説明

複合伸縮シートの製造方法

【課題】カットロールの備える弾性部材切断用の加圧部の寿命を長くすることができ、弾性部材の切断の切断成功率が向上する複合伸縮シートの製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の複合伸縮シート2を連続的に製造する複合伸縮シートの製造方法は、帯状の基材シート23上に、Y方向に伸長させた弾性部材21を多数の固定部24にて非連続的に固定して帯状の複合伸縮シートを形成する複合伸縮シート形成工程を備える。複合伸縮シートの製造方法は、帯状の複合伸縮シート2を一対のカットロール41及びアンビルロール42の間に連続供給して、弾性部材21をY方向に隣り合う固定部24間にて切断する切断工程を備える。複合伸縮シートの製造方法は、切断工程における弾性部材21の切断の切断成功率を測定し、該切断成功率に基づいて、カットロール41及び/又はアンビルロール42の切断条件を制御する制御工程を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合伸縮シートを連続的に製造する複合伸縮シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周面に弾性部材切断用の加圧部を備えたカットロールと、該カットロールに対向配置された表面平滑なアンビルロールとからなる弾性部材切断装置を使用し、カットロールとアンビルロールとの間に、弾性部材を有する複合伸縮部材を供給して、弾性部材を切断した複合伸縮部材を製造する技術が提案されている(下記特許文献1参照)。
【0003】
ところで、特許文献1には、弾性部材の切断不良が発生した場合の解消法については何ら記載されていない。一般的に、弾性部材の切断不良が発生した場合、カットロールとアンビルロールとの間のクリアランスを人手により調整して、弾性部材の切断不良を解消している。その為、人の技量や人為的ミスにより、弾性部材の切断の切断成功率が変わったり、カットロールの備える弾性部材切断用の加圧部の寿命が変わったりする場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−253605
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の課題は、カットロールの寿命を長くすることができ、弾性部材の切断の切断成功率が向上する複合伸縮シートの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、連続的に搬送される帯状の基材シート上に、該基材シートの搬送方向に伸長させた弾性部材を多数の固定部にて非連続的に固定して帯状の複合伸縮シートを形成する複合伸縮シート形成工程と、前記帯状の複合伸縮シートを一対のカットロール及びアンビルロールの間に連続供給して、前記弾性部材を搬送方向に隣り合う前記固定部間にて切断する切断工程と、前記切断工程における前記弾性部材の前記切断の切断成功率を測定し、該切断成功率に基づいて、前記カットロール及び/又は前記アンビルロールの切断条件を制御する制御工程とを備える、複合伸縮シートを連続的に製造する複合伸縮シートの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の複合伸縮シートの製造方法によれば、カットロールの寿命を長くすることができ、弾性部材の切断の切断成功率の向上した複合伸縮シートを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の実施態様の複合伸縮性シートの製造方法に用いられるシートの加工装置及びそれを用いた複合伸縮性シートの製造工程を模式的に示す斜視図である。
【図2】図2は、検知手段におけるCCDカメラ(撮像装置)で撮像した撮像領域Tの一例を画像モニターで表示した図である。
【図3】図3は、検知手段における画像処理装置で撮像領域Tを均等に分割してトレンドエッジ検出法により弾性部材21の切断不良の有無を判断する為の一例であり、図3(a)は図2のQを基に判断した弾性部材21の切断不良の例、図3(b)は図2のPを基に判断した弾性部材21の切断良の例である。
