説明

複合材用薄膜シート

【課題】繊維強化複合材等の基材に対する優れた接着性と、該基材と積層して用いるときに優れた制振性を示す。
【解決手段】基材に積層して用いられる複合材用薄膜シートであって、該薄膜シートはアクリロニトリルブタジエン系ゴムに油状物質が配合されてなるゴムシートであり、上記油状物質がアクリロニトリルブタジエン系ゴム100重量部に対して5〜40重量部配合され、損失正接が0.1〜0.45、弾性率が1〜6MPaであり、弾性率と損失正接との比(E’/tanδ)が5.5〜24である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複合材用薄膜シートに関し、特に基材に積層して制振性を付与できる薄膜ゴムシートに関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、アルミナ繊維およびボロン繊維などの強化繊維と、マトリックス樹脂とからなる繊維強化複合材は、鋼に比較して軽量であり、強度や弾性率などの機械特性が優れるため、自動車用途、航空宇宙用途、スポーツ用品用途などに多用されている。燃費向上、ひいては排出CO2の削減を目的に車体の軽量化が可能な繊維強化複合材などの複合材料を自動車用途に用いようとする動きが高まってきている。
従来、高弾性率樹脂と繊維とからなる繊維強化複合材料の一部に高振動減衰特性を有する樹脂と繊維とからなる複合材料の層を設けた制振構造材料が開示されている(特許文献1)。
また、ルームエアコン、カーエアコン、冷蔵庫などのコンプレッサー及びそれらのキャピラリー配管に巻いて制振用として使用するのに適したゴム組成物として、ブチルゴム100重量部に対して、100℃におけるムーニー粘度が20〜50のジエン系ゴム40〜150重量部、20℃における粘度が103〜107cpsのポリブテン10〜100重量部、加硫剤1〜5重量部および無機充填剤500〜900重量部を添加してなる制振用ゴム組成物が知られている(特許文献2)。
【0003】
しかしながら、制振用ゴム組成物を繊維強化複合材に積層できるシート状にして使用するとすると、そのゴムシートは、薄膜であると共に基材となる繊維強化エポキシ樹脂材等に対する優れた接着性が要求される。また、自動車用途などにおいて特に制振性が必要とされる場合、従来のゴムシートは、これらの特性が不十分であるという問題がある。
【0004】
一方、耐熱老化性が優れたNBR系ゴム組成物として、樹脂を構成するモノマ−成分としてのクマロン、インデン及びアルキルインデンの合計が全構成モノマ−成分の50重量%以上であるクマロン−インデン樹脂を水素化してなる水素化クマロン−インデン樹脂をアクリロニトリル−ブタジエン系ゴムに配合したことを特徴とするアクリロニトリル−ブタジエン系ゴム組成物が知られている(特許文献3)。
しかし、この水素化クマロン−インデン樹脂は、数平均分子量が400〜2000の範囲に、軟化点が30〜150℃の範囲にある樹脂であり、油状物質ではない。このNBR系ゴム組成物は、制振性については考慮されていないという問題がある。
【特許文献1】実開昭64−46221号公報
【特許文献2】特開平9−230873号公報
【特許文献3】特開平5−125226号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような問題に対処するためになされたもので、繊維強化複合材等の基材に対する優れた接着性と、該基材と積層して用いるときに優れた制振性を示す複合材用薄膜シートの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の複合材用薄膜シートは、基材に積層して用いられ、アクリロニトリルブタジエン系ゴムに油状物質が配合されてなるゴムシートであり、上記油状物質が上記アクリロニトリルブタジエン系ゴム100重量部に対して5〜40重量部配合されてなることを特徴とする。
