説明

製品の洗浄方法

【課題】製品を洗浄する方法において、大量の純水を精製して使用せずに、循環して高周波により殺菌すると共に加熱・冷却により、適宜の温度で効率良く、安価に、生菌による汚れがな製品を洗浄することを目的とする製品の洗浄方法を提供する。
【解決手段】
製品を洗浄する純水が循環して、加温冷却により所定の温度で製品を洗浄する方法であって、前記、循環する純水が高周波により殺菌して使用されることを特徴とする製品の洗浄方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は純水を用いて製品を洗浄する方法に関し、特に純水を循環し、高周波により殺菌し、さらに所定の温度で製品を洗浄する製品の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、純水を用いて製品を洗浄する方法は多く使用され、且つ、各種の方法が研究され提案されている。
【0003】
(1)先行技術1
光学部品の洗浄方法として、洗浄工程の温純水浸漬工程において、比抵抗値が0.5〜5.0MΩ・cmの純水を使用することが知られている(例えば、特許文献1参照)。この方法は図2に示すように、8工程からなっている。そして温純水浸漬工程で所定温度(略40℃)に加温した純水に被洗浄物を浸漬した後、該純水から被洗浄物を引上げ、さらに被洗浄物を乾燥工程で乾燥させる、純水を用いた洗浄方法である。
【0004】
(2)先行技術2
また、被塗装物に純水をかけて洗浄する水研設備も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
この設備は、図3に示すように、使用済み水研水および純水中に混入・発生するバクテリアを殺菌する紫外線殺菌装置(101)を設け、水研水循環系(102)によって濾過され、且つ、紫外線殺菌装置(101)によって滅菌される。そして滅菌された水研水および純水の混合水のうち純水使用量相等分を、純水再生手段(104)を介して純水供給手段(103)に供給する純水循環系(105)が設けられている。
【0006】
(3)先行技術3
また、ウエーハ表面の洗浄方法として、複数の薬液洗浄工程と超純水リンス工程を組合せてウエーハ表面の汚染物を除去する方法が知られている(例えば、特許文献3参照)。この方法は、複数の超純水リンス工程の内、少なくても一つのリンス工程に0℃〜20℃に維持してリンスを行う洗浄方法である。
【0007】
以下に先行技術文献を示す。
【特許文献1】特許第541590号公報
【特許文献2】実登第3541590号公報
【特許文献3】特許第3505998号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
先行技術1について
先行技術1では、洗浄工程の温純水浸漬工程が温純水槽を用いて行われるために、水槽内の純水にバクテリアなどの生菌が繁殖し、純水が汚染するという問題がある。また、光学部品等の被洗浄物が生菌により汚れるという問題がある。
【0009】
さらに、水槽内の純水にバクテリア等の生菌を繁殖させないために、純水の供給と排水
を頻繁に行わなくてはならないという問題がある。このために大量の純水を精製しなければならないという問題がある。
【0010】
また、大量の純水を精製するために、コストがかかり、且つ、排水量も大量となり処理問題など、環境面でも好ましくない。
【0011】
先行技術2では、純水の使用量を減少させ、且つ、純水中に混入・発生するバクテリアを殺菌するために紫外線ランプによる紫外線殺菌装置が設けられている。しかし、紫外線ランプは短波長であるために、水に対する透過率が低く大量の純水を短時間で殺菌するこは困難である。
【0012】
また、殺菌する純水の温度が高い(40℃以上)場合には殺菌効率が著しく低下するという問題がある。
【0013】
先行技術3では、複数の薬剤洗浄工程と超純水リンス工程を組み合わせてウエーハ表面の汚染物を除去するために薬液が大量に排水されるという問題がある。さらに、これらの排水を処理するための設備が必要になり、コストが高くなるという問題がある。
【0014】
また、紫外線殺菌工程と逆浸透膜透過工程、さらに、イオン交換樹脂膜透過工程、ウルトラフイルタ透過工程等の工程によって超純水が製造されると記載されている。しかし殺菌が紫外線であるために、水に対する透過率が低く、大量の純水を短時間で殺菌するこは困難である。
【0015】
さらに、紫外線ランプによる殺菌は殺菌する純水の温度が高い(40℃以上)場合には殺菌効率が著しく低下するという問題がある。
【0016】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたものであり、次のような製品の洗浄方法を提案することを目的とする。
すなわち、本発明の第1の目的は、製品を洗浄する純水が溜まることなく循環し、さらに、バクテリアなどの生菌の繁殖により、純水が汚染され製品に生菌の汚れが発生することのない、製品の洗浄方法を提供することである。
【0017】
また、本発明の第2の目的は、洗浄に使用する純水を大量に精製して使用したり、排出することがない環境に優しい、コストのかからない、製品の洗浄方法を提供することである。
【0018】
また、本発明の第3の目的は、洗浄に使用する純水の殺菌が純水の温度に左右されることなく短時間で大量の殺菌が確実に、且つ、効率よくできる製品の洗浄方法を提供することである。
【0019】
また、本発明の第4の目的は、洗浄に使用する純水の殺菌が薬剤等を用いることなく、効率良く、容易に殺菌処理できる、製品の洗浄方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記問題点を解決するために、本発明の請求項1に係る発明は、
製品を洗浄する純水が循環して、加温冷却により所定の温度で製品を洗浄する方法であって、
前記、循環する純水が高周波により殺菌して使用されることを特徴とする製品の洗浄方法である。
【0021】
次に、本発明の請求項2に係る発明は、
前記、所定の温度が30〜60℃であることを特徴とする請求項1に記載の製品の洗浄方法である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の製品の洗浄方法は洗浄する純水を溜めることがないために、バクテリア等の生菌が繁殖し難く、且つ、循環により、短時間で効率良く確実に、大量の純水を殺菌することができる。
