製鉄ダスト等を主原料とする造粒物の製造方法
【課題】水分を含有する製鉄ダストや製鉄スラッジを、特別な乾燥処理を施すことなく適切に造粒し、炉原料に好適な造粒物を製造する。
【解決手段】造粒すべき原料が入れられるドラム1と、ドラム1内を公転する撹拌翼2と、ドラム1内を撹拌翼2とともに公転しつつ自転する撹拌ロータ3を備え、撹拌翼2の公転方向及び公転速度と、撹拌ロータ3の自転速度を可変とした造粒物製造装置を用い、製鉄ダスト等を主体とする原料を、好ましくは撹拌翼2の公転方向及び公転速度と撹拌ロータ3の自転速度を選択し、特定の解砕工程、混合工程、造粒工程、整粒工程、再解砕工程、再整粒工程で順次処理することにより、造粒物を製造する。
【解決手段】造粒すべき原料が入れられるドラム1と、ドラム1内を公転する撹拌翼2と、ドラム1内を撹拌翼2とともに公転しつつ自転する撹拌ロータ3を備え、撹拌翼2の公転方向及び公転速度と、撹拌ロータ3の自転速度を可変とした造粒物製造装置を用い、製鉄ダスト等を主体とする原料を、好ましくは撹拌翼2の公転方向及び公転速度と撹拌ロータ3の自転速度を選択し、特定の解砕工程、混合工程、造粒工程、整粒工程、再解砕工程、再整粒工程で順次処理することにより、造粒物を製造する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鉄ダストや製鉄スラッジを塊状に造粒し、シャフト炉などの炉原料として利用可能な造粒物を製造するための製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄プロセスでは、鋼材表面の酸洗処理において金属分が溶出した廃液が発生し、この廃液中の金属成分が、酸洗スラッジや中和スラッジ等の製鉄スラッジとして回収される。また、製鉄プロセスの種々の工程では、湿式集塵されたダストを脱水することにより高含水の製鉄ダストが生じる。こうした製鉄ダストや製鉄スラッジは、高含水でハンドリングが難しいという問題があるが、一方で、鉄や他の有用な金属(例えば、Ni、Crなど)を含有するものが多く、したがって、製鉄ダストや製鉄スラッジを炉の原料などとして再利用することは非常に有用なことである。
【0003】
製鉄ダストや製鉄スラッジを炉(例えば、シャフト炉、転炉、電気炉、溶融還元炉など)の原料として再利用するためには、それらをブリケットやペレットなどに塊成化する必要がある。しかしながら、製鉄ダストや製鉄スラッジ中の金属分は酸化物や水酸化物の形態で存在するものが多く、微細で親水性が高い。このためフィルタープレスなどによる脱水を行っても、水分を多く含む粘土質状のものとなる場合が多く、取り扱いが困難である。また、これら製鉄ダストや製鉄スラッジを乾燥するには、自然乾燥は困難であるため、ロータリーキルンなどのような専用の乾燥機を用いる必要があり、多量の熱源が必要になるためコスト高になる。
高含水の製鉄ダストや製鉄スラッジを有効利用する技術として、製鉄スラッジを脱水し、乾燥したものに製鉄ダストやスケールを加え、さらにはバインダーを添加して固め、フェロアロイ製造用原料などにする方法が知られている(例えば、特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭52−88519号公報
【特許文献2】特開昭52−88520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この従来技術は、製鉄スラッジを専用の乾燥機で乾燥した上で、乾燥ダストやバインダーなどを加えてブリケットやペレットにする方法であるため、設備コストや運転コストがかかる問題がある。
したがって本発明の目的は、以上のような従来技術の課題を解決し、水分を含有する製鉄ダストや製鉄スラッジを、特別な乾燥処理を施すことなく適切に造粒し、炉原料に好適な造粒物を得ることができる造粒物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記従来技術の課題を解決にするために検討を行った結果、特許第3703640号公報に示されるような混合撹拌型の造粒物製造装置(汚泥の脱水ケーキや建設残土などの再生造粒物の製造装置)を利用し、製鉄ダスト等を主体とする造粒用原料を一連の特定の工程で処理することにより、所望の適正な造粒物が得られることを見出した。
本発明はこのような知見に基づきなされたもので、以下を要旨とするものである。
【0007】
[1]造粒すべき原料が入れられるドラム(1)と、ドラム(1)内を公転する撹拌翼(2)と、ドラム(1)内を撹拌翼(2)とともに公転しつつ自転する撹拌ロータ(3)を備えた造粒物製造装置を用い、
製鉄ダスト又は/及び製鉄スラッジを主体とする原料を、下記(a)〜(f)の工程で順次処理することにより、造粒物を製造することを特徴とする製鉄ダスト等を主原料とする造粒物の製造方法。
(a)解砕工程:ケーキ状の製鉄ダスト又は/及び製鉄スラッジを解砕する。
(b)混合工程:少なくとも固化剤を添加し、製鉄ダスト又は/及び製鉄スラッジと混合する。
(c)造粒工程:混合工程で混合された原料を造粒し、主として造粒物の核を生成させる。
(d)整粒工程:造粒工程で生成した造粒物の核を粒成長させるとともに、粒成長した造粒物の表面を平滑化する。
(e)再解砕工程:整粒工程で得られた造粒物の一部を小片に解砕するとともに、造粒物の他の一部の表面を解砕して粗くする。
(f)再整粒工程:再解砕工程を経た造粒物に同工程で生じた小片を付着させることで、造粒物の粒径を増大させる。
【0008】
[2]上記[1]の製造方法において、造粒物製造装置は、撹拌翼(2)の公転方向及び公転速度と撹拌ロータ(3)の自転速度が可変であり、撹拌翼(2)の公転方向及び公転速度と撹拌ロータ(3)の自転速度を選択することにより、原料を(a)〜(f)の工程で順次処理することを特徴とする製鉄ダスト等を主原料とする造粒物の製造方法。
[3]上記[1]又は[2]の製造方法において、撹拌翼(2)は、一方の公転方向での公転時には、上面側で原料を掻き上げる作用をし、他方の公転方向での公転時には、下面側で原料を圧縮する作用をすることを特徴とする製鉄ダスト等を主原料とする造粒物の製造方法。
【0009】
[4]上記[3]の製造方法において、撹拌翼(2)は、公転軌道のほぼ接線方向において、水平面に対して上下方向の傾きを有し、傾き下端側を先端として公転する場合に、その上面側で原料を掻き上げる作用をし、傾き上端側を先端として公転する場合に、その下面側で原料を圧縮する作用をすることを特徴とする製鉄ダスト等を主原料とする造粒物の製造方法。
[5]上記[3]又は[4]の製造方法において、撹拌翼(2)はドラム底面(100)との間隔を変更するための間隔調整機構(14)を有し、撹拌翼(2)が上面側で原料を掻き上げる作用をする際には前記間隔を狭め、撹拌翼(2)が下面側で原料を圧縮する作用をする際には前記間隔を拡げることを特徴とする製鉄ダスト等を主原料とする造粒物の製造方法。
【0010】
[6]上記[1]〜[5]のいずれかの製造方法において、撹拌翼(2)が、上面側で原料を掻き上げる作用をする公転方向に公転する場合を「正回転」、下面側で原料を圧縮する作用をする公転方向に公転する場合を「逆回転」とし、撹拌ロータ(3)が撹拌翼(2)の「正回転」の公転と同じ回転方向に自転する場合を「正回転」とした場合に、(a)〜(f)の各工程において下記の処理を行うことを特徴とする製鉄ダスト等を主原料とする造粒物の製造方法。
(a)解砕工程:撹拌翼(2)を逆回転で低速回転させながら撹拌ロータ(3)を正回転で高速回転させる処理と、撹拌翼(2)を正回転で低速回転させながら撹拌ロータ(3)を正回転で高速回転させる処理を、交互に1回以上行う。
(b)混合工程:撹拌翼(2)を逆回転で低速回転させながら撹拌ロータ(3)を正回転で高速回転させる処理を行う。
(c)造粒工程:撹拌ロータ(3)を正回転で中速回転させながら、撹拌翼(2)を正回転で中速回転させる処理を行う。
(d)整粒工程:撹拌翼(2)を正回転で高速回転させながら、撹拌ロータ(3)を正回転で低速回転させる処理を行う。
(e)再解砕工程:撹拌翼(2)を逆回転で低速回転させながら撹拌ロータ(3)を正回転で高速回転させる処理を行う。
