説明

製版装置

【課題】大判サイズの製版であっても、製版時に機構部品やモータへの負荷を与えることなく確実にマスタを搬送する。
【解決手段】プラテンローラ21aとサーマルヘッド23aとの間にマスタをニップし、プラテンローラ21aを回転させるとともにサーマルヘッド23aを駆動することで、マスタを搬送しながら感熱製版する製版装置20において、少なくともその一方にサーマルヘッド23aを配置しており、マスタが掛け回されたプラテンローラ21aの周方向に配置された一対の挟持部材23と、挟持部材23をプラテンローラ21aとの当接面と反対側の面から加圧挟持する加圧機構25と有する挟持手段22を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、孔版印刷装置等に用いられ、感熱性孔版マスタを用いて製版を行う製版装置に係り、特にニップ時のプラテンローラへの負担軽減とマスタ搬送時における搬送不良の改善が可能な製版装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、孔版印刷に用いられる製版装置としては、多数の発熱素子が配列されてなるサーマルヘッドと感熱性孔版原紙(以下、単に「マスタ」ともいう)の熱可塑性樹脂フィルム(以下、単に「フィルム」ともいう)側とを圧接させた状態で各発熱素子に画像情報に基づいて穿孔用電力を供給して該発熱素子を発熱駆動するととも、搬送ローラによりマスタを所定ピッチで搬送させて、前記発熱素子の配列方向(主走査方向)と直交する副走査方向にサーマルヘッドと孔版原紙とを相対移動させてドット状の穿孔・製版画像(穿孔パターン)をマスタに形成するものが知られている。
【0003】
上記製版装置の一例としては、例えば下記特許文献1に開示されるような装置が公知である。図17に示すように、下記特許文献1の画像形成装置は、回転力の伝達を受けて回転するプラテンローラ201と、孔版原紙202に穿孔画像形成可能なサーマルヘッド203と、プラテンローラ201に対しサーマルヘッド203を圧接する方向に付勢する第1バネ204とを有し、画像形成モードである製版モードではこの第1バネ204の付勢力によってサーマルヘッド203とプラテンローラ201との間に供給された孔版原紙202を圧接し、且つ、サーマルヘッド203の製版スピードに応じてプラテンローラ201を回転させて孔版原紙202を搬送しつつ穿孔画像形成を行う画像形成装置において、サーマルヘッド203が圧接するプラテンローラ201の反対位置に配置された付勢ローラ205と、付勢ローラ205をプラテンローラ201に圧接する方向に付勢する第2バネ206とを有し、製版モードではこの第2バネ206の付勢力によって付勢ローラ205がプラテンローラ201を押圧する構成である。
【0004】
また、製版装置における他の構成例として下記特許文献2に開示される感熱像形成装置が公知である。図18に示すように、下記特許文献2の感熱像形成装置は、発熱部分の短いサーマルヘッドで、その発熱部分の長さより広い幅の孔版原紙301に画像を形成するものであり、サーマルヘッドが発熱体の配列方向に沿って複数個のユニット300A、300Bに分割され、各ユニット300A、300Bは孔版原紙301の搬送方向に沿って相異なる位置に備えられている。即ち、孔版原紙301は、前記実施例と異なり、各ユニット300A、300Bの発熱体領域のみが摺接することになる。また、各ユニット300A、300Bは、単一のプラテンローラ302を挟む位置に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−318236号公報
【特許文献2】特開平5−338220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、一般的な製版装置では、プラテンローラの外周面にサーマルヘッドを一方向から圧接する構造であったため、下記(1)〜(5)のような問題があった。
(1)サーマルヘッドによる加圧が一方向からプラテンローラに加わることで撓みが生じ、幅方向(プラテンローラの長手方向)のニップバランスが崩れ、穿孔と画像に悪影響を与える。
(2)A2用紙等(A2用紙:420mm×594mm)の大判サイズの印刷用のマスタを製版する場合、その製版幅が広いため、プラテンローラが長くなるほどプラテンローラの撓みが増えて影響が大きくなる。
(3)プラテンローラ径は、サーマルヘッドの構造に制限されることが多く、強度アップを狙っての外径拡大は困難である。
(4)一方向からの加圧によりプラテンローラが撓むことで軸受の加重が増え、プラテンローラの回転負荷や駆動モータへの負荷が大きくなる要因となる。
(5)プラテンローラとサーマルヘッドとの間のニップ圧が低い場合に、摩擦力の低下により発生するスリップでマスタの搬送不良を防止するため、製版に必要なニップ圧以上に圧を上げているが、これにより機構部品やモータ等の各機器に対する負担が増し、故障の原因となる。
【0007】
また、特許文献1では、付勢ローラがプラテンローラを押圧しながら製版するため、プラテンローラの撓みを解消することはできるが、やはりサーマルヘッドでマスタを一方向から圧接しながら製版しているため、機構部品やモータ等への負荷が大きく、搬送力も十分に得ることができなかった。また、プラテンローラとの摩擦によりローラ自体が磨耗し、より搬送に影響を及ぼす虞もあった。
【0008】
さらに、特許文献2は、プラテンローラよりも短い複数のサーマルヘッドがプラテンローラに対し孔版原紙の搬送方向沿って相違するよう配置するため、マスタに対するニップが不安定でマスタが斜行搬送されてしまい、その結果、マスタの搬送不良やマスタに皺が発生することによる穿孔画像の歪みの原因となっていた。また、大判サイズ印刷用のマスタを製版する場合、プラテンローラがさらに長大するため、短いサーマルヘッドで複数箇所からニップするとプラテンローラが撓む(図示の例ではプラテンローラ軸方向に対し2方向から加圧するためS字に撓む)という問題もあった。
【0009】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、大判サイズの製版であっても、製版時に機構部品やモータへの負荷を与えることなく確実にマスタを搬送することのできる製版装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成するために、請求項1記載の製版装置は、プラテンローラとサーマルヘッドとの間にマスタをニップし、前記プラテンローラを回転させるとともに前記サーマルヘッドを駆動することで、前記マスタを搬送しながら感熱製版する製版装置において、
