製品搬送用自立補助装置
【課題】自立不安定となり得る製品を傷つけることなく、製品の搬送中における揺動を抑止しつつ集合的に搬送できる製品搬送用自立補助装置の提供。
【解決手段】搬送時に所定方向に関して自立不安定となり得る製品10を集合的に搬送する際に使用する、製品当接部が形成された製品搬送用自立補助装置1において、前記製品当接部が、製品搬送用自立補助装置1を製品10に搭載した際、製品10の形状に追従変形すると共に、製品搬送用自立補助装置1に対する製品10の、前記所定方向への相対移動防止機能を奏する凸部が前記所定方向側に形成され得る材料から構成されている。
【解決手段】搬送時に所定方向に関して自立不安定となり得る製品10を集合的に搬送する際に使用する、製品当接部が形成された製品搬送用自立補助装置1において、前記製品当接部が、製品搬送用自立補助装置1を製品10に搭載した際、製品10の形状に追従変形すると共に、製品搬送用自立補助装置1に対する製品10の、前記所定方向への相対移動防止機能を奏する凸部が前記所定方向側に形成され得る材料から構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品の搬送中における揺動を抑止して不安定な製品を集合的に搬送可能な製品搬送用自立補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、中・大型製品の搬送は、輸送手段におけるキャパシティに応じて1台又は複数台の製品を段ボールや木箱等の梱包用部材により、輸送時における製品の揺動に対して製品を保護した上で行なわれている。
【0003】
例えば、中型製品としてパチンコ遊技機を例示すれば、荷積み時に複数のパチンコ機を緩衝材等により梱包し、姿勢安定のために、複数の遊技機を釘と連結板により連結させて輸送し、目的地に到着後、連結板を取り外して各台毎を搬入する形態が採用されている。
【特許文献1】特開平11−9830号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の輸送方法では、製品の大きさ等により専用の梱包材を用意する必要があり、往復の際に異なる大きさの製品を輸送する場合には、往路で使用した梱包材や姿勢保持用の連結板を到着時に解体、廃棄或いは保管し、復路で使用する梱包材等を新たに使用する必要が生じ、甚だ不経済である。特に近年では、トラックの過積載が問題視されており、製品以外の不要な貨物を極力排除することで経済的な輸送を行なうことは業界全体の課題となっている。
【0005】
更に、パチンコ遊技機に関しては、パチンコ遊技機をホールに設置する際、外枠体の傾斜や前後位置調節等に非常に手間を要するので、既に据え付けられている外枠が古くなる等のため交換する必要が生じない限り前枠のみを交換することが一般的である。このため、外枠体の交換を必要としない場合には、前枠と一緒に搬入された外枠は不要物として廃材となり、廃材処理のコストや環境的に大きな問題を存している。また、搬入の際に使用された外枠は、前記のように釘止めされているため、釘孔が開いており新品として再利用できないのが実情である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究の結果、以下の発明(1)〜(5)に到達した。
【0007】
本発明(1)は、搬送時に所定方向(奥行き方向又は前後方向)に関して自立不安定となり得る製品(パチンコ遊技機10)を集合的に搬送する際に使用する、製品当接部{製品当接部材1b、1(2)b、1(3)b}が形成された製品搬送用自立補助装置{パチンコ搬送用自立補助装置1及び1(2)〜1(5)}において、
前記製品当接部{製品当接部材1b、1(2)b、1(3)b}が、前記製品搬送用自立補助装置{パチンコ搬送用自立補助装置1及び1(2)〜1(5)}を前記製品(パチンコ遊技機10)に搭載した際、前記製品(パチンコ遊技機10)の形状に追従変形すると共に、前記製品搬送用自立補助装置{パチンコ搬送用自立補助装置1及び1(2)〜1(5)}に対する前記製品(パチンコ遊技機10)の、前記所定方向(奥行き方向又は前後方向)への相対移動防止機能を奏する凸部が前記所定方向側に形成され得る材料から構成されていることを特徴とする製品搬送用自立補助装置{パチンコ搬送用自立補助装置1及び1(2)〜1(5)}である。
【0008】
本発明(2)は、前記材料が、元の形状に復帰可能な、弾性材料(スプリングコイル)、低反発性材料(スポンジ)、流動体充填材料(ビーズクッション充填布)又はこれらの組み合わせ(スプリングコイル+スポンジ、スプリングコイル+ビーズクッション充填布)である、前記発明(1)の製品搬送用自立補助装置{パチンコ搬送用自立補助装置1及び1(2)〜1(5)}である。
【0009】
本発明(3)は、前記製品搬送用自立補助装置が、折り曲げ又は折り畳み可能に構成されている、前記発明(1)又は(2)の製品搬送用自立補助装置{パチンコ搬送用自立補助装置1、1(2)及び1(5)}である。
【0010】
本発明(4)は、前記搬送用補助装置が前記製品に搭載された状態を保持するための搭載保持手段{搭載保持手段1d、1(4)d、1(5)d}を更に有する、前記発明(1)〜(3)のいずれか一つの製品搬送用自立補助装置{パチンコ搬送用自立補助装置1、1(4)及び1(5)}である。
【0011】
本発明(5)は、前記製品が弾球遊技機(パチンコ遊技機10)である、前記発明(1)〜(4)のいずれか一つの製品搬送用自立補助装置{パチンコ搬送用自立補助装置1及び1(2)〜1(5)}である。
【0012】
ここで、本明細書における各用語の意義について説明する。「搬送時」とは、何らかの輸送手段(例えば、トラックや貨物列車等の車両、飛行機)による、振動が生じ得る輸送時を指す。「所定方向」とは、一方向であっても複数の方向(例えば、前後や左右等の二方向や、すべての方向)でもよい概念である。「自立不安定」とは、何らかの補助が無い状況下では転倒する可能性がある状態又は転倒してしまう状態を指す。「製品」は、完成品のみならず部品でもよい概念である。「集合的」とは、同一空間内に同時に複数の製品が存在する概念である。「元の形状に復帰可能」とは、自然復帰可能なもののみならず、外部から力を加えること等により復帰可能なものを含む。「弾球遊技機」とは、パチンコ遊技機、アレンジボール又は雀球遊技機等、遊技球を弾くことにより遊技を楽しむ縦置型の遊技機であれば特に限定されない。
【発明の効果】
【0013】
本発明(1)によれば、例えば連結板と釘のような従来の固定部材と異なり、自立不安定となり得る製品を傷つけることなく、製品の搬送中における揺動を抑止しつつ集合的に搬送できるという効果を奏する。
