説明

複合型超音波探触子及びそれを用いたTOFD法による超音波探傷法

【課題】TOFD法による超音波探傷において、厚肉構造物の探傷を高精度で実行できると共に、探傷に要する時間の短縮ができる、複合型超音波探触子及びそれを用いたTOFD法による超音波探傷法を提供すること。
【解決手段】TOFD法による超音波探傷に用いられる一対の送信探触子10及び受信探触子11を有し、送信探触子10は、複数の送信振動子2a,2bを有し、受信探触子11は、複数の送信振動子2a,2bからそれぞれ送信される超音波を受信自在な複数個の受信振動子6a,6bを有し、複数の送信振動子2a,2bは、それぞれ送信する超音波(22a,22b)の屈折角が互いに異なるが(θa1≠θb1)、それぞれ送信する超音波(22a,22b)の入射点P1が共通であるよう配置され、複数の受信振動子6a,6bは、それぞれ受信する超音波(23a,23b)の屈折角(θa2≠θb2)が互いに異なるが、それぞれ受信する超音波(23a,23b)の入射点P2が共通であるよう配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合型超音波探触子及び超音波探触方法に関し、特に、飛行時間回折法(以下、これを「TOFD法(Time of Flight Diffraction)」という)」による複合型超音波探触子及び超音波探傷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
垂直探傷法や斜角探傷法のような通常の超音波探傷法は、一つの送受信探触子を用いて、この送受信探触子から横波を送信して、きずからの反射波を、同じ送受信探触子が受信する。これに対して、超音波探傷法の一つであるTOFD法は、一対の送信探触子及び受信探触子を用いて、送信探触子から縦波を送信して、試験体表面を伝播するラテラル波、及びきずの各部で生じる反射波や回折波を受信探触子が受信し、ラテラル波の伝播時間を基準として、一対の送信探触子及び受信探触子間における各波の伝播時間の差から、きずの位置や寸法を測定する方法である。TOFD法は、その探傷原理より、探傷の高速化が期待できるため、原子力発電所等の探傷時間の制約を受ける放射線管理区域における配管溶接部の探傷に適している。TOFD法に関して、2001年には、日本非破壊検査協会にて、“NDIS2423”が制定され、現在、有識者によるJIS化が進められている。
【0003】
特許文献1又は2には、TOFD法を用いた超音波探傷法が開示されている。特許文献1には、送信探触子のくさび面上に、複数の送信振動子を同一の屈折角(傾斜角)で配列し、同様に、受信探触子のくさび面上に、複数の受信振動子を同一の屈折角(傾斜角)で配列した超音波探傷装置が提案されている。したがって、複数の送信振動子から送信される超音波の被検査物に対する入射点は、互いに相違している。特許文献1の装置において、送受信は、対称位置にある一組の送信振動子と受信振動子の間で、時間差をおいて実行される。すなわち、ある組の送信振動子と受信振動子の間で、送受信が完了した後、時間をおいて、次の組の送信振動子と受信振動子の間で送受信が行われる。
【0004】
特許文献2には、交差部などの複雑な形状を有する溶接部に対して、送信角と受信角が相違するよう一対の送信振動子及び受信振動子を配置することにより、一度の探傷で広範囲を探傷できるようにした超音波探傷装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−316215号公報(図1)
【特許文献2】特開平2004−138392号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の装置によれば、複数組の送信振動子及び受信振動子を有しているが、複数組の送信振動子及び受信振動子は、互いに時間差をおいて作動されるため、探傷に要する時間が長くなるという問題、及び、送受信のタイミング制御が複雑になるという問題がある。また、特許文献1の超音波探傷法によれば、複数組の送信振動子及び受信振動子の屈折角(送信角及び受信角)は、全て同じであるため、屈折角を小さく設定した場合は、基準となるラテラル波(表面波)の受信や表面付近の探傷が困難となり、屈折角を大きく設定した場合は、深部の探傷が困難となるという問題がある。
【0007】
特許文献2の装置は、一組の送信振動子及び受信振動子しか有していないため、探傷に要する時間が長くなるという問題がある。また、特許文献2の装置において、送信振動子及び受信振動子の屈折角(送受信角)を、底面付近の探傷向けに設定した場合には、基準となるラテラル波の受信や表面付近の探傷が困難となり、表面付近の探傷向けに設定した場合には、深部の探傷が困難となるという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、TOFD法による超音波探傷において、厚肉構造物の探傷を高精度で実行できると共に、探傷に要する時間の短縮ができる、複合型超音波探触子及びそれを用いたTOFD法による超音波探傷法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、第1の視点において、TOFD法による超音波探傷に用いられる一対の送信探触子及び受信探触子を有する、複合型超音波探触子であって、前記送信探触子は、複数の送信振動子を有し、前記受信探触子は、前記複数の送信振動子からそれぞれ送信される超音波を受信自在な複数個の受信振動子を有し、前記複数の送信振動子は、それぞれ送信する超音波の屈折角が互いに異なるが、それぞれ送信する超音波の入射点が共通であるよう配置され、前記複数の受信振動子は、それぞれ受信する超音波の屈折角が互いに異なるが、それぞれ受信する超音波の入射点が共通であるよう配置される、複合型超音波探触子を提供する。
