説明

製パン改良材

【課題】もちもちした食感でありながら、ソフトで歯切れが良好であり、良好な体積のパンを、生地物性を悪化させることなく得るための製パン改良材を提供すること。
【解決手段】高度分岐環状デキストリンを含有する製パン改良材を練りこんだパン生地、及び高度分岐環状デキストリンを含有する製パン改良材を、穀粉類を主体とする生地に練り込むことを特徴とするパン生地の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、もちもちした食感でありながら、ソフトで歯切れが良好であり、良好な体積のパンを、生地物性を悪化させることなく得るための製パン改良材に関する。
【背景技術】
【0002】
以前より、製パン時の生地物性の改良やパンの食感改良については、乳化剤、増粘安定剤、酵素等様々な改良成分を用いた研究がなされており、その結果、それらの成分を単独で、あるいは組み合わせることで、生地物性とパンの食感の両方を改善するための製パン改良材が多種紹介されている。
改良成分の中でも、アミロペクチンを主体とした澱粉(ワキシー澱粉)を使用する方法は、もちもちした食感が得られることで、最近のパンの食感の嗜好に合致していることから様々な起源の異なる澱粉や化工澱粉が紹介されている。
【0003】
しかし、ワキシー澱粉を使用して、もちもちした食感を得るためには、パン生地に含まれる穀粉類100質量部に対し2質量部以上の添加を必要とし、そのため、グルテンが脆弱化し、焼成時の腰折れや体積の減少などの問題をおこしやすいという問題があった。また、小麦粉に比べワキシー澱粉では糊化時の吸水力が大きいため、生地の配合水を増量する必要があり、そのため生地がべとつき極めて扱いにくいという問題がある。
そこで、一般的には、ワキシー澱粉は糊化澱粉として使用し、生地の配合水量を予め増量して使用する。しかし、糊化澱粉は水に溶解した場合の粘度が極めて高く、得られる澱粉ゲルも粘度が高いため、パン生地の伸展性が悪いうえにべたつきやすく、さらに、一般のパン生地がフロアタイムやベンチタイムをとることでドライな扱いやすいパン生地になっていくのに対し、糊化ワキシー澱粉を使用したパン生地は逆に徐々にべとついていくため、扱いにくいという問題があった。
【0004】
これらの生地物性の問題は、アミロペクチンのその大きな分子量に由来するため、それよりも分子量の小さな、分子量が10を越えるデキストリンを使用する方法が提案されている。(たとえば、特許文献1を参照)
しかし、生地のべとつきについては糊化澱粉よりは抑制されるものの、もちもちした食感を得るためには澱粉以上の添加量、具体的にはパン生地に含まれる穀粉類100質量部に対し3質量部〜10質量部と多量の添加が必要であり、そのためソフト感や歯切れ感が悪いという問題があり、また、焼成時の腰折れや体積の減少などの問題をおこしやすいという問題については解決されない。
【0005】
ところで、高度分岐環状デキストリンは、糊化澱粉と同一の効果を、生地を増粘させることなく得ることができる素材として開発されたデキストリンであり、最近注目されている。
この高度分岐環状デキストリンは、特許文献1で使用する分子量のデキストリンの一種であるが、水溶性が高く、その溶液の透明性が高いこと、他のデキストリンと異なり分子量分布が狭いという特徴を有している。
この高度分岐環状デキストリンを、上記デキストリン同様、糊化澱粉の代替としてパン生地に添加すると、生地の配合水を増量する必要がないため生地のべとつきを抑えることが可能となることに加え、さらに冷凍耐性が向上することが報告されている。(たとえば、特許文献2を参照)
【0006】
しかし、この高度分岐環状デキストリンについても、もちもちした食感を得るためには澱粉同様の添加量が必要であるため、ソフト感や歯切れ感が悪いという問題、焼成時の腰折れや体積の減少などの問題をおこしやすいという問題については解決されない。また、伸展性悪化の点については、むしろ澱粉に比べて大きいという問題があった。
このように、生地物性を悪化させることなく、もちもちした食感のパンを得るための製パン改良材は、従来見出されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−28049号公報