【0014】
本発明(2)によれば、前記発明(1)の効果に加え、搬出後に元の形状に復帰可能な、弾性材料、低反発性材料、流動体充填材料又はこれらの組み合わせを採用しているので、往路と復路で形状が異なる製品を輸送する場合でも同一の補助装置を採用することが可能となることに加え、何度でも再利用可能であるので経済性に優れているという効果を奏する。
【0015】
本発明(3)によれば、前記発明(1)又は(2)の効果に加え、当該装置が折り曲げ又は折り畳み可能に構成されているので、保管時に場所をとらないという効果を奏する。
【0016】
本発明(4)によれば、前記発明(1)〜(3)の効果に加え、搭載保持手段を更に有するので、輸送の際に生じる振動等によっても、前記追従変形と前記相対移動防止機能が担保される結果、製品の転倒を生じることなく確実に搬送することが可能になるという効果を奏する。
【0017】
本発明(5)によれば、前記発明(1)〜(4)の効果に加え、弾球遊技機を搬送するに際し、連結板を介して当該遊技機に釘を打ち付ける必要が無くなるので、木枠以外のプラスチック枠やスチール枠も外枠材料として採用可能になるという効果を奏する。更に、木枠や連結板等、木材を無駄にしなくて済むので、森林破壊等の自然環境保護の一助になるという効果も奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、最良形態としてパチンコ遊技機搬送用自立補助装置を例に挙げながら、本発明をより具体的に説明する。尚、本発明の技術的範囲は、以下の最良形態により何ら限定されるものではなく、同一課題の下同一効果を達成する態様に関しては、均等態様を含めすべてその範囲に属するものである。
【0019】
まず、本最良形態に係るパチンコ遊技機搬送用自立補助装置を適用するパチンコ遊技機について説明する。図1(a)はパチンコ機の正面図、図1(b)はパチンコ機の背面図である。図1に示すように、本装置で搬送されるパチンコ遊技機10は、方形枠状(奥行き幅:10cm強、左右幅:50cm強、高さ:80cm強)に形成された外枠体11と、該外枠体の前面一側に開閉自在に装着されると共に、遊技領域が形成された遊技盤を収容する収容枠部を有する前枠12とを備えている。更に、前枠12の裏面には、賞品用の遊技球を貯留する貯留タンクや賞球払出装置、賞品球及び遊技済み球を通出処理する球通路部、並びに、賞球払出装置等を制御する払出制御基板、遊技を制御する遊技制御基板等を備えた裏機構板13が設けられている。なお、遊技盤の裏面には、遊技盤に付設される遊技部品用の電気的装置や表示装置の制御を行う副制御装置等が裏機構板13の背面部より一部突出する形で設けられている。
【0020】
ここで、本パチンコ遊技機10は、静置時には自立可能であるが、前述のように奥行き方向(前後方向)の長さが著しく短いことに加え、重量物である制御基板等が奥行き幅中心よりも後側に設けられているため重心は後に位置している。このため、少量の振動や接触等により奥行き方向(図7の矢印方向)に転倒する恐れが高く非常に不安定な構造である。
【0021】
次に、本最良形態に係るパチンコ遊技機搬送用自立補助装置を説明する。図2に示すように、本装置1は、方形状の2枚のベース部材1a(A及びB)と、この2枚のベース部を開閉可能に連結するヒンジ部材1cと、夫々のベース部材1a(A及びB)に取着されると共に元の形状に復帰できる変形可能な材料で形成されている、製品当接部1b1を有する製品当接部材1bと、各ベース部材1aの外側に取り付けられており自立補助装置1を運搬施設等に固定する搭載保持部材1dとを主体として構成されている。
【0022】
ベース部材1a(A及びB)は、金属材(ステンレスや鋼板)や硬質樹脂材(ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂)等により厚さ5mm程度の平板状に形成されており、その一面には後述する製品当接部材1bを取り付ける製品当接部材取付部1a1を有する。尚、ベース部材1aは、前記素材のように、製品当接部材1bの変形を担保するために高反発素材であることが好適である。
【0023】
ここで、ベース部材1a(A及びB)の端部1a2は、製品当接部材1bの側部を保護するように折り曲げ形成されている。また、ベース部材1a(A及びB)の端部には、搭載保持部材1dを取り付ける搭載保持部材取付部1a3が形成され、搭載保持部材1dをネジやボルトナット等の適宜手段を用いて取付固定可能に形成されている。更に、製品当接部材取付部1a1の反対面には、ベース部材1a(A)とベース部材1a(B)とを開閉(折り曲げ)可能に連結するヒンジ部材1cを取り付けるヒンジ取付部1a4も形成されている。
【0024】
搭載保持部材1dは、伸縮可能なゴム等で形成され、一端{ベース部材1a(A及びB)の搭載保持部材取付部1a3に対応する箇所}に取着部が形成されると共に、他端には運搬施設(トラックの荷台等)と係合する搭載保持手段が設けられている(図2では搭載保持手段の図示を省略している)。
【0025】
図3は、この搬送用補助装置1を運搬施設に取り付けた際のイメージ図、図4は、搭載保持手段の一例を示した説明図である。図4に示すように、搭載保持部材1dは、フック部材1d1と、フックと結合したベルト1d2と、当該ベルト1d2を固定するカムバックル1d3とから構成される。そして、運搬施設(例えば、トラックの荷台等)に形成されたフック係合部(図3及び図4ではフック係合部の図示を省略している)とフック部材1d1とをベルトの伸縮を利用して係合させることで、自立補助装置1の姿勢を保持する{2枚のベース部材が開放(使用)状態に維持可能となる}と共に、下方に対して応力が加わるようになる。したがって、自立補助装置1により保持されたパチンコ機の上下方向の揺動を低減して安定した搬送姿勢を維持可能となる。
【0026】
次に、ヒンジ部材(蝶番)1cについて説明する。ヒンジ部材1cは、図2に示すように、物理的に別体であり、夫々にベース部材1aと製品当接部材1bが形成されたA部及びB部を折り畳み可能に連結するものである。この際、図5に示すように、前述した自立補助装置1を下方に引っ張る際にセンター部分に浮きが生じないよう、ある程度の角度をもって両部を連結させることが好適である。
【0027】
