説明

製造装置、製造装置の制御システム、製造装置の制御方法

【課題】外乱による影響を受けることなく、また、外部へ電磁的なノイズを放出することなく、省スペースかつ省電力にて、製造装置における無線による制御情報の伝達を実現する。
【解決手段】台座2a、ロボットアーム2b、関節2cおよびロボットハンド5を備えたロボット2において、ロボットハンド5に、無線スレーブ3および当該無線スレーブ3およびロボットハンド5に電力を供給する電力供給2次側部4を搭載するとともに、無線スレーブ3に無線電波7cでロボットハンド5の制御指令を与える無線マスタ7を含むロボット2の作業空間を、無線シールド機能を有するカバー1で覆い、カバー1の外部近傍には、非シールド部1aを通じて電力供給2次側部4に非接触で電力を供給する電力供給1次側部8を配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造装置およびその制御技術に関し、たとえば、無線通信による製造装置の制御等に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、製造装置の分野では、制御対象の可動部が多数存在する場合、配線による個々の可動部に対する制御経路の構築方法では当該配線の引き回し経路が長大かつ煩雑となる、という技術的課題がある。
【0003】
このため、たとえば、特許文献1(特開2002−212844号公報)では、多数の撚糸を形成する錘の回転速度を個別に監視制御する繊維機械の制御システムにおいて、制御装置(ホストコンピュータ)の側に接続された無線マスタと、所定数の錘の駆動モータを集約して管理する集約ボードに設けられた無線スレーブとの間で無線通信により制御情報の授受を行う構成として、多数の錘の駆動モータの制御に伴う配線経路の大幅な簡略化を実現しようとする技術が開示されている。
【0004】
しかしながら、一般的に制御情報の伝達手段として特許文献1のように無線を使用する場合、電磁ノイズ等の外乱を発生する設備が共存している場合には、通信障害によって制御の混乱が起きる懸念がある。
【0005】
また、制御情報の伝達手段として用いられている無線電波自体も他の製造装置への影響が皆無であるとは言えない。
さらに、制御に用いられる無線電波を放射する無線アンテナについても、製造装置が設置された建屋全体の広い範囲に無線通信を行う必要があるため、必要以上に大型で高出力のものが必要となる懸念がある。
【特許文献1】特開2002−212844号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、外乱による影響を受けることなく、また、外部へ電磁的なノイズを放出することなく、省スペースかつ省電力にて、製造装置における無線による制御情報の伝達を実現することが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の観点は、所望の製造工程を実施する設備可動部と、
前記設備可動部に設けられた第1無線通信手段および前記第1無線通信手段に対する指令を発する第2無線通信手段からなり、前記設備可動部を制御する無線ユニットと、
前記設備可動部と前記無線ユニットの少なくとも一部とが収容される閉空間を構成する隠蔽手段と、
を含む製造装置を提供する。
【0008】
本発明の第2の観点は、第1の観点に記載の製造装置において、
さらに、前記設備可動部および前記第1無線通信手段に非接触で電力を供給する非接触電力供給システムを備えた製造装置を提供する。
【0009】
本発明の第3の観点は、第1の観点または第2の観点に記載の製造装置において、
前記隠蔽手段の外部近傍に、前記無線ユニットの前記第2無線通信手段を構成する無線アンテナが配置されている製造装置を提供する。
【0010】
本発明の第4の観点は、第2の観点に記載の製造装置において、
前記非接触電力供給システムは、前記設備可動部に設けられた電力供給2次側部と、前記隠蔽手段の外部に設けられ、前記電力供給2次側部に非接触で電力を供給する電力供給1次側部からなり、
前記隠蔽手段の外部近傍に、前記電力供給1次側部を構成する給電用アンテナが配置されている製造装置を提供する。
【0011】
本発明の第5の観点は、第1の観点に記載の製造装置において、