【0010】
本発明は、第2の視点において、TOFD法による超音波探傷法であって、超音波探傷する試験体の表面に一対の送信探触子及び受信探触子を装着し、前記送信探触子が有する、送信する超音波の屈折角が互いに異なる複数の送信振動子から、超音波を同時にそれぞれ送信して、共通の送信側入射点から前記試験体に入射させ、前記受信探触子が有する、互いに受信する超音波の屈折角が異なる複数の受信振動子は、共通の受信側入射点を通じて該受信探触子に入射される超音波をそれぞれ受信し、前記送信振動子と前記受信振動子間における超音波の伝播時間に基づいて探傷を行う、複合型超音波探触子を用いたTOFD法による超音波探傷法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数の振動子が同時に複数の超音波を送信又は受信しても、送信側及び受信側で複数の超音波の入射点はそれぞれ共通であるため、送信又は受信する超音波同士の干渉が防止され、高精度ないし高感度の探傷が実現される。よって、本発明によれば、明瞭なラテラル波を得るための振動子と、試験体の底面付近を検出するための振動子を同時に作動させ、探傷の基準となるラテラル波と同時に、試験体底面付近のきずによって発生する回折波や反射波を同時に得ることができる。この結果、本発明によれば、薄肉から厚肉までの様々な厚さをもった構造物の探傷を高精度で実行できると共に、探傷に要する時間ないし走査回数の短縮を実現することができる。また、TOFD法による超音波探傷においては、探触子から送信される超音波ビームの指向性から、きずの検出が可能な有効検出範囲が決まる。本発明によれば、屈折角が異なる複数の振動子の配置により、複数の超音波を同時に送受信することができるため、一回の探傷走査における有効検出範囲、特に、厚さ方向の有効検出範囲が拡大され、その結果、探傷作業時間が短縮され、さらに、基準となる明瞭なラテラル波が得られることから、データの校正や解析も容易となる。
【0012】
本発明による効果をさらに例示する:
・送信側の振動子と送信側の入射点までの距離、及び、受信側の振動子と受信側の入射点までの距離、をそれぞれ共通にすることにより、複数組の送信振動子と受信振動子において、ラテラル波等の伝播時間が共通となるため、複数組の送信振動子と受信振動子の発振タイミングの制御や探傷解析が容易となると共に、複数組の送信振動子と受信振動子間でそれぞれ送受信される超音波の干渉がさらに防止される。
・明瞭なラテラル波に基づいて、きずの位置、さらには、きずの寸法を高精度で検出できる;
・試験体表面付近のきずと同底面付近のきずを、一回の探傷走査(スクリーニング)で検出できる;
・きずのスクリーニングのためのDスキャン走査を、厚さ毎に複数回実行する必要がなくなり、探傷時間が短縮される。
・本発明によれば、高精度の探傷が短時間で実行できるため、本実施例による超音波探傷は、放射線管理区域における探傷に適している。
・本発明によれば、厚み方向の有効検出範囲が拡大されるため、一対の送信探触子及び受信探触子間の距離を可及的に近接させることができる。これによって、狭隘な空間、或いは、配管上にリブ等の障害物がある環境における、探傷走査が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(A)〜(C)は、本発明の一実施例に係る超音波探傷が採用するTOFD法の測定原理を説明するための図である。
【図2】本発明の一実施例に係る複合型超音波探触子を用いたTOFDによる超音波探傷の状況図である。
【図3】(A)〜(D)は、図2に示した複合型超音波探触子に適用される、本発明の一実施例に係る送信・受信探触子の構造を説明するための図である。
【図4】(A)〜(D)は、図2に示した複合型超音波探触子に適用される、本発明の他の実施例に係る送信・受信探触子の構造を説明するための図である。
【図5】本発明の一実施例に係る超音波探傷試験のイメージ図である。
【図6】図5に示した試験結果を示す探傷画像図及び探傷波形図である。
【図7】比較例1及び2に係る超音波探傷試験のイメージ図である。
【図8】(A)は、図7に示した比較例1の試験結果を示す探傷画像図及び探傷波形図、(B)は、図7に示した比較例2の試験結果を示す探傷画像図及び探傷波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の好ましい実施の形態においては、一つの前記送信及び受信探触子がそれぞれ有する前記複数の送信及び受信振動子において、第1の該送信振動子の屈折角は、少なくとも、試験体の表面を伝播するラテラル波が得られるよう設定され、第1の該受信振動子の屈折角は、少なくとも、試験体の表面を伝播するラテラル波が得られるよう設定され、