製品当接部材1bは、図2に示すように、製品(本最良形態ではパチンコ機10)と当接する製品当接部1b1を有し、パチンコ機10と当接することによりパチンコ遊技機10の形状に追従変形すると共に、前記パチンコ遊技機搬送用自立補助装置1に対するパチンコ遊技機10の、不安定方向への相対移動防止機能を奏する凸部が前記不安定方向側に形成され得る材料からなる。ここで、製品当接部材1bを構成する材料として大別すると、弾性変形可能なスプリング系の部材からなる形態と粘弾性変形可能な低反発性材料からなる形態と流動体を充填した流動体充填形態とに分かれるが、本最良形態として、流動体充填材料を採用したもの、より詳細には、製品当接部1b1がビーズクッション充填材料であるものを例示する。
【0028】
図6は、製品当接部材1b及びベース部材1aの断面構成を模式的に示した説明図であり、詳細には、図6(a)は側断面形状の模式図、図6(b)は正断面形状の模式図である。図6(b)に示すように、ビーズクッション充填材料は、ビーズクッション(パウダービーズ)1b2を充填した布1b3の製品当接側に、製品当接部1b1を形成する外側部材としての飴ゴム(0.5mm)を貼付した二重構造を採用したものである。ここで、ビーズクッションは、ナイロン系樹脂を直径1〜5mm程度の球形に射出成形されたものであり、ビーズクッション自身も外力により弾性変形する。また、ビーズクッションの形状は、球形状が好適であるが、その一部に弾性力を高める為に逃げ穴(貫通穴)を設けたり、スリットを設けるようにしてもよい。
【0029】
ビーズクッションを収容する布1b3は、ナイロンやPET、ビニール等の樹脂系素材やシルク等の素材又はそれらを適宜合成したものを採用することが出来る。なお、本最良形態では製品当接部1b1には布を設けない例を示したが、全面に布を設けてビーズ等の充填材料を完全に収容する形態を採用してもよい。このように構成すれば、装置の製造工程の簡素化が図れると共に、経年変化等により充填材料の交換が必要になった場合にユニット的な交換作業が可能となる。
【0030】
製品当接部1b1を形成するベース部材としての飴ゴムは、硬度が40〜60程度(JISK6253)のゴムであり、比較的柔らかい形態での伸縮性材料であることが好適である。このゴム材を製品当接部1b1として貼り付けることにより、当該押圧部から逃げた充填材料をより多く収容できることに加え、収容された充填材料の内部応力が高まる。その結果、パチンコ遊技機10の前後に形成される凸部による、パチンコ遊技機に対する押付力が大きくなる。尚、このような伸縮性材料としては、前記飴ゴムをはじめとする、少なくとも一つの方向に伸延及び回復可能であるゴムや合成樹脂であることが好適であり、例えば、ゴム、飴ゴム、シリコーンゴム、ビニール、ナイロン、各種ホース(例えば耐油ホース)の材料等を挙げることができる。更に、当該伸縮性材料は、物理的に一体化した板状物であっても、線やホースのような線状体を複数組み合わせて形成されたものであってもよい。
【0031】
次に、搬送補助装置1に製品を保持して搬送する過程を図7〜図10を用いて説明する。ここで、図7は、遊技機10と搬送補助装置1との関係を主に示す動作説明図、図8は、製品当接部材1b(充填材)の応力を詳細に説明する動作説明図、図9は、搬送補助装置1を適用する前の、運搬施設(トラックT)にパチンコ遊技機に搭載された状態を示す図、図10は、搬送補助装置1を適用した後の、運搬施設(トラックT)にパチンコ遊技機に搭載された状態を示す図である。
【0032】
まず、図9に示すように、運搬施設(トラックT)内に複数台のパチンコ遊技機10を縦列させる。この状態で、図7(a)に示すように、製品当接部1bが下になるようにパチンコ遊技機搬送用自立補助装置1をパチンコ遊技機10上に集合的に搭載する。そして、搭載した後に下方向に押圧力を付与すると、図7(b)に示すように、製品当接部材1bがパチンコ遊技機10の形状に追従するように変形する。その結果、図中の点線で示すような凸部αが形成される。これにより、図中の矢印方向へのパチンコ遊技機10の相対移動が抑制される。尚、図10は、当該状態における全体図である。そして、搬送完了時には、図7(c)に示すように、搬送用自立補助装置1をパチンコ遊技機10から引き離す。この際、製品当接部1bには、凸部αと凹部βが形成されているが、これらは自然放置等で図7(a)に示す形状に復元する。
【0033】
ここで、遊技機の保持までに至る充填材の作用について、図8を用いて詳述すれば、図8(a)に示す搬送用自立補助装置1をパチンコ遊技機10に押圧させると、図8(b)に示すように、押圧部(製品当接部)におけるビーズクッションは非押圧部であるパチンコ遊技機の前後に逃げる。ビーズクッション充填材料1bの全体容積は限られているので、図8(c)に示すように、パチンコ遊技機10の前後には凸部が形成されると共に、図中の矢印で示すように、前後に逃げたビーズクッションに縮もうとする力が働く結果、パチンコ遊技機の前後でビーズクッションからの押付ける力が作用する。
【0034】
したがって、本最良形態によれば、自立不安定となり得る製品であるパチンコ機を傷つけることなく、製品の搬送中における揺動を抑止しつつ集合的に搬送できるという効果を奏する。また、搬出後に元の形状に復帰可能な流動体充填材料を採用しているので、往路と復路で形状が異なる製品を輸送する場合でも同一の補助装置を採用することが可能となることに加え、何度でも再利用可能であるので経済性に優れているという効果を奏する。更に、ヒンジ部により装置が折り曲げ又は折り畳み可能に構成されているので、保管時に場所をとらないという効果を奏する。
【0035】
更にまた、搭載保持手段を更に有するので、輸送の際に生じる振動等によっても、前記追従変形と前記相対移動防止機能が担保される結果、製品の転倒を生じることなく確実に搬送することが可能になるという効果を奏する。
【0036】
なお、充填可能な流動体の一例としてビーズクッション充填材料を例示したが、流動体充填形態としては、決められた容積内において圧縮された場合、圧縮部分の両脇に押し出されるような性質を有するものであることが好適である。例えば、空気のような気体、水のような液体、ジェル状物質のような半液体、砂、ウレタンフォーム、球体、ビーズのような固体を挙げることができる。
【0037】
次に、本発明の第2の最良形態として弾性変形可能なスプリング系の部材からなる形態を例示する。なお、第1の最良形態と同一の部分については説明を割愛し、本発明の主要部分たる製品当接部材についてのみ説明する。
【0038】
図11は、当該製品当接部材がスプリングコイル1(2)bである例である。本装置1(2)をパチンコ遊技機に押圧させると、非押圧部分ではスプリングコイル1(2)bは非変形状態を保つ一方、押圧部分のスプリングコイル1(2)bがベース部材1(2)a側に倒れるよう変形する。これにより、当該押圧部分前後のスプリングコイル1(2)bにより、パチンコ遊技機の前後の相対移動を防止する凸部が形成される。
