説明

製剤

マイクロカプセルを含んで成る製品であって、マイクロカプセル自体は:(a)ポリマー殻;及び(b)(i)マトリクス内に分散した固体農薬、及び(ii)水非混合性液体、を含むコア;を含み、該マトリクスが該水非混合性液体中に非連続に分布していることを特徴とする前記製品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新しいマイクロカプセルであって、そのマイクロカプセル全体にわたって分布した少なくとも部分的に固体である(非連続)マトリクス中に分散した固体水溶性活性化合物を含む新しいマイクロカプセルに関し、かつそのようなマイクロカプセルの調製の方法と利用に関する。詳しくは、本発明はマイクロカプセルを含む製品に関し、マイクロカプセル自体が:
(a)ポリマー殻;及び
(b)(i)マトリクス中に分散した固体農薬、及び(ii)水非混合性液体、を含むコア;
を含んで成り、マトリクスが水非混合性液体の全体にわたって不連続に分布していることを特徴とするマイクロカプセルを含む製品に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロカプセル技術は何年も前から存在している。マイクロカプセルにはいろいろな用途があり、特に、染料、インク、化学薬品、医薬、芳香剤、そして特に、農薬、すなわち殺真菌剤、殺菌剤、殺虫剤、除草剤、などを含むために用いられる。
【0003】
マイクロカプセルに封入された農薬製剤は、作物の保護と専門的製品の流出において広範な用途で利用されており、いろいろな方法によって、例えば葉面散布、土壌散布、及び種子処理などに応用されている。このような製剤は、(特に)シロアリ駆除剤、残留処理スプレー、芝生処理、及び種子処理として、農薬の放出速度を所望の期間にわたってコントロールすることを可能にする。
【0004】
商業的用途では、農薬製品にはいろいろな環境因子が作用して製剤の効力を低下させる。例えば、土壌からの流出と浸出(これは地下水の汚染につながる)、耐雨性の問題と種子からの流出などである。水溶性の活性化合物は特にこのような損失を受けやすい。
【0005】
本発明のマイクロカプセルは、土壌用の水溶性生物活性化合物の放出速度をコントロールするのに有用である。この生物活性化合物は殺虫剤(農薬)であり、特に水が存在する媒質への放出、例えば殺虫活性化合物の土壌への放出、をコントロールするのに特に有用である。このマイクロカプセルは、強い雨や過剰な灌漑の結果として水分含有量が高い土壌への水溶性の殺虫活性化合物の放出をコントロールするのに特に有用である。別の利点として、このような製品は強い雨や灌漑によって低い地面レベルへ浸出する水溶性製品の量を減らすことができる。
【0006】
そのような利用としては、作物保護におけるこれらの製品の応用、すなわち、野菜作物における殺虫剤の使用で土壌中の作物の生産力を延ばすための使用;特定の市場セクター、例えば、シロアリの防除において長期的な放出特性を得るためのこのような製品の使用;顆粒の形の肥料と一緒に調合する、又は、芝生に適当な散布方法で直接散布し、その後高レベル灌漑(ゴルフコースでよく用いられるようなもの)を行う場合に芝生での効能期間を延ばすためのこの製品の使用;種子を蒔く前に適当な不活性物質と組み合わせて種子に効率的なコーティングを施すためのこの製品の使用;及び長期間にわたる永続デポジットが必要なときに長く永続する残留デポジットを与えるためのこのような製品の使用;などがあげられる。
【0007】
マイクロカプセルの製造にはいくつかの方法が有用であることが知られている(例えば、「Controlled Delivery of Crop Protection Agents」、Taylor and Francis, London, 1990,の第4章に記載されているようなもの)。農薬のマイクロカプセル化に特に有用であるそのような方法のひとつは、界面重合である。この方法では、マイクロカプセルの壁は、好ましくは二つの相、通常は水性相と水非混合性有機相、の界面で起こる重合反応によって生成されるポリマー物質によって形成される。したがって、これは油中水型エマルジョン、より多くの場合水中油型エマルジョンから生成される。
【0008】
有機相で、固体生物活性化合物の有機溶剤中の懸濁物を含むマイクロカプセルが知られている(例えば、特許文献WO 95/13698, EP 0730406, US 5993842, 及びUS 6015571に記載されており、これらの内容は参照によって全体が本明細書に組み込まれる)。
【0009】
水溶性生物活性化合物をマイクロカプセル化する方法も知られているが、それらの方法では、一般に活性物質は水又は水混和性溶剤に溶解された後にカプセルに封入される。
【0010】
実質的に水非混合性相に分散された固体水溶性生物活性化合物をカプセル封入することが可能であることが見出された。そこでは、生物活性化合物は、少なくとも部分的に固体である(非連続)マトリクス中に分散されており、マイクロカプセル全体にわたって分布している。
【0011】
1つの実施形態では、(非連続)マトリクスは、固体水溶性生物活性物質が油中に分散されている水中油型エマルジョンの界面重合によって形成される。驚くべきことに、本発明では、前記界面重合を実行するとポリマーの(非連続)マトリクスが形成され、それが従来よく言われていたように界面に制限されずにマイクロカプセル全体にわたって分布する。
【0012】
水中油型エマルジョンの界面重合によって形成されるマイクロカプセルに固体粒子の懸濁物をカプセル封入するためには、解決しなければならないいくつかの問題がある。
【0013】
第一に、実質的に水非混合性液体中の安定な固体懸濁物を生成しなければならない。分散剤又は界面活性剤を用いる場合、それらがマイクロカプセルを作るためのその後の分散方法に干渉してはならない。
【0014】
第二に、懸濁物を水に分散させて、安定な良く分散された液滴を生成しなければならない。生物活性物質としては、得られるマイクロカプセルの表面積を大きくするために、水中に分散された非常に小さな液滴を生成することが好ましい。非常に小さな液滴を生成するためには、液滴を壊すように働く及び/又は懸濁物から固体を解放する高い剪断力が必要である。良い分散と安定な液滴を実現するためには通常、界面活性剤が必要である。
【0015】
第三に、一つ以上の界面活性剤の存在は分散された液滴系を不安定にし、転相が起こる可能性がある。すなわち、水がその液体中に小さな水滴;油中水型エマルジョンを形成する可能性がある。
【0016】
第四に、水非混合性液体に懸濁された固体は、特に乳化性界面活性剤を用いた場合、水性相に移動する傾向がある。
【0017】
これらの問題のうち、あとの三つは水溶性生物活性化合物のカプセル封入に関して、解決することがさらに難しい。水不溶性の化合物のカプセル封入に関して特許文献WO 95/13698, EP 0730406, US 5993842, US 6015571, US 2003/0119675及びJP 2000247821に記載されている手順を変更することが必要であることが判明した。
【0018】
少なくとも部分的に固体であり、マイクロカプセルの全体にわたって分布した(非連続)マトリクスに分散された固体水溶性生物活性化合物を含むマイクロカプセルを製造することが可能であることが見出された。さらに、生物活性化合物の放出速度をきわめて広い範囲にわたって変えることができることが見出された。驚くべきことに、化合物が水溶性であるにもかかわらず、水性媒質への非常に遅い放出速度が可能である。これはこの技術を利用する製品に有利となる。
【0019】
前記マイクロカプセルを形成するのに非常に適した方法のひとつは、水中油型エマルジョンによる界面重合である。驚くべきことに、これは、従来技術でよく教示されていたような界面に制限されたものでない、マイクロカプセル全体にわたって分布したポリマー(非連続)マトリクスの形成を生ずる。
【0020】
マイクロカプセルは、次のような方法で製造できる:
【0021】
ステップ1−粉砕プロセスによって適当に、必要な粒径の固体水溶性生物活性化合物を生成するステップ。この固体の適切な体積中央径[VMD]は0.01-50μmであり、より適切な下限は0.5μmであり、さらに適切な下限は1.0μmである。より適切な上限は10μmであり、さらに適切な上限は5μmである。
【0022】
ステップ2−この固体水溶性生物活性化合物を実質的に水非混合性液体に懸濁するステップ。この液体は、好ましくは、この固体に対しては弱い溶媒である。すなわち、この固体を有意に溶解しない。
【0023】
この液体は好ましくは、この固体を液体中に保持でき、懸濁物が水に分散された時に固体が水に抽出されない分散剤を含む。さらに、懸濁物が水に加えられたときに分散剤は転相が起こってはならない。
【0024】
あるいはまた、ステップ1とステップ2の手順を変えて、実質的に水非混合性液体に化合物を懸濁させた後で粉砕プロセスを行って固体水溶性生物活性化合物の粒径を小さくしてもよい(媒体ミリング)。
【0025】
