説明

複合冷却装置

【課題】 比較的簡素な構成で、急速冷却を可能とするとともに、被冷却物の飛散を防止した徐冷を可能とすること。
【解決手段】 真空冷却手段4と、冷却室2内に配置した冷却用熱交換器9により被冷却物3を冷風冷却する冷風冷却工程を行う冷風冷却手段5とを備える複合冷却装置であって、真空冷却手段4は、冷却室2と接続される減圧手段16の作動により第一真空冷却工程を行うように構成される第一真空冷却手段41と、冷却室2を低圧下で密閉状態として冷却用熱交換器9により被冷却物3からの蒸気を凝縮することで第二真空冷却工程を行うように構成される第二真空冷却手段42とを含んで構成され、第一真空冷却工程,第二真空冷却工程および冷風冷却工程を順次行う第一冷却パターンと、減圧速度が第一冷却パターンの第一真空冷却工程より低い第一真空冷却工程および冷風冷却工程を順次行う第二冷却パターンとを選択可能としたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、真空冷却と冷風冷却とを可能とした複合冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品を冷却する装置として、食品を冷風により冷却するブラストチラーと称される冷風冷却装置と、食品を真空冷却する真空冷却装置とが知られている。
【0003】
前記冷風冷却装置による冷却は、冷風と食品表面との対流伝熱による冷却が主のため、冷却時間が、たとえば90分と長時間を要する課題があり、かつ食品の表面と中心部とを均一に冷却することが困難である。
【0004】
一方、真空冷却装置は、約20℃程度までは、急速冷却が可能であるが、その後は冷却速度が急速に低下するために、市場に出回っている冷却能力の低い装置では、チルド域までの冷却は困難となっていた。仮に、チルド域まで冷却しようとすると真空冷却手段の冷却能力,すなわち到達真空度を大幅に高める必要がある。一般に、真空冷却装置の使用において、チルド域まで冷却する必要がないものも多くあり、かつ、通常の真空冷却においては冷却速度の点からも増強した冷却能力を必要としない。よって、チルド域までの冷却だけのために真空冷却手段の冷却能力を高いものとするのは、経済的ではない。
【0005】
ところで、真空冷却と冷風冷却とを可能とした複合冷却装置としては、特許文献1に記載のものが知られている。この複合冷却装置は、被冷却物を先ず冷風冷却により冷却した後、真空冷却により所定温度まで冷却するものである。この従来技術は、短時間冷却を課題とせず、冷風冷却→真空冷却の順で冷却を行っているので、チルド域の低温まで冷却しようとすると、冷却時間が長くなるとともに、真空冷却手段の冷却能力を大きいものとしなければならず、真空冷却手段の装置が大掛かりなものとなる課題があった。
【0006】
【特許文献1】特開2002−318051公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この出願の発明者等は、前記の課題を解決すべく、研究開発を重ねた結果、真空冷却手段と冷風冷却手段のそれぞれの冷却特性を活かし、真空冷却工程後に冷風冷却工程を行うとともに、真空冷却手段を、冷却室と接続される減圧器の作動により第一真空冷却工程を実行するように構成される第一真空冷却手段と、冷却室を低圧下で密閉状態として冷却用熱交換器により被冷却物からの蒸気を凝縮することで第二真空冷却工程を実行するように構成される第二真空冷却手段とを含んで構成した複合冷却装置を特願2006−10880にて提案している。この複合冷却装置によれば、真空冷却手段の構成を簡素化できるとともに、チルド域までの冷却を短時間で実現可能となる。
【0008】
この出願の発明者等は、さらに研究開発を続けた結果、つぎの課題を見出した。すなわち、前記第一真空冷却と前記第二真空冷却との組み合わせは、被冷却物の急速冷却(急冷)を行う場合には好適であるが、粘性の高い被冷却物の飛散を避けるために、徐々に冷却(徐冷)する場合には、第二真空冷却を行うと、第一真空冷却のように徐冷ができないために、被冷却物の飛散を生ずることが分かった。
【0009】
この発明が解決しようとする主たる課題は、比較的簡素な構成で、被冷却物の急速冷却を可能とするとともに、被冷却物の飛散を防止した徐冷を可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、冷却室内の被冷却物を真空冷却する真空冷却手段と、前記冷却室内に配置した冷却用熱交換器により前記被冷却物を冷風冷却する冷風冷却工程を行う冷風冷却手段と、前記真空冷却手段および前記冷風冷却手段を制御する制御手段とを備える複合冷却装置であって、前記真空冷却手段は、前記冷却室と接続される減圧手段の作動により第一真空冷却工程を行うように構成される第一真空冷却手段と、前記冷却室を低圧下で密閉状態として前記冷却用熱交換器により前記被冷却物からの蒸気を凝縮することで第二真空冷却工程を行うように構成される第二真空冷却手段とを含んで構成され、前記制御手段は、前記第一真空冷却工程,前記第二真空冷却工程および前記冷風冷却工程を順次行う第一冷却パターンと、減圧速度が前記第一冷却パターンの第一真空冷却工程より低い第一真空冷却工程および前記冷風冷却工程を順次行う第二冷却パターンとを選択可能としたことを特徴としている。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、前記第一冷却パターンの実行により、被冷却物の急速冷却が可能となり、前記第二冷却パターンの実行により、被冷却物の徐冷が可能となる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、急冷と徐冷とを選択する冷却選択手段を備え、前記制御手段は、急冷が選択された時、前記第一冷却パターンを実行し、徐冷が選択された時、前記第二冷却パターンを実行することを特徴としている。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明による効果に加えて、急冷と徐冷の選択により、前記第一冷却パターンと前記第二冷却パターンとを自動的に選択することができるという効果を奏する。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、比較的簡易な構成で、被冷却物の急速冷却と、被冷却物の飛散を防止した徐冷とを行うことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
つぎに、この発明の実施の形態について説明する。この発明の実施の形態は、冷風冷却と真空冷却とによって被冷却物を冷却可能な複合冷却装置に適用される。
【0016】
