説明

複合化粧板

【課題】 火災発生時にも容易に分解することがなく、さらには、表面性状に優れ、反りの発生を低減した複合化粧板を提供することを目的とする。
【解決手段】 不燃板2と木質系基板3によって構成される複合化粧板1であって、該不燃板2の一方の面と該木質系基板3の一方の面とを、金属質層を有する防湿層4を介して湿気硬化タイプのウレタン樹脂系反応性ホットメルト接着剤5と湿気硬化タイプのウレタン樹脂系反応性ホットメルト接着剤6により貼り合わせて、複合化粧板1とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不燃板と木質系基板によって構成される複合化粧板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、キッチン・流し台のレンジフードと呼ばれる換気扇付近の囲いに接する吊戸棚部分には、消防法によって不燃板(不燃材料)を使用することが定められており、この不燃板の具体的な試験方法(不燃試験)は、建築基準法2条9号(令108条の2)で定められている。しかし、不燃板のみでは、扉取り付け金具を固定するための木ネジをねじ込むと割れてしまうことや、箱組みする際に、組み立てに使用する木製だぼを打ち込むと割れてしまうなどの欠点があったため、不燃板と木質板とを接着剤で貼り合わせて複合する方法が用いられてきた。すなわち、火気のある側に不燃板を配置させて不燃性は不燃板で確保し、木ネジや木製だぼに対する加工適性は木質板で対処するという考え方である。
【0003】
不燃材料に使用される基板としては、ケイカル板、石膏ボード、火山性ガラス質復層板などが挙げられるが、いずれも透湿性がある。また、木質板は加工適性に優れるものの、吸湿による反りの問題が発生し易いことが知られている。したがって、上記のように不燃板と木質板とを複合させて吊戸棚などの構造物を作製することも考えられるが、これら構造物にとっては、寸法安定性や意匠性の点から、反りが大きな問題となる。
【0004】
一方、木質板の少なくとも一方の面に、接着剤を介して金属箔と合成樹脂シートと紙からなる複合シートを積層した、反り防止に優れる木質板が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
そこで、この反り防止に優れる木質板を採用し、金属箔を有する複合シートを介して接着剤で不燃板と貼り合わせることにより、不燃板と木質板との間での水分の移動を防止し、反り発生を抑制した複合不燃板とする方法も考えられる。
【0006】
しかしながら、不燃板側から火気を近づけて上記不燃試験を行うと、不燃板の燃焼は抑制することはできても、不燃板と木質板との貼り合わせ面における接着剤に耐熱性がないと、熱伝導により、接着面又は複合シート面から剥離して、吊戸棚などの構造物が容易に分解してしまい、大きな火災に発展する危険がある。
【特許文献1】特許第3185675号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、火災発生時にも容易に分解することがなく、さらには、表面性状に優れ、反りの発生を低減した複合化粧板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、不燃板と木質系基板との間に金属質層を有する防湿層を設けることにより、火災発生時にも熱が金属質層によって拡散され、局部的に熱が蓄積されることが防止できるとともに、不燃板と木質系基板との間の水部移動も抑制されることから反り発生が低減でき、しかも特定の接着剤を使用することによって構造物が容易に分解することを防止できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0009】
すなわち、本発明は、不燃板と木質系基板によって構成される複合化粧板であって、該不燃板の一方の面と該木質系基板の一方の面とを、金属質層を有する防湿層を介して湿気硬化タイプのウレタン樹脂系反応性ホットメルト接着剤により貼り合わせたことを特徴とする複合化粧板を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、不燃板と木質系基板との間に金属質層を有する防湿層を設けたことにより、火災発生時にも熱が金属質層によって拡散され、局部的に熱が蓄積されることが防止でき、しかも湿気硬化タイプのウレタン樹脂系反応性ホットメルト接着剤を使用することにより構造物が容易に分解することが防止できる。さらに、不燃板と木質系基板との間に金属質層を有する防湿層を設けたことにより、不燃板と木質系基板との間の水分移動も抑制され、反り発生が著しく低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明を詳細に説明する。図1は本発明による複合不燃板の模式断面図である。