【0039】
したがって、本最良形態によっても、自立不安定となり得る製品であるパチンコ機を傷つけることなく、製品の搬送中における揺動を抑止しつつ集合的に搬送できるという効果を奏する。また、搬出後に元の形状に復帰可能な流動体充填材料を採用しているので、往路と復路で形状が異なる製品を輸送する場合でも同一の補助装置を採用することが可能となることに加え、何度でも再利用可能であるので経済性に優れているという効果を奏する。
【0040】
次に、他の製品当接部材の構成例について説明する。第1に当該製品当接部が低反発性材料である例を挙げる。ここで低反発性材料としては、JIS K6401に基づいて算出された反発弾性率が30%以下のものが好適であり、より好適には0〜20%、更に好適には0〜15%である。このような材料としては、例えば、ゴム、発泡体、低反発クッション、ゲルを挙げることができる。例えば、図12は、当該製品当接部材がスポンジ材料1(3)bである例である。ここで、図12に示すように、スポンジ材料1(3)bは、スポンジ(例えば、風呂掃除用等で使用される三層構造のスポンジ)1(3)b2の製品当接側に飴ゴム(0.5mm)1(3)b1を貼付した例である。
【0041】
第2に前述の材料を組み合わせた例を挙げる。例えば、図13(a)は、スプリングコイルにスポンジを組み合わせた例であり、図13(b)は、スプリングコイルにビーズクッション充填布を組み合わせた例である。
【0042】
最後に、図14を参照しながら、第1の最良形態及び第2の最良形態等における搭載保持部材の変更例を説明する。まず、図14(a−1)及び(a−2)に係る変更例の搭載保持部材は、引き込み用フック1(4)dからなる。そして、当該フック1(4)dが、運搬施設側の、パチンコ遊技機と略同程度の高さに設置された固定部Mに係止することにより、搬送用補助装置1(4)が運搬施設に堅固に保持される。更に、図14(b)に示す搭載保持部材は、搬送用補助装置1(5)に固定されたネジ穴部材1(5)d1と、当該ネジ穴に対応したネジ1(5)d2とからなる。そして、ネジ穴部材1(5)d1とネジ1(5)d2との間に、運搬施設側の固定部(図示せず)を介在させることにより、搬送用補助装置1(5)が運搬施設に堅固に保持される。
【0043】
したがって、上述した各最良形態によれば、自立不安定となり得る製品であるパチンコ機を傷つけることなく、製品の搬送中における揺動を抑止しつつ集合的に搬送できるという効果を奏する。また、搬出後に元の形状に復帰可能な流動体充填材料を採用しているので、往路と復路で形状が異なる製品を輸送する場合でも同一の補助装置を採用することが可能となることに加え、何度でも再利用可能であるので経済性に優れているという効果を奏する。更に、ヒンジ部により装置が折り曲げ又は折り畳み可能に構成されているので、保管時に場所をとらないという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1(a)及び(b)は、夫々、本最良形態に係るパチンコ遊技機搬送用自立補助装置を適用するパチンコ遊技機の正面図及び背面図である。
【図2】図2は、第1の最良形態に係るパチンコ遊技機搬送用自立補助装置の斜視図である。
【図3】図3は、第1の最良形態に係るパチンコ遊技機搬送用自立補助装置をパチンコ遊技機に搭載した状態を示したものである(運搬施設内)。
【図4】図4(a)及び(b)は、第1の最良形態に係るパチンコ遊技機搬送用自立補助装置の搭載保持手段を示したものである。
【図5】図5は、第1の最良形態に係るパチンコ遊技機搬送用自立補助装置の搭載保持手段を引っ張った際の状態を示したものである。
【図6】図6(a)及び(b)は、第1の最良形態に係るパチンコ遊技機搬送用自立補助装置の製品当接部材の、夫々、側断面図及び正断面図である。
【図7】図7(a)〜(c)は、第1の最良形態に係るパチンコ遊技機搬送用自立補助装置をパチンコ遊技機に搭載し外した後の状態を時系列的に示したものである。
【図8】図8(a)〜(c)は、図7(a)〜(b)の動作の際の、製品当接部材の形状変化の様子を時系列的に示したものである。
【図9】図9は、本最良形態に係るパチンコ遊技機搬送用自立補助装置を搭載する前の、トラック内に配置された複数のパチンコ遊技機の様子を示したものである。
【図10】図10は、本最良形態に係るパチンコ遊技機搬送用自立補助装置を搭載した後の、トラック内に配置された複数のパチンコ遊技機の様子を示したものである。
【図11】図11(a)及び(b)は、第2の最良形態に係るパチンコ遊技機搬送用自立補助装置の製品当接部材の、夫々、側断面図及び正断面図である。
【図12】図12は、最良形態の変更例に係るパチンコ遊技機搬送用自立補助装置の製品当接部材(低反発性材料)の側断面図を示したものである。
【図13】図13(a)及び(b)は、最良形態の変更例に係るパチンコ遊技機搬送用自立補助装置の製品当接部材{スプリング+低反発性材料(a)又は流動体充填材料(b)}の正断面図を示したものである。
【図14】図14(a−1)及び(b)は、最良形態の変更例に係る搭載保持手段の側面図であり、図14(a−2)は、最良形態の変更例に係る搭載保持手段の正面図である。
【符号の説明】
【0045】
1及び1(2)〜1(5) パチンコ搬送用自立補助装置
1b、1(2)b、1(3)b 製品当接部材
1d、1(4)d、1(5)d 搭載保持手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品の搬送中における揺動を抑止して不安定な製品を集合的に搬送可能な製品搬送用自立補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、中・大型製品の搬送は、輸送手段におけるキャパシティに応じて1台又は複数台の製品を段ボールや木箱等の梱包用部材により、輸送時における製品の揺動に対して製品を保護した上で行なわれている。
【0003】
例えば、中型製品としてパチンコ遊技機を例示すれば、荷積み時に複数のパチンコ機を緩衝材等により梱包し、姿勢安定のために、複数の遊技機を釘と連結板により連結させて輸送し、目的地に到着後、連結板を取り外して各台毎を搬入する形態が採用されている。
