説明

製紙工程において表面添加剤を監視する蛍光定量的方法

製紙工程に追加する1またはそれ以上の表面添加剤を監視および任意制御する方法を示す。当該方法は下記の:(a)1またはそれ以上の表面添加剤の既知量、または既知の割合で1またはそれ以上の不活性蛍光トレーサの既知量と共に製紙工程に加えるステップであって、前記表面添加剤が蛍光できる場合のみ前記表面添加剤が単独で加えられるステップと;(b)前記表面添加剤の前記蛍光および/または1またはそれ以上の不活性蛍光トレーサが、前記表面添加剤を加えた後の時点およびシートが形成された後に計測されるステップであって、蛍光できる場合のみ前記表面添加剤が測定され、反射率を基にした蛍光計により蛍光が測定されるステップと;(c)蛍光できる場合は前記表面添加剤の量および/またはシートの不活性蛍光トレーサと、シートのコーティングにおける前記表面添加剤の前記濃度および/またはシートのコーティング厚さとを関連付けるステップと;(d)シートの前記コーティング厚さおよび/またはシートのコーティングにおける前記表面添加剤の濃度に応じて、製紙工程に加えられる前記表面添加剤の量を調整することにより、前記製紙工程に加える1またはそれ以上の前記表面添加剤を任意に制御するステップと、を具える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製紙工程に追加する1またはそれ以上の表面添加剤の監視および任意制御に関する。
【背景技術】
【0002】
表面添加剤の量を測定するための現行の方法は、通常、シートを分解する手作業による手法、および/または本来の性質を基準とした質量バランス算出法からなる。
【0003】
サイズプレスで澱粉ピックアップを行う場合、機能を持たせることを意図して十分な澱粉がシートの表面に確実に保持されるために、製紙業者(例えば、製板業者)は多くの場合、甚だしく過度の澱粉量を製紙工程に加える。過去の試験はサイズプレス適用例の測定を含み、ブレード適用手法によって澱粉の削減を可能にした。これは50から70%の範囲において澱粉の著しい削減を可能にしたが、予測できずかつ制御できない澱粉ピックアップのばらつきによる失敗に関するリスクが大きく、克服できなかった。その結果、多くの製紙業者が、シートに十分な量の澱粉を確実に加えるために、パドル型のサイズプレスに戻っていった。
【0004】
このため、より正確かつ適時な、シートの表面添加剤の量を測定する方法が望ましい。これは、製紙業者が非常に低量の追加率で操作できる可能性を秘めており、特定の追加率から素早く統計的に予想および制御可能にする。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、製紙工程に追加する1またはそれ以上の表面添加剤を監視および任意に制御する方法を提供し、当該方法は下記の:(a)1またはそれ以上の表面添加剤の既知量のみ、または既知の割合で1またはそれ以上の不活性蛍光トレーサの既知量と共に、製紙工程に加えるステップであって、表面添加剤が蛍光できる場合のみ表面添加剤が単独で加えられるステップと;(b)表面添加剤の蛍光、および/または1またはそれ以上の不活性蛍光トレーサを、表面添加剤を加えた後の時点およびシートが形成された後に測定するステップであって、蛍光できる場合のみ表面添加剤が測定され、反射率に基づく蛍光計で蛍光が測定されるステップと;(c)蛍光できる場合は表面添加物の蛍光量、および/またはシートの不活性蛍光トレーサと、シートのコーティングにおける表面添加剤の濃度、および/またはシートのコーティング厚さとを関連付けるステップと;(d)シートのコーティング厚さ、および/またはシートのコーティングにおける表面添加剤の濃度に応じて製紙工程に加える表面添加剤の量を調整することにより、製紙工程に加える1またはそれ以上の表面添加剤を任意に制御するステップと、を具える方法。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1は、本発明の一実施形態における反射率に基づく蛍光計がどのように作動するかを概略的に示す。
【図2】図2は、澱粉および不活性蛍光トレーサの組み合わせによる、それぞれの蛍光に対する各澱粉乾燥ピックアップ量のグラフを示す。
【0007】
定義
「製紙工程」/「複数の製紙工程」は、パルプから様々な種類の紙製品(例えば、紙、ティッシュ、板等)を作る方法を意味しており、水性セルロース製紙用完成紙料の形成、シートを形成するための完成紙料の水抜き、およびシートの乾燥を含む。製紙用完成紙料の形成、水抜きおよび乾燥のステップは、一般的に当業者に公知の様々な従来の方法で実施されうる。製紙工程/複数の工程は、パルプ化の段階、すなわち木質材料からパルプを作る段階、および漂白の段階、すなわち光沢を改善するパルプの化学処理も含む。