【図4】図4は、本発明の実施態様における制御方法を示すフローチャートである。
【図5】図5は、本発明の伸縮性シートの製造方法に用いられる切断部の他の形態を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の複合伸縮シートの製造方法をその好ましい実施態様に基づいて、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施態様の複合伸縮シートの製造方法に用いられる加工装置(以下、単に加工装置ともいう。)を模式的に示すものである。
【0010】
図1に示すように、本実施態様の加工装置1は、弾性部材21の配された帯状の複合伸縮シート2を形成する複合伸縮シート形成部3と、形成された複合伸縮シート2の弾性部材21を切断する切断部4と、弾性部材21の切断の切断成功率を測定し、切断成功率に基づいて、切断部4のカットロール41とアンビルロール42とのクリアランスを制御する制御手段5とを具備する装置である。尚、図中のY方向は、原反(不図示)から繰り出された基材シート22,23を搬送する方向であり、図中のX方向は、搬送方向(Y方向)と直交する方向である。
【0011】
複合伸縮シート形成部3は、図1に示すように、公知の接着剤塗工機31と、一対のニップロール32,33とを有している。本実施態様の接着剤塗工機31は、原反(不図示)から連続的に搬送される帯状の二枚の基材シート22,23の間に配され、帯状の基材シート23の上面に所定幅のホットメルト型接着剤をY方向に断続的に塗工する装置である。このY方向に断続的に塗工されたホットメルト型接着剤が多数の固定部24となる。尚、ホットメルト型接着剤は、基材シート22に塗工してもよく、両方のシートに塗工してもよい。また、ホットメルト型接着剤は、基材シート22,23には塗工せず、弾性部材21に付与してもよく、弾性部材21に間欠的に塗布することで固定してもよい。
【0012】
一対のニップロール32,33は、図1に示すように、接着剤塗工機31の下流側に配されている。一対のニップロール32,33は、同じ形態の金属性のロールで構成されており、固定部24を介して、二枚の基材シート22,23及び弾性部材21を確実に固定する為に、油圧、空圧、バネ等の力を利用して、ニップロール32,33の軸受け部分が加圧されている。従って、一対のニップロール32,33間に、二枚の基材シート22,23と、それらシート22,23に挟まれた弾性部材21とを供給することにより、二枚の基材シート22,23及び弾性部材21を一体的に固定してなる複合伸縮シート2が形成される。
【0013】
切断部4は、図1に示すように、複合伸縮シート形成部3の下流側に配されており、一対のカットロール41とアンビルロール42とを備えている。カットロール41は、金属性のロールの周面に、弾性部材21を切断する多数の凸部43を有する加圧部44を備えたロールである。アンビルロール42は、カットロール41に対向して配され、表面が平滑な金属性のロールである。なお、加圧部44は、カットロール41の軸方向に角度をつけて配されている連続する凸部で形成されていてもよい。
【0014】
カットロール41の加圧部44は、図1に示すように、カットロール41の軸に沿って、カットロール41の周面から突出して設けられている。加圧部44には、多数の凸部43が分散配置されている。具体的には、凸部43が、カットロール41の加圧部44領域において周方向及び軸方向それぞれに分散して配されている。このように配することにより、カットロール41とアンビルロール42との間に、複合伸縮シート2を供給すると、複合伸縮シート2を構成する弾性部材21が、カットロール41の加圧部44とアンビルロール42との間で加圧されて、切断され易く、弾性部材21の切断の切断成功率が向上する。各凸部43の根元での幅は、1mm〜3mmであり、各凸部43の高さは、0.25mm〜1mmであることが好ましい。
【0015】
カットロール41及びアンビルロール42は、本実施態様の加工装置1においては、図1に示すように、アンビルロール42を駆動するサーボモーター45からの駆動力が伝達されることによって、カットロール41及びアンビルロール42の各軸に取り付けられた駆動伝達用のギア(不図示)が噛み合って回転する。