前記隠蔽手段には無線シールドが施されている製造装置を提供する。
本発明の第6の観点は、第3の観点または第4の観点に記載の製造装置において、前記無線システムを構成する前記第2無線通信手段の前記無線アンテナと、前記非接触電力供給システムの前記給電用アンテナが、共通の共用アンテナからなる製造装置を提供する。
【0012】
本発明の第7の観点は、第1の観点に記載の製造装置において、
前記設備可動部は、ロボットアームに支持されたロボットハンドである製造装置を提供する。
【0013】
本発明の第8の観点は、所望の製造工程を実施する製造装置の設備可動部に設けられた第1無線通信手段および前記第1無線通信手段に対する指令を発する第2無線通信手段からなり、前記設備可動部を制御する無線ユニットと、
前記設備可動部と前記無線ユニットの少なくとも一部とが収容される閉空間を構成する隠蔽手段と、
を含む製造装置の制御システムを提供する。
【0014】
本発明の第9の観点は、第8の観点に記載の製造装置の制御システムにおいて、
さらに、前記設備可動部および前記第1無線通信手段に非接触で電力を供給する非接触電力供給システムを備えた製造装置の制御システムを提供する。
【0015】
本発明の第10の観点は、第8の観点または第9の観点に記載の製造装置の制御システムにおいて、
前記隠蔽手段の外部近傍には、前記無線ユニットの前記第2無線通信手段を構成する無線アンテナを配している製造装置の制御システムを提供する。
【0016】
本発明の第11の観点は、第9の観点に記載の製造装置の制御システムにおいて、
前記非接触電力供給システムは、前記設備可動部に設けられた電力供給2次側部と、前記隠蔽手段の外部に設けられ、前記電力供給2次側部に非接触で電力を供給する電力供給1次側部からなり、
前記隠蔽手段の外部近傍には、前記電力供給1次側部を構成する給電用アンテナを配している製造装置の制御システムを提供する。
【0017】
本発明の第12の観点は、第8の観点に記載の製造装置の制御システムにおいて、
前記隠蔽手段に、無線シールドが施されている製造装置の制御システムを提供する。
本発明の第13の観点は、第10の観点または第11の観点に記載の製造装置の制御システムにおいて、前記無線システムを構成する前記第2無線通信手段の前記無線アンテナと、前記非接触電力供給システムの前記給電用アンテナが、共通の共用アンテナからなる製造装置の制御システムを提供する。
【0018】
本発明の第14の観点は、第8の観点に記載の製造装置の制御システムにおいて、
前記設備可動部は、ロボットアームに支持されたロボットハンドである製造装置の制御システムを提供する。
【0019】
本発明の第15の観点は、所望の製造工程を実施する製造装置の設備可動部に設けられた第1無線通信手段および前記第1無線通信手段に対する指令を発する第2無線通信手段からなり前記設備可動部を制御する無線ユニットの少なくとも一部、および前記設備可動部を、隠蔽手段で構成される密閉空間に収容する製造装置の制御方法を提供する。
【0020】
本発明の第16の観点は、第15の観点に記載の製造装置の制御方法において、
さらに、前記隠蔽手段の外部から前記設備可動部および前記第1無線通信手段に非接触で電力を供給する製造装置の制御方法を提供する。
【0021】
本発明の第17の観点は、第15の観点または第16の観点に記載の製造装置の制御方法において、
前記隠蔽手段の外部近傍には、前記無線ユニットの前記第2無線通信手段を構成する無線アンテナを配置する製造装置の制御方法を提供する。
【0022】
本発明の第18の観点は、第16の観点に記載の製造装置の制御方法において、
前記隠蔽手段の外部近傍には、前記設備可動部および前記第1無線通信手段に非接触で電力を供給するための給電用アンテナを配置する製造装置の制御方法を提供する。
【0023】
本発明の第19の観点は、第15の観点または第16の観点に記載の製造装置の制御方法において、前記無線システムを構成する前記第2無線通信手段の前記無線アンテナおよび前記給電用アンテナとして共通の共用アンテナを用いる製造装置の制御方法を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、外乱による影響を受けることなく、また、外部へ電磁的なノイズを放出することなく、省スペースかつ省電力にて、製造装置における無線による制御情報の伝達を実現することが可能な技術を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
