複合磁気部品
【課題】磁心の外足にコイルが巻かれる場合、コイルによって生じる磁束が外部の電子部品に影響を及ぼすおそれがあること。
【解決手段】リアクトル用コイルWRは、一対のトランス用コイルW1,W2の一方の端子に接続され、トランス用コイルW1,W2の他方の端子は、スイッチング素子Sn1,Sn2およびダイオードDp1,Dp2のそれぞれの接続点に接続されている。リアクトル用コイルWRは、足21に貫かれ、トランス用コイルW1は、足22に貫かれ、トランス用コイルW2は、足21,22に貫かれている。磁心20は、足21,22を挟む足23,24と、足21〜24に接続される接続部25,26を備えて構成される。
【解決手段】リアクトル用コイルWRは、一対のトランス用コイルW1,W2の一方の端子に接続され、トランス用コイルW1,W2の他方の端子は、スイッチング素子Sn1,Sn2およびダイオードDp1,Dp2のそれぞれの接続点に接続されている。リアクトル用コイルWRは、足21に貫かれ、トランス用コイルW1は、足22に貫かれ、トランス用コイルW2は、足21,22に貫かれている。磁心20は、足21,22を挟む足23,24と、足21〜24に接続される接続部25,26を備えて構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギ蓄積用コイルの一端に接続された所定の複数個の補助コイルのそれぞれが、電流の流通方向を一方向に制限する整流機能を有する第1流通規制要素、および電流の流通経路を開閉する開閉機能を有する第2流通規制要素の直列接続体であって且つ各別の直列接続体の接続点のそれぞれに接続され、前記複数個の補助コイルのそれぞれに接続された前記第2流通規制要素を開閉操作することで、前記エネルギ蓄積用コイル側および前記補助コイル側のいずれか一方から他方へ電気エネルギを移動させる電気回路に適用される複合磁気部品に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換機に用いるチョッパ回路は、原理上、ドロッパ回路に比べて電力損失が少なく効率の良い電源を作ることができる。しかし、スイッチングに伴う電流リプルが入出力に流れるため、入出力に高調波ノイズが重畳しやすく、電源品質が低下しやすい問題がある。たとえば、昇圧チョッパ回路では、入力側にリアクトルが直接接続されているため入力側では比較的電源品質の低下は問題になりにくいものの、出力側では電流の交流成分が非常に大きくなるため、出力側での電流リプルの低減がしばしば求められる。
【0003】
そこで従来は、たとえば下記特許文献1に見られるように、図12に示すように、リアクトル用コイルWRに一対のトランス用コイルW1,W2が接続され、これらがそれぞれスイッチング素子Sn1,Sn2およびダイオードDp1,Dp2に接続されたものも提案されている。これによれば、スイッチング素子Sn1,Sn2が交互にオン状態とされることで、ダイオードDp1,Dp2から出力される電流に位相差が生じるため、リップルを低減させることができる。
【0004】
ただし、通常の昇圧チョッパ回路では磁気部品がリアクトル1つで足りるのに対して、この回路では、トランスとリアクトルという二つの磁気部品が必要となるため、磁気部品の体格・コストの増加が無視できない。
【0005】
そこで、上記特許文献1においては、リアクトルおよびトランスの磁心を一体的に構成することで磁心の全体の体格・コストの低減を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−5579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ただし、上記特許文献1記載の複合磁気部品では、外足にトランス用コイルを設けている。一方、一般にコイルからは、磁心内部に発生する磁束だけではなく、磁心外部を通る漏洩磁束が生じ、この漏洩磁束は、他の電気部品を鎖交することで電磁干渉を発生させることがある。このため、上記文献記載の複合磁気部品にあっては、他の回路部品を外足から十分に離して配置したり、外足を覆う磁気シールドを設けたりする必要があり、回路全体の大型化や磁気シールド設置に伴うコスト増加の問題がある。
【0008】
また、先の図12に示す回路は、直流磁束を生成するリアクトルと交流磁束を生成するトランスとを備えるものであるが故、上記文献で提案されている複合部品といえども、各磁気部品間で磁束を共有することによっては各磁路の最大磁束量自体を低減することはできない。このため、一体化によるデッドスペースの低減以上には、リアクトル部品とトランス部品との双方を設けたことによって互いにとってメリットとなるような相乗効果が期待できない。
【0009】
本発明は、上記課題を解決する過程でなされたものであり、その目的は、エネルギ蓄積用コイルの一端に接続された所定の複数個の補助コイルのそれぞれが、電流の流通方向を一方向に制限する整流機能を有する第1流通規制要素、および電流の流通経路を開閉する開閉機能を有する第2流通規制要素の直列接続体であって且つ各別の直列接続体の接続点のそれぞれに接続され、前記複数個の補助コイルのそれぞれに接続された前記第2流通規制要素を開閉操作することで、前記エネルギ蓄積用コイル側および前記補助コイル側のいずれか一方から他方へ電気エネルギを移動させる電気回路に適用される新たな複合磁気部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、上記課題を解決するための手段、およびその作用効果について記載する。
【0011】
請求項1記載の発明は、エネルギ蓄積用コイルの一端に接続された所定の複数個の補助コイルのそれぞれが、電流の流通方向を一方向に制限する整流機能を有する第1流通規制要素、および電流の流通経路を開閉する開閉機能を有する第2流通規制要素の直列接続体であって且つ各別の直列接続体の接続点のそれぞれに接続され、前記複数個の補助コイルのそれぞれに接続された前記第2流通規制要素を開閉操作することで、前記エネルギ蓄積用コイル側および前記補助コイル側のいずれか一方から他方へ電気エネルギを移動させる電気回路に適用され、前記エネルギ蓄積用コイル、および前記複数個の補助コイルのそれぞれを貫いて且つ一体的に形成された磁心を備え、前記磁心は、前記複数個の補助コイルおよび前記エネルギ蓄積用コイルの少なくとも1つを貫く複数の鎖交磁心部を備え、前記複数個の補助コイルおよび前記エネルギ蓄積用コイルのうちの特定の1つ以外の残りは、それぞれ前記鎖交磁心部のうちの互いに相違するもの1つのみに貫かれ、前記特定の1つは、前記残りのそれぞれを貫く鎖交磁心部の全てに貫かれ、前記鎖交磁心部は、前記複数個の補助コイルおよび前記エネルギ蓄積用コイルのうちの一対の補助コイルのみを貫くループ経路であるトランス用経路と、前記複数個の補助コイルのそれぞれについて、前記複数個の補助コイルおよび前記エネルギ蓄積用コイルのうち1つの補助コイルおよび前記エネルギ蓄積用コイルのみを貫くループ経路であるリアクトル用経路との1部を構成し、前記エネルギ蓄積用コイルから一対の補助コイルに電流を流した際に該一対の補助コイルのそれぞれが対応するトランス用経路に誘起する磁束の方向が互いに逆となることを特徴とする。
【0012】
上記発明では、複数個の補助コイルのそれぞれについて、複数個の補助コイルおよびエネルギ蓄積用コイルのうち1つの補助コイルおよびエネルギ蓄積用コイルのみを貫くループ経路を備えるため、エネルギ蓄積用コイルおよび補助コイルのターン数の協働で、リアクトルのインダクタンスが定まることとなる。このため、エネルギ蓄積用コイルの磁心と、補助コイルの磁心とを一体的に構成するに際し、これらの有機的な結合によって、単に寄せ集めた以上の効果を得ることができる。
【0013】
また、上記発明では鎖交磁心部の全てによって貫かれるコイルを設けることで、鎖交磁心部の数を低減することができ、ひいては複合磁気部品を小型化することができる。
【0014】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記複数個の補助コイルのそれぞれについて、前記エネルギ蓄積用コイルから該補助コイルに電流を流すことで前記エネルギ蓄積用コイルによって誘起される磁束の方向と前記補助コイルによって誘起される磁束の方向とが、前記補助コイルと前記エネルギ蓄積用コイルとを貫く前記リアクトル用経路において互いに等しいことを特徴とする。
