説明

複合ラスおよび複合ラスを用いた建物の外壁通気構造

【課題】複合ラスを下地材に固定して、モルタルを塗るだけで通気層を形成することが可能な複合ラスおよび複合ラスを用いた建物の外壁通気構造を提供する。
【解決手段】複合ラス10は、ワイヤラス1と合成樹脂製シート4と間隔保持具5とからなる。ワイヤラス1は、縦線材2と横線材3とが格子状に接合されてなる。合成樹脂製シート4は、一方の面からドーム状に突出した突起4aが縦横に一定間隔で多数設けられ、他方の面の平面部から突出したワイヤラス保持部4bが多数設けられ、該ワイヤラス保持部4bは、前記線材が係合する係止部4cを備えている。間隔保持具5は、ドーム形状をなし、その基端部5bが、ワイヤラス1の格子目の各交点に接合されている。合成樹脂製シート4のドーム状突起4a内の頂部に間隔保持具5の頂部が当接されると共に、合成樹脂製シート4のワイヤラス保持部4bの係止部4cに前記線材が係合されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複合ラス、および複合ラスを用いて構築した建物の外壁通気構造の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
建物の外壁構造を構築するに際し、近年、下地板とモルタル壁との間に通気層を形成してなる外壁通気構造が多く採用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、同文献1の図1に示すように、平面部から載頭錐形の窪み部が押し出された突起を多数有する通気型枠シートと、ラス網取付金具と、ラス網とを用いてなる外壁通気構造が開示されている。この外壁通気構造は、具体的に以下の手順で施工される。
【0004】
先ず、前記通気型枠シートの窪み部に前記ラス網取付金具の突起部を挿入し、この突起部の上からステープル等の止め部材を下地板に打ち込む作業を、該通気型枠シートのすべての窪み部に対して繰り返し行うことにより、当該通気型枠シートを下地材に固定する。
次に、前記ラス網取付金具の上にラス網を被せ、その後、すべてのラス網取付金具のフック部(図6参照)を折り曲げてラス網を固定する。
しかる後、前記ラス網の上からモルタル塗りして外壁通気構造を構築する(以上、特許文献1の段落[0015]〜[0021]参照)。
【0005】
この特許文献1に係る外壁通気構造によると、前記通気型枠シートに形成した多数の突起が、通気層を形成する。
よって、従来の通気工法に汎用されていた胴縁の取り付け作業の手間を省略できると共に、通気層内の空気を縦横斜めの自由な方向に流すことができる。
特許文献2にも、同様の技術が開示されている(段落[0017]〜[0023]参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4465037号公報
【特許文献2】特許第4611440号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に係る外壁通気構造は、上記段落[0004]で説明したように、モルタル塗り作業に先立ち、現場で、
1)通気型枠シートの窪み部にラス網取付金具の突起部を挿入する作業、
2)前記突起部の上から止め部材を下地板に打ち込む作業、
3)前記1)と2)の作業を通気型枠シートのすべての窪み部に対して繰り返し行い、当該通気型枠シートを下地材に固定する作業、
4)前記ラス網取付金具の上にラス網を被せる作業、及び、
5)すべてのラス網取付金具のフック部を(1個の取付金具毎に4箇所ずつ)折り曲げてラス網を固定する作業、を順に行わなければならず、現場での作業工程を多く必要としていた。
【0008】
本発明の目的は、合成樹脂製シートとワイヤラスと間隔保持具とを予め一体化した複合ラスなので、施工現場で、当該複合ラスを下地材に固定して、モルタルを塗るだけで通気層を形成することが可能な複合ラスおよび複合ラスを用いた建物の外壁通気構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記背景技術の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係る複合ラスは、ワイヤラスと合成樹脂製シートと間隔保持具とからなる複合ラスであって、
前記ワイヤラスは、縦線材と横線材とが格子状に接合されてなること、