【特許文献1】特開平11−9830号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の輸送方法では、製品の大きさ等により専用の梱包材を用意する必要があり、往復の際に異なる大きさの製品を輸送する場合には、往路で使用した梱包材や姿勢保持用の連結板を到着時に解体、廃棄或いは保管し、復路で使用する梱包材等を新たに使用する必要が生じ、甚だ不経済である。特に近年では、トラックの過積載が問題視されており、製品以外の不要な貨物を極力排除することで経済的な輸送を行なうことは業界全体の課題となっている。
【0005】
更に、パチンコ遊技機に関しては、パチンコ遊技機をホールに設置する際、外枠体の傾斜や前後位置調節等に非常に手間を要するので、既に据え付けられている外枠が古くなる等のため交換する必要が生じない限り前枠のみを交換することが一般的である。このため、外枠体の交換を必要としない場合には、前枠と一緒に搬入された外枠は不要物として廃材となり、廃材処理のコストや環境的に大きな問題を存している。また、搬入の際に使用された外枠は、前記のように釘止めされているため、釘孔が開いており新品として再利用できないのが実情である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究の結果、以下の発明(1)〜(5)に到達した。
【0007】
本発明(1)は、搬送時に所定方向(奥行き方向又は前後方向)に関して自立不安定となり得る製品(パチンコ遊技機10)を集合的に搬送する際に使用する、製品当接部{製品当接部材1b、1(2)b、1(3)b}が形成された製品搬送用自立補助装置{パチンコ搬送用自立補助装置1及び1(2)〜1(5)}において、
前記製品当接部{製品当接部材1b、1(2)b、1(3)b}が、前記製品搬送用自立補助装置{パチンコ搬送用自立補助装置1及び1(2)〜1(5)}を前記製品(パチンコ遊技機10)に搭載した際、前記製品(パチンコ遊技機10)の形状に追従変形すると共に、前記製品搬送用自立補助装置{パチンコ搬送用自立補助装置1及び1(2)〜1(5)}に対する前記製品(パチンコ遊技機10)の、前記所定方向(奥行き方向又は前後方向)への相対移動防止機能を奏する凸部が前記所定方向側に形成され得る材料から構成されていることを特徴とする製品搬送用自立補助装置{パチンコ搬送用自立補助装置1及び1(2)〜1(5)}である。
【0008】
本発明(2)は、前記材料が、元の形状に復帰可能な、弾性材料(スプリングコイル)、低反発性材料(スポンジ)、流動体充填材料(ビーズクッション充填布)又はこれらの組み合わせ(スプリングコイル+スポンジ、スプリングコイル+ビーズクッション充填布)である、前記発明(1)の製品搬送用自立補助装置{パチンコ搬送用自立補助装置1及び1(2)〜1(5)}である。
【0009】
本発明(3)は、前記製品搬送用自立補助装置が、折り曲げ又は折り畳み可能に構成されている、前記発明(1)又は(2)の製品搬送用自立補助装置{パチンコ搬送用自立補助装置1、1(2)及び1(5)}である。
【0010】
本発明(4)は、前記搬送用補助装置が前記製品に搭載された状態を保持するための搭載保持手段{搭載保持手段1d、1(4)d、1(5)d}を更に有する、前記発明(1)〜(3)のいずれか一つの製品搬送用自立補助装置{パチンコ搬送用自立補助装置1、1(4)及び1(5)}である。
【0011】
本発明(5)は、前記製品が弾球遊技機(パチンコ遊技機10)である、前記発明(1)〜(4)のいずれか一つの製品搬送用自立補助装置{パチンコ搬送用自立補助装置1及び1(2)〜1(5)}である。
【0012】
ここで、本明細書における各用語の意義について説明する。「搬送時」とは、何らかの輸送手段(例えば、トラックや貨物列車等の車両、飛行機)による、振動が生じ得る輸送時を指す。「所定方向」とは、一方向であっても複数の方向(例えば、前後や左右等の二方向や、すべての方向)でもよい概念である。「自立不安定」とは、何らかの補助が無い状況下では転倒する可能性がある状態又は転倒してしまう状態を指す。「製品」は、完成品のみならず部品でもよい概念である。「集合的」とは、同一空間内に同時に複数の製品が存在する概念である。「元の形状に復帰可能」とは、自然復帰可能なもののみならず、外部から力を加えること等により復帰可能なものを含む。「弾球遊技機」とは、パチンコ遊技機、アレンジボール又は雀球遊技機等、遊技球を弾くことにより遊技を楽しむ縦置型の遊技機であれば特に限定されない。
【発明の効果】
【0013】
本発明(1)によれば、例えば連結板と釘のような従来の固定部材と異なり、自立不安定となり得る製品を傷つけることなく、製品の搬送中における揺動を抑止しつつ集合的に搬送できるという効果を奏する。
【0014】
本発明(2)によれば、前記発明(1)の効果に加え、搬出後に元の形状に復帰可能な、弾性材料、低反発性材料、流動体充填材料又はこれらの組み合わせを採用しているので、往路と復路で形状が異なる製品を輸送する場合でも同一の補助装置を採用することが可能となることに加え、何度でも再利用可能であるので経済性に優れているという効果を奏する。
【0015】
本発明(3)によれば、前記発明(1)又は(2)の効果に加え、当該装置が折り曲げ又は折り畳み可能に構成されているので、保管時に場所をとらないという効果を奏する。
【0016】
本発明(4)によれば、前記発明(1)〜(3)の効果に加え、搭載保持手段を更に有するので、輸送の際に生じる振動等によっても、前記追従変形と前記相対移動防止機能が担保される結果、製品の転倒を生じることなく確実に搬送することが可能になるという効果を奏する。
【0017】
本発明(5)によれば、前記発明(1)〜(4)の効果に加え、弾球遊技機を搬送するに際し、連結板を介して当該遊技機に釘を打ち付ける必要が無くなるので、木枠以外のプラスチック枠やスチール枠も外枠材料として採用可能になるという効果を奏する。更に、木枠や連結板等、木材を無駄にしなくて済むので、森林破壊等の自然環境保護の一助になるという効果も奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、最良形態としてパチンコ遊技機搬送用自立補助装置を例に挙げながら、本発明をより具体的に説明する。尚、本発明の技術的範囲は、以下の最良形態により何ら限定されるものではなく、同一課題の下同一効果を達成する態様に関しては、均等態様を含めすべてその範囲に属するものである。
【0019】