【0015】
上記設定によれば、複合磁気部品のリアクトルの実際のインダクタンスが、補助コイルのターン数によって増大する。このため、エネルギ蓄積用コイルのみによってリアクトルを構成した場合と比較して、インダクタンスを増大させることができる。
【0016】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、前記磁心は、四方を該磁心の一部によって囲われた中間磁心部を複数備え、前記中間磁心部は、前記鎖交磁心部を含むことを特徴とする。
【0017】
上記発明では、エネルギ蓄積用コイルおよび補助コイルを貫く中間磁心部が四方を磁心の一部によって囲われるため、この一部によって電磁シールド効果を奏することができる。
【0018】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明において、前記トランス用経路の磁気抵抗は、前記補助コイルのうちの1つに流れる電流の増加の開始に伴って前記補助コイルのうちの残りに流れる電流が増加を開始し、前記補助コイルのうちの1つに流れる電流の減少の開始に伴って前記補助コイルのうちの残りに流れる電流が減少を開始するように設定されていることを特徴とする。
【0019】
上記発明では、エネルギ蓄積用コイルから複数個の補助コイルのそれぞれへと流入する電流同士の差を低減することができるため、補助コイルのそれぞれに対応する第1流通規制要素および第2流通規制要素の発熱量の差を低減することができる。また、エネルギ蓄積用コイルを流れる電流と比較して、補助コイルのそれぞれに対応する第2流通規制要素を流れる電流を小さくすることができるため、その開操作に伴うスイッチング損失やサージ電圧を低減することもできる。
【0020】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明において、前記補助コイルのターン数を互いに等しい値に設定したことを特徴とする。
【0021】
上記発明が請求項4記載の発明特定事項を有する場合、エネルギ蓄積用コイルから複数個の補助コイルのそれぞれへと流入する電流同士の差を十分に低減することができる。
【0022】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の発明において、前記磁心は、磁性体が分断された箇所を、前記リアクトル用経路および前記トランス用経路のうちの前記トランス用経路を含まない部分に限って備えることを特徴とする。
【0023】
上記発明では、リアクトル用経路の磁気飽和を好適に回避することができる。また、一対の補助コイルを、密結合変成器の1次側コイルおよび2次側コイルとすることができるため、補助コイルを流れる電流同士の差を低減することができる。このため、補助コイルのそれぞれに対応する第1流通規制要素および第2流通規制要素の発熱量の差を低減することができる。また、エネルギ蓄積用コイルを流れる電流と比較して、補助コイルのそれぞれに対応する第2流通規制要素を流れる電流を小さくすることができるため、その開操作に伴うスイッチング損失やサージ電圧を低減することもできる。
【0024】
請求項7記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の発明において、前記磁心は、前記リアクトル用経路および前記トランス用経路のうちの前記トランス用経路を含まない部分に限って透磁率の低い磁性体を備えることを特徴とする。
【0025】
上記発明では、リアクトル用経路の磁気飽和を好適に回避することができる。また、一対の補助コイルを、密結合変成器の1次側コイルおよび2次側コイルとすることができるため、補助コイルを流れる電流同士の差を低減することができる。このため、補助コイルのそれぞれに対応する第1流通規制要素および第2流通規制要素の発熱量の差を低減することができる。また、エネルギ蓄積用コイルを流れる電流と比較して、補助コイルのそれぞれに対応する第2流通規制要素を流れる電流を小さくすることができるため、その開操作に伴うスイッチング損失やサージ電圧を低減することもできる。また、こうした効果を奏するべく磁心にギャップを設ける場合と比較して、漏れ磁束を低減することができ、ひいては漏れ磁束がコイルに誘導することで発生する渦電流損を好適に低減することができる。
【0026】
請求項8記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の発明において、前記磁心は、四方を該磁心の一部によって囲われた中間磁心部を前記複数個以上備え、前記中間磁心部は、前記鎖交磁心部を含み、前記エネルギ蓄積用コイルと、前記複数個の補助コイルのうちの特定の1つ以外の残りとは、それぞれ前記複数の中間磁心部のうちの互いに相違するもの1つのみに貫かれ、前記特定の1つの補助コイルは、前記特定の1つ以外の残りと前記エネルギ蓄積用コイルとのそれぞれを貫く中間磁心部の全てに貫かれることを特徴とする。
【0027】
請求項9記載の発明は、請求項8記載の発明において、前記磁心は、前記中間磁心部を前記複数個よりも多数備え、前記中間磁心部のうち前記補助コイルおよび前記エネルギ蓄積用コイルのいずれも貫かないものが、前記エネルギ蓄積用コイルおよび前記補助コイル以外のコイルを貫くことを特徴とする。
【0028】
上記発明では、エネルギ蓄積用コイルおよび補助コイルの誘起する磁束との干渉を回避しつつ、これ以外のコイルの磁心を一体的に構成することができる。このため、磁気部品の小型化を促進することができる。
【0029】
請求項10記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の発明において、前記磁心は、四方を該磁心の一部によって囲われた中間磁心部を前記複数個以上備え、前記中間磁心部は、前記鎖交磁心部を含み、前記複数個の補助コイルは、それぞれ前記中間磁心部のうちの互いに相違するもの1つのみに貫かれ、前記エネルギ蓄積用コイルは、前記補助コイルのそれぞれを貫く中間磁心部の全てに貫かれることを特徴とする。
【0030】
上記発明では、複数個の補助コイルの対称性を保ちやすい。このため、たとえば補助コイルのターン数を同一とした場合等にあっては、補助コイルによって誘起される磁束に偏りが生じることを抑制することができる。
【0031】
請求項12記載の発明は、請求項11記載の発明において、前記中間磁心部は、前記補助コイルおよび前記エネルギ蓄積用コイルのいずれをも貫かない一対の中間磁心部を備え、前記補助コイルおよび前記エネルギ蓄積用コイルのいずれをも貫かない一対の中間磁心部のそれぞれが、互いに同一の電圧が印加されて且つターン数が互いに等しい一対のコイルのそれぞれを貫き、前記一対のコイルは、前記一対の中間磁心を備えるループ経路に誘起される磁束の方向が互いに等しいことを特徴とする。
【0032】
上記発明では、エネルギ蓄積用コイルおよび補助コイルの誘起する磁束との干渉を回避しつつ、これ以外のコイルの磁心を一体的に構成することができる。このため、磁気部品の小型化を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】第1の実施形態にかかるシステム構成図。
【図2】同実施形態にかかる複合磁気部品の等価回路を示す回路図。
【図3】第2の実施形態にかかるシステム構成図。
【図4】第3の実施形態にかかるシステム構成図。
【図5】第4の実施形態にかかるシステム構成図。
【図6】第5の実施形態にかかるシステム構成図。
【図7】同実施形態にかかる複合磁気部品の等価回路を示す回路図。
【図8】第6の実施形態にかかるシステム構成図。
【図9】第7の実施形態にかかるシステム構成図。
【図10】第8の実施形態にかかるシステム構成図。
【図11】上記実施形態の変形例にかかる複合磁気部品を示す図。
【図12】従来の電力変換回路を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