【0016】
切断部4のカットロール41は、図1に示すように、カットロール41とアンビルロール42とのクリアランス、具体的には、カットロール41の加圧部44とアンビルロール42の間隔を調整する為に、サーボモーター46,47と、サーボモーター46,47によってクリアランスを調整するクリアランス調整部48,49とを備えている。また、切断部4のアンビルロール42は、ロールの温度を高めるヒーター(不図示)を備えている。加工装置1においては、サーボモーター46,47とクリアランス調整部48,49とによって、カットロール41を移動させて、カットロール41とアンビルロール42とのクリアランスを変更したり、ヒーター(不図示)によって、アンビルロール42を熱膨張させて、カットロール41とアンビルロール42とのクリアランスを変更したりする後述の制御手段5によって、カットロール41とアンビルロール42とのクリアランスを調整することができる。加工装置1においては、カットロール41及び/又はアンビルロール42が熱膨張しない程度、即ち、カットロール41とアンビルロール42とのクリアランスが変化しない程度に、ヒーター(不図示)によってカットロール41及び/又はアンビルロール42の温度を高めることもできる。このとき、熱膨張しない程度とは、クリアランス調整のために、カットロール41及び/又はアンビルロール42を既に熱膨張させておき、切断性向上のため、カットロール41及び/又はアンビルロール42の温度を更に熱膨張しない程度に追加的に高める場合も含む。尚、本実施態様の加工装置1においては、図1に示すように、カットロール41を移動させて、カットロール41とアンビルロール42とのクリアランスを調整しているが、アンビルロール42を移動させて、クリアランスを調整してもよい。クリアランス調整部48,49は、例えばカットロール41およびアンビルロール42の軸の両端に取付けるベアリングと、そのベアリングを固定しているブロックで構成することができる。各ブロックにはサーボモータ46,47の軸が固定されている。
【0017】
制御手段5は、図1に示すように、切断部4の下流側に配されている検知部51と、制御部52とを備えている。
検知部51は、図1に示すように、搬送方向(Y方向)に搬送されている弾性部材21の切断された複合伸縮シート2を所定の画角で撮像するCCD(電荷結合素子)カメラ(撮像装置)510と、撮像部分を裏側から照らす照明器511と、CCDカメラ(撮像装置)510で撮像された画像データを受け取って画像処理を行い切断部4における弾性部材21の切断不良の有無を検知する画像処理装置512とを備えている。
【0018】
CCDカメラ(撮像装置)510は、図2に示すように、搬送方向(Y方向)に搬送されている複合伸縮シート2における弾性部材21の切断部4による切断箇所を含む撮像領域Tを逐次撮像する。撮像領域Tは、図2に示すように、複合伸縮シート2における搬送方向(Y方向)に隣り合う固定部24,24の間の領域である。尚、図2に示すように、複合伸縮シート2に配される弾性部材21が複数本からなりX方向に並置されている場合には、CCDカメラ(撮像装置)510は、各弾性部材21毎の撮像領域Tを同時に逐次撮像する。
【0019】
本実施態様の加工装置1における画像処理装置512は、CCDカメラ(撮像装置)510により逐次撮像された弾性部材21の撮像領域Tの画像を記憶装置内に取り込んで、画像モニター513に表示し、例えば、切断部4における弾性部材21の切断不良の有無をトレンドエッジ検出法により検知するための装置である。トレンドエッジ検出法とは、CCDカメラ(撮像装置)510により撮像された撮像領域Tを、画像処理装置512においてn個(nは5〜50の整数、好ましく10〜30の整数)に均等に分割し、分割されたn−2個以上の分割領域Dにおいて弾性部材21の有無を検知し、n−2個以上の分割領域Dにおいて弾性部材21が有りと検知された場合には、弾性部材21の切断不良と判断する方法である。詳述すると、加工装置1における画像処理装置512は、CCDカメラ(撮像装置)510による各弾性部材21の各撮像領域Tの画像を記憶装置内に取り込み、取り込んだ各撮像領域Tの画像を、図3の画像モニター513に示すように、例えば、15個に均等に分割して、15個の分割領域Dに分け、各分割領域Dの搬送方向(Y方向)の両端のエッジ部において弾性部材21の有無を検知する。