(f)再整粒工程:撹拌翼(2)を正回転で高速回転させながら、撹拌ロータ(3)を正回転で低速回転させる処理を行う。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法によれば、高含水の製鉄ダスト等を主体とする原料を、特定の造粒物製造装置を利用して一連の特定の工程で処理することにより、特別な乾燥処理を施すことなく適切に造粒し、炉原料に好適な造粒物を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明で使用する造粒物製造装置の一実施形態を示す一部切り欠き平面図
【図2】図1のII-II線に沿う断面図
【図3】図1の製造装置における撹拌翼の側面図
【図4】図1の製造装置における撹拌翼の公転方向と原料に及ぼす作用を示す説明図
【図5】本発明の製造方法における解砕工程のなかの一部工程での装置の作動状態と原料の動きを示す説明図
【図6】本発明の製造方法における解砕工程のなかの一部工程での装置の作動状態と原料の動きを示す説明図
【図7】本発明の製造方法における混合工程での装置の作動状態と原料の動きを示す説明図
【図8】本発明の製造方法における造粒工程での装置の作動状態と原料の動きを示す説明図
【図9】本発明の製造方法における整粒工程での装置の作動状態と原料の動きを示す説明図
【図10】本発明の製造方法における再解砕工程での装置の作動状態と原料の動きを示す説明図
【図11】本発明の製造方法における再整粒工程での装置の作動状態と原料の動きを示す説明図
【図12】比較例の造粒試験において、整粒時間と得られた造粒物の調和平均粒径との関係を示すグラフ
【図13】比較例及び発明例の造粒試験において、得られた造粒物の水分量と調和平均粒径との関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1〜図3は、本発明で使用する造粒物製造装置の一実施形態を示すもので、図1は一部切り欠き平面図、図2は図1のII-II線に沿う断面図、図3は撹拌翼の側面図である。
この造粒物製造装置は、造粒すべき原料(被処理物)が入れられる円筒形のドラム1を備え、このドラム1内には、ドラム内を公転する1対の撹拌翼2と、この撹拌翼2とともにドラム内を公転しながら自転する1対の撹拌ロータ3が備えられている。
前記ドラム1内には、その筒軸に沿った回転軸4が設けられている。この回転軸4は、ドラム1の外側下部に設けられたモータ5に変速機構6を介して接続され、モータ5の駆動力により回転駆動するとともに、変速機構6により回転方向・回転速度が任意に選択できる。
【0014】
前記1対の撹拌翼2はドラム周方向において180°の位置関係にあり、各撹拌翼2はアーム7を介して回転軸4に保持されることで、ドラム1内を公転できるようになっている。また、この撹拌翼2の公転方向・公転速度は、上記のように変速機構6により任意に選択できる。
撹拌翼2は、一方の公転方向での公転時には、上面側で原料を掻き上げる作用をし、他方の公転方向での公転時には、下面側で原料を圧縮する作用をする機能を有している。このため、図3に示すように、各撹拌翼2は板状に構成されるとともに、公転軌道のほぼ接線方向において、水平面(=ドラム底面100)に対して上下方向の傾きを有している。なお、撹拌翼2の機能については、後に図4に基づき説明する。
【0015】
さらに、各撹拌翼2は、上記のような機能をより高めるために、ドラム底面100との間隔(隙間)を変更するための間隔調整機構14を有している。この間隔調整機構14は、以下のような保持部材15、ブラケット16、枢着部17及びストッパー19などにより構成される。すなわち、撹拌翼2は脚状の保持部材15の下端部に固定され、この保持部材15は、上端がアーム7に設けられたブラケット16に回動可能に枢着17されることにより、アーム7に保持されている。これにより撹拌翼2は、その公転軌道のほぼ接線方向において上下回動可能である。前記ブラケット16には、保持部材15(及びこれに保持された撹拌翼2)を所定の回動位置で係止するためのストッパー19が設けられている。このストッパー19は、その係止位置を変えることにより、保持部材15(及びこれに保持された撹拌翼2)を図3に示すような2つの回動位置で係止できるようになっており、これにより撹拌翼2とドラム底面100との間隔(隙間)は、狭い間隔X1と広い間隔X2の2通りに調整できるようになっている。また、撹拌翼2のドラム底面100に対する傾きは、間隔X2の場合よりも間隔X1の場合の方が大きくなる。
【0016】
前記ストッパー19の係止位置を変えるための機構としては、例えば、ストッパー19を油圧機構で可動式にするなど、適宜な機構を採用できる。
なお、本実施形態のような間隔調整機構14を設ける代わりに、ドラム底面100との間隔(隙間)が狭い撹拌翼2(例えば、図3の間隔X1に相当する間隔を有するもの)と、ドラム底面100との間隔(隙間)が広い撹拌翼2(例えば、図3の間隔X2に相当する間隔を有するもの)を、それぞれ1つ以上有するような装置構成としてもよい。
【0017】
前記1対の撹拌ロータ3はドラム周方向において180°の位置関係にあり、次のような構成を有している。
各撹拌ロータ3は、垂直な保持軸8(回転軸)と、その下端側に多段に固定された複数の撹拌羽根18からなっている。各撹拌羽根18は、中心部から180°反対方向に延出する1対の羽根を備え、その中心部が保持軸8に取付固定されている。複数の撹拌羽根18は、保持軸8に対して周方向で角度をずらして固定され、これにより撹拌ロータ3を図1に示すような平面として見た場合、保持軸8から複数の羽根が放射状に延びる形態を有する。
【0018】
前記回転軸4には、同回転軸から180°反対方向に延出するアーム9が固定され、このアーム9に、前記各撹拌ロータ3の保持軸8の上端側が回転可能に保持されている。アーム9にはモータ10が取り付けられ、その駆動軸13の回転が、同じくアーム9に設けられた変速機構11とチェン・スプロケットホイール等による動力伝達機構12を介して前記保持軸8に伝えられ、撹拌ロータ3を回転させるようになっている。
したがって、撹拌ロータ3は、撹拌翼2と一体となってドラム1内を公転でき、この公転方向・公転速度は、上記のように変速機構6により任意に選択できる。また、1対の撹拌ロータ3は、モータ10の駆動力により回転駆動、すなわち自転するとともに、その自転速度が変速機構11により任意に選択できる。なお、撹拌ロータ3は、変速機構11などによってその自転方向を変えられるようにしてもよい。
【0019】
なお、撹拌ロータ3を構成する最下段の撹拌羽根18の下面には、ドラム底面100との間で適当な隙間Yを有するようにして複数のピン20が突設されている。このピン20は、ドラム底面100に付着した原料を掻き落とす働きをする。
その他図面において、21は、アーム9に付設され、撹拌翼2や撹拌ロータ3とともにドラム内を公転するスクレーパであり、ドラム内壁に付着する原料を掻き落とす働きをする。
【0020】
このような造粒物製造装置では、ドラム1内に造粒用の原料を入れてモータ5とモータ10を駆動させ、ドラム1内で撹拌翼2を公転させ且つ撹拌ロータ3を公転させながら自転させることで、原料を処理する。その際、撹拌翼2及び撹拌ロータ3の公転方向・公転速度、撹拌ロータ3の自転速度を任意に調整することができ、さらには撹拌翼2とドラム底面100との間隔を変更することができ、これらの設定により装置の機能を変えることができる。
【0021】
図4は、撹拌翼2の公転方向と原料に及ぼす作用との関係を示している。撹拌翼2は、公転軌道のほぼ接線方向において、水平面に対して上下方向の傾きを有しているが、図4(A)に示すように、傾き下端側を先端として公転する場合(後述する図5〜図11の説明では「正回転」という)、撹拌翼2は、その上面側で原料を掻き上げる作用をする。また、この公転方向の場合、間隔調整機構14により撹拌翼2とドラム底面100の間隔を小さくすれば(=図3の間隔X1)、撹拌翼2による原料の掻き上げ作用をより高めることができる。一方、図4(B)に示すように、傾き上端側を先端として公転する場合(後述する図5〜図11の説明では「逆回転」という)、撹拌翼2は、その下面側で原料を圧縮する作用をする。また、この公転方向の場合、間隔調整機構14により撹拌翼2とドラム底面100の間隔を大きくすれば(=図3の間隔X2)、撹拌翼2による圧縮作用を原料に対してより効果的に及ぼすことができる。