また、上記アクリロニトリルブタジエン系ゴムがアクリロニトリルブタジエンゴム、水素添加アクリロニトリルブタジエンゴム、およびカルボキシル基含有アクリロニトリルブタジエンゴムから選ばれた少なくとも1つのゴムであることを特徴とする。
また、上記油状物質が石油樹脂系合成油および可塑剤から選ばれた少なくとも1つの油状物質であることを特徴とする。
本発明の複合材用薄膜シートの特性は、24℃における10MHzで測定した損失正接(tanδ)が0.1〜0.45の範囲であり、24℃における10MHzで測定した弾性率(E’)が1〜6MPaの範囲であることを特徴とする。特に、この弾性率と損失正接との比(E’/tanδ)が5.5〜24であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の複合材用薄膜シートは、アクリロニトリルブタジエン系ゴムに油状物質が配合されてなるゴムシートであり、油状物質がアクリロニトリルブタジエン系ゴム100重量部に対して5〜40重量部配合されてなるので、ゴムシート中に均一に分散配合される油状物質の作用により、繊維強化複合材等の基材に積層して用いるときに優れた制振性を示す。
また、上記配合割合の中で、24℃における10MHzで測定した損失正接(tanδ)が0.1〜0.45の範囲であり、24℃における10MHzで測定した弾性率(E’)が1〜6MPaの範囲である、電子線照射により架橋されたゴムシートとすることにより、基材と積層した複合材の減衰特性が向上する。
また、ゴム材料としてアクリロニトリルブタジエン系ゴムを用いるので、エポキシ樹脂などを基材とする繊維強化複合材に対して接着性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
自動車用途向けの繊維強化複合材に積層して用いられる制振性複合材用薄膜シートとして要求される特性について研究したところ、シート特性の中で、tanδとE’との関係が特に重要であり、その範囲を所定の範囲に制御することで、制振性に優れることが分かった。また、加工性に優れると共に、tanδとE’とを所定の範囲に制御するために、油状物質との配合割合を所定の範囲にすることが重要であることが分かった。本発明はこのような知見に基づくものである。
【0009】
本発明に使用できるアクリロニトリルブタジエン系ゴムは、アクリロニトリルブタジエンゴム、水素添加アクリロニトリルブタジエンゴム、カルボキシル基含有アクリロニトリルブタジエンゴムを例示でき、これらのゴム中のニトリル量は極高ニトリル量から低ニトリル量まで使用できる。アクリロニトリルブタジエン系ゴムは、繊維強化樹脂材との接着性に優れ、耐熱性に優れる。特に水素添加アクリロニトリルブタジエンゴムは耐熱性に優れるため、耐熱性を要求される自動車用途向けの繊維強化複合材用薄膜シートに好適に使用できる。上記アクリロニトリルブタジエン系ゴムは単独でも混合しても使用できる。
【0010】
アクリロニトリルブタジエン系ゴムは、ニトリル量が18〜49重量%の範囲であることが好ましい。ここでニトリル量(重量%)は共重合体に含まれるアクリロニトリルの割合をいう。ニトリル量が18重量%未満であると、薄膜ゴムシートのtanδ値が低くなり、その結果、基材に積層したときの制振性が低下する場合がある。また、ニトリル量が49重量%をこえると、薄膜ゴムシートの樹脂化が進み、弾性率および表面硬度が上昇し、基材に積層したときの制振性が低下する場合がある。さらに、ニトリル量が多くなるに従い油状物質の表面移行が多くなる。
【0011】
上記アクリロニトリルブタジエン系ゴムに油状物質が配合される。この油状物質は室温で液状であり、ゴムの架橋反応時にゴム分子と化学的に反応することなくゴム材料中に配合できる物質が好ましい。ゴム分子と化学的に反応することなくゴム中に分散されることにより、制振性を向上させることができる。
【0012】
油状物質としては、石油樹脂系合成油または可塑剤が挙げられる。これらは単独でも混合物としても使用できる。
石油樹脂系合成油としては、ガラス転移温度(Tg)が−40℃〜−20℃、50℃での粘度が0.2Pa・s〜2Pa・sである物質が好ましい。