前記サーマルヘッドと、該サーマルヘッドにおける前記プラテンローラとの当接面と同一面で連続するよう搬送方向に直交する方向で並設する当て板とで構成され、前記マスタが掛け回された前記プラテンローラを介在して対向配置された前記プラテンローラと略同長である一対の挟持部材を有する挟持手段を備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の製版装置は、請求項1記載の製版装置において、前記サーマルヘッドを前記プラテンローラの中心軸と平行に互い違いに配置することを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の製版装置は、請求項1又は2記載の製版装置において、付与される加圧力を均等に分散させる分散板の両端に該分散板へ付与される加圧力の分圧点として作用する結合部材を結合した分圧部材を、前記各挟持部材における前記プラテンローラとの当接面と反対面側に、前記プラテンローラの長手方向中心を基準としてトーナメント構造で設けられた分圧ユニットと、
一方の前記分圧ユニットにおける頂上中央部分に回動自在に軸支された一対の支持アームと、当該支持アームに対し加圧方向にスライド自在に支持された加圧部材と、前記各挟持部材に対する加圧を行うのに必要な前記加圧方向への加圧力を付与する加圧バネとで構成され、前記分圧ユニットを介して前記挟持部材に加圧力を付与する加圧ユニットとからなり、
前記各挟持部材における前記プラテンローラとの当接面と反対面側から挟持し、当該挟持部材に対しニップに必要な加圧力を付与する加圧機構が前記挟持手段に設けられることを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の製版装置は、請求項1〜3の何れかに記載の製版装置において、さらに、前記挟持部材の両端には、
プラテンローラ軸に当接して前記挟持部材の前記マスタ搬送方向への位置決めをする位置決め用ガイド板と、
前記挟持部材が前記プラテンローラから離間する方向に回動自在となるよう装置本体フレームの支軸に軸支されるアームと、
前記支軸と前記アームとの間に掛着され、前記挟持部材を前記支軸側に引き寄せる寄せバネと、
が設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項5記載の製版装置は、請求項2記載の製版装置において、前記挟持部材は、その長手方向における設置位置の基準となる基準用の挟持部材と、一方の装置本体フレームにある押付バネと当接する押し当てピンが前記一方の位置決め用ガイド板に設けられる位置調整用の挟持部材とからなり、
前記押付バネが設けられた側と反対側の装置本体フレームの外側に設置される基部と、
該基部に対し前記装置本体フレーム方向に回動自在に軸支される調整アームと、
該調整アームの移動量に追従して前記装置本体フレーム方向へ移動可能に軸支され、前記調整アームの移動に伴い前記位置調整用の挟持部材の位置決め用ガイド板と当接して前記押付バネ側に押圧する調整ピンと、
前記基準用の挟持部材における長手方向の位置を基準に前記位置調整用の挟持部材の位置調整を行うべく、そのねじ込み量に応じて前記調整アームを装置本体フレーム方向への移動する調整ネジと、
で構成される位置調整機構を備えたことを特徴とする。
【0015】
請求項6記載の製版方法は、プラテンローラとサーマルヘッドとの間にマスタをニップし、前記プラテンローラを回転させるとともに前記サーマルヘッドを駆動することで、前記マスタを搬送しながら感熱製版する製版方法において、
前記サーマルヘッドと、該サーマルヘッドにおける前記プラテンローラとの当接面と同一面で連続するよう搬送方向に直交する方向で並設する当て板とで構成される前記プラテンローラと略同長である一対の挟持部材で、前記マスタが掛け回された前記プラテンローラを対向挟持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の製版装置によれば、サーマルヘッドと当て板とを並設した一対の挟持部材をプラテンローラを介在して対向配置した状態でプラテンローラに掛け回されたマスタを2方向から挟持することで、感熱製版に必要な最低限のニップ圧で従来以上の高いグリップ力が生じてマスタの搬送力をより高めることができるので、マスタの搬送不良や穿孔不良を防止することができる。
【0017】
また、挟持部材のそれぞれにサーマルヘッドを有し、且つサーマルヘッドをプラテンローラの中心軸と平行に互い違いに配置することで、A2用紙のような大判サイズ用の高額なサーマルヘッドを作製する必要なく、低コストで大判サイズ用の製版に対応することができる。さらに、ニップによるプラテンローラの撓みを考慮する必要がないため、プラテンローラ径が自由に設定可能となる。
【0018】
また、各挟持部材におけるプラテンローラとの当接面と反対面側から挟持し、挟持部材に対しニップに必要な加圧力を均等に付与する加圧機構を備え、挟持部材とプラテンローラとの間でマスタを均等な加圧力でニップしているため、ニップによるサーマルヘッドやプラテンローラの撓みを防止するとともに、機構部品やモータ等への負荷を減らし、耐久性能が向上する効果を奏する。
【0019】
さらに、挟持部材における両端にプラテンローラ軸に当接する位置決め用ガイド板を備えているため、挟持部材とプラテンローラとの位置決めを容易に行うことができる。
【0020】
また、既設置した基準用の挟持部材における長手方向の位置を基準として位置調整用の挟持部材の位置調整を可能とする位置調整機構を備えているため、長手方向における挟持部材の位置決めを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る製版装置を搭載する孔版印刷装置の内部構成を示す概略断面図である。
【図2】(a) 本発明の製版装置において製版済みマスタを水平方向に搬送する形態を示す説明図である。 (b) 同装置において製版済みマスタを鉛直方向下方に搬送する形態を示す説明図である。