【特許文献2】特開平10−117671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って本発明の目的は、もちもちした食感でありながら、ソフトで歯切れが良好であり、良好な体積のパンを、生地物性を悪化させることなく得るための製パン改良材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記目的を達成すべく種々検討した結果、高度分岐環状デキストリンを澱粉の代替として使用するのではなく、従来の添加量に比べ極めて少量とした場合、もちもちした食感を保持しながら、ソフト性や歯切れ感が改良され、且つ、生地のべたつきがなく、フロアタイムやベンチタイムをとることでドライな扱いやすい生地となることを見出した。
【0010】
本発明は、上記知見により得られたものであり、高度分岐環状デキストリンを有効成分とする製パン改良材を提供するものである。
また、本発明は、上記の本発明の製パン改良材を含有したパン生地並びに該パン生地を加熱処理したパンを提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製パン改良材を用いることにより、もちもちした食感でありながら、ソフト感や歯切れ感が良好であり、良好な体積のパンを、生地物性を悪化させることなく得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
まず、本発明で使用する高度分岐環状デキストリンについて述べる。
高度分岐環状デキストリンとは、内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有する、重合度が50以上であるグルカンであり、従来の澱粉加水分解物とは異なり、環状を構成することにより還元末端がほとんどない構造を有し、DEは1以下であり、水溶性が高く、その溶液の透明性が高いこと、他のデキストリンと異なり分子量分布が狭いという特徴を有する。
この高度分岐環状デキストリンは、たとえば、α−1,4−グルコシド結合と、α−1,6−グルコシド結合とを有する糖類と、この糖類に作用して環状構造を形成し得る酵素とを反応させて製造することができ、市販品としては「クラスターデキストリン(江崎グリコ製)」を挙げることができる。
【0013】
本発明の製パン改良材における上記高度分岐環状デキストリンの配合割合は、製パン改良材のパン生地への添加量に依存するため、特に限定されるものではなく、0.001質量部〜100質量部の範囲から適宜選択可能である。
ここで、0.001質量部未満であると、少ない添加量で製パン改良効果を付与するという製パン改良材としての意義がなくなるおそれがある。
【0014】
本発明の製パン改良材の形態としては、特に制限されず、固形、顆粒状、粉末状、ペースト状、流動状、液状、可塑性のいずれの形態であってもよいが、ペースト状、流動状、液状、可塑性のいずれかの形態であることが好ましい。
なお、製パン改良材中の高度分岐環状デキストリンの存在形態は、水性相に溶解した形態であることが好ましい。
上記水性相に使用する水としては、特に限定されず、天然水や水道水などが挙げられる。
【0015】
また、本発明の製パン改良材は油性相を含有することが好ましい。
上記油性相に使用する油脂としては、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、菜種油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油、バター、バターオイル等の各種植物油脂、動物油脂並びにこれらを水素添加、分別及びエステル交換から選択される一又は二以上の処理を施した加工油脂が挙げられる。本発明では、上記の油脂の中から選ばれた1種または2種以上を用いることができる。
なお、本発明の製パン改良材が油分と水分を含有する乳化油脂の形態であることが好ましい。その場合、その乳化型は水中油型であっても油中水型であってもよいが、体積が大きく腰折れのないパンが得られる点において、油中水型であることが好ましい。