石油樹脂系合成油を例示すれば、クマロン油、クマロンインデン樹脂系油、テルペン系石油樹脂油が挙げられる。本発明においては、クマロンインデン樹脂系油が好ましく、例えば、精製クマロンインデンオイル、クマロン樹脂油、ソフトクマロン、液状クマロン等が挙げられる。
【0013】
可塑剤としては、アジピン酸系ポリエステル、セバシン酸系ポリエステル、トリメット酸系エステル、ジペンタエリスリトールまたはピロメリット酸のエステル、フタル酸系エステル、ポリエーテルエステル等のエステル系可塑剤、フォスフェート系可塑剤、ポリエーテル系可塑剤が挙げられる。本発明においては、アジピン酸系ポリエステルが好ましい。
【0014】
上記油状物質は、上記アクリロニトリルブタジエン系ゴム100重量部に対して5〜40重量部、好ましくは10〜35重量部配合される。油状物質が5重量部未満であると、生ゴムに配合剤を配合するときのゴム混練時における加工性に劣る。また、5重量部未満であると薄膜ゴムシートの表面硬度が上昇する。
一方、油状物質が40重量部をこえると、塗工法における塗工液作製時に油状物質と溶媒とが分離する場合が生じ、塗工液作製時の加工性に劣る。また、40重量部をこえると薄膜ゴムシートにおける油状物質の表面移行が多くなる。
【0015】
また、アクリロニトリルブタジエン系ゴムに対する油状物質の配合割合を上記範囲とすることにより、架橋後の薄膜ゴムシートの24℃における10MHzで測定した損失正接(tanδ)を0.1〜0.45の範囲、24℃における10MHzで測定した弾性率(E’)を1〜6MPaの範囲とし、かつ弾性率と損失正接との比(E’/tanδ)を5.5〜24.0とすることができる。
弾性率と損失正接とを最適化することにより、薄膜ゴムシートの加工性を向上させ、油状物質の表面移行を抑え、さらに基材に積層して用いられる複合材用薄膜シートとしての振動減衰能を向上させることができる。
【0016】
ゴムシートには、硫黄その他の無機加硫剤、硫黄化合物、有機過酸化物などの加硫剤または架橋剤、グアジニン系、チエゾール系、スルフェンアミド系などの加硫促進剤、酸化亜鉛等の金属酸化物、脂肪酸とその誘導体またはジエチレングリコール等の加硫促進助剤、ナフチルアミン系、ジフェニルアミン系、ワックス等の老化防止剤、ファーネスブラック、サーマルブラック等のカーボンブラックに代表される補強剤、タルク、クレー、ゴム粉末などの増量剤、ステアリン酸などの滑剤、その他の配合剤が適宜配合できる。
本発明のゴムシートにおいては、アクリロニトリルブタジエン系ゴムおよび油状物質を必須成分として、これにカーボンブラック、老化防止剤、およぴ滑剤を配合することが好ましい。
【0017】
アクリロニトリルブタジエン系ゴム100重量部に対して、カーボンブラックの配合割合は5〜35重量部、老化防止剤の配合割合は1〜5重量部、滑剤の配合割合は0.1〜5重量部が好ましい。
【0018】
本発明の薄膜ゴムシートは、基材との積層工程でシートとして使用できる厚さを有し、最大厚さは1000μm以下、好ましくは400μm、より好ましくは200μm以下のシートを作製できる方法であれば塗工法またはカレンダー加工法を使用できる。最小厚さとしては10μmである。
これらの中で、容易に薄膜ゴムシートを作製できる塗工法が好ましい。
塗工法は、上記のゴム組成物をロール等で混合した後、溶媒に溶解し、得られた液状ゴム組成物を支持シート面に塗布し、乾燥後に熱または放射線や電子線等で架橋する。
ゴム組成物の濃度は、ゴム組成物と溶媒の全体量に対して、10〜50重量%が好ましく、10重量%未満では塗膜厚さが得られず、50重量%をこえると、粘度が高くなって塗布が困難になる。
上記の溶媒としては、溶解度パラメータ(SP値)が8.0〜13.0のもの、例えばトルエン、メチルアルコール、シクロヘキサン、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトン等の使用が好ましく、これらは、いずれか1種を単独で、または2種以上を混合して使用することができる。また、上記の溶媒と相溶する非溶媒を使用することができる。