第2の該送信振動子の屈折角は、少なくとも、前記試験体の底面付近を探傷可能に設定され、第2の該受信振動子の屈折角は、少なくとも、前記試験体の底面付近を探傷可能に設定される。この形態によれば、厚物構造物の探傷時、走査回数が低減される。なお、一つの探触子に搭載する振動子の個数は、試験体の厚さ等に応じて、設定することが好ましい。
【0015】
本発明の好ましい実施の形態において、振動子の設置角度、すなわち、振動子が設置される設置面(くさび上の所定面)の角度は、試験体において望まれる屈折角、くさび内における超音波伝播速度及び試験体内における超音波伝播速度から、スネルの法則によって求められる、くさびに対する超音波の屈折角(送信角又は受信角)から定めることができる。
【0016】
本発明の好ましい実施の形態において、複数の振動子は、試験体の表面付近を伝播して明瞭なラテラル波が得られるよう、屈折角が50〜80度となる超音波を送信又は受信するよう配置される第1の振動子と、試験体の底面付近を伝播する超音波を送信又は受信するよう、屈折角が10〜45度となる超音波を送信又は受信するよう配置される第2の振動子と、を含む。さらに、複数の振動子は、試験体の厚さ方向中間領域を伝播する超音波を送信又は受信する第3の振動子を含んでもよく、さらに、試験体の厚さに応じて、多数の振動子を含んでもよい。
【0017】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記複数の送信振動子から送信側の前記入射点までの距離が共通であり、前記複数の受信振動子から受信側の前記入射点までの距離が共通である。この形態によれば、同一の屈折角を有して対称位置にある複数組の送信振動子と受信振動子において、ラテラル波等の伝播時間が共通となるため、複数組の送信振動子と受信振動子の発振タイミングの制御や探傷解析が容易となると共に、複数組の送信振動子と受信振動子間でそれぞれ送受信される超音波の干渉がさらに防止される。
【0018】
本発明の好ましい実施の形態に係る超音波探傷法においては、同一の屈折角をもった送信振動子と受信振動子が対向するよう、対称構造を有する一対の送信探触子と受信探触子が対向配置され、両探触子の位置関係が保持された状態で、走査が実行される。
【0019】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記送信探触子において、前記複数の送信振動子は、前記送信探触子と前記受信探触子間における超音波の伝播方向に配列され、前記受信探触子において、前記複数の受信振動子は、前記送信探触子と前記受信探触子間における超音波の伝播方向に配列される。このように、複数の振動子が縦型に配置された探触子は、周方向走査時、搭載している複数の振動子がくさびを介して周面に実質的に密着し続けることができるから、周方向継手の探傷に適している。また、この縦型配置によれば、複数の振動子が載置されるくさびの面加工が容易となる。
【0020】
本発明の別の好ましい実施の形態においては、前記送信探触子において、前記複数の送信振動子は、前記送信探触子と前記受信探触子間における超音波の伝播方向に交差する方向に配列され、前記受信探触子において、前記複数の受信振動子は、前記送信探触子と前記受信探触子間における超音波の伝播方向に交差する方向に配列される。このように、複数の振動子が並列に配置された探触子は、軸方向走査時、搭載している複数の振動子がくさびを介して周面に実質的に密着し続けることができるから、軸方向継手の探傷に適している。また、上記縦型配置とこの並列配置を組み合わせてもよい。
【0021】
本発明の好ましい実施の形態においては、複数の振動子が入射点を中心に同心円上に配列されることにより、複数の振動子の中心(発振点)と入射点間の距離が共通化される。
【0022】
本発明の好ましい実施の形態においては、複数の振動子は、共通の周波数で超音波を送信又は受信することにより、複数の超音波間の干渉がさらに防止される。
【0023】
本発明の好ましい実施の形態において、送信ないし受信振動子には、1個の振動子からなる一般的な振動子、或いは、複数の振動子が集合されて一枚の振動子がグリッド状に分割されたような構造を有するコンポジット型振動子、或いは、その他の構造を有する振動子を用いることができる。また、振動子には、ピエゾ型振動子、或いは、その他の振動原理による各種振動子を用いることができる。
【0024】
本発明の好ましい実施の形態において、振動子には種々の形状の振動子を採用することができ、例えば、正方形、長方形、円形又は楕円形などの形状を有する振動子が採用される。
【0025】
本発明の好ましい実施の形態においては、検出精度を高めるため、くさびと隣接して吸音体が配置され、又、複数の振動子間には、それらの配列形態に応じて、音響隔離板ないし音響隔離面が配置される。
【0026】
本発明の好ましい実施の形態においては、くさびは、探触子ケースに内蔵される。或いは、くさびは、探触子ケースと別体で用意され、探傷時、探触子ケースと一体化される。
【0027】