この実施の形態を具体的に説明する。この実施の形態は、冷却室内の被冷却物を真空冷却する真空冷却手段と、前記被冷却物を冷風冷却する冷風冷却工程を行う冷風冷却手段と、前記真空冷却手段および前記冷風冷却手段を制御する制御手段とを備える複合冷却装置であって、前記真空冷却手段は、前記冷却室と接続される減圧手段の作動により第一真空冷却工程を行うように構成される第一真空冷却手段と、前記冷却室を低圧下で密閉状態として冷却用熱交換器により前記被冷却物からの蒸気を凝縮することで第二真空冷却工程を行うように構成される第二真空冷却手段とを含んで構成され、前記制御手段は、前記第一真空冷却工程,前記第二真空冷却工程および前記冷風冷却工程を順次行う第一冷却パターンと、前記第二真空冷却工程を行わずに減圧速度が前記第一冷却パターンの第一真空冷却工程より低い(「遅い」と称することができる。)第一真空冷却工程および前記冷風冷却工程を順次行う第二冷却パターンとを選択可能としたことを特徴としている。
【0017】
この実施の形態においては、前記第一冷却パターンが選択されると、前記第一真空冷却工程により急速冷却を行い、真空冷却速度が低下すると、前記第二真空冷却工程により急速冷却を行い、真空冷却速度が低下すると冷却速度の比較的低い前記冷風冷却工程へ移行する。
【0018】
前記第一冷却パターンの実行により、急速で均一冷却が可能な真空冷却工程を実行した後に、低温まで冷却可能な冷風冷却工程を行うので、前記真空冷却手段および前記冷風冷却手段の冷却能力を増強することなく、短時間で被冷却物を低温まで冷却することができる。また、真空冷却工程を前記第一真空冷却手段と前記第二真空冷却手段とで、二段階にて行っているので、真空冷却開始当初から過大な冷却能力で真空冷却するものと比較して、真空冷却手段の作動に必要なエネルギーを削減できるとともに、急激な冷却で被冷却物の品質低下が問題になる食材では、品質の低下を抑えることができる。
【0019】
また、前記第二冷却パターンが選択されると、前記第一真空冷却工程−前記冷風冷却工程が順次実行される。すなわち、減圧速度を低くした前記第一真空冷却工程の後、徐冷を行えない前記第二真空冷却工程を飛ばして、比較的冷却速度の低い前記冷風冷却工程を行うので、被冷却物の徐冷を支障無く行うことができる。
【0020】
つぎに、この実施の形態の各構成要素について説明する。前記冷却室は、被冷却物を収容する密閉空間を形成するとともに、被冷却物を出し入れすることができるものであれば、その形式、種類および大きさは問わない。この冷却室は、冷却槽,冷却区画、冷却容器などと称することができる。前記被冷却物は、好ましくは食材とするが、これに限定されるものではない。
【0021】
前記真空冷却手段は、第一真空冷却工程を行う前記第一真空冷却手段と、第二真空冷却工程を行う第二真空冷却手段とから構成し、前記第一真空冷却工程の後に前記第二真空冷却工程を行うように構成している。そして、前記第一真空冷却手段は、減圧手段の作動により前記第一真空冷却工程を実行し、前記第二真空冷却手段は、前記冷却室を低圧下で密閉状態として前記冷却用熱交換器を作動させて前記第二真空冷却工程を実行するように構成している。
【0022】
前記第一真空冷却手段の作動とは、前記開閉弁を開き、前記減圧手段を運転することであり、前記第二真空冷却手段の作動とは、前記冷却室が低圧下の状態を作った後に前記開閉弁を閉じ、前記冷却用熱交換器を作動させる,すなわち冷媒を供給して冷却作用を行わせることである。ここにおいて、前記冷却用熱交換器は、前記冷却室内で蒸気を凝縮するコールドトラップ(内部コールドトラップと称することができる。)として機能する。
【0023】
ところで、この実施の形態においては、前記第一真空冷却手段は、前記冷却室と接続される減圧ラインと、この減圧ライン中に設けられる減圧手段とを含んで構成される。そして、前記減圧手段は、好ましくは、蒸気エゼクタを用いることなく、真空ポンプだけか、前記冷却室外でコールドトラップとして機能する凝縮用熱交換器(外部コールドトラップと称することができる。)と真空ポンプとを組み合わせたものとする。この減圧手段は、前記冷却室外において真空状態を生成するので外部真空生成手段と称することができる。前記真空ポンプは、水エゼクタとすることができる。
【0024】
一般的に、前記減圧手段を真空ポンプと冷却水を常温水とした凝縮用熱交換器との組み合わせとした場合は、前記冷却室内を約30℃程度(水温+7程度)まで冷却することができる。また、前記減圧手段を真空ポンプと冷却水を冷水とした凝縮用熱交換器との組み合わせとした場合は、冷水温度+7程度まで(普通のチラーによる冷水なら20℃程度まで)冷却することができる。そして、減圧手段として蒸気エゼクタなどを加えることによってより、更に低い温度まで冷却することができる。
【0025】
しかしながら、前記減圧手段を水封式真空ポンプのみ,または水封式真空ポンプと冷却水を常温水とした凝縮用熱交換器熱交換器とした場合は、30℃程度までしか、前記冷却室内を冷却できないところ、この実施の形態によれば、前記第二真空冷却工程を行うこと
により、約10℃程度まで冷却することが可能となる。
【0026】
この第二真空冷却工程を行うためには、この実施の形態のように、前記減圧手段の減圧能力が低い場合には、前記水封式真空ポンプから封水が沸騰して発生した蒸気が逆流すると前記冷却室内の圧力が低下しないので、前記減圧手段を前記冷却室から切り離す必要がある。この切り離し機能をなすのが前記開閉弁である。
【0027】
また、前記第二真空冷却工程において前記凝縮用熱交換器に蒸気が凝縮するためには、前記冷却室内の空気排除により前記冷却槽内の残留空気分圧がある程度以下に下がっている必要がある。ところで、食材の初期温度(以下、初期品温という。)が高い場合には、前記減圧手段が減圧能力限界に達する時点よりもかなり早い時点から被冷却物から蒸気が出るので、前記冷却室内の空気を排除して、前記空気分圧を下げることができる。
【0028】
しかしながら、初期品温が前記減圧手段の減圧能力限界に相当する温度よりも低い場合(一例として、初期品温が20℃,減圧能力限界が30℃)には、前記減圧手段の減圧能力限界まで減圧した時点でも被冷却物から蒸気が出てこないので、前記冷却室内はその圧力の空気で満たされたままとなる。その結果、前記冷却用熱交換器での蒸気の凝縮がうまく行われなくなる。こうした、初期品温が低い場合には、前記第二冷却工程開始前に、前記冷却室内の空気を排蒸する空気排除工程を行っておく必要がある。
【0029】
前記空気排除工程は、好ましくは、前記第一真空冷却工程の中期または後期であって、前記冷却室内圧力が前記減圧手段の減圧能力限界に対応する圧力(以下、限界圧力という。)に達する前に行うように構成する。より具体的には、前記限界圧力に到達する前に、この限界圧力相当温度以上の温度(たとえば、40℃)の温水を前記冷却室内に注入することで行われる。注入された温水は、前記冷却室内圧力がその温水の飽和蒸気圧力以下まで減圧された時点で温水から蒸気が発生し始め、発生した蒸気により、前記冷却室内の空気を室外へ排出することができる。
【0030】
この空気排除工程は、温水の注入でなく、蒸気を注入することによっても可能である。また、この空気排除工程は、蒸気の供給に伴い同時に温水を供給することによっても可能である。