ここで、各分割領域Dの両端のエッジ部それぞれに弾性部材21が検知される場合には、その分割領域Dにおいて弾性部材21が有ると検知する。そして、画像処理装置512は、13個以上の分割領域Dにおいて弾性部材21が検知された場合(図3(a)参照)には、弾性部材21の切断不良と判断し、12個以下の分割領域Dにおいて弾性部材21が検知された場合(図3(b)参照)には、弾性部材21は切断されたと判断して、画像処理装置512の記憶装置の所定の記憶領域に逐次記憶する。
【0020】
CCDカメラ(撮像装置)510としては、例えば、白黒又はカラーの24万画素〜500万画素のカメラを用いることができる。照明器511としては、透過式の青色/白色/赤色LED、赤外光を照射する赤外LED、インバータ内蔵蛍光灯を用いることができる。画像処理装置512としては、CCDカメラ(撮像装置)510により撮像された撮像領域Tを、分割し、分割領域Dにおいて弾性部材21の有無を検知し、弾性部材21の切断不良か否か判断できるものであればよく、例えば、キーエンス製のCV−5000を用いることができる。
【0021】
制御部52は、図1に示すように、カットロール41の加圧部44とアンビルロール42の間隔を調整するサーボモーター46,47を制御するサーボアンプ521,522と、アンビルロール42のロール温度を高めるヒーター(不図示)を制御する温調器523と、画像処理装置512で検知された切断部4における複合伸縮シート2の弾性部材21の切断不良の有無に基づいて、クリアランス調整部48,49への位置指令及びアンビルロール42のヒーター(不図示)への温度指令を、サーボアンプ521,522,温調器523を介して行う演算処理装置524と、演算処理装置524における各種設定を行う操作パネル525とを備えている。また、演算処理部524は、アンビルロール42を駆動するサーボモーター45への回転指令を、サーボアンプ(不図示)を介して行う。尚、アンビルロール42のロール温度を高める代わりに、温調器523によって、カットロール41のロール温度を高めるヒーター(不図示)を制御してもよいし、カットロール41及びアンビルロール42のロール温度を高めるヒーター(不図示)を制御してもよい。
【0022】
演算処理部524は、中央処理装置(CPC)や記憶装置等を備えたコンピューターからなり、記憶装置内の所定のプログラムに従って、画像処理装置512の記憶領域から、弾性部材21の切断部4における切断不良の有無の結果を逐次取得し、10個〜100個毎の移動平均から弾性部材21の切断の切断成功率を算出する。尚、図2に示すように、複合伸縮シート2に配される弾性部材21が複数本からなる場合には、画像処理装置512の記憶領域から、各弾性部材21の切断部4における切断不良の有無の結果を逐次取得し、10個〜100個毎の移動平均値を求め、求められた移動平均値の平均値により複数本の弾性部材21全体の切断成功率を算出する。
【0023】
そして、演算処理部524は、複合伸縮シート2に配された弾性部材21の切断部4における切断成功率の結果を操作パネル525に表示し、切断成功率の結果が、予め設定した設定値(例えば、90%)を下回った場合に、操作パネル525に「警告」を表示すると共に、切断成功率の結果に基づいて、カットロール41の加圧部44とアンビルロール42の適正な間隔(カットロール41の押し込み量)や、アンビルロール42のヒーター(不図示)の適正温度を算出し、その結果を操作パネル525に表示する。更に、演算処理部524は、操作パネル525の操作に基づき、切断成功率に応じたクリアランス調整部48,49への位置指令をサーボアンプ521,522に出力したり、切断成功率に応じたアンビルロール42のヒーター(不図示)への温度指令をサーボアンプ523に出力したりする。
【0024】