【図3】(a) 同装置における挟持手段の構成を示す概略斜視図である。 (b) 挟持部材の構成例を示す説明図である。
【図4】挟持部材の位置決め部材の構成を示す概略斜視図である。
【図5】(a) ニップ時における位置決め部材の動作を示す説明図である。 (b) ニップ解除時における位置決め部材の動作を示す説明図である。
【図6】同装置における位置調整機構の構成を示す概略説明図である。
【図7】(a) 装置本体フレームと挟持部材との設置構成を示す説明図である。 (b) 位置調整機構と挟持部材との設置構成を示す説明図である。
【図8】(a) 挟持部材と加圧機構の設置構成を示す概略斜視図である。 (b) 挟持部材と加圧機構の設置構成を示す概略側面図である。
【図9】(a) 加圧機構による挟持部材加圧解除時を示す側面図である。 (b) 挟持部材へのニップ加圧時を示す側面図である。 (c) 加圧機構の開放状態を示す側面図である。
【図10】(a) A2印刷時における給紙部の構成を示す概略斜視図である。 (b) A3パラレル印刷時における給紙部の構成を示す概略斜視図である。
【図11】印刷部におけるインク供給部の構成を示す説明図である。
【図12】(a) A2印刷時における排紙部の構成を示す概略斜視図である。 (b) A3パラレル印刷時における排紙部の構成を示す概略斜視図である。
【図13】用紙搬送装置の構成を示す概略斜視図である。
【図14】(a) A2印刷時における用紙排紙時の高さ関係を示す説明図である。 (b) A2印刷時における別形態の用紙排紙時の高さ関係を示す説明図である。 (c) A3パラレル印刷時における用紙排紙時の高さ関係を示す説明図である。
【図15】(a) 第1の支持機構の構成を示す説明図である。 (b) 第2の支持機構の構成を示す説明図である。
【図16】(a) 第3の支持機構の構成を示す説明図である。 (b) 第4の支持機構の構成を示す説明図である。
【図17】従来の製版装置の要部を示す概略斜視図である。
【図18】従来の感熱像形成装置の要部を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではなく、この形態に基づいて当業者等によりなされる実施可能な他の形態、実施例及び運用技術等はすべて本発明の範疇に含まれる。
【0023】
[1.孔版印刷装置の概略構成]
まず、本発明に係る製版装置が搭載される孔版印刷装置について、図1を参照しながら説明する。本例の孔版印刷装置100は、一般的な印刷用記録媒体として使用する規格サイズ(A3、A4等)の用紙よりも大判なA2サイズの用紙が印刷可能な装置である。
【0024】
なお、本明細書では、給紙台31にA2用紙を横置きの状態(用紙の長手方向が搬送方向と直交する向き)で載置して横通紙による印刷を行う場合を「A2印刷」、A3用紙を縦置きの状態(用紙の長手方向が搬送方向に沿った向き)に2部載置して縦通紙によるパラレル印刷を行う場合を「A3パラレル印刷」とする。
【0025】
図1に示すように、孔版印刷装置100は、原稿の原稿画像をスキャナで読み取る原稿読取部10と、製版時に感熱孔版原紙(以下、「マスタ」という)がロール状に巻装されたマスタロール26から供されるマスタに原稿読取部10で読取った原稿画像を製版する製版部20(本発明の製版装置に相当)と、用紙が積載された状態でセットされる給紙部30と、内部にインク供給手段を有するとともに外面に穿孔画像が製版されたマスタ(以下、「製版済みマスタ」という)が巻装され装置本体に着脱可能に実装されて回転駆動される円筒形状のドラム41を備え給紙部30から供給された用紙を回転駆動されるドラム41に押圧することによりマスタの穿孔部を通して用紙にインクを転写させる印刷部40と、印刷済の用紙を排出する排紙部50等を備えている。なお、原稿データをパソコン等から送って製版するのみの場合は、原稿読取部10は搭載しないこともある。
【0026】
[2.製版装置の構成]
次に、本発明に係る製版装置について説明する。本例の製版装置20は、図1に示すように孔版印刷装置100における製版部20として機能し、その装置構成としては、不図示の駆動モータにより回転駆動するよう軸支されたプラテンローラ21と、マスタが掛け回されたプラテンローラ21を介在して対向配置された一対の挟持部材23でマスタを加圧機構25により2方向で加圧挟持する挟持手段22とを有している。製版装置20は、ロール状のマスタを回転自在に保持したマスタロール26からマスターガイドローラ27を介して供給されるマスタをプラテンローラ21と挟持手段22との間でニップしながら原稿画像を感熱製版し、製版された製版済みマスタを搬送ローラ対によりドラム41に供給している。また、マスタを搬送する際は、挟持手段22とプラテンローラ21による挟持部分に皺が発生しないように、マスタに搬送方向と逆方向のテンション(バックテンション)を付与している。
【0027】
製版装置20は、例えば図2(a)に示すようにマスタロール26からマスターガイドローラ27を介してマスタをプラテンローラ21まで供給した後、製版済みマスタを水平方向に搬送する構成、図2(b)に示すように、マスタロール26からマスターガイドローラ27を介してマスタをプラテンローラ21まで供給した後、製版済みマスタを鉛直方向下方に搬送する構成がある。また、何れの構成においても、マスターガイドローラ27を介して供給されたマスタがプラテンローラ21に180°以上掛け回されており、プラテンローラ21に掛け回されたマスタを挟持手段22によって2方向(図中ではプラテンローラ21を介在して挟持部材22を対向配置)で挟持している。なお、以下の説明では、図2(a)に示す搬送方式を用いた装置例で説明する。
【0028】
<挟持手段>
挟持手段22の構成について説明すると、図3〜8に示すようにプラテンローラ21に掛け回されたマスタをニップする一対の挟持部材23と、装置本体に装着した挟持部材23の位置調整を行う位置調整機構24と、ニップ時に挟持部材23に対して加圧固定する加圧機構25とで構成されている。
【0029】
(挟持部材)
挟持部材23は、図3(a)、(b)に示すように、プラテンローラ21と略同長である一対の部材で構成され、プラテンローラ21の外周面に圧接してプラテンローラ21に掛け回されたマスタを2方向からニップしている。また、一対の挟持部材23におけるプラテンローラ21との当接面には、多数の発熱素子23hが配列されてなるサーマルヘッド23a(縦通紙したA3用紙の用紙幅と略同等)を配置するとともに、サーマルヘッド23a以外の部分には当接側の面がサーマルヘッド23aの面と同一平面となるようなダミーの当て板23bを配置している。