【0031】
また、前記空気排除工程は、前記第一真空冷却工程前に行うことも可能である。この空気排除工程は、前記減圧器を作動させながら、前記冷却室へ蒸気を供給(給蒸)または温水を供給(給水)して前記冷却室内を蒸気で満たすことにより、空気を排除するように構成する。また、この空気排除工程は、前記排気→前記給蒸→前記排気の順に行い、これを1回乃至複数回繰り返すことで行うように構成することができる。この空気排除の方法は、前記第一真空冷却工程時に行うものと比較して、空気排除工程を別個に設けているので、余分に時間を要し、冷却時間が長くなる点で劣る。また、蒸気を使用する場合は、被冷却物が蒸気により加熱される点でも劣る。
【0032】
さらに、前記第一真空冷却手段は、徐冷を可能にすべく、減圧速度の調整手段を備えている。この調整手段は、前記第一真空冷却手段による時間−前記冷却室内温度(または圧力)曲線の変化勾配を急にする,すなわち減圧速度を早くしたり、前記変化勾配を緩やかにする,すなわち減圧速度を低くしたりする機能を有する。この調整手段は、好ましくは、前記冷却室に備えられる復圧手段の復圧弁の開度を調整することで減圧速度を調整するように構成する。しかしながら、これに限定されるものではなく、前記減圧手段を減圧能力を調整可能に構成(たとえば、真空ポンプの回転数を可変に構成)し、減圧能力を調整することによっても可能である。また、前記減圧手段の減圧器の上流側に吸気量を調整可能な吸気量調整手段を設けて、吸気量を調整することによって、減圧速度を調整するよう
に構成することができる。
【0033】
前記冷風冷却手段は、被冷却物を冷風により冷却するものである。この冷風冷却手段は、好ましくは、前記冷却室内の空気を冷却する冷却用熱交換器と、前記冷却室内の空気を循環させるファンと、被冷却物と前記冷却用熱交換器との間に前記ファンによって空気の循環流が形成されるように循環路を形成する循環路形成部材とから構成される。この実施の形態では、前記冷却用熱交換器を前記第二真空冷却手段として用いるので、前記循環路は、前記熱交換器および前記ファンを前記冷却室内に配置することで、前記冷却室内に形成する。
【0034】
前記冷却用熱交換器は、被冷却物を冷風冷却によりチルド域まで冷却可能な低温(たとえば−10℃以下)とすることができる熱交換器であればよいが、好ましくは、冷凍機のコンデンシングユニットから供給される液化冷媒を蒸発して間接熱交換により前記冷却室内の空気を冷却する蒸発器から構成する。しかしながら、この冷却用熱交換器は、冷水製造装置(チラー)から供給される冷水、またはブラインチラーから供給されるブラインを冷媒とする熱交換器とすることができる。
【0035】
以上のように構成される前記第一真空冷却手段は、前期の真空冷却速度が速く、後期で真空冷却速度が鈍化する第一真空冷却特性を有し、前記第二真空冷却手段は、前期の真空冷却速度が速く、後期で真空冷却速度が鈍化する第二真空冷却特性を有し、前記冷風冷却手段は、その冷風冷却特性を冷風冷却速度が前記第一真空冷却手段および前記第二真空冷却手段の前期の真空冷却速度より低く、後期の鈍化した真空冷却速度より早いものとする。
【0036】
前記制御手段は、予め記憶した前記冷却プログラムにより前記真空冷却手段および前記冷風冷却手段の作動を制御する。前記冷却プログラムには、前記第一真空冷却工程,前記第二真空冷却工程および前記冷風冷却工程を順次行う第一冷却パターンと、前記第二真空冷却工程を行わずに前記第一冷却パターンの第一真空冷却工程より減圧速度より低い第一真空冷却工程および前記冷風冷却工程を順次行う第二冷却パターンとを選択可能とした制御プログラムを少なくとも含んでいる。
【0037】
前記第一冷却パターンと前記第二冷却パターンとの選択は、好ましくは、「急冷」と「徐冷」とを選択入力する冷却選択手段を設けて行う。前記制御手段は、「急冷」が選択された時、前記第一冷却パターンを実行し、「徐冷」が選択された時、前記第二冷却パターンを実行するように構成される。このように構成することにより、急冷および徐冷に相応しい冷却パターンが自動的に選択されて、実行される。
【0038】
前記「徐冷」は、減圧速度を前記第一冷却パターンの第一真空冷却工程の減圧速度よりも低くした第一真空冷却工程を含む第一冷却パターンを実行する第一徐冷と、前記第二冷却パターンを実行する第二徐冷とを含むように構成することができる。前記第一徐冷は、前記第二真空冷却工程を行っても被冷却物の飛散が無い場合の徐冷であり、前記急冷と比較して前記第一真空冷却工程の減圧速度が低く、冷却速度が低いので徐冷と称している。前記第一徐冷および前記第二徐冷は、必要に応じて複数種類設けることができる。
【0039】
前記第二冷却パターンにおける前記第一真空冷却工程から冷風冷却工程への切り換えタイミングは、好ましくは、後期の第一真空冷却速度が冷風冷却速度より低下するタイミングとする。
【0040】
この第一真空冷却工程から冷風冷却工程への切り換えは、前記第一真空冷却手段による冷却時間,前記冷却室内の圧力,同温度,被冷却物の温度のいずれかを検出する検出手段
を備え、前記検出手段の検出値が設定値となったとき、前記制御手段により行うように構成することができる。また、前記検出手段により、前記冷却室内の圧力,前記冷却室内の温度,被冷却物の温度のいずれかの変化量を検出し、この検出値が設定値となったとき、前記真空冷却工程から前記冷風冷却工程へ切り換えるように構成することができる。また、複数の検出値が各設定値となったとき(複数条件を満たしたとき)に前記切り換えを行うように構成することができる。
【0041】
そして、前記の「後期の真空冷却速度が冷風冷却速度より低下する」冷風切換タイミングは、前記第一真空冷却工程における真空冷却速度を連続的に監視し、前記冷風冷却工程における冷風冷却速度と比較して、前者が後者より低くなるタイミングとすることができる。このタイミングは、後期の第一真空冷却速度が冷風冷却速度と等しくなるタイミングを挟んで前後に若干の幅を持たせて設定することができる。また、前記冷風切換タイミングは、前記冷却室内の圧力または温度が、前記真空冷却特性による最終到達圧力または温度に設定値を加えた値となったときとすることができる。前記最終到達圧力(温度)とは、真空冷却特性によって無限の時間を要するが最終的に到達可能な圧力(温度)を意味する。
【0042】
また、前記冷風切換タイミングは、予め実験により、冷却開始から「後期の第一真空冷却速度が冷風冷却速度より低下する」までの経過時間(冷却時間),前記冷却室内の圧力,前記冷却室内の温度,被冷却物の温度,または前記冷却室内の圧力,同温度および前記被冷却物の温度のいずれかの変化量を設定値として求めておき、前記検出手段による検出値が前記設定値となったときとすることができる。
【0043】
