説明

複合パネルとその製造方法

【課題】貼り合せ工程が不要で、通気部の形成も容易に行える低コストな複合パネルを提供する。
【解決手段】断熱材層11の少なくとも一方の面に、熱硬化性樹脂組成物からなる硬質層12が一体に形成された複合パネル10。該複合パネル10は、板状の断熱材の少なくとも一方の面に、熱硬化性樹脂組成物を含有する硬質層形成成分を塗布する塗布工程と、硬質層形成成分を熱硬化して、硬質層12を形成する熱硬化工程とを有する方法により製造できる。例えば、キャビティに凸条が形成された金型を用いて熱硬化工程を行えば、硬質層12の形成とともに、硬質層12の外表面に凹条13からなる通気溝を形成することも可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱材層と硬質層とを備え、内壁材などの壁材として好適に使用される複合パネルとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅などの建物の壁材に断熱材を用いる際、断熱材には、一般に、石膏ボードなどの耐火性を備えた硬質ボードが組み合わせて使用される。このように断熱材と硬質ボードとを組み合わせる場合に、施工現場において断熱材と硬質ボードとを別々に施工すると、施工に手間がかかるため、あらかじめ断熱材と硬質ボードとを貼り合わせた複合パネルを使用することがある。また、断熱材の表面などには、施工後の壁内における湿気を排出するための通気部が形成される場合がある。例えば、特許文献1には、折れ曲がり(リブ)断面構造を有するメタル薄板を断熱材の表面に配置し、その外側に外装材を設けることにより、断熱材と外装材との間に、通気部を形成する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−173120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、断熱材と硬質ボードとを貼り合わせた複合パネルを製造する場合には、断熱材と硬質ボードとを別々に製造した後、これらを貼り合せる貼り合せ工程が必要であった。また、通気部を形成する場合には、上記特許文献1に記載のように、さらにメタル薄板などの別の部材を用意して、組み合わせる必要があった。
このように、従来の複合パネルの製造方法では、製造工程数が多く、製造コストの点で問題があった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、貼り合せ工程が不要で、通気部を形成する場合には、その形成も容易に行える低コストな複合パネルの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の複合パネルは、断熱材層の少なくとも一方の面に、熱硬化性樹脂組成物からなる硬質層が一体に形成されたことを特徴とする。
前記硬質層の外表面には、凹条からなる通気溝が形成されていることが好ましい。
本発明の複合パネルの製造方法は、板状の断熱材の少なくとも一方の面に、熱硬化性樹脂組成物を含有する硬質層形成成分を塗布する塗布工程と、前記硬質層形成成分を熱硬化して、硬質層を形成する熱硬化工程とを有することを特徴とする。
金型を用いた加熱プレスにより、前記熱硬化工程を行うことが好ましい。
その場合、前記熱硬化工程では、キャビティに凸条が形成された前記金型を用いて、前記硬質層の形成とともに、前記硬質層の外表面に凹条からなる通気溝の形成を行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、貼り合せ工程が不要で、通気部を形成する場合には、その形成も容易に行える低コストな複合パネルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の複合パネルの一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の複合パネルについて一実施形態を例示して、詳細に説明する。
図1は、本発明の複合パネルの一例を示す斜視図である。
この例の複合パネル10は、平板状の断熱材からなる断熱材層11と、断熱材層11の一方の面に一体に形成された硬質層12とからなる。
【0010】
断熱材の材質としては、例えば、フェノール樹脂発泡体、ポリウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム、メラミン樹脂、尿素樹脂、熱硬化性ポリイミド等の熱硬化性樹脂の発泡体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂の発泡体などの発泡プラスチックが挙げられる。また、断熱材としては、グラスウールやロックウールなどの繊維材を用いることもできる。
【0011】
これらのなかでは、硬質層12の形成時に断熱材層11の表層が高温となる点から、耐熱性の高いフェノール樹脂発泡体が好ましい。断熱材からなる断熱材層11の厚さには特に制限はないが、5〜150mmの範囲が好ましい。