なお、図4における実線矢印は、撹拌翼2の公転によって原料が相対的に移動する方向を示している。
【0022】
次に、上述したような造粒物製造装置を用いた本発明の製造方法及びその実施形態について説明する。
本発明の製造方法では、製鉄ダスト又は/及び製鉄スラッジ(以下、説明の便宜上「ダスト・スラッジ」という)を主体とする原料を造粒し、造粒物を製造する。原料中には固化剤が配合されるが、さらに必要に応じて、水分調整のための水を添加してもよい。
製鉄ダストとしては、例えば、高炉ダスト、焼結ダスト、転炉ダスト、予備処理ダストなどが挙げられる。湿式集塵された製鉄ダストは相当量の水分を含み、一般に水分量は5〜35mass%程度である。なお、このような相当量の水分を含む製鉄ダストに対して、水分調整などの目的で乾燥粉である製鉄ダスト(乾式集塵されたもの)を配合してもよい。
【0023】
製鉄スラッジとしては、例えば、圧延スラッジ、メッキスラッジ、酸洗スラッジなどが挙げられる。一般に、製鉄スラッジの水分量は40〜70mass%程度である。
固化剤としては、セメントが一般的であるが、生石灰、消石灰などを用いてもよく、これら固化剤の1種又は2種以上を用いることができる。原料中での固化剤の配合割合は、造粒物に求められる強度にもよるが、5〜10mass%程度が普通である。
また、その他の粉体として、スラグ粉、ミルスケールなどを適量配合してもよい。
【0024】
本発明の製造方法では、以上のような原料をドラム1内において、下記(a)〜(f)の工程で順次処理することにより、造粒物を製造する。
(a)解砕工程:ケーキ状のダスト・スラッジを解砕する。
(b)混合工程:少なくとも固化剤を添加し、ダスト・スラッジと混合する。
(c)造粒工程:混合工程で混合された原料を造粒し、主として造粒物の核を生成させる。
(d)整粒工程:造粒工程で生成した造粒物の核を粒成長させるとともに、粒成長した造粒物の表面を平滑化する。
(e)再解砕工程:整粒工程で得られた造粒物の一部を小片に解砕するとともに、造粒物の他の一部の表面を解砕して粗くする。
(f)再整粒工程:再解砕工程を経た造粒物に同工程で生じた小片を付着させることで、造粒物の粒径を増大させる。
【0025】
また、上記造粒物の製造では、好ましくは、撹拌翼2の公転方向及び公転速度と撹拌ロータ3の自転速度が可変である造粒物製造装置を用い、撹拌翼2の公転方向及び公転速度と撹拌ロータ3の自転速度を選択することにより、原料を(a)〜(f)の工程で順次処理する。
以上のようにして得られる造粒物の粒径(調和平均粒径)は、乾式製錬を行う上での反応速度の観点から10mm以上が好ましい。粒径の上限は特にないが、反応の均一性を考慮すると20mm以下が望ましい。
また、造粒物の水分量に特別な制限はないが、造粒物の強度や原料であるスラッジ・ダストの水分量などとの関係から、一般に15〜30mass%程度が適当である。
【0026】
本発明の製造方法における原料および造粒物の好ましい条件は上述したとおりであるが、特に本発明の製造方法は、原料として水分量が25〜35mass%程度の製鉄ダストと水分量が5〜15mass%程度の製鉄ダストを用いる場合に好適な方法であり、原料を適切に造粒し、適正な粒径で高品質な造粒物を得ることができる。具体的には、水分量が25〜35mass%程度の製鉄ダストと水分量が5〜15mass%程度の製鉄ダストを主体とする原料を、水分量が約18〜22mass%、粒径が約10〜15mm(調和平均粒径)程度の造粒物に適切に造粒することができる。水分量が25〜35mass%程度の製鉄ダスト(x)と水分量が5〜15mass%程度の製鉄ダスト(y)の配合比は、造粒物の所望の水分量などに応じて適宜選択すればよいが、一般には、製鉄ダスト(x)/製鉄ダスト(y)=1/2前後の質量比が好ましい。
【0027】
以下、本発明の一実施形態を図5〜図11に基づいて説明する。
図5〜図11は、本発明の実施形態において、各工程での装置の作動状態と原料の動きを示す説明図である。これらの図において、実線矢印は撹拌翼2と撹拌ロータ3の回転によって原料が相対的に移動する方向を示し、破線矢印は原料が撹拌翼2によって圧縮作用を受けている状況を示す。
また、表1に各工程における撹拌翼2(及び撹拌ロータ3)の公転方向・公転速度と撹拌ロータ3の自転方向・自転速度を示す。
【0028】
【表1】
【0029】
以下に述べる実施形態において、撹拌翼2(及び撹拌ロータ3)の公転速度については、高速回転>1.1×中速回転、中速回転>1.3×低速回転の関係が好ましく、速度範囲としては、高速回転が15〜25rpm程度、中速回転が10〜20rpm程度、低速回転が7〜15rpm程度であることが好ましい。また、撹拌ロータ3の自転速度については、高速回転>1.1×中速回転、中速回転>1.6×低速回転の関係が好ましく、速度範囲としては、高速回転が250〜400rpm程度、中速回転が200〜350rpm程度、低速回転が100〜200rpm程度であることが好ましい。
【0030】
ここで、以下の説明においては、水平面に対して傾きを有する撹拌翼2が、図4(A)に示すように、上面側で原料を掻き上げる作用をするように公転する(すなわち、傾き下端側を先端として公転する)場合を「正回転」、図4(B)に示すように、下面側で原料を圧縮する作用をするように公転する(すなわち、傾き上端側を先端として公転する)場合を「逆回転」という。撹拌ロータ3は、撹拌翼2と一体となって同じ方向で公転する。また、平面として見たときに、撹拌ロータ3が撹拌翼2の「正回転」の公転と同じ回転方向に自転する場合を「正回転」という。
【0031】
(1)解砕工程(第1工程)
図5及び6は、第1工程である解砕工程を示している。図5では、撹拌翼2を逆回転(図4(B)の公転方向)で低速回転させることで、ケーキ状のダスト・スラッジ(脱水ケーキ)を圧縮しつつ、正回転で高速回転する撹拌ロータ3によりせん断力を与える。また、図6では、撹拌翼2を正回転(図4(A)の公転方向)で低速回転させることで、ダスト・スラッジ(脱水ケーキ)を掻き上げてほぐしながら、正回転で高速回転する撹拌ロータ3によりせん断力を与える。この図5の処理と図6の処理を交互に1回以上行うこと、好ましくは複数回繰り返すことにより、ケーキ状のダスト・スラッジを解砕する。
【0032】
(2)混合工程(第2工程)
図7は、第2工程である混合工程を示している。この工程では、上記解砕工程でほぐされたダスト・スラッジに固化剤を加え、さらに必要に応じて水又は乾燥粉を加えて混合する。撹拌翼2を逆回転(図4(B)の公転方向)で低速回転させることで練り込みを行いつつ、正回転で高速回転する撹拌ロータ3により添加物(固化剤、その他)との混合を行う。これによりダスト・スラッジと添加物を十分に混合することができる。
(3)造粒工程(第3工程)
図8は、第3工程である造粒工程を示している。この工程では、前記混合工程で均一に混ぜられた造粒用原料を粒状に造粒する。撹拌ロータ3を正回転で中速回転させることにより、混合物を小さい固まりに分断しつつ、撹拌翼2を正回転(図4(A)の公転方向)で中速回転させることにより、撹拌翼2の上面で原料の粒を転がして造粒物の核を形成する。
【0033】
(4)整粒工程(第4工程)
図9は、第4工程である整粒工程を示している。この工程では、撹拌翼2を正回転(図4(A)の公転方向)のまま高速回転させ、撹拌ロータ3は正回転で低速回転させる。上記造粒工程では、主として造粒物の核が形成されるのに対し、この整粒工程では、主として撹拌ロータ3による掻き上げ作用によって粒を転動させ、粒の粒径を増大させるとともに粒表面を滑らかにする(平滑化する)。このため、撹拌ロータ3を低速回転にしてせん断能力を低下させることで、生成した粒が破砕される確率を低下させる。また、撹拌翼2を正回転で高速回転することにより、粒が転動される距離を伸ばし、せん断によって発生した小片を粒に吸収させて粒の成長を促し、且つ粒表面を滑らかにする。
【0034】