【0030】
また、挟持部材23は、図3(b)に示すように、A2印刷又はA3パラレル印刷に対応するよう用紙幅方向にサーマルヘッド23aを少なくとも2つ使用し、サーマルヘッド23aの繋ぎ目となる部分は所定長さ(発熱体素子23h数個分)ラップさせて配置してもよい。なお、ラップさせる各発熱素子23hは、一直線上に対向配置されるようサーマルヘッド23aを配置する。また、発熱素子23hをラップさせて配置しない場合は、図示のように発熱素子23hの配置位置が発熱素子ピッチLと同寸法となるようにサーマルヘッド23aを配置する。これにより、サーマルヘッド23aをA2用紙の幅に相当する長さにするという経済的な不合理を回避し、且つサーマルヘッド23aの繋目部分に相当する製版済みマスタ中の画像の白すじを防止している。
【0031】
なお、挟持部材23は、図3(b)に示す配置形態に限定されず、プラテンローラ21と略同長で、且つサーマルヘッド23aと、サーマルヘッド23aにおけるプラテンローラ21との当接面と同一面で連続するよう並設する当て板23bとで構成されていればよい。
【0032】
次に、プラテンローラ21に対する挟持部材23の位置決めについて説明する。
図4に示すように、挟持部材23の両端には、プラテンローラ軸21aと当接してマスタ搬送方向における挟持位置を定める位置決め用ガイド板23cと、挟持部材23がプラテンローラ21から離間する方向に回動自在となるよう所定の遊びを設けて装置本体フレーム101の支軸102に軸支されるアーム23dを備えている。また、位置決め時に挟持部材23を支軸102側に引き寄せて位置決め用ガイド板23cをプラテンローラ軸21aに当接させるための寄せバネ23eがアーム23dと支軸102またはその付近との間に掛着されている。
【0033】
従って、挟持部材23は、図5(a)に示すように、ニップ時では、寄せバネ23eの付勢力により挟持部材23を支軸102側(図中矢印方向)へ引き寄せることで位置決め用ガイド板23cをプラテンローラ軸21aに当接して位置決めを行う。また、図5(b)に示すように、ニップ解除時では、挟持部材23を図中矢印方向に回動させることでプラテンローラ軸21aから位置決め用ガイド板23cを離間することでニップの解除を行う。
【0034】
また、図6、7に示すように、挟持部材23は、その長手方向における設置位置の基準となる基準用の挟持部材23Aと、基準用に合わせて位置調整を行う位置調整用の挟持部材23Bの2種類に分かれている。基準用の挟持部材23Aは、図7(a)、(b)に示すように一方の位置決め用ガイド板23cに装置本体フレーム101に設けられた押付バネ103と当接する押し当てピン23fと、他方の位置決め用ガイド板23cに装置の装置本体フレーム101(二点鎖線)にネジ止めにより固定する固定ピン23gがそれぞれ設けられている。また、図7(a)に示すように位置調整用の挟持部材23Bは、位置調整機構24が設置される反対側の位置決め用ガイド板23cに押付バネ103と当接する押し当てピン23fが設けられている。
【0035】
(位置調整機構)
図6、7に示すように、位置調整機構24は、位置調整用の挟持部材23Bを設置する際に、既設置された基準用の挟持部材23Aにおける長手方向の位置に合うよう、位置調整用の挟持部材23Bにおける長手方向の位置調整する機構である。位置調整機構24は、押付バネ103が設けられた側と反対側の装置本体フレーム101の外側に設置される基部24aと、基部24aに対し装置本体フレーム101方向に回動自在に軸支された調整アーム24bと、ねじ込み量に応じて調整アーム24bを装置本体フレーム101方向へ移動させる調整ネジ24cと、調整ネジ24cによる調整アーム24bの位置調整後にその位置を固定するロックネジ24dと、調整アーム24bの移動量に追従して装置本体フレーム101方向へ移動可能に軸支され調整アーム24bの移動に伴い位置調整用の挟持部材23Bの位置決め用ガイド板23cに突き当てて押付バネ103側に押圧する調整ピン24eとで構成される。
【0036】
位置調整機構24による位置調整動作としては、まず仮設置した位置調整用の挟持部材23Bを基準用の挟持部材23Aにおける長手方向の位置に合わせて調整するべく調整ネジ24cを所定量ねじ込み、調整ピン24eを位置調整用の挟持部材23Bの位置決め用ガイド板23cに当接させる。そして、調整ネジ24cのねじ込み量を調節しながら位置調整用の挟持部材23Bを押し当てピン23f側に押し付けて位置調整を行い、位置調整後にロックネジ24dで位置固定する。
【0037】
(加圧機構)
図8、9に示すように、加圧機構25は、付与される加圧力を均等分圧する各挟持部材23におけるプラテンローラ21との当接面と反対側の面にトーナメント構造を有して設けられる分圧ユニット25Aと、分圧ユニット25Aを介して挟持部材23に加圧力を付与する加圧ユニット25Bで構成され、プラテンローラ21に対し対向配置された挟持部材23を挟持してニップに必要な加圧力を付与している。
【0038】
分圧ユニット25Aは、図8(a)、(b)に示すように加圧ユニット25Bからの加圧力を均等に分散させる分散板25Aaの両端に分圧点として作用する柱状の結合部材25Abを結合した分圧部材25Acをプラテンローラ21の長手方向中心を基準として対称配置となるよう複数段設置した、所謂トーナメント構造を有している。また、後述する加圧ユニット25Bの加圧ローラ25Bcを受け入れて支持するローラ受入部材25Adが、加圧ユニット25Bが軸支されていない側の分圧ユニット25Aにおける加圧ユニット25Bとの当接面(頂上部分)の所定箇所に設けられている。
【0039】
加圧ユニット25Bは、図8、9に示すように一方の分圧ユニット25Aにおける頂上中央部分に回動自在に軸支された一対の支持アーム25Baと、支持アーム25Baに対し加圧方向にスライド自在になるよう遊びを設けて支持された加圧部材25Bbとで構成され、挟持部材23の長手方向における中央部分に設けられている。また、加圧部材25Bbにおける挟持部材23との当接箇所には、ニップ解除時に挟持部材23に解除しやすくするための一対の加圧ローラ25Bcが設けられている。さらに、加圧部材25Bbには、加圧ユニット25Bセット後に挟持部材23に対する加圧を行うのに必要な加圧方向への加圧力を加圧ローラ25Bcに付与する加圧バネ25Bdが設けられている。