上述したように、演算処理部524は、複合伸縮シート2に配される弾性部材21が複数本からなる場合には、複数本の弾性部材21全体の切断成功率を平均値により算出しているが、平均値で算出すると、複数本の弾性部材21の中の一本だけが他の弾性部材より目立って切断成功率が低い場合に、その異常を見過ごしてしまう場合も考えられる。従って、演算処理部524は、画像処理装置512の記憶領域から、各弾性部材21の切断部4における切断不良の有無の結果を逐次取得し、10個〜100個毎の移動平均値を求め、求められた何れかの弾性部材21の移動平均値が予め設定した設定値(例えば、50%)を下回った場合に、操作パネル525に「警告」等を表示するように設定することもできる。
【0025】
複合伸縮シート2を形成する基材シート22,23の材質に、特に制限はないが、好ましい材質としては、例えば、カード法により製造された不織布、エアースルー不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布及びニードルパンチ不織布等の種々の不織布やプラスチックフィルム等が用いられる。
【0026】
複合伸縮シート2を形成する弾性部材21としては、例えば、スチレン−ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、ネオプレン等の合成ゴム、天然ゴム、EVA、伸縮性ポリオレフィン、ポリウレタン等が用いられる。弾性部材21の形態としては、断面が矩形、正方形、円形、多角形状等の糸状(糸ゴム等)若しくは紐状(平ゴム等)のもの、又は複数本のフィラメントで形成されたマルチフィラメントタイプの糸状のもの等が用いられる。特に、本発明の複合伸縮シートの製造方法によれば、複合伸縮シート2がマルチフィラメントタイプの弾性部材21を用いて形成されている場合においても、画像処理装置512による弾性部材21の切断不良の判断を正確に行うことができる。具体的には、切断不良により、例えば少数本(二、三本)のフィラメントが残っており、マルチフィラメントタイプの弾性部材21が完全に切断されていない場合には、CCDカメラ(撮像装置)510によって、繋がっている少数本のフィラメントを撮像することは不可能であるが、切断されたその他複数本のフィラメントは撮像することは可能である。そのため、マルチフィラメントタイプの弾性部材21が完全に切断されていない場合には、完全に切断された場合(図3(b)参照)の離れ幅に比べ、間隔が短い状態で撮像される(図3(a)参照)。このように間隔が短い状態で撮像されれば、画像処理装置512は、上述したように、n−2個以上の分割領域Dにおいて弾性部材21の有無を検知しているため、マルチフィラメントタイプの弾性部材21を用いている場合においても、切断不良の判断を正確に行うことができる。
複合伸縮シート2に配された弾性部材21の伸長率は、130%〜230%であることが好ましい。ここで、弾性部材の伸長率とは、自然状態での長さを100としたときに何%伸長しているかを示すものである。
【0027】
次に、本発明の複合伸縮シートを製造する製造方法の本実施態様を、加工装置1を使用した複合伸縮シートの製造方法に基づいて説明する。
【0028】
本実施態様においては、先ず、原反(不図示)から連続的に搬送される帯状の基材シート23の上面に接着剤塗工機31により固定部24となるホットメルト型接着剤を塗工した後、原反(不図示)から連続的に搬送される帯状の二枚の基材シート22,23の間に、複数本の弾性部材21をX方向に並置し、且つ各弾性部材21をY方向に伸長状態で配した状態の複合部材を、一対のニップロール32,33間に供給してニップすることにより、Y方向に伸長させた弾性部材21を多数の固定部24にて非連続的に固定した帯状の複合伸縮シート2を形成する(複合伸縮シート形成工程)。
【0029】
次に、本実施態様においては、複合伸縮シート形成部3で形成された帯状の複合伸縮シート2を、一対のカットロール41及びアンビルロール42の間に供給し、複合伸縮シート2を形成するY方向に伸長状態の複数本の弾性部材21それぞれを、カットロール41の加圧部44の凸部43とアンビルロール42との間で加圧して切断する(切断工程)。弾性部材21の切断の位置は、搬送方向(Y方向)に隣り合う固定部24,24の間である。
【0030】