まず、本最良形態に係るパチンコ遊技機搬送用自立補助装置を適用するパチンコ遊技機について説明する。図1(a)はパチンコ機の正面図、図1(b)はパチンコ機の背面図である。図1に示すように、本装置で搬送されるパチンコ遊技機10は、方形枠状(奥行き幅:10cm強、左右幅:50cm強、高さ:80cm強)に形成された外枠体11と、該外枠体の前面一側に開閉自在に装着されると共に、遊技領域が形成された遊技盤を収容する収容枠部を有する前枠12とを備えている。更に、前枠12の裏面には、賞品用の遊技球を貯留する貯留タンクや賞球払出装置、賞品球及び遊技済み球を通出処理する球通路部、並びに、賞球払出装置等を制御する払出制御基板、遊技を制御する遊技制御基板等を備えた裏機構板13が設けられている。なお、遊技盤の裏面には、遊技盤に付設される遊技部品用の電気的装置や表示装置の制御を行う副制御装置等が裏機構板13の背面部より一部突出する形で設けられている。
【0020】
ここで、本パチンコ遊技機10は、静置時には自立可能であるが、前述のように奥行き方向(前後方向)の長さが著しく短いことに加え、重量物である制御基板等が奥行き幅中心よりも後側に設けられているため重心は後に位置している。このため、少量の振動や接触等により奥行き方向(図7の矢印方向)に転倒する恐れが高く非常に不安定な構造である。
【0021】
次に、本最良形態に係るパチンコ遊技機搬送用自立補助装置を説明する。図2に示すように、本装置1は、方形状の2枚のベース部材1a(A及びB)と、この2枚のベース部を開閉可能に連結するヒンジ部材1cと、夫々のベース部材1a(A及びB)に取着されると共に元の形状に復帰できる変形可能な材料で形成されている、製品当接部1b1を有する製品当接部材1bと、各ベース部材1aの外側に取り付けられており自立補助装置1を運搬施設等に固定する搭載保持部材1dとを主体として構成されている。
【0022】
ベース部材1a(A及びB)は、金属材(ステンレスや鋼板)や硬質樹脂材(ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂)等により厚さ5mm程度の平板状に形成されており、その一面には後述する製品当接部材1bを取り付ける製品当接部材取付部1a1を有する。尚、ベース部材1aは、前記素材のように、製品当接部材1bの変形を担保するために高反発素材であることが好適である。
【0023】
ここで、ベース部材1a(A及びB)の端部1a2は、製品当接部材1bの側部を保護するように折り曲げ形成されている。また、ベース部材1a(A及びB)の端部には、搭載保持部材1dを取り付ける搭載保持部材取付部1a3が形成され、搭載保持部材1dをネジやボルトナット等の適宜手段を用いて取付固定可能に形成されている。更に、製品当接部材取付部1a1の反対面には、ベース部材1a(A)とベース部材1a(B)とを開閉(折り曲げ)可能に連結するヒンジ部材1cを取り付けるヒンジ取付部1a4も形成されている。
【0024】
搭載保持部材1dは、伸縮可能なゴム等で形成され、一端{ベース部材1a(A及びB)の搭載保持部材取付部1a3に対応する箇所}に取着部が形成されると共に、他端には運搬施設(トラックの荷台等)と係合する搭載保持手段が設けられている(図2では搭載保持手段の図示を省略している)。
【0025】
図3は、この搬送用補助装置1を運搬施設に取り付けた際のイメージ図、図4は、搭載保持手段の一例を示した説明図である。図4に示すように、搭載保持部材1dは、フック部材1d1と、フックと結合したベルト1d2と、当該ベルト1d2を固定するカムバックル1d3とから構成される。そして、運搬施設(例えば、トラックの荷台等)に形成されたフック係合部(図3及び図4ではフック係合部の図示を省略している)とフック部材1d1とをベルトの伸縮を利用して係合させることで、自立補助装置1の姿勢を保持する{2枚のベース部材が開放(使用)状態に維持可能となる}と共に、下方に対して応力が加わるようになる。したがって、自立補助装置1により保持されたパチンコ機の上下方向の揺動を低減して安定した搬送姿勢を維持可能となる。
【0026】
次に、ヒンジ部材(蝶番)1cについて説明する。ヒンジ部材1cは、図2に示すように、物理的に別体であり、夫々にベース部材1aと製品当接部材1bが形成されたA部及びB部を折り畳み可能に連結するものである。この際、図5に示すように、前述した自立補助装置1を下方に引っ張る際にセンター部分に浮きが生じないよう、ある程度の角度をもって両部を連結させることが好適である。
【0027】
製品当接部材1bは、図2に示すように、製品(本最良形態ではパチンコ機10)と当接する製品当接部1b1を有し、パチンコ機10と当接することによりパチンコ遊技機10の形状に追従変形すると共に、前記パチンコ遊技機搬送用自立補助装置1に対するパチンコ遊技機10の、不安定方向への相対移動防止機能を奏する凸部が前記不安定方向側に形成され得る材料からなる。ここで、製品当接部材1bを構成する材料として大別すると、弾性変形可能なスプリング系の部材からなる形態と粘弾性変形可能な低反発性材料からなる形態と流動体を充填した流動体充填形態とに分かれるが、本最良形態として、流動体充填材料を採用したもの、より詳細には、製品当接部1b1がビーズクッション充填材料であるものを例示する。
【0028】
図6は、製品当接部材1b及びベース部材1aの断面構成を模式的に示した説明図であり、詳細には、図6(a)は側断面形状の模式図、図6(b)は正断面形状の模式図である。図6(b)に示すように、ビーズクッション充填材料は、ビーズクッション(パウダービーズ)1b2を充填した布1b3の製品当接側に、製品当接部1b1を形成する外側部材としての飴ゴム(0.5mm)を貼付した二重構造を採用したものである。ここで、ビーズクッションは、ナイロン系樹脂を直径1〜5mm程度の球形に射出成形されたものであり、ビーズクッション自身も外力により弾性変形する。また、ビーズクッションの形状は、球形状が好適であるが、その一部に弾性力を高める為に逃げ穴(貫通穴)を設けたり、スリットを設けるようにしてもよい。
【0029】
ビーズクッションを収容する布1b3は、ナイロンやPET、ビニール等の樹脂系素材やシルク等の素材又はそれらを適宜合成したものを採用することが出来る。なお、本最良形態では製品当接部1b1には布を設けない例を示したが、全面に布を設けてビーズ等の充填材料を完全に収容する形態を採用してもよい。このように構成すれば、装置の製造工程の簡素化が図れると共に、経年変化等により充填材料の交換が必要になった場合にユニット的な交換作業が可能となる。
【0030】
