説明

複写機用廃トナーカートリッジからのトナーの回収法

【課題】トナー分離を、その付着力を解消する混合水溶液で、効果的に、低コストで安全に実現できる。廃トナーカートリッジからのトナー回収方法及びその処理システムを提供する。
【解決手段】トナーが残留する廃トナーカートリッジを単環式モノテルペノイド含有の
懸濁液散布下で破砕し、所要の大きさに粉砕する粉砕工程と、前記粉砕工程で生成された粉砕片とトナー並びにトナーを懸濁する懸濁液をコンベアー上で篩い分けする分離工程と、前記トナー懸濁液を凝集沈殿工程と、前記凝集沈殿工程から分離されたトナーを濾過その他の乾燥工程からなり、懸濁液を回収して、再利用する回収・供給工程からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機の印字用等に使用された廃トナーカートリッジからのトナー回収に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機用廃トナーカートリッジからのトナーの回収法として、廃トナーカートリッジを粉砕して採取する方法があるが、微粉末のトナーが粉砕中に静電気を発生し、何らかの衝撃で火花を発生させ、爆発に至ることが知られている。
【0003】
この静電気の発生を防ぐ方法、静電気をアースする方法として、水中で廃トナーカートリッジを粉砕する方法があるが、親水性の悪いトナー同士の接着力などで固まったトナーの集合体が水面に浮かび壊れる際に微粉を撒き散らし、作業場環境を汚し、火事の発生が心配されるなど安全上の問題がある。
【0004】
前期のトナーの集合体を解決するため、界面活性剤を溶解させた水溶液中で、トナーカートリッジを粉砕し、粉砕前・粉砕中・粉砕後も親水性の悪いトナーに、界面活性剤溶解水溶液のシャワーを粉砕機、廃トナーカートリッジおよびトナーに吹きつけ静電気の発生を防止し、トナーを水中に懸濁させる方法があるが、それでもまだトナーの一部またはかなりの部分が懸濁せず、界面活性剤だけではすべてを懸濁させることはできず、水面に浮遊することとなる。
【0005】
これを解決する方法として、単環式モノテルペノイド水溶液をトナーに吹きかけることによりトナー同士境界の接着力を減少または無くし、もしくは単環式モノテルペノイドと界面活性剤入りの水溶液を吹きかけることによりトナー同士境界の接着力を減少または無くし、トナーを水中に懸濁させることができる。
【0006】
このようにすることにより、水面に浮遊するトナーの前記集合体の固まりがなくなり、固まりが壊れる時に発生するトナーの噴出飛散も無くなり、作業場環境も汚れず、作業場環境の汚れにともなう火災も発生しなくなる。
【0007】
次に問題になるのは、懸濁したトナーをどのように回収するかという課題である。トナー懸濁液に凝集剤を添加し、トナー懸濁液を必要時間静置するとトナーが沈殿しトナー濃縮層が生ずる。トナー濃縮層を採取し、濾過、遠心分離また強制乾燥などを使用し、トナーと懸濁液の分離を行う。懸濁液は単環式モノテルペノイド水溶液または単環式モノテルペノイドと界面活性剤の混合水溶液となる。
【0008】
トナー汚泥またはトナーの固まりは、セメント工場の燃料またはRPFに混ぜて燃料として活用される。トナー懸濁液から分離された懸濁液は再度トナーカートリッジ粉砕時の静電気発生防止およびトナー集合体からのトナーの噴出防止用の水溶液としかつトナーを懸濁するための水溶液として使用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002‐79125
【0010】
この特開2002‐79125は使用済みトナーカートリッジの処理装置及び処理方法
の発明でありその請求項2にあるように、爆発限界以下の雰囲気として不活性ガスを使用するということになっており、この請求項に記載の発明と本発明の技術は一致しない。
【特許文献2】特開2001‐205245
【0011】
この特開2001‐205245は使用済みトナーカートリッジのトナー分離方法及び
その処理システムの発明でありその請求項1にあるように脱磁処理を行うが、本発明は脱磁処理を行わずに、単環式モノテルペノイドをトナーの集合体に吹きかけ、トナー同士の接着力を低下もしくは無くすることを特徴とする。またトナーの抽出法として沈殿分離を採用し、トナー濃縮層のみを取り出し、これを濾過、遠心分離または強制乾燥することを特徴としている。
【特許文献3】特開2007‐332192
【0012】
この特開2007‐332192は廃トナーの燃料化方法及びトナー燃料の発明であり、その請求項4にあるように、界面活性剤を添加した水の液体に混合、分散するということを提案しているが、この方法では、トナー同士境界の接着力を減少または無くすることはできず、この特許特開2007‐332192の請求項4が目指す混合、分散状態は、本発明が求める状態すなわち前記懸濁液中にトナーを懸濁した溶液を得ることはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
解決しようとする課題は、トナー微粉末を内包含する廃トナーカートリッジを粉砕する場合、微粉末同士間、微粉末と容器同士間、微粉末と破砕機間の摩擦によって発生する高位の静電気を防止できていない点、また破砕後に生じるトナー微粉の集合体が壊れる時に微粉末が飛散することにより作業場環境が汚れ、火災の危険性が発生する点にある。