さらに、前記冷風切換タイミングは、前記真空冷却工程と前記冷風冷却工程に要する時間(設定冷却時間)と到達すべき冷却温度(設定冷却温度)とを設定した場合、これらの設定冷却時間,前記真空冷却特性,前記冷風冷却特性とから設定することができる。この設定の概要は、つぎの通りである。時間(横軸)−温度(縦軸)特性において、前記設定冷却時間と前記設定冷却温度によって定められる最終到達ポイントが終点となるように冷風冷却特性曲線(時間−温度特性曲線)を時間を遡る方向へ引く、そして、真空冷却特性に対応する時間−品温特性曲線と交わる点を前記第一切換切換前記タイミングとする。こうしたタイミングの設定により、決められた時間で、決められた温度まで、確実に冷却を行うことができる。
【0044】
また、前記第一冷却パターンにおける前記第一真空冷却工程から前記第二真空冷却工程への切り換えのタイミング(真空切換タイミング)および前記第二真空冷却工程から前記冷風冷却工程への切り換えのタイミング(冷風切換タイミング)は、つぎのように設定される。すなわち、前記第第二冷却パターンの場合と同様に、冷却時間,前記冷却室内の圧力,同温度および被冷却物の温度のいずれかを検出するか,または前記冷却室内の圧力,同温度および前記被冷却物の温度のいずれかの変化量を検出する検出手段を備え、前記制御手段は、前記検出手段の検出値が第一設定値となったとき(真空切換タイミング)、前記第一真空冷却工程から前記第二真空冷却工程へ切り換え、前記検出値が第二設定値となったとき(冷風切換タイミング)、前記第二真空冷却工程から前記冷風冷却工程へ切り換えるように構成することができる。この例においても、複数の検出値が各設定値となったとき(複数の条件を満たしたとき)に前記切り換えを行うように構成することができる。
【0045】
そして、好ましくは、前記第二真空冷却手段による後期の真空冷却速度が前記冷風冷却手段による冷風冷却速度より低下するタイミングで前記第二真空冷却工程から前記冷風冷却工程へ切り換えるように構成するが、これに限定されるものではない。
【0046】
この第二真空冷却工程から前記冷風冷却工程への冷風切換タイミングの内容は、前記第
二冷却パターンの冷風切換タイミングと同様であり説明を省略する。前記真空冷却手段による冷却時間は、前記第一真空冷却手段の冷却開始からの時間、または前記第二真空冷却開始からの時間とすることができる。
【0047】
また、前記第一真空冷却工程から前記第二真空冷却工程への切換タイミングは、好ましくは、前記第一真空冷却手段による後期の真空冷却速度が前記第二真空冷却手段による前記の真空冷却速度より低下するタイミングとするが、これに限定されるものではない。
【0048】
なお、この発明は、前記実施の形態に限定されるものではない。前記実施の形態においては、前記第一冷却パターンと前記第二冷却パターンとを前記制御手段により自動的に切り換えるように構成しているが、作業者が前記第一冷却パターンと前記第二冷却パターンとを手動で切り換えるように構成することができる。
【0049】
また、前記冷却プログラムには、前記第一冷却パターンおよび前記第二冷却パターンの選択プログラムに加えて、真空冷却のみを行うプログラム,冷風冷却,真空冷却および冷風冷却を順次行うプログラム,冷風冷却のみを行うプログラム、冷風冷却および真空冷却を順次行うプログラムを含ませ、これらのプログラムを被冷却物の種類や前記設定冷却温度に応じて選択的に実行するように構成することができる。
【実施例1】
【0050】
以下、この発明の具体的実施例1を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、同実施例1の複合冷却装置1の概略構成図であり、図2は、同実施例1による冷却パターンの特性図であり、図3制御手順の要部を説明するフローチャート図である。
【0051】
前記複合冷却装置1は、真空冷却と冷風冷却とを行うことができる冷却装置であり、複数の冷却パターンを選択的に実行できるとともに、被冷却物温度(以下、品温という。)がチルド域の低温となるように被冷却物3を短時間で冷却できる特徴を有している。
【0052】
前記複合冷却装置1は、冷却室2と、この冷却室2内の被冷却物3を真空冷却する真空冷却手段4と、前記被冷却物3を冷風冷却する冷風冷却手段5と、前記真空冷却手段4および前記冷風冷却手段5とを制御する制御手段としての制御器6とを主要部として備える。
【0053】
そして、前記制御器6には、ソフトウエアによるタイマー7を備えている。前記制御器6は、前記真空冷却手段4および前記冷風冷却手段5などを制御し、後記の冷却プログラムを実行するように構成されている。
【0054】
つぎに、この複合冷却装置1の各構成要素について説明する。前記冷却室2は、被冷却物3を収容する密閉空間を形成し、被冷却物3を出し入れするための開口とこれを開閉する扉(いずれも図示省略)を備えている。また、前記冷却室2は、区画壁8により内部を上部の第一領域81と下部の第二領域82とに区画している。前記第一領域81には、被冷却物3が収容され、前記第二領域82には、前記冷風冷却手段5の一部を構成する冷却用熱交換器9が配置されている。この実施例1では、被冷却物3は、容器に収容した食材としている。
【0055】
前記冷却用熱交換器9は、冷凍機10の冷媒を液化するコンデンサ(図示省略)を有するコンデンシングユニット11から供給される液化冷媒を蒸発させることにより冷却作用をなす周知の蒸発器にて構成されている。
【0056】
この冷凍機10は、前記冷却用熱交換器9を除霜する除霜手段を備えている。この除霜
手段は、冷媒の流れを逆転させるなどにより、前記コンデンシングユニット11から前記冷却用熱交換器9へホットガスを流して除霜するホットガスデフロストと称される周知の構成である。
【0057】
前記区画壁8は前記冷却室2に対して着脱自在に構成されており、前記扉を開いて、前記区画壁8を外すと前記冷却用熱交換器9が前記冷却室2の被冷却物出し入れ用の開口から露出するように構成されている。前記冷却用熱交換器9を洗浄するには、前記区画壁8を外して露出状態とすることにより、前記冷却用熱交換器9をこの複合冷却装置1に備え付けの洗浄機(図示省略)を用いて丸洗いすることができる。
【0058】
そして、前記冷風冷却手段5は、被冷却物3を冷風により冷却するものである。この冷風冷却手段5は、前記冷却室2内の空気を冷却するための前記冷却用熱交換器9と、前記冷却室2外に配置されるモータ12によって駆動される空気循環手段としてファン13とを含む。
【0059】
そして、前記冷却室2の構成壁と前記区画壁8との間に第一開口(または隙間)141,第二開口(または隙間)142を設けて、前記冷却室2内に空気の循環経路(符号省略)を形成することにより、冷風冷却機能をなすように構成している。この実施例1では、前記区画壁8は前記冷却室2の構成壁とで前記循環経路構成部材を構成する。なお、前記ファン13から出た空気がショートパスして戻らないように、前記ファン13と前記区画壁8および前記冷却室2の構成壁との間に遮蔽部材(図示省略)を設けるとともに、前記冷却用熱交換器9と前記区画壁8および前記冷却室2の構成壁との間にも遮蔽部材(図示省略)を設けている。
【0060】