【0040】
なお、図示の例では加圧バネ25Bdを3個設置した例であるが、必要に応じて同一のバネ定数を有するバネの設置数を適宜選定することで、加圧力の強弱(バネ定数の設定)を容易に行うことができる。また、複数設置する場合は、均等に加圧するためプラテンローラ21に沿って同一間隔を置きながら設置することが好ましい。
【0041】
次に、加圧機構25による加圧動作について説明すると、まず図9(a)に示すようにニップ解除状態の加圧ユニット25Bをプラテンローラ21側(図中矢印方向)に回動させ、図9(b)に示すように加圧ローラ25Bcを分圧ユニット25Aのローラ受入部材25Adに係合する準備動作を行う。そして、図9(c)に示すように、加圧ローラ25Bcをローラ受入部材25Adに係合させて挟持部材23に加圧力を付与する。これにより、挟持部材23が加圧ユニット25Bによって加圧された状態となり、プラテンローラ21に掛け回されたマスタを対向方向から挟持される。また、ニップ解除する場合は、加圧部材25Bbを加圧バネ25Bbに抗して引き上げた状態で加圧ユニット25Bをプラテンローラ21から離間する方向へ回動させてニップ解除を行う。
【0042】
そして、上述した製版装置20では、まずマスタロール26のマスタをプラテンローラ21に掛け回した後、プラテンローラ21を介在して対向配置した挟持部材23をそれぞれプラテンローラ21に当接させる。なお、挟持部材23Bを組立調整する際には、既に組立固定してあるプラテンローラ軸21aに位置決めガイド板23cを当接した後、既設置した基準用の挟持部材23Aと長手方向の位置を基準として位置調整機構24により位置調整用の挟持部材23Bの位置調整を行う。プラテンローラ軸21aに位置決めガイド板23cを当接した後、既設置した基準用の挟持部材23Aと長手方向の位置を基準として位置調整機構24により位置調整用の挟持部材23Bの位置調整を行う。
【0043】
挟持部材23の位置調整後、加圧機構25をプラテンローラ21側に回動し、加圧ローラ25Bcを分圧ユニット25Aのローラ受入部材25Adに係合するため、加圧バネ25Bbに抗して加圧方向と反対方向に引き上げた状態で加圧ローラ25Bcとローラ受入部材25Adとの係合位置まで移動させ、加圧部材25Bbの引き上げを解除して加圧ローラ25Bcをローラ受入部材25Adに係合させて挟持部材23に加圧力を付与している。
【0044】
[3.孔版印刷装置におけるその他の構成要件]
次に、本例の孔版印刷装置100を構成する各部(原稿読取部10、給紙部30、印刷部40、排紙部50)と及び装置本体の転倒を防止する支持機構60について、図1及び図10〜図16を参照しながらそれぞれ説明する。なお、孔版印刷装置100に係る各部の駆動制御等の各種処理については不図示の制御部により統括制御される。
【0045】
<原稿読取部>
原稿読取部10は、図1に示すように原稿の内容を光学的に読み取るCCD等の画像センサ11を備えたスキャナ装置で構成され、原稿セット台12に載置された原稿を光学的に読み取り、この読み取った原稿の画像データ(印刷画像)を製版装置20に出力する。なお、必要に応じて、読み取った画像データを操作部(不図示)からの所定操作に基づき読み取った画像データの加工処理(拡大、縮小等)が可能である。なお、原稿データをパソコン等から送って製版するだけの場合は、原稿読取部10は搭載しないこともある。
【0046】
<給紙部>
給紙部30は、図1、10に示すように装置本体に対して上下動自在に指示され印刷媒体である用紙が複数枚積層載置される給紙台31と、積載された用紙の搬送方向と直交する幅方向の両端に当接してガイドする同幅方向に摺動自在な一対のサイドフェンス32と、この給紙台31から最上位置の用紙に圧接して一枚又は複数枚ピックアップする給紙ロールユニット33、給紙ロールユニット33によって搬送された用紙の下面に対して搬送抵抗を作用するサバキユニット34と、駆動ローラと従動ローラとからなり給紙ロールユニット33の下流に配置されるレジストローラ対35とを有する。給紙部30は、給紙ロールユニット33とサバキユニット34とによって給紙台31上の最上位置の用紙のみを搬送し、この搬送された1枚の用紙を印刷タイミングに同期して回転するレジストローラ対によって印刷部40に向けて給送する。
【0047】
また、本例の孔版印刷装置100では、版胴が最大A2サイズの用紙の印刷が可能であるため、給紙台31も積載可能な用紙のサイズが最大A2サイズとなるよう給紙台31の給紙側中央部分に着脱可能な給紙側中央フェンス36を設置している。よって、図10(a)に示すようにA2印刷時では給紙側中央フェンス36を取り外してA2用紙を載置し、図10(b)に示すようにA3パラレル印刷時では、給紙側中央フェンス36を取り付けて各A3用紙の幅方向における一方の縁端を規制している。
【0048】
さらに、給紙ロールユニット33とサバキユニット34は、使用する用紙サイズに応じて適宜交換できるよう着脱可能な構成であり、例えばA2印刷時は、図10(a)に示すように用紙の中央部分をピックアップ可能な位置に給紙ロールユニット33とサバキユニット34とを1組にして配置する。また、A3パラレル印刷時は、図10(b)に示すようにA2印刷時に配置した給紙ロールユニット33とサバキユニット34を取り外し、各A3用紙の中央部分をピックアップ可能な位置に給紙ロールユニット33とサバキユニット34とを対にして2組配置している。
【0049】
<印刷部>
印刷部40は、図1、11に示すように版胴の内部から、ドクタローラ41aとスキージローラ41b間の僅かな隙間に形成されたインク溜まり41cより一定量のインクをその内周面に供給するインキ供給部42を内蔵するドラム41と、給紙部30から1枚づつ搬送される用紙を所定のタイミングで送り出すタイミングローラ(図1のレジストローラ35に相当)と、タイミングローラより搬送路に送り出されてきた用紙をドラム41の外周面に押し付けるプレスローラ43と、印刷された用紙をドラム41より剥ぎ取るための分離爪44とから構成される。また、ドラム41の外周面には製版装置20で製版され搬送されてきたマスタの先端部をクランプするクランプ部45が設けられており、クランプ終了後に製版済のマスタは、ドラム41を駆動モータ(不図示)により回転させることによりその外周面に巻装される。
