説明

製鋼ダストの塊成方法

【課題】 従来よりも強度を向上させた塊成体を、経済的かつ生産性よく製造可能な製鋼ダストの塊成方法を提供する。
【解決手段】 製鋼ダストと生石灰を有し、しかも金属鉄量を5質量%以上60質量%以下にした成型体10をヤード11に積付け、単位体積当たりの表面積を1m2 /m3 以上20m2 /m3 以下にした積付け山12を形成し、積付け山12中の成型体を自然酸化して、従来よりも強度を向上させた塊成体を、経済的かつ生産性よく製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転炉精錬で湿式回収した製鋼ダストを有する多数の成型体をヤードに積付け、成型体の自然酸化による発熱反応によって塊成体を製造する製鋼ダストの塊成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製鋼工程の転炉精錬で発生する製鋼ダスト(例えば、転炉スラッジ)は、塊成化した後、再度鉄源として製鋼工程に戻され、その鉄分が回収されている。以下に、塊成化の代表的な方法を示す。
例えば、特許文献1には、製鋼ダストを900℃を超える温度で焼成して焼結し、強度を高めた塊成体を製造する方法が開示されている。
また、特許文献2には、製鋼ダストにアルファー化した澱粉又は穀粉からなるバインダーを混合して成型し、得られた成型体を乾燥して塊成化する方法が開示されている。
そして、特許文献3には、製鋼ダストをヤードに積付け、天日乾燥又は通気による強制乾燥を行い、塊成化したものを破砕して、5mm以上10mm以下の粉を転炉原料にし、30mm以上50mm以下の大塊を高炉原料にする方法が開示されている。
更に、特許文献4には、金属鉄を5質量%以上含有する製鋼ダストに、2質量%以上15質量%以下の生石灰を混合して成型し、得られた成型体を高さ2m以下に積付け、屋内養生することにより塊成化する方法が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平4−66625号公報
【特許文献2】特開2001−214222号公報
【特許文献3】特開平7−113126号公報
【特許文献4】特開2004−52052号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の方法には未だ解決すべき以下のような問題があった。
特許文献1の方法では、製鋼ダストを900℃を超える温度で焼成するため、エネルギーコストがかかり有効な処理とは言い難い。
また、特許文献2の方法では、製鋼ダストにバインダーを添加するため、成型体の含水量が多くなり、強度が低下し乾燥に時間を要し、自然養生して製造した塊成体の品質が低下する。また、製鋼ダストにアルファー化したバインダーを添加する必要があるため、アルファー化するための処理コストがかかり経済的でない。
そして、特許文献3の方法は、塊成化したものを破砕し選別する破砕選別工程が必要であり、しかも5mm未満の未利用のものが大量に発生するという問題がある。
更に、特許文献4の方法は、本発明者の調査の結果、成型体の積付け高さを2m以下に調整しても、その表層部に良好な酸化層を形成して強度を高めた塊成体を得ることができない場合があった。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、従来よりも強度を向上させた塊成体を、経済的かつ生産性よく製造可能な製鋼ダストの塊成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う本発明に係る製鋼ダストの塊成方法は、製鋼ダストと生石灰を有し、しかも金属鉄量を5質量%以上60質量%以下にした成型体をヤードに積付け、単位体積当たりの表面積を1m2 /m3 以上20m2 /m3 以下にした積付け山を形成し、該積付け山中の前記成型体を自然酸化して塊成体を製造する。
【0007】
本発明に係る製鋼ダストの塊成方法において、前記積付け山の単位体積当たりの表面積の下限値SL を、前記成型体中の前記金属鉄量に応じて、下式により設定することが好ましい。
