挙げられる。本発明では、上記の乳化剤の中から選ばれた1種または2種以上を用いることができる。
【0032】
上記糖類としては、ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、酵素糖化水飴、乳糖、還元澱粉糖化物、異性化液糖、ショ糖結合水飴、オリゴ糖、還元糖ポリデキストロース、ソルビトール、還元乳糖、トレハロース、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖等が挙げられる。また、上記甘味料としては、スクラロース、アセスルファムカリウム、ステビア、アスパルテーム等が挙げられる。本発明では、上記の糖類・甘味料の中から選ばれた1種または2種以上を用いることができる。
【0033】
本発明の製パン改良剤の形態としては、特に制限されず、固形、顆粒状、粉末状、ペースト状、流動状、液状のいずれの形態であってもよい。
【0034】
また、本発明の製パン改良剤が油分と水分を含有する場合、その乳化型は水中油型であっても油中水型であってもよく、さらには2重乳化型であってもよいが、パン生地への分散性が良好であり、また、ソフト性に優れるパンが得られる点で水中油型の乳化形態であることが好ましい。
【0035】
本発明の製パン改良剤の製造方法としては特に制限されず、公知の方法を使用することができる。
【0036】
例えば、粉末状の場合は、粉体混合用混合機を使用し、各粉末原料を混合することによって得ることができ、また、液状〜ペースト状の場合は、水や液状油等に各原料を溶解又は分散することによって得ることができる。
【0037】
また、油脂を含有する場合であって、その形態が油中水型の場合は、油脂に油溶性成分を溶解させた油相と、水に水溶性成分を溶解させた水相とを乳化後、急冷可塑化する方法や、均質化する方法が挙げられ、水中油型の場合は、油脂に油溶性成分を溶解させた油相と、水に水溶性成分を溶解させた水相とを乳化後、均質化する方法が挙げられる。
【0038】
次に、本発明のパン生地について説明する。
【0039】
本発明のパン生地は、本発明の製パン改良剤を、パン生地に含まれる穀粉類100質量部に対し、好ましくは乳清ミネラルの固形分が0.001〜1質量部、より好ましくは0.01〜1質量部、となる量を含有するものである。
【0040】
本発明のパン生地には、穀粉類、イースト、糖類、甘味料、油脂類、卵類、乳製品、水、食塩、澱粉類、調味料、香辛料、着香料、着色料、ココア、チョコレート、ナッツ類、ヨーグルト、チーズ、抹茶、紅茶、コーヒー、豆腐、黄な粉、豆類、野菜類、果実、果汁、ジャム、フルーツソース、果物、ハーブ、肉類、魚介類、酸化剤、還元剤、酵素、イーストフード、乳化剤、保存料、日持ち向上剤などを適宜用いることができる。
【0041】
次に、本発明のパン生地の製造方法について説明する。
【0042】
本発明のパン生地は、本発明の製パン改良剤を生地に練り込むことにより、製造することができる。
【0043】
本発明のパン生地は、中種法でも、直捏法でも、液種法でも製造することができる。
【0044】
本発明のパン生地を中種法で製造する場合は、本発明の製パン改良剤を中種生地及び/または本捏生地に練り込むことにより製造することができ、直捏法で製造する場合は、本発明の製パン改良剤を生地に練り込むことにより製造することができ、本発明のパン生地を液種法で製造する場合は、本発明の製パン改良剤を液種生地及び/または本捏生地に練り込むことにより製造することができる。
【0045】
なお、得られた本発明のパン生地は、冷蔵、冷凍保存することが可能である。
【0046】
本発明のパンは、本発明のパン生地を加熱処理することによりパンが得られる。該加熱処理としては、パン生地を焼成したり、フライしたり、蒸したり、電子レンジ処理したりすることがあげられる。また、得られた本発明のパンを、冷蔵、冷凍保存したり、該保存後に電子レンジ加熱することも可能である。
【0047】
本発明のパンの種類としては、特に制限はないが、例えば食パン、菓子パン、バラエティーブレッド、バターロール、ソフトロール、ハードロール、スイートロール、デニッシュ、ペストリー、フランスパンなどがあげられる。
【実施例】
【0048】
<乳清ミネラルの製造>
〔製造例1〕
チーズを製造する際に副産物として得られる甘性ホエイをナノ濾過膜分離した後、さらに逆浸透濾過膜分離により固形分が20質量%となるまで濃縮し、次いで、80℃、20分の加熱処理をして生じた沈殿を遠心分離して除去し、これをさらにエバポレーターで濃縮し、スプレードライ法により、固形分98質量%の乳清ミネラルAを得た。得られた乳清ミネラルAの固形分中のカルシウム含量は0.4質量%であった。