ステップ3−水性相における有機相の物理的分散物を作成する。適当な分散物を得るために有機相を水性相に攪拌しながら加える。適当な分散手段を用いて水性相に有機相を分散させる。分散のプロセスと装置の選択は、生成しようとするエマルジョン(及び最終製品)の所望の粒子サイズによる。適当な分散手段のひとつは、小さな(<10ミクロンVMD製品の)場合は通常、高剪断ローター/ステータ装置(実験用Silverson(登録商標)装置など)であるが、Cowles(登録商標)溶解装置、大きな粒径の場合の単純混合装置、及びさらに高い圧力のホモジナイザー装置など、他の手段を用いることもできる。そのような装置の選択は当業者の裁量の範囲内にある。適当な手段は、約1乃至約200μmという範囲内の所望の液滴(及び対応するマイクロカプセル粒子)サイズを得るための任意の高剪断装置であることができる。適当な手段は、約1乃至約200μm、適切には約1乃至約150μm、さらに適切には約1乃至約150μm、最も適切には約3乃至約50μm(VMD)という範囲内の所望の液滴(及び対応するマイクロカプセル粒子)サイズを得るための任意の高剪断装置であることができる。所望の液滴サイズが得られたら、分散手段の使用は中断される。残りのプロセスでは穏やかな攪拌しか必要ない。有機相は、上記のステップ1とステップ2で述べたように調製されるカプセル封入される固体水溶性生物活性化合物を実質的に水非混合性液体に懸濁された形で含む。水性相は水と少なくとも一種の乳化剤及び/又は保護コロイドを含む。
【0026】
明らかに、固体水溶性生物活性化合物の粒子サイズとマイクロカプセルの粒子サイズの間には関係がある。生物活性化合物の放出をコントロールするためには、この化合物の粒径のVMDとマイクロカプセルの粒径の比は、通常、1:5であり、適切には1:3から1:100までの範囲、最も適切には1:5から1:20までの範囲である。
【0027】
マイクロカプセルを得るためには、有機相及び/又は水性相は、反応してポリマーを形成する一種以上の物質を含まなければならない。ある好ましい実施形態では、有機相は少なくとも一種のジイソシアネート及び/又はポリイソシアネートを含み、他方、水性相は少なくとも一種のジアミン及び/又はポリアミンを含む。水性相に少なくとも一種のジアミン及び/又はポリアミンが含まれるという状況で、この成分は、上のステップ3で述べたように、水中油型エマルジョンが形成された後に水性相に加えられる。
【0028】
ステップ4−少なくとも一種のジアミン及び/又はポリアミンが水性相によって、その間ずっと穏やかな攪拌を維持しながら水中油型エマルジョンに加えられる。攪拌は、通常、30分から3時間、(非連続)マトリクスの形成が完了するまで続けられる。反応温度は一般に約20℃から約60℃までの範囲である。ほぼ等モル量のイソシアネート基とアミノ基が存在する状況で、反応温度は好ましくは約20℃から約40℃までの範囲、さらに好ましくは約20℃から約30℃までの範囲である。イソシアネート基が過剰に存在する状況では、反応温度は好ましくは約30℃から約60℃までの範囲、さらに好ましくは約40℃から約50℃までの範囲である。3時間を超える反応時間と60℃以上の温度との組み合わせは勧められない。このような条件は水不溶性の化合物の懸濁物をカプセル封入するために用いられたが(US 2003/0119675及びJP 2000247821)、このような条件はカプセル封入の効率が低いので本発明のマイクロカプセルの形成には適当でないということが見出された(活性化合物の水への溶解性は温度が高くなると上昇するため、過剰な量の活性化合物が水性相に移動することになる)。
【0029】
(非連続)マトリクスを形成するために、他の多くのマイクロカプセル封入方法が可能である。例えば次のような方法である:
【0030】
(i)モノマーが分散相で存在し、それを重合させて(非連続)マトリクスを形成するマイクロカプセルの調製。このようなモノマーは、本質的に水非混合性のものであって、通常はビニル反応性モノマーを含む。例えば、アクリル酸及びメタクリル酸のC1-C16アルキル・エステル、例えば、エチル・ヘキシル・アクリレート及びエチル・ヘキシル・メタクリレート、を含む。適当なアクリレート又はメタクリレート・モノマー、例えば、グリシジルメタクリレートなど、の選択によって架橋結合を導入することもできる。
【0031】
(ii)反応物質が液体中に溶解され、液体と反応物質を反応させて(非連続)マトリクスが形成される液体に固体水溶性生物活性化合物を分散させるマイクロカプセルの調製。このような効果は、ポリウレタンを製造するときに必要とされるように二つの反応物質種によって達成される。これは、適当なイソシアネートと反応する有機液体可溶ポリオールを含む。イソシアネート反応種が十分な官能基を有する場合、ポリオールはただひとつの重合可能なヒドロキシル基を含むだけでよい。アルコール及びアルコキシル化プロセスからの界面活性剤生成物を含めて、多くの化学物質が適格である(エチレン・オキシド、プロピレン・オキシド、及びブチレン・オキシド、又はそれらの混合物を含む)。イソシアネートに官能基がそれほど多くない場合、又は(非連続)マトリクス内で高度の架橋結合を望む場合、ポリオール成分は一つより多くの重合可能なOH(ヒドロキシル)官能化合物を含み、適切には二つ以上のヒドロキシル基を、1分子あたりに平均して含む。重合可能なヒドロキシル官能化合物は、脂肪族及び/又は芳香属であってよい。重合可能なヒドロキシル官能化合物は、直鎖、環式、縮合、及び/又は枝分かれしたものであってよい。特定の重合可能なヒドロキシル官能化合物は、少なくともひとつのジオール、少なくともひとつのトリオール、及び/又は少なくともひとつのテトロールを含む。これらのポリオール化合物はいずれも、必要に応じて、モノマー、オリゴマー及び/又はポリマーであってよい。オリゴマー及び/又はポリマーである場合、そのポリオールは一つ以上のヒドロキシル官能ポリエーテル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアクリル、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリアミン、ポリ尿素、ポリスルフォン、それらの組み合わせ、などから選択できる。ポリアルキレン・エーテルなどのポリエーテル・ポリオール及びポリエステル・ポリオールも適当であり、これらは比較的低コストで商業的に入手でき、加水分解に安定である。
【0032】
適当なポリアルキレン・エーテル・ポリオールとしては、本質的に水非混和性であり、有機溶解性である、ポリ(アルキレン・オキシド)ポリマー、例えば、ポリ(エチレン・オキシド)及びポリ(プロピレン・オキシド)ポリマー及びジオール及びトリオールを含む多価化合物から誘導された末端ヒドロキシル基とのコポリマー;例えば、エチレン・グリコール、プロピレン・グリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチル・グリコール、ジエチレン・グリコール、ジプロピレン・グリコール、ペンタエリスリトール、グリセロール、ジグリセロール、トリメチロール、プロパン及び同様の低分子量ポリオール、などがある。商業的に入手できる適当なポリエーテル・ポリオールとしては、商標名Voranol(登録商標)(Dow Chemical Company)の下で市販されているものがある。
【0033】
本発明に適当なポリエステル・ポリオールとしては、有機ジヒドロキシ、及び任意にポリヒドロキシ(トリヒドロキシ、テトラヒドロキシ)化合物とジカルボン酸、任意にポリカルボン酸(トリカルボン酸、テトラカルボン酸)又はヒドロキシカルボン酸又はラクトンの公知の重縮合物がある。遊離ポリカルボン酸の代わりに、対応するポリカルボン酸無水物、又は低級アルコールに対応するポリカルボン酸エステルを用いてポリエステル、例えば、無水フタル酸など、を調製することもできる。適当なジオールの例としては、エチレン・グリコール、1,2-ブタンジオール、ジエチレン・グリコール、トリエチレン・グリコール、ポリアルキレン・グリコール、例えば、ポリエチレン・グリコール、そしてまた1,2-及び1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチル・グリコール、又はネオペンチル・グリコール・ヒドロキシピバレートなどがある。必要であれば追加して用いることができる分子内に3つ以上のヒドロキシル基を有するポリオールの例としては、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセロール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、トリメチロール・ベンゼン、及びトリスヒドロキシエチル・イソシアヌレートなどがある。
【0034】
本発明の組成物、コーティング、及び方法において有用なポリオールの特に適当なクラスは、水不溶性の無水フタル酸をベースとするポリエステル−エーテル・ポリオールであり、これは、例えば、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許No. 6,855,844に記載されている。商業的に入手できる適当な無水フタル酸をベースとするポリエステル−エーテル・ポリオールとしては、「Stepanols」(登録商標)(Stepan Company)がある。
【0035】
他の比較的シンプルな原料としては、ヒマシ油など反応性ヒドロキシル基を含む天然製品がある。これらの系は、適当な触媒を加える必要があり、それは必要に応じて製剤のいずれかの相に加えられる。適当な触媒は、当業者には周知であるが、ジラウリン酸ジブチル錫などの有機金属やトリエチルアミン及びトリイソプロパノルアミンなどの第三級アミンなどがある。
【0036】