L (m2 /m3 )=0.033×{成型体中の金属鉄量(質量%)}+0.567
【0008】
本発明に係る製鋼ダストの塊成方法において、前記生石灰量を前記成型体の2質量%以上15質量%以下にすることが好ましい。
本発明に係る製鋼ダストの塊成方法において、前記成型体の含水量を該成型体の5質量%以上30質量%以下にすることが好ましい。
本発明に係る製鋼ダストの塊成方法において、前記成型体は、更に、製鉄所で発生する乾燥した乾粉ダスト、又は製造した前記塊成体を篩選別処理して得られた粉状物を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
請求項1〜5記載の製鋼ダストの塊成方法は、所定量の金属鉄を含む多数の成型体で形成される積付け山の単位体積当たりの表面積を所定範囲に設定し、自然酸化して塊成体を製造するので、成型体を発熱温度100℃以下の温度に維持しながら、自然酸化による強度上昇ができ、従来よりも強度を向上させた塊成体を、簡単な方法で経済的に生産性よく製造できる。また、このようにして製造した塊成体を、例えば転炉に供給する際には、塊成体の粉化又は飛散を抑制でき、作業環境を良好にできると共に、塊成体中の鉄分の回収率も向上できる。
【0010】
特に、請求項2記載の製鋼ダストの塊成方法は、積付け山の単位体積当たりの表面積の下限値SL を、成型体に含有される金属鉄量に応じて決めるので、金属鉄量の影響による成型体の温度上昇を防止しながら、安全かつ生産性よく塊成体を製造できる。
【0011】
請求項3記載の製鋼ダストの塊成方法は、成型体中の生石灰量を設定するので、生石灰を過剰に使用することなく、成型体の表層部に安定に酸化被膜を形成して、塊成体内部の酸化の抑制を図ることができる。また、生石灰が成型体中の水分と水和反応して、成型体の含水率を低下させると共に、成型体内部に炭酸化物を形成して製鋼ダスト同士を結合させるので、塊成体の強度を従来よりも向上できる。
【0012】
請求項4記載の製鋼ダストの塊成方法は、成型体の含水量を5質量%以上30質量%以下にするので、酸化発熱により成型体中の水分を蒸発させて除去できると共に、成型体表層部の酸化被膜の形成を促進できる。
【0013】
請求項5記載の製鋼ダストの塊成方法は、成型体が製鉄所で発生する乾燥した乾粉ダストを有する場合は、製鋼ダストに含まれる水分を乾粉ダストが吸収して成型体の水分調整が容易にできると共に、低級ダストの有効活用が図れる。また、乾粉ダスト中の金属鉄も有効活用できる。
また、成型体が製造した塊成体を篩選別処理して得られた粉状物を有する場合は、製品として使用できない細かい塊成体の有効利用が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここで、図1は本発明の一実施の形態に係る製鋼ダストの塊成方法の説明図、図2(A)、(B)はそれぞれ同製鋼ダストの塊成方法を使用して多数の成型体を積付け形成した積付け山の斜視図、図3は成型体養生時の熱バランス概念の説明図、図4は成型体中の金属鉄量と積付け山の単位体積あたりの比表面積との関係を示す説明図である。
【0015】
図1、図2(A)に示すように、本発明の一実施の形態に係る製鋼ダストの塊成方法は、製鋼ダストに生石灰と乾粉ダストを混合し成型して成型体10を作製し、多数の成型体10を養生ヤード(ヤードの一例)11に積付けて積付け山12を形成し、積付け山12中の成型体10を自然酸化して塊成体を製造する方法である。以下、詳しく説明する。
【0016】
製鋼ダストは、例えば、金属鉄を含有する湿式回収した転炉スラッジである。この転炉スラッジは、転炉から発生するダストを湿式回収する方式、即ち転炉OGシステムの集塵水により回収したものを、シックナー(凝集沈降槽)により凝集した後、これを例えば、フィルタープレスによって、例えば含水率25±10(質量%)程度まで脱水したものである。