本発明の好ましい実施の形態に係る送信探触子において、複数の振動子から送信される超音波は、入射点において、超音波ビームの中心が一致している。受信探触子においても、送信探触子と同様である。
【0028】
本発明の好ましい実施の形態においては、複数の振動子の−6db指向角範囲(エコー高さが半分になる領域)を25度以上、さらに好ましくは30度以上又は35度以上に設定する。これによって、深さ方向の探傷領域が拡大される。
【0029】
本発明の好ましい実施の形態において、使用する超音波の周波数は、一般的な1〜10MHzの範囲でよく、又その他の範囲の周波数でもよい。
【実施例】
【0030】
以下、図面を参照して本発明の一実施例を説明する。最初に、本発明の一実施例に係る超音波探傷法が用いるTOFD法について説明する。図1(A)〜図1(C)は、TOFD法の測定原理を説明するための図であって、図1(A)は、TOFD法による超音波探傷状況図、図1(B)は、図1(A)のTOFD法による超音波探傷によって得られる探傷波形図、図1(C)は、図1(B)に示した探傷波形を解析して得られるDスキャン画像である。
【0031】
図1(A)〜図1(B)を参照すると、TOFD法により超音波探傷を行う場合、試験体30上に、一対の送信探触子40及び受信探触子41が距離2S分離して設置され、送信探触子40から送信された超音波を、受信探触子41が受信し、受信した超音波の伝播時間より、きずDの検出等が行われる。詳細には、送信探触子40から送信され、試験体30の表面を透過して、受信探触子41に受信されるラテラル波(表面透過波)42の到達時間を基準として、きずDの上端で発生した上端反射波43の到達時間、又は、きずDの下端で発生した下端回折波44の到達時間から、きずDの位置又は寸法(サイズ)を解析することができる。
【0032】
ラテラル波42は、探傷表面位置を現す波形であり、TOFD法においては、ラテラル波42を寸法基準として、きずDの検出が行われる。詳細には、送信探触子40と受信探触子41間における、ラテラル波42の伝播時間と上端反射波43の到達時間の時間差Td、及び、ラテラル波42の伝播時間と下端回折波44の到達時間の時間差Tdh(Tx)に基づいて、下記のように、きずDの位置及び寸法の解析を行う。
【0033】
きずDの上端位置(深さd)は、幾何学的に下記の式(1)より求められる。
d=1/2[(C・Td)+4C・Td・S]1/2 ・・・(1)
但し、d:きずDの上端位置(きずDの深さ)
C:超音波伝播速度
Td:ラテラル波42の伝播時間と上端反射波43の到達時間の時間差
S:送信探触子40と受信探触子41の距離の半分
きずDの下端位置(深さx=d+h)も同様に求められ、きずDの寸法(サイズh)は、“x−d”より算出される。
【0034】
また、探傷前に実行される校正においても、ラテラル波42が使用される。詳細には、きずDの位置又は試験体30の厚さtが既知である試験体30を用いて、ラテラル波42の伝播時間と上端反射波43の到達時間の時間差ときずDの位置との関係、或いは、ラテラル波42の伝播時間と試験体30の底面(裏面)で反射された底面反射波45の到達時間の時間差Twと厚さtとの関係に基づいて、音速調整により時間軸が調整される。
【0035】
したがって、TOFD法による超音波探傷においては、明瞭なラテラル波42が得られなければ、きずDの正確な検出が困難となる。一方、試験体30が厚い場合、底面付近に有効な探傷領域を設定するためには、送信探触子40から送信される超音波を底面側にも伝播させることが求められる。しかし、このような底面側を指向する設定をすると、明瞭なラテラル波42が得られず、又、表面付近のきずDが検出できないおそれがある。以下に説明する本実施例に係る超音波探触子によれば、この相反する課題を解決することができる。なお、受信探触子41は、底面反射波45も受信する。しかし、実際の試験、例えば、配管溶接部を外周側から超音波探傷する場合においては、底面(配管内周面)の形状は、平滑ないし一様ではないため、底面反射波45を基準として校正を行い、高精度の超音波測定を行うことは困難である。
【0036】
図2は、本発明の一実施例に係る超音波探触子を用いたTOFD法による超音波探傷の状況図である。図2を参照すると、試験体30上には、一対の送信探触子10及び受信探触子11が対向して設置されている。送信探触子10は、超音波の屈折角を調節自在な振動子設置面を備えるくさび1と、くさび1の所定面上にそれぞれ設けられた複数の送信振動子2a,2bと、くさび1及び複数の送信振動子2a,2bを内蔵するケース3と、ケース3外面に設けられ、複数の送信振動子2a,2bと不図示の電源及び解析装置を接続するコネクタ(接栓)4と、を有している。受信探触子11は、送信探触子10と面対称な構造を有し、超音波の屈折角を調節自在な所定面を備えるくさび5と、くさび5の振動子設置面上にそれぞれ設けられ複数の送信振動子2a,2bから送信される超音波を受信自在な複数の受信振動子6a,6bと、くさび5及び複数の受信振動子6a,6bを内蔵するケース7と、ケース7外面に設けられ、複数の受信振動子6a,6bと不図示の電源及び解析装置を接続してパルス状電圧又は検出信号を伝達するコネクタ(接栓)8と、を有している。
【0037】