前記合成樹脂製シートは、一方の面からドーム状に突出した突起が縦横に一定間隔で多数設けられ、他方の面の平面部から突出したワイヤラス保持部が多数設けられ、該ワイヤラス保持部は、前記線材が係合する係止部を備えていること、
前記間隔保持具は、前記ドーム状突起内に挿入可能なドーム形状をなし、その基端部が、前記ワイヤラスの縦線材と横線材とで囲まれる格子目の各交点に接合されていること、
前記合成樹脂製シートの前記ドーム状突起内の頂部に前記間隔保持具の頂部が当接されると共に、該合成樹脂製シートのワイヤラス保持部の係止部に前記線材が係合されてなること、を特徴とする。
【0010】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した複合ラスにおいて、前記ワイヤラス保持部が、その頂部に凹溝を有するドーム状をなし、線材が係合する係止部を凹溝とし、該係止部は、先端部が幅狭で奥部が幅広に形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載した発明は、請求項1又は2に記載した複合ラスにおいて、前記合成樹脂製シートが、透明であることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載した発明は、請求項1〜3のいずれか一に記載した複合ラスにおいて、前記ワイヤラス保持部の係止部が、縦横の線材が溶接接合されて製造されるワイヤラス製造ラインの長手方向の線材に係合するように形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載した発明に係る複合ラスを用いた建物の外壁通気構造は、前記請求項1〜4のいずれかに記載した複合ラスを用いて構築した建物の外壁通気構造であって、
建物外壁の下地板に、前記複合ラスの合成樹脂製シートに形成されたドーム状突起の頂部が当接され、該ドーム状突起内の間隔保持具を介して固定部材が打ち込まれて当該複合ラスが下地板に固定され、前記複合ラスにモルタルを塗着してなることを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載した発明に係る複合ラスは、ワイヤラスと合成樹脂製シートと間隔保持具とからなる複合ラスであって、
前記ワイヤラスは、縦線材と横線材とが格子状に接合されてなること、
前記合成樹脂製シートは、一方の面からドーム状に突出した突起が縦横に一定間隔で多数設けられ、他方の面の平面部から突出したワイヤラス保持部が多数設けられ、該ワイヤラス保持部は、前記線材が係合する係止部を備えていること、
前記合成樹脂製シートの前記ドーム状突起内の頂部に間隔保持具の頂部が当接されると共に、該合成樹脂製シートのワイヤラス保持部の係止部に前記線材が係合されてなること、を特徴とする。
【0015】
請求項7に記載した発明に係る複合ラスは、ワイヤラスと合成樹脂製シートと間隔保持具とからなる複合ラスであって、
前記ワイヤラスは、縦線材と横線材とが格子状に接合されてなること、
前記合成樹脂製シートは、一方の面からドーム状に突出した突起が縦横に一定間隔で多数設けられていること、
前記間隔保持具は、前記ドーム状突起内に挿入可能なドーム形状をなし、その基端部が、前記ワイヤラスの縦線材と横線材とで囲まれる格子目の各交点に接合されていること、
前記合成樹脂製シートの前記ドーム状突起内の頂部に前記間隔保持具の頂部が当接されてなること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る複合ラスおよび複合ラスを用いた建物の外壁通気構造によれば、以下の効果を奏する。
(1)合成樹脂製シートのドーム状突起とワイヤラスとドーム状の間隔保持具が接合されているので、この複合ラスを下地材に固定して、モルタルを塗るだけで、複合ラスと下地板の間に通気層を形成することができる。
(2)ドーム状の間隔保持具とドーム状突起をもつ合成樹脂製シートとワイヤラスが固定されているので、モルタル塗りの作業で、複合ラスを強く下地板に押しつけながらモルタルを塗り込んでも、ドーム状突起がつぶれることなく、形状を保つことができるので、複合ラスと下地板の間の通気層を十分に確保できる。
(3)前記複合ラスの合成樹脂製シートを透明性を有するシートで実施すると、当該複合ラスの裏側の下地板に隅出しをしたラインが見え、迅速、かつ正確な張設作業を行うことができ、さらに施工性も向上する。