(5)再解砕工程(第5工程),再整粒工程(第6工程)
ダスト・スラッジの造粒物を炉原料に適用するには、ある程度大きい粒径(通常、粒径10mm以上)に造粒する必要がある。本発明者らは、上述したような造粒物製造装置を用いたダスト・スラッジの造粒試験を行い、その結果、同装置においてダスト・スラッジを、上記のような解砕−混合−造粒−整粒という一連の特定の工程で処理することにより造粒物を製造でき、この造粒では原料の水分量が多いほど造粒物の粒径を大きくできるという知見を得た。しかし、造粒物の水分が多いと、造粒直後の粒が軟らかくなるため変形しやすく、さらに、水分が多い造粒物を電気炉等で処理するために多大なエネルギーが必要になる、という問題がある。したがって、ダスト・スラッジは元々相当量の水分を含むものではあるが、さらに水分を添加することなく、所望の粒径(通常、粒径10mm以上)まで造粒できるようにする必要がある。
【0035】
そこで、上記した解砕−混合−造粒−整粒という一連の工程で処理する方法において、表2に示す条件で整粒時間を調整しながら処理を行い、粒径10mm以上の造粒物を製造するための条件について検討を行った。なお、使用した原料の水分量は、「製鉄ダスト1」が23.6mass%、「製鉄ダスト2」が0.4mass%、セメントが0.2mass%である。この試験の結果、表2と図12(表2の製造例1〜4について、整粒時間と造粒物の粒径との関係を示したグラフ)に示すように、整粒時間を延ばすことで粒径を大きくできることは判ったが、このような造粒パターンの変更だけでは、粒径10mm以上の造粒物を製造することはできなかった。
【0036】
【表2】
【0037】
一方、表2と同じ方法及び原料を用い、表3の製造例5〜7に示すように、水の添加率を変更して実験を行った結果、造粒物の水分量を21mass%以上にすれば、粒径10mm以上の造粒物が得られることができた。しかしながら、このような造粒物は、得られる粒径に較べて水分量が多すぎ、上述したような意味で好ましくない。そこで、本発明者らはさらに検討を重ねた結果、表3の製造例8,9(発明例)に示すように、上述した整粒工程(第4工程)に引き続き、再解砕工程(第5工程)と再整粒工程(第6工程)を順次行うことにより、比較的少ない水分量で粒径10mm以上の造粒物が得られることを見出した。図13に、表3における製造例5〜9の造粒物の水分量と粒径との関係を示す。
【0038】
【表3】
【0039】
上記のように整粒工程(第4工程)に引き続き行われる再解砕工程(第5工程)では、せん断で多量の小片を発生させるとともに、造粒物の表面を粗くし、次の工程(再整粒工程)で小片が付着しやすくする。すなわち、整粒工程(第4工程)で得られた造粒物の一部を小片に解砕するとともに、造粒物の他の一部の表面を解砕して粗くする。したがって、次の再整粒工程(第6工程)では、再解砕工程(第5工程)で表面が粗くされた造粒物に同じく再解砕工程で生じた小片が付着することで、造粒物の粒径が増大することになる。
図10は、第5工程である再解砕工程を示している。この工程では、上記のようにせん断で多量の小片を発生させるとともに、造粒物の表面を解砕して粗くするため、前記混合工程(第2工程)と同様に、撹拌翼2を逆回転で低速回転させながら撹拌ロータ3を正回転で高速回転させる処理を行う。
【0040】
図11は、第6工程である再整粒工程を示している。この工程では、上記のように再解砕工程(第5工程)で表面が粗くされた造粒物に同じく再解砕工程で生じた小片を付着させ、造粒物を成長させるために、前記整粒工程(第4工程)と同様に、撹拌翼2を正回転で高速回転させながら、撹拌ロータ3を正回転で低速回転させる処理を行う。
表4に、表3とは異なる製鉄ダストを使用した場合の製造例を示す。使用した原料の水分量は、「製鉄ダスト2」が0.4mass%、「製鉄ダスト3」が15.6mass%、セメントが0.2mass%である。表4によれば、本発明例では、造粒物の水分量が15mass%でも粒径10mm以上の造粒物が得られることが判る。
【0041】
【表4】
【符号の説明】
【0042】
1 ドラム
2 撹拌翼
3 撹拌ロータ
4 回転軸
5 モータ
6 変速機構
7 アーム
8 保持軸
9 アーム
10 モータ
11 変速機構
12 動力伝達機構
13 駆動軸
14 間隔調整機構
15 保持部材
16 ブラケット
17 枢着部
18 撹拌羽根
19 ストッパー
20 ピン
21 スクレーパ
100 ドラム底面
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鉄ダストや製鉄スラッジを塊状に造粒し、シャフト炉などの炉原料として利用可能な造粒物を製造するための製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄プロセスでは、鋼材表面の酸洗処理において金属分が溶出した廃液が発生し、この廃液中の金属成分が、酸洗スラッジや中和スラッジ等の製鉄スラッジとして回収される。また、製鉄プロセスの種々の工程では、湿式集塵されたダストを脱水することにより高含水の製鉄ダストが生じる。こうした製鉄ダストや製鉄スラッジは、高含水でハンドリングが難しいという問題があるが、一方で、鉄や他の有用な金属(例えば、Ni、Crなど)を含有するものが多く、したがって、製鉄ダストや製鉄スラッジを炉の原料などとして再利用することは非常に有用なことである。
【0003】
製鉄ダストや製鉄スラッジを炉(例えば、シャフト炉、転炉、電気炉、溶融還元炉など)の原料として再利用するためには、それらをブリケットやペレットなどに塊成化する必要がある。しかしながら、製鉄ダストや製鉄スラッジ中の金属分は酸化物や水酸化物の形態で存在するものが多く、微細で親水性が高い。このためフィルタープレスなどによる脱水を行っても、水分を多く含む粘土質状のものとなる場合が多く、取り扱いが困難である。また、これら製鉄ダストや製鉄スラッジを乾燥するには、自然乾燥は困難であるため、ロータリーキルンなどのような専用の乾燥機を用いる必要があり、多量の熱源が必要になるためコスト高になる。
高含水の製鉄ダストや製鉄スラッジを有効利用する技術として、製鉄スラッジを脱水し、乾燥したものに製鉄ダストやスケールを加え、さらにはバインダーを添加して固め、フェロアロイ製造用原料などにする方法が知られている(例えば、特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭52−88519号公報
【特許文献2】特開昭52−88520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この従来技術は、製鉄スラッジを専用の乾燥機で乾燥した上で、乾燥ダストやバインダーなどを加えてブリケットやペレットにする方法であるため、設備コストや運転コストがかかる問題がある。
したがって本発明の目的は、以上のような従来技術の課題を解決し、水分を含有する製鉄ダストや製鉄スラッジを、特別な乾燥処理を施すことなく適切に造粒し、炉原料に好適な造粒物を得ることができる造粒物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記従来技術の課題を解決にするために検討を行った結果、特許第3703640号公報に示されるような混合撹拌型の造粒物製造装置(汚泥の脱水ケーキや建設残土などの再生造粒物の製造装置)を利用し、製鉄ダスト等を主体とする造粒用原料を一連の特定の工程で処理することにより、所望の適正な造粒物が得られることを見出した。
本発明はこのような知見に基づきなされたもので、以下を要旨とするものである。
【0007】
[1]造粒すべき原料が入れられるドラム(1)と、ドラム(1)内を公転する撹拌翼(2)と、ドラム(1)内を撹拌翼(2)とともに公転しつつ自転する撹拌ロータ(3)を備えた造粒物製造装置を用い、
製鉄ダスト又は/及び製鉄スラッジを主体とする原料を、下記(a)〜(f)の工程で順次処理することにより、造粒物を製造することを特徴とする製鉄ダスト等を主原料とする造粒物の製造方法。
(a)解砕工程:ケーキ状の製鉄ダスト又は/及び製鉄スラッジを解砕する。
(b)混合工程:少なくとも固化剤を添加し、製鉄ダスト又は/及び製鉄スラッジと混合する。