複数の送信振動子2a,2bは、それぞれ送信する第1及び第2の送信波22a,22bの屈折角θa1,θb1が互いに異なるが(θa1≠θb1、但し、θa1>θb1)、それぞれ送信する第1及び第2の送信波22a,22bの入射点P1が共通であるよう配置されている。さらに、複数の送信振動子2a,2bは、それらの中心から送信側の入射点P1までの距離L1,L2が共通であるよう設置されている(L1=L2)。なお、入射点P1は、送受信探触子10,11と試験体30との境界面B上に位置している。
【0038】
第1の送信振動子2aから送信される第1の送信波22aの屈折角θa1は、明瞭なラテラル波21が得られるよう比較的大きく設定され、第2の送信振動子2bから送信される第2の送信波22bの屈折角θb1は、試験体30の底面付近のきずDを検出できるよう、比較的に小さく設定される。すなわち、第1の送受信振動子2a,6aないし第1の送受信波22a,23aは、試験体30の表面側を探傷範囲とし、第2の送受信振動子2b,6bないし第2の送受信波22b,23bは、試験体30の底面側を探傷範囲としている。
【0039】
屈折角θa1,θb1は、複数の送信振動子2a,2bの入射点P1に対する設置角度によって設定され、具体的には、複数の送信振動子2a,2bが配置されるくさび1の外郭線の部分的な角度によって設定できる。すなわち、第1の送信振動子2aは、くさび1上、境界面Bに対して比較的傾斜している部分に貼着され、第2の送信振動子2bは、くさび1上、境界面Bに対して比較的傾斜していない部分に貼着されている。
【0040】
一方、複数の受信振動子6a,6bは、複数の送信振動子2a,2bと面対称に配置されると共に、それぞれ受信する第1及び第2の受信波23a,23bの屈折角θa2,θb2が互いに異なるが(θa2≠θb2、但し、θa2>θb2、θa1=θa2、θb1=θb2)、それぞれ受信する第1及び第2の受信波23a,23bの入射点P2が共通であるよう配置されている。さらに、複数の受信振動子6a,6bは、それらの中心から受信側の入射点P2までの距離L1,L2が共通であるよう設置されている(L1=L2)。なお、入射点P2は、送受信探触子10,11と試験体30との境界面B上に位置している。
【0041】
さらに、第1の受信振動子6aが受信する第1の受信波23aの屈折角θa2は、明瞭なラテラル波21が受信できるよう比較的大きく設定され、第2の受信振動子6bが受信する第2の受信波23bの屈折角θb2は、試験体30の底面付近のきずDを検出できるよう、比較的に小さく設定される。
【0042】
屈折角θa2,θb2は、特に、複数の受信振動子6a,6bの入射点P2に対する設置角度によって設定され、具体的には、複数の受信振動子6a,6bが配置されるくさび5の外郭線の部分的な角度によって設定できる。すなわち、第1の受信振動子6aは、くさび5上、境界面Bに対して比較的傾斜している部分に貼着され、第2の受信振動子6bは、くさび5上、境界面Bに対して比較的傾斜しない部分に貼着されている。
【0043】
以上説明した本発明の一実施例に係る複合型超音波探触子を用いたTOFD法による超音波探傷法及びその効果について説明する。
【0044】
同一の屈折角を有する送信振動子と受信振動子(2a,6a),(2b,6b)がそれぞれ対向するよう、一対の送信探触子10及び受信探触子11が、試験体30上に対向配置される。送信探触子10において、複数の送信振動子2a,2bを同時に発振させる。第1の送信振動子2aから送信される送信波22aと、第2の送信振動子2bから送信される送信波22bとは、共通の入射点P1から、試験体30に入射される。このように両方の送信波22a,22bの入射点P1が共通であることにより、両方の送信波22a,22bの干渉を防止することができる。また、複数の送信振動子2a,2bと入射点P1までの距離L1,L2が共通であることにより(L1=L2)、複数の送信振動子2a,2bから入射点P1までの間、両方の送信波22a,22bの伝播時間が共通化されるため、複数の送信振動子2a,2bの発振タイミングの制御及び探傷波形の解析が容易となり、又、上記干渉もさらに防止される。
【0045】
第1の送信振動子2aから送信された超音波の一部は、ラテラル波21となって、試験体30の表面(境界面B)上を伝播し、第1の受信振動子6aによって受信される。第1の送信振動子2aの設置角度ないしそれが送信する第1の送信波22aの屈折角θa1は、大きく設定されているため、明瞭なラテラル波21が出現する。この明瞭なラテラル波21を基準として、上述したTOFD法によるきずDの高精度な検出を行うことができる。
【0046】
試験体30中にきずDがある場合、第1ないし第2の送信波22a,22bがきずDで反射又は回折して、図1(A)に示したようなきずDの上端反射波43及び下端回折波44が出現し、これらを第1ないし第2の受信振動子6a,6bが受信する。特に、試験体30の表面付近にきずDがある場合には、第1の送受信波22a,23aによって、表面付近のきずDが検出される。試験体30の底面付近にきずDがある場合には、第2の送受信波22b,23bによって、深部のきずDが検出される。また、受信探触子11においては、送信探触子10側と対称的に、第1及び第2の受信波23a,23bが共通点の入射点P2から入射し、入射点P2から複数の受信振動子6a,6bとまでの距離L1,L2が共通であることにより(L1=L2)、上述した送信側の効果と同様の効果が発生する。