(4)間隔保持具は、ワイヤラスに固定されているため、ステープルで楽に下地板に接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(A)は、本発明に係る複合ラスの実施例を示す正面図であり、(B)は、同平面図であり、(C)は、同側面図である。ただし、(B)については、下地板を含む建築物躯体の一部の図示を付加した。
【図2】図1(A)のS部拡大図である。
【図3】(A)は、図2のX−X線矢視断面図であり、(B)は、図2のY−Y線矢視断面図である。
【図4】(A)は、前記複合ラスを構成する合成樹脂製シートを示す正面図であり、(B)は、同平面図であり、(C)は、同側面図である。
【図5】(A)は、前記複合ラスを構成する、間隔保持具を接合したワイヤラスを示す正面図であり、(B)は、同平面図であり、(C)は、同側面図である。
【図6】本発明に係る複合ラスを、合成樹脂製シートと、間隔保持具を接合したワイヤラスとに分解した斜視図である。
【図7】(A)は、本発明に係る複合ラスの要部を示す斜視図であり、(B)は、その分解斜視図である。
【図8】(A)は、本発明に係る複合ラスの要部を示す側面図であり、(B)は、その分解側面図である。
【図9】(A)は、本発明に係る複合ラスを下地板に固定した状態の要部を示す平面図であり、(B)は、同側面図である。
【図10】(A)は、本発明に係る複合ラスの異なる実施例の要部を示す斜視図であり、(B)は、その分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明に係る複合ラスの実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0019】
本発明の複合ラス10は、柱12、間柱13に接合された下地板11に張設される。
【0020】
この複合ラス10は、ワイヤラス1と合成樹脂製シート4と多数(図示例では91個)の間隔保持具5とからなる。
前記ワイヤラス1は、縦線材2と横線材3とが格子状に接合されてなる。
前記合成樹脂製シート4は、一方の面からドーム状に突出したドーム状突起4aが縦横に一定間隔で多数(図示例では72個)設けられ、他方の面の平面部から突出したワイヤラス保持部4bが、合成樹脂製シート4とワイヤラス1を重ねたときに当該ワイヤラス1の線材2、3(本実施例では横線材3)が位置する箇所に多数設けられ、該ワイヤラス保持部4bは、前記線材(本実施例では横線材3)が係合する係止部4cを備えている。
前記間隔保持具5は、前記ドーム状突起4a内に挿入可能な平面視十字状のドーム形状をなし、その基端部5bが、前記ワイヤラス1の縦線材2と横線材3の各交点に接合されている。
前記合成樹脂製シート4の前記ドーム状突起4a内の頂部4a’に前記間隔保持具5の平面視十字状の頂部5aが当接されている。ドーム状突起4aとは反対側に設けた合成樹脂製シート4のワイヤラス保持部4bの係止部4cに前記線材(本実施例では横線材3)が係合されて一体化されている。
なお、前記「ドーム状に突出」とは、側壁が湾曲したドーム形状だけでなく、円錐形、角錐形、截頭円錐形、あるいは截頭角錐形など、先端にいくにしたがって先細り形状も含む。
【0021】
本発明に係る複合ラス10は、その構成要素であるワイヤラス1と合成樹脂製シート4と間隔保持具5とを、工場で一体化しておくことができるので、現場での作業に際し、前記複合ラス10を下地材11に固定(張設)するだけで、モルタル塗りを行うことができる。
以下、前記複合ラス10の構成要素を具体的に説明する。
【0022】
前記ワイヤラス1は、線径1.2〜2.0mm程度の縦線材2と横線材3とが格子状に接合されてなる。本実施例では、剛性が高いスポット溶接で接合されている。前記線材2、3のピッチは、35.0〜41.4mmとされ、尺モジュールまたは、メーターモジュールに対応している。
ちなみに本実施例に係るワイヤラス1は、線径1.6mmの縦線材2および横線材3を、37.9mmのピッチで配設して正方形状の格子目を形成し、1枚あたり、縦が985.5mm程度、横が1895.8mm程度の大きさで実施している。
【0023】
次に、前記合成樹脂製シート4は、ポリプロピレンやポリエチレンテレフタレート等の樹脂製シートを成型したシート材が好適に採用される。ちなみに本実施例では、1枚あたり、縦が929mm程度、横が1838mm程度の大きさで実施している(図4参照)。また、施工性を考慮し、透明性を有する材質が採用されている。
【0024】