次に、本実施態様においては、切断部4における弾性部材21全体の切断の切断成功率を、制御手段5を用いて測定し、切断成功率に基づいて、カットロール41とアンビルロール42とのクリアランス等の切断条件を制御する(制御工程)。本実施態様の制御工程におけるカットロール41及びアンビルロール42のクリアランス等の切断条件の制御を、図4に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0031】
先ず、予め、演算処理部524に、弾性部材21全体の切断成功率の結果が90%を下回った場合に、操作パネル525に「警告」を表示するように入力する(ステップS1)。また、演算処理部524に、予め、弾性部材21全体の切断成功率の結果が85%〜90%の範囲にある場合に、操作パネル525に「アンビルロール温度」を表示し、切断成功率に応じたアンビルロール42のヒーターの適正温度を表示するように入力する(ステップS1)。更に、演算処理部524に、予め、切断成功率の結果が85%を下回る(切断成功率の結果が85%より低い)場合に、操作パネル525に「ロール押し込み量」を表示し、切断成功率に応じたカットロール41の加圧部44とアンビルロールの適正な間隔(カットロール41の押し込み量)を表示するように入力する(ステップS1)。尚、本実施態様においては、切断成功率を90%、85%〜90%の範囲、85%未満に設定したが、これらの設定値に限られない。
【0032】
次に、操作パネル525を操作して、加工装置1を運転すると、弾性部材21の切断部4における切断不良の有無の結果が、画像処理装置512から演算処理部524に入力され、弾性部材21全体の切断部4における切断成功率が算出される(ステップS2)。そして、算出された弾性部材21全体の切断成功率が、予め設定された切断成功率(90%)以下か否かが判断され(ステップS3)、切断成功率が90%以上であればそのままの条件で運転を継続する(ステップS4)。
【0033】
また、弾性部材21全体の切断成功率が90%未満である場合には操作パネル525に「警告」が表示され、画像モニター513を通して目視により状況確認する。その後、必要と判断した場合には、更に予め設定された切断成功率(85%)以下か否かが判断され(ステップS5)、切断成功率が85%以上90%未満であれば、操作パネル525に「アンビルロール温度」と表示されるので、アンビルロール42のヒーターの温度を調整する(ステップS6)。ヒーターの温度は、操作パネル525に表示されたアンビルロール42のヒーターの適正温度を目安に、操作パネル525をタッチしてヒーター温度を設定し、演算処理部524によりヒーター温度の制御信号が、サーボアンプ523に出力されて調整される。ヒーターの温度の調整によりアンビルロール42の温度を高めたり、カットロール41とアンビルロール42とのクリアランスを調整したりすることができる。アンビルロール42の温度を高めたり、カットロール41とアンビルロール42とのクリアランスを調整したりした後は、再度ステップS2に戻って、再び同様のステップを繰り返し、切断成功率が90%以上となるまでヒーター温度を調整する。ただし、使用される基材シート22,23の材質により溶解・穴あきが発生し易い等、ヒーターの温度に上限が設けられる場合がある。その為、ヒーターの温度を上限まで調整しても切断成功率が90%以上とならない場合には、それ以上、ヒーターの温度を調整せず、以下に説明する押し込み量を変更するように設定することもできる。
【0034】
弾性部材21全体の切断成功率が90%未満である場合には操作パネル525に「警告」が表示され、画像モニター513を通して目視により状況確認する。その後、必要と判断した場合には、更に予め設定された切断成功率(85%)以下か否かが判断され(ステップS5)、切断成功率が85%未満であれば、操作パネル525に「ロール押し込み量」と表示されるので、カットロール41の加圧部44とアンビルロールの間隔(カットロール41の押し込み量)を調整する(ステップS7)。カットロール41の押し込み量は、操作パネル525に表示されたカットロール41の加圧部44とアンビルロールの適正間隔を目安に、操作パネル525をタッチして間隔を設定し、演算処理部524により間隔の制御信号が、サーボモーター46,47を制御するサーボアンプ521,522に出力されて調整される。カットロール41の押し込み量の調整によりカットロール41とアンビルロール42とのクリアランスを調整した後は、再度ステップS2に戻って、再び同様のステップを繰り返し、切断成功率が90%以上となるまで調整する。