【0012】
硬質層12は、熱硬化性樹脂を主成分とする熱硬化性樹脂組成物から形成され、耐火性層としての役割を担うものである。
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ウレタン樹脂、ケイ素樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられるが、これらのなかでは、耐火性に優れている点から、フェノール樹脂が好適である。フェノール樹脂としては、流動性を有する方が成形性に優れるため、液状レゾール型フェノール樹脂を用いることが好ましい。
液状レゾール型フェノール樹脂は、例えばフェノール、クレゾール、キシレノール、パラアルキルフェノール、パラフェニルフェノール、レゾルシン等のフェノール類およびその変性物と、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、フルフラール、アセトアルデヒド等のアルデヒド類とを、触媒量の水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリの存在下に反応させて得られるフェノール樹脂であるが、これに限定されるものではない。フェノール類とアルデヒド類の使用割合は特に限定はないが、モル比で通常1.0:1.5〜1.0:3.0程度、好ましくは1.0:1.8〜1.0:2.5である。
【0013】
熱硬化性樹脂組成物には、熱硬化性樹脂の他、一般的な増量材や、例えばフェノール樹脂発泡体廃材など、熱硬化性樹脂の廃材からなる増量材などが含まれていてもよい。
【0014】
また、図示例の複合パネル10の硬質層12の外表面には、通気溝として、複数本の凹条13が略平行に形成されている。通気溝は、複合パネル10の施工後において、壁体内の湿気を排出するために設けられている。
【0015】
硬質層12の厚さには特に制限はないが、凹条13が形成されていない部分の厚さDは、10〜50mmの範囲が好ましい。凹条13の幅W、深さD、凹条同士の間隔Sなどは、求められる通気性などに応じて適宜設定でき、特に制限はないが、幅W70〜600mm、深さD5〜45mm、間隔S20〜100mmの範囲が好ましい。
【0016】
図1のような複合パネル10は、断熱材層11を構成する断熱材の一方の面に、熱硬化性樹脂組成物を含有する硬質層形成成分を塗布する塗布工程と、塗布された硬質層形成成分を熱硬化して、硬質層12を形成する熱硬化工程とを有する方法により製造できる。
【0017】
具体的には、まず、熱硬化性樹脂組成物を含有する硬質層形成成分を調製する。熱硬化性樹脂組成物は、未硬化の熱硬化性樹脂と、熱硬化性樹脂を熱硬化させるために熱硬化性樹脂の種類などに応じて使用される触媒や硬化剤と、必要に応じて使用される増量材とを含有する。硬質層形成成分は、このような熱硬化性樹脂組成物の他に、粘度調整などの目的で必要に応じて使用される水などの溶媒を含んでいてもよい。硬質層形成成分は、これらの各成分を適宜混合することにより調製できる。具体的には、例えば、未硬化の熱硬化性樹脂がフェノール樹脂である場合、フェノール樹脂100質量部に対して、水10〜100質量部、フェノール樹脂発泡体の粉体からなる増量材1〜50質量部、酸硬化剤4〜15質量部を混合することが好適である。
ついで、調製された硬質層形成成分を板状の断熱材の一方の面に塗布する(塗布工程)。塗布には、公知の各種コーターを用いることができる。
【0018】
ついで、硬質層12の凹条13に対応する凸条がキャビティに形成された金型を用意し、そのキャビティ内に、一方の面に硬質層形成成分が塗布された上述の断熱材を配置し、型締めして、所定の加熱温度および圧力で加熱プレスする(熱硬化工程)。断熱材は、硬質層形成成分が塗布された面がキャビティの凸条と接するように、金型内に配置する。
このように熱硬化工程を行うことにより、硬質層形成成分の熱硬化による硬質層12の形成と、硬質層12の外表面における凹条13の形成とを一括して行うことができ、その結果、図1の複合パネル10が得られる。
【0019】
このような複合パネル10の製造方法は、断熱材層11を構成する断熱材に、硬質層形成成分を塗布し、硬質層形成成分を熱硬化する方法であるため、従来の複合パネルの製造方法のように、断熱材と硬質ボードとを別々に製造した後にこれらを貼り合せる貼り合せ工程が不要である。よって、複合パネル10の製造工程数を削減でき、それにより製造コストを抑えることができる。
【0020】
また、このような複合パネル10の製造方法では、金型を用いた加熱プレスにより、硬質層形成成分の熱硬化を行うことで、熱硬化を容易に行えるとともに、金型のキャビティ形状に沿った表面形状の硬質層12を形成することができる。よって、金型のキャビティ形状を適宜変更することにより、目的に応じた種々の表面形状を有する硬質層12を容易に形成することができる。