【0008】
「シート」/「複数のシート」は、製紙工程/複数の製紙工程の結果、またはその間に形成されたシートを意味する。
【0009】
「表面添加剤」/「複数の表面添加剤」は、1またはそれ以上の化学的、および/または物理的(例えば、機械的)特性をシート表面に付与する製紙添加剤を意味する。例えば、シートは、紙シート、ティッシュシート、板シート、または製紙工程によって製造される他の様々な種類のシートでもよい。例えば、付与される化学特性が、より効果的な方法で「インク」を紙に吸着可能にしてもよい。
【0010】
「NADH」は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを意味し、その還元型および/またはその誘導体である。
【0011】
「ATP」は、アデノシン三リン酸を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上述のように、製紙工程に加える1またはそれ以上の表面添加剤は、蛍光定量に基づくプロトコルによって追跡される。これには、蛍光にさらされる媒体が蛍光定量の測定に適している必要があり、例えば全体のコーティング薄膜深さが励起されて発光が集約される。当業者は、不適当な実験をすることなくこれを測定できる。
【0013】
蛍光定量プロトコルは、下記の:(1)1またはそれ以上の表面添加剤が本質的に蛍光することが出来るおよび/または、例えば蛍光成分の混合、システム内分子との反応、または本質的な性質を除く他の手段によって、蛍光するように改良する方法と、(2)1またはそれ以上の不活性蛍光トレーサが、既知の割合で表面添加剤と共に加えられる方法と、または(3)その組み合わせの方法と、を含む。
【0014】
表面添加剤が蛍光できる場合、蛍光はコーティングにおける表面添加剤の濃度/表面添加剤を含むコーティング厚さと直接的に関係付けられ、例えば表面添加剤の濃度および/または表面添加剤を含むコーティング厚さによって蛍光強度を較正することにより関係付けられる。当業者は、不適当な実験をすることなくこの工程を実施することができる。
【0015】
一実施形態では、表面添加剤は本質的に蛍光性である。
【0016】
他の実施形態では、蛍光成分が、共有結合的に非蛍光の表面添加剤に付帯されてもよい。これにより、機能的な表面添加剤は蛍光特性を有する。
【0017】
不活性蛍光トレーサが含まれる場合、不活性蛍光トレーサは既知の割合で表面添加剤と共に加えられる。表面添加剤の量または表面添加剤を含むコーティングの厚さは、不活性蛍光トレーサの蛍光から推量され、例えば、シートのコーティングにおける添加剤の濃度、および/またはシートの添加剤を含むコーティングの厚さによって蛍光強度を較正することにより示される。当業者は、不適当な実験をすることなくこの工程を実施することが出来る。
【0018】
一実施形態では、不活性蛍光トレーサが既知の特定の濃度でコーティング塗料に加えられ、それにより、不活性蛍光トレーサの濃度を測定することによってシートにコーティングする量またはシートのコーティングにおける表面添加剤が推量されてもよい。
【0019】
蛍光する表面添加剤と不活性蛍光トレーサの両方を監視することも可能である。シートにコーティングする量、またはシートにコーティングする表面添加剤は、不活性蛍光トレーサの蛍光および表面添加物の蛍光から推量され、シートにコーティングする添加剤の濃度、および/またはシートの添加剤を含むコーティングの厚さによって蛍光強度を較正することによって示される。当業者は、不適当な実験をすることなくこの工程を実施することが出来る。
【0020】
様々な種類の1またはそれ以上の不活性蛍光トレーサが、本発明に利用されてもよい。
【0021】
当業者にとって、不活性蛍光トレーサが何であるかは公知である。
【0022】
一実施形態では、不活性蛍光トレーサは、製紙工程における様々な構成部品と化学的に非反応性であり、かつ経時劣化しない物質である。適用される全ての濃度水準でのシステムにおいて、完全に可溶性である。蛍光強度は、常に/概ねその濃度と比例しており、かつシステムによって消光されない、あるいは減少しない。
【0023】
他の実施形態では、不活性蛍光トレーサは、製紙工程における様々な他の化学的性質によって、あまりまたは殆ど影響されない不活性蛍光トレーサである。「あまりまたは殆ど影響されない」が表す状態を定量化すると、この表現は、製紙工程において通常起こる状況の下では、その蛍光シグナルにおける不活性蛍光化合物は10%以上の変化を有しないことを意味する。製紙工程において通常起こる状況は、製紙工程の当業者には公知である。