【0014】
また、抽出された微粉末であるトナーを輸送する場合に、粉末状のトナー間の摩擦で、静電気を発生させ発火・爆発をさせる可能性が高く、トナーの輸送が困難なことである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1は、トナー微粉末同士間、トナー微粉末と容器間、トナー微粉末と粉砕機間の摩擦によって発生する静電気を防止するにあたり、廃カートリッジの粉砕を水溶液噴霧中で実施することである。
【0016】
第2は、トナー微粉末が集合して水面に浮遊する固まりを、単環式モノテルペノイド水溶液もしくは単環式モノテルペノイドと界面活性剤の混合水溶液によって水中に懸濁させることによってトナー微粉末の飛散を防止してトナー懸濁液を貯留糟に貯留することである。
【0017】
第3は、貯留糟のトナー懸濁液を沈殿槽に移し、トナー懸濁液に凝集剤ポリ塩化アルミニュームを添加することにより、トナー微粉末を凝集・沈殿させ、トナー濃縮層と請求項1記載の懸濁液に分離ですることである。第4は請求項1の懸濁液はトナーを回収した残りの懸濁液を使用することにある。
【0018】
第5は、前記懸濁液は懸濁状況をチェックし、懸濁が不十分な場合は単環式モノテルペノイドか界面活性剤もしくは両方を適量添加することを特徴とする。
【0019】
第6は、トナー、廃プラスチックの分離は、破砕時、廃トナーカートリッジから生ずるトナーと廃プラスチックの大きさを、破砕機の破砕条件で決定し、破砕後のコンベアーの網目の大きさで廃プラスチックはコンベアー上に残り、コンベアーの後工程の廃プラスチックの抽出ラインで採取され、トナーは破砕後のコンベアーの網目から懸濁液とともに下に落ちて貯留槽にトナー懸濁液を生ずる。さらにトナー懸濁液が沈殿槽に移され凝集剤ポリ塩化アルミニュームが添加されトナー濃縮層を沈殿分離することである。
【0020】
第7は、トナー濃縮層はその後工程で濾過、遠心分離または強制乾燥などにより要求される水分率、処理時間を満たすことができることである。
【0021】
用語の説明をする。
廃トナーカートリッジとは、使用済のものや、使用期限の過ぎたトナーカートリッジをさす。
懸濁液とは、トナーを懸濁させるための溶液
トナー懸濁液とは、トナーの懸濁している溶液
単環式モノテルペノイドは、カルボニル基やヒドロキシ基などの官能基を持つため、プラスチックを溶解する力があり、これがトナーを懸濁液に懸濁させる。
凝集剤ポリ塩化アルミニュームとは、トナーを懸濁液に添加することにより、トナーのフロックが形成され、これが吸着、架橋し粗大化してトナーを沈降させる。
【発明の効果】
【0022】
静電気によって発生する爆発・火災の発生を防止するため、従来法として、手作業で廃トナーカートリッジを個々に切断・トナー吸引していたものを、本発明では、廃トナーカートリッジを一時に大量に粉砕し、安全にトナー回収を可能としたものである。また、回収したトナーの飛散を防止し作業場環境を汚し、火災発生させていたのを飛散しなくし作業場環境の汚染を防ぎ、火災の発生を防止した。以上のような危険性を排除して大量に廃トナーカートリッジからトナーを回収することができるようすることができた。また、回収トナーを使用する工場まで、安全・安心に輸送できるように、汚泥状または固形状のトナーとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】廃トナーカートリッジからのトナー回収システム
【発明を実施するための形態】
【0024】
破砕機上部から、廃トナーカートリッジ1を投入し、投入過程で懸濁液4−1をスプレー2で廃トナーカートリッジ1に、破砕機3での破砕前から破砕後の破砕物に懸濁液4−1がスプレー2噴射されるようにする。なお懸濁液4−1は単環式モノテルペノイド4、界面活性剤5と水6から作られる。破砕機3での破砕時に廃トナーカートリッジ1から生ずるトナーと廃プラスチックの大きさを、破砕条件で決定し、破砕後のコンベアー7の網目の大きさで廃プラスチックはコンベアー7上に残り、コンベアー7の後工程の廃プラスチックの抽出11ラインで採取され、トナーは破砕後のコンベアーの網目から懸濁液4−1とともに落下し、トナー懸濁液8−1としてトナー貯留槽8に貯留される。コンベアー7上の鋼材は鋼材の抽出9に 、非鉄材は非鉄材の抽出10に分別され、鋼材、非鉄材は排出コンベヤー7上で搬出される時点までに懸濁液4−1で水洗されトナーが洗い流がされた後、系外に取り出される。以上の水洗工程を実施した後のトナー懸濁液8−1は貯留槽8から沈降槽12に移されて凝集剤ポリ塩化アルミニュウム13が添加され、必要時間放置静置する。その結果、トナー濃縮層14が分離し、沈殿槽12の下部に沈殿したトナー濃縮層14を下部の排出口から取り出し、濾過15、遠心分離16および強制乾燥17のいずれかの後処理により、回収トナー18を生成する。また沈殿槽でトナーを採取して残った懸濁液4−1は繰り返し、スプレー2で使用される。
【0025】
廃トナーカートリッジからのトナー回収システムを図1に示す。
【実施例1】
【0026】
廃トナーカートリッジ1投入量に対応した破砕機3の能力とスプレー2噴射水量を調整することが必要になる。