<第1の実施形態>
以下、本発明にかかる複合磁気部品を昇圧コンバータに適用した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0035】
図1に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。
【0036】
図示されるコンデンサ10は、複合磁気部品CMPを構成するリアクトル用コイルWRの一方の端子に接続されている。リアクトル用コイルWRの他方の端子は、一対のトランス用コイルW1,W2のそれぞれの一方の端子に接続されており、トランス用コイルW1,W2のそれぞれの他方の端子には、スイッチング素子Sn1およびダイオードDp1の接続点とスイッチング素子Sn2およびダイオードDp2の接続点とのそれぞれが接続されている。ここで、本実施形態では、スイッチング素子Sn1,Sn2を、MOS電界効果トランジスタとしており、これらには、それぞれダイオードDn1,Dn2が逆並列に接続されている。なお、ダイオードDn1,Dn2は、スイッチング素子Sn1,Sn2のボディーダイオードであってもよい。
【0037】
上記ダイオードDp1,Dp2のカソード側は、コンデンサ12に接続されている。
【0038】
上記リアクトル用コイルWRとトランス用コイルW1,W2とは、共通の磁心20によって貫かれており、それらリアクトル用コイルWR、トランス用コイルW1,W2および磁心20によって複合磁気部品CMPを構成している。
【0039】
ここで、磁心20は、たとえばフェライト等の磁性体からなり、中足(足21,22)と、これらを挟む外足(足23,24)と、足21〜24の両端に接続される接続部25,26とを備えて構成されている。そして、上記リアクトル用コイルWRは、足21に貫かれ、トランス用コイルW1は、足22に貫かれている。また、トランス用コイルW2は、足21,22の双方に貫かれている。
【0040】
トランス用コイルW1の巻き方は、次のように設定されている。すなわち、リアクトル用コイルWRからトランス用コイルW1に電流を流した場合、リアクトル用コイルWRおよびトランス用コイルW1の双方を貫くループ経路(足21,22を含む経路)において、トランス用コイルW1およびリアクトル用コイルWRのそれぞれに流れる電流によって誘起される磁束の方向が同一となるように設定されている。また、トランス用コイルW2の巻き方は、次のように設定されている。すなわち、リアクトル用コイルWRからトランス用コイルW2に電流を流した場合、リアクトル用コイルWRおよびトランス用コイルW2の双方を貫くループ経路(足21,23を含む経路、足21,24を含む経路)において、トランス用コイルW2およびリアクトル用コイルWRのそれぞれに流れる電流によって誘起される磁束の方向が同一となるように設定されている。
【0041】
上記足21は、磁性体同士が分断されて間に低透磁率部材Lμを挟みこんでいる部分を有する。これに対し、足22,23,24は、低透磁率部材Lμを挟むことなく、連続した磁性体からなる。図1には、足22,23,24の中央部に破線を記載しているが、これは、実際の製造工程に起因して生じうる間隙等を表現したものである。すなわち、製造工程の初期においては、この部分で足21〜24が2分され、2分されたそれぞれが接続部25,26のそれぞれに接合された部材が製造される。そして、それらにリアクトル用コイルWRおよびトランス用コイルW1,W2を巻いた後、2分されている磁心同士を接続することで複合磁気部品CMPが製造される。このため、図1に示す破線部は、厳密には、クリアランスを有する等、それ以外の部分と比較して磁性体の密度が小さくなり得る。
【0042】
上記トランス用コイルW1,W2は、ターン数が互いに等しいターン数Nとされる。ちなみに、ターン数とは、コイルの鎖交磁束をコイル内の磁束で割った値である。
【0043】
ここで、上記複合磁気部品CMPの動作原理を説明する。
【0044】
まず、足21を通る磁束φ1と、足22を通る磁束φ2とのそれぞれを、接続部26から接続部25に進む方向を正とする磁束であると定義する。また、リアクトル用コイルWRのターン数をターン数NRとし、リアクトル用コイルWRに流れる電流を電流IRとする。また、リアクトル用コイルWRとトランス用コイルW1,W2との接続点の電圧を電圧VJとする。また、トランス用コイルW1を流れる電流を電流IT1とし、トランス用コイルW1とスイッチング素子Sn1およびダイオードDp1の接続点の電圧を電圧VT1とする。さらに、トランス用コイルW2を流れる電流を電流IT2とし、トランス用コイルW2とスイッチング素子Sn2およびダイオードDp2の接続点の電圧を電圧VT2とする。加えて、足21のうち低透磁率部材Lμの部分の磁気抵抗を磁気抵抗Rとする。
【0045】
今、足21,23を備えるループ経路にアンペールの法則を適用すると、この経路における磁気抵抗は、低透磁率部材Lμ部分が他の部分と比較して十分に大きいため、以下の式(c1)が成立する。
【0046】
N・IT2+NR・IR=R・φ1 …(c1)
また、足21,22を備えるループ経路にアンペールの法則を適用すると、この経路における磁気抵抗は、低透磁率部材Lμ部分が他の部分と比較して十分に大きいため、以下の式(c2)が成立する。
【0047】
N・IT1+NR・IR=R・φ1 (c2)
また、足22,24を備えるループ経路にアンペールの法則を適用すると、この経路における磁性体が連続性を有するように構成されていることから、磁気抵抗を無視しうるとして、以下の式(c3)が成立する。
【0048】
N・IT1−N・IT2=0 …(c3)
一方、リアクトル用コイルWRとトランス用コイルW1,W2との接続点にキルヒホッフの法則を適用することで、以下の式(c4)が得られる。
【0049】
IT1+IT2=IR …(c4)
上記の式(c3),(c4)より、以下の式(c5)が成立する。
【0050】
IT1=IT2=IR/2 …(c5)
一方、磁束φ1,φ2の変化は、磁束密度の時間による偏微分に関するマックスウェル方程式によって以下のように定まる。
【0051】
NR・(dφ1/dt)=VR−VJ …(c6)
N・(dφ2/dt)=VT1−VJ …(c7)
N・{d(φ1+φ2)/dt}=VJ−VT2 …(c8)
上記の式(c7),(c8)より、以下の式(c9)が成立する。
【0052】
N・(dφ1/dt)=2VJ−VT1−VT2 …(c9)
上記の式(c6),(c9)より、以下の式(c10)が成立する。
【0053】
(NR+N/2)・(dφ1/dt)=VR−(VT1+VT2)/2 …(c10)
上記の式(c1),(c5)より、以下の式(c11)が成立する。
【0054】
(NR+N/2)・IR=R・φ1 …(c11)
上記の式(c10),(c11)より、以下の式(c12)が成立する。
【0055】
(1/R)・(NR+N/2)^2・(dIR/dt)
=VR−(VT1+VT2)/2 …(c12)
以上より、複合磁気部品CMPは、図2に示す回路おいて、トランスTを、1次側と2次側とのターン数が互いに等しい密結合変成器とした場合と等価である。
【0056】
すなわち、図2において、トランスTが密結合変成器であるとすると、以下の式(c13)が成立する。
【0057】
IT1=IT2 …(c13)
また、トランスTの1次側および2次側のターン数が互いに等しく、密結合変成器であることから漏れ磁束がないとみなすと、それらに誘起される電圧が互いに等しくなることから、以下の式(c14)が成立する。
【0058】
VJ=(VT1+VT2)/2 …(c14)
したがって、以下の式(c15)が成立する。
【0059】
(1/R)・(NR+N/2)^2・(dIR/dt)
=VR−VJ
=VR−(VT1+VT2)/2 …(c15)
また、上記の式(c5)については、上記の式(c13)に鑑みれば、図2の回路においても成立することは明らかである。
【0060】