(iii)(非連続)マトリクス形成化合物をその化合物の揮発性溶媒を除去してマイクロカプセル内で分離させるマイクロカプセル調製。これは、第一に、水不溶性の(非連続)マトリクス形成ポリマーとその水不溶性の(非連続)マトリクス形成ポリマーの水非混和性揮発性溶媒の溶液に固体水溶性生物活性化合物の分散物を調製し、第二にこの水非混和性混合物の水中エマルジョンを形成し、そのエマルジョンを適当な方法で安定化した後に適当な蒸発プロセスでその揮発性溶媒を除去し、水不溶性ポリマーの(非連続)マトリクス全体にわたって分布する水溶性生物活性化合物を含むマイクロカプセルの水中分散物を得るという方法で達成される。中間体マルジョンの安定化は、周知の上述したようなルートによる界面重縮合などの任意の適当なマイクロカプセル封入プロセスによって達成できるが、米国特許No. 5460817に示されているようなルートによっても達成できる。そこでは、この技術はクロールピリフォスやトリフルラリンなど水不溶性(かつ油溶性)生物活性化合物に有用であることが確認されているが、固体水溶性生物活性化合物の油又はポリマーにおける分散物に対する有用性は言及されていない。適切には、マトリクスは、ポリ尿素、ポリアミド又はポリウレタンであるポリマーである、又は二つ以上のこれらのポリマーの混合物である。さらに適切には、マトリクスはポリ尿素である。
【0037】
このようなマイクロカプセルの調製で、固体水溶性生物活性化合物の分散物を調製するために用いられた実質的に水非混合性液体は(上で述べたような蒸発によって意図的に除去されない限り)本質的にマイクロカプセル内に保持されると当然考えられる。溶媒の望まれない損失はカプセル構造及び放出特性を変える(そして不安定化する)であろう。このカプセルのある好ましい実施形態では、水非混合性液体は水相に移動せず、さらに、不揮発性であって、水性組成分に対する乾燥処理は溶媒の損失を生ぜず、所望のカプセル組成の変化を生じない。
【0038】
本発明の目的に対して、カプセル封入される生物活性化合物に言及するときに用いられる水溶性という用語は、20℃で0.1-100 g/l、好ましくは0.5-50 g/l、という範囲の水溶解度と定義される。これは、殺虫剤、除草剤、殺真菌剤、殺ダニ剤、殺鼠剤、軟体動物駆除剤、及び植物成長調節剤など、医薬及び農薬を構成する群からの任意のそのような化合物であってよい。
【0039】
適当な除草剤としては、2,3,6-TBA、2,4-D、2-クロロ-6’-エチル-N-イソプロポキシメチルアセト-o-トルイジド、アシフルオルフェン、アラクロール、アメトリン、アミカルバゾン、アミドスルフロン、アスラム、アジムスルフロン、ベナゾリン、ベンフレセート、ベンスルフロン−メチル、ベンタゾン、ブロマシル、カルベタミド、クロリダゾン、クロリムロン−エチル、クロルスルフロン、シノスルフロン、クロマゾン、クロルアンス0ラム−メチル、シアニジン、シクロスルファムロン、ジカンバ、ジクロルプロプ、ジクロルプロプ−P、ジフルフェンゾピル、ジメタクロル、ジメチピン、ジフェナミド、エタメトスルフロン−メチル、エトキシスルフロン、フェノキサプロプ−P、フラザスルフロン、フロラスラム、フルセトスルフロン、フルミオキサジン、フルオメツロン、フルピルスルフロン−メチル−ナトリウム、フルオロキシピル、フォメサフェン、フォラムスルフロン、ハロスルフロン−メチル、ハロキシフォップ−P、イマザメタベンズ−メチル、イマザモックス、イマザピック、イマザピル、イマゼタピル、イマザスルフロン、イオドスルフロン−メチル−ナトリウム、イソウロン、MCPA、MCPB、メコプロプ、メコプロプ−P、メソスルフロン−メチル、メソトリオン、メタミトロン、メタザクロール、メチルジムロン、メトスラム、メトキスロン、メトリブジン、メトスルフロン−メチル、モノリヌロン、ナプタラム、オキサスルフロン、ペノキスラム、ペトキサミド、プロミスルフロン−メチル、プロメトン、プロパクロール、プロパニル、プロファム、プロポキシカルバゾン−ナトリウム、プロスルフロン、キンメラック、リムスルフロン、シメトリン、スルコトリオン、スルフェントラゾン、スルフォメツロン−メチル、スルフォスルフロン、テブチウロン、テプラロキシジム、テルバシル、テルブメトン、チフェルスルフロン−メチル、トラルコキシジム、トリアスルフロン、トリベヌロン−メチル、トリクロピル、及びトリスルフロン−メチルなどがある。
【0040】
適当な殺真菌剤としては、2-フェニルフェノール、アザコナゾール、アゾキシストロビン、カルボキシン、シモキサニル、シプロコナゾール、ドデモルフ・アセテート、ドディン、エポキシコナゾール、エトリジアゾール、フェンフラム、フェリムゾン、フルシラゾール、フルトリアフォル、フベリダゾール、フララキシル、フラメトピル、イマザリル、メタラキシル、メタスルフォカルブ、メトミノストロビン、ミクロブタニル、オフレース、オキサジキシル、オキシカルボキシン、フェニル水銀アセテート、プロピオコナゾール、プロチオコナゾール、ピリメタニル、ピロキロン、テトラコナゾール、チアベンダゾール、及びトリシクラゾールなどがある。
【0041】
より適当な殺真菌剤としては、2-フェニルフェノール、アザコナゾール、カルボキシン、シモキサニル、ドデモルフ・アセテート、ドディン、エトリジアゾール、フェンフラム、フェリムゾン、フルシラゾール、フルトリアフォル、フベリダゾール、フララキシル、フラメトピル、イマザリル、メタラキシル、メタスルフォカルブ、メトミノストロビン、ミクロブタニル、オフレース、オキサジキシル、オキシカルボキシン、フェニル水銀アセテート、プロチオコナゾール、ピリメタニル、ピロキロン、テトラコナゾール、チアベンダゾール、及びトリシクラゾールなどがある。
【0042】
適当な殺虫剤としては、アバメクチン、アセタミプリド、アルディカルブ、アザジラクチン、アザメチフォス、ベンジオカルブ、カルバリル、カルボフラン、クロチアニジン、クリオライト、ダゾメット、ジメチルビンフォス、DNOC、エマメクチン・ベンゾエート、エチオフェンカルブ、エチレン・ジブロミド、フェナミフォス、フェノブカルブ、フィプロニル、フロニカミド、イミダクロプリド、イソプロカルブ、ルフェヌロン、メチダチオン、メチル・イソチオシアネート、メトロカルブ、ピリミカルブ、プロポキシュール、ピメトロジン、ピリダフェンチオン、クロラントラニリプロール(Renaxapyr(登録商標))、サバジラ、スピノサド、スルコフロン−ナトリウム、チアクロプリド、チアメトキサム、チオファノックス、トリアザメート、XMC、及びキシリルカルブなどがある。
【0043】
より適当な殺虫剤としては、アセタミプリド、アルディカルブ、アザジラクチン、アザメチフォス、ベンジオカルブ、カルバリル、カルボフラン、クロチアニジン、クリオライト、ダゾメット、ジメチルビンフォス、DNOC、エチオフェンカルブ、エチレン・ジブロミド、フェナミフォス、フェノブカルブ、フィプロニル、フロニカミド、イミダクロプリド、イソプロカルブ、メチダチオン、メチル・イソチオシアネート、メトロカルブ、ピリミカルブ、プロポキシュール、ピメトロジン、ピリダフェンチオン、サバジラ、スピノサド、スルコフロン−ナトリウム、チアクロプリド、チアメトキサム、チオファノックス、トリアザメート、XMC、及びキシリルカルブなどがある。
【0044】
適当な殺鼠剤としては、クロラロース、クロロファシノン、クマテトラニル、及びストリキニーネなどがある。
【0045】
適当な軟体動物駆除剤としては、メタアルデヒド、及びニクロサミドなどがある。
【0046】
適当な植物成長調節剤としては、1-ナフチル酢酸、4-インドリル-3-酪酸、アンシミドル、クロキシフォナック、エチクロゼート、フルルプリミドル、ジベレリン酸、インドリル-3-酪酸、マレイン酸ヒドラジド、メフルイジド、プロヘキサジオン−カルシウム、及びトリネキサパック−エチルなどがある。
【0047】
特に適当な殺虫剤は、アセタミプリド、クロチアニジン、イミダクロプリド、チアクロプリド、及びチアメトキサムなどのネオニコチノイド系殺虫剤である。
【0048】
別の様態で、本発明は、農業害虫を駆除又は防除するための製品の利用であって、害虫又は害虫の活動場所に殺虫に有効な量の製品を散布するステップを含む利用方法を提供する。害虫は、(カビ)疾病、虫、及び雑草を含む。適切には、害虫はシロアリである。
【0049】
固体水溶性生物活性化合物の濃度は、適切には、マイクロカプセルの0.1-70質量% [さらに適切には0.1-65質量%] である。
【0050】
固体水溶性生物活性化合物が実質的に水非混合性液体に懸濁している場合、前記液体は、この化合物を認められるほど溶解しないが、(非連続)マトリクスを形成するために用いた反応物質又はプレポリマーを溶解するのに優れた溶媒である任意の液体であってよい。
【0051】
適切には、周囲条件 [通常20℃] での液体の水溶解度は質量で約5000 ppm以下である。
【0052】
そのような液体の適当な例は、キシレン又はナフタレンなどの芳香族有機化合物、例えば、Solvesso(登録商標) 200; アルキル・エステルなどの脂肪族有機化合物、例えば、Exxate(登録商標) 700-Exxate(登録商標) 1000, Prifer(登録商標) 6813; パラフィン化合物、例えば、Norpar(登録商標) & Isopar(登録商標)の一連の溶媒;ヂエチルフタレート、ヂブチルフタレート、及びヂオクチルフタレートなどのアルキル・フタレート類;イソプロピル・アルコールなどのアルコール類;アセトフェノン及びシクロヘキサノンなどのケトン類;鉱物油、例えば、Cropspray(登録商標) 7N又は11N; ナタネ油などの植物油又は種子油;及びアルキル化された種子油、などである。液体は、二つ以上の化合物の混合物であってもよい。
【0053】
さらに、生物活性化合物が懸濁される液体は、それ自体第二の生物活性化合物であっても、それを含んでもよい。
【0054】
分散有機相と連続水性相の相体積は、広い範囲で変えることができる。通常、有機相は製剤全体に基づいて5から70質量%まで;適切には15から70質量%まで;さらに適切には15から50質量%までの範囲で存在する。