【0019】
ゴム組成物の溶解には、真空式脱泡装置付き攪拌機の使用が便利である。すなわち、ゴムと所望の添加剤とをあらかじめインターミックスやニーダー等で混練して得られたゴム組成物を溶剤と共に真空式脱泡装置付き攪拌機に投入し、大気圧下で攪拌、溶解し、しかるのち必要に応じて消泡剤を投入し、真空下、好ましくはゲージ圧−740mmHg 以上の高真空下で攪拌する。ただし、大気圧下での攪拌は5〜24時間程度が、また真空下での攪拌は断続的に5〜30分程度がそれぞれ好ましい。
【0020】
上記の溶解・攪拌によって得られたゴム溶液は、ロールコーターやコンマコーター、ナイフコーター、ダイコーター等によってポリエチレンテレフタレート等の離型性が良好な支持フィルム上に所定の厚みで所定の幅に塗布される。この離型性が良好な支持フィルムとしては、粗面加工を施したポリエチレンテレフタレートフィルムが例示できる。
ゴム溶液が塗布された支持フィルムは、オーブン内にて温度40〜130℃で好ましくは1〜30分間の加熱により乾燥される。そして、乾燥で得られた支持フィルム上のゴムフィルムが架橋される。
架橋は、熱による方法、電子線による方法、放射線による方法などを採用できる。
本発明において、油状物質を均一に配合するため、架橋は電子線照射が好ましい。電子線照射の際の搬送速度は、使用する電子線の強さに応じて設定されるが、100〜750KV、5〜400kGyで4〜10m/分が好ましい。
【0021】
上記の方法は、脱泡したゴム溶液を寸法安定性の良好なポリエチレンテレフタレート製の支持フィルム上にロールコーターで塗布し、これを乾燥し、しかるのち電子線照射によって架橋するので、気泡が無く、厚みが均一で、幅が比較的広いゴムフィルムが製造できる。そして、上記の支持フィルムとして、剥離性の良好な支持フィルムを使用するので、架橋後の剥離が容易である。また、乾燥を40〜130℃で行なうので、支持フィルムに凹凸の生じることがなく、平坦なゴムフィルムが製造できる。更に、架橋を電子線照射で行い、ゴムフィルムに加わる圧力が小さいので、支持フィルムとの離型性が良好に保たれる。
なお、脱泡したゴム溶液を直接樹脂シート上に塗布し、上記と同様に乾燥し、架橋することができる。
【0022】
本発明の複合材用薄膜シートは、樹脂シートを積層することができる。または、接着フィルムを介して樹脂シートを積層することができる。
使用できる樹脂シートとしては、熱可塑性樹脂シートまたは熱硬化性樹脂シートを例示することができる。熱可塑性樹脂シートとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ポリスチレン等のシートが例示できる。また、熱硬化性樹脂シートとしては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等のシートが例示できる。
使用できる接着フィルムとしては、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、またはエポキシフィルム等が例示できる。なかでもポリエステル、エポキシフィルムが、耐熱性に優れているとの理由で好ましい。
【0023】
ゴムシートに樹脂シートを積層する方法としては、接着剤または上記接着フィルムを用いる方法、樹脂シートにゴム溶液を直接塗布した後に架橋させる方法が挙げられる。樹脂シートにゴム溶液を直接塗布する場合は、樹脂シートにプライマーや接着剤の塗布、または樹脂シート表面のコロナ処理などを施すことが好ましい。
【0024】
本発明の複合材用薄膜シートは基材に積層して用いられる。好ましい基材としては、繊維強化樹脂材が挙げられる。繊維強化樹脂材としては、特に制限はないが、例えば以下の強化繊維とマトリックス樹脂とを含む繊維強化プラスチックが例示される。
強化繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、アルミナ繊維およびボロン繊維などが挙げられる。なかでも、軽量でありながら、高強度、高弾性率であるという優れた特性を有するため、炭素繊維が好ましい。