すなわち、図1の例のように、硬質層12の凹条13に対応する凸条がキャビティに形成された金型を用いることによって、硬質層12の形成とともに、硬質層12の外表面に凹条13からなる通気溝を形成することができる。このような方法は、硬質層12の形成と通気溝の形成とを一括で行える方法であるため、メタル薄板などの別の部材を用意し、これを施工現場で組み合わせて通気部を形成する従来の方法に比べて、施工の簡素化、コスト抑制の点で好適である。
【0021】
また、例えば、曲面形状を有するキャビティを備えた金型を用いることにより、外表面が曲面形状である硬質層を形成することができ、また、キャビティに部分的に湾曲部が形成された金型を用いることにより、それに対応した湾曲部を備えた硬質層を形成することも可能となる。よって、従来は複合パネルの適用が形状面から困難であった部分に対しても適用できる複合パネルの製造が可能となり、複合パネルの適用範囲が広がるとともに、施工の自由度が大幅に向上する。
【0022】
なお、以上の例では、複合パネル10として、断熱材層11の一方の面のみに硬質層12が形成されたものを例示したが、断熱材層の両面に硬質層が形成された形態の複合パネルであってもよく、施工場所などに応じて適宜設定できる。その場合、通気溝についても、施工場所などに応じて一方の硬質層にのみ設けても、両方の硬質層に設けてもよい。
また、通気溝の形成パターンなども適宜設定でき、複数本の凹条が略平行に形成される形態に限定されない。
さらに、断熱材層の一方の面のみに硬質層が形成された複合パネルにおいても、その施工場所などによっては、通気溝は必ずしも形成されていなくてもよい。
また、熱硬化工程は、必ずしも金型を用いた加熱プレスで行わなくてもよく、加熱オーブンなどを用いてもよいが、通気溝として凹条13が形成された複合パネル10を製造する場合には、上述のとおり、加熱プレスにより熱硬化工程を行うことが好ましい。
【0023】
以上説明した複合パネル10は、住宅、集合住宅、商業ビルなどの建物の内壁材として好適に使用される。施工形態としては、この複合パネル10の硬質層12側に化粧合板などの内装仕上げ材を施工する形態などが挙げられる。
【実施例】
【0024】
以下、本発明について、実施例を挙げて具体的に説明する。
[実施例1]
図1の形態の複合パネル10を次のようにして製造した。
フェノール樹脂発泡体からなる厚さ15mmの板状の断熱材11を用意し、その一方の面に、以下の各成分が混合された硬質層形成成分をロールコーターにて塗布した(塗布工程)。この際の塗布量については、熱硬化後の硬質層12の厚みに応じて決定した。
ついで、複数本の互いに平行な凸条がキャビティに形成された金型を用意し、そのキャビティ内に、硬質層形成成分が塗布された上述の断熱材11を配置し、型締めして、加熱温度100℃、圧力400N/m、プレス時間10分間の条件で加熱プレスした(熱硬化工程)。
このようにして、断熱材層11の片面に硬質層12が形成され、硬質層12の外表面には凹条13が複数本形成された図1の複合パネル10を得た。
【0025】
(硬質層形成成分)
レゾール型フェノール樹脂:100質量部
水:50質量部
フェノール樹脂発泡体粉体:15質量部
酸硬化剤(トルエンスルホン酸とキシレンスルホン酸の混合物):8質量部
【0026】
なお、複合パネル10の各部分のサイズは以下の通りである。
:30mm
:15mm
W:410mm
S:30mm
【符号の説明】
【0027】
10 複合パネル
11 断熱材層
12 硬質層
13 凹条(通気溝)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱材層の少なくとも一方の面に、熱硬化性樹脂組成物からなる硬質層が一体に形成されたことを特徴とする複合パネル。
【請求項2】
前記硬質層の外表面には、凹条からなる通気溝が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の複合パネル。
【請求項3】
板状の断熱材の少なくとも一方の面に、熱硬化性樹脂組成物を含有する硬質層形成成分を塗布する塗布工程と、前記硬質層形成成分を熱硬化して、硬質層を形成する熱硬化工程とを有することを特徴とする複合パネルの製造方法。
【請求項4】
金型を用いた加熱プレスにより、前記熱硬化工程を行うことを特徴とする請求項3に記載の複合パネルの製造方法。
【請求項5】
前記熱硬化工程では、キャビティに凸条が形成された前記金型を用いて、前記硬質層の形成とともに、前記硬質層の外表面に凹条からなる通気溝の形成を行うことを特徴とする請求項4に記載の複合パネルの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−2208(P2013−2208A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136495(P2011−136495)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】