前記真空冷却手段4は、前期の真空冷却速度が早く(速く)、後期で真空冷却速度が鈍化する第一真空冷却特性を有する第一真空冷却手段41と、前期の真空冷却速度が早く、後期で真空冷却速度が鈍化する第二真空冷却特性を有する第二真空冷却手段42とから構成されている。
【0061】
前記第一真空冷却手段41および前記第二真空冷却手段42は、具体的には、つぎのように構成される。すなわち、前記第一真空冷却手段41は、前記冷却室2と接続される減圧ライン15と、この減圧ライン15中に設けられる減圧手段としての水封式の真空ポンプ16と、前記冷却室2および前記真空ポンプ16の間に位置して閉時に前記冷却室2を密閉保持するための開閉弁17とを含んで構成される。
【0062】
前記減圧ライン15は、図1に示すように前記冷却室2の底壁の中央部と接続されている。前記底壁は、周端部から中央部へ向けて下向きに傾斜形成されており、前記減圧ライン15は、前記底壁の一番低い箇所に接続されている。この構成により後記のドレン排出動作において、ドレンを速やかに排出することができる。
【0063】
前記第一真空冷却手段41は、前記開閉弁17を開いた状態で前記真空ポンプ16を作動(運転)させることにより第一真空冷却工程を実行するように構成される。前記開閉弁17は、開閉だけの弁としているが、開度が調整可能な弁とすることができる。前記減圧ライン15には、必要に応じて前記冷却室2方向への流れを阻止する逆止弁(図示省略)を設けることができる。こうした構成による第一真空冷却手段41の第一真空冷却特性は、前期の真空冷却速度が早く、後期で真空冷却速度が鈍化するものとなっている。
【0064】
そいて、前記冷却室2は、真空冷却工程後に前記冷却室2内を負圧から大気圧に復圧する復圧手段22を備えている。この復圧手段22は、前記冷却室2と接続される復圧ライン23と、この復圧ライン23途中に設ける復圧弁24および除菌フィルター25とを含
んで構成される。前記復圧弁24は、前記第一真空冷却手段41の減圧速度を調整すべく、開度が調整可能な弁としている。すなわち、この実施例1では、前記復圧手段22は、前記第一真空冷却手段41の減圧速度調整手段を兼ねている。また、前記復圧ライン23には、前記冷却室2内から外方向への流れを阻止する逆止弁(図示省略)を設けることができる。
【0065】
一方、前記第二真空冷却手段42は、前記冷却室2内を低圧下で密閉状態として前記冷却用熱交換器9により被冷却物からの蒸気を凝縮する機能を有し、第二真空冷却工程を実行するように構成される。この第二真空冷却手段42を構成する要素は、前記冷却室2,前記冷却用熱交換器9,前記開閉弁17および前記第一真空冷却手段41である。前記冷却室2内を低圧下で密閉状態とするには、前記第一真空冷却工程後に、前記開閉弁17を閉じることで実現される。こうした構成による第二真空冷却手段42の第二真空冷却特性は、前記第一真空冷却特性と同様に、前期の真空冷却速度が早く、後期で真空冷却速度が鈍化するものとなっている。そして、前記第二真空冷却手段42は、前記第一真空冷却手段41のような減圧速度を調整する手段を備えていない。
【0066】
そして、前記冷風冷却手段5の冷風冷却特性について説明すると、前記第一温度設定値以上の温度域の特性(第一冷風冷却特性)は、前記第一温度設定値以上の温度域では被冷却物3からの自然蒸発が支配的であるので真空冷却速度より早く、前記第二温度設定値以下の温度域の特性(第二冷風冷却特性)は、冷風冷却速度が前記第一真空冷却手段41および前記第二真空冷却手段42の前期の真空冷却速度より低く、後期の鈍化した真空冷却速度よりも早いものとしている。
【0067】
この実施例1においては、初期品温が低い場合でも、前記第二真空冷却工程の作用を可能とするために、前記第一真空冷却工程の中期または後期に空気排除工程を実行するように構成している。より具体的には、前記冷却室2内圧力が前記真空ポンプ16の減圧能力限界に対応する圧力(限界圧力)となる前に、前記限界圧力に相当する温度以上の40℃の温水を前記冷却室2内へ注入するように構成している。注入された温水は、前記冷却室2内の圧力がその温水の飽和蒸気圧力以下まで減圧された時点から蒸発し始め、発生した蒸気により、前記冷却室2内の空気を室外へ排出することができる。
【0068】
この空気排除工程における温水注入のタイミングは、前記第一真空冷却工程開始からの経過時間を前記タイマー7により計測し、この計測値が設定値(注入タイミング)となった時としている。前記の温水注入タイミングは、前記冷却室2内圧力が設定値まで下がったときとすることができる。
【0069】
前記冷却室2内への温水注入手段としての温水供給手段18は、温水を前記冷却室2内へ供給するための第一給水ライン19と、温水供給源(温水器または温水発生器)20と、温水供給を制御する第一給水弁21とを設けて構成されている。
【0070】
前記第一真空冷却手段41は、前記冷却室2内の気体を排出する排気機能に加えて、前記冷風冷却工程時に前記冷却用熱交換器9にて生ずる凝縮水(ドレン)を前記冷却室2外へ排出するドレン排出機能をもなすように構成されている。すなわち、前記冷風冷却工程時に前記開閉弁17を開き、前記真空ポンプ16を作動させる動作を間欠的に行うように構成している。
【0071】
前記制御器6は、予め記憶した冷却プログラムにより前記第一真空冷却手段41,前記第二真空冷却手段42,前記温水供給手段18,前記復圧手段22および前記冷風冷却手段5の作動などを制御するように構成されている。
【0072】
前記冷却プログラムは、図2に示すように、前記第一真空冷却工程により得られる第一真空冷却特性A1,前記第二真空冷却工程により得られる第二真空冷却特性Bおよび前記冷風冷却工程により得られる冷風冷却特性Cからなる第一冷却パターンXと、前記第二真空冷却工程を行わずに前記第一真空冷却工程の減圧速度より低い第一真空冷却工程により得られる第一真空冷却特性A2および前記冷風冷却特性Cからなる第二冷却パターンとを選択可能としている。この第一真空冷却工程は、PID制御により行うように構成することができる。
【0073】
前記第一冷却パターンXは、被冷却物3を急冷するために設定された冷却パターンである。前記第一冷却パターンXの第一真空冷却特性A1は、前記復圧弁24を全閉して前記真空ポンプ16を作動させることにより得られる。
【0074】
前記第二冷却パターンYは、急冷すると突沸により一部が飛散する被冷却物を徐冷するために設定された冷却パターンである。前記第二冷却パターンYの第一真空冷却特性A2は、前記復圧弁24を所定量だけ開いて前記真空ポンプ16を作動させることにより得られる。前記復圧弁24の所定量の開度は、必要とする徐冷特性に応じて予め実験により定める。
【0075】