【0024】
他の実施形態では、不活性蛍光トレーサの望ましい特性は、好適には:高水溶性、優れた化学的安定性、処理できる波長において有効な蛍光特性(例えば、シート/紙シート/板構成材における他の添加剤によって消光しない)を具え、かつ一般的な光学的増白剤がある状態、例えば、光学的増白剤と不活性蛍光トレーサ間の干渉を防ぐための蛍光増白剤の波長の外側から監視されうる。
【0025】
他の実施形態では、不活性蛍光トレーサはFDA(食品医薬局)認可のトレーサであって、例えば食料品包装に必要とされる。
【0026】
一実施形態では、1またはそれ以上の不活性蛍光トレーサは、下記の少なくとも1からなるグループから選択される。このグループは、フルオレセインまたはフルオレセイン誘導体、ローダミンまたはローダミン誘導体、ナフタリンスルホン酸塩、ピレンスルホン酸塩、スチルベンスルホン酸塩、ビフェニルスルホン酸塩、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、ビタミンA(レチノール)、ビタミンB2(リボフラビン)、ビタミンB6(ピリドキシン)、ビタミンE(αトコフェロール)、NADH、ATP、エトキシキン、カフェイン、バニリン、ナフタリンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、フェニルスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、スルホン化リグニン、以下のナフタリンスルホン酸、ピレンスルホン酸、ビフェニルスルホン酸、またはスチルベンスルホン酸の成分の少なくとも1を含む重合体である。
【0027】
製紙工程によって、不活性蛍光トレーサの最適濃度は異なる。当業者は、不適当な実験をすることなく不活性蛍光トレーサの量を決めることが可能である。好適には、例えば澱粉の場合、不活性蛍光トレーサが高濃度の方が不活性蛍光トレーサが低濃度であるよりもよく作用する。
【0028】
使用する蛍光計は、不伝導性のシートの表面上に適用された薄いコーティングの厚みを測定するのに望ましいため、反射率を基にした蛍光計であるべきである。1またはそれ以上が利用されてもよい。
【0029】
反射率を基にした蛍光計は、Nalco Company社または、フロリダ州DunedinのOcean Optics社から入手可能である。
【0030】
反射率を基にした蛍光計の一実施形態の図を、図1に示す。反射率蛍光計は、シートのトレーサを励起させ、かつ反射した蛍光を監視するために光ファイバを使用する。好適な光源は、LEDといった、励起光を供給するキセノンフラッシュランプまたはディスチャージランプである。未処理の光源は、蛍光発光部において必要のない波長を除去する好適な励起フィルタ(Semrock社/Andover社から入手可能)によって選別される。光は90度で反射されて、異なる方向に新しい光線を発する二色性フィルタによってさらに選別される。この光線は、適当なレンズによって光ファイバケーブルの中心に集束される。光ファイバの他端部は、表面部を蛍光発光させて明るくするために、紙シートの表面に近接または接触して配置される。二色性フィルタに視準および送り返すレンズに反射光を伝送する同ファイバによって発光は捕捉される。反射した励起光は光源に反射し返されるが、蛍光は蛍光フィルタをそのまま通過する。光ダイオードまたは光電子増倍管といった好適な光検出器は、フィルタを透過した光を検出する。変化する光源強度を補正するために、任意の基準検出器が使用されてもよい。
【0031】
反射率を基にした蛍光計の他の設計は、当業者には明らかである。
【0032】
様々な種類の表面添加剤が、本発明において利用されてもよい。
【0033】
一実施形態では、表面添加剤は下記の少なくとも1からなるグループから選択される。このグループは、澱粉、色素、接着剤、可塑剤、および紙/板シートの物理的性質を改善する他の添加剤であり、この物理的性質は表面強度、光沢、印刷適性、防水性、または以後のコーティングへの付着性を含む。
【0034】
他の実施形態では、表面添加剤は、共有結合的に結合された蛍光成分を含む。
【0035】
他の実施形態では、澱粉は、共有結合的に結合された蛍光成分を含む。
【0036】
表面添加剤は、製紙工程における様々な段階で加えられてもよい。
【0037】
一実施形態では、表面添加剤は、製紙工程の形成工程と製紙工程のプレス工程との間で加えられてもよい。
【0038】
他の実施形態では、表面添加剤は、製紙工程のウェットエンド工程で加えられてもよい。
【0039】
他の実施形態では、表面添加剤は、ウォーターボックスとシートとの間またはその時点で、製紙工程に加えられてもよい。