まず、本実施の形態の概略について説明し、その後、図面を参照して詳細に説明する。
本実施の形態の各態様では、製造装置をカバーで覆いカバー内で無線通信を行う。これにより他の製造装置からの外乱を防ぐこと、他設備へノイズを出さないこと、省スペースであるため小型で且つ省電力の無線ユニットを実現すること、が可能な製造装置の制御システムを提供する。
【0026】
すなわち、第1の態様は、設備可動部と、無線ユニットで構成されている製造装置において、無線ユニットで入出力部分が制御でき、製造装置が閉じられた空間内で無線通信を行う製造装置の制御システムを提供する。
【0027】
第2の態様は、第1の態様に記載の製造装置の制御システムにおいて、設備の可動部に、非接触電力供給システムを搭載して電力を供給する製造装置の制御システムを提供する。
【0028】
第3の態様は、第1の態様に記載のシステムにおいて、閉じられた空間を構成するカバーに、無線アンテナを配した構成の製造装置の制御システムを提供する。
第4の態様は、第1の態様に記載のシステムにおいて、閉じられた空間を構成するカバーに、給電用アンテナを配した構成の製造装置の制御システムを提供する。
【0029】
第5の態様は、第1の態様に記載のシステムにおいて、閉じられた空間を構成するカバーに、無線シールドを施した構成の製造装置の制御システムを提供する。
第6の態様は、第1の態様に記載のシステムにおいて、無線と給電システムを同一のアンテナで機能させる構成の製造装置の制御システムを提供する。
【0030】
第1の態様にかかる製造装置の制御システムによれば、製造装置内をカバーで覆い無線ユニットで入出力機器を制御することができる。
第2の態様にかかる製造装置の制御システムによれば、非接触電力供給機にて電力を供給し、無線ユニットと入出力制御をすることができる。
【0031】
第3の態様にかかる製造装置の制御システムによれば、カバー内に無線アンテナを配置し無線通信を行うことができる。
第4の態様にかかる製造装置の制御システムによれば、カバー内に給電アンテナを配置し無線通信を行うことができる。
【0032】
第5の態様にかかる製造装置の制御システムによれば、カバーにシールド機構を施し、安定した無線通信を行うことができる。
第6の態様にかかる製造装置の制御システムによれば、無線ユニットと非接触電力供給機を同一アンテナで通信することができる。
【0033】
すなわち、本実施の形態の製造装置のシステムにおいて、他製造装置からの外乱を防ぐことと、他設備へノイズを出さないことと、省スペースであるため小型で且つ省電力の無線ユニットを実現できること、が可能な製造装置の制御システムを提供することができる。また、非接触電力供給システムを搭載することで、無線スレーブへケーブルレスで電源供給することができると同時に同一のアンテナで電力供給と無線通信も同時に行うことができる。
【0034】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の一実施の形態である製造装置の制御システムの構成の一例を示す説明図であり、図2は、その制御系の構成例を示す概念図である。
【0035】
本実施の形態の製造装置は、一例としてロボット2からなる。このロボット2は、たとえば、台座2a、ロボットアーム2b、関節2c、ロボットハンド5(設備可動部)からなる。
【0036】
台座2aは、ロボット2の設置場所の床面に固定されている。この台座2aには、複数の関節2cを介して複数のロボットアーム2bが任意に屈曲可能に支持されており、このロボットアーム2bの先端部には、関節2cを介してロボットハンド5が着脱自在に固定されている。
【0037】
本実施の形態の場合、一例として、ロボットハンド5は、ワーク6を把持して移動させる作業を行う。
ロボットハンド5は、たとえば、ロボットアーム2bの先端部にユーティリティとして供給される図示しない空気圧によって機械的な把持動作等を行い、この空気圧を制御するための図示しない電磁弁やセンサを制御する後述のロボットハンド制御基板5aを備えている。