【0055】
適切には、液体は分散剤を含む。分散剤の正確な選択は固体と液体の選択に依存するが、特に適切な分散剤(単数又は複数)は、立体障害によって作用し、固体/有機液体界面でのみ作用し、乳化剤としては作用しないものである。このような分散剤は、適切には、(i)液体に強い親和性を有するポリマー鎖、及び(ii)固体に強く吸着する基、から構成される。
【0056】
液体に懸濁された固体生物活性化合物を含むマイクロカプセルで用いることができる[一般にポリマーである]分散剤の例は、WO 95/13698に与えられており、商標名Hypermer(登録商標), Atlox(登録商標), Agrimer(登録商標), 及びSolsperse(登録商標)の下で入手できる。
【0057】
一般に、用いられる分散剤の濃度範囲は、有機相に基づいて約0.01から約10質量%までであるが、より高い濃度も用いることができる。
【0058】
本発明による固体水溶性生物活性化合物の懸濁物をカプセル封入できるためには、マイクロカプセル内の液体/分散剤組み合わせの選択が特に重要である。適切なシステムとしては、Solvesso(登録商標) 200とSolsperse(登録商標) 17000; ナタネ油とSolsperse(登録商標) 17000; Norpar(登録商標) 15/Prifer(登録商標) 6813混合物とZ190-165(登録商標); 及びCropspray(登録商標) 7N又は11NとAtlox(登録商標) 4912, Atloz(登録商標) LP1, Agrimer(登録商標) AL22及びAgrimer(登録商標) AL30から選択された一つ以上の分散剤、などがある。このような組み合わせは、生物活性化合物がチアメトキサムであるときに特に適切である。
【0059】
一般に、マイクロカプセル懸濁物の水性相における界面活性剤(単数又は複数)は、安定な水中油型エマルジョンを形成するのに十分高い約10から約16までの範囲のHLBを有するアニオン、カチオン、及び非イオン界面活性剤から選択される。非イオン界面活性剤が特に適切である。二種以上の界面活性剤が用いられる場合、個々の界面活性剤はHLB値が10よりも低い又は16よりも高くてもよい。しかし、合わせたときに界面活性剤の全体のHLB値は、10-16という範囲にある。適切な界面活性剤としては、線状アルコールのポリエチレン・グリコール・エーテル、エトキシル化ノニルフェノール、トリスチリルフェノール・エトキシレート、プロピレン・オキシドとエチレン・オキシドのブロック・コポリマー、及びポリビニル・アルコールなどがある。ポリビニル・アルコールが特に適当である。
【0060】
一般に、プロセスにおける界面活性剤の濃度の範囲は、水性相に基づいて約0.01から約10質量%までであるが、より高い濃度の界面活性剤も用いることができる。
【0061】
さらに、水性相には保護コロイドも存在してよい。これは油滴の表面に強く吸着しなければならない。適当な保護コロイドは、ポリアルキレート、メチル・セルロース、ポリビニル・アルコールとアラビアゴムの混合物、及びポリアクリルアミドなどである。ポリビニル・アルコールが特に適当である。
【0062】
有機液体のすべての液滴の表面を完全に被覆するのに十分なコロイドが存在しなければならない。用いる保護コロイドの量は、分子量や両立性などいろいろな因子に依存する。保護コロイドは有機相を加える前に水性相に加えることができる、又は有機相を加えた後、又はその分散の後、系全体に加えることもできる。保護コロイドは一般に、水性相の約0.1から約10質量%という量で水性相に存在する。
【0063】
水性相で別々の乳化剤とコロイド安定化剤を用いる場合、乳化剤は保護コロイドを有機液体の液滴表面から追い出してはならない。
【0064】
マイクロカプセルが界面重縮合反応によって調製される状況では、有機相及び/又は水性相が一つ以上の物質を含み、それらが反応してポリマー(非連続)マトリクスを形成する。ある好ましい実施形態では、有機相が少なくとも一種のジイソシアネート及び/又はポリイソシアネートを含み、水性相が少なくとも一種のジアミン及び/又はポリアミンを含む。
【0065】
任意のジイソシアネート又はポリイソシアネート又はそれらの混合物を用いることができるが、ただし、有機相として選ばれた液体に可溶でなければならない。芳香族液体が用いられる場合、芳香族イソシアネート、例えば、トリレン・ジイソシアネートの異性体、フェニレン・ジイソシアネートの異性体及び誘導体、ビフェニレン・ジイソシアネートの異性体及び誘導体、及び/又はポリメチレンポリフェニレンソシアネート(PMPPI)が適当である。脂肪族液体が用いられる場合、脂肪族イソシアネートが適当である。例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)などの脂肪族非環式イソシアネート、イソフォロンジイソシアネート(IPDI)又は4,4’-メチレンビス(シクロヘキシル・イソシアネート)などの環式脂肪族イソシアネート、及び/又はHMDI又はIPDIのトリマーなどである。ポリマー・ポリイソシアネート、ビウレット、ブロック化・ポリイソシアネート、及びポリイソシアネートと融点調節剤との混合物も用いることができる。MDIは特に好ましいポリイソシアネートである。イソシアネートに他の特性、例えば高い柔軟性、が望まれる場合、イソシアネートの一部を適当なポリオールと反応させたPEG化誘導体を用いることができる。このような方法と化学は当業者には周知である。
【0066】
イソシアネート(単数又は複数)の濃度、及び二種以上のイソシアネートが用いられる場合の比(単数又は複数)は、特定の最終用途で望ましい放出速度プロファイルが得られるように選ばれる。イソシアネート(単数又は複数)の濃度は、また、マトリクス全体にわたって分散した(非連続)マトリクスを形成するために十分高くなければならない。一般に、イソシアネート(単数又は複数)は、マイクロカプセルの約5から約75質量%、さらに適切には約7から約30質量%、よりさらに適切には約10から約25質量%、最も適切には約10から約20質量%、を占める。
【0067】
ジアミン又はポリアミン、又はそれらの混合物、は水性相に可溶な任意のそのような化合物(単数又は複数)であってよい。脂肪族又は脂環式の第一級又は第二級ジアミン又はポリアミンが非常に適切である、例えば、エチレン-1,2-ジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、ビス-(3-アミノプロピル)-アミン、ビス-(2-メチルアミノエチル)-メチルアミン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、3-アミノ-1-メチルアミノプロパン、N-メチル-ビス(3-アミノプロピル)アミン、1,4-ジアミノ-n-ブタン、1,6-ジアミノ-n-ヘキサン、及びテトラエチレンペンタミンなどである。ポリエチレンイミン類も適当である。
【0068】
アミン成分のイソシアネート成分に対するモル比は、約0.1:1から約1.5:1まで変えることができる。適切には(i)アミン成分とイソシアネート成分のほぼ等モル濃度が用いられ、アミン成分のイソシアネート成分に対するモル比は約0.8:1から約1.3:1までの範囲にあり、この場合、壁形成反応は適切には約20℃から約40℃まで、さらに好ましくは約20℃から約30℃までの温度で行われる、又は(ii)イソシアネートが顕著に過剰に存在し、アミン成分のイソシアネート成分に対するモル比は約0.1:1から約0.35:1までの範囲にあり、この場合、壁形成反応は好ましくは約30℃から約60℃まで、さらに好ましくは約40℃から約50℃までの温度で行われる。(i)の場合、ほぼ等モル濃度のアミン成分とイソシアネート成分の反応は、マイクロカプセルの全体にわたって分布するポリ尿素(非連続)マトリクスの形成をもたらす。(ii)の場合、イソシアネート成分とアミン成分の一部の間に反応が起こり、エマルジョン液滴の外側のまわりに殻が固定され、続いて過剰なイソシアネート成分の加水分解とさらなる反応が起こって、得られたマトリクスの全体にわたって分布する(非連続)マトリクスが形成される。
【0069】
他のウォール・ケミストリー、例えば、ポリウレタンとポリアミド、を壁形成コンポーネントの適当な選択によって用いることもできる。水性相によって加えられる適当なグリコールは、上で教示された、水溶性であるものを含む。それらは、また、単純なポリヒドロキシル・グリコールを含む。例えば、適当なジオールは、エチレン・グリコール、1,2-ブタンジオール、ジエチレン・グリコール、トリエチレン・グリコール、ポリアルキレン・グリコール、例えば、ポリエチレン・グリコール、であり、また、1,2-及び1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチル・グリコール、又はネオペンチル・グリコール・ヒドロキシピバレートである。必要であれば追加して用いることができる分子内に3つ以上のヒドロキシル基を有するポリオールの例としては、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセロール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、トリメチロール−ベンゼン、及びトリスヒドロキシエチルイソシアネートなどがある。いろいろな糖、例えば、フラクトース、デキストロース、グルコース、及びそれらの誘導体など、を用いて高い官能性を用いることができる。適当な油溶解度特性を有するグリコールを固体水溶性生物活性化合物の分散の一部として油相に導入し、カプセル壁の形成だけでなく、(前述のように)(非連続)マトリクスの形成にも寄与するようにできる。水溶性及び油溶性の反応性ヒドロキシル含有化合物の混合物も考えられる。ポリアミドは、適当な酸原料(セバシン酸クロリドなど)の選択によって同様の仕方で生成される。任意の比でのポリ尿素、ポリウレタン、及びポリアミドの混合物も本発明の一部である。したがって、適切にはポリマー殻は、ポリ尿素、ポリアミド、又はポリウレタンであるポリマー、又はそれらのポリマーの二つ以上の混合物であり、さらに適切にはポリマー殻はポリ尿素である。