(c)造粒工程:混合工程で混合された原料を造粒し、主として造粒物の核を生成させる。
(d)整粒工程:造粒工程で生成した造粒物の核を粒成長させるとともに、粒成長した造粒物の表面を平滑化する。
(e)再解砕工程:整粒工程で得られた造粒物の一部を小片に解砕するとともに、造粒物の他の一部の表面を解砕して粗くする。
(f)再整粒工程:再解砕工程を経た造粒物に同工程で生じた小片を付着させることで、造粒物の粒径を増大させる。
【0008】
[2]上記[1]の製造方法において、造粒物製造装置は、撹拌翼(2)の公転方向及び公転速度と撹拌ロータ(3)の自転速度が可変であり、撹拌翼(2)の公転方向及び公転速度と撹拌ロータ(3)の自転速度を選択することにより、原料を(a)〜(f)の工程で順次処理することを特徴とする製鉄ダスト等を主原料とする造粒物の製造方法。
[3]上記[1]又は[2]の製造方法において、撹拌翼(2)は、一方の公転方向での公転時には、上面側で原料を掻き上げる作用をし、他方の公転方向での公転時には、下面側で原料を圧縮する作用をすることを特徴とする製鉄ダスト等を主原料とする造粒物の製造方法。
【0009】
[4]上記[3]の製造方法において、撹拌翼(2)は、公転軌道のほぼ接線方向において、水平面に対して上下方向の傾きを有し、傾き下端側を先端として公転する場合に、その上面側で原料を掻き上げる作用をし、傾き上端側を先端として公転する場合に、その下面側で原料を圧縮する作用をすることを特徴とする製鉄ダスト等を主原料とする造粒物の製造方法。
[5]上記[3]又は[4]の製造方法において、撹拌翼(2)はドラム底面(100)との間隔を変更するための間隔調整機構(14)を有し、撹拌翼(2)が上面側で原料を掻き上げる作用をする際には前記間隔を狭め、撹拌翼(2)が下面側で原料を圧縮する作用をする際には前記間隔を拡げることを特徴とする製鉄ダスト等を主原料とする造粒物の製造方法。
【0010】
[6]上記[1]〜[5]のいずれかの製造方法において、撹拌翼(2)が、上面側で原料を掻き上げる作用をする公転方向に公転する場合を「正回転」、下面側で原料を圧縮する作用をする公転方向に公転する場合を「逆回転」とし、撹拌ロータ(3)が撹拌翼(2)の「正回転」の公転と同じ回転方向に自転する場合を「正回転」とした場合に、(a)〜(f)の各工程において下記の処理を行うことを特徴とする製鉄ダスト等を主原料とする造粒物の製造方法。
(a)解砕工程:撹拌翼(2)を逆回転で低速回転させながら撹拌ロータ(3)を正回転で高速回転させる処理と、撹拌翼(2)を正回転で低速回転させながら撹拌ロータ(3)を正回転で高速回転させる処理を、交互に1回以上行う。
(b)混合工程:撹拌翼(2)を逆回転で低速回転させながら撹拌ロータ(3)を正回転で高速回転させる処理を行う。
(c)造粒工程:撹拌ロータ(3)を正回転で中速回転させながら、撹拌翼(2)を正回転で中速回転させる処理を行う。
(d)整粒工程:撹拌翼(2)を正回転で高速回転させながら、撹拌ロータ(3)を正回転で低速回転させる処理を行う。
(e)再解砕工程:撹拌翼(2)を逆回転で低速回転させながら撹拌ロータ(3)を正回転で高速回転させる処理を行う。
(f)再整粒工程:撹拌翼(2)を正回転で高速回転させながら、撹拌ロータ(3)を正回転で低速回転させる処理を行う。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法によれば、高含水の製鉄ダスト等を主体とする原料を、特定の造粒物製造装置を利用して一連の特定の工程で処理することにより、特別な乾燥処理を施すことなく適切に造粒し、炉原料に好適な造粒物を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明で使用する造粒物製造装置の一実施形態を示す一部切り欠き平面図
【図2】図1のII-II線に沿う断面図
【図3】図1の製造装置における撹拌翼の側面図
【図4】図1の製造装置における撹拌翼の公転方向と原料に及ぼす作用を示す説明図
【図5】本発明の製造方法における解砕工程のなかの一部工程での装置の作動状態と原料の動きを示す説明図
【図6】本発明の製造方法における解砕工程のなかの一部工程での装置の作動状態と原料の動きを示す説明図
【図7】本発明の製造方法における混合工程での装置の作動状態と原料の動きを示す説明図
【図8】本発明の製造方法における造粒工程での装置の作動状態と原料の動きを示す説明図
【図9】本発明の製造方法における整粒工程での装置の作動状態と原料の動きを示す説明図
【図10】本発明の製造方法における再解砕工程での装置の作動状態と原料の動きを示す説明図
【図11】本発明の製造方法における再整粒工程での装置の作動状態と原料の動きを示す説明図
【図12】比較例の造粒試験において、整粒時間と得られた造粒物の調和平均粒径との関係を示すグラフ
【図13】比較例及び発明例の造粒試験において、得られた造粒物の水分量と調和平均粒径との関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1〜図3は、本発明で使用する造粒物製造装置の一実施形態を示すもので、図1は一部切り欠き平面図、図2は図1のII-II線に沿う断面図、図3は撹拌翼の側面図である。
この造粒物製造装置は、造粒すべき原料(被処理物)が入れられる円筒形のドラム1を備え、このドラム1内には、ドラム内を公転する1対の撹拌翼2と、この撹拌翼2とともにドラム内を公転しながら自転する1対の撹拌ロータ3が備えられている。
前記ドラム1内には、その筒軸に沿った回転軸4が設けられている。この回転軸4は、ドラム1の外側下部に設けられたモータ5に変速機構6を介して接続され、モータ5の駆動力により回転駆動するとともに、変速機構6により回転方向・回転速度が任意に選択できる。
【0014】
前記1対の撹拌翼2はドラム周方向において180°の位置関係にあり、各撹拌翼2はアーム7を介して回転軸4に保持されることで、ドラム1内を公転できるようになっている。また、この撹拌翼2の公転方向・公転速度は、上記のように変速機構6により任意に選択できる。
撹拌翼2は、一方の公転方向での公転時には、上面側で原料を掻き上げる作用をし、他方の公転方向での公転時には、下面側で原料を圧縮する作用をする機能を有している。このため、図3に示すように、各撹拌翼2は板状に構成されるとともに、公転軌道のほぼ接線方向において、水平面(=ドラム底面100)に対して上下方向の傾きを有している。なお、撹拌翼2の機能については、後に図4に基づき説明する。
【0015】
さらに、各撹拌翼2は、上記のような機能をより高めるために、ドラム底面100との間隔(隙間)を変更するための間隔調整機構14を有している。この間隔調整機構14は、以下のような保持部材15、ブラケット16、枢着部17及びストッパー19などにより構成される。すなわち、撹拌翼2は脚状の保持部材15の下端部に固定され、この保持部材15は、上端がアーム7に設けられたブラケット16に回動可能に枢着17されることにより、アーム7に保持されている。これにより撹拌翼2は、その公転軌道のほぼ接線方向において上下回動可能である。前記ブラケット16には、保持部材15(及びこれに保持された撹拌翼2)を所定の回動位置で係止するためのストッパー19が設けられている。このストッパー19は、その係止位置を変えることにより、保持部材15(及びこれに保持された撹拌翼2)を図3に示すような2つの回動位置で係止できるようになっており、これにより撹拌翼2とドラム底面100との間隔(隙間)は、狭い間隔X1と広い間隔X2の2通りに調整できるようになっている。また、撹拌翼2のドラム底面100に対する傾きは、間隔X2の場合よりも間隔X1の場合の方が大きくなる。
【0016】
前記ストッパー19の係止位置を変えるための機構としては、例えば、ストッパー19を油圧機構で可動式にするなど、適宜な機構を採用できる。
なお、本実施形態のような間隔調整機構14を設ける代わりに、ドラム底面100との間隔(隙間)が狭い撹拌翼2(例えば、図3の間隔X1に相当する間隔を有するもの)と、ドラム底面100との間隔(隙間)が広い撹拌翼2(例えば、図3の間隔X2に相当する間隔を有するもの)を、それぞれ1つ以上有するような装置構成としてもよい。