なお、製鋼ダストとして、湿式回収した他の製鋼ダスト(例えば、高クロムダスト)を使用することもできる。特に、例えばステンレスのような含クロム鋼のダストを用いることで、クロム供給源として高価なフェロクロム(Fe−Cr合金)の使用量を削減でき、極めて有効である。
また、製鋼ダストに、製鉄所から発生する湿式回収した他の含鉄スラッジ(例えば、鉄板を酸洗処理した後に発生する酸洗スラッジ)を、成型体中の金属鉄量の配合範囲内で添加することもできる。
【0017】
生石灰は粉状となったものであり、図3に示すように、成型体10の表層部に安定で緻密な酸化被膜13を形成して、塊成体内部の酸化の抑制を図ると共に、生石灰が成型体10中の水分と水和反応して、塊成体の強度を従来よりも向上させる役割を有するものである。ここで、塊成体の強度発現は、成型体10の内部で、生石灰が成型体10中の水分と水和反応して消石灰となり、そのとき発生する反応熱によって、水の蒸発が促進され、成型体10の含水率を低下させると共に、消石灰の一部が炭酸化反応して炭酸化物を形成し、成型体10中の製鋼ダスト同士を結び付けることによって生じる。
【0018】
なお、成型体中の生石灰量は、製造する成型体の2質量%以上15質量%以下にする。
ここで、生石灰量が成型体の2質量%未満の場合、成型体の自然酸化の際に、成型体内部まで酸化が進行し、塊成体中に含まれる金属鉄量が減少して、塊成体の品質が低下する。また、前記した塊成体の強度発現を得る効果が少ない。
一方、生石灰量が成型体の15質量%を超える場合、酸化被膜の形成及び強度発現の効果が飽和するため、生石灰が過剰使用となって経済的でない。
このことから、成型体中の生石灰量の下限を2質量%としたが、5質量%とすることが好ましく、上限を15質量%としたが、10質量%とすることが好ましい。
【0019】
そして、乾粉ダストは、例えば、製鉄所から発生する乾燥した転炉集塵ダストである。なお、製鉄所から発生する乾燥したダストであれば、他の乾粉ダスト(例えば、換気ダスト)を使用することもできる。
このように、使用する乾粉ダストは乾燥状態であるため、転炉スラッジの水分を吸収し、成型体中の含水量を調整できる。従って、乾粉ダストは、製造する成型体の含水量に応じて、使用することも、また使用しないこともできる。
【0020】
以上に示した製鋼ダスト、生石灰、及び乾粉ダストを、所定の混合比率に調整し、例えば、従来公知の混練機を使用して、所定時間(例えば、4分程度)混練し、従来公知の押出成形機によって、例えば、図3に示す円柱状(例えば、直径10mm以上30mm以下程度、長さ20mm以上50mm以下程度)の成型体10を作製する。なお、成型体の形状はこれに限定されるものでなく、例えば、球状であってもよく、また断面矩形状であってもよい。
次に、作製する成型体の金属鉄量と含水量について説明する。
【0021】
成型体中の金属鉄量は、5質量%以上60質量%以下にする。
成型体中の金属鉄量が成型体の5質量%未満の場合、積付け山全体の発熱量が不足して、例えば、成型体中の水分の除去、及び強固な酸化被膜の形成ができず、必要とする強度が得られない。そこで、成型体中の金属鉄量の下限を、成型体の5質量%としたが、10質量%とすることが好ましい。
一方、金属鉄量の上限は、高くても特に問題ないが、金属鉄を主成分とする製鋼ダストは、酸化鉄又は酸化クロムを含み、また生石灰、更には乾粉ダストを混合するため、その混合量に応じて60質量%とする。
なお、金属鉄は、乾粉ダストに含まれる場合もあるため、この場合は、乾粉ダストに含まれる金属鉄も、成型体中の金属鉄量として換算する。
【0022】
また、成型体の含水量を5質量%以上30質量%以下にする。
このように、成型体中の含水量を設定することで、酸化発熱により成型体に含まれる水分を十分に蒸気化して除水できると共に、成型体表層部の酸化被膜の形成を促進して成型体の強度を上昇できる。
ここで、成型体の含水量が5質量%未満の場合、成型体の成形性が悪化し、成型体の品質が劣化する結果となり、成型体内部へ酸化が進む。一方、成型体の含水量が30質量%を超える場合、成型体の成形直後の強度が確保できず、ハンドリング(搬送)が困難になり、更には過剰水分のため成型体表層部の酸化を良好に実施できない。