【0070】
同様に、油溶性アミンは、水性分散物の調製の前に油相に加えることも考えられ、その後適当な水分散性イソシアネート反応物質を加えて界面反応を完了させることもできる。
【0071】
マイクロカプセルのサイズ、イソシアネートの成分と濃度、アミン成分、及び二種以上のイソシアネート・モノマー及び/又はアミンが存在する場合に異なるイソシアネート・モノマー及び/又はアミンの比、を選択することによって、固体水溶性生物活性化合物の放出速度を半減期 [T50; 50%の活性成分がカプセルから失われる(すなわち、放出される)のにかかる時間] の値で数時間から数ヶ月又は数年まで変えることができる。水溶性生物活性化合物で、このように広い範囲にわたる放出速度を実現できるということは驚くべきことであり、水性のシンクへのきわめて遅い放出速度が得られるということは特に予期されなかったことである。
【0072】
さらに、異なる放出速度のマイクロカプセルの混合物を合体して単一製剤にして、注文に合わせた放出プロファイルを得ることができる。
【0073】
製造された状態で、カプセル組成物は水中分散物になる。これらのマイクロカプセルは、後に沈降防止剤と共に製剤化して、長期棚寿命のために安定化させる。沈降防止剤としては、キサンタン・ガムなどの水溶性多糖類、微結晶セルロースなどの水不溶性多糖類、及びベントナイトなどの構造粘土がある。微結晶セルロースが特に適切な沈降防止剤である。
【0074】
さらに、水性相に別の生物活性化合物を、固体として、エマルジョンとして(周囲温度で液体である化合物のエマルジョン又は本質的に水非混合性の適当な溶媒での生物活性化合物の溶液のエマルジョンとして)、又は水溶液として、又は上記の混合物として加えることが可能である。外部水性相に直接加えられる生物活性化合物は、マイクロカプセル内部のものと同じ化合物であってもよい。
【0075】
適切には、水性相における農薬は水溶解度が20℃で0.1から100 g/lまでの範囲であり、さらに適切には、水性相における農薬はネオニコチノイド殺虫剤であり、さらにより適切にはアセタミプリド、イミダクロプリド、チアクロプリド、又はチアメトキサムであり;最も適切にはチアメトキサムである。
【0076】
水性相に別の生物活性化合物が存在する場合、この化合物の濃度は比較的広い範囲で変えることができる。一般に、この化合物の濃度は、水性相全体に基づいて0から50質量%の間である。
【0077】
さらに、好ましくは水をベースとする組成物を乾燥させることが可能である。これは、水をベースとする組成物を濃縮し(例えば、沈降、遠心分離)、その後ドラム乾燥などの適当な乾燥方法によって達成できる。また、スプレー乾燥 [流動層内凝集法及び同様の顆粒化法を含む] 又は、化合物が熱に敏感な場合、凍結乾燥又は大気圧凍結乾燥などの方法によっても達成できる。スプレー乾燥が、速く、かつ本発明のマイクロカプセルなどの分散物に応用できるので好ましい。水をベースとする分散物から乾燥した製品を製造するためには、通常、別の不活性成分を加えて乾燥段階で、又は貯蔵の間のカプセルの完全性を保護し、かつ乾燥製品を使用のために水に容易かつ完全に再分散させることができるようにする必要がある。このような不活性成分としては、それだけに限定されないが、本質的に水溶性のフィルム形成物質、例えば、ポリビニル・アルコール、ポリビニルピロリドン、及びポリアクリル酸などがある。他の成分としては、界面活性剤、分散剤、糖、リグニンスルフォン酸塩、崩壊剤、例えば、架橋されたポリビニルピロリドンとマルトデキストリン、などがある。
【0078】
乾燥された製品は、さらに、水溶性の生物活性物質に関して上述したようにカプセル封入されない他の生物活性物質を含むことができる。
【0079】
乾燥した製品を水に希釈せずに直接用いることも可能である。そのような利用は、米の耕作における顆粒製品としての使用、耕作された芝生での使用、及び肥料混合物にブレンドする原料としての使用であり、その後土壌、芝生、又は米などの他の標的に散布される。
【0080】
適切には、乾燥製品は顆粒である。
【0081】
適切には、乾燥製品は水分散性である。
【0082】
本発明の方法によって達成できる広範囲の放出速度は、葉面散布及び土壌散布される製品としての従来の作物保護用途、耕された芝生での使用、種子処理、及び多数の他の用途、例えば、シリアリ保護や一般的な害虫防除のための永続する残留スプレー、などいくつかの用途での利用を可能にする。
【0083】
本発明のさらに別の様態では、産業資材の保護のためのここで説明されたような組成物の利用 [「資材保護」と呼ばれる] が提供される。適切には、保護される産業資材は、木材;プラスチック;木材とプラスチックの複合材;塗料;紙;及び壁板;からなる群から選択される。保護は、例えば、シロアリ防除の分野、あるいは侵入する害虫種に対する家屋の保護の分野におけるように、標的への攻撃を製品によって遅らせ、撃退し、殺すという形になることもあり、保護する物品(例えば、建物)と害虫種が通常住んでいる外部環境の間にバリアを設けることもできる。
【0084】
「産業資材」という用語は、建設などで用いられる資材を含む。例えば、産業資材は、構造木材、ドア、戸棚、貯蔵ユニット、じゅうたん、特にウールやヘシアンなどの天然繊維のカーペット、プラスチック、木材(エンジニアード・木材を含む)、及び木材・プラスチック複合材などである。
【0085】
ある特定実施形態では、産業資材はコーティングである。「コーティング」は基板に塗布される組成物を含む、例えば、塗料、ステイン、ニス、ラッカー、プライマー、セミグロス・コーティング、グロス・コーティング、フラット・コーティング、トップコート、ステイン・ブロック・コート、多孔質基板のペネトレーティング・シーラー、コンクリート、マーブル、エラストマー・コーティング、マスチック、コーキング、シーラント、ボード及びパネル・コーティング、輸送コーティング、家具コーティング、コイル・コーティング、橋梁及びタンク・コーティング、表面マーキング・塗料、レザー・コーティング及びトリートメント、フロアケア・コーティング、ペーパー・コーティング、[ヘアー、スキン、又はネイルなどの]パーソナルケア・コーティング、織布及び不織布コーティング、色素印刷ペースト、[例えば、感圧接着剤、及びウエット又はドライ積層接着剤などの]接着コーティング、及び石膏、などである。
【0086】
適切には、「コーティング」は、塗料、ニス、ステイン、ラッカー、又は石膏を意味する;さらに適切には、「コーティング」はラッカーであり、あるいはまた、「コーティング」は塗料を意味する。塗料は、例えば、フィルム形成体とキャリア(このキャリアは水及び/又は有機溶媒であってよい)を含み、任意に色素を含む。
【0087】
これに加えて「産業資材」は接着剤、シーラント、接合材、ジョイント、及び絶縁材を含む。
【0088】
「木材」は、木材及び木材製品、例えば、木材製品、建材、合板、チップボード、フレークボード、積層材、配向性ストランドボード、ハードボード、パーチクルボード、南洋材、構造材、木質梁、レール枕木、橋梁、桟橋のコンポーネント、木製車両、ボックス、パレット、コンテナ、電柱、木製フェンス、木製ラギング、木材、合板、チップボードで作られたウインドーとドア、建具、又はきわめて一般に家屋やデッキを建造し、建具を作り、建設及び大工作業で用いられるエンジニアード・木材を含む木材製品、を含むものとする。
【0089】
「産業資材」はまた、石膏をベースとする壁板などの壁板を含む。
【0090】
本発明のさらに別の様態では、ここで記載されているような組成物を含む「産業資材」が提供される。ある特定の実施形態では、上記産業資材は、木材;木材とプラスチックの複合材;塗料;ペーパー;及び壁板からなる群から選択される。ある特定の実施形態では、上記産業資材は木材複合材である。
【0091】
産業資材を本発明の製品によって処理する仕方は、例えば:産業資材に上記製品を含ませることによる、上記資材に上記の殺真菌剤を吸収させる、含浸させる、それで処理する(閉じた圧力又は真空システム内で)、建築資材を浸す又は浸ける、又は建築資材をコーティングする、例えば、カーテン・コーティング、ローラー、ブラッシ、スプレー、噴霧、ダスティング、スキャッタリング、又はポアリング(pouring)塗布によってコーティングすることによる。
【0092】
ゆっくりと放出するマイクロカプセルを使用すると、カプセルに封入されていない製剤に比べて長い期間にわたる生物的コントロールが可能になり、土壌に散布された製品の場合、このようなマイクロカプセルを使用することによって浸出の度合も減少する。後者は特に本発明で開示された活性化合物に関連し、その活性化合物の実質的な水溶解性のために、カプセルに封入されない形で用いられたときに、それらは浸出しやすい。マイクロカプセルが水性媒体に懸濁され、その水性媒体がカプセルに封入されていない生物活性化合物の懸濁を含んでいる特定の実施形態では、急速なノックダウン活性と長期間にわたる生物的コントロールの両方が、特に殺虫剤に関して実現される。その他の有用な利点として、水溶性物質のゆっくりとした放出が望まれるものにこのような製品を組み込むことがあげられる。例えば、大量の水の処理、及び大量の水が活性物質を急速に浸出させる中央回転散水灌漑系への添加などである。