図2に示す回路は、電流のリップルを低減する上で有効な回路である。すなわち、たとえば、先の図1に示したコンデンサ12を、一対の昇圧チョッパ回路で共有し、これら昇圧チョッパ回路をマルチフェーズ駆動する場合には、コンデンサ12のリップルを低減することができるとはいえ、各昇圧チョッパ回路のリアクトルの電流の増減周波数は、単一の昇圧チョッパ回路のスイッチング周波数と等しい。これに対し、図2に示す回路では、リアクトルの電流の増減周波数は、スイッチング素子Sn1,Sn2のスイッチング周波数の2倍となる。このため、スイッチング素子Sn1,Sn2のオン状態への切り替えるタイミングをスイッチング周期が均等分割されたタイミングとすることで(その位相差をπとすることで)、リップルを低減できることに加えて、リアクトルの小型化が可能である。さらに、リアクトル用コイルWRのうちトランス用コイルW1,W2の接続される側に印加される電圧は、上記の式(c15)からわかるように、「(VT1+VT2)/2」となる。これに対しマルチフェーズ駆動の場合には、各リアクトルのそれぞれに電圧VT1,VT2のそれぞれが印加される。このため、リアクトル用コイルWRの両端の電位差が小さくなるため、電流リップルが小さくなり、ひいてはリアクトルのさらなる小型化が可能である。
【0061】
ここで、本実施形態にかかるリアクトルは、これを単品にて製造した場合と比較して、インダクタンスが大きくなっていることに特徴がある。すなわち、リアクトル用コイルWRを、ターン数NRとし、単品にて製造する場合、磁気抵抗Rを同一とすると、インダクタンスは、「(1/R)・(NR)^2」となる。これに対し、本実施形態にかかるリアクトルは、リアクトル用コイルWRとトランス用コイルW1,W2の複合磁気部品によって構成されるが故、インダクタンスに、トランス用コイルW1,W2のターン数Nが関係する。これは、リアクトルがエネルギを蓄積する磁気経路(足21,23を備えるループ経路、足21,22を備えるループ経路、足21,24を備えるループ経路)がトランス用コイルW1,W2を貫くことに起因している。
【0062】
特に、トランス用コイルW1,W2の巻き方を上記のように設定することで、トランス用コイルW1,W2がリアクトルのインダクタンスを増加させる側に寄与している。このため、リアクトル用コイルWRのターン数を低減することができるため、2つの理由により複合磁気部品CMPを小型化することができる。すなわち、まず第1に、ターン数が減少することで、足21の長さを短くすることができる。第2に、ターン数が減少するために、リアクトル用コイルWRの配線抵抗が小さくなるため、その断面積を低減することができ、ひいては、足21,23間の間隔や、足21,22間の間隔を狭めることができる。
【0063】
上述したように、複合磁気部品CMPにおいては、上記の式(c5)が成立するため、トランス用コイルW1,W2を流れる電流IT1,IT2の一方の増加に伴って他方が増加し、一方の減少に伴って他方が減少する。しかも、これら電流値自体、互いに略等しくなる。このため、リアクトル用コイルWRを流れる電流IRは、トランス用コイルW1,W2に均等に分担される。したがって、スイッチング素子Sn1,Sn2やダイオードDp1,Dp2に流れる電流量を低減することができる。このため、それらの導通損失を低減することができる。また、スイッチング素子Sn1,Sn2のターンオフ損失を低減したり、スイッチング素子Sn1,Sn2のターンオフ時のサージ電圧を低減したりすることができる。
【0064】
さらに、先の図1に示す制御装置30によって、スイッチング素子Sn1,Sn2のオン状態への切り替え位相をπずらす場合、オン・オフの1周期に対するオン時間の時比率が「1/2」付近となることで、リップルを著しく低減することができる。すなわち、この場合、「VT1+VT2」は、コンデンサ12側の電圧となって且つ、コンデンサ12側の電圧は、コンデンサ10側の電圧の2倍となる。このため、上記の式(c12)より、「dIR・dt=0」となる。また、「IT1=IT2」であるため、出力電流のリップルは略ゼロとみなせる。
【0065】
さらに、本実施形態では、リアクトル用コイルWRとトランス用コイルW1,W2とを貫く足21,22が、四方を足23,24および接続部25,26によって囲われている。このため、これら足23,24および接続部25,26による電磁シールド効果のため、これら足23,24および接続部25,26に近接して電子部品を配置しつつも、磁気干渉を好適に回避することができる。このように、外側の足23,24や接続部25,26にコイルを設けない場合、足23,24や接続部25,26に囲われた足の数が増加しやすい。しかし、本実施形態では、トランス用コイルW2を、足21,22の双方によって貫くようにすることで、リアクトル用コイルWRおよびトランス用コイルW1の双方を貫くループ経路とリアクトル用コイルWRおよびトランス用コイルW2の双方を貫くループ経路との一対のリアクトル経路について、それらを互いに相違させつつも足の数を極力低減することができる。このため、複合磁気部品CMPの小型化に寄与する。
<第2の実施形態>
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0066】
図3に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。なお、図3において、先の図1に示した部材に対応するものについては、便宜上同一の符号を付している。
【0067】
本実施形態では、足21に限って透磁率の低い磁性体材料(ダストコアDC)を採用することで、磁心20において、足21の磁気抵抗と比較して他の磁気抵抗を無視しうるものとした。このように、フェライトと比較して磁気飽和密度の高いダストコアを採用することで、足21を小型化して複合磁気部品CMPをよりいっそう小型化できることに加えて、ギャップを設けた場合と比較して漏れ磁束を低減することができることから、漏れ磁束がコイルに誘導する渦電流による損失増加を低減することもできる。
【0068】
また、本実施形態では、複合磁気部品CMPを用いて昇降圧コンバータを構成した。すなわち、トランス用コイルW1は、スイッチング素子Sp1,Sn1の接続点に接続され、トランス用コイルW2は、スイッチング素子Sp2,Sn2の接続点に接続されている。そして、スイッチング素子Sp1,Sn1は、互いに相補的に駆動され、スイッチング素子Sp2,Sn2も互いに相補的に駆動される。これにより、スイッチング素子Sn1、Sn2のオン・オフの1周期に対するオン時間の時比率と、コンデンサ10,12の電圧に応じて、コンデンサ10の電圧が昇圧されることで、その電気エネルギがコンデンサ12に移動するか、コンデンサ12の電圧が降圧されることで、その電気エネルギがコンデンサ10に移動するかが定まる。
<第3の実施形態>
以下、第3の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0069】
図4に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。なお、図4において、先の図1に示した部材に対応するものについては、便宜上同一の符号を付している。
【0070】
図示されるように、本実施形態では、リアクトル用コイルWRを足21,22の双方が貫くとともに、トランス用コイルW1,W2のそれぞれを足22,21のそれぞれが貫くようにした。そして、外側の足23,24に低透磁率部材Lμを設けた。これにより、トランス用コイルW1,W2を対称的なものとすることができる。すなわち、これらを互いに同一の長さ等とすることが容易となる。このため、これらの抵抗値のばらつきによってトランス用経路(足21,22を備えるループ経路)の交流磁束の変動量の平均値がゼロからずれる偏磁現象を好適に回避することができる。
【0071】
なお、本実施形態では、磁気エネルギ密度の大きい部分が一対の足23,24に分散することから、リアクトルのインダクタンスを第1の実施形態と同一とするうえでは、足23,24の断面積を、第1の実施形態の足21の断面積の「1/2」とすればよい。
【0072】