【0038】
この場合、ロボットハンド5には、ロボットハンド5の制御を行う無線スレーブ3(第1無線通信手段)が搭載され、ロボット2の近傍には、この無線スレーブ3との間でロボットハンド5の制御情報の送受信を無線で行う無線マスタ7(第2無線通信手段)が設けられ、この無線スレーブ3および無線マスタ7が無線ユニットを構成している。
【0039】
すなわち無線マスタ7から送信される制御情報を無線スレーブ3が受信してロボットハンド5に伝達することで、ロボットハンド5の動作が制御される。
本実施の形態のように、ロボットハンド5を無線スレーブ3によって無線マスタ7から無線にて制御を行うことにより、ロボットハンド5の回りに、外部の無線マスタ7(制御装置21)との間における制御線を引き回す必要がなく、ロボットハンド5の可動範囲が広がるとともに動作の自由度も大きくできる。
【0040】
たとえば、デスクトップファクトリに代表されるように、ワーク6が小寸法の場合には、当該ワーク6のサイズに合わせて、ロボット2やロボットハンド5のサイズを卓上サイズに小型化する場合、本実施の形態のように、無線マスタ7からの無線制御によって無線スレーブ3を介してワイヤレスでロボットハンド5を制御することによる当該ロボットハンド5の可動範囲や動作の自由度等の拡大効果はより顕著なものとなる。
【0041】
また、ロボットハンド5にワイヤレスの無線スレーブ3および電力供給2次側部4を搭載していることにより、ロボットハンド5の交換に際しても、配線等の取り外しや接続等の煩雑な作業は不要であり、たとえば、ロボットハンド5が空気圧動作の場合は、ロボットハンド5を単位として空気圧配管の着脱のみで簡単かつ短時間に交換が可能であり、ロボットハンド5を含む製造システムの構築、組替、保守管理作業等を簡略化できる利点がある。
【0042】
また、ロボット2およびワーク6、さらには無線マスタ7の設置空間は、カバー1(隠蔽手段)によって覆われ、このカバー1の中で、ロボット2が作動するとともに、無線マスタ7と無線スレーブ3との間における無線の送受信も行われる。
【0043】
このカバー1には、無線シールドが施されている。具体的には、一例として、カバー1を、所望の編み目ピッチの導体メッシュ(網)、パンチメタル、導電性の透明な樹脂、導体板等で構成することにより、外部からカバー1の内部のロボット2の動作を視認可能にしつつ、カバー1による無線シールド機能を実現する。
【0044】
さらに、本実施の形態の場合には、ロボットハンド5には、当該ロボットハンド5および無線スレーブ3に電力を供給するための電力供給2次側部4が搭載され、カバー1の外側には、この電力供給2次側部4に対応した電力供給1次側部8が配置されている。
【0045】
カバー1における電力供給1次側部8の近傍領域には、たとえば絶縁性の樹脂等で構成される非シールド部1aが設けられており、電力供給1次側部8から放射される後述のエネルギー伝達媒体8cが、この非シールド部1aを通じてカバー1を円滑に通過することが可能になっている。
【0046】
ただし、この非シールド部1aの形状や大きさは、カバー1によるロボット2の作業空間のシールド機能を損なわない形状や大きさに設定されている。
そして、電力供給1次側部8から電力供給2次側部4に対してエネルギー伝達媒体8cを介して非接触で、無線スレーブ3およびロボットハンド5を作動させるための電力供給が行われるようになっている。
【0047】
なお、ロボットハンド5の動作や制御に必要な電力は、たとえば、ロボットハンド5の機械的な動作のエネルギー源として流体圧を用いる場合、当該流体圧を制御するための図示しないセンサや電磁弁等を作動させるための比較的小さい電力である。
【0048】
従って、電力供給1次側部8および電力供給2次側部4による非接触電力供給にて充分に賄うことができる。
ここで、図2を参照して、本実施の形態における無線スレーブ3、無線マスタ7、および電力供給2次側部4、電力供給1次側部8の構成例を説明する。
【0049】
図2に例示されるように、本実施の形態の無線マスタ7は、無線マスタアンテナ7bおよび無線マスタ送受信処理部7aを備えている。