また、強化繊維の配列構造の具体例としては、単一方向、2方向およびランダム方向などが挙げられる。また、強化繊維の形態の具体例としては、マット、織物および編み物などが挙げられる。なかでも、軽量でありながら、高強度、高弾性率であるという優れた特性を有する繊維強化プラスチック部材が得られることから、単一方向の配列構造のものを用いることが好ましい。また、取り扱い性に優れることから、織物、編み物の形態のものを用いることが好ましい。
【0025】
マトリックス樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれも用いることができる。耐熱性、機械特性とのバランスが優れることから、熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。
熱硬化性樹脂の具体例としては、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂およびフェノール樹脂などが挙げられる。なかでも、耐熱性、機械特性とのバランスが特に優れ、硬化収縮が小さいという特徴を有することから、エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂およびポリエーテルケトン樹脂などが挙げられる。
【実施例】
【0026】
各実施例および比較例に用いた材料を以下に示す。なお、括弧内は表1−1〜表1−3における略号として用いられる場合を示す。
アクリロニトリルブタジエンゴム1(NBR1(AN=49%)):日本ゼオン社製、商品名NIPOL DN003
アクリロニトリルブタジエンゴム2(NBR2(AN=41%)):JSR社製、商品名N220S
アクリロニトリルブタジエンゴム3(NBR3(AN=35%)):JSR社製、商品名N230NV
アクリロニトリルブタジエンゴム4(NBR4(AN=27%)):日本ゼオン社製、商品名1072J
アクリロニトリルブタジエンゴム5(NBR5(AN=18%)):日本ゼオン社製、商品名NIPOL DN401
カルボキシル基含有アクリロニトリルブタジエンゴム(XNBR(AN=27%)):日本ゼオン社製、商品名NIPOL1072J
水添アクリロニトリルブタジエンゴム(HNBR(AN=36%)):日本ゼオン社製、商品名ゼットポール2020
油状物質1(クマロン−インデン樹脂系油):神戸油化学工業社製、商品名KGハイソフト
油状物質2(エステル系可塑剤):アデカ社製、商品名アデカサイザーPN6120
カーボンブラック:東海カーボン社製、商品名シーストS
老化防止剤:精工化学社製、商品名ノンフレックスRD
滑剤:花王社製、商品名ルナックス150
加工助剤:ライオン・アクゾ社製、商品名アーミン 18D
【0027】
実施例1〜実施例14、および比較例1〜比較例7
表1−1〜表1−3に示す原料ゴムに表1−1〜表1−3に示す各配合剤を配合し、インターミックス機(混練機)で混練し、厚み6mmのシートを分出しし、このシートを切断して1cm角の細片とした。得られた細片を、トルエンおよびメチルイソブチルケトン(MIBK)に対する重量割合が30重量%となるように秤量し、トルエンおよびメチルイソブチルケトン(MIBK)と共に真空脱泡装置付き攪拌機に投入し、大気圧下で12時間攪拌し、上記の細片をトルエンおよびメチルイソブチルケトン(MIBK)に溶解し、しかるのち消泡剤としてエマルジョンタイプのシリコーンオイル(東レ株式会社製、商品名「東レSH7028」)を5重量部投入し、真空脱泡装置を駆動し、ゲージ圧−750mmHg の真空下で更に20分間攪拌し、脱泡した。
【0028】
次いで、上記の溶解、脱泡したゴム溶液(固形分率30%、粘度9Pa・s)をロールコーターに供給し、ポリエチレンテレフタレートフィルムの表面を粗面加工してなる支持フィルム(東洋紡績社製、商品名「TN200」)を2m/分の速度で走行させながら、その表面に上記ゴム溶液を固形分付量が200g/m2となるように塗布し、続いてオーブンに導入し90℃で10分間乾燥し、更に連続して電子線照射装置に導き、200KV、200kGyの条件で電子線照射を行ない、しかるのち支持フィルムを剥離しながらゴムシート(厚み200μm)をロール状に巻取った。