また、本実施形態では、複合磁気部品CMPを用いて、降圧コンバータを構成した。すなわち、スイッチング素子Sp1,Sp2がオンとなることで、コンデンサ12からコンデンサ10にエネルギが流出するとともに、コンデンサ12のエネルギがリアクトルに蓄積され、スイッチング素子Sp1,Sp2がオフとなることで、リアクトルに蓄積されたエネルギがコンデンサ10に供給される。この際、コンデンサ10には、コンデンサ12の充電電圧が降圧された電圧が印加される。
<第4の実施形態>
以下、第4の実施形態について、先の第3の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0073】
図5に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。なお、図5において、先の図1に示した部材に対応するものについては、便宜上同一の符号を付している。
【0074】
本実施形態でも、上記第3の実施形態と同様、トランス用コイルW1,W2のそれぞれを貫く磁心の双方によってリアクトル用コイルWRを貫く設定としている。ただし、本実施形態では、リアクトル用コイルWRを貫く磁心を、低透磁率部材Lμを介して接続部25,26に接続した。これにより、低透磁率部材Lμについても四方を磁心20の一部(足23,24および接続部25,26)に囲われるため、他の箇所と比較して漏れ磁束が多くなる低透磁率部材Lμからの漏れ磁束が、磁心20の外部へと流出する事態を好適に抑制することができる。このため、足23,24および接続部25,26の近くに電子部品を配置したとしても、磁気干渉を好適に回避することができる。
【0075】
なお、本実施形態では、複合磁気部品CMPを用いて昇降圧コンバータを構成した。
<第5の実施形態>
以下、第5の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0076】
図6に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。なお、図6において、先の図1に示した部材に対応するものについては、便宜上同一の符号を付している。
【0077】
図示されるように、本実施形態では、磁心20に足27を追加するとともに、トランス用コイルW3を追加した。そして、トランス用コイルW3が足27によって貫かれるようにして且つ、トランス用コイルW2が足21,22,27によって貫かれるようにした。ここで、トランス用コイルW2が足21,22,27によって貫かれるようにしたのは、先の第1の実施形態において説明したように、足の数を低減するためである。
【0078】
この回路の動作は、上記第1の実施形態と同様に考えることで、以下の式(c16),(c17)によって記述される。
【0079】
(1/R)・(NR+N/3)^2・(dIR/dt)
=VR−(VT1+VT2+VT3)/3 …(c16)
IT1=IT2=IT3=IR/3 …(c17)
この回路は、図7に示す回路において、トランスT1,T2,T3を密結合変成器として且つ3つのトランス用コイルのターン数を互いに等しくしたものと等価となる。
【0080】
本実施形態にかかる回路によれば、スイッチング素子Sn1,Sn2,Sn3のオン状態への切替位相を、オン・オフ操作の一周期をトランス用コイルW1〜W3の数で均等分割した期間ずつずらすことで(互いに「2π/3」ずつずらすことで)、電流のリップルを十分に低減することができる。さらにこの際、コンデンサ12の電圧がコンデンサ10の電圧の「3」倍程度となる場合、コンデンサ12のリップルが著しく小さくなる。
<第6の実施形態>
以下、第6の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0081】
図8に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。なお、図8において、先の図1に示した部材に対応するものについては、便宜上同一の符号を付している。
【0082】
図示されるように、本実施形態では、磁心20に、足27,28を追加した。ここで、足27は、磁性体の連続性を保った構成であり、足28は、磁性体が低透磁率部材Lμによって分断された構成である。
【0083】
そして、足27は、トランス40の1次側コイルTW1および2次側コイルTW2を貫く。1次側コイルTW1は、フルブリッジ回路42に接続され、2次側コイルTW2は、全波整流回路44に接続されている。全波整流回路44には、リアクトルRWの一方の端子が接続され、リアクトルRWの他方の端子は、出力コンデンサ46に接続されている。そして、リアクトルRWは、足28によって貫かれている。
【0084】
こうした構成によれば、トランス40、フルブリッジ回路42、全波整流回路44、リアクトルRWおよび出力コンデンサ46を備える絶縁コンバータの磁気部品と、第1の実施形態にかかる磁気部品とで磁心20を共有することができる。ここで、トランス40の磁束の経路は、足27および足23を備えるループ経路や、足27および足24を備えるループ経路である。また、リアクトルRWの磁束の経路は、足28および足23を備えるループ経路や、足28および足24を備えるループ経路である。
<第7の実施形態>
以下、第6の実施形態について、先の第3の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0085】
図9に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。なお、図9において、先の図4に示した部材に対応するものについては、便宜上同一の符号を付している。
【0086】
図示されるように、本実施形態では、磁心20に、足27,28を追加した。ここで、足27,28は、いずれも磁性体が低透磁率部材Lμによって分断された構成である。
【0087】
一方、コンデンサ12には、互いにターン数の等しいリアクトル50,52のそれぞれの一方の端子が接続されており、リアクトル50,52の他方の端子には、コンデンサ54が接続されている。そして、リアクトル50,52のそれぞれは、足27,28のそれぞれによって貫かれている。ここで、リアクトル50,52は、コンデンサ12およびコンデンサ54間の差圧が印加されることで、足27,28を備えるループ経路において、大きさおよび向きが互いに等しい磁束を誘起するように設定されている。この場合、リアクトル50,52の誘起する磁束が足21〜24に流出する事態を好適に回避することができる。
【0088】
なお、本実施形態では、スイッチング素子Sn1,Sn2を、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)とする例を示した。
<第8の実施形態>
以下、第8の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0089】
図10に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。なお、図10において、先の図1に示した部材に対応するものについては、便宜上同一の符号を付している。
【0090】
本実施形態では、磁心20のうちトランス用コイルW1,W2の双方を貫くトランス用経路にも低透磁率部材Lμを備える。詳しくは、足22を磁性体が分断された構成として且つ、その間に低透磁率部材Lμを挟み込む。ここで、足22を選択したのは、磁心20のうちトランス用コイルW1,W2の双方を貫く経路上に必ず低透磁率部材Lμを備えるためである。
【0091】
こうした構成の場合、上記の式(c4),(c5)が成立しないため、トランス用コイルW1,W2のそれぞれを流れる電流IT1,IT2は、増加期間や減少期間が互いに同期したものとはならない。しかし、この場合、たとえばスイッチング素子Sn1をオン且つスイッチング素子Sn2をオフすることで、トランス用コイルW1を流れる電流IT1を徐々に増加させて且つ、トランス用コイルW2を流れる電流IT2を徐々に減少させることができる。したがって、トランス用コイルW2を流れる電流がゼロである場合にスイッチング素子Sn2をオンとするなら、スイッチング素子Sn2のターンオン操作を、ゼロ電流スイッチングとすることができる。このため、たとえばスイッチング素子Sp2をスーパージャンクションMOS電界効果トランジスタとするなど、ボディーダイオード(ダイオードDp2)のリカバリ電流が大きくなるものにあっては、ターンオン時のサージ電圧を低減するうえで特に有効である。