【0017】
前記1対の撹拌ロータ3はドラム周方向において180°の位置関係にあり、次のような構成を有している。
各撹拌ロータ3は、垂直な保持軸8(回転軸)と、その下端側に多段に固定された複数の撹拌羽根18からなっている。各撹拌羽根18は、中心部から180°反対方向に延出する1対の羽根を備え、その中心部が保持軸8に取付固定されている。複数の撹拌羽根18は、保持軸8に対して周方向で角度をずらして固定され、これにより撹拌ロータ3を図1に示すような平面として見た場合、保持軸8から複数の羽根が放射状に延びる形態を有する。
【0018】
前記回転軸4には、同回転軸から180°反対方向に延出するアーム9が固定され、このアーム9に、前記各撹拌ロータ3の保持軸8の上端側が回転可能に保持されている。アーム9にはモータ10が取り付けられ、その駆動軸13の回転が、同じくアーム9に設けられた変速機構11とチェン・スプロケットホイール等による動力伝達機構12を介して前記保持軸8に伝えられ、撹拌ロータ3を回転させるようになっている。
したがって、撹拌ロータ3は、撹拌翼2と一体となってドラム1内を公転でき、この公転方向・公転速度は、上記のように変速機構6により任意に選択できる。また、1対の撹拌ロータ3は、モータ10の駆動力により回転駆動、すなわち自転するとともに、その自転速度が変速機構11により任意に選択できる。なお、撹拌ロータ3は、変速機構11などによってその自転方向を変えられるようにしてもよい。
【0019】
なお、撹拌ロータ3を構成する最下段の撹拌羽根18の下面には、ドラム底面100との間で適当な隙間Yを有するようにして複数のピン20が突設されている。このピン20は、ドラム底面100に付着した原料を掻き落とす働きをする。
その他図面において、21は、アーム9に付設され、撹拌翼2や撹拌ロータ3とともにドラム内を公転するスクレーパであり、ドラム内壁に付着する原料を掻き落とす働きをする。
【0020】
このような造粒物製造装置では、ドラム1内に造粒用の原料を入れてモータ5とモータ10を駆動させ、ドラム1内で撹拌翼2を公転させ且つ撹拌ロータ3を公転させながら自転させることで、原料を処理する。その際、撹拌翼2及び撹拌ロータ3の公転方向・公転速度、撹拌ロータ3の自転速度を任意に調整することができ、さらには撹拌翼2とドラム底面100との間隔を変更することができ、これらの設定により装置の機能を変えることができる。
【0021】
図4は、撹拌翼2の公転方向と原料に及ぼす作用との関係を示している。撹拌翼2は、公転軌道のほぼ接線方向において、水平面に対して上下方向の傾きを有しているが、図4(A)に示すように、傾き下端側を先端として公転する場合(後述する図5〜図11の説明では「正回転」という)、撹拌翼2は、その上面側で原料を掻き上げる作用をする。また、この公転方向の場合、間隔調整機構14により撹拌翼2とドラム底面100の間隔を小さくすれば(=図3の間隔X1)、撹拌翼2による原料の掻き上げ作用をより高めることができる。一方、図4(B)に示すように、傾き上端側を先端として公転する場合(後述する図5〜図11の説明では「逆回転」という)、撹拌翼2は、その下面側で原料を圧縮する作用をする。また、この公転方向の場合、間隔調整機構14により撹拌翼2とドラム底面100の間隔を大きくすれば(=図3の間隔X2)、撹拌翼2による圧縮作用を原料に対してより効果的に及ぼすことができる。
なお、図4における実線矢印は、撹拌翼2の公転によって原料が相対的に移動する方向を示している。
【0022】
次に、上述したような造粒物製造装置を用いた本発明の製造方法及びその実施形態について説明する。
本発明の製造方法では、製鉄ダスト又は/及び製鉄スラッジ(以下、説明の便宜上「ダスト・スラッジ」という)を主体とする原料を造粒し、造粒物を製造する。原料中には固化剤が配合されるが、さらに必要に応じて、水分調整のための水を添加してもよい。
製鉄ダストとしては、例えば、高炉ダスト、焼結ダスト、転炉ダスト、予備処理ダストなどが挙げられる。湿式集塵された製鉄ダストは相当量の水分を含み、一般に水分量は5〜35mass%程度である。なお、このような相当量の水分を含む製鉄ダストに対して、水分調整などの目的で乾燥粉である製鉄ダスト(乾式集塵されたもの)を配合してもよい。
【0023】
製鉄スラッジとしては、例えば、圧延スラッジ、メッキスラッジ、酸洗スラッジなどが挙げられる。一般に、製鉄スラッジの水分量は40〜70mass%程度である。
固化剤としては、セメントが一般的であるが、生石灰、消石灰などを用いてもよく、これら固化剤の1種又は2種以上を用いることができる。原料中での固化剤の配合割合は、造粒物に求められる強度にもよるが、5〜10mass%程度が普通である。
また、その他の粉体として、スラグ粉、ミルスケールなどを適量配合してもよい。
【0024】
本発明の製造方法では、以上のような原料をドラム1内において、下記(a)〜(f)の工程で順次処理することにより、造粒物を製造する。
(a)解砕工程:ケーキ状のダスト・スラッジを解砕する。
(b)混合工程:少なくとも固化剤を添加し、ダスト・スラッジと混合する。
(c)造粒工程:混合工程で混合された原料を造粒し、主として造粒物の核を生成させる。
(d)整粒工程:造粒工程で生成した造粒物の核を粒成長させるとともに、粒成長した造粒物の表面を平滑化する。
(e)再解砕工程:整粒工程で得られた造粒物の一部を小片に解砕するとともに、造粒物の他の一部の表面を解砕して粗くする。
(f)再整粒工程:再解砕工程を経た造粒物に同工程で生じた小片を付着させることで、造粒物の粒径を増大させる。
【0025】
また、上記造粒物の製造では、好ましくは、撹拌翼2の公転方向及び公転速度と撹拌ロータ3の自転速度が可変である造粒物製造装置を用い、撹拌翼2の公転方向及び公転速度と撹拌ロータ3の自転速度を選択することにより、原料を(a)〜(f)の工程で順次処理する。
以上のようにして得られる造粒物の粒径(調和平均粒径)は、乾式製錬を行う上での反応速度の観点から10mm以上が好ましい。粒径の上限は特にないが、反応の均一性を考慮すると20mm以下が望ましい。
また、造粒物の水分量に特別な制限はないが、造粒物の強度や原料であるスラッジ・ダストの水分量などとの関係から、一般に15〜30mass%程度が適当である。
【0026】
本発明の製造方法における原料および造粒物の好ましい条件は上述したとおりであるが、特に本発明の製造方法は、原料として水分量が25〜35mass%程度の製鉄ダストと水分量が5〜15mass%程度の製鉄ダストを用いる場合に好適な方法であり、原料を適切に造粒し、適正な粒径で高品質な造粒物を得ることができる。具体的には、水分量が25〜35mass%程度の製鉄ダストと水分量が5〜15mass%程度の製鉄ダストを主体とする原料を、水分量が約18〜22mass%、粒径が約10〜15mm(調和平均粒径)程度の造粒物に適切に造粒することができる。水分量が25〜35mass%程度の製鉄ダスト(x)と水分量が5〜15mass%程度の製鉄ダスト(y)の配合比は、造粒物の所望の水分量などに応じて適宜選択すればよいが、一般には、製鉄ダスト(x)/製鉄ダスト(y)=1/2前後の質量比が好ましい。
【0027】
以下、本発明の一実施形態を図5〜図11に基づいて説明する。
図5〜図11は、本発明の実施形態において、各工程での装置の作動状態と原料の動きを示す説明図である。これらの図において、実線矢印は撹拌翼2と撹拌ロータ3の回転によって原料が相対的に移動する方向を示し、破線矢印は原料が撹拌翼2によって圧縮作用を受けている状況を示す。
また、表1に各工程における撹拌翼2(及び撹拌ロータ3)の公転方向・公転速度と撹拌ロータ3の自転方向・自転速度を示す。
【0028】
【表1】
【0029】
以下に述べる実施形態において、撹拌翼2(及び撹拌ロータ3)の公転速度については、高速回転>1.1×中速回転、中速回転>1.3×低速回転の関係が好ましく、速度範囲としては、高速回転が15〜25rpm程度、中速回転が10〜20rpm程度、低速回転が7〜15rpm程度であることが好ましい。また、撹拌ロータ3の自転速度については、高速回転>1.1×中速回転、中速回転>1.6×低速回転の関係が好ましく、速度範囲としては、高速回転が250〜400rpm程度、中速回転が200〜350rpm程度、低速回転が100〜200rpm程度であることが好ましい。