前記冷却プログラムなどの制御を行うために、被冷却物3の品温を検出する品温センサ26,前記冷却室2内の圧力(温度)を検出する室内圧力センサ27,前記冷凍機10の冷媒回路の圧力および温度をそれぞれ検出する冷媒圧力センサ28,冷媒温度センサ29,急冷と徐冷とを選択して入力するなどの冷却条件を入力すると共に冷却設定条件や運転状態などを表示する操作器70を備えている。これらは、前記制御器6と接続されて、前記コンデンシングユニット11,前記モータ12,前記真空ポンプ16、前記開閉弁17,前記第一給水弁21,前記復圧弁24などを制御する。
【0076】
つぎに、前記第一冷却パターンXにおける前記第一真空冷却工程から前記第二真空冷却工程への切換タイミング(以下、真空切換タイミングという。)および前記第二真空冷却工程から前記冷風冷却工程への切換タイミング(以下、冷風切換タイミングという。)について説明する。
【0077】
前記真空切換タイミングおよび前記冷風切換タイミングは、それぞれ前記第一真空冷却特性および前記第二真空冷却特性を踏まえて、予め実験により、求めておく。前記真空冷却切換タイミングは、前記第一真空工程開始から前記第一真空冷却工程の後期の真空冷却速度が前記冷風冷却工程の冷風冷却速度近傍に達するまでの経過時間(冷却時間)を第一切換設定値T1として求めておき、検出手段としての前記タイマー7による計測値が前記第一切換設定値T1となったときとしている。
【0078】
また、前記冷風切換タイミングは、前記第二真空冷却工程開始から前記第二真空冷却工程の後期の真空冷却速度が前記冷風冷却工程の冷風冷却速度近傍に達するまでの経過時間(冷却時間)を第二切換設定値T21として求めておき、前記タイマー7による計測値が前記第二切換設定値T21となった時としている。
【0079】
前記第二冷却パターンYの冷風切換タイミングは、前記第一真空冷却工程開始から前記第一真空冷却工程の後期の真空冷却速度が前記冷風冷却工程の冷風冷却速度近傍に達するまでの経過時間(冷却時間)を第二切換設定値T22として求めておき、前記タイマー7による計測値が前記第二切換設定値T22となった時としている。
【0080】
そして、前記第一冷却パターンXにおいて、前記室内圧力センサ27の検出値が第二真空強制終了圧力値以下、または前記品温センサ26の検出値が第二真空強制終了温度値以下
となった時には、前記第二真空冷却工程を強制的に終了するように構成している。
【0081】
前記第一切換設定値T1および前記第二切換設定値T21,T22は、冷却時間(前記タイマー7による計測時間)によらずに、前記冷却室2内の圧力,前記冷却室2内の温度,前記近傍に達したときの被冷却物3の温度のいずれかにより,または前記冷却室2内の圧力,前記冷却室2内の温度,被冷却物3の温度のいずれかの変化量(変化速度)により求めることができる。そして、前記室内圧力センサ27により室内圧力または室内温度を検出するか、前記品温センサ26により品温を検出するかして、検出値が前記第一切換設定値となったとき、前記第一真空冷却工程から前記第二真空冷却工程へ切り換え、前記検出値が前記第二切換設定値となったとき、前記第一真空冷却工程または前記第二真空冷却工程から前記冷風冷却工程へ切り換えるように構成することができる。
【0082】
品温により前記第一,第二切換設定値を設定する場合には、各第一切換設定値,前記第二切換設定値をそれぞれ前記第一温度設定値,前記第二温度設定値とすることができる。
【0083】
さらに、前記第一切換設定値および前記第二切替設定値は、前記タイマー7による計測時間と、前記冷却室2内の圧力,前記冷却室2内の温度,被冷却物3の温度のいずれかまたはこれらの複数の組み合わせと、前記冷却室2内の圧力,前記冷却室2内の温度,被冷却物3の温度のいずれかの変化量またはこれらの組み合わせとを適宜組み合わせにより設定することができる。
【0084】
ところで、図1を参照して、この実施例1においては、前記ファン13を前記第二領域82に前記冷却用熱交換器9に対向するように配置し、前記冷却室2外へ配置したモータ12により駆動するように構成している。このため、前記ファン13と前記モータ12とを連結し前記冷却室壁51を貫通する回転軸52部分において、真空冷却工程時に真空漏れを生じないように、前記モータ12を前記冷却室2内空間に対して気密に遮断するシール手段50を備えている。
【0085】
また、前記前記冷却用熱交換器9と前記コンデンシングユニット11を接続する冷媒配管39,39が前記冷却室3の室壁51を貫通する箇所は、シールパッキン53にて気密にシールしている。このシールパッキン53は、コンプレッションフィッティングとすることができる。
【0086】
以下に、この実施例1の動作を図1および図2に基づき以下に説明する。
【0087】
<準備段階および運転開始>
使用者は、前記扉を開いて前記冷却室2内へ被冷却物3を収容し、被冷却物3に前記品温センサ26を差し込み、前記扉を閉じて密閉状態とする。この状態では、前記開閉弁17,前記第一給水弁21,前記復圧弁24は、全て閉状態で、前記モータ12,前記真空ポンプ16,前記コンデンシングユニット11は、全て作動(運転)停止状態である。前記蒸気発生源20は、予め作動状態としておくことができる。この状態で、使用者は、前記操作器70を用いて「急冷」または「徐冷」の選択などの種々条件を入力し、運転スイッチ(図示省略)により運転を開始する。
【0088】
<第一冷却パターンX>
今、急冷が選択されたとすると、図3を参照して、処理ステップS1(以下、処理ステップSNは、単にSNと称する。)において、「徐冷」が選択されたかどうかが判定される。今の場合、NOが判定され、処理はS2へ移行し、前記第一冷却パターンが実行されることになる。
【0089】
(第一真空冷却工程)
S2において、前記第一真空冷却工程が行われる。この第一真空冷却工程S2は、つぎのように行われる。前記開閉弁17を開き、前記第一給水弁21を閉じ、前記復圧弁24を閉じて、前記真空ポンプ16を作動させる。すると、前記冷却室2内の気体は、前記減圧ライン15を通して室外へ排出される。前記冷却室2内の圧力および温度は、前記第一真空冷却特性A1に沿って比較的急速に低下し、この圧力低下に従って、被冷却物3からの蒸気の蒸発により、被冷却物3の温度が70℃から低下して行く。この品温低下速度は、初期において急速で、温度の低下とともに、後期において鈍化して行く。
【0090】
この第一真空冷却工程において、前記タイマー7の計測値が前記注入タイミングとなると前記制御器6は、前記第一給水弁21を所定時間だけ開いて、前記温水供給源20から前記冷却室2内へ所定量の温水を供給する。そして、前記冷却室2内の圧力がその温水の飽和蒸気圧力以下まで減圧されているので、供給された温水が蒸発し始める。こうして発生した蒸気とともに前記冷却室2内の空気が前記減圧ライン15を通して室外へ排出される。これにより、前記冷却室2内の空気排除が行われる。
【0091】
そして、前記タイマー7による計測時間が前記第一切換設定値T1に達すると、S3の第二真空冷却工程へ移行する。この移行時点における真空冷却速度は、前記冷風冷却手段5の冷風冷却特性による冷却速度より低くなっている。また、この移行時点の品温は、約20℃である。
【0092】
(第二真空冷却工程)