【0040】
シートの蛍光は、製紙工程の様々な箇所において測定されてもよい。
【0041】
一実施形態では、蛍光は、プレス工程の後のいくつかの箇所において測定される。
【0042】
他の実施形態では、蛍光は、製紙工程の乾燥工程の後に測定される。
【0043】
他の実施形態では、蛍光は、形成工程における乾燥ラインの後に測定される。
【0044】
他の実施形態では、蛍光は、プレス工程の前後で測定される。
【0045】
他の実施形態では、既知の割合で澱粉と共に加えられた、共有結合的に結合された蛍光成分および/または不活性蛍光トレーサの蛍光を含む澱粉の蛍光は、製紙工程の乾燥工程の後かつコーティング工程の前に測定されてもよい。
【0046】
他の実施形態では、既知の割合で表面添加剤に加えられた前記表面添加剤の蛍光および/または不活性蛍光トレーサの蛍光は、澱粉を除いて製紙工程のコーティング工程の後に測定される。
【0047】
蛍光は固定箇所(1か所)、例えば縦方向における測定法、または複数の箇所、例えば紙シートの移動方向に対して横方向に、シートの端から端まで数か所を走査することにより測定されてもよい。反射率蛍光計は、この作業を行うために様々な方法で利用されてもよい。当業者は、この作業を行う様々な方法を認識するであろう。
【0048】
一実施形態では、蛍光は、1か所または複数箇所で測定される。
【0049】
他の実施形態では、蛍光計は、縦方向において、例えば固定箇所に配置されて測定するように構成されてもよい。
【0050】
他の実施形態では、複数箇所による測定法は、前記製紙工程において前記シートの方向に対して横方法に蛍光計を走査することにより実施され、輝度または斤量検出器のような他のシート監視装置による方法と似ている。
【0051】
他の実施形態では、蛍光計は、オンライン測定法が利用できるように構成される。
【0052】
制御装置は、上述のプロトコルを実行するために使用されてもよい。
【0053】
1またはそれ以上の制御装置は蛍光計と通信し、前記蛍光測定値を収集するようアルゴリズムでプログラムされて、蛍光できる場合は表面添加剤の蛍光量および/またはシートの不活性蛍光トレーサと、シートのコーティングにおける表面添加剤の濃度および/またはシートのコーティング厚さとを関係付けて、かつ予め決めたプロトコルと一致するシートのコーティング厚さおよび/またはシートのコーティングにおける表面添加剤の濃度に応じて、製紙工程に加える表面添加剤の量を任意に調整する。
【0054】
シートのコーティング厚さ、および/またはシートのコーティングにおける表面添加剤の濃度に応じて製紙工程に加えられる表面添加剤の量の調整は、様々な方法で実施されうる。
【0055】
上述したように、制御装置がこの反応を実施、または製紙工程の作業者を通して手動で実施されてもよい。
【0056】
この調整は、様々な手段で実施されうる。
【0057】
一実施形態では、紙シートに表面添加剤を供給する速度を調整するスプレーブームを使用することにより、調整が実施されうる。
【0058】
他の実施形態では、誰もが、前記製紙工程における前記シートの方向に対して、横方向に蛍光計を走査した蛍光測定値に基づいて、シート全体にわたる複数の範囲に、独立して添加剤の供給速度を調整しうる。
【0059】
他の実施形態では、誰もが、抄紙機を通るシート速度、および/またはシートの湿気といった製紙工程パラメータを調整しうる。
【0060】
他の実施形態では、所望の厚さを維持、製造トン数速度を最大化、あるいは添加剤または電力の過使用量を最小化するために、サイズプレス測定の設定がシートのコーティング厚さ、および/またはシートのコーティングにおける表面添加剤の濃度に応じて調整されうる。
【0061】
下記の例示は限定ではない。
【実施例】
【0062】
プロトコル
コーティング重量またはコーティング厚さ試験は、下記の標準試験プロトコルで行われた。様々なコーティング固形物を含むいくつかのコーティング溶液が、試験見本シートの表面に適用された。好適には、この固形物含有量および不活性蛍光トレーサ比率は、すべての溶液において一定に保たれた。それぞれの見本シートのコーティング重量は、様々なコーティング手法に用いるコーティング適用時間で変動する。乾燥の後、乾燥コーティング重量、またはピックアップ量が、重量差によって測定された。全ての各見本シートが、コーティング適用前後に計量され、乾燥コーティング重量は重量差から算出された。乾燥澱粉薄膜の蛍光強度が、所定の見本シートのいくつかの位置で測定された。そして、それぞれの見本シートに単一の蛍光強度値を与えるために、一連の蛍光強度は平均値が取られた。2の異なる蛍光計が、それぞれの見本シートの蛍光強度を測定するのに使用された。