この合成樹脂製シート4の一方の面に突設される各ドーム状突起4aは、一例として、底辺部の径が53.6mmの円形で、頂点までの突出高さ(図3(A)の符号H参照)が15mmで、縦横に151.6mmのピッチで、全体として碁盤目状に整列配置されている。さらに、本実施例に係るドーム状突起4aは、図1(B)に示したように、建物躯体を構成する柱12又は間柱13の設置間隔(通常、455mm程度)と、2つ置きにほぼ一致する間隔で設けられている。
ただし、前記ドーム状突起4aの大きさ、配置形態はこれに限定されない。例えば、前記頂点までの突出高さ寸法(15mm)は、通気層の幅寸に相当するので、建物の構造設計に応じて適宜設計変更可能である。また、配置形態は千鳥格子状でもよい。
【0025】
前記合成樹脂製シート4の他方の面に突設される各ワイヤラス保持部4bは、一例として、頂点までの突出高さ(図3(A)の符号H参照)が7mmの細長のドーム状に形成され、縦横に37.9mm(即ち、前記ドーム状突起4aの1/4)のピッチで、全体として前記ドーム状突起4aを除く平面部に整列配置されている。
前記ワイヤラス保持部4bの大きさ、配置形態はこれに限定されない。
【0026】
本願発明のワイヤラス1及び合成樹脂製シート4は、長方形の形状をしており、ワイヤラス1の製造にあたっては、製造機械のライン方向に繰り出される線材がラインと直行方向に一定間隔で、多数本繰り出されて、このライン方向に線材を直角の方向から他方の線材が一定間隔をおいて繰り出されて、直行する線材の交差部を溶接して製造されるものであり、このライン方向に線材の間隔は極めて精度よく、間隔が配置される。このライン方向の線材が本実施例のワイヤラス1で横線材3となる。
ワイヤラス保持部4bは、ワイヤラス1の縦線材2及び横線材3のうち、横線材3に嵌合するように合成樹脂製シート4に設けられている。
【0027】
前記ワイヤラス保持部4bはさらに、その頂部に、前記線材(本実施例では横線材3)が係合する係止部4cを備えている。
図示例に係るワイヤラス保持部4bは、その頂部に凹溝を有するドーム状をなし、横線材3が係合する係止部4cを凹溝とし、該係止部4cは、先端部が幅狭で奥部が横線材3を収容できる程度の幅広に形成されている。
具体的に、本実施例に係る前記係止部4cは、深さが3.2mm程度で、先端開口部は、横線材3の径と、略同じか僅かに小さい径とし、内部で幅の広い横線材3を収納できる収容部を形成している(図8(B)参照)。
よって、前記先端開口部へ案内された横線材3は、軽い押し付け力によって収容部へ収容される(図8(A)、(B)参照)。
【0028】
なお、前記ワイヤラス保持部4bの係止部4cの配置、個数、及び形状は図示例に限定されず、ワイヤラス1と合成樹脂製シート4が結合されて工場から施工現場で取り付けられるまで、外れない程度であればよい。例えば、前記係止部4cの形状を略L形とし、これにワイヤラス1の線材を引っ掛ける構成で実施することもできる。
【0029】
次に、前記間隔保持具5は、一例として、板厚0.4〜0.8mm程度の薄板を、幅が3〜8mm程度、一方向の長さが76.6mm程度の十字形状に切断加工したものが用いられる。当該十字形状の四辺の縁部をそれぞれ同一方向に折り曲げ、平面視十字状のドーム形状に形成する。
この間隔保持具5は、その四辺の縁部(基端部)5bを、前記ワイヤラス1の縦線材2と横線材3とで囲まれる格子目の各交点に接合すると、頂点までの突出高さ寸法(図3(A)の符号H参照)が22mm程度で、底辺部の径が53.6mm程度の大きさの、平面視十字状のドーム形状で実施される。
具体的に、この間隔保持具5は、図3(A)、(B)に示すように、前記ワイヤラス1の横線材3を、前記合成樹脂製シート4のワイヤラス保持部4bの係止部4cに嵌合させると、当該間隔保持具5の頂部5aが、前記合成樹脂製シート4のドーム状突起4aの頂部4a’にぴったり当接する構造設計で実施される。
【0030】
なお、本実施例では、前記間隔保持具5の基端部5bを前記格子目の各交点に折り曲げて固定しているが、スポット溶接で固定してもよい。
また、間隔保持具5の形状は、平面視十字形状に限定されず、お椀形状、又はY字形状で実施することもできる。