このため、成型体の水分の下限を5質量%としたが、10質量%とすることが好ましく、また上限を30質量%としたが、25質量%とすることが好ましい。
【0023】
なお、成型体の含水量が、前記した上限値を超えるような含水率の製鋼ダストを使用する場合は、前記した乾粉ダストを使用して成型体の含水率を調整する。この方法としては、成型時の含水量を、前記した規定範囲内の目標値(例えば、17±1質量%)とするため、例えば、使用する転炉スラッジの水分測定を予め実施し、その過不足分を、生石灰の混合比率、更には乾粉ダストの混合比率を変更することによって調整する。
【0024】
以上の方法で作製した多数の成型体10を、シャトル式のコンベアを有する自動積付け機を使用して養生ヤード11に積付け、その高さを所定の高さ(例えば、1m、好ましくは0.5m)以下とし、例えば、幅を10m以下程度、長さを20m以下程度とした積付け山を形成する。なお、養生ヤード11に形成する積付け山は、1つでもまた複数でもよく、複数の場合は、この積付け山を一定間隔(例えば、1mピッチ、好ましくは0.4mピッチ)で形成する。
従来のように、積付け山の高さ条件のみを満足するようにしても、製鋼ダストの酸化による発熱と積付け山からの放熱とのバランスが適正でなければ、積付け山を形成する成型体の表層部の金属鉄又はFeOをFe23 に酸化できず、強度の高い塊成体が得られない。そこで、多数の成型体の積付けを行う際には、形成した積付け山の高さではなく、積付け山の単位体積当たりの表面積(以下、比表面積ともいう)を1(m2 /m3 )以上20(m2 /m3 )以下の範囲にする。
【0025】
ここで、積付け山の比表面積が1(m2 /m3 )未満の場合、大気と接触する積付け山の表面積が小さくなり、成型体の発熱量が積付け山からの抜熱量よりも大きくなる。このため、積付け山に熱が蓄積され易くなり、成型体温度が上昇して100℃を超える場合があり、酸化が進行し過ぎて、養生による強度の向上が得られない。このように、成型体温度が100℃を超える場合、発火の兆候があると判断する。
一方、積付け山の比表面積が20(m2 /m3 )を超える場合、大気と接触する積付け山の表面積が大きくなり、成型体の発熱量が積付け山からの抜熱量よりも小さくなる。このため、積付け山の内部の熱量が不足し、例えば、成型体の水分の除去、成型体の表層部の金属鉄又はFeOを酸化できず、強度の高い塊成体が得られない。なお、大気と接触する積付け山の表面積が大きくなれば、養生ヤードの面積もそれに応じた広さが必要となり、その土地の確保が難しくなる。
【0026】
以上のことから、積付け山の比表面積の下限値を1(m2 /m3 )としたが、2(m2 /m3 )とすることが好ましく、更には3(m2 /m3 )とすることが好ましい(図4参照)。また、積付け山の比表面積の上限値を20(m2 /m3 )としたが、15(m2 /m3 )とすることが好ましい。
このような条件を満足する積付け山の形状としては、図2(A)に示す積付け山12のように、断面連続山形状(三角波形状)とする。
また、図2(B)に示すように、断面台形状の積付け山14を形成することも、図3に示す円錐状の積付け山15とすることも、更には、円錐台状の積付け山(図示しない)とすることもできる。
ここで、成型体の温度測定は、最も熱がこもり易い場所となる積付け山の中心部(周囲を除く厚み方向中心位置)に、熱電対を配置して行う。
【0027】
なお、積付け山の比表面積(m2 /m3 )の下限値SL は、成型体の金属鉄の含有量に応じて設定することが好ましい。