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0092】
「エネルギ蓄積用コイルと補助コイルとの磁束の方向について」
たとえば先の図1において、トランス用コイルW1,W2の巻き方を逆とすることで、リアクトル用コイルWRからトランス用コイルW1,W2に電流を流すことで、トランス用コイルW1,2に誘起される磁束の方向が図1の場合と逆となるようにしてもよい。この場合、インダクタンスは、「(NR−N/2)^2/R」となるため、同一のインダクタンスを得るためのターン数を増大させる必要が生じるとはいえ、所望のインダクタンスに調節するための一手法とはなり得る。
【0093】
「磁心について」
図1に例示されるように、いくつかの足21〜24と、その軸に直交する接続部25,26からなるものに限らない。たとえば、図1において、足23,24と接続部25,26をトロイダルコアに代え、その内周に足21,22を接続してもよい。この場合であっても、中間磁心部(足21,22)が磁心の一部に四方を覆われるため、磁気シールドの効果を有する。
【0094】
エネルギ蓄積用コイルや補助コイルを貫く部分が四方を磁心の一部で覆われた構成に限らない。たとえば上記第1の実施形態(図1)において、足23を削除してもよい(図11(a))。また、上記第3の実施形態(図4)において、足23を削除してもよい(図12(b))。こうした場合であっても、三方(24と接続部25,26側)は、シールドされているため、三方に他の回路を配置するなら、磁気シールドの効果を奏することができる。
【0095】
「補助コイルの数について」
2個または3個に限らず、4個以上であってもよい。この場合であっても、リアクトル用コイルWRと、補助コイルとのうちのいずれか1つを、中間磁心部の全てによって鎖交する構成とすることで、磁心を小型化することが可能となる。
【0096】
「補助コイル同士の電流の関係について」
補助コイルのうちの1つに流れる電流の増加の開始に伴って前記補助コイルのうちの残りに流れる電流が増加を開始し、前記補助コイルのうちの1つに流れる電流の減少の開始に伴って前記補助コイルのうちの残りに流れる電流が減少を開始する設定を設けない構成としては、上記第8の実施形態(図10)に例示したものに限らない。たとえば、足22をダストコアにて構成してもよい。
【0097】
リアクトル用コイルWRを流れる電流のリップルの増加を許容できるなら、トランス用コイルW1,W2のターン数を相違させてもよい。これにより、トランス用コイルW1,W2のそれぞれを流れる電流の絶対値が相違するようになる。また、この場合、リアクトル用コイルWRは、単一のリアクトルとしては振舞わず、トランス用コイルW1,W2と疎結合した磁気部品となる。
【0098】
「第2流通規制要素の開閉操作について」
たとえば、上記第1の実施形態(図1)において、スイッチング素子Sn1,Sn2のオン状態への切り替えタイミングの位相差がπよりも小さい場合であっても、位相差がゼロでないなら、リップルを低減する効果はある。
【0099】
「鎖交磁心部について」
複数個の補助コイルおよび前記エネルギ蓄積用コイルのうちの特定の1つが、鎖交磁心部の全てによって貫かれる構成に限らない。たとえば、上記第1の実施形態(図1)において、トランス用コイルW1,W2のそれぞれを、接続部26のうち足21を挟む両側のそれぞれによって貫かれるようにしてもよい。こうした構成は、以下の技術的思想の一実施形態である。
【0100】
エネルギ蓄積用コイルの一端に接続された所定の複数個の補助コイルのそれぞれが、電流の流通方向を一方向に制限する整流機能を有する第1流通規制要素、および電流の流通経路を開閉する開閉機能を有する第2流通規制要素の直列接続体であって且つ各別の直列接続体の接続点のそれぞれに接続され、前記複数個の補助コイルのそれぞれに接続された前記第2流通規制要素を開閉操作することで、前記エネルギ蓄積用コイル側および前記補助コイル側のいずれか一方から他方へ電気エネルギを移動させる電気回路に適用され、前記エネルギ蓄積用コイル、および前記複数個の補助コイルのそれぞれを貫いて且つ一体的に形成された磁心を備え、前記磁心は、前記複数個の補助コイルおよび前記エネルギ蓄積用コイルのうちの一対の補助コイルのみを貫くループ経路であるトランス用経路と、前記複数個の補助コイルのそれぞれについて、前記複数個の補助コイルおよび前記エネルギ蓄積用コイルのうち1つの補助コイルおよび前記エネルギ蓄積用コイルのみを貫くループ経路であるリアクトル用経路とを構成し、前記エネルギ蓄積用コイルから一対の補助コイルに電流を流した際に該一対の補助コイルのそれぞれが対応するトランス用経路に誘起する磁束の方向が互いに逆となり、前記トランス用経路の磁気抵抗は、前記補助コイルのうちの1つに流れる電流の増加の開始に伴って前記補助コイルのうちの残りに流れる電流が増加を開始し、前記補助コイルのうちの1つに流れる電流の減少の開始に伴って前記補助コイルのうちの残りに流れる電流が減少を開始するように設定されていることを特徴とする。
【符号の説明】
【0101】
20…磁心、WR…リアクトル用コイル(エネルギ蓄積用コイルの一実施形態)、W1,W2,W3…トランス用コイル(補助コイルの一実施形態)、CMP…複合磁気部品、Sn1,Sn2…スイッチング素子(図1の場合、第2流通規制要素の一実施形態)、Dp1,Dp2…ダイオード(図1の場合、第1流通規制要素の一実施形態)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギ蓄積用コイルの一端に接続された所定の複数個の補助コイルのそれぞれが、電流の流通方向を一方向に制限する整流機能を有する第1流通規制要素、および電流の流通経路を開閉する開閉機能を有する第2流通規制要素の直列接続体であって且つ各別の直列接続体の接続点のそれぞれに接続され、前記複数個の補助コイルのそれぞれに接続された前記第2流通規制要素を開閉操作することで、前記エネルギ蓄積用コイル側および前記補助コイル側のいずれか一方から他方へ電気エネルギを移動させる電気回路に適用される複合磁気部品に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換機に用いるチョッパ回路は、原理上、ドロッパ回路に比べて電力損失が少なく効率の良い電源を作ることができる。しかし、スイッチングに伴う電流リプルが入出力に流れるため、入出力に高調波ノイズが重畳しやすく、電源品質が低下しやすい問題がある。たとえば、昇圧チョッパ回路では、入力側にリアクトルが直接接続されているため入力側では比較的電源品質の低下は問題になりにくいものの、出力側では電流の交流成分が非常に大きくなるため、出力側での電流リプルの低減がしばしば求められる。
【0003】
そこで従来は、たとえば下記特許文献1に見られるように、図12に示すように、リアクトル用コイルWRに一対のトランス用コイルW1,W2が接続され、これらがそれぞれスイッチング素子Sn1,Sn2およびダイオードDp1,Dp2に接続されたものも提案されている。これによれば、スイッチング素子Sn1,Sn2が交互にオン状態とされることで、ダイオードDp1,Dp2から出力される電流に位相差が生じるため、リップルを低減させることができる。
【0004】
ただし、通常の昇圧チョッパ回路では磁気部品がリアクトル1つで足りるのに対して、この回路では、トランスとリアクトルという二つの磁気部品が必要となるため、磁気部品の体格・コストの増加が無視できない。
【0005】
そこで、上記特許文献1においては、リアクトルおよびトランスの磁心を一体的に構成することで磁心の全体の体格・コストの低減を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−5579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ただし、上記特許文献1記載の複合磁気部品では、外足にトランス用コイルを設けている。一方、一般にコイルからは、磁心内部に発生する磁束だけではなく、磁心外部を通る漏洩磁束が生じ、この漏洩磁束は、他の電気部品を鎖交することで電磁干渉を発生させることがある。このため、上記文献記載の複合磁気部品にあっては、他の回路部品を外足から十分に離して配置したり、外足を覆う磁気シールドを設けたりする必要があり、回路全体の大型化や磁気シールド設置に伴うコスト増加の問題がある。