【0047】
以上より、本実施例に係る超音波探触子は、下記の効果を達成する:
(1)屈折角の大きい超音波を送受信する第1の送信及び受信振動子2a,6aにより、明瞭なラテラル波が得られる;
(2)明瞭なラテラル波に基づいて、きずDを正確に検出できる;
(3)屈折角の大きい超音波を送受信する第1の送信及び受信振動子2a,6aと、屈折角の小さい超音波を送受信する第2の送信及び受信振動子2b,6bとの複合により、試験体表面付近及び同底面付近のきずDのいずれも一回の探傷走査で検出できる;
(4)きずDのスクリーニングのためのDスキャン走査を、厚さ毎に複数回実行する必要がなくなり、探傷時間が短縮される。
(5)本実施例による超音波探傷を採用することにより、厚肉な配管等の厚物構造物の探傷が、省力化され、探傷精度も向上される。
(6)本実施例による超音波探傷によれば、高精度の探傷が短時間で実行できるため、本実施例による超音波探傷は、探傷時間の制約を受ける放射線管理区域における探傷に適している。
【0048】
[縦列型の複合型超音波探触子]
図3(A)〜図3(D)は、図2に示した複合型超音波探触子に適用される、本発明の一実施例に係る送信探触子及び受信探触子の構造を説明するための図である。図3(A)は正面図、図3(B)は平面図、図3(C)は側面図、図3(D)は複数の振動子の配置イメージ図である。なお、本発明の一実施例に係る超音波探触子は、屈折角が同一の送信振動子と受信振動子が対向配置されるよう対称な構造を有する一対の送信探触子及び受信探触子から構成されるから、以下の説明においては、主として、送信探触子について説明し、受信探触子については、送信探触子に関する説明を参照するものとする。
【0049】
図3(A)〜図3(D)を参照すると、送信探触子10は、くさび1と、複数の送信振動子2a〜2eと、くさび1及び複数の送信振動子2a等を内蔵するケース3と、ケース3外面に設けられたコネクタ4と、を有している。
【0050】
くさび1の上面には、第1〜第5の送信振動子2a〜2eが、送信・受信探触子間の超音波伝播方向に配列できるよう、探触子10の入射点P1に対して、ないし、試験体30に対する設置面(図2の境界面B)に対して、互いに異なる角度を有する、第1〜第5の設置面1a〜1eが同超音波伝播方向に配列されている。さらに、第1〜第5の設置面1a〜1eは、入射点P1に対して同心円状に形成されている。これによって、第1〜第5の設置面1a〜1e上にそれぞれ配置される第1〜第5の送信振動子2a〜2eから送信される超音波は、共通の入射点P1を通過し、さらに、第1〜第5の送信振動子2a〜2eと入射点P1間の距離は、共通になっている。
【0051】
このように、縦列型に配置された複数の振動子を有する複合型超音波探触子は、周方向継手の探傷に適している。なお、一つの探触子に搭載する振動子の個数は、試験体(探傷対象)の厚さ等に応じて、調整することが好ましい。
【0052】
[並列型の複合型超音波探触子]
図4(A)〜図4(D)は、図2に示した複合型超音波探触子に適用される、本発明の他の実施例に係る送信探触子及び受信探触子の構造を説明するための図である。図4(A)は正面図、図4(B)は平面図、図4(C)は側面図、図4(D)は複数の振動子の配置イメージ図である。なお、本発明の一実施例に係る超音波探触子は、屈折角が同一の送信振動子と受信振動子が対向配置されるよう対称な構造を有する一対の送信探触子及び受信探触子から構成されるから、以下の説明においては、主として、送信探触子について説明し、受信探触子については、送信探触子に関する説明を参照するものとする。
【0053】
図4(A)〜図4(D)を参照すると、送信探触子10は、くさび1と、複数の送信振動子2a等と、くさび1及び複数の送信振動子2a〜2cを内蔵するケース3と、ケース3外面に設けられたコネクタ4と、第1及び第2の隔離面13a,13bと、を有している。
【0054】
くさび1の上面には、第1〜第3の送信振動子2a〜2cが送信・受信探触子間の超音波伝播方向に交差する方向に配列できるよう、送信・受信探触子間の超音波伝播方向に交差する方向に、第1〜第3の設置面1a〜1cが配列されている。第1〜第3の設置面1a〜1cは、探触子10の入射点P1に対して、ないし、試験体30に対する設置面(図2の境界面B)に対して、互いに異なる角度を有している。第1〜第3の設置面1a〜1cは順に、第1〜第3の区画12a〜12cにそれぞれ属している。第1〜第3の区画12a〜12cは、超音波の伝播方向に直交する方向に配列され、区画間には、第1及び第2の音響隔離面13a,13bがそれぞれ挿入されている。第1〜第3の設置面1a〜1cは、入射点P1に対して同心円状に形成されている。これによって、第1〜第3の設置面1a〜1c上にそれぞれ配置される第1〜第3の送信振動子2a〜2cから送信される超音波は、共通の入射点P1を通過し、さらに、第1〜第3の送信振動子2a〜2cと入射点P1間の距離は、共通になっている。