【0030】
ここで、以下の説明においては、水平面に対して傾きを有する撹拌翼2が、図4(A)に示すように、上面側で原料を掻き上げる作用をするように公転する(すなわち、傾き下端側を先端として公転する)場合を「正回転」、図4(B)に示すように、下面側で原料を圧縮する作用をするように公転する(すなわち、傾き上端側を先端として公転する)場合を「逆回転」という。撹拌ロータ3は、撹拌翼2と一体となって同じ方向で公転する。また、平面として見たときに、撹拌ロータ3が撹拌翼2の「正回転」の公転と同じ回転方向に自転する場合を「正回転」という。
【0031】
(1)解砕工程(第1工程)
図5及び6は、第1工程である解砕工程を示している。図5では、撹拌翼2を逆回転(図4(B)の公転方向)で低速回転させることで、ケーキ状のダスト・スラッジ(脱水ケーキ)を圧縮しつつ、正回転で高速回転する撹拌ロータ3によりせん断力を与える。また、図6では、撹拌翼2を正回転(図4(A)の公転方向)で低速回転させることで、ダスト・スラッジ(脱水ケーキ)を掻き上げてほぐしながら、正回転で高速回転する撹拌ロータ3によりせん断力を与える。この図5の処理と図6の処理を交互に1回以上行うこと、好ましくは複数回繰り返すことにより、ケーキ状のダスト・スラッジを解砕する。
【0032】
(2)混合工程(第2工程)
図7は、第2工程である混合工程を示している。この工程では、上記解砕工程でほぐされたダスト・スラッジに固化剤を加え、さらに必要に応じて水又は乾燥粉を加えて混合する。撹拌翼2を逆回転(図4(B)の公転方向)で低速回転させることで練り込みを行いつつ、正回転で高速回転する撹拌ロータ3により添加物(固化剤、その他)との混合を行う。これによりダスト・スラッジと添加物を十分に混合することができる。
(3)造粒工程(第3工程)
図8は、第3工程である造粒工程を示している。この工程では、前記混合工程で均一に混ぜられた造粒用原料を粒状に造粒する。撹拌ロータ3を正回転で中速回転させることにより、混合物を小さい固まりに分断しつつ、撹拌翼2を正回転(図4(A)の公転方向)で中速回転させることにより、撹拌翼2の上面で原料の粒を転がして造粒物の核を形成する。
【0033】
(4)整粒工程(第4工程)
図9は、第4工程である整粒工程を示している。この工程では、撹拌翼2を正回転(図4(A)の公転方向)のまま高速回転させ、撹拌ロータ3は正回転で低速回転させる。上記造粒工程では、主として造粒物の核が形成されるのに対し、この整粒工程では、主として撹拌ロータ3による掻き上げ作用によって粒を転動させ、粒の粒径を増大させるとともに粒表面を滑らかにする(平滑化する)。このため、撹拌ロータ3を低速回転にしてせん断能力を低下させることで、生成した粒が破砕される確率を低下させる。また、撹拌翼2を正回転で高速回転することにより、粒が転動される距離を伸ばし、せん断によって発生した小片を粒に吸収させて粒の成長を促し、且つ粒表面を滑らかにする。
【0034】
(5)再解砕工程(第5工程),再整粒工程(第6工程)
ダスト・スラッジの造粒物を炉原料に適用するには、ある程度大きい粒径(通常、粒径10mm以上)に造粒する必要がある。本発明者らは、上述したような造粒物製造装置を用いたダスト・スラッジの造粒試験を行い、その結果、同装置においてダスト・スラッジを、上記のような解砕−混合−造粒−整粒という一連の特定の工程で処理することにより造粒物を製造でき、この造粒では原料の水分量が多いほど造粒物の粒径を大きくできるという知見を得た。しかし、造粒物の水分が多いと、造粒直後の粒が軟らかくなるため変形しやすく、さらに、水分が多い造粒物を電気炉等で処理するために多大なエネルギーが必要になる、という問題がある。したがって、ダスト・スラッジは元々相当量の水分を含むものではあるが、さらに水分を添加することなく、所望の粒径(通常、粒径10mm以上)まで造粒できるようにする必要がある。
【0035】
そこで、上記した解砕−混合−造粒−整粒という一連の工程で処理する方法において、表2に示す条件で整粒時間を調整しながら処理を行い、粒径10mm以上の造粒物を製造するための条件について検討を行った。なお、使用した原料の水分量は、「製鉄ダスト1」が23.6mass%、「製鉄ダスト2」が0.4mass%、セメントが0.2mass%である。この試験の結果、表2と図12(表2の製造例1〜4について、整粒時間と造粒物の粒径との関係を示したグラフ)に示すように、整粒時間を延ばすことで粒径を大きくできることは判ったが、このような造粒パターンの変更だけでは、粒径10mm以上の造粒物を製造することはできなかった。
【0036】
【表2】
【0037】
一方、表2と同じ方法及び原料を用い、表3の製造例5〜7に示すように、水の添加率を変更して実験を行った結果、造粒物の水分量を21mass%以上にすれば、粒径10mm以上の造粒物が得られることができた。しかしながら、このような造粒物は、得られる粒径に較べて水分量が多すぎ、上述したような意味で好ましくない。そこで、本発明者らはさらに検討を重ねた結果、表3の製造例8,9(発明例)に示すように、上述した整粒工程(第4工程)に引き続き、再解砕工程(第5工程)と再整粒工程(第6工程)を順次行うことにより、比較的少ない水分量で粒径10mm以上の造粒物が得られることを見出した。図13に、表3における製造例5〜9の造粒物の水分量と粒径との関係を示す。
【0038】
【表3】
【0039】
上記のように整粒工程(第4工程)に引き続き行われる再解砕工程(第5工程)では、せん断で多量の小片を発生させるとともに、造粒物の表面を粗くし、次の工程(再整粒工程)で小片が付着しやすくする。すなわち、整粒工程(第4工程)で得られた造粒物の一部を小片に解砕するとともに、造粒物の他の一部の表面を解砕して粗くする。したがって、次の再整粒工程(第6工程)では、再解砕工程(第5工程)で表面が粗くされた造粒物に同じく再解砕工程で生じた小片が付着することで、造粒物の粒径が増大することになる。
図10は、第5工程である再解砕工程を示している。この工程では、上記のようにせん断で多量の小片を発生させるとともに、造粒物の表面を解砕して粗くするため、前記混合工程(第2工程)と同様に、撹拌翼2を逆回転で低速回転させながら撹拌ロータ3を正回転で高速回転させる処理を行う。
【0040】
図11は、第6工程である再整粒工程を示している。この工程では、上記のように再解砕工程(第5工程)で表面が粗くされた造粒物に同じく再解砕工程で生じた小片を付着させ、造粒物を成長させるために、前記整粒工程(第4工程)と同様に、撹拌翼2を正回転で高速回転させながら、撹拌ロータ3を正回転で低速回転させる処理を行う。
表4に、表3とは異なる製鉄ダストを使用した場合の製造例を示す。使用した原料の水分量は、「製鉄ダスト2」が0.4mass%、「製鉄ダスト3」が15.6mass%、セメントが0.2mass%である。表4によれば、本発明例では、造粒物の水分量が15mass%でも粒径10mm以上の造粒物が得られることが判る。
【0041】
【表4】
【符号の説明】
【0042】
1 ドラム
2 撹拌翼
3 撹拌ロータ
4 回転軸
5 モータ
6 変速機構
7 アーム
8 保持軸
9 アーム
10 モータ
11 変速機構
12 動力伝達機構
13 駆動軸
14 間隔調整機構
15 保持部材
16 ブラケット
17 枢着部
18 撹拌羽根
19 ストッパー
20 ピン
21 スクレーパ
100 ドラム底面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
造粒すべき原料が入れられるドラム(1)と、ドラム(1)内を公転する撹拌翼(2)と、ドラム(1)内を撹拌翼(2)とともに公転しつつ自転する撹拌ロータ(3)を備えた造粒物製造装置を用い、
製鉄ダスト又は/及び製鉄スラッジを主体とする原料を、下記(a)〜(f)の工程で順次処理することにより、造粒物を製造することを特徴とする製鉄ダスト等を主原料とする造粒物の製造方法。