無線マスタ送受信処理部7aは、外部の制御コンピュータ等からなる制御装置21からロボットハンド制御線21bを介して入力されるロボットハンド5の制御指令を無線電波7cに変換(変調)して無線マスタアンテナ7bから無線スレーブ3に送信する動作を行う。
【0050】
なお、特に図示しないが、制御装置21は、ロボットアーム制御線21aを介して台座2aに設けられた図示しないロボットアーム制御基板を制御することで、ロボット2のロボットアーム2bの制御も行う機能も備えている。
【0051】
すなわち、制御装置21は、ロボット2のロボットアーム2bと、ロボットハンド5の連携動作を制御することにより、ロボット2に対してロボットハンド5を用いた所望の作業を行わせる。
【0052】
一方、無線スレーブ3は、無線スレーブアンテナ3b、無線スレーブ送受信処理部3aを備えている。
無線スレーブ送受信処理部3aは、無線スレーブアンテナ3bを介して受信した無線電波7cを元の制御指令に復調して、ロボットハンド5の内部に設けられ、当該ロボットハンド5を制御するロボットハンド制御基板5aに伝達する処理を行う。
【0053】
一方、カバー1の外部に設けられた電力供給1次側部8は、たとえば、電力−媒体変換部8aと給電用アンテナ8bからなる。
電力−媒体変換部8aは、外部の電源22から供給される電力を、たとえば、マイクロ波や高周波や光等の電磁波からなるエネルギー伝達媒体8cに変換し、給電用アンテナ8bを経由して外部に放射する動作を行う。
【0054】
また、電力供給2次側部4は、たとえば、媒体−電力変換部4aおよび受電用アンテナ4b、電力蓄積部4cからなる。
媒体−電力変換部4aは、受電用アンテナ4bを介して電力供給1次側部8から受信したエネルギー伝達媒体8cである電磁波を電力に変換して電力蓄積部4cに蓄積し、必要に応じて無線スレーブ3の無線スレーブ送受信処理部3aおよびロボットハンド5(ロボットハンド制御基板5a)に供給する。
【0055】
電力蓄積部4cは、たとえば、コンデンサや、充電可能な二次電池等で構成され、媒体−電力変換部4aが電力供給1次側部8から受信した電力の蓄積および放出を行う。
以下、本実施の形態の作用を説明する。本実施の形態におけるロボット2の一連の動作は、一例として以下のようになる。
【0056】
制御装置21は、ロボットアーム制御線21aを介してロボット2のロボットアーム2bの動作を制御するとともに、無線マスタ7から無線スレーブ3に送信される無線電波7cを介して指令を与えることにより、ロボットハンド5の動作を制御する。
【0057】
すなわち、制御装置21は、無線マスタ7からロボットハンド5の制御情報を無線電波7cとして無線スレーブ3に送信することで、ロボット2のロボットアーム2bとロボットハンド5を連携して動作させ、ワーク6をハンドリングして搬送する動作を行わせる。
【0058】
ロボット2は、必要に応じて無線スレーブ3およびロボットハンド5の給電を行うために、ロボットハンド5に搭載された電力供給2次側部4を電力供給1次側部8に接近するように非シールド部1aの近傍に移動させ、エネルギー伝達媒体8cを介して電力供給1次側部8から電力供給2次側部4への非接触電力供給を行う。このとき供給された電力は電力蓄積部4cに蓄積され、無線スレーブ3およびロボットハンド5に供給される。
【0059】
この場合、無線マスタ7を含むロボット2の作業空間がシールド機能を備えたカバー1によって覆われていることにより、無線マスタ7とロボット2の無線スレーブ3との間で送受信される無線電波7cは、外部に電磁ノイズとして漏洩することが防止される。
【0060】
また、カバー1に覆われていることにより、無線マスタ7と無線スレーブ3との間における無線電波7cによる通信が外乱電波の影響を受けて阻害されることが確実に防止され、無線マスタ7から無線スレーブ3を経由して無線電波7cによりロボットハンド5の動作を確実に制御できる。
【0061】
換言すれば、外乱電波の悪影響や、無線電波7cの電磁ノイズの発生を防止する等の目的で、無線マスタ7を含めたロボット2の作業空間を必要以上に広く確保する必要がなく、無線マスタ7と無線スレーブ3の間における無線電波7cによる制御情報の通信を省スペースで実現することができる。
【0062】