【0023】
また、純水を大量に精製したり、あるいは使用した純水を大量に排水することがないために、排水処理設備も不要で、且つコストをはじめ維持費が少ない。
【0024】
さらに、純水の殺菌が紫外線等のランプでないために、殺菌する純水の温度に左右されることがなく、且つ、長期間の使用で殺菌力が低下して行くことがない。
【0025】
また、純水の殺菌に薬剤を使用しないために、排水処理が容易にできる。さらに、処理設備も不要であり、環境に優しく、コストをはじめ維持費が少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の製品の洗浄方法を実施の形態にそって以下に図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明の製品の洗浄方法の一実施例を説明するための洗浄装置の概略を示す概略図である。
【0027】
図1において、1は循環する純水を殺菌する純水高周波殺菌部である。この純水高周波殺菌部1には、循環している純水を殺菌するための純水入口14と殺菌された純水が通る純水出口15および排水口16、さらにアース7が設けられている。そして、純水高周波殺菌部1は高周波遮蔽板3で覆われている。
【0028】
また、純水高周波加熱殺菌部1で殺菌された純水は純水出口15から冷却装置4に入り、所定の温度に冷却される。そして、流量調整弁12とフイルター10を介して殺菌・冷却された純水が製品洗浄部2に送られる。
【0029】
また、製品洗浄部2は殺菌された純水が供給される供給口と洗浄に使用された純水が循環するための循環排水口と、製品洗浄部2を洗浄する際に、製品洗浄部2中の純水を取り除くための排出口と切換バルブ11が設けられている。そして、製品洗浄部2で使用された純水は循環排水口から切換バルブ11とフイルター10を介してポンプ8に送られる。
【0030】
さらに、使用された純水はポンプ8から該純水を所定の温度に加熱する加熱装置5に送られ、さらに該純水を殺菌するために純水高周波加熱殺菌部1に送られる。
【0031】
また、ポンプ8と加熱装置5の間には、循環する純水の流量を調整するための流量調整弁12と濾過するためのフイルター10が設けられている。そしてフイルター10は加熱装置5と純水高周波加熱殺菌部1との間にも設けられ、循環している純水の微粒物等が取り除かれる。
【0032】
また、本発明の製品の洗浄方法に用いられる洗浄装置20には循環する純水を補充するための純水補充タンク6が設けられている。そして、図に示していない制御盤からの信号により純水補充用ポンプ13が作動して、純水補充タンク6に貯蔵されている純水が切換バルブ11、フイルター10、流量調整弁12、さらにフイルター10を介して循環パイプに適宜の量が送られる。そして、循環パイプから加熱装置5に送られる。
【実施例】
【0033】
以下に、本発明の実施例を示すが、これらの実施例に限られるものではない。
【0034】
<実施例1>
純水を水量50L(リットル)/minで循環させ、純水高周波加熱殺菌部で出力周波数2455MHz、出力1000Wの高周波で殺菌した。そして、45℃の温度で製品を製品洗浄部で洗浄した後、洗浄した純水をm−TGE培地で培養し、生菌数を計測したところ5個/L(リットル)以下であった。
【0035】
<実施例2>
純水を水量50L/minで循環させ、純水高周波加熱殺菌部で出力周波数2455MHz、出力2000Wの高周波で殺菌した。そして、純水高周波加熱殺菌部の純水出口で85℃の殺菌された純水を冷却装置で冷却して、48℃の温度で製品を製品洗浄部で洗浄した後、洗浄した純水をm−TGE培地で培養し、生菌数を計測したところ2個/L以下であった。
【0036】
<比較例1>
純水を水量50L/minで循環させ、純水高周波加熱殺菌部で出力周波数2455MHz、出力200Wの高周波で殺菌した。そして、25℃の温度で製品を製品洗浄部で洗浄したが水温が低かったために、効果的な洗浄は出来なかった。
【0037】
<比較例2>
純水を水量50L/minで循環させ、10本の紫外線ランプ(出力波長254nm、100Wランプ)で殺菌した。そして、25℃の温度で製品を製品洗浄部で洗浄したが水温が低かったために、効果的な洗浄は出来なかった。
【0038】
<比較例3>
水量50L/minにて循環させ、10本の紫外線ランプ(出力波長254nm、100W)で殺菌した。そして、45℃の温度で製品を洗浄した後、洗浄した純水をm−TGE培地で培養し、生菌数を計測したところ150個/L検出された。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の製品の洗浄方法は精密部品や光学部品等の洗浄に適用することが出来る。また、この他、医療関係,水処理関係等の殺菌にも利用出来るなど、広い分野に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の、製品の洗浄方法の一実施例を説明するための洗浄装置の概略を示す概略図である。
【図2】従来、製品の洗浄に使用されている洗浄装置の概略を示す概略図である。
【図3】従来の、製品の洗浄方法の概略を示す概略図である。
【符号の説明】
【0041】
1…純水高周波加熱殺菌部
2…製品洗浄部
3…高周波遮蔽板
4…冷却装置
5…加熱装置
6…純水補充用タンク
7…アース
8…ポンプ
10…フィルター
11…切換バルブ
12…流量調整弁
13…純水補充用ポンプ
14…純水入口
15…純水出口
16…排水口
20…洗浄装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品を洗浄する純水が循環して、加温冷却により所定の温度で製品を洗浄する方法であって、
前記、循環する純水が高周波により殺菌して使用されることを特徴とする製品の洗浄方法。
【請求項2】
前記、所定の温度が30〜60℃であることを特徴とする請求項1に記載の製品の洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−218365(P2006−218365A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−32674(P2005−32674)
【出願日】平成17年2月9日(2005.2.9)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】