【0016】
本発明の製パン改良材が、油中水型の形態である場合、好ましい油分含量は、下記のその他の原材料中に含まれる油脂分も含めた油分含量が、好ましくは30質量%〜85質量%、さらに好ましくは40質量%〜70質量%、より好ましくは40質量%〜60質量%となる量である。
また、その場合の好ましい水分含量は、下記のその他の原材料中に含まれる水分も含めた水分含量が、好ましくは12質量%〜75質量%、さらに好ましくは25質量%〜55質量%、より好ましくは35質量%〜55質量%となる量である。
【0017】
本発明の製パン改良材が、水中油型の形態である場合、好ましい油分含量は、下記のその他の原材料中に含まれる油脂分も含めた油分含量が、好ましくは3質量%〜50質量%、さらに好ましくは5質量%〜40質量%、より好ましくは12質量%〜40質量%であり、最も好ましくは12質量%〜30質量%となる量である。
また、その場合の好ましい水分含量は、下記のその他の原材料中に含まれる水分も含めた水分含量が、好ましくは20質量%〜90質量%、さらに好ましくは40質量%〜70質量%、より好ましくは50質量%〜70質量%であり、最も好ましくは50質量%〜60質量%となる量である。
【0018】
本発明の製パン改良材は、上記高度分岐環状デキストリン、水、油脂以外に、必要に応じ、ゲル化剤や安定剤、乳化剤、金属イオン封鎖剤、糖類・甘味料、澱粉類、蛋白質、乳や乳製品、卵製品、穀類、無機塩、有機酸塩、キモシン等の蛋白質分解酵素、トランスグルタミナーゼ、ラクターゼ(β−ガラクトシダーゼ)、α―アミラーゼ、グルコアミラーゼ等の糖質分解酵素、ジグリセライド、植物ステロール、植物ステロールエステル、果汁、濃縮果汁、果汁パウダー、乾燥果実、果肉、野菜、野菜汁、香辛料、香辛料抽出物、ハーブ、高度分岐環状デキストリン以外のデキストリン類、カカオ及びカカオ製品、コーヒー及びコーヒー製品、その他各種食品素材、着香料、苦味料、調味料等の呈味成分、着色料、保存料、酸化防止剤、pH調整剤、強化剤等を配合してもよい。
【0019】
上記ゲル化剤や安定剤としては、アルギン酸、アルギン酸塩、ペクチン、LMペクチン、HMペクチン、海藻抽出物、海藻エキス、寒天、グルコマンナン、ローカストビーンガム、グアーガム、ジェランガム、タラガントガム、キサンタンガム、カラギーナン、カードラン、タマリンドシードガム、カラヤガム、タラガム、トラガントガム、アラビアガム、カシアガムが挙げられる。本発明では、上記ゲル化剤や安定剤の中から選ばれた1種または2種以上を用いることができる。
ただし本発明では、得られるパンの食感がソフト性や歯切れ性の悪いものになることを避けるため、上記高度分岐環状デキストリンの含有量以上のゲル化剤や安定剤は使用しないことが好ましい。
【0020】
上記乳化剤としては、レシチン、酵素処理レシチンなどの天然乳化剤、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等の合成乳化剤が挙げられる。本発明では、上記の乳化剤の中から選ばれた1種または2種以上を用いることができる。
【0021】
上記糖類としては、ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、酵素糖化水飴、乳糖、還元澱粉糖化物、異性化液糖、ショ糖結合水飴、オリゴ糖、還元糖ポリデキストロース、ソルビトール、還元乳糖、トレハロース、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖等が挙げられる。また、上記甘味料としては、スクラロース、アセスルファムカリウム、ステビア、アスパルテーム等が挙げられる。本発明では、上記の糖類・甘味料の中から選ばれた1種または2種以上を用いることができる。
【0022】
なお、本発明でいう「製パン改良材」とは、パンの食感と生地物性の両方を改善する機能を有する改良材であり、生地物性のみ、又は、パンの食感のみの改良しかできない場合は「製パン改良材」には該当しない。
【0023】
本発明の製パン改良材の製造方法としては特に制限されず、公知の方法を使用することができる。