【0050】
また、図11に示すように、インク供給部42は、一定量のインクがドラム41内周面から供給可能とするため、インク供給源46からのインク供給先を適宜切り替えて、インク溜まり41cのインク量がドラム41の軸方向に対して略均一にする供給切替機構42aを備えている。供給切替機構42aは、トーナメント形式のインク供給路42bにおける第1分岐点に設けられている。供給切替機構42aは、インク量検知手段42cによりインク溜まり41cのインク量を検知し、インク量が均一でない場合若しくは印刷時に使用する用紙サイズに応じてモータ駆動により切替弁42dを駆動して、任意の供給路42bへのインク供給量を調節するべく制御している。これにより、インク供給源(インクボトル)46とインクポンプ47は、各1個で2系統へのインク供給を行える。
【0051】
なお、切替弁42dを中立位置に戻す駆動方法としては、モータ駆動の他、インクの流力による方式、切替弁の下部に錘を付けた重力式、バネ式等を任意に組み合わせた構成でもよい。
【0052】
<排紙部>
排紙部50は、図1、図12に示すように分離爪44によってドラム41から離間した用紙を受け入れる案内面が排紙方向に向かうに従い徐々に下方へ傾斜した状態で設けられた用紙搬送機構51と、印刷済みの用紙を積載する排紙台52と、排紙台52に積載された用紙の搬送方向と直交する幅方向における両縁端を規制する同幅方向に摺動自在な一対のサイドフェンス53と、排紙された用紙の排紙方向に対する位置を規制する用紙搬送方向に摺動自在に設けられた2つのエンドフェンス54とで構成されている。また、排紙台52上には使用する用紙サイズに応じて適宜着脱可能な構成の排紙側中央フェンス55が設置されており、例えばA2印刷時に排紙される場合は排紙側中央フェンス55を取り外してサイドフェンス53により排紙されたA2用紙の幅方向における両縁端を規制している。また、排紙側中央フェンスは55、A3パラレル印刷時に排紙される場合に取り付けられ、排紙されたA3用紙の幅方向における一方の縁端を規制している。
【0053】
また、図13に示すように、用紙搬送機構51には、負圧吸引機能を有する複数の搬送ベルト(本実施例では3本)からなる搬送手段51aによる搬送過程において、用紙の端部(A2用紙使用時は両端、A3用紙使用時は一方の端部)を持ち上げて腰付けをする第1腰付け部51bが、案内板51cにおける排紙方向下流側両端に相対して設けられている。この第1腰付け部51bは、使用する用紙サイズに応じて最適な腰付けを行うため、用紙の幅方向に摺動自在に設けられており、使用する用紙サイズに応じて適切な位置に移動する。
【0054】
さらに、案内板51cにおける排紙方向下流側中央部分には、搬送過程において用紙における中央部分を持ち上げて腰付けをする第2腰付け部51dが着脱可能に設置されている。第2腰付け部51dは、案内板51cに設置した際に用紙と用紙搬送面と接触面積を軽減させるため、排紙方向下流側に向かうに従い徐々に上方へ傾斜させるて勾配を上げるとともに、両側部と下部を開けて通気性を持たせる形状となっている。
【0055】
なお、第2腰付け部51dは、A2印刷時にA2用紙の中央部分を腰付けするために設置されるが、用紙の中央部分が第2腰付け部51dによって腰付けされるように排紙される他サイズの用紙であっても有効である。
【0056】
また、A3パラレル印刷のように、排紙時に用紙が2部排紙される場合は、第2腰付け部51dを取り外し、第1腰付け部51bと同等の機能を有する第1腰付け部材51eに交換することで、各用紙の一方の端部を持ち上げて腰付け可能とする。さらに、搬送手段51aにおける中央の搬送ベルトは、不図示の駆動手段によって搬送ベルトローラが鉛直方向へ上下移動して用紙を持ち上げ、排紙方向に沿った1つの稜部を連接して形成し腰付けを行う第2腰付け部51dとして機能する。
【0057】
図14(a)に示すように、A2印刷時における腰付け高さは、案内板51c上面から第1腰付け部51bで腰付けされた用紙の縁端部までの高さをaとし、案内板51c上面から第2腰付け部51dで腰付けされた用紙の稜部の頂点位置までの高さをbとすると、aとbとがa≧bの関係となるように調整する。図14(b)はA2印刷時における別形態の排紙方式を示し、案内板51c上面から第1腰付け部51bで腰付けされた用紙の縁端部までの高さをaとし、案内板51c上面から第2腰付け部51dで腰付けされた用紙の稜部の頂点位置までの高さをbとし、案内板51c上面から第3腰付け部51aで腰付けされた用紙の稜部の頂点位置までの高さをdとすると、aとbとdがa≧b≧dの関係となるように調整する。
【0058】
また、図14(c)に示すように、A3パラレル印刷時における腰付け高さは、案内板51c上面から第1腰付け部51b及び51eで腰付けされた用紙の縁端部までの高さをcとし、案内板51c上面から第2腰付け部51aで腰付けされた用紙の稜部の頂点位置までの高さをdとすると、cとdとがc≧dの関係となるように調整する。
【0059】
<支持機構>
また、本例の孔版印刷装置100は、ドラム41がA2用紙にも対応できるよう従来のものより大型化しているため、ドラム交換時におけるドラム41の落下や孔版印刷装置100の転倒を防止する支持機構60を備えている。
【0060】
支持機構60の構成としては図15又は図16に示すように4形態あり、必要に応じて任意に組み合わせ可能である。各形態について説明すると、図15(a)に示すように、第1形態である第1の支持機構61としては、ドラム41の軸方向における引出し側下方を支点として引出し方向に回動してドラム41を鉛直方向から支持する2本の脚部61aがドラム41本体に軸支された機構である。
第1の支持機構61は、図中側面図に示すように装置本体からドラム41をドラムレール48に沿って引き出す時に脚部61aドラム41と一緒に引き出され、ドラム41を取り出し終えた時に引出し方向に回動して接地した状態でドラム41を支持することで、ドラム41の落下を防止している。
【0061】