すなわち、外乱による影響を受けることなく、また、外部へ電磁的なノイズを放出することなく、省スペースかつ省電力にて、ロボット2等の製造装置における無線電波7cによる制御情報の伝達を実現することが可能となる。
(実施の形態2)
図3は、本発明の他の実施の形態である製造装置の制御システムの構成例を示す説明図であり、図4は、その制御系の構成例を示すブロック図である。
【0063】
この実施の形態2では、上述の実施の形態1に例示した電力供給1次側部8および無線スレーブ3の機能を兼ね備えた電力供給兼無線通信アンテナマスタ15と、無線マスタ7および無線スレーブ3の機能を兼ね備えた電力供給兼無線通信アンテナマスタ15を備えた点が、上述の実施の形態1と異なっている。
【0064】
すなわち、ロボットハンド5には、電力供給兼無線通信アンテナスレーブ12が搭載され、カバー1の外部近傍には、電力供給兼無線通信アンテナマスタ15が配置されている。
【0065】
図4に例示されるように、電力供給兼無線通信アンテナマスタ15は、無線マスタ送受信処理部15a、電力供給兼無線通信アンテナマスタ15および送信側共用アンテナ15cを備えている。
【0066】
無線マスタ送受信処理部15aは、制御装置21から入力されるロボットハンド5の制御情報を、無線電波7cに変調し、送信側共用アンテナ15cを経由して放射する動作を行う。
【0067】
電力−媒体変換部15bは、電源22から供給される電力をエネルギー伝達媒体8cに変換して、送信側共用アンテナ15cを経由して放射する動作を行う。
一方、電力供給兼無線通信アンテナスレーブ12は、無線スレーブ送受信処理部12a、媒体−電力変換部12b、受信側共用アンテナ12c、電力蓄積部12dを備えている。
【0068】
無線スレーブ送受信処理部12aは、受信側共用アンテナ12cを介して受信される無線電波7cからロボットハンド5の制御情報を復調してロボットハンド制御基板5aに入力する動作を行う。
【0069】
媒体−電力変換部12bは、受信側共用アンテナ12cを経由して受けたエネルギー伝達媒体8cを電力に変換し、電力蓄積部12dに蓄積した後、電力蓄積部12dから無線スレーブ送受信処理部12aおよびロボットハンド5の各部に供給する動作を行う。
【0070】
次に、本実施の形態の製造装置の制御システムの作用について説明する。
ロボット2の一連の動作に関して説明する。ロボット2は、制御装置21によるロボットアーム2bの制御と、電力供給兼無線通信アンテナマスタ15と電力供給兼無線通信アンテナスレーブ12の間の無線電波7cの通信によるロボットハンド5の制御による連携動作によって、ワーク6をハンドリングして搬送する動作を行う。
【0071】
制御装置21は、ロボット2に指示して、必要に応じて、電力供給兼無線通信アンテナスレーブ12を介して無線スレーブ送受信処理部12aおよびロボットハンド5への給電電力を蓄えるために、電力供給兼無線通信アンテナスレーブ12(すなわち非シールド部1a)の近傍へロボットハンド5を移動させる。
【0072】
ロボットハンド5を制御するための無線通信は、電力供給兼無線通信アンテナマスタ15の無線マスタ送受信処理部15aと、電力供給兼無線通信アンテナスレーブ12の無線スレーブ送受信処理部12aとの間の無線電波7cの無線通信で行われる。
【0073】
この場合も、無線マスタ送受信処理部15aと無線スレーブ送受信処理部12aとの間で授受される無線電波7c等の無線通信網は、無線シールド機能を備えたカバー1で覆われており、無線通信を省スペースで実現させている。
【0074】
この実施の形態2の場合には、無線マスタ7と電力供給1次側部8を兼ねる電力供給兼無線通信アンテナマスタ15をカバー1に配置するとともに、無線スレーブ3と電力供給2次側部4を兼ねる電力供給兼無線通信アンテナスレーブ12をロボットハンド5に搭載したことにより、上述の実施の形態1の効果に加えて、より一層の省スペースを実現できる。
【0075】
以上のような本発明の各実施の形態によれば、ロボット2への他の製造装置からの外乱を防ぐことと、ロボット2から他製造設備への電磁ノイズの放出を防ぐこと、省スペースであるため小型で且つ省電力の無線ユニットを実現できる製造装置の制御システムが実現可能となる。
【0076】
なお、本発明は、上述の実施の形態に例示した構成に限らず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