【0049】
〔製造例2〕
チーズを製造する際に副産物として得られる甘性ホエイをナノ濾過膜分離した後、さらに逆浸透濾過膜分離により固形分が20質量%となるまで濃縮し、次いで、これをさらにエバポレーターで濃縮し、スプレードライ法により、固形分98質量%の乳清ミネラルBを得た。得られた乳清ミネラルBの固形分中のカルシウム含量は2.2質量%であった。
【0050】
<製パン改良剤の製造>
(実施例1)
上記製造例1で得られた乳清ミネラルA10質量%、トータルミルクプロテイン(蛋白質含量=80質量%)90質量%を混合し、粉末状の形態である本発明の製パン改良剤Aを得た。
【0051】
得られた製パン改良剤Aの、乳清ミネラルの固形分1質量部に対する蛋白質含有量は7.2質量部であった。
【0052】
(実施例2)
パーム油8質量%にレシチン0.1質量%とグリセリン脂肪酸エステル0.1質量%を溶解した油相を用意した。一方、水68質量%に乳糖8質量%、脱脂粉乳(蛋白質含量=36質量%)15質量%、乳清ミネラルA0.5質量%、リン酸塩0.2質量%、香料0.1質量%を溶解した水相を用意した。該油相と水相を65℃で混合し、攪拌して予備乳化物を調製した。該予備乳化物をVTIS殺菌機(アルファラバル社製UHT殺菌機ステリラボ)で143℃で5秒間殺菌し、10MPaの圧力で均質化後、5℃まで冷却し、水中油型の形態である本発明の製パン改良剤Bを得た。
【0053】
得られた製パン改良剤Bの、乳清ミネラルの固形分1質量部に対する蛋白質含有量は11.0質量部であった。
【0054】
(実施例3)
脱脂粉乳の配合量を15質量%から7質量%に変更し、水の配合量を68質量%から76質量部に変更した以外は実施例2と同様の配合・製造で、水中油型の形態である本発明の製パン改良剤Cを得た。
【0055】
得られた製パン改良剤Cの、乳清ミネラルの固形分1質量部に対する蛋白質含有量は5.1質量部であった。
【0056】
(比較例1)
上記製造例1で得られた乳清ミネラルA0.5質量%に代えて、製造例2で得られた乳清ミネラルB0.5質量%を使用した以外は実施例2と同様の配合・製造で、水中油型の形態である比較例の製パン改良剤Dを得た。
得られた製パン改良剤Dの、乳清ミネラルの固形分1質量部に対する蛋白質含有量は11.0質量%であった。
【0057】
(比較例2)
乳清ミネラルAを配合せず、水の配合量を68質量%から68.5質量%に変更した以外は実施例2と同様の配合・製造で、水中油型の形態である比較例の製パン改良剤Eを得た。
【0058】
得られた製パン改良剤Eの、乳清ミネラルの固形分1質量部に対する蛋白質含有量は11.0質量部であった。
【0059】
<パン生地及びパンの製造>
(実施例4)
強力粉70質量部、生イースト2質量部、イーストフード0.1質量部及び水40質量部をミキサーボウルに投入し、フックを使用し、低速で2分、中速で2分混合し、中種生地を得た。捏ね上げ温度は24℃であった。この中種生地を生地ボックスに入れ、温度28℃、相対湿度85%の恒温室で、4時間中種醗酵を行なった。終点温度は29℃であった。この中種醗酵の終了した生地を再びミキサーボウルに投入し、さらに、強力粉30質量部、食塩1.5質量部、上白糖3質量部、製パン改良剤A0.75質量部、及び、水22質量部を添加し、低速で3分、中速で3分ミキシングした。ここで、練込油脂(マーガリン:油分含量80質量%)8質量部を投入し、フックを使用し、低速で3分、中速で3分、高速で1分ミキシングを行ない、食パン生地を得た。得られた食パン生地の捏ね上げ温度は28℃であった。また、食パン生地に含まれる穀粉類100質量部に対する固形分中のカルシウム含量が2質量%未満である乳清ミネラルの固形分含量は0.075質量部であった。
【0060】
ここで、フロアタイムを20分とった後、380gに分割・丸目を行なった。分割・丸目時の食パン生地はべたつかず、作業性は良好であった。次いで、ベンチタイムを20分とった後、モルダー成形し、ワンローフ型に入れ、38℃、相対湿度85%で50分ホイロをとった後、200℃に設定した固定窯に入れ35分焼成してワンローフ型食パンを得た。
【0061】
得られたワンローフ型食パンは良好なボリュームを有し、ソフトで歯切れが良く、風味が良好であった。
【0062】
(比較例3)
製パン改良剤Aを無添加とし、水の配合量を25.5質量部から22質量部に変更した以外は実施例4と同様の配合・製法で、食パン生地、及び、ワンローフ型食パンを得た。
分割・丸目時の食パン生地はややべたつきを感じた。
【0063】
得られたワンローフ型食パンは実施例4で得られたものよりボリュームがやや小であり、歯切れは良好であるが、ソフト性が劣り、風味もやや劣るものであった。