【実施例1】
【0063】
上述したプロトコルに沿って、量を徐々に増やした澱粉固形物を含む3の澱粉溶液で試験が実施されたが、澱粉および不活性蛍光トレーサ比率は一定に保たれた。それぞれの試験の下地は、コーティングされていない21か所の紙板シートであった。それぞれの溶液は、手作業による適用方法によって、4の異なる厚さで別個の見本シートに適用された。また、不活性蛍光トレーサを含まない第4の澱粉溶液も、追跡される溶液と比較するために一連の見本シートに適用された。この試験において使用された半加工品は、コーティングされていない見本シートであった。
【0064】
図2は、蛍光強度(任意の単位−相対蛍光単位「RFU」)に対してプロットされた澱粉乾燥コーティング重量(g/mのピックアップ量)を示す。それぞれの点は、各見本シートに対応する。図2は、一連の見本シート全体の測定された蛍光強度が、プロット範囲対角線に沿った線に位置することを示している。全ての点における線形回帰は、澱粉乾燥ピックアップ量と、蛍光強度によって測定されるような薄膜に存在する不活性蛍光トレーサの量の間の、直接的かつ信頼性の高い相関関係を非常に明確に示している。この回帰曲線は、0に非常に近いところでy軸と交差し、R係数は0.96より大きい。いくつかの事例では、1点がこの線から著しく離れている。同様の逸脱点が2の異なる蛍光計でも確認されたが、これは見本シートの特性であって、装置に関連した誤差ではないことを示している。このような点は、巻き取り紙の澱粉薄膜における不具合が原因で起こりうる。このデータは、コーティング不具合が、本願発明の方法で検出されうることを実証している。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
製紙工程に追加する1またはそれ以上の表面添加剤を監視および任意に制御する方法において、下記の:
a.1またはそれ以上の表面添加剤の既知量のみ、または既知の割合で1またはそれ以上の不活性蛍光トレーサの既知量と共に製紙工程に加えるステップであって、前記表面添加剤が蛍光できる場合のみ、前記表面添加剤が単独で加えられるステップと、
b.前記表面添加剤を加えた後の時点およびシートが形成された後に、前記表面添加剤の蛍光および/または1またはそれ以上の不活性蛍光トレーサを測定するステップであって、蛍光できる場合のみ前記表面添加剤が測定され、かつ反射率を基にした蛍光計で蛍光が測定されるステップと、
c.蛍光できる場合のみ前記表面添加剤の蛍光量および/またはシートの不活性蛍光トレーサと、シートのコーティングにおける前記表面添加剤の濃度および/またはシートのコーティング厚さとを関係付けるステップと、
d.シートの前記コーティング厚さおよび/またはシートのコーティングにおける表面添加剤の濃度に応じて、製紙工程に加える前記表面添加剤の量を調整することにより、前記製紙工程に加える1またはそれ以上の前記表面添加剤を任意に制御するステップと、
を具えることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記シートが、紙シートまたは板シートであることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、前記表面添加剤が、下記の少なくとも1からなるグループから選択され、当該グループが澱粉、色素、接着剤、可塑剤、および紙/板シートの物理的性質を改善する他の添加剤であって、この物理的性質が表面強度、光沢、印刷適性、防水性、または以後のコーティングへの付着性を含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、1またはそれ以上の前記表面添加剤が、共有結合的に結合された蛍光成分を含むことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項3に記載の方法において、前記澱粉が、共有結合的に結合された蛍光成分を含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、前記不活性蛍光トレーサが下記の少なくとも1からなるグループから選択され、当該グループがフルオレセインまたはフルオレセイン誘導体、ローダミンまたはローダミン誘導体、ナフタリンスルホン酸塩、ピレンスルホン酸塩、スチルベンスルホン酸塩、ビフェニルスルホン酸塩、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、ビタミンA(レチノール)、ビタミンB2(リボフラビン)、ビタミンB6(ピリドキシン)、ビタミンE(αトコフェロール)、NADH、