【0093】
このように製造されたマイクロカプセル懸濁物は、そのような製品としての正常な様式で利用できる。すなわち、懸濁物をパッケージし、最終的にはその懸濁物をスプレー散布タンク又はその他のスプレー装置に移し、そこで水と混合してスプレー散布できる懸濁液を形成する。このようなマイクロカプセルの土壌散布にはいろいろな散布方法を用いることができる、例えば、植え付け前散布及び植え付け後散布で、希釈されたスプレーとして、又はより濃いドレンチとして、植え付け孔への直接散布も用いることができる。散布は、移植の前の苗木トレーなどに行うこともできる。シロアリ保護のためには、本発明のマイクロカプセルを土台の下の土壌ドレンチとして、土台の外側のまわりに周縁「トレンチ及びトリート」バリアとして散布する、又はコンクリートに直接散布することもできる。あるいはまた、マイクロカプセルの懸濁液をスプレー乾燥又は他の公知の乾燥方法でドライ・マイクロカプセルに変え、得られた物質をドライ形態でパッケージすることもできる。
【0094】
本発明にはいろいろな様態があることは理解されるであろう。ある様態では、本発明はマイクロカプセル製剤に関し、マイクロカプセルは少なくとも部分的に固体でありマイクロカプセルの全体にわたって分布している(非連続)マトリクスに分散する固体水溶性生物活性化合物を含む。詳しくは、本発明はマイクロカプセルを含む製品に関し、マイクロカプセル自体は、
(a)ポリマー殻;及び
(b)(i)マトリクスに分散する固体農薬、及び(ii)水非混合性液体、を含むコアから成り、該マトリクスが非連続的に該水非混合性液体全体にわたって分布することを特徴とする。
【0095】
その他の様態及び好ましい実施形態は、以下に示される。
【0096】
マイクロカプセル製剤であって、マイクロカプセルが(非連続)マトリクス中に分散する固体水溶性生物活性化合物を含み、該マトリクスが少なくとも部分的に固体であり、該マイクロカプセル全体にわたって分布し、マイクロカプセルがその形成の間水性相に懸濁されているマイクロカプセル製剤。
【0097】
上記のようなマイクロカプセル製剤であって、該水溶性生物活性化合物が周囲温度で固体であり、カプセル内の有機非溶媒に分散していることを特徴とする。
【0098】
上記のようなマイクロカプセル製剤、及びそれを作るための上記のような方法であって、モノマーが分散相で存在し、それに重合を行わせて(非連続)マトリクスを形成する方法。
【0099】
上記のようなマイクロカプセル製剤であって、水非混和性液体が反応性モノマーを含むビニルであることを特徴とするマイクロカプセル製剤。
【0100】
上記のようなマイクロカプセル製剤、及びそれを作るための上記のような方法であって、反応物質が溶解している液体内に該水溶性生物活性化合物が分散し、液体と反応物質を反応させて(非連続)マトリクスを形成する方法。
【0101】
上記のようなマイクロカプセル製剤であって、水非混和性液体が第二の反応種を含む反応物質であり、それによって(非連続)マトリクスが形成されることを特徴とするマイクロカプセル製剤。
【0102】
上記のようなマイクロカプセル製剤であって、該水溶性生物活性化合物がマトリクス内に保持される実質的に水非混合性液体内に分散していることを特徴とするマイクロカプセル製剤。
【0103】
上記のようなマイクロカプセル製剤であって、実質的に水非混合性液体が第二の生物活性化合物である、又は含むことを特徴とするマイクロカプセル製剤。
【0104】
上記のようなマイクロカプセル製剤であって、連続な水性相に一種以上の生物活性化合物が [固体分散物として、液体分散物として、又は水性相における溶液として] 存在することを特徴とするマイクロカプセル製剤。
【0105】
上記のようなマイクロカプセル製剤であって、連続な水性相に存在する生物活性化合物が該マイクロカプセル内に分散しているものと同じ水溶性生物活性化合物であることを特徴とするマイクロカプセル製剤。
【0106】
上記のようなマイクロカプセル製剤であって、該水溶性生物活性化合物が殺虫剤であることを特徴とするマイクロカプセル製剤。
【0107】
上記のようなマイクロカプセル製剤であって、該殺虫剤がチアメトキサムであることを特徴とするマイクロカプセル製剤。
【0108】
殺虫剤の放出速度をコントロールして長い期間にわたる生物防除を可能にするような上記のようなマイクロカプセル製剤の利用。
【0109】
上記のようなマイクロカプセル製剤の利用であって、殺虫剤の放出速度をコントロールして該殺虫剤の浸出を減少させることを特徴とする利用。
【0110】
上記のようなマイクロカプセル製剤であって、該製剤は水をベースとするもの(水に分散したカプセル)であることを特徴とするマイクロカプセル製剤。
【0111】
上記のようなマイクロカプセル製剤であって、該製剤は乾燥製品であり、スプレー乾燥、又は凍結乾燥、又は適当な濃縮処理と最終乾燥、によって製造されることを特徴とするマイクロカプセル製剤。
【0112】
上記のようなマイクロカプセル製剤であって、(非連続)マトリクス形成化合物(適切にはポリマー)を、その化合物の揮発性溶剤を除去することによって該マイクロカプセル内で分離させることを特徴とするマイクロカプセル製剤。
【0113】
上記のようなマイクロカプセル製剤の利用であって、製造業者、使用者、又は環境に対する生物活性化合物の安全性を改善する利用。
【0114】
上記のようなマイクロカプセル製剤を形成する方法であって、(非連続)マトリクスはカプセルの前、カプセル調製の間、又はカプセル調製の後で調製されることを特徴とする方法。
【0115】
上記のようなマイクロカプセルを形成する方法であって、(非連続)マトリクスが界面重縮合反応によって形成されることを特徴とする方法。
【0116】
上記のような方法であって、該重縮合反応のための少なくとも一種の反応物質が分散した[有機]相に存在し、該重縮合反応のための少なくとも一種の反応物質が連続[水性]相に存在することを特徴とする方法。
【0117】
上記のような方法であって、該重縮合反応のための反応物質が分散した相だけに存在することを特徴とする方法。
【0118】
以下の実施例は、例示を目的とするものであって本発明を限定するためのものではなく、多くのカプセル・サンプルがVMD [体積中央径] によって特徴付けられる。
【0119】
実施例1a−1w
以下の実施例はチアメトキサム粒子の懸濁物が容易にポリ尿素マイクロカプセル内に封入でき、カプセル内の(非連続)マトリクスが周囲温度で本質的に等モル濃度のイソシアネート成分とアミン成分の反応から形成されることを実証する。このような製剤をうまく調製することは、チアメトキサムの高い水溶解性(20℃で4.1 g/l)により、決してささいなことではなく、これは、チアメトキサム粒子は乳化プロセスの間及び/又は(非連続)マトリクスの形成の間に水性相に移動する傾向があることを意味する。
【0120】
チアメトキサムは、表1に示されたレシピに従って以下の方法を用いてカプセル封入された。有機相は一種以上のイソシアネートを実質的に水非混合性溶媒中の細かく砕いたチアメトキサムの懸濁物に加えて調製された。これをポリビニル・アルコールの水溶液で乳化させて所望の粒子サイズを得た。次に、多官能性アミンの溶液を加えて、壁形成反応を周囲温度で進行させ、その間穏やかな攪拌を維持した。最後に、製剤化後処理(postformulation)(中性pHへの調整と沈降防止剤の添加)を必要に応じて実施した。
【0121】
ナタネ油(Brassica rapaから)は、Flukaから入手した。
Solvesso(登録商標) 200はExxonが供給している芳香族炭化水素である。
Crospray(登録商標) 7Nは、Sun Oil Companyが供給している鉱物油である。
Norpar(登録商標) 15とPrifer(登録商標) 6813はExxonが供給しているパラフィン溶剤である。
Solsperse(登録商標) 17000は、Lubrizolが供給しているポリマー分散剤である。
Z190-165(登録商標)は、Uniqemaが供給しているポリマー分散剤である。
Agrimer(登録商標) AL22は、ISPが供給しているアルキル化されたビニルピロリドン・コポリマーである。
Desmodur(登録商標) Z4470は、Bayerがnaphtha 100中の70%溶液として供給しているイソフォロンジイソシアネートのトリマーである。
Desmodur(登録商標) Wは、Bayerが供給している4,4’-メチレンビス(シクロヘキシル・イソシアネート)である。
TDIは、Sigma Aldrichが供給しているトリレン2,4-&2,6-ジイソシアネートの80:20混合物である。
Suprasec(登録商標) 5025(ポリメチレン・ポリフェニレン・イソシアネート)は、Huntsmanが供給している。
Gohsenol(登録商標) GL03, GL05, 及びGM14-Lは、Nippon Gohseiが供給しているポリビニル・アルコールである。
ポリエチレンイミン(Mn~600 [Mnは数平均分子量である]、M.Wt.~800 Daltons)はAldrichが供給している。
Avicel(登録商標) CL611は、FMCが供給している微結晶セルロースである。
Kelzan(登録商標)は、CP Kelcoが供給しているキサンタン・ガムである。
サンプルを調製した後、各サンプルはそのVMDを測定して特徴づけられる。
【0122】
【表1】