【0055】
このように、並列型に配置された複数の振動子を有する複合型超音波探触子は、軸方向継手の探傷に適している。なお、一つの探触子に搭載する振動子の個数は、試験体(探傷対象)の厚さ等に応じて、調整することが好ましい。
【0056】
なお、第1〜第3の区画12a〜12cにおいては、図4(A)に示したように、それらの角度を多様に設定することができ、或いは、図3(A)に示したように、複数の振動子を縦列配置することもできる。縦列ないし並列配置される複数の振動子の個数に特段の制限はない。
【0057】
図3(A)〜図3(D)に示した本発明の一実施例に係る複合型超音波探触子を用いて、図2に示したようにTOFD法による超音波探傷試験を行い、図1(A)〜図1(C)に示したTOFD法の原理に基づいて解析を行った。また、比較のため、1個の振動子(屈折角25度又は屈折角60度)しか有していない比較例1,2に係る超音波探触子をそれぞれ用いて、同条件で試験を行った。これらの試験条件は、下記のとおりである。
【0058】
[試験条件]
(1)実施例に係る超音波探触子(複合型超音波探触子)の構成
屈折角25度の振動子と屈折角70度の振動子を有する一対の送信及び受信探触子10,11(図2及び図5参照)
(2)比較例1に係る超音波探触子(一般的な単一型超音波探触子)の構成
屈折角25度の振動子を有する一対の送信及び受信探触子71,72(図7中央部参照)
(3)比較例2に係る超音波探触子(一般的な単一型超音波探触子)
屈折角60度の振動子を有する一対の送信及び受信探触子73,74(図7左部参照)
(4)試験条件
振動子の種類:ピエゾ型コンポジット振動子
振動子の周波数:5MHz
くさびの材質:PS(ポリスチレン)
探触子と試験体の接触媒質:マシン油
複数の送信及び受信振動子2a,2b,6a,6b:
試験体材質:SNCM439 φ3.0mm
試験体の厚さ:厚さ60mm×長さ(走査方向)410mm×幅30mm
きずの位置:走査方向30mm毎に深さ4〜40mm範囲で4mm毎に計10個の横孔
表面側から底面側に向って、順にNo.1〜10のきずと称する
きずの大きさ:孔長さ30mm、孔径φ3mmの横孔
探傷感度:交軸深さ40mm(No.10の横孔の位置)において超音波エコー強度が 34dBとなるように調整
探傷走査方向:Bスキャン走査(超音波伝播方向の走査)
【0059】
図5は、本発明の一実施例に係る超音波探傷試験のイメージ図、図6は、図5に示した試験結果を示す探傷画像図及び探傷波形図である。図7は、比較例1及び2に係る超音波探傷試験のイメージ図、図8(A)は、図7に示した比較例1の試験結果を示す探傷画像図及び探傷波形図、図8(B)は、図7に示した比較例2の試験結果を示す探傷画像図及び探傷波形図である。なお、探傷画像図において、縦軸は、試験体30の厚さ方向、横軸は、試験体の長さ方向(走査方向)に相当し、探傷波形図において、縦軸は、試験体30の厚さ方向に相当し、横軸は受信された超音波の強度を示す。
【0060】
図5及び図6を参照すると、実施例の探傷によれば、全域(全走査時間)にわたって、複数対の送信・受信振動子間で超音波の送受信をそれぞれ行っているにもかかわらず、明瞭なラテラル波が検出された。この明瞭なラテラル波に基づいて、一回の走査で、No.1〜10のきず、すなわち、厚さ方向の位置が異なる全てのきずが検出できた。また、きずのサイジング(寸法測定)については、10個中、7個のきずの寸法を高精度(±0.5mm以内)で検出することができた。この結果、本発明によれば、TOFD法による超音波探傷において、きずの有無をスクリーニングするために、最初に実行されるDスキャン走査を、深さ区分毎に複数回に分けて実行することなく、一回で実行できることが確認された。また、明瞭なラテラル波が得られたことにより、校正や測定範囲の調整が容易となり、探傷測定値の信頼性が向上された。
【0061】
図7中央部及び図8(A)を参照すると、比較例1の探傷(屈折角25度)によれば、ラテラル波が検出されなかった。このため、探傷表面を示す基準位置を、底面反射波から逆算して、高さ60mmの位置に合わせたが、浅い位置にあるNo1.〜6のきずが検出できず、さらに、全てのきずについて、有効な精度でサイジング(寸法測定)ができなかった。なお、今回の試験は、厚さが一定、すなわち、底面位置が一定な理想的な試験体を用いているが、実際の探傷においては、探傷体の厚さは未知であることが多く、又、厚さが変動するものもあるため、底面反射波を基準とすると、校正や解析が困難となり、測定精度が低下する。
【0062】
図7及び図8(B)を参照すると、比較例2の探傷(屈折角60度)によれば、ラテラル波は検出できたが、深い位置にあるNo.7〜10のきずが検出できなかった。この結果から、比較例2の探触子(屈折角60度)を用いた場合には、厚物構造物の深部にあるきずを検出することが困難であるから、屈折角を変更して複数回の探傷を行う必要があることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、TOFD法に基づく超音波探傷に利用され、特に、厚物構造物の探傷に利用され、中でも、原子力発電所等の放射線管理区域内の配管溶接部等の探傷に好適に利用される。