例えば、粉末状の場合は、粉体混合用混合機を使用し、各粉末原料を混合することによって得ることができ、また、液状〜ペースト状の場合は、水や液状油等に各原料を溶解又は分散することによって得ることができる。
【0024】
次に、本発明の製パン改良材が油脂を含有する場合であって、その形態が油中水型の場合の好ましい製造方法を説明する。
【0025】
詳しくは、まず水に、高度分岐環状デキストリンを溶解し、必要に応じさらにその他の水溶性の原料を溶解させた水相を用意する。一方、食用油脂に油溶性の原料を溶解させた油相を用意する。そして、この水相と油相を、好ましくは45〜75℃で予備乳化し、油中水型の予備乳化物を得る。次いでこの予備乳化物を殺菌することが好ましい。なお、本発明における殺菌には滅菌も含む。殺菌方法は、タンクでのバッチ式、プレート型熱交換機や掻き取り式熱交換機を用いた連続式等の何れの方法を用いてもよい。
【0026】
次に、冷却し、結晶化する。好ましくは冷却可塑化する。冷却条件は、好ましくは−0.5℃/分以上、さらに好ましくは−1℃/分以上とする。この際、徐冷却よりも、急速冷却の方が好ましい。なお、冷却可塑化する機器としては、密閉型連続式チューブ冷却機、例えば、ボテーター、コンピネーター、パーフェクター等のマーガリン製造機やプレート型熱交換機等が挙げられ、また、開放型のダイアクーラーとコンプレクターとの組み合わせも挙げられる。
本発明の製パン改良材を製造する際の何れかの工程で、窒素、空気等を含気させてもよい。
【0027】
次に、本発明の製パン改良材が油脂を含有する場合であって、その形態が水中油型の場合の好ましい製造方法を説明する。
詳しくは、まず水に、高度分岐環状デキストリンを溶解し、必要に応じさらにその他の水溶性の原料を溶解させた水相を用意する。一方、食用油脂に油溶性の原料を溶解させた油相を用意する。そして、この水相と油相を、好ましくは45℃〜75℃で予備乳化し、水中油型の予備乳化物を得る。次いでこの予備乳化物を殺菌することが好ましい。なお、本発明における殺菌には滅菌も含む。
【0028】
該殺菌は、インジェクション式、インフュージョン式等の直接加熱方式、あるいはプレート式・チューブラー式・掻き取り式等の間接加熱方式を用いたUHT・HTST・バッチ式、レトルト、マイクロ波加熱等の加熱滅菌もしくは加熱殺菌処理、あるいは直火等の加熱調理により行うことができる。そして冷却することにより、本発明の製パン改良材が得られる。
また、殺菌する前又は後で、ホモジナイザーにより均質化しても良い。均質化処理を行う場合の均質化圧力は、3MPa〜30MPaとするのが好ましい。
【0029】
次に、本発明のパン生地について説明する。
本発明のパン生地は、本発明の製パン改良材を、パン生地に含まれる穀粉類100質量部に対し、高度分岐環状デキストリンを0.05質量部〜0.4質量部、好ましくは0.1質量部〜0.3質量部となる量を含有するものである。
【0030】
本発明のパン生地には、穀粉類、イースト、糖類、甘味料、油脂類、卵類、乳製品、水、食塩、澱粉類、調味料、香辛料、着香料、着色料、ココア、チョコレート、ナッツ類、ヨーグルト、チーズ、抹茶、紅茶、コーヒー、豆腐、黄な粉、豆類、野菜類、果実、果汁、ジャム、フルーツソース、果物、ハーブ、肉類、魚介類、酸化剤、還元剤、酵素、イーストフード、乳化剤、保存料、日持ち向上剤などを適宜用いることができる。
【0031】
なお、上記穀粉類としては、小麦粉(薄力粉、中力粉、準強力粉、強力粉)をはじめ、小麦胚芽、全粒粉、小麦ふすま、デュラム粉、大麦粉、米粉、ライ麦粉、ライ麦全粒粉、大豆粉、ハトムギ粉等を挙げることができ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。本発明では、これらの中でも、穀粉類中、好ましくは小麦粉を50質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは100質量%使用する。
【0032】
次に、本発明のパン生地の製造方法について説明する。