前記第二真空冷却工程S3では、前記開閉弁17,前記第一給水弁21および前記復圧弁24を閉じて、前記真空ポンプ16を停止するとともに、前記コンデンシングユニット11を作動させる。前記コンデンシングユニット11の作動により、前記冷却用熱交換器9内の温度を約−10℃とする。このコンデンシングユニット11による前記冷却用熱交換器9の温度低下には起動から所定の時間を要するので、前記第一切換設定値T1の所定時間前に前記コンデンシングユニット11を起動させておくことが望ましい。
【0093】
この第二真空冷却工程S3においては、前記冷却室2内は、低圧で密封され、前記冷却室2内の蒸気は、前記冷却用熱交換器9へ移動して、ここで凝縮し、前記冷却室2内の圧力は、低圧状態を維持する。その結果、被冷却物3から蒸気が連続的に発生し、品温が低下して行く。この品温低下は、前記第二真空冷却特性Bに沿ってなされ、初期において急速に行われ、温度の低下とともに、後期において低下速度が鈍化して行く。前記タイマー7による計測時間が前記第二切換設定値T21に達すると、S4の復圧工程へ移行する。この移行時点における真空冷却速度は、前記冷風冷却手段5の冷風冷却特性Cによる冷却速度より低くなっている。また、この移行時点の品温は、約10℃である。
【0094】
前記第二真空冷却工程S3において、前記冷却用熱交換器9に着霜すると、前記制御器6は除霜動作を行う。着霜は、前記冷媒圧力センサ28または前記冷媒温度センサ29により前記冷凍機10の低圧側の圧力または温度を検出することにより行い、検出値が着霜と判定できる設定値となるとホットガスを前記冷却用熱交換器9へ供給することにより除霜が行われる。この除霜動作により、前記冷却用熱交換器9の凝縮作用を良好に維持することができ、前記第二真空冷却工程による冷却を着霜による影響を受けずに効果的に行うことができる。
【0095】
(復圧工程)
前記復圧工程S4は、前記復圧弁24を開くことで行う。これにより、外気が前記復圧ライン23を通して前記冷却室2内へ導入され、前記冷却室2内が大気圧に復帰する。この復圧工程は、前記室内圧力センサ27により検出され、大気圧を検出すると、復圧工程
を終了し、S5の冷風冷却工程へ移行する。この実施例1においては、前記復圧工程中は、前記コンデンシングユニット11をの作動を継続し、前記ファン13の作動を停止しておく。しかしながら、必要に応じて、前記コンデンシングユニット11の作動を停止し、前記ファン13を作動させるように構成することができる。
【0096】
(冷風冷却工程)
前記冷風冷却工程S5では、前記開閉弁17,前記第一給水弁21および前記復圧弁24を閉じて、前記真空ポンプ16を停止するとともに、前記コンデンシングユニット11および前記ファン13を作動させる。これにより、前記冷却室2内において前記ファン13→前記冷却用熱交換器9→前記第二開口142→前記被冷却物3→前記第一記開口141→前記ファン13の一点破線矢視の冷風循環流が形成される。この循環流により、前記冷却室2内の空気は、前記冷却用熱交換器9により冷却されて温度低下し、前記被冷却物3を対流伝熱により冷却する。こうした冷風冷却により、前記冷風冷却特性Cに沿って品温が約3℃となるまで冷却される。品温が3℃まで低下したことを前記品温センサ26により検出すると、前記冷風冷却工程S5を終了する。
【0097】
この冷風冷却工程においては、被冷却物3および前記冷却用熱交換器9の表面から凝縮水(ドレン)が発生し、前記冷却室2内底部に貯留する。このドレンは、つぎのようにして排出される。前記開閉弁17を開き、前記真空ポンプ16を作動させる。すると、前記ドレンは、前記減圧ライン15を通して前記冷却室2外へ排出される。このドレン排出時、前記復圧弁24を開くことにより、ドレンの排出をスムーズに行うことができる。前記第一冷風冷却工程S21において発生したドレンも、同様にして前記冷却室2外へ排出される。
【0098】
(冷却運転終了)
この冷風冷却工程S5が終了すると、使用者は、前記運転スイッチを操作して、冷却運転を停止して、前記冷却室2内の被冷却物3を取り出すことができる。
【0099】
この第一冷却パターンXにおいて、初期品温が約70℃以上では、被冷却物3の温度が高く、被冷却物3からの自然蒸発が支配的であるので、前記第一真空冷却手段41を作動させることによる真空冷却が効果的に行われない。したがって、前記冷風冷却工程S5と同様な冷風冷却工程を前記第一真空冷却工程の前に設けることにより、被冷却物3の粗熱取りを行うように構成することが望ましい。こうすることにより、真空冷却でなく、冷風冷却により粗熱取りを行っているので、効果的な被冷却物3の冷却を行うことができ、全冷却時間を短縮することができる。
【0100】
<第二冷却パターンY>
今、「徐冷」が選択されたとすると、S1において、YESが判定され、前記第二冷却パターンが行われる。処理は、S6へ移行し、まず第一真空冷却工程S6が実行される。
【0101】
この第一真空冷却工程S6は、基本的には、前記第一真空冷却工程S2と同様に行われるので、異なる点のみ説明する。この第一真空冷却工程S6においては、前記復圧弁24を設定開度に開いて前記真空ポンプ16を作動させる。すると、前記冷却室2内へ外気が導入されながら減圧されることになり、前記冷却室2内の圧力は、前記第一真空冷却特性A2に沿って緩やかに低下する。その結果、カレーなどの粘性の高い被冷却物3を突沸による飛散を生ずることなく、ゆっくりと冷却することができる。
【0102】
この第一真空冷却工程S6が終了すると、前記第二真空冷却工程S3を飛ばして(パスして)、前記第一冷却パターンXと同様に前記復圧工程S4,前記冷風冷却工程S5を順次行う。
【0103】
この第二冷却パターンYによれば、被冷却物3の飛散を生ずる虞のある前記第二真空冷却工程を行わないので、被冷却物3の飛散を生ずることなく、被冷却物3を徐冷することができる。
【0104】
以上のように構成される実施例1によれば、つぎの作用効果を奏する。前記第一冷却パターンXを選択することにより、前記第一真空冷却工程および前記第二真空冷却工程が順次行われて、被冷却物3を急速に冷却することができる。
【0105】
この第一冷却パターンXにおいては、前記真空冷却工程を前記第一真空冷却手段41による外部コールドトラップを用いた第一真空冷却工程と前記第二真空冷却手段42による内部コールドトラップを用いた第二真空冷却工程とで、二段階で行っているので、前記真空冷却手段4の減圧手段を簡素なものとすることができる。また、真空冷却開始当初から過大な冷却能力で真空冷却するものと比較して、真空冷却手段の作動に必要なエネルギーを削減できるとともに、急激な冷却で被冷却物の品質低下が問題になる食材では、品質の低下を抑えることができる。
【0106】
また、前記第一真空冷却工程中に空気排除工程を行っているので、前記第二真空冷却工程における前記冷却用熱交換器表面での蒸気の凝縮を効率よく行うことができる。
【0107】