さらに、間隔保持具5の数量及び設置形態は、前記合成樹脂製シート4のドーム状突起4aの数量及び設置形態に応じて適宜設計変更される。ちなみに本実施例では、前記ドーム状突起4aの配置形態に一致させるべく、図5に示したように、ワイヤラス1の格子目に対し、縦横に3つ置きに接合して実施している。なお、図1(A)に示すように、間隔保持具5を、ドーム状突起4aの数量よりも多く設けて実施しているのは、モルタル塗り作業に際し、隣接する複数の複合ラスを隙間なく張設するための作業上の配慮からであり、適宜設計変更可能である。
【0031】
次に、ワイヤラス1と間隔保持具5とを組み立てて、本発明の複合ラス10を構築する方法について説明する。
先ず、前記平面視十字状のドーム形状に形成した間隔保持具5を、前記ワイヤラス1の格子目に対し、所定間隔をもって、本実施例では、縦横方向に3つ置きに接合する。格子目に接合する手法は上述した通りである。
次に、図5に示す間隔保持具5を接合したワイヤラス1を、図4に示す合成樹脂製シート4に取り付ける。この作業は、図6に示すように、前記合成樹脂製シート4のドーム状突起4aと、前記ワイヤラス1の間隔保持具5との位置合わせを行い、両者を重ねて、重ねた一方の側から他方の側に押圧すると、ワイヤラス1と合成樹脂製シート4は、多数のワイヤラス保持部5がワイヤラス1の横線材3に嵌合して一体となる。各ドーム状突起4aの内部には、各間隔保持具5が挿入される。
そうすると、図7(A)、図8(A)に示すように、前記間隔保持具5の頂部5aが、前記合成樹脂製シート4のドーム状突起4aの頂部4a’にぴったり当接した状態となる。また、前記ワイヤラス保持部4bの頂点と、縦線材2とは、面がほぼ揃えられているので納まりがよく、美感性にも優れている。
【0032】
次に、図1に係るワイヤラス1と合成樹脂製シート4と間隔保持具5とを一体化した複合ラス10を用いて建物の外壁通気構造を構築する方法を説明する。
先ず、前記複合ラス10を、図1(B)に示したように、下地材11に直に当接させる。その際、前記複合ラス10のドーム状突起4aの頂部4a’が、建物躯体の柱12および間柱13に対応するように位置決めする。
次に、その要部を、図9(A)、(B)に示すように、前記ドーム状突起4aの頂部4a’に、その頂部5aが当接した間隔保持具5の上から固定部材(本実施例ではステープル)6を下地板に打ち込み、当該複合ラス10を下地板11に固定する。
この固定作業が終了すると同時にワイヤラス1の張設作業も終了するので、直ちにモルタル塗りを行うことができ、外壁通気構造を実現できる。
なお、前記ステープル6の代わりに、ビス、釘で固定することもできる。
【0033】
したがって、上述した複合ラス10によれば、合成樹脂製シート4のドーム状突起4aとワイヤラス1とドーム状の間隔保持具5が接合されているので、この複合ラス10を下地材11に固定して、モルタルを塗るだけで、複合ラス10と下地板11の間に通気層を形成することができる。
ドーム状の間隔保持具5とドーム状突起4aをもつ合成樹脂製シート4とワイヤラス1が固定されているので、モルタル塗りの作業で、複合ラス10を強く下地板11に押しつけながらモルタルを塗り込んでも、ドーム状突起4aがつぶれることなく、形状を保つことができるので、複合ラス10と下地板11の間の通気層を十分に確保できる。
前記複合ラス10の合成樹脂製シート4を透明性を有するシートで実施しているので、当該複合ラス10の裏側の下地板11に隅出しをしたラインが見え、迅速、かつ正確な張設作業を行うことができ、さらに施工性も向上する。
間隔保持具5は、ワイヤラス1に固定されているため、ステープル6で楽に下地板11に接合することができる。
【実施例2】
【0034】
図10(A)、(B)は、本発明に係る複合ラスの異なる実施例を示している。
この実施例2に係る複合ラス10’は、上記実施例1に係る複合ラス10と比し、間隔保持具の構成のみが相違する。よって、線材2、3、及び合成樹脂製シート4は、上記実施例1と同一の構成なので、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0035】
この実施例2に係る複合ラス10’に用いる間隔保持具15は、上記実施例1に係る間隔保持具5が一枚物であるのに対し、2つ(一対)の薄板材15a、15bを用い、頂部をクロスさせて重ね合わせ(溶接可)、上記実施例1に係る間隔保持具5とほぼ同形状の平面十字形のドーム形状に形成して実施している。なお、前記薄板材15a、15bの代わりに線材を用い、前記平面視十字形等、前記ドーム状突起4aの頂部4a’に当接し、且つ前記ワイヤラス1に接合可能な形状で実施することもできる。