製品当接部1b1を形成するベース部材としての飴ゴムは、硬度が40〜60程度(JISK6253)のゴムであり、比較的柔らかい形態での伸縮性材料であることが好適である。このゴム材を製品当接部1b1として貼り付けることにより、当該押圧部から逃げた充填材料をより多く収容できることに加え、収容された充填材料の内部応力が高まる。その結果、パチンコ遊技機10の前後に形成される凸部による、パチンコ遊技機に対する押付力が大きくなる。尚、このような伸縮性材料としては、前記飴ゴムをはじめとする、少なくとも一つの方向に伸延及び回復可能であるゴムや合成樹脂であることが好適であり、例えば、ゴム、飴ゴム、シリコーンゴム、ビニール、ナイロン、各種ホース(例えば耐油ホース)の材料等を挙げることができる。更に、当該伸縮性材料は、物理的に一体化した板状物であっても、線やホースのような線状体を複数組み合わせて形成されたものであってもよい。
【0031】
次に、搬送補助装置1に製品を保持して搬送する過程を図7〜図10を用いて説明する。ここで、図7は、遊技機10と搬送補助装置1との関係を主に示す動作説明図、図8は、製品当接部材1b(充填材)の応力を詳細に説明する動作説明図、図9は、搬送補助装置1を適用する前の、運搬施設(トラックT)にパチンコ遊技機に搭載された状態を示す図、図10は、搬送補助装置1を適用した後の、運搬施設(トラックT)にパチンコ遊技機に搭載された状態を示す図である。
【0032】
まず、図9に示すように、運搬施設(トラックT)内に複数台のパチンコ遊技機10を縦列させる。この状態で、図7(a)に示すように、製品当接部1bが下になるようにパチンコ遊技機搬送用自立補助装置1をパチンコ遊技機10上に集合的に搭載する。そして、搭載した後に下方向に押圧力を付与すると、図7(b)に示すように、製品当接部材1bがパチンコ遊技機10の形状に追従するように変形する。その結果、図中の点線で示すような凸部αが形成される。これにより、図中の矢印方向へのパチンコ遊技機10の相対移動が抑制される。尚、図10は、当該状態における全体図である。そして、搬送完了時には、図7(c)に示すように、搬送用自立補助装置1をパチンコ遊技機10から引き離す。この際、製品当接部1bには、凸部αと凹部βが形成されているが、これらは自然放置等で図7(a)に示す形状に復元する。
【0033】
ここで、遊技機の保持までに至る充填材の作用について、図8を用いて詳述すれば、図8(a)に示す搬送用自立補助装置1をパチンコ遊技機10に押圧させると、図8(b)に示すように、押圧部(製品当接部)におけるビーズクッションは非押圧部であるパチンコ遊技機の前後に逃げる。ビーズクッション充填材料1bの全体容積は限られているので、図8(c)に示すように、パチンコ遊技機10の前後には凸部が形成されると共に、図中の矢印で示すように、前後に逃げたビーズクッションに縮もうとする力が働く結果、パチンコ遊技機の前後でビーズクッションからの押付ける力が作用する。
【0034】
したがって、本最良形態によれば、自立不安定となり得る製品であるパチンコ機を傷つけることなく、製品の搬送中における揺動を抑止しつつ集合的に搬送できるという効果を奏する。また、搬出後に元の形状に復帰可能な流動体充填材料を採用しているので、往路と復路で形状が異なる製品を輸送する場合でも同一の補助装置を採用することが可能となることに加え、何度でも再利用可能であるので経済性に優れているという効果を奏する。更に、ヒンジ部により装置が折り曲げ又は折り畳み可能に構成されているので、保管時に場所をとらないという効果を奏する。
【0035】
更にまた、搭載保持手段を更に有するので、輸送の際に生じる振動等によっても、前記追従変形と前記相対移動防止機能が担保される結果、製品の転倒を生じることなく確実に搬送することが可能になるという効果を奏する。
【0036】
なお、充填可能な流動体の一例としてビーズクッション充填材料を例示したが、流動体充填形態としては、決められた容積内において圧縮された場合、圧縮部分の両脇に押し出されるような性質を有するものであることが好適である。例えば、空気のような気体、水のような液体、ジェル状物質のような半液体、砂、ウレタンフォーム、球体、ビーズのような固体を挙げることができる。
【0037】
次に、本発明の第2の最良形態として弾性変形可能なスプリング系の部材からなる形態を例示する。なお、第1の最良形態と同一の部分については説明を割愛し、本発明の主要部分たる製品当接部材についてのみ説明する。
【0038】
図11は、当該製品当接部材がスプリングコイル1(2)bである例である。本装置1(2)をパチンコ遊技機に押圧させると、非押圧部分ではスプリングコイル1(2)bは非変形状態を保つ一方、押圧部分のスプリングコイル1(2)bがベース部材1(2)a側に倒れるよう変形する。これにより、当該押圧部分前後のスプリングコイル1(2)bにより、パチンコ遊技機の前後の相対移動を防止する凸部が形成される。
【0039】
したがって、本最良形態によっても、自立不安定となり得る製品であるパチンコ機を傷つけることなく、製品の搬送中における揺動を抑止しつつ集合的に搬送できるという効果を奏する。また、搬出後に元の形状に復帰可能な流動体充填材料を採用しているので、往路と復路で形状が異なる製品を輸送する場合でも同一の補助装置を採用することが可能となることに加え、何度でも再利用可能であるので経済性に優れているという効果を奏する。
【0040】
次に、他の製品当接部材の構成例について説明する。第1に当該製品当接部が低反発性材料である例を挙げる。ここで低反発性材料としては、JIS K6401に基づいて算出された反発弾性率が30%以下のものが好適であり、より好適には0〜20%、更に好適には0〜15%である。このような材料としては、例えば、ゴム、発泡体、低反発クッション、ゲルを挙げることができる。例えば、図12は、当該製品当接部材がスポンジ材料1(3)bである例である。ここで、図12に示すように、スポンジ材料1(3)bは、スポンジ(例えば、風呂掃除用等で使用される三層構造のスポンジ)1(3)b2の製品当接側に飴ゴム(0.5mm)1(3)b1を貼付した例である。
【0041】
第2に前述の材料を組み合わせた例を挙げる。例えば、図13(a)は、スプリングコイルにスポンジを組み合わせた例であり、図13(b)は、スプリングコイルにビーズクッション充填布を組み合わせた例である。
【0042】
最後に、図14を参照しながら、第1の最良形態及び第2の最良形態等における搭載保持部材の変更例を説明する。まず、図14(a−1)及び(a−2)に係る変更例の搭載保持部材は、引き込み用フック1(4)dからなる。そして、当該フック1(4)dが、運搬施設側の、パチンコ遊技機と略同程度の高さに設置された固定部Mに係止することにより、搬送用補助装置1(4)が運搬施設に堅固に保持される。更に、図14(b)に示す搭載保持部材は、搬送用補助装置1(5)に固定されたネジ穴部材1(5)d1と、当該ネジ穴に対応したネジ1(5)d2とからなる。そして、ネジ穴部材1(5)d1とネジ1(5)d2との間に、運搬施設側の固定部(図示せず)を介在させることにより、搬送用補助装置1(5)が運搬施設に堅固に保持される。