本発明のパン生地は、本発明の製パン改良材を、パン生地に含まれる穀粉類100質量部に対し、高度分岐環状デキストリンが0.05質量部〜0.4質量部、好ましくは0.1質量部〜0.3質量部となる量を含有するものである。
なお、本発明のパン生地は、中種法でも、直捏法でも、液種法でも製造することができる。
【0033】
本発明のパン生地を中種法で製造する場合は、本発明の製パン改良材を中種生地及び/または本捏生地に練り込むことにより製造することができ、直捏法で製造する場合は、本発明の製パン改良材を生地に練り込むことにより製造することができ、本発明のパン生地を液種法で製造する場合は、本発明の製パン改良材を液種生地及び/または本捏生地に練り込むことにより製造することができる。
なお、得られた本発明のパン生地は、冷蔵、冷凍保存することが可能である。
【0034】
次に本発明のパンについて述べる。
本発明のパンは、本発明のパン生地を加熱処理することにより得られる。該加熱処理としては、パン生地を焼成したり、フライしたり、蒸したり、電子レンジ処理したりすることがあげられる。また、得られた本発明のパンを、冷蔵、冷凍保存したり、該保存後に電子レンジ加熱することも可能である。
本発明のパンの種類としては、特に制限はないが、例えば食パン、菓子パン、バラエティーブレッド、バターロール、ソフトロール、ハードロール、スイートロール、デニッシュ、ペストリー、フランスパンなどがあげられる。
【0035】
次に本発明の製パン改良方法について述べる。
本発明の製パン改良方法は、上記本発明の製パン改良材を、パン生地に含まれる穀粉類100質量部に対し、高度分岐環状デキストリンを0.05質量部〜0.4質量部、好ましくは0.1質量部〜0.3量部添加するものである。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0037】
<製パン改良材の製造>
〔実施例1〕
パーム油5質量%、及び、パーム軟部油のランダムエステル交換油脂95質量%からなる混合油脂41質量部に、モノグリセリン脂肪酸エステル2質量部を添加し、70℃に加温して溶解し、これを油相とした。一方、水道水53質量部に、クラスターデキストリン(江崎グリコ製)3質量部、及び脱脂粉乳1質量部を添加し、70℃に加温して溶解し、これを水相とした。上記油相に上記水相を徐々に添加して乳化し、油中水型の予備乳化物を得た。そして、90℃で1分間、蒸気を用いて殺菌処理したのち、コンビネーターを用いて急冷可塑化工程(−20℃/分以上)にかけ、15℃まで冷却し、油中水型の乳化油脂組成物の形態である、本発明の製パン改良材Aを得た。
【0038】
〔実施例2〕
クラスターデキストリンの配合量を3質量部から6質量部に変更し、水道水の配合量を53質量部から50質量部に変更した以外は、実施例1の配合・製法と同様にして、本発明の製パン改良材Bを得た。
【0039】
〔実施例3〕
アルギン酸ナトリウム(アルギネートFD155:ダニスコジャパン(株))1質量部を水相に配合し、水道水の配合量を53質量部から52質量部に変更した以外は、実施例1の配合・製法と同様にして、本発明の製パン改良材Cを得た。
【0040】
〔実施例4〕
混合油脂の配合量を41質量部から81質量部に変更し、水道水の配合量を53質量部から13質量部に変更した以外は、実施例1の配合・製法と同様にして、本発明の製パン改良材Dを得た。
【0041】
〔比較例1〕
クラスターデキストリンを無添加に変更し、水道水の配合量を53質量部から56質量部に変更した以外は、実施例1の配合・製法と同様にして、比較例の製パン改良材Eを得た。
【0042】
〔比較例2〕
クラスターデキストリン3質量部をサンデックス#30(DE=2〜5)(三和澱粉製)3質量部に変更した以外は、実施例1の配合・製法と同様にして、比較例の製パン改良材Fを得た。
【0043】
<ベーカリー試験>
上記実施例1〜4並びに比較例1及び2で得られた製パン練込用油脂組成物A〜Fを用いて、下記に示す配合及び製法によりプルマン型食パンを製造し、分割・丸め時の生地作業性、得られた食パンの食感(もちもち感、ソフト感、歯切れ)について、下記評価基準に従って4段階で評価し、結果を表1に示した。また、得られたプルマン型食パンの一部は5℃の冷蔵庫で2日保管したのち、食パンの食感(ソフト感)について同様に評価し、これを老化耐性の評価とし、その結果も併せて表1に記載した。