【0029】
得られたゴムシートの硬さ、弾性率、損失正接、振動減衰能を測定した。また、ゴムシート製造過程における加工性を評価した。
硬さは、JISK6252法に準じて測定した。
弾性率および損失正接は、動的粘弾性測定器(アイティー計測制御社製、DVA225)を用いて、5mm幅×30mm長さ(チャック間距離)の試料片を用いて引っ張り式により測定周波数10MHz、測定温度24℃にて測定した。
振動減衰能は片持ち梁法により測定した。測定は、厚さ2mmのアクリル板にポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ188μm)および供試試料として各実施例および比較例で得られた薄膜ゴムシート(厚さ100μm)を貼り付け歪振幅(300μm)に対する損失係数を測定した。アクリル板にポリエチレンテレフタレートフィルムのみを貼り付けた試料に対して損失係数が小さい場合を振動減衰能×、大きい場合を○とした。
加工性は、上記ゴム溶液を製造する過程を目視で観察して、原料ゴムの混練が困難な場合またはゴム溶液が分離してしまう場合を×、原料ゴムの混練が容易でゴム溶液が分離せず均一な場合を○、原料ゴムの混練が充分にできない場合またはゴム溶液が分離しやすい場合を△で表した。なお、原料ゴムの混練が困難であるとは、インターミックス機で1時間かけても混練できない場合である。ゴム溶液が分離するとは、24時間室温放置後に目視で2層に分離することをいう。結果を表1−1〜表1−3に示す。
【表1−1】

【表1−2】

【表1−3】

【産業上の利用可能性】
【0030】
アクリロニトリルブタジエン系ゴムに油状物質が均一に分散配合されている本発明の複合材用薄膜シートは、繊維強化複合材等の基材に積層して用いるときに優れた制振性を示す。そのため、制振性が求められる自動車用途などにおいて好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に積層して用いられる複合材用薄膜シートであって、該薄膜シートはアクリロニトリルブタジエン系ゴムに油状物質が配合されてなるゴムシートであり、
前記油状物質が前記アクリロニトリルブタジエン系ゴム100重量部に対して5〜40重量部配合されてなることを特徴とする複合材用薄膜シート。
【請求項2】
前記アクリロニトリルブタジエン系ゴムがアクリロニトリルブタジエンゴム、水素添加アクリロニトリルブタジエンゴム、およびカルボキシル基含有アクリロニトリルブタジエンゴムから選ばれた少なくとも1つのゴムであることを特徴とする請求項1記載の複合材用薄膜シート。
【請求項3】
前記油状物質が石油樹脂系合成油および可塑剤から選ばれた少なくとも1つの油状物質であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の複合材用薄膜シート。
【請求項4】
前記ゴムシートは、24℃における10MHzで測定した損失正接(tanδ)が0.1〜0.45の範囲であり、24℃における10MHzで測定した弾性率(E’)が1〜6MPaの範囲であることを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載の複合材用薄膜シート。
【請求項5】
前記弾性率と前記損失正接との比(E’/tanδ)が5.5〜24であることを特徴とする請求項4記載の複合材用薄膜シート。


【公開番号】特開2008−230078(P2008−230078A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−73789(P2007−73789)
【出願日】平成19年3月21日(2007.3.21)
【出願人】(591005006)クレハエラストマー株式会社 (37)
【Fターム(参考)】