【0035】
具体的には、カットロール41の加圧部44とアンビルロールの間隔(カットロール41の押し込み量)の調整(ステップS7)により、切断成功率が90%以上となれば、その条件で運転を継続する(ステップS4)。また、カットロール41の加圧部44とアンビルロールの間隔(カットロール41の押し込み量)の調整(ステップS7)により、切断成功率が85%以上90%未満となれば、アンビルロール42のヒーターの温度を調整し(ステップS6)、切断成功率が90%以上となるまでヒーター温度を調整する。尚、カットロール41とアンビルロール42とのクリアランスを調整した後も、切断成功率が85%未満である場合には、運転を停止し(ステップS8)、カットロール41の加圧部44を点検または交換する。尚、操作パネル525に「警告」が表示され、クリアランスや温度を調整している間も、加工装置1は同じ速度で複合伸縮シート2を製造し続ける。
【0036】
以上説明したように、加工装置1を用いて複合伸縮シート2を連続的に製造する本実施態様の複合伸縮シートの製造方法によれば、複合伸縮シート形成工程と、弾性部材21を切断する切断工程とを備え、切断工程における弾性部材21の切断の切断成功率を測定し、切断成功率に基づいて、カットロール41とアンビルロール42とのクリアランス等の切断条件を制御する制御工程とを有しているので、人の技量の影響を受けないため、弾性部材21の切断の切断成功率が変わり難く、弾性部材21の切断の切断成功率が向上する。また、同様に、人為的ミスを防ぎ、カットロール41の備える弾性部材切断用の加圧部44の寿命を長くすることができ、弾性部材21の切断の切断成功率が向上する。また、切断成功率が減少してきた際に、切断条件の調整の要否について、加工装置1の使用者(特に、オペレーター)の技量による判断は殆ど不要であり、判断を迷う間に不良品を生産してしまうという失敗を防止し、すばやい調整が可能となる。
【0037】
また、加工装置1を用いて複合伸縮シート2を連続的に製造する本実施態様の複合伸縮シートの製造方法によれば、CCDカメラ(撮像装置)510により撮像された撮像領域Tを、均等に分割し、分割領域Dにおいて弾性部材21の有無を検知し、弾性部材21の切断不良を判断するため、伸長状態の弾性部材21の張力を抑えた場合においても、弾性部材21の切断不良の有無を判断することができる。従って、伸長状態の弾性部材21の張力を抑えた場合においても、弾性部材21の切断の切断成功率に基づいてカットロール41とアンビルロール42とのクリアランス等の切断条件を制御するため、弾性部材21の切断の切断成功率が向上する。
【0038】
本発明は、前記実施態様に制限されない。
例えば、本実施態様の加工装置1においては、図1に示すように、カットロール41の加圧部44とアンビルロール42の間隔を調整する為に、切断部4のカットロール41は、搬送方向(Y方向)に垂直な位置にサーボモーター46,47と、クリアランス調整部48,49とを備えているが、図5に示すように、油圧シリンダー60を採用し、サーボモーター46,47を搬送方向(Y方向)に平行な位置に配してクサビ61の位置を制御することにより、カットロール41の加圧部44とアンビルロール42の間隔を調整してもよい。
【0039】
また、本実施態様の加工装置1においては、操作パネル525に「アンビルロール温度」を表示し、切断成功率に応じたアンビルロール42のヒーターの適正温度を表示するように入力しているが、「アンビルロール温度」の代わりに、「カットロール温度」を表示し、切断成功率に応じたカットロール41のヒーターの適正温度を表示するように入力していてもよいし、操作パネル525に「アンビルロール温度」及び「カットロール温度」を表示し、切断成功率に応じたアンビルロール42及びカットロール41のヒーターの適正温度を表示するように入力してもよい。
【0040】
また、本実施態様の加工装置1においては、検知手段51として光学式の撮像器を用いたが、検知手段51は、C−MOSカメラ、ランセンサー(一次元)であってもよいし、レーザーセンサーや光電センサーであってもよい。