【0008】
また、先の図12に示す回路は、直流磁束を生成するリアクトルと交流磁束を生成するトランスとを備えるものであるが故、上記文献で提案されている複合部品といえども、各磁気部品間で磁束を共有することによっては各磁路の最大磁束量自体を低減することはできない。このため、一体化によるデッドスペースの低減以上には、リアクトル部品とトランス部品との双方を設けたことによって互いにとってメリットとなるような相乗効果が期待できない。
【0009】
本発明は、上記課題を解決する過程でなされたものであり、その目的は、エネルギ蓄積用コイルの一端に接続された所定の複数個の補助コイルのそれぞれが、電流の流通方向を一方向に制限する整流機能を有する第1流通規制要素、および電流の流通経路を開閉する開閉機能を有する第2流通規制要素の直列接続体であって且つ各別の直列接続体の接続点のそれぞれに接続され、前記複数個の補助コイルのそれぞれに接続された前記第2流通規制要素を開閉操作することで、前記エネルギ蓄積用コイル側および前記補助コイル側のいずれか一方から他方へ電気エネルギを移動させる電気回路に適用される新たな複合磁気部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、上記課題を解決するための手段、およびその作用効果について記載する。
【0011】
請求項1記載の発明は、エネルギ蓄積用コイルの一端に接続された所定の複数個の補助コイルのそれぞれが、電流の流通方向を一方向に制限する整流機能を有する第1流通規制要素、および電流の流通経路を開閉する開閉機能を有する第2流通規制要素の直列接続体であって且つ各別の直列接続体の接続点のそれぞれに接続され、前記複数個の補助コイルのそれぞれに接続された前記第2流通規制要素を開閉操作することで、前記エネルギ蓄積用コイル側および前記補助コイル側のいずれか一方から他方へ電気エネルギを移動させる電気回路に適用され、前記エネルギ蓄積用コイル、および前記複数個の補助コイルのそれぞれを貫いて且つ一体的に形成された磁心を備え、前記磁心は、前記複数個の補助コイルおよび前記エネルギ蓄積用コイルの少なくとも1つを貫く複数の鎖交磁心部を備え、前記複数個の補助コイルおよび前記エネルギ蓄積用コイルのうちの特定の1つ以外の残りは、それぞれ前記鎖交磁心部のうちの互いに相違するもの1つのみに貫かれ、前記特定の1つは、前記残りのそれぞれを貫く鎖交磁心部の全てに貫かれ、前記鎖交磁心部は、前記複数個の補助コイルおよび前記エネルギ蓄積用コイルのうちの一対の補助コイルのみを貫くループ経路であるトランス用経路と、前記複数個の補助コイルのそれぞれについて、前記複数個の補助コイルおよび前記エネルギ蓄積用コイルのうち1つの補助コイルおよび前記エネルギ蓄積用コイルのみを貫くループ経路であるリアクトル用経路との1部を構成し、前記エネルギ蓄積用コイルから一対の補助コイルに電流を流した際に該一対の補助コイルのそれぞれが対応するトランス用経路に誘起する磁束の方向が互いに逆となることを特徴とする。
【0012】
上記発明では、複数個の補助コイルのそれぞれについて、複数個の補助コイルおよびエネルギ蓄積用コイルのうち1つの補助コイルおよびエネルギ蓄積用コイルのみを貫くループ経路を備えるため、エネルギ蓄積用コイルおよび補助コイルのターン数の協働で、リアクトルのインダクタンスが定まることとなる。このため、エネルギ蓄積用コイルの磁心と、補助コイルの磁心とを一体的に構成するに際し、これらの有機的な結合によって、単に寄せ集めた以上の効果を得ることができる。
【0013】
また、上記発明では鎖交磁心部の全てによって貫かれるコイルを設けることで、鎖交磁心部の数を低減することができ、ひいては複合磁気部品を小型化することができる。
【0014】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記複数個の補助コイルのそれぞれについて、前記エネルギ蓄積用コイルから該補助コイルに電流を流すことで前記エネルギ蓄積用コイルによって誘起される磁束の方向と前記補助コイルによって誘起される磁束の方向とが、前記補助コイルと前記エネルギ蓄積用コイルとを貫く前記リアクトル用経路において互いに等しいことを特徴とする。
【0015】
上記設定によれば、複合磁気部品のリアクトルの実際のインダクタンスが、補助コイルのターン数によって増大する。このため、エネルギ蓄積用コイルのみによってリアクトルを構成した場合と比較して、インダクタンスを増大させることができる。
【0016】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、前記磁心は、四方を該磁心の一部によって囲われた中間磁心部を複数備え、前記中間磁心部は、前記鎖交磁心部を含むことを特徴とする。
【0017】
上記発明では、エネルギ蓄積用コイルおよび補助コイルを貫く中間磁心部が四方を磁心の一部によって囲われるため、この一部によって電磁シールド効果を奏することができる。
【0018】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明において、前記トランス用経路の磁気抵抗は、前記補助コイルのうちの1つに流れる電流の増加の開始に伴って前記補助コイルのうちの残りに流れる電流が増加を開始し、前記補助コイルのうちの1つに流れる電流の減少の開始に伴って前記補助コイルのうちの残りに流れる電流が減少を開始するように設定されていることを特徴とする。
【0019】
上記発明では、エネルギ蓄積用コイルから複数個の補助コイルのそれぞれへと流入する電流同士の差を低減することができるため、補助コイルのそれぞれに対応する第1流通規制要素および第2流通規制要素の発熱量の差を低減することができる。また、エネルギ蓄積用コイルを流れる電流と比較して、補助コイルのそれぞれに対応する第2流通規制要素を流れる電流を小さくすることができるため、その開操作に伴うスイッチング損失やサージ電圧を低減することもできる。
【0020】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明において、前記補助コイルのターン数を互いに等しい値に設定したことを特徴とする。
【0021】
上記発明が請求項4記載の発明特定事項を有する場合、エネルギ蓄積用コイルから複数個の補助コイルのそれぞれへと流入する電流同士の差を十分に低減することができる。
【0022】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の発明において、前記磁心は、磁性体が分断された箇所を、前記リアクトル用経路および前記トランス用経路のうちの前記トランス用経路を含まない部分に限って備えることを特徴とする。
【0023】
上記発明では、リアクトル用経路の磁気飽和を好適に回避することができる。また、一対の補助コイルを、密結合変成器の1次側コイルおよび2次側コイルとすることができるため、補助コイルを流れる電流同士の差を低減することができる。このため、補助コイルのそれぞれに対応する第1流通規制要素および第2流通規制要素の発熱量の差を低減することができる。また、エネルギ蓄積用コイルを流れる電流と比較して、補助コイルのそれぞれに対応する第2流通規制要素を流れる電流を小さくすることができるため、その開操作に伴うスイッチング損失やサージ電圧を低減することもできる。
【0024】
請求項7記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の発明において、前記磁心は、前記リアクトル用経路および前記トランス用経路のうちの前記トランス用経路を含まない部分に限って透磁率の低い磁性体を備えることを特徴とする。
【0025】