【0064】
(実施例5)
強力粉70質量部、生イースト2質量部、イーストフード0.1質量部及び水40質量部をミキサーボウルに投入し、フックを使用し、低速で2分、中速で2分混合し、中種生地を得た。捏ね上げ温度は24℃であった。この中種生地を生地ボックスに入れ、温度28℃、相対湿度85%の恒温室で、4時間中種醗酵を行なった。終点温度は29℃であった。この中種醗酵の終了した生地を再びミキサーボウルに投入し、さらに、強力粉30質量部、食塩1.5質量部、上白糖3質量部、製パン改良剤B15質量部、及び、水12質量部を添加し、低速で3分、中速で3分ミキシングした。ここで、練込油脂(マーガリン:油分含量80質量%)8質量部を投入し、フックを使用し、低速で3分、中速で3分、高速で1分ミキシングを行ない、食パン生地を得た。得られた食パン生地の捏ね上げ温度は28℃であった。また、食パン生地に含まれる穀粉類100質量部に対する固形分中のカルシウム含量が2質量%未満である乳清ミネラルの固形分含量は0.075質量部であった。
【0065】
ここで、フロアタイムを20分とった後、380gに分割・丸目を行なった。分割・丸目時の食パン生地はべたつかず、作業性は良好であった。次いで、ベンチタイムを20分とった後、モルダー成形し、ワンローフ型に入れ、38℃、相対湿度85%で50分ホイロをとった後、200℃に設定した固定窯に入れ35分焼成してワンローフ型食パンを得た。
【0066】
得られたワンローフ型食パンは実施例4で得られたものと比べ、ボリューム、歯切れ、風味はほぼ同等であったが、ソフト性に優れていた。
【0067】
(実施例6)
製パン改良剤Bを製パン改良剤Cに変更した以外は実施例5と同様の配合・製法で、食パン生地、及び、ワンローフ型食パンを得た。
【0068】
食パン生地に含まれる穀粉類100質量部に対する固形分中のカルシウム含量が2質量%未満である乳清ミネラルの固形分含量は0.075質量部であり、また、分割・丸目時の食パン生地はべたつかず、作業性は良好であった。
得られたワンローフ型食パンは実施例4で得られたものと、ボリューム、歯切れ、ソフト性、風味がほぼ同等であった。
【0069】
(比較例4)
製パン改良剤Bを製パン改良剤Dに変更した以外は実施例5と同様の配合・製法で、食パン生地、及び、ワンローフ型食パンを得た。
【0070】
食パン生地は固形分中のカルシウム含量が2質量%未満である乳清ミネラルを含有しないものであった。
【0071】
なお、分割・丸目時の食パン生地はべたつかず、作業性は良好であった。
【0072】
得られたワンローフ型食パンは実施例4で得られたものよりボリュームがやや小であり、歯切れ、ソフト性が劣り、風味もやや劣るものであった。
【0073】
(比較例5)
製パン改良剤Bを製パン改良剤Eに変更した以外は実施例5と同様の配合・製法で、食パン生地、及び、ワンローフ型食パンを得た。
食パン生地は固形分中のカルシウム含量が2質量%未満である乳清ミネラルを含有しないものであった。
【0074】
なお、分割・丸目時の食パン生地はややべたつきを感じた。
【0075】
得られたワンローフ型食パンは実施例4で得られたものよりボリュームがやや小であり、歯切れ、ソフト性が劣り、風味もやや劣るものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形分中のカルシウム含量が2質量%未満である乳清ミネラルを有効成分とする製パン改良剤。
【請求項2】
蛋白質を、乳清ミネラルの固形分1質量部に対し、1〜50質量部含有する請求項1記載の製パン改良剤。
【請求項3】
水中油型の形態であることを特徴とする請求項1又は2記載の製パン改良剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の製パン改良剤を、パン生地に含まれる穀粉類100質量部に対し、乳清ミネラルの固形分が0.001〜1質量%となる量を含有するパン生地。
【請求項5】
請求項4記載のパン生地を加熱処理したパン。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかに記載の製パン改良剤を、パン生地に含まれる穀粉類100質量部に対し、乳清ミネラルの固形分が0.001〜1質量%となる量を添加することを特徴とする製パン改良方法。

【公開番号】特開2009−240261(P2009−240261A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−92604(P2008−92604)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】