また、冷風冷却用の前記冷却用熱交換器9を前記第二真空冷却手段42の蒸気凝縮用のコールドトラップと兼用しているので、真空冷却手段の設備を簡素化でき、複合冷却装置のイニシャルコストを低減することができる。
【0108】
また、前記第二冷却パターンYを選択すると、前記第二真空冷却工程が行われないので、被冷却物3の飛散を生ずることなく、被冷却物3を徐冷することができる。
【実施例2】
【0109】
つぎに、この発明の実施例2の複合冷却装置1を図4に基づき説明する。この実施例2は、ハード構成に関しては、基本構成を前記実施例1の構成(図1)と同じにしているが、前記温水供給手段18の代わりに給蒸手段55を設けている点で異なる。そして、前記冷却プログラムの構成に関しても基本的には前記実施例1と同じであるが、前記真空冷却工程の構成を異ならせている。また、前記循環経路構成部材の構成を異ならせている。以下、異なる点を中心に説明する。
【0110】
前記給蒸手段55の構成について説明する。図4を参照して、この給蒸手段55は、冷却室2内へ蒸気および温水を供給するように冷却室2と接続されている。この給蒸手段55は、温水タンク56により構成される。この温水タンク56には、第二給水弁57を介して水が供給され、ヒータ58により所定温度に温められて温水として貯留される。この実施例2では、前記温水タンク56は、前記冷却室2の下部に第二給蒸ライン59を介して接続されており、その中途には第二給蒸弁60が設けられている。この第二給蒸弁60は、前記第二給蒸ライン59を開閉するものであり、この実施例2ではモータバルブから構成される。
【0111】
前記冷却室2内の減圧状態で前記第二給蒸弁60を開くことで、差圧により、前記温水タンク56内の蒸気は温水を伴って前記冷却室2内へ自然に供給される。このように温水をも前記冷却室2内へ供給することで、水の濃縮を防止することができる。この濃縮防止により、濃縮水のブロー(排出)を無くすか、回数を減らすことができる。前記冷却室2内に供給された温水は、減圧下で一層蒸発を促されて、前記冷却室2内に蒸気を充満させる。その一方で、余分な温水や、蒸気の凝縮水は、前記第一真空冷却手段41により外部
へ直ちに排出される。前記第二給蒸弁60は、前記タイマー7により所定の注入タイミングとなると開き、前記タイマー7による計測時間が設定値となり、かつ前記温水タンク56内温度が設定値以下となると閉じるように制御される。ところで、前記冷却室2内へ蒸気および温水を供給することで、後述する前記冷却用熱交換器9の除霜を図ることもできる。
【0112】
つぎに、前記真空冷却工程について説明する。この実施例2においては、前記第二真空冷却工程中に前記ファン13を駆動するように構成するとともに、前記第一真空冷却工程の初期において、前記ファン13を駆動するように構成している。前記第一真空冷却工程の初期とは、前記冷却室2内の圧力が設定圧力以下となるまで期間を意味し、この実施例3では、前記冷却室2内の圧力を検出するセンサ(図示省略)により前記期間を制御するように構成している。この実施例2のその他の構成は、前記実施例1と同様であるので、説明を省略する。
【0113】
つぎに、前記循環経路構成部材の構成について説明する。この実施例2においては、前記循環経路構成部材の一部として、筒状のファンガイド30と、このファンガイド30と前記区画壁8および前記冷却室2の底壁との間を遮蔽する第一遮蔽部材31と、前記冷却用熱交換器9と前記区画壁8および前記冷却室2壁との間を遮蔽する第二遮蔽部材32と、冷風を被冷却物3に対してほぼ均等に供給するための穴開き板からなる第一送風ガイド33,第二送風ガイド34を備えている。
【0114】
前記第一送風ガイド33は、被冷却物3を冷却した後の冷風を前記区画壁8の第一開口141へほぼ均等に戻す機能をなし、前記第二送風ガイド34は、前記区画壁8の第二開口142からの冷風を被冷却物3へ向けてほぼ均等に案内、供給するする機能を有するように構成されている。前記送風ガイド33,34は、前記区画壁8と別体にして着脱自在に連結されている。前記ファンガイド30,前記第一遮蔽部材31および前記第二遮蔽部材32は、冷風のショートパスを防止する機能をなすものであり、これらも着脱自在に構成されている。
【0115】
この発明は、前記実施例1〜2に限定されるものではなく、例えば、前記第一冷却パターンXおよび前記第二冷却パターンYは図2のものに限定されることなく、種々変更可能である。また、前記冷却室2内の構成要素の配置,前記第一真空冷却手段41の構成なども種々変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】この発明の実施例1の概略構成を説明する説明図である。
【図2】同実施例1の第一冷却パターンおよび第二冷却パターンの時間−圧力特性図である。
【図3】同実施例1の冷却プログラムを説明するフローチャート図である。
【図4】この発明の実施例2の概略構成を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0117】
1 複合冷却装置
2 冷却室
3 被冷却物
4 真空冷却手段
5 冷風冷却手段
6 制御器
41 第一真空冷却手段
42 第二真空冷却手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却室内の被冷却物を真空冷却する真空冷却手段と、前記冷却室内に配置した冷却用熱交換器により前記被冷却物を冷風冷却する冷風冷却工程を行う冷風冷却手段と、前記真空冷却手段および前記冷風冷却手段を制御する制御手段とを備える複合冷却装置であって、
前記真空冷却手段は、前記冷却室と接続される減圧手段の作動により第一真空冷却工程を行うように構成される第一真空冷却手段と、前記冷却室を低圧下で密閉状態として前記冷却用熱交換器により前記被冷却物からの蒸気を凝縮することで第二真空冷却工程を行うように構成される第二真空冷却手段とを含んで構成され、
前記制御手段は、前記第一真空冷却工程,前記第二真空冷却工程および前記冷風冷却工程を順次行う第一冷却パターンと、減圧速度が前記第一冷却パターンの第一真空冷却工程より低い第一真空冷却工程および前記冷風冷却工程を順次行う第二冷却パターンとを選択可能としたことを特徴とする請求項1に記載の複合冷却装置。
【請求項2】
急冷と徐冷とを選択する冷却選択手段を備え、
前記制御手段は、急冷が選択された時、前記第一冷却パターンを実行し、徐冷が選択された時、前記第二冷却パターンを実行することを特徴とする請求項1に記載の複合冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−96077(P2008−96077A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−281023(P2006−281023)
【出願日】平成18年10月16日(2006.10.16)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】