【符号の説明】
【0064】
1 くさび
1a,1b,・・,1e 第1〜第5の振動子の設置面(複数の送信振動子の設置面)
2a,2b,・・,2e 第1〜第5の送信振動子(複数の送信振動子)
3 ケース
4 コネクタ(接栓)
5 くさび
6a,6b 第1及び第2の受信振動子(複数の受信振動子)
7 ケース
8 コネクタ(接栓)
10 送信探触子
11 受信探触子
12a 第1の区画
12b 第2の区画
12c 第3の区画
13a 第1の音響隔離面
13b 第2の音響隔離面
21 ラテラル波(表面透過波)
22a 第1の送信波
22b 第2の送信波
23a 第1の受信波
23b 第2の受信波
30 試験体
40 送信探触子
41 受信探触子
42 ラテラル波(表面透過波)
43 上端反射波
44 下端回折波
45 底面反射波
B 境界面
C 超音波伝播速度
D きず
P1 入射点(送信側の入射点)
P2 入射点(受信側の入射点)
S 送信探触子と受信探触子間距離の半分
Td ラテラル波(表面透過波)42と上端反射波43の到達時間差
Tdh(Tx) ラテラル波(表面透過波)42と下端回折波44の到達時間差
Tw ラテラル波(表面透過波)42と底面反射波45の到達時間差
d きずDの上端位置(きずDの上端深さ)
x(d+h) きずの下端深さ
h きずDの寸法(サイズ)
t 試験体30の厚み
71 比較例1の送信探触子(屈折角25度)
72 比較例1の受信探触子(屈折角25度)
73 比較例2の送信探触子(屈折角60度)
74 比較例2の受信探触子(屈折角60度)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
TOFD法(Time of Flight Diffraction)による超音波探傷に用いられる一対の送信探触子及び受信探触子を有する、複合型超音波探触子であって、
前記送信探触子は、複数の送信振動子を有し、
前記受信探触子は、前記複数の送信振動子からそれぞれ送信される超音波を受信自在な複数の受信振動子を有し、
前記複数の送信振動子は、それぞれ送信する超音波の屈折角が互いに異なるが、それぞれ送信する超音波の入射点が共通であるよう配置され、
前記複数の受信振動子は、それぞれ受信する超音波の屈折角が互いに異なるが、それぞれ受信する超音波の入射点が共通であるよう配置される、
ことを特徴とする複合型超音波探触子。
【請求項2】
一つの前記送信及び受信探触子がそれぞれ有する前記複数の送信及び受信振動子において、
第1の該送信振動子の屈折角は、少なくとも、試験体の表面を伝播するラテラル波が得られるよう設定され、第1の該受信振動子の屈折角は、少なくとも、試験体の表面を伝播するラテラル波が得られるよう設定され、
第2の該送信振動子の屈折角は、少なくとも、前記試験体の底面付近を探傷可能に設定され、第2の該受信振動子の屈折角は、少なくとも、前記試験体の底面付近を探傷可能に設定される、
ことを特徴とする請求項1記載の複合型超音波探触子。
【請求項3】
前記複数の送信振動子から送信側の前記入射点までの距離が共通であり、
前記複数の受信振動子から受信側の前記入射点までの距離が共通である、
ことを特徴とする請求項1記載の複合型超音波探触子。
【請求項4】
前記送信探触子において、前記複数の送信振動子は、前記送信探触子と前記受信探触子間における超音波の伝播方向に配列され、
前記受信探触子において、前記複数の受信振動子は、前記送信探触子と前記受信探触子間における超音波の伝播方向に配列される、
ことを特徴とする請求項1記載の複合型超音波探触子。
【請求項5】
前記送信探触子において、前記複数の送信振動子は、前記送信探触子と前記受信探触子間における超音波の伝播方向に交差する方向に配列され、
前記受信探触子において、前記複数の受信振動子は、前記送信探触子と前記受信探触子間における超音波の伝播方向に交差する方向に配列される、
ことを特徴とする請求項1記載の複合型超音波探触子。
【請求項6】
TOFD法(Time of Flight Diffraction)による超音波探傷法であって、
超音波探傷する試験体の表面に一対の送信探触子及び受信探触子を装着し、
前記送信探触子が有する、送信する超音波の屈折角が互いに異なる複数の送信振動子から、超音波を同時にそれぞれ送信して、共通の送信側入射点から前記試験体に入射させ、
前記受信探触子が有する、互いに受信する超音波の屈折角が異なる複数の受信振動子は、共通の受信側入射点を通じて該受信探触子に入射される超音波をそれぞれ受信し、
前記送信振動子と前記受信振動子間における超音波の伝播時間に基づいて探傷を行う、
ことを特徴とする複合型超音波探触子を用いたTOFD法による超音波探傷法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−149888(P2011−149888A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12833(P2010−12833)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(000221535)東電工業株式会社 (25)
【Fターム(参考)】