図15(b)に示すように、第2形態である第2の支持機構62としては、装置本体を載置する架台に設けられ、架台における一方の端縁にヒンジを介して開閉自在に支持された扉状基台62aが設けられ、扉状基台62aの上部には開扉時に引き出したドラム41を支持する格納式のドラム台62bが回動自在に軸支されているとともに、ドラム台62bが引き出したドラム41を支持する位置(開扉制限位置)まで扉状基台62aを開扉した時に位置固定するためのロックレバー62cが設けられた機構である。また、扉下部には、開扉時に床面に向かって回動して接地し装置本体の支持する格納式支持部材62dが回動自在に設けられている。
第2の支持機構62は、ドラム41をドラムレール48に沿って引き出す時に扉状基台62aを図中上面図における矢印方向に向かって開扉制限位置まで開扉し、図中側面図に示すようにロックレバー62cにより開扉制限位置で固定した状態で引き出したドラム41をドラム台62bで支持することで、ドラム41の落下及び装置本体の転倒を防止している。
【0062】
図16(a)に示すように、第3形態である第3の支持機構63としては、架台からスライド自在に設けられた矩形状の基台63aにおける引出し側の先端下部近傍に2つの格納式キャスター63bが回動自在に軸支されるとともに、基台63aにおける引出し側の先端上部に格納式のドラム台63cが設けられた機構である。また、基台63aの引き出しに伴い、床面に向かって回動して接地した格納式キャスター63bを固定するとともに、基台63aの収納に伴い床面から離間する方向に回動して格納された格納式キャスター63bを格納位置で固定するロック機構63dを備えている。
第3の支持機構60は、図中側面図に示すようにドラム41をドラムレール48に沿って引き出す時に基部63aを引き出し、ドラム台63cでドラム41を支持するとともに、2つの格納式キャスター63bで装置本体を支持することで、ドラム41の落下及び装置本体の転倒を防止している。
【0063】
また、図16(b)に示すように、第4形態である第4の支持機構64としては、架台からスライド自在に設けられた矩形状の基台64aにおける引出し側の先端下部近傍に2つの格納式支持部材64bが床面に向かって回動自在に軸支された機構である。また、第4の支持機構64は、基台64bの引き出しに伴い、床面に向かって回動して格納式支持部材64bをさせることで基台64bのスライド移動をロックするロック機能を有している。
第4の支持機構60は、図中側面図に示すようにドラム41をドラムレール48に沿って引き出す時に基部64aを引き出し、接地した2つの格納式支持部材64bで装置本体を支持することで、装置本体の転倒を防止している。
【0064】
なお、第3、4形態の支持部材における格納式キャスター63b、64bは、基台63a、64aを引き出した際に床面に向かって回動して接地し装置本体を支持することができればよいため、その回動方向や取付位置は特に限定されない。
【0065】
以上説明したように、上述した製版装置20は、上述した製版装置20では、マスタをプラテンローラ21に掛け回した後、プラテンローラ21と略同長であり、且つサーマルヘッド23aと、サーマルヘッド23aにおけるプラテンローラ21との当接面と同一面で連続するよう並設する当て板23bとで構成された一対の挟持部材23をプラテンローラ21を介在して対向配置した状態でそれぞれプラテンローラ21に当接させる。この際、既設置した基準用の挟持部材23Aと長手方向の位置を基準として位置調整機構24により位置調整用の挟持部材23Bの位置調整を行う。
【0066】
挟持部材23の位置調整後、加圧機構25をプラテンローラ21側に回動し、加圧ローラ25Bcを分圧ユニット25Aのローラ受入部材25Adに係合するため、加圧バネに抗して加圧方向と反対方向に引き上げた状態で加圧ローラ25Bcとローラ受入部材25Adとの係合位置まで移動させ、加圧部材25Bbの引き上げを解除して加圧ローラ25Bcをローラ受入部材25Adに係合させて挟持部材23に加圧力を付与する。
【0067】
これにより、マスタをプラテンローラ21との間で2方向から加圧挟持できるため、感熱製版に必要な最低限のニップ圧で従来以上の高いグリップ力が生じてマスタの搬送力をより高めることができ、マスタの搬送不良や穿孔不良を防止することができる。
【0068】
また、挟持部材23のそれぞれにサーマルヘッド23aを有し、且つサーマルヘッド23aをプラテンローラ軸21aと平行に互い違いに配置することで、A2用紙のような大判サイズ用の高額なサーマルヘッドを作製する必要なく、低コストで大判サイズ用の製版に対応することができる。さらに、ニップによるプラテンローラの撓みを考慮する必要がないため、プラテンローラ径が自由に設定可能となる。
【0069】
また、各挟持部材23A、Bにおけるプラテンローラ21との当接面と反対面側から挟持し、挟持部材23A、Bに対しニップに必要な加圧力を均等に付与する加圧機構25を備え、挟持部材23とプラテンローラ21との間でマスタを均等な加圧力でニップしているため、ニップによるサーマルヘッド23aやプラテンローラ21の撓みを防止するとともに、機構部品やモータ等への負荷を減らし、耐久性能が向上する効果を奏する。
【0070】
さらに、挟持部材23における両端にプラテンローラ軸21aに当接する位置決め用ガイド板23cを備えているため、挟持部材23とプラテンローラ21との位置決めを容易に行うことができる。
【0071】
また、既設置した基準用の挟持部材23Aにおける長手方向の位置を基準として位置調整用の挟持部材23Bの位置調整を可能とする位置調整機構24を備えているため、長手方向における挟持部材23の位置決めを容易に行うことができる。
【0072】
ところで、上述した形態において、一対の挟持部材23によりプラテンローラ21との間でマスタを挟持する構成で説明したが、これに限定されることはない。例えば、本装置が搭載される孔版印刷装置の装置筐体の大きさや本装置単体で使用する際の装置筐体の大きさによっては、プラテンローラ21の周方向に挟持部材23を複数配置することもできる。この場合、各挟持部材23に均等な加圧力を付与するため、モータ駆動等による押圧部材を各挟持部材23に対し、一対一で対応するようにすればよい。
【0073】