なお、さらに、比較例1で得られた製パン改良材Eを使用した場合については、クラスターデキストリンを別途、パン生地の本捏生地配合水に、パン生地に含まれる穀粉類100質量部に対し3質量部溶解した場合(比較例3)についても試験を行い、その結果も併せて表1に記載した。
【0044】
[食パンの配合・製法]
強力粉(イーグル:日本製粉製)70質量部、生イースト2質量部、イーストフード0.1質量部及び水40質量部をミキサーボウルに投入し、フックを使用し、低速で3分、中速で2分混合し、中種生地を得た。捏ね上げ温度は24℃であった。この中種生地を生地ボックスに入れ、温度28℃、相対湿度80%の恒温室で4時間、中種醗酵を行なった。終点温度は29℃であった。この中種醗酵の終了した生地を再びミキサーボウルに投入し、さらに、強力粉(イーグル:日本製粉製)30質量部、上白糖6質量部、脱脂粉乳2質量部、食塩1.8質量部、水22.5質量部を添加し、低速で3分、中速で3分ミキシングした。ここで、製パン改良材10質量部を投入し、フックを使用し、低速で3分、中速で3分、高速で1分ミキシングを行ない、食パン生地を得た。得られた食パン生地の捏ね上げ温度は28℃であった。ここで、フロアタイムを30分とった後、220gに分割・丸めを行なった。次いで、ベンチタイムを30分とった後、 モルダー成形し、6本をU字にして3斤型プルマン型に入れ、38℃、相対湿度85%で50分ホイロをとった後、200℃に設定した固定オーブンに入れ40分焼成してプルマン型食パンを得た。
なお、食パン生地の一部は、体積測定用として、380gに分割・丸めを行い、ベンチタイムを30分とった後、ワンローフ成形し、ワンローフ型に入れ、38℃、相対湿度85%で50分ホイロをとった後、200℃に設定した固定オーブンに入れ25分焼成してワンローフ型食パンを得た。
【0045】
<評価基準>
・生地作業性
◎:べとつきもなく伸展性もよく、極めて良好な作業性であった。
○:良好な作業性であった。
△:ややべとつきが感じられるか、又はやや伸展性が悪く、若干劣る作業性であった。
×:べとつきがあるか、又は、伸展性が悪く、作業性が劣るものであった。
・体積
◎:1550ml〜
○:1450〜1549ml
△:1350〜1449ml
×:〜1349ml
・食感(もちもち感)
◎:きわめて良好
○:良好
△:やや不良
×:もちもち感が感じられない
・食感(ソフト感)
◎:きわめて良好
○:良好
△:やや悪い
×:悪い
・食感(歯切れ)
◎:きわめて良好
○:良好
△:ややねちゃつく
×:ねちゃつきが激しい
【0046】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
高度分岐環状デキストリンを有効成分とする製パン改良材。
【請求項2】
油中水型の形態であることを特徴とする請求項1に記載の製パン改良材。
【請求項3】
水中油型の形態であることを特徴とする請求項1に記載の製パン改良材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の製パン改良材を、パン生地に含まれる穀粉類100質量部に対し、高度分岐環状デキストリンを0.05質量部〜0.4質量部含有するパン生地。
【請求項5】
請求項4に記載のパン生地を加熱処理したパン。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の製パン改良材を、パン生地に含まれる穀粉類100質量部に対し、高度分岐環状デキストリンを0.05質量部〜0.4質量部添加することを特徴とする製パン改良方法。

【公開番号】特開2011−87513(P2011−87513A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−243553(P2009−243553)
【出願日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】