【0012】
図1に示すように、本発明による複合不燃板1は、不燃板2と木質系基板3とから構成されている。不燃板2としてはケイカル板、石膏ボード、火山性ガラス質復層板などが挙げられるが、難燃性、防腐性などの特性に優れ、特に切断加工性の点から、火山性ガラス質複層板(JIS A 5440:2003)が好ましい。また、木質系基板3としては、パーティクルボード、合板、中密度繊維板(MDF)などが挙げられる。
【0013】
不燃板2と木質系基板3との間に形成される防湿層4に設けられる金属質層としては、金属箔、金属蒸着膜、金属スパッタリング膜などが挙げられる。金属箔の厚さとしては、防湿性や熱伝導性の点から5〜20μmであればよく、機能面、加工性、コストなどの点からは、7〜15μmの厚さが好ましい。金属箔の種類としては、銅箔、アルミニウム箔などが挙げられるが、入手のし易さや加工のし易さの点からは、アルミニウム箔が好適である。
【0014】
防湿層4を上記金属質層のみで形成しても良いが、不燃板2と木質系基板3との接着性や防湿層4の加工性の点からは紙質材/金属箔の構造の複合シートや紙質材/金属箔/紙質材の構造の複合シートなどが好ましく、特に押出ラミネートにより形成された紙質材/PE(ポリエチレン)/金属箔の構造の複合シートが好ましい。これら複合シートの場合の金属箔の種類や厚さは上記したものと同様でよく、押出ラミネートによる複合シートの場合にはPEの厚さを10〜50μmとし、10〜30μmとすることが特に好ましい。なお、各種の複合シートの全体の厚さとしては40〜200μmとし、50〜100μmとすることが特に好ましい。
【0015】
金属質層を金属蒸着膜や金属スパッタリング膜とする場合には、不燃板2や木質系基板3に直接形成することも可能ではあるが、実用的な点からは、紙質材や樹脂シートなどに形成させて、このシート材を使用することが好ましい。この場合の膜厚は、金属箔のように厚い膜厚とすることは経済的ではないため、通常は0.5μm〜10μm程度とするが、防湿性や熱伝導性の点では金属箔の方が性能的に上である。
【0016】
防湿層4が金属質層のみで構成される場合には当然その金属質層の面側を不燃板2の面側と木質系基板3の面側に貼り合わせることになるが、紙質材/金属箔の構造の複合シートや、紙質材/PE/金属箔の構造の複合シートによる場合には、紙質材の面側を不燃板2の面側に貼り合わせ、金属質層の面側を木質系基板3の面側に貼り合わせることにより接着強度が確保できる。
【0017】
この際の接着剤は、耐熱性や接着強度の点から、湿気硬化タイプのウレタン樹脂系反応性ホットメルト接着剤であることが重要となる。湿気硬化タイプのウレタン樹脂系反応性ホットメルト接着剤5、6を採用することにより、防湿層4が強固に接着される。この湿気硬化タイプのウレタン樹脂系反応性ホットメルト接着剤は、水分によって反応して硬化が進行し、反応終了後に強靱な皮膜を形成して強力な接着力を発揮するので、たとえ水分が不燃板2側や木質系基板3側から浸透してきても、水系接着剤やEVA系ホットメルト接着剤とは異なり、耐熱性と強力な接着力を維持することが可能となる。さらに、EVA系ホットメルト接着剤では、投錨効果による固化接着なので、再加熱すると容易に溶融するが、湿気硬化タイプのウレタン樹脂系反応性ホットメルト接着剤では硬化後に再加熱しても溶融することがないため、万一の火災発生時にも、不燃板2と木質系基板3とが剥離して容易に分解することがない。
【0018】
不燃板2へ湿気が進入すると反り発生の原因にもなるため、不燃板2への湿気の進入を防止するとともに、吊戸棚などの構造物で視認される部分の意匠性を確保するために、上記のようにして得られた複合不燃板1の不燃板2の面側に、防湿層7を介して接着剤8、9により化粧層10を貼り合わせる。この場合、汎用的に使用されている水系接着剤では、化粧層10が湿気により膨潤して表面凹凸が発生したり、硬化後の皮膜が柔らかいことから、化粧層10に擦り傷が発生し易いという点から、非水系接着剤8、9とすることが好ましい。
【0019】