上記発明では、リアクトル用経路の磁気飽和を好適に回避することができる。また、一対の補助コイルを、密結合変成器の1次側コイルおよび2次側コイルとすることができるため、補助コイルを流れる電流同士の差を低減することができる。このため、補助コイルのそれぞれに対応する第1流通規制要素および第2流通規制要素の発熱量の差を低減することができる。また、エネルギ蓄積用コイルを流れる電流と比較して、補助コイルのそれぞれに対応する第2流通規制要素を流れる電流を小さくすることができるため、その開操作に伴うスイッチング損失やサージ電圧を低減することもできる。また、こうした効果を奏するべく磁心にギャップを設ける場合と比較して、漏れ磁束を低減することができ、ひいては漏れ磁束がコイルに誘導することで発生する渦電流損を好適に低減することができる。
【0026】
請求項8記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の発明において、前記磁心は、四方を該磁心の一部によって囲われた中間磁心部を前記複数個以上備え、前記中間磁心部は、前記鎖交磁心部を含み、前記エネルギ蓄積用コイルと、前記複数個の補助コイルのうちの特定の1つ以外の残りとは、それぞれ前記複数の中間磁心部のうちの互いに相違するもの1つのみに貫かれ、前記特定の1つの補助コイルは、前記特定の1つ以外の残りと前記エネルギ蓄積用コイルとのそれぞれを貫く中間磁心部の全てに貫かれることを特徴とする。
【0027】
請求項9記載の発明は、請求項8記載の発明において、前記磁心は、前記中間磁心部を前記複数個よりも多数備え、前記中間磁心部のうち前記補助コイルおよび前記エネルギ蓄積用コイルのいずれも貫かないものが、前記エネルギ蓄積用コイルおよび前記補助コイル以外のコイルを貫くことを特徴とする。
【0028】
上記発明では、エネルギ蓄積用コイルおよび補助コイルの誘起する磁束との干渉を回避しつつ、これ以外のコイルの磁心を一体的に構成することができる。このため、磁気部品の小型化を促進することができる。
【0029】
請求項10記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の発明において、前記磁心は、四方を該磁心の一部によって囲われた中間磁心部を前記複数個以上備え、前記中間磁心部は、前記鎖交磁心部を含み、前記複数個の補助コイルは、それぞれ前記中間磁心部のうちの互いに相違するもの1つのみに貫かれ、前記エネルギ蓄積用コイルは、前記補助コイルのそれぞれを貫く中間磁心部の全てに貫かれることを特徴とする。
【0030】
上記発明では、複数個の補助コイルの対称性を保ちやすい。このため、たとえば補助コイルのターン数を同一とした場合等にあっては、補助コイルによって誘起される磁束に偏りが生じることを抑制することができる。
【0031】
請求項12記載の発明は、請求項11記載の発明において、前記中間磁心部は、前記補助コイルおよび前記エネルギ蓄積用コイルのいずれをも貫かない一対の中間磁心部を備え、前記補助コイルおよび前記エネルギ蓄積用コイルのいずれをも貫かない一対の中間磁心部のそれぞれが、互いに同一の電圧が印加されて且つターン数が互いに等しい一対のコイルのそれぞれを貫き、前記一対のコイルは、前記一対の中間磁心を備えるループ経路に誘起される磁束の方向が互いに等しいことを特徴とする。
【0032】
上記発明では、エネルギ蓄積用コイルおよび補助コイルの誘起する磁束との干渉を回避しつつ、これ以外のコイルの磁心を一体的に構成することができる。このため、磁気部品の小型化を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】第1の実施形態にかかるシステム構成図。
【図2】同実施形態にかかる複合磁気部品の等価回路を示す回路図。
【図3】第2の実施形態にかかるシステム構成図。
【図4】第3の実施形態にかかるシステム構成図。
【図5】第4の実施形態にかかるシステム構成図。
【図6】第5の実施形態にかかるシステム構成図。
【図7】同実施形態にかかる複合磁気部品の等価回路を示す回路図。
【図8】第6の実施形態にかかるシステム構成図。
【図9】第7の実施形態にかかるシステム構成図。
【図10】第8の実施形態にかかるシステム構成図。
【図11】上記実施形態の変形例にかかる複合磁気部品を示す図。
【図12】従来の電力変換回路を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
<第1の実施形態>
以下、本発明にかかる複合磁気部品を昇圧コンバータに適用した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0035】
図1に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。
【0036】
図示されるコンデンサ10は、複合磁気部品CMPを構成するリアクトル用コイルWRの一方の端子に接続されている。リアクトル用コイルWRの他方の端子は、一対のトランス用コイルW1,W2のそれぞれの一方の端子に接続されており、トランス用コイルW1,W2のそれぞれの他方の端子には、スイッチング素子Sn1およびダイオードDp1の接続点とスイッチング素子Sn2およびダイオードDp2の接続点とのそれぞれが接続されている。ここで、本実施形態では、スイッチング素子Sn1,Sn2を、MOS電界効果トランジスタとしており、これらには、それぞれダイオードDn1,Dn2が逆並列に接続されている。なお、ダイオードDn1,Dn2は、スイッチング素子Sn1,Sn2のボディーダイオードであってもよい。
【0037】
上記ダイオードDp1,Dp2のカソード側は、コンデンサ12に接続されている。
【0038】
上記リアクトル用コイルWRとトランス用コイルW1,W2とは、共通の磁心20によって貫かれており、それらリアクトル用コイルWR、トランス用コイルW1,W2および磁心20によって複合磁気部品CMPを構成している。
【0039】
ここで、磁心20は、たとえばフェライト等の磁性体からなり、中足(足21,22)と、これらを挟む外足(足23,24)と、足21〜24の両端に接続される接続部25,26とを備えて構成されている。そして、上記リアクトル用コイルWRは、足21に貫かれ、トランス用コイルW1は、足22に貫かれている。また、トランス用コイルW2は、足21,22の双方に貫かれている。
【0040】
トランス用コイルW1の巻き方は、次のように設定されている。すなわち、リアクトル用コイルWRからトランス用コイルW1に電流を流した場合、リアクトル用コイルWRおよびトランス用コイルW1の双方を貫くループ経路(足21,22を含む経路)において、トランス用コイルW1およびリアクトル用コイルWRのそれぞれに流れる電流によって誘起される磁束の方向が同一となるように設定されている。また、トランス用コイルW2の巻き方は、次のように設定されている。すなわち、リアクトル用コイルWRからトランス用コイルW2に電流を流した場合、リアクトル用コイルWRおよびトランス用コイルW2の双方を貫くループ経路(足21,23を含む経路、足21,24を含む経路)において、トランス用コイルW2およびリアクトル用コイルWRのそれぞれに流れる電流によって誘起される磁束の方向が同一となるように設定されている。
【0041】
上記足21は、磁性体同士が分断されて間に低透磁率部材Lμを挟みこんでいる部分を有する。これに対し、足22,23,24は、低透磁率部材Lμを挟むことなく、連続した磁性体からなる。図1には、足22,23,24の中央部に破線を記載しているが、これは、実際の製造工程に起因して生じうる間隙等を表現したものである。すなわち、製造工程の初期においては、この部分で足21〜24が2分され、2分されたそれぞれが接続部25,26のそれぞれに接合された部材が製造される。そして、それらにリアクトル用コイルWRおよびトランス用コイルW1,W2を巻いた後、2分されている磁心同士を接続することで複合磁気部品CMPが製造される。このため、図1に示す破線部は、厳密には、クリアランスを有する等、それ以外の部分と比較して磁性体の密度が小さくなり得る。
【0042】
上記トランス用コイルW1,W2は、ターン数が互いに等しいターン数Nとされる。ちなみに、ターン数とは、コイルの鎖交磁