【0041】
また、本実施態様の加工装置1においては、制御手段5の制御部52に演算処理装置524とサーボアンプ521,522,温調器523とを用いたが、これらの機能を備えた一つの演算処理装置に置き換えることもできる。
【0042】
また、本実施態様の加工装置1においては、操作パネル525を人がタッチして、ヒーター温度及びクリアランスを調整しているが、人を介せずに自動で調整してもよい。
【0043】
また、本実施態様の加工装置1により製造される複合伸縮シート2は、二枚の基材シート22,23間に弾性部材21を配して一体的に固定して形成されているが、一枚の基材シート上に弾性部材21を固定して形成してもよい。また、複合伸縮シート2は、一本の弾性部材21を固定して形成されていてもよい。
【0044】
また、本実施態様の加工装置1により製造される複合伸縮シート2は、例えば、吸収性物品である使い捨ておむつの外装材として用いることができる。
【符号の説明】
【0045】
1 加工装置
2 複合伸縮シート
21 弾性部材
22,23 基材シート
24 固定部
3 複合伸縮シート形成部
31 接着剤塗工機
32,33 ニップロール
4 切断部
41 カットロール
42 アンビルロール
43 凸部
44 加圧部
45,46,47 サーボモーター
47,48 クリアランス調整部
5 制御手段
51 検知手段
510 CCDカメラ(撮像装置)
511 照光器
512 画像処理装置
513 画像モニター
52 制御部
521,522 サーボアンプ
523 温調器
524 演算処理装置
525 操作パネル
60 油圧シリンダー
61 クサビ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続的に搬送される帯状の基材シート上に、該基材シートの搬送方向に伸長させた弾性部材を多数の固定部にて非連続的に固定して帯状の複合伸縮シートを形成する複合伸縮シート形成工程と、
前記帯状の複合伸縮シートを一対のカットロール及びアンビルロールの間に連続供給して、前記弾性部材を搬送方向に隣り合う前記固定部間にて切断する切断工程と、
前記切断工程における前記弾性部材の前記切断の切断成功率を測定し、該切断成功率に基づいて、前記カットロール及び/又は前記アンビルロールの切断条件を制御する制御工程とを備える、
複合伸縮シートを連続的に製造する複合伸縮シートの製造方法。
【請求項2】
前記制御工程における前記切断条件は、前記カットロールと前記アンビルロールとのクリアランス、及び/又は前記カットロール及び/又は前記アンビルロールの温度である請求項1に記載の複合伸縮シートの製造方法。
【請求項3】
前記制御工程における前記切断条件がクリアランスの場合には、前記カットロール若しくは前記アンビルロールを移動させて前記クリアランスを調整する及び/又は前記アンビルロールを加熱して該アンビルロールを熱膨張させて前記クリアランスを調整する請求項2に記載の複合伸縮シートの製造方法。
【請求項4】
前記制御工程においては、前記弾性部材の切断された前記固定部の間の領域を、撮像装置を用いて撮像し、撮像された撮像領域をn個(nは5〜50の整数)に均等に分割し、分割されたn−2個以上の分割領域において前記弾性部材が検知された場合に、前記弾性部材の切断不良と判断する請求項1〜3の何れかに記載の複合伸縮シートの製造方法。
【請求項5】
前記弾性部材は、複数本のフィラメントで形成されている請求項1〜4の何れかに記載の複合伸縮シートの製造方法。
【請求項6】
前記弾性部材は複数本からなり、各前記弾性部材が搬送方向に直交する方向に並置されており、
前記切断成功率は、各前記弾性部材の切断成功率の移動平均値を求め、求められた該移動平均値の平均値である請求項1〜5の何れかに記載の複合伸縮シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−178124(P2011−178124A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46891(P2010−46891)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】