ここで、成型体中の金属鉄量と、円錐状又は円錐台状の積付け山の比表面積との関係について、図4を参照しながら説明する。なお、使用した成型体は、生石灰を5質量%、乾粉ダストを2質量%とし、金属鉄量を20質量%以上40質量%以下の範囲内で変更し、含水量を16質量%以上18質量%以下の範囲としたものである。また、図4において、成型体(積付け山)の温度が100℃以下の場合を白抜き印とし、100℃を超えた場合を黒塗り印として、多数の成型体の積付け時の温度毎(○及び●:50℃、□及び■:65℃、△及び▲:80℃)に調査した結果である。なお、成型体の温度測定は、最も熱がこもり易い場所となる積付け山の中央部、即ち、円錐状又は円錐台状の積付け山の軸心上の高さ方向中央付近に熱電対を配置して行った。
【0028】
通常、成型体の積付け時の温度は、65℃以下であることから、積付け山の比表面積(m2 /m3 )の下限値SL は、以下の関係式から得られる。
L (m2 /m3 )=0.033×{成型体中の金属鉄量(質量%)}+0.567
特に、成型体の積付け時の温度が50℃以下であれば、積付け山の比表面積(m2 /m3 )の下限値を1m2 /m3 まで低下させても、成型体温度を100℃以下にできる。
しかし、成型体温度を100℃以下にするには、成型体の積付け時の温度が80℃でも、成型体温度を100℃以下にできる以下の関係式から、積付け山の比表面積(m2 /m3 )の下限値SL ´を求めることが好ましい。
L ´(m2 /m3 )=0.043×{成型体中の金属鉄量(質量%)}+1.28
【0029】
以上の条件で積付け山12を形成することで、積付け山12中の成型体10の発熱温度を100℃以下(好ましくは90℃以下)とし、例えば、天候(気温又は湿度)又は成型体の含水量に応じて、3日以上10日以下(ここでは、7日)程度養生する。
これにより、成型体10を自然酸化し、成型体10の表層部の金属鉄及びFeOのいずれか一方又は双方をFe23 にして、強度を高めた塊成体を製造する。
養生が終了した後、篩選別機を使用して、製造した多数の塊成体を篩選別処理する。
ここで、篩上になる粒径が大きな塊成体(例えば、5mm超)は、例えば、転炉(高炉でもよい)へ供給され、その鉄成分が回収される。一方、篩下になる粒径が小さな粉状物(例えば、5mm以下)は、再度成型体を製造する原料として使用できる。なお、この粉状物は、低水分量となっているため、前記した乾粉ダストと同様、成型体の水分量調整材の役割も有する。
【実施例】
【0030】
次に、本発明の作用効果を確認するために行った実施例について説明する。
ここでは、多数の成型体を積付けて製造した塊成体の強度と製品品質の評価について、表1、表2を参照しながら説明する。なお、成型体の金属鉄の含有量を5質量%以上60質量%以下の範囲内に設定し、積付け山の比表面積を1m2 /m3 以上20m2 /m3 以下の範囲内にして塊成化した塊成体を実施例1〜15として、表1に示した。一方、比表面積が1m2 /m3 未満の積付け山で形成した塊成体を比較例1とし、20m2 /m3 を超える積付け山で形成した塊成体を比較例2とし、成型体の金属鉄の含有量が5質量%未満の積付け山で形成した塊成体を比較例3として、表2に示した。また、製造した各塊成体強度は、焼成した鉄鉱石ペレットの圧潰強度を測定するJIS M8718を使用して測定した。なお、測定した塊成体強度は、製造した塊成体1個に規定の加圧盤速度で圧縮荷重をかけて塊成体を破壊する際に、完全に破壊するために負荷した圧縮荷重の最大値である。
【0031】
【表1】

【0032】
【表2】

【0033】
表1に示すように、実施例1〜15の塊成体は、成型体の発熱温度が100℃以下となり、製品として使用可能な強度、即ち25daN(25デカニュートン)以上を達成できることを確認できた。
また、成型体の生石灰量を2質量%以上15質量%以下の範囲内、成型体の含水量を5質量%以上30質量%以下の範囲内に設定した実施例1〜4、8〜15については、塊成体の強度を47daN以上にできることを確認できた。
【0034】
この実施例1〜4、8〜15について、積付け山の比表面積の影響について説明する。なお、積付け山の比表面積については、積付け山が大気と接触する実際の比表面積を実績値とし、前記した下限値SL の計算式に基づいて得られた積付け山の比表面積を計算下限値として、それぞれ示している。