本願の上述の実施の形態から把握される発明を列挙すれば、以下のとおりである。
(付記1)
設備可動部と、無線ユニットで構成されている製造装置において、無線ユニットで入出力部分が制御でき、製造装置が閉じられた空間内で無線通信を行っていること特徴とする製造装置の制御システム。
(付記2)
設備の可動部に、非接触電力供給システムを搭載して電力を供給できることを特徴とする付記1記載の製造装置の制御システム。
(付記3)
付記1記載のシステムにおいて、閉じられた空間を構成するカバーに、無線アンテナを配していることを特徴とする製造装置の制御システム。
(付記4)
付記1記載のシステムにおいて、閉じられた空間を構成するカバーに、給電用アンテナを配していることを特徴とする製造装置の制御システム。
(付記5)
付記1記載のシステムにおいて、閉じられた空間を構成するカバーに、無線シールドを施していることを特徴とする製造装置の制御システム。
(付記6)
付記1記載のシステムにおいて、無線と給電システムを同一のアンテナで機能させることを特徴とする製造装置の制御システム。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の一実施の形態である製造装置の制御システムの構成の一例を示す説明図である。
【図2】その制御系の構成例を示す概念図である。
【図3】本発明の他の実施の形態である製造装置の制御システムの構成例を示す説明図である。
【図4】その制御系の構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0078】
1 カバー
2 ロボット
2a 台座
2b ロボットアーム
2c 関節
3 無線スレーブ
3a 無線スレーブ送受信処理部
3b 無線スレーブアンテナ
4 電力供給2次側部
4a 媒体−電力変換部
4b 受電用アンテナ
5 ロボットハンド
5a ロボットハンド制御基板
6 ワーク
7 無線マスタ
7a 無線マスタ送受信処理部
7b 無線マスタアンテナ
7c 無線電波
8 電力供給1次側部
8a 電力−媒体変換部
8b 給電用アンテナ
8c エネルギー伝達媒体
12 電力供給兼無線通信アンテナスレーブ
12a 無線スレーブ送受信処理部
12b 媒体−電力変換部
12c 受信側共用アンテナ
15 電力供給兼無線通信アンテナマスタ
15a 無線マスタ送受信処理部
15b 電力−媒体変換部
15c 送信側共用アンテナ
21 制御装置
22 電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望の製造工程を実施する設備可動部と、
前記設備可動部に設けられた第1無線通信手段および前記第1無線通信手段に対する指令を発する第2無線通信手段からなり、前記設備可動部を制御する無線ユニットと、
前記設備可動部と前記無線ユニットの少なくとも一部とが収容される閉空間を構成する隠蔽手段と、
を含むことを特徴とする製造装置。
【請求項2】
請求項1記載の製造装置において、
さらに、前記設備可動部および前記第1無線通信手段に非接触で電力を供給する非接触電力供給システムを備えたことを特徴とする製造装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の製造装置において、
前記隠蔽手段の外部近傍に、前記無線ユニットの前記第2無線通信手段を構成する無線アンテナが配置されていることを特徴とする製造装置。
【請求項4】
請求項2記載の製造装置において、
前記非接触電力供給システムは、前記設備可動部に設けられた電力供給2次側部と、前記隠蔽手段の外部に設けられ、前記電力供給2次側部に非接触で電力を供給する電力供給1次側部からなり、
前記隠蔽手段の外部近傍に、前記電力供給1次側部を構成する給電用アンテナが配置されていることを特徴とする製造装置。
【請求項5】
請求項1記載の製造装置において、
前記隠蔽手段には無線シールドが施されていることを特徴とする製造装置。
【請求項6】
請求項3または請求項4記載の製造装置において、前記無線システムを構成する前記第2無線通信手段の前記無線アンテナと、前記非接触電力供給システムの前記給電用アンテナが、共通の共用アンテナからなることを特徴とする製造装置。