(a)解砕工程:ケーキ状の製鉄ダスト又は/及び製鉄スラッジを解砕する。
(b)混合工程:少なくとも固化剤を添加し、製鉄ダスト又は/及び製鉄スラッジと混合する。
(c)造粒工程:混合工程で混合された原料を造粒し、主として造粒物の核を生成させる。
(d)整粒工程:造粒工程で生成した造粒物の核を粒成長させるとともに、粒成長した造粒物の表面を平滑化する。
(e)再解砕工程:整粒工程で得られた造粒物の一部を小片に解砕するとともに、造粒物の他の一部の表面を解砕して粗くする。
(f)再整粒工程:再解砕工程を経た造粒物に同工程で生じた小片を付着させることで、造粒物の粒径を増大させる。
【請求項2】
造粒物製造装置は、撹拌翼(2)の公転方向及び公転速度と撹拌ロータ(3)の自転速度が可変であり、撹拌翼(2)の公転方向及び公転速度と撹拌ロータ(3)の自転速度を選択することにより、原料を(a)〜(f)の工程で順次処理することを特徴とする請求項1に記載の製鉄ダスト等を主原料とする造粒物の製造方法。
【請求項3】
撹拌翼(2)は、一方の公転方向での公転時には、上面側で原料を掻き上げる作用をし、他方の公転方向での公転時には、下面側で原料を圧縮する作用をすることを特徴とする請求項1又は2に記載の製鉄ダスト等を主原料とする造粒物の製造方法。
【請求項4】
撹拌翼(2)は、公転軌道のほぼ接線方向において、水平面に対して上下方向の傾きを有し、傾き下端側を先端として公転する場合に、その上面側で原料を掻き上げる作用をし、傾き上端側を先端として公転する場合に、その下面側で原料を圧縮する作用をすることを特徴とする請求項3に記載の製鉄ダスト等を主原料とする造粒物の製造方法。
【請求項5】
撹拌翼(2)はドラム底面(100)との間隔を変更するための間隔調整機構(14)を有し、撹拌翼(2)が上面側で原料を掻き上げる作用をする際には前記間隔を狭め、撹拌翼(2)が下面側で原料を圧縮する作用をする際には前記間隔を拡げることを特徴とする請求項3又は4に記載の製鉄ダスト等を主原料とする造粒物の製造方法。
【請求項6】
撹拌翼(2)が、上面側で原料を掻き上げる作用をする公転方向に公転する場合を「正回転」、下面側で原料を圧縮する作用をする公転方向に公転する場合を「逆回転」とし、撹拌ロータ(3)が撹拌翼(2)の「正回転」の公転と同じ回転方向に自転する場合を「正回転」とした場合に、(a)〜(f)の各工程において下記の処理を行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の製鉄ダスト等を主原料とする造粒物の製造方法。
(a)解砕工程:撹拌翼(2)を逆回転で低速回転させながら撹拌ロータ(3)を正回転で高速回転させる処理と、撹拌翼(2)を正回転で低速回転させながら撹拌ロータ(3)を正回転で高速回転させる処理を、交互に1回以上行う。
(b)混合工程:撹拌翼(2)を逆回転で低速回転させながら撹拌ロータ(3)を正回転で高速回転させる処理を行う。
(c)造粒工程:撹拌ロータ(3)を正回転で中速回転させながら、撹拌翼(2)を正回転で中速回転させる処理を行う。
(d)整粒工程:撹拌翼(2)を正回転で高速回転させながら、撹拌ロータ(3)を正回転で低速回転させる処理を行う。
(e)再解砕工程:撹拌翼(2)を逆回転で低速回転させながら撹拌ロータ(3)を正回転で高速回転させる処理を行う。
(f)再整粒工程:撹拌翼(2)を正回転で高速回転させながら、撹拌ロータ(3)を正回転で低速回転させる処理を行う。
【請求項1】
造粒すべき原料が入れられるドラム(1)と、ドラム(1)内を公転する撹拌翼(2)と、ドラム(1)内を撹拌翼(2)とともに公転しつつ自転する撹拌ロータ(3)を備えた造粒物製造装置を用い、
製鉄ダスト又は/及び製鉄スラッジを主体とする原料を、下記(a)〜(f)の工程で順次処理することにより、造粒物を製造することを特徴とする製鉄ダスト等を主原料とする造粒物の製造方法。
(a)解砕工程:ケーキ状の製鉄ダスト又は/及び製鉄スラッジを解砕する。
(b)混合工程:少なくとも固化剤を添加し、製鉄ダスト又は/及び製鉄スラッジと混合する。
(c)造粒工程:混合工程で混合された原料を造粒し、主として造粒物の核を生成させる。
(d)整粒工程:造粒工程で生成した造粒物の核を粒成長させるとともに、粒成長した造粒物の表面を平滑化する。
(e)再解砕工程:整粒工程で得られた造粒物の一部を小片に解砕するとともに、造粒物の他の一部の表面を解砕して粗くする。
(f)再整粒工程:再解砕工程を経た造粒物に同工程で生じた小片を付着させることで、造粒物の粒径を増大させる。
【請求項2】
造粒物製造装置は、撹拌翼(2)の公転方向及び公転速度と撹拌ロータ(3)の自転速度が可変であり、撹拌翼(2)の公転方向及び公転速度と撹拌ロータ(3)の自転速度を選択することにより、原料を(a)〜(f)の工程で順次処理することを特徴とする請求項1に記載の製鉄ダスト等を主原料とする造粒物の製造方法。
【請求項3】
撹拌翼(2)は、一方の公転方向での公転時には、上面側で原料を掻き上げる作用をし、他方の公転方向での公転時には、下面側で原料を圧縮する作用をすることを特徴とする請求項1又は2に記載の製鉄ダスト等を主原料とする造粒物の製造方法。
【請求項4】
撹拌翼(2)は、公転軌道のほぼ接線方向において、水平面に対して上下方向の傾きを有し、傾き下端側を先端として公転する場合に、その上面側で原料を掻き上げる作用をし、傾き上端側を先端として公転する場合に、その下面側で原料を圧縮する作用をすることを特徴とする請求項3に記載の製鉄ダスト等を主原料とする造粒物の製造方法。
【請求項5】
撹拌翼(2)はドラム底面(100)との間隔を変更するための間隔調整機構(14)を有し、撹拌翼(2)が上面側で原料を掻き上げる作用をする際には前記間隔を狭め、撹拌翼(2)が下面側で原料を圧縮する作用をする際には前記間隔を拡げることを特徴とする請求項3又は4に記載の製鉄ダスト等を主原料とする造粒物の製造方法。
【請求項6】
撹拌翼(2)が、上面側で原料を掻き上げる作用をする公転方向に公転する場合を「正回転」、下面側で原料を圧縮する作用をする公転方向に公転する場合を「逆回転」とし、撹拌ロータ(3)が撹拌翼(2)の「正回転」の公転と同じ回転方向に自転する場合を「正回転」とした場合に、(a)〜(f)の各工程において下記の処理を行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の製鉄ダスト等を主原料とする造粒物の製造方法。
(a)解砕工程:撹拌翼(2)を逆回転で低速回転させながら撹拌ロータ(3)を正回転で高速回転させる処理と、撹拌翼(2)を正回転で低速回転させながら撹拌ロータ(3)を正回転で高速回転させる処理を、交互に1回以上行う。
(b)混合工程:撹拌翼(2)を逆回転で低速回転させながら撹拌ロータ(3)を正回転で高速回転させる処理を行う。
(c)造粒工程:撹拌ロータ(3)を正回転で中速回転させながら、撹拌翼(2)を正回転で中速回転させる処理を行う。
(d)整粒工程:撹拌翼(2)を正回転で高速回転させながら、撹拌ロータ(3)を正回転で低速回転させる処理を行う。
(e)再解砕工程:撹拌翼(2)を逆回転で低速回転させながら撹拌ロータ(3)を正回転で高速回転させる処理を行う。
(f)再整粒工程:撹拌翼(2)を正回転で高速回転させながら、撹拌ロータ(3)を正回転で低速回転させる処理を行う。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−97293(P2012−97293A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243840(P2010−243840)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【出願人】(000154901)株式会社北川鉄工所 (63)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【出願人】(000154901)株式会社北川鉄工所 (63)
【Fターム(参考)】
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