ATP、エトキシキン、カフェイン、バニリン、ナフタリンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、フェニルスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、スルホン化リグニン、以下のナフタリンスルホン酸、ピレンスルホン酸、ビフェニルスルホン酸、またはスチルベンスルホン酸の成分の少なくとも1を含む重合体であることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法において、前記表面添加剤が、製紙工程の形成工程と製紙工程のプレス工程との間またはその時点において加えられることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、前記表面添加剤が、製紙工程のウェットエンド工程において加えられることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法において、前記表面添加剤が、ウォーターボックスとシートとの間またはその時点において加えられることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法において、前記蛍光が、前記プレス工程の後のいくつかの箇所において測定されることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法において、前記蛍光が、製紙工程の乾燥工程の後に測定されることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法において、前記蛍光が、形成工程における乾燥ラインの後に測定されることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法において、前記蛍光が、前記プレス工程の前後で測定されることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項5に記載の方法において、前記澱粉の前記蛍光および/または既知の割合で前記澱粉と共に加えられた不活性蛍光トレーサが、製紙工程の乾燥工程の後およびコーティング工程の前に測定されることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法において、前記表面添加剤および/または既知の割合で前記表面添加剤と共に加えられる不活性蛍光トレーサが、澱粉を除いて製紙工程のコーティング工程の後に測定されることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法において、蛍光が1か所または複数箇所において測定されることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法において、複数箇所での測定が、前記製紙工程における前記シートの方向に対して横方向に蛍光計を走査することにより実施されることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項1に記載の方法において、1またはそれ以上の制御装置が前記蛍光計と通信して、前記蛍光測定値を収集するためのアルゴリズムでプログラムされ、前記表面添加剤の前記蛍光量および/またはシートの不活性蛍光トレーサと、シートのコーティングにおける前記表面添加剤の前記濃度および/またはシートのコーティング厚さとを関連付けて、かつ任意に前記製紙工程に加える前記表面添加剤の量を調整し、パラメータを操作する抄紙機を調整し、パドル型の設定またはサイズプレス測定の調整、あるいは予め決められたプロトコルと一致するシートの前記コーティング厚さおよび/またはシートのコーティングにおける前記表面添加剤の濃度に応じて、それを組み合わせることを特徴とする方法。


【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−503621(P2011−503621A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−534193(P2010−534193)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【国際出願番号】PCT/US2008/083472
【国際公開番号】WO2009/067382
【国際公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(507248837)ナルコ カンパニー (91)
【Fターム(参考)】