【表2】

【表3】

【0123】
実施例 2a−2d
次の実施例は、チアメトキサム粒子の懸濁物をポリ尿素マイクロカプセルに封入できることを実証し、カプセル内の(非連続)マトリクスはイソシアネートの加水分解と自己縮合、及びイソシアネート成分と水性相を通して加えられるアミン成分の間の反応との組み合わせによって形成される。これらの実施例で、外から加えられるアミン:イソシアネート成分のモル比は1:1よりも著しく小さい。このような製剤をうまく調製することは、(非連続)マトリクスを形成するときに用いられる高い温度のために特に難しい。チアメトキサム粒子が水性相に過剰に移動することを防ぐために、アミン成分と一部のイソシアネート成分の間の初期反応によってエマルジョンの外側のまわりに殻を固定することが重要である。チアメトキサムは、表2に示されているレシピに従って以下のプロセスを用いてカプセル封入された。有機相は、実質的に水非混合性溶媒における細かく砕かれたチアメトキサムの懸濁物に一種以上のイソシアネートを加えて調製された。これをポリビニル・アルコールの水溶液に乳化して所望の粒子サイズを得た。次に多官能性アミンの溶液を加え、エマルジョンの温度を40℃に上げ、この温度を3時間維持して壁形成反応を進行させ、その間穏やかな攪拌を維持した。最後に、製剤化後処理(中性pHへの調整と沈降防止剤の添加)が必要に応じて行われた。
【0124】
その後、各サンプルはそのVMDを測定して特徴付けられた。
【0125】
【表4】

【0126】
実施例3
次の実施例は、チアメトキサムのカプセル封入懸濁物と水性相におけるカプセル封入されないチアメトキサムの懸濁物の組み合わせを実証する。チアメトキサムの懸濁物を含むマイクロカプセルは、表3の組成に従って実施例1で詳述した方法によって調製された。このカプセル製剤はそのVMDを測定して特徴付けられた。次に、このマイクロカプセルをCruiser(登録商標)350FS(350 g/lのチアメトキサムを含む濃縮懸濁物)といろいろな比で混合して、カプセル封入されたチアメトキサム対カプセル封入されないチアメトキサムの比が質量で1:1, 1:2, 及び2:1の最終製品を得た(それぞれ、実施例3a, 3b, 及び3c)。
【0127】
【表5】

【0128】
実施例4
次の実施例は、チアメトキサム粒子の懸濁物を含むマイクロカプセルをスプレー乾燥して乾燥した顆粒製品を得ることができることを実証する。チアメトキサム粒子の懸濁物を含むマイクロカプセルは、実施例1で述べた方法に従って、水と下記の表4のレシピに示された成分を用いて調製された[あとで水が除去されて表4のレシピを有する製剤が得られた]。次に、このマイクロカプセル懸濁物をポリアクリル酸(MW 2000)、デキストリン、及びPolyfon(登録商標)T(MeadWestvacoから供給されるリグノスルフォン酸ナトリウム)の水溶液と混合してスプレー・スラリーを得た。このスラリーをPepit(登録商標)WG4スプレー乾燥機でスプレー乾燥して次の組成のドライ顆粒製品を得た。
【0129】
【表6】

【0130】
実施例5
次の例は、[実施例1aから1fまでの製品を用いて]チオメトキサム粒子の懸濁物をカプセルに封入することによってこの殺虫剤の水への放出速度を、T50値が数時間から数年の範囲にわたるようにコントロールすることが可能になることを実証する。
【0131】
水への放出速度の測定は以下の方法で行われた。カプセル懸濁物が脱イオン水に希釈され、チアメトキサム濃度を典型的には0.01%w/w(すなわち、その溶解度より十分低い濃度)にした。この分散物が20℃で4週間までにわたって連続的に回転された。いろいろな時点で少量を採取し、0.45μmフィルタを通して濾過して無傷のカプセルを除去した後にチアメトキサムを分析した。結果は図1に示されている。
【0132】
実施例6
次の実施例は、[実施例3aから3cまでの製品を用いて]カプセル封入されたチアメトキサム対カプセル封入されないチアメトキサムの比を変えることによって放出速度プロファイルを微調整し、所望量の自由に利用されるチアメトキサムの後で残りの活性カプセルをゆっくりと放出するようにできることを例示する。放出速度を測定する方法は実施例5で述べたようなものであり、結果は図2に示されている。
【0133】
実施例7
次の実施例は、[実施例1sから1vまでの製品を用いて]チアメトキサム粒子の懸濁物をカプセル封入することにより、種子処理のために散布された場合の土壌への殺虫剤の放出速度を長期コントロールできる(Cruiser(登録商標)5FS(500 g/lのチアメトキサムを含む濃縮懸濁物)でカプセル封入せずに処理した場合と比較)ことを実証する。マイクロカプセル懸濁物は、被覆ポリマーSpectrum(登録商標)300Cと混合され、トウモロコシ種子に種子処理器で散布され、種子あたり1.25 mgのチアメトキサム及び0.625 mgのSpectrum(登録商標)300Cが添加された。10個の処理された種子がBuchner漏斗(孔径2,11 cm)で約80 gの土壌に置かれ、さらに35 gの土壌と濾紙で覆われた。一定量の水(70ml, 40ml, 40ml, 40ml, 60ml, 100ml)が濾紙にスプレー散布され、流出液を集め、秤量し、チアメトキサム含有量を分析した。結果は図3に示されている。
【0134】
実施例8
次の実施例は、チアメトキサムのカプセル封入は土壌殺虫剤として用いられたとき(カプセル封入されないチアメトキサムに比べて)長期の体系的な生物的防除になるということを実証する。マイクロカプセル懸濁物[実施例1aからのもの]とActara(登録商標) WG[25質量%のカプセル封入されないチアメトキサム]が、それぞれ個別にキュウリ(Sakarta変種)苗木に苗木あたり5 mgのチアメトキサムという割合で散布された。散布は、苗木を植え付ける直前に植え付け孔に直接行われた(マイクロカプセルは3 mlの水で希釈され、Actara(登録商標) WGはドライ散布された)。区画は、散布及び移植の前に圃場容水量に達するまで灌漑され、移植後二日毎に水[6mm/m2]で灌漑された。2-3日毎に、2枚の最も若い十分に成長した葉を摘み取り、各葉からひとつのリーフディスクを打ち抜いた(サンプリング時間あたり4つの苗木を取り、各サンプリングで異なる苗木を用いた)。
【0135】
リーフディスクは、約25匹のベミシア・タバシ(Bemisia tabaci)に曝露され、2% Agarゲルのペトリ皿で培養された。死亡率が72時間後に評価された。測定された死亡率が60%より低くなった日に達するまで、十分に生育した葉を摘み続けた。下の表が示すように、マイクロカプセル懸濁物1aではカプセル封入されない標準と比較してチアメトキサムの効力の持続性が35%増加することが見出された。
【0136】
【表7】