よって、この実施例2によれば、ドーム状突起4aの頂部4a’は、間隔保持具15の線材15aの頂部が当接して効果的に補強されているので、モルタル塗着作業の際の押圧力により当該ドーム状突起4aが潰れることもない等、上記実施例1と同様の作用効果を奏する(上記段落[0033]参照)。
【0036】
以上、実施例を図面に基づいて説明したが、本発明は、図示例の限りではなく、その技術的思想を逸脱しない範囲において、当業者が通常に行う設計変更、応用のバリエーションの範囲を含むことを念のために言及する。
【符号の説明】
【0037】
1 ワイヤラス
2 縦線材
3 横線材
4 合成樹脂製シート
4a ドーム状突起
4a’ 頂部
4b ワイヤラス保持部
4c 係止部
5 間隔保持具
5a 頂部
5b 基端部
6 固定部材(ステープル)
10 複合ラス
11 下地板
12 柱
13 間柱
10’ 複合ラス
15 間隔保持具
15a、15b 薄板材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤラスと合成樹脂製シートと間隔保持具とからなる複合ラスであって、
前記ワイヤラスは、縦線材と横線材とが格子状に接合されてなること、
前記合成樹脂製シートは、一方の面からドーム状に突出した突起が縦横に一定間隔で多数設けられ、他方の面の平面部から突出したワイヤラス保持部が多数設けられ、該ワイヤラス保持部は、前記線材が係合する係止部を備えていること、
前記間隔保持具は、前記ドーム状突起内に挿入可能なドーム形状をなし、その基端部が、前記ワイヤラスの縦線材と横線材とで囲まれる格子目の各交点に接合されていること、
前記合成樹脂製シートの前記ドーム状突起内の頂部に前記間隔保持具の頂部が当接されると共に、該合成樹脂製シートのワイヤラス保持部の係止部に前記線材が係合されてなること、を特徴とする複合ラス。
【請求項2】
前記ワイヤラス保持部が、その頂部に凹溝を有するドーム状をなし、線材が係合する係止部を凹溝とし、該係止部は、先端部が幅狭で奥部が幅広に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載した複合ラス。
【請求項3】
前記合成樹脂製シートが、透明であることを特徴とする、請求項1又は2に記載した複合ラス。
【請求項4】
前記ワイヤラス保持部の係止部が、縦横の線材が溶接接合されて製造されるワイヤラス製造ラインの長手方向の線材に係合するように形成されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載した複合ラス。
【請求項5】
前記請求項1〜4のいずれかに記載した複合ラスを用いて構築した建物の外壁通気構造であって、
建物外壁の下地板に、前記複合ラスの合成樹脂製シートに形成されたドーム状突起の頂部が当接され、該ドーム状突起内の間隔保持具を介して固定部材が打ち込まれて当該複合ラスが下地板に固定され、前記複合ラスにモルタルを塗着してなることを特徴とする、複合ラスを用いた建物の外壁通気構造。
【請求項6】
ワイヤラスと合成樹脂製シートと間隔保持具とからなる複合ラスであって、
前記ワイヤラスは、縦線材と横線材とが格子状に接合されてなること、
前記合成樹脂製シートは、一方の面からドーム状に突出した突起が縦横に一定間隔で多数設けられ、他方の面の平面部から突出したワイヤラス保持部が多数設けられ、該ワイヤラス保持部は、前記線材が係合する係止部を備えていること、
前記合成樹脂製シートの前記ドーム状突起内の頂部に間隔保持具の頂部が当接されると共に、該合成樹脂製シートのワイヤラス保持部の係止部に前記線材が係合されてなること、を特徴とする複合ラス。
【請求項7】
ワイヤラスと合成樹脂製シートと間隔保持具とからなる複合ラスであって、
前記ワイヤラスは、縦線材と横線材とが格子状に接合されてなること、
前記合成樹脂製シートは、一方の面からドーム状に突出した突起が縦横に一定間隔で多数設けられていること、
前記間隔保持具は、前記ドーム状突起内に挿入可能なドーム形状をなし、その基端部が、前記ワイヤラスの縦線材と横線材とで囲まれる格子目の各交点に接合されていること、
前記合成樹脂製シートの前記ドーム状突起内の頂部に前記間隔保持具の頂部が当接されてなること、を特徴とする複合ラス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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