【請求項7】
請求項1記載の製造装置において、
前記設備可動部は、ロボットアームに支持されたロボットハンドであることを特徴とする製造装置。
【請求項8】
所望の製造工程を実施する製造装置の設備可動部に設けられた第1無線通信手段および前記第1無線通信手段に対する指令を発する第2無線通信手段からなり、前記設備可動部を制御する無線ユニットと、
前記設備可動部と前記無線ユニットの少なくとも一部とが収容される閉空間を構成する隠蔽手段と、
を含むことを特徴とする製造装置の制御システム。
【請求項9】
請求項8記載の製造装置の制御システムにおいて、
さらに、前記設備可動部および前記第1無線通信手段に非接触で電力を供給する非接触電力供給システムを備えたことを特徴とする製造装置の制御システム。
【請求項10】
請求項8または請求項9記載の製造装置の制御システムにおいて、
前記隠蔽手段の外部近傍には、前記無線ユニットの前記第2無線通信手段を構成する無線アンテナを配していることを特徴とする製造装置の制御システム。
【請求項11】
請求項9記載の製造装置の制御システムにおいて、
前記非接触電力供給システムは、前記設備可動部に設けられた電力供給2次側部と、前記隠蔽手段の外部に設けられ、前記電力供給2次側部に非接触で電力を供給する電力供給1次側部からなり、
前記隠蔽手段の外部近傍には、前記電力供給1次側部を構成する給電用アンテナを配していることを特徴とする製造装置の制御システム。
【請求項12】
請求項8記載の製造装置の制御システムにおいて、
前記隠蔽手段に、無線シールドが施されていることを特徴とする製造装置の制御システム。
【請求項13】
請求項10または請求項11記載の製造装置の制御システムにおいて、前記無線システムを構成する前記第2無線通信手段の前記無線アンテナと、前記非接触電力供給システムの前記給電用アンテナが、共通の共用アンテナからなることを特徴とする製造装置の制御システム。
【請求項14】
請求項8記載の製造装置の制御システムにおいて、
前記設備可動部は、ロボットアームに支持されたロボットハンドであることを特徴とする製造装置の制御システム。
【請求項15】
所望の製造工程を実施する製造装置の設備可動部に設けられた第1無線通信手段および前記第1無線通信手段に対する指令を発する第2無線通信手段からなり前記設備可動部を制御する無線ユニットの少なくとも一部、および前記設備可動部を、隠蔽手段で構成される密閉空間に収容することを特徴とする製造装置の制御方法。
【請求項16】
請求項15記載の製造装置の制御方法において、
さらに、前記隠蔽手段の外部から前記設備可動部および前記第1無線通信手段に非接触で電力を供給することを特徴とする製造装置の制御方法。
【請求項17】
請求項15または請求項16記載の製造装置の制御方法において、
前記隠蔽手段の外部近傍には、前記無線ユニットの前記第2無線通信手段を構成する無線アンテナを配置することを特徴とする製造装置の制御方法。
【請求項18】
請求項16記載の製造装置の制御方法において、
前記隠蔽手段の外部近傍には、前記設備可動部および前記第1無線通信手段に非接触で電力を供給するための給電用アンテナを配置することを特徴とする製造装置の制御方法。
【請求項19】
請求項15または請求項16記載の製造装置の制御方法において、前記無線システムを構成する前記第2無線通信手段の前記無線アンテナおよび前記給電用アンテナとして共通の共用アンテナを用いることを特徴とする製造装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−78325(P2009−78325A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−249958(P2007−249958)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【出願人】(592152266)株式会社KEC (9)
【出願人】(593174870)高島産業株式会社 (24)
【出願人】(397054303)セントラルエンジニアリング株式会社 (6)
【出願人】(307018623)ユー・ディ・テック株式会社 (6)
【Fターム(参考)】