非水系接着剤8、9としては、溶剤系接着剤やEVA系ホットメルト、湿気硬化タイプのウレタン樹脂系反応性ホットメルト接着剤などが挙げられるが、硬化後の皮膜強度が硬く耐擦傷性があり、化粧層10の表面凹凸が発生し難く意匠性を確保できる点からは、湿気硬化タイプのウレタン樹脂系反応性ホットメルト接着剤が好適である。なお、非水系接着剤8、9は異種の接着剤であってもよいが、硬化後の反り発生を防止する点からは、同種の接着剤とすることが好ましく、湿気硬化タイプのウレタン樹脂系反応性ホットメルト接着剤8、9とすることが特に好ましい。
【0020】
この部分における防湿層7はセラミック蒸着フィルムと呼ばれる、シリカ真空蒸着PETフィルムのような防湿層であってもよいが、極力木質系基板3側に熱が伝わらないようにするために、防湿層4と同様に、金属質層を有する防湿層とすることが好ましく、紙質材/金属箔/紙質材の構成のものや、紙質材/PET/金属箔の構成のものなどが好適である。
【0021】
木質系基板3の他方の面から湿気が進入すると反り発生の原因にもなるため、木質系基板3への湿気の進入を防止するとともに、吊戸棚などの構造物の内部の意匠性を確保するために、上記のようにして得られた複合不燃板1の木質系基板3の他方の面側に、防湿層11を介して接着剤12、13により化粧層14を貼り合わせる。この場合も上記したのと同様に、汎用的に使用されている水系接着剤では、湿気により膨潤して表面凹凸が発生したり、硬化後の皮膜が柔らかいことから擦り傷が発生し易いという点から、非水系接着剤12、13とすることが好ましい。
【0022】
非水系接着剤12、13としては、上記したのと同様に、溶剤系接着剤やEVA系ホットメルト、湿気硬化タイプのウレタン樹脂系反応性ホットメルト接着剤などが挙げられるが、硬化後の皮膜強度が硬く耐擦傷性があり、化粧層14の表面凹凸が発生し難く意匠性を確保できる点で、湿気硬化タイプのウレタン樹脂系反応性ホットメルト接着剤が好適である。なお、非水系接着剤12、13は異種の接着剤であってもよいが、硬化後の反り発生を防止する点からは、同種の接着剤とすることが好ましく、湿気硬化タイプのウレタン樹脂系反応性ホットメルト接着剤12、13とすることが特に好ましい。
【実施例】
【0023】
以下、本発明による複合不燃板について、実施例、比較例を示しながら説明する。
(実施例1)
<不燃板>
火山性ガラス質復層板である不燃板2の一方の面にウレタン系樹脂8により紙質材/アルミニウム箔/紙質材の防湿層7が貼り合わされた不燃板を用意した。なお、不燃板2は100mm×100mm×6mm、防湿層7の厚さは80μm、アルミニウム箔の厚さは12μm、ウレタン系樹脂8の厚さは25μmである。
【0024】
<木質系基板>
パーティクルボードである木質系基板3の両面に、押出ラミネートによる紙質材/PE/アルミニウム箔の防湿層4、11が貼り合わされた基板を用意した。なお、防湿層4、11は、アルミニウム箔側の面を木質系基板3の面側に貼り合わせている。また、木質系基板3は100mm×100mm×6mm、防湿層4、11の厚さはいずれも50μmであり、アルミニウム箔の厚さは12μmである。貼り合わせに使用した接着剤5、12はいずれもDIC(株)社製の湿気硬化タイプのウレタン樹脂系反応性ホットメルト接着剤(商品名:タイフォース)であり、厚さはいずれも40μmである。
【0025】
<複合化粧板>
接着剤6としてDIC(株)社製の湿気硬化タイプのウレタン樹脂系反応性ホットメルト接着剤(商品名:タイフォース)を使用し、不燃板と基板を貼り合わせて複合化粧板Aを得た。なお、接着剤6の厚さは25μmである。
【0026】
<加熱試験>
複合化粧板Aを水平に配置し、不燃板側からヒーターで50kW/m の熱量で20分間加熱したところ、不燃板と基板は初期の状態のまま貼り合わされていた。なお、この試験法は、ISO 5660 発熱性試験法(コーンカロリーメータ法)に準拠したものである。
【0027】
<目視検査>
加熱試験後の複合化粧板Aの不燃板側を目視で観察したところ、局部的な浮きや変形も見あたらなかった。
【0028】
(比較例1)
接着剤6をEVA系ホットメルト接着剤にした以外は実施例1と同様にして、複合化粧板Bを得た。
【0029】
<加熱試験>
実施例1と同様にして複合化粧板Bの加熱試験を行ったところ、不燃板と基板との間に浮きやずれが発生した。
【0030】
<目視検査>