実施例1〜4、8〜11は、実績値が計算下限値よりも大きく、一方実施例12〜15は、実績値が計算下限値よりも小さくなった結果である。表1から明らかなように、実績値を計算下限値よりも大きくすることで、成型体の温度上昇を抑制して、塊成体の強度を53daN以上にできることを確認できた。なお、この比表面積の影響は、成型体の金属鉄の含有量、生石灰量、含水量、及び乾粉ダスト量が略同等の実施例8〜11と実施例12〜15とを比較することで、より明白である。
【0035】
一方、比較例1〜3は、実施例1〜15と比較して、塊成体の強度が大幅に低下した(15daN以下)。
特に、比較例1は、積付け山の比表面積が小さく(1m2 /m3 未満)、成型体の発熱によって積付け山に熱が蓄積されるため、成型体の発熱温度が100℃を超え、成型体の内部まで酸化されて、塊成体に強度低下が生じた。
また、比較例2は、積付け山の比表面積が大きく(20m2 /m3 超)、成型体の水分除去を十分に行うことができず、酸化が進行せずに強度低下が生じた。
そして、比較例3は、成型体中の金属鉄量が5質量%未満となっており、塊成体の強度を高めることができなかった。
以上のことから、成型体中の金属鉄量及び積付け山の比表面積を適正範囲内とすることで、成型体の発熱温度を100℃以下にし、従来よりも強度を向上させた塊成体を、経済的かつ生産性よく製造できることを確認できた。
【0036】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明の製鋼ダストの塊成方法を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施の形態に係る製鋼ダストの塊成方法の説明図である。
【図2】(A)、(B)はそれぞれ同製鋼ダストの塊成方法を使用して多数の成型体を積付け形成した積付け山の斜視図である。
【図3】成型体養生時の熱バランス概念の説明図である。
【図4】成型体中の金属鉄量と積付け山の単位体積あたりの比表面積との関係を示す説明図である。
【符号の説明】
【0038】
10:成型体、11:養生ヤード、12:積付け山、13:酸化被膜、14、15:積付け山

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製鋼ダストと生石灰を有し、しかも金属鉄量を5質量%以上60質量%以下にした成型体をヤードに積付け、単位体積当たりの表面積を1m2 /m3 以上20m2 /m3 以下にした積付け山を形成し、該積付け山中の前記成型体を自然酸化して塊成体を製造することを特徴とする製鋼ダストの塊成方法。
【請求項2】
請求項1記載の製鋼ダストの塊成方法において、前記積付け山の単位体積当たりの表面積の下限値SL を、前記成型体中の前記金属鉄量に応じて、下式により設定することを特徴とする製鋼ダストの塊成方法。
L (m2 /m3 )=0.033×{成型体中の金属鉄量(質量%)}+0.567
【請求項3】
請求項1及び2のいずれか1項に記載の製鋼ダストの塊成方法において、前記生石灰量を前記成型体の2質量%以上15質量%以下にすることを特徴とする製鋼ダストの塊成方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の製鋼ダストの塊成方法において、前記成型体の含水量を該成型体の5質量%以上30質量%以下にすることを特徴とする製鋼ダストの塊成方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の製鋼ダストの塊成方法において、前記成型体は、更に、製鉄所で発生する乾燥した乾粉ダスト、又は製造した前記塊成体を篩選別処理して得られた粉状物を有することを特徴とする製鋼ダストの塊成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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