また、挟持部材23におけるサーマルヘッド23aの配置形態として、A2印刷及びA3パラレル印刷に対応するための実施例として説明したが、A2用紙よりも大判な用紙を使用するような装置構成の場合、各挟持部材23に対しサーマルヘッド23aを互い違いに千鳥状に配置する構成や、サーマルヘッド23aを複数個並列する構成等、使用する用紙サイズに応じて適宜配置することで、上記実施例と同様に製版することができる。
【符号の説明】
【0074】
10…原稿読取部
20…製版部(製版装置)
21…プラテンローラ(21a…プラテンローラ軸)
22…挟持手段
23A、23B…挟持部材(23a…サーマルヘッド、23b…当て板、23c…位置決め用ガイド板、23d…アーム、23e…寄せバネ、23f…押し当てピン、23g…固定ピン、23h…発熱素子)
24…位置調整機構(24a…基部、24b…調整アーム、24c…調整ネジ、24d…ロックネジ、24e…調整ピン)
25…加圧機構
25A…分圧ユニット(25Aa…分散板、25Ab…結合部材、25Ac…分圧部材、25Ad…ローラ受入部材)
25B…加圧ユニット(25Ba…支持アーム、25Bb…加圧部材、25Bc…加圧ローラ、25Bd…加圧バネ)
26…マスタロール
27…マスターガイドローラ
30…給紙部
31…給紙台
32…サイドフェンス
33…給紙ロールユニット
34…サバキユニット
35…レジストローラ対
36…給紙側中央フェンス
40…印刷部
41…ドラム(41a…ドクタローラ、41b…スキージローラ、41c…インク溜まり)
42…インク供給部(42a…供給切替機構、42b…インク供給路、42c…インク検出手段、42d…切替弁)
43…プレスローラ
44…分離爪
45…クランプ部
46…インク供給源(インクボトル)
47…インクポンプ
48…ドラムレール
50…排紙部
51…用紙搬送機構(51a…搬送手段、51b…第1腰付け部、51c…案内板、51d…第2腰付け部)
52…排紙台
53…サイドフェンス
54…エンドフェンス
55…排紙側中央フェンス
60…支持機構
61…第1の支持機構(61a…脚部)
62…第2の支持機構(62a…扉状基台、62b…ドラム台、62c…ロックレバー、62d…格納式支持部材)
63…第3の支持機構(63a…基台、63b…格納式キャスター、63c…ドラム台、63d…ロック機構)
64…第4の支持機構(64a…基台、64b…格納式支持部材)
100…孔版印刷装置
101…本体フレーム
102…支軸
103…押付バネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラテンローラとサーマルヘッドとの間にマスタをニップし、前記プラテンローラを回転させるとともに前記サーマルヘッドを駆動することで、前記マスタを搬送しながら感熱製版する製版装置において、
前記サーマルヘッドと、該サーマルヘッドにおける前記プラテンローラとの当接面と同一面で連続するよう搬送方向に直交する方向で並設する当て板とで構成され、前記マスタが掛け回された前記プラテンローラを介在して対向配置された前記プラテンローラと略同長である一対の挟持部材を有する挟持手段を備えたことを特徴とする製版装置。
【請求項2】
前記サーマルヘッドを前記プラテンローラの中心軸と平行に互い違いに配置することを特徴とする請求項1記載の製版装置。
【請求項3】
付与される加圧力を均等に分散させる分散板の両端に該分散板へ付与される加圧力の分圧点として作用する結合部材を結合した分圧部材を、前記各挟持部材における前記プラテンローラとの当接面と反対面側に、前記プラテンローラの長手方向中心を基準としてトーナメント構造で設けられた分圧ユニットと、
一方の前記分圧ユニットにおける頂上中央部分に回動自在に軸支された一対の支持アームと、当該支持アームに対し加圧方向にスライド自在に支持された加圧部材と、前記各挟持部材に対する加圧を行うのに必要な前記加圧方向への加圧力を付与する加圧バネとで構成され、前記分圧ユニットを介して前記挟持部材に加圧力を付与する加圧ユニットとからなり、
前記各挟持部材における前記プラテンローラとの当接面と反対面側から挟持し、当該挟持部材に対しニップに必要な加圧力を付与する加圧機構が前記挟持手段に設けられることを特徴とする請求項1又は2記載の製版装置。
【請求項4】
さらに、前記挟持部材の両端には、
プラテンローラ軸に当接して前記挟持部材の前記マスタ搬送方向への位置決めをする位置決め用ガイド板と、
前記挟持部材が前記プラテンローラから離間する方向に回動自在となるよう装置本体フレームの支軸に軸支されるアームと、
前記支軸と前記アームとの間に掛着され、前記挟持部材を前記支軸側に引き寄せる寄せバネと、
が設けられていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の製版装置。
【請求項5】
前記挟持部材は、その長手方向における設置位置の基準となる基準用の挟持部材と、一方の装置本体フレームにある押付バネと当接する押し当てピンが前記一方の位置決め用ガイド板に設けられる位置調整用の挟持部材とからなり、
前記押付バネが設けられた側と反対側の装置本体フレームの外側に設置される基部と、
該基部に対し前記装置本体フレーム方向に回動自在に軸支される調整アームと、
該調整アームの移動量に追従して前記装置本体フレーム方向へ移動可能に軸支され、前記調整アームの移動に伴い前記位置調整用の挟持部材の位置決め用ガイド板と当接して前記押付バネ側に押圧する調整ピンと、
前記基準用の挟持部材における長手方向の位置を基準に前記位置調整用の挟持部材の位置調整を行うべく、そのねじ込み量に応じて前記調整アームを装置本体フレーム方向への移動する調整ネジと、
で構成される位置調整機構を備えたことを特徴とする請求項2記載の製版装置。
【請求項6】
プラテンローラとサーマルヘッドとの間にマスタをニップし、前記プラテンローラを回転させるとともに前記サーマルヘッドを駆動することで、前記マスタを搬送しながら感熱製版する製版方法において、
前記サーマルヘッドと、該サーマルヘッドにおける前記プラテンローラとの当接面と同一面で連続するよう搬送方向に直交する方向で並設する当て板とで構成される前記プラテンローラと略同長である一対の挟持部材で、前記マスタが掛け回された前記プラテンローラを対向挟持することを特徴とする製版方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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