【0027】
懸濁液4−1は、廃トナーカートリッジ1の外部をスプレー2洗浄し、廃トナーカートリッジ1を粉砕処理するには、破砕機3での破砕中・破砕後の破砕物を洗浄するために十分な懸濁液4−1をスプレー2噴射する必要がある。
【0028】
廃トナーカートリッジ1、破砕機3、トナー、廃プラスチック、鋼材、非鉄材を洗浄したトナー懸濁液8−1は貯留糟8集められ、次に沈殿槽12で凝集剤ポリ塩化アルミニュウム13を加え、トナーの沈降分離を行いトナー濃縮層14を得る。
【0029】
トナー濃縮層14を分別するにはトナー濃縮層14を抜き取り、濾過15または遠心分離16または強制乾燥17を行うが、回収トナー18の発生量は廃トナーカートリッジ1に含まれているトナーにバラツキがあるので、そのバラツキに対応した濾過装置15、遠心分離機装置16または強制乾燥装置17を準備する。
トナー同志の接着力解放とトナーと水との親和性を有する水溶液(以下懸濁液という)の混合比率を表1に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
粉砕方法と安全性の問題点について表2に示す。
【0032】
【表2】

【0033】
凝集剤の効果を表3に示す。
【0034】
【表3】

【0035】
濾過後のトナー汚泥状物質の水分率(一例)を表4に示す。
【0036】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0037】
廃トナーカートリッジは主に複写機製造会社、トナーカートリッジ製造会社等に回収され、トナーカートリッジの健全性を検査したのち、再生トナーカートリッジとしてトナーを充填してトナーカートリッジの商品になるものと廃トナーカートリッジとして破砕・分別され廃プラスチック、鋼材、非鉄材原料として回収され、トナーは燃料になる。
【0038】
しかし、現在のところ廃トナーカートリッジは爆発・火災の危険性から複写機製造会社、トナーカートリッジ製造会社から別のトナー回収会社に移送され、主に手作業にてトナー、廃プラスチック、鋼材、非鉄材に分別されているのが一般的である。
【0039】
この回収されたトナー、廃プラスチック、鋼材、非鉄材を再度複写機製造会社、トナーカートリッジ製造会社に返送し、原料とするためには移送コストが掛かり、トナーカートリッジ製造に再利用される可能ほとんどない状況である。これがもし複写機製造会社、トナーカートリッジ製造会社内で本特許により分別されると、トナー、廃プラスチック、鋼材、非鉄材が綺麗な状態で分別されるとトナーカートリッジを製造する上での移送コストが掛からず移送コストが削減できること、取り出した廃プラスチック、鋼材、非鉄材がそのまま再資源化が可能であることから、省資源化がより一層可能になる。
【符号の説明】
【0040】
1 廃トナーカートリッジ
2 スプレー
3 破砕機
4 単環式モノテルペノイド
4−1懸濁液
5 界面活性剤
6 水
7 コンベアー
8 貯留槽
8−1トナー懸濁液
9 鋼材の抽出
10 非鉄類の抽出
11 廃プラスチックの抽出
12 沈殿槽
13 凝集剤ポリ塩化アルミニュウム
14 トナー濃縮層
15 濾過
16 遠心分離
17 強制乾燥
18 回収トナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃トナーカートリッジからトナーを採取するために、単環式モノテルペノイド水溶液かもしくは単環式モノテルペノイドと界面活性剤の混合水溶液を懸濁液として用い、懸濁液を、廃トナーカートリッジの粉砕前から粉砕後まで噴射して、廃トナーカートリッジ中のトナーを貯留槽の中で前記懸濁液に懸濁させ、この懸濁状態のトナーを沈殿槽に移して、凝集剤ポリ塩化アルミニュームを添加してトナーを沈殿させて懸濁液と分離し、分離したトナーをさらに濾過、遠心分離又は強制乾燥のいずれかまたは複数の後処理を行い、所望の水分率のトナーを回収する方法。
【請求項2】
前記懸濁液は、トナーを回収した残りの懸濁液を繰り返し使用することを特徴とする請求項1記載の方法で、廃トナーカートリッジからトナーを採取する方法。
【請求項3】
前記懸濁液は、懸濁状況をチェックし、単環式モノテルペノイドもしくは界面活性剤のいずれかまたは両方を加え懸濁させることを特徴とする請求項1又は2のいずれか記載の方法で、廃トナーカートリッジからトナーを採取する方法。
【請求項4】
前記貯留糟は、その上部に篩い分け装置を有して廃プラスチック、鋼材または非鉄材とトナーを分離することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の方法で、廃トナーカートリッジからトナーを採取する方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−158745(P2011−158745A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21021(P2010−21021)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(510030021)株式会社エコサポート (4)
【出願人】(710000756)
【Fターム(参考)】