実施例1と同様にして加熱試験後の複合化粧板Bの不燃板側を目視で観察したところ、加熱中心部分で局部的な膨れが発生していた。
【0031】
(比較例2)
接着剤5、6をEVA系ホットメルト接着剤にした以外は実施例1と同様にして、複合化粧板Cを得た。
【0032】
<加熱試験>
実施例1と同様にして複合化粧板Cの加熱試験を行ったところ、不燃板と基板との間に浮きやずれが発生した。なお、このずれ量は、複合化粧板Bよりも大きかった。
【0033】
<目視検査>
実施例1と同様にして加熱試験後の複合化粧板Cの不燃板側を目視で観察したところ、加熱中心部分以外にも局部的な膨れが発生していた。
【0034】
(比較例3)
接着剤6を汎用的な水系接着剤にした以外は実施例1と同様にして、複合化粧板Dを得た。
【0035】
<加熱試験>
実施例1と同様にして複合化粧板Dの加熱試験を行ったところ、不燃板と基板とが接着剤6の界面から剥離してしまった。
【0036】
<目視検査>
実施例1と同様にして加熱試験後の複合化粧板Dの剥離面を観察したところ、至る所に局部的な膨れが発生していた。
【0037】
(比較例4)
防湿層4をシリカ真空蒸着PETフィルムのセラミック層にした以外は実施例1と同様にして、複合化粧板Eを得た。
【0038】
<加熱試験>
実施例1と同様にして複合化粧板Eの加熱試験を行ったところ、不燃板と基板との間にずれが発生した。
【0039】
<目視検査>
実施例1と同様にして加熱試験後の複合化粧板Eの不燃板側を目視で観察したところ、加熱中心部分で局部的な膨れが発生していた。
【0040】
<加湿試験>
複合化粧板A、B、C、D、Eの木口面をシールして、20℃、90%RH、24時間の環境試験を行ったところ、いずれの複合化粧板も反りの発生はなかった。
【0041】
<化粧層の目視検査>
複合化粧板A、B、C、D、Eの防湿層7の表面に、接着剤9として汎用的な水系接着剤を使用したものと非水系接着剤(湿気硬化タイプのウレタン樹脂系反応性ホットメルト接着剤)を使用したものとにより、化粧層10として化粧紙を貼り合わせ、目視検査をしたところ、水系接着剤を使用したものは表面凹凸が目立ったが、非水系接着剤を使用したものは表面性状に優れ、意匠性に優れるものであった。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明による複合化粧板の模式断面図。
【符号の説明】
【0043】
1 複合化粧板
2 不燃板
3 木質系基板
4 金属質層を有する防湿層
5 湿気硬化タイプのウレタン樹脂系反応性ホットメルト接着剤
6 湿気硬化タイプのウレタン樹脂系反応性ホットメルト接着剤
7 防湿層
8 非水系接着剤
9 非水系接着剤
10 化粧層
11 防湿層
12 非水系接着剤
13 非水系接着剤
14 化粧層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不燃板と木質系基板によって構成される複合化粧板であって、該不燃板の一方の面と該木質系基板の一方の面とを、金属質層を有する防湿層を介して湿気硬化タイプのウレタン樹脂系反応性ホットメルト接着剤により貼り合わせたことを特徴とする複合化粧板。
【請求項2】
該不燃板の他方の面に、防湿層を介して非水系接着剤により化粧層を貼り合わせた請求項1に記載の複合化粧板。
【請求項3】
該非水系接着剤が湿気硬化タイプのウレタン樹脂系反応性ホットメルト接着剤である請求項2に記載の複合化粧板。
【請求項4】
該不燃板の他方の面に設けた該防湿層が金属質層を有している請求項2又は3に記載の複合化粧板。
【請求項5】
該木質系基板の他方の面に、防湿層を介して非水系接着剤により化粧層を貼り合わせた請求項1から4のいずれかに記載の複合化粧板。
【請求項6】
該非水系接着剤が湿気硬化タイプのウレタン樹脂系反応性ホットメルト接着剤である請求項5に記載の複合化粧板。
【請求項7】
該木質系基板の他方の面に設けた該防湿層が金属質層を有している請求項5又は6に記載の複合化粧板。

【図1】
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【公開番号】特開2010−46334(P2010−46334A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−213938(P2008−213938)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】