【0137】
実施例9
次の実施例は、チアメトキサムのカプセル封入が、固体殺虫剤として用いられた場合(カプセル封入されないチアメトキサムに比べて)浸出が減少することを実証する。マイクロカプセル懸濁物[実施例1d, 1k, 1lからの製品]とActara(登録商標) WG [25質量%の化合物封入されないチアメトキサム] がそれぞれ個別に、キュウリ(Sakarta変種)苗木に苗木あたり5 mgのチアメトキサムという割合で散布された。散布は、苗木を植え付ける直前に植え付け孔に直接行われた(マイクロカプセルは3 mlの水で希釈され、Actara(登録商標) WGはドライ散布された)。区画は、散布及び移植の前に圃場容水量に達するまで灌漑され、移植後二日毎に水[6mm/m2]で灌漑された。いろいろな時間間隔で、苗木の真下で土壌コアを0-18 cm及び18-36 cmの深さまで採取した(サンプリング時間毎に4つのコア)。100 gの土壌がビーカーに入れられ(重複して2つ)、水で全体の体積が140 mlになるようにした。このスラリーを攪拌し、30分間放置して土を沈降させた。次に、各サブサンプルから2.5 mlの上澄みを取り、合体させた(重複して4つ)。アフィス・クラシボラ(Aphis craccivora)を感染させたソラマメの苗が上澄みで培養され、72時間後に死亡率が評価された。カプセル封入されたチアメトキサムの製剤で浸出に3倍まで達する減少が観測された(カプセル封入されない標準と比べて;下のデータを参照のこと。ここで、DAA=散布後の日数)。
【0138】
【表8】

【0139】
【表9】

【0140】
実施例10
この実施例は、[実施例1c及び1dの製品を用いて]チアメトキサムをカプセル封入することでシロアリ防除剤として用いたときに(カプセル封入されないチアメトキサム;Acarta(登録商標) WG [25質量%の封入されないチアメトキサム]と比べて)長期間の生物的防除が得られることを実証する。従来のようなコンクリート・スラブ研究がコプトテルメス・クルビグナタス(Coptotermes curvignathus)に強く感染した試験部位で以下の方法で行われた。地面をきれいにし、木製フレームが処理される個々のエリアのまわりに設置された(処理あたり5重複)。地面にシロアリ防除剤(0.1%又は0.2%のチアメトキサム)を4.5リットル/m2という量で散布して、処理された土壌は蒸気バリアで覆われた(パイプをバリアに切り込んで処理された土壌の一部を露出させた)。蒸気バリアの上にコンクリートが置かれた。木のブロックがパイプに挿入され、パイプはキャップで封止された。木のブロックのシロアリ被害の評価は一月毎に行われ、各評価点で被害したブロックが新しいブロックに置き換えられた。
【0141】
この試験では(1を超える木材被害指数 [WDI] は処理が失効したことを表す)、カプセル封入されない標準のチアメトキサムは0.1%と0.2%の両方の処理濃度のチアメトキサムで10ヶ月後に失効することが見出された。しかし、カプセル封入されたチアメトキサムではどちらのチアメトキサム濃度でも12ヶ月後に何も失効がみられなかった。
【0142】
【表10】

【0143】
実施例11
この実施例は、チアメトキサム[実施例1iの製品]のカプセル封入によって、種子処理として使用したとき、特に高い害虫圧力(pest pressure)の条件下で用いた場合、(カプセル封入されないチアメトキサム;Cruiser(登録商標) FS,に比べて)大きな生物効力が得られることを例示する。チアメトキサム製剤はトウモロコシ種子に個別に、種子あたり1.25 mgのチアメトキサムという割合で散布され、いくつかの野外地点で、根切り虫(Diabrotica spp.)に対する効力が試験された。実験計画は、4重複のランダム化完全ブロック・デザインであった。各区画は、長さ5.3 mの4列に各35個の種子を、4列コーンプランターを用いて植え付けたものである。植え付け、耕作、肥料管理、灌漑及び収穫はその地点による局地的なコーン管理方式に基づいて変えられた。苗木の出芽は、植え付けから14, 21, 及び28日後に中央の2列で出芽したプラントを数えることによって評価された。
【0144】
コーン根切り虫被害の評価は、根域の土壌サンプルで観察された幼生の大部分が第三虫齢の幼生であり[すなわち、成虫に近くなってもはや根をかじらなくなり]、根切り虫の摂食が終了したと推定されたときに行われた。各区画の外側2列の各々から5本(全部で10本/区画)を掘り起こし、洗って付着した土壌を除去した。
【0145】
すべての地点で根の被害の評価は、Node-Injuryスケールに従って行われた(Oleson, J.D. et al. 2005, J Econ Entomol 98(1): 1-8);すなわち、0=食害なし、1=ひとつの節又は一節に相当する分が茎の約2インチ(5cm)以内まで食われる、2=二つの完全な節(又は相当部分)が食われる、3=三つ以上の節(又は相当部分)が食われる。完全な節の中間の被害は、食われた節のパーセンテージで表された。各区画/repの評価は収穫された10本の平均である。
【0146】
【表11】

【図面の簡単な説明】
【0147】
(原文記載なし)
【図1】

【図2】

【図3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロカプセルを含んで成る製品であって、マイクロカプセル自体は:
(a)ポリマー殻;及び
(b)(i)マトリクス内に分散した固体農薬、及び(ii)水非混合性液体、を含むコア;
を含み、該マトリクスが該水非混合性液体中に非連続に分布していることを特徴とする前記製品。
【請求項2】
該農薬の水溶解度が20℃で0.1から100 g/lの範囲である、請求項1に記載の製品。
【請求項3】
該農薬がネオニコチノイド殺虫剤である、請求項2に記載の製品。
【請求項4】
該農薬が、アセタミプリド、クロチアニジン、イミダクロプリド、チアクロプリド、又はチアメトキサムである、請求項3に記載の製品。
【請求項5】
該農薬がチアメトキサムである、請求項4に記載の製品。
【請求項6】
該マイクロカプセルが水性相に分散している、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の製品。
【請求項7】
該製品が乾燥製品である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の製品。
【請求項8】
該乾燥製品が顆粒状である、請求項7に記載の製品。
【請求項9】
該乾燥製品が水分散性である、請求項7又は8に記載の製品。
【請求項10】
該水性相が農薬を含む、請求項6に記載の製品。
【請求項11】
該水性相における該農薬の水溶解度が20℃で0.1から100 g/lの範囲である、請求項10に記載の製品。
【請求項12】
該水性相における該農薬がネオニコチノイド殺虫剤である、請求項11に記載の製品。
【請求項13】
該水性相における該農薬が、アセタミプリド、クロチアニジン、イミダクロプリド、チアクロプリド、又はチアメトキサムである、請求項12に記載の製品。
【請求項14】
該水性相における該農薬がチアメトキサムである、請求項13に記載の製品。
【請求項15】
該マトリクスが、ポリ尿素、ポリアミド、又はポリウレタンであるポリマー、又はこれらのポリマーの二つ以上の混合物である、請求項1乃至14のいずれか1項に記載の製品。
【請求項16】
該マトリクスがポリ尿素である、請求項15に記載の製品。
【請求項17】
該ポリマー殻が、ポリ尿素、ポリアミド、又はポリウレタンであるポリマー、又はこれらのポリマーの二つ以上の混合物である、請求項1乃至16のいずれか1項に記載の製品。
【請求項18】
該ポリマー殻がポリ尿素である、請求項17に記載の製品。
【請求項19】
該水非混合性液体の水溶解度が20℃で、質量で5000 ppm以下である、請求項1乃至18のいずれか1項に記載の製品。
【請求項20】
該水非混合性溶媒が農薬である又は農薬を含む、請求項1乃至19のいずれか1項に記載の製品。
【請求項21】
農業害虫に対抗又は農業害虫を防除するための請求項1乃至20のいずれか1項に記載の製品の利用であって、該害虫に又は該害虫の場所に殺虫有効量の該製品を散布することを含む製品の前記利用。
【請求項22】
該害虫がシロアリである、請求項21に記載の製品の利用。
【請求項23】
固体農薬の放出速度をコントロールするための請求項1乃至20のいずれか1項に記載の製品の利用。
【請求項24】
土壌を通して浸出する固体水溶性農薬の量を減らすための請求項1乃至20のいずれか1項に記載の製品の利用。
【請求項25】
種子処理における請求項1乃至20のいずれか1項に記載の製品の利用。
【請求項26】
資材を保護するための請求項1乃至20のいずれか1項に記載の製品の利用。
【請求項27】
請求項1乃至20のいずれか1項に記載の製品を調製する方法であって、油中に固体農薬が分散している水中油型エマルジョンを界面重合させるステップを含む前記方法。

【公表番号】特表2009−520796(P2009−520796A)
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546635(P2008−546635)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【国際出願番号】PCT/GB2006/004912
【国際公開番号】WO2007/072052
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(500371307)シンジェンタ リミテッド (141)
【Fターム(参考)】