【0043】
したがって、上述した各最良形態によれば、自立不安定となり得る製品であるパチンコ機を傷つけることなく、製品の搬送中における揺動を抑止しつつ集合的に搬送できるという効果を奏する。また、搬出後に元の形状に復帰可能な流動体充填材料を採用しているので、往路と復路で形状が異なる製品を輸送する場合でも同一の補助装置を採用することが可能となることに加え、何度でも再利用可能であるので経済性に優れているという効果を奏する。更に、ヒンジ部により装置が折り曲げ又は折り畳み可能に構成されているので、保管時に場所をとらないという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1(a)及び(b)は、夫々、本最良形態に係るパチンコ遊技機搬送用自立補助装置を適用するパチンコ遊技機の正面図及び背面図である。
【図2】図2は、第1の最良形態に係るパチンコ遊技機搬送用自立補助装置の斜視図である。
【図3】図3は、第1の最良形態に係るパチンコ遊技機搬送用自立補助装置をパチンコ遊技機に搭載した状態を示したものである(運搬施設内)。
【図4】図4(a)及び(b)は、第1の最良形態に係るパチンコ遊技機搬送用自立補助装置の搭載保持手段を示したものである。
【図5】図5は、第1の最良形態に係るパチンコ遊技機搬送用自立補助装置の搭載保持手段を引っ張った際の状態を示したものである。
【図6】図6(a)及び(b)は、第1の最良形態に係るパチンコ遊技機搬送用自立補助装置の製品当接部材の、夫々、側断面図及び正断面図である。
【図7】図7(a)〜(c)は、第1の最良形態に係るパチンコ遊技機搬送用自立補助装置をパチンコ遊技機に搭載し外した後の状態を時系列的に示したものである。
【図8】図8(a)〜(c)は、図7(a)〜(b)の動作の際の、製品当接部材の形状変化の様子を時系列的に示したものである。
【図9】図9は、本最良形態に係るパチンコ遊技機搬送用自立補助装置を搭載する前の、トラック内に配置された複数のパチンコ遊技機の様子を示したものである。
【図10】図10は、本最良形態に係るパチンコ遊技機搬送用自立補助装置を搭載した後の、トラック内に配置された複数のパチンコ遊技機の様子を示したものである。
【図11】図11(a)及び(b)は、第2の最良形態に係るパチンコ遊技機搬送用自立補助装置の製品当接部材の、夫々、側断面図及び正断面図である。
【図12】図12は、最良形態の変更例に係るパチンコ遊技機搬送用自立補助装置の製品当接部材(低反発性材料)の側断面図を示したものである。
【図13】図13(a)及び(b)は、最良形態の変更例に係るパチンコ遊技機搬送用自立補助装置の製品当接部材{スプリング+低反発性材料(a)又は流動体充填材料(b)}の正断面図を示したものである。
【図14】図14(a−1)及び(b)は、最良形態の変更例に係る搭載保持手段の側面図であり、図14(a−2)は、最良形態の変更例に係る搭載保持手段の正面図である。
【符号の説明】
【0045】
1及び1(2)〜1(5) パチンコ搬送用自立補助装置
1b、1(2)b、1(3)b 製品当接部材
1d、1(4)d、1(5)d 搭載保持手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送時に所定方向に関して自立不安定となり得る製品を集合的に搬送する際に使用する、製品当接部が形成された製品搬送用自立補助装置において、
前記製品当接部が、前記製品搬送用自立補助装置を前記製品に搭載した際、前記製品の形状に追従変形すると共に、前記製品搬送用自立補助装置に対する前記製品の、前記所定方向への相対移動防止機能を奏する凸部が前記所定方向側に形成され得る材料から構成されていることを特徴とする製品搬送用自立補助装置。
【請求項2】
前記材料が、元の形状に復帰可能な、弾性材料、低反発性材料、流動体充填材料又はこれらの組み合わせである、請求項1記載の製品搬送用自立補助装置。
【請求項3】
前記製品搬送用自立補助装置が、折り曲げ又は折り畳み可能に構成されている、請求項1又は2記載の製品搬送用自立補助装置。
【請求項4】
前記搬送用補助装置が前記製品に搭載された状態を保持するための搭載保持手段を更に有する、請求項1〜3のいずれか一項記載の製品搬送用自立補助装置。
【請求項5】
前記製品が弾球遊技機である、請求項1〜4のいずれか一項記載の製品搬送用自立補助装置。
【請求項1】
搬送時に所定方向に関して自立不安定となり得る製品を集合的に搬送する際に使用する、製品当接部が形成された製品搬送用自立補助装置において、
前記製品当接部が、前記製品搬送用自立補助装置を前記製品に搭載した際、前記製品の形状に追従変形すると共に、前記製品搬送用自立補助装置に対する前記製品の、前記所定方向への相対移動防止機能を奏する凸部が前記所定方向側に形成され得る材料から構成されていることを特徴とする製品搬送用自立補助装置。
【請求項2】
前記材料が、元の形状に復帰可能な、弾性材料、低反発性材料、流動体充填材料又はこれらの組み合わせである、請求項1記載の製品搬送用自立補助装置。
【請求項3】
前記製品搬送用自立補助装置が、折り曲げ又は折り畳み可能に構成されている、請求項1又は2記載の製品搬送用自立補助装置。
【請求項4】
前記搬送用補助装置が前記製品に搭載された状態を保持するための搭載保持手段を更に有する、請求項1〜3のいずれか一項記載の製品搬送用自立補助装置。
【請求項5】
前記製品が弾球遊技機である、請求項1〜4のいずれか一項記載の製品搬送用自立補助装置。
【図5】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−298418(P2006−298418A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−121205(P2005−121205)
【出願日】平成17年4月19日(2005.4.19)
【出願人】(390031783)サミー株式会社 (5,279)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月19日(2005.4.19)
【出願人】(390031783)サミー株式会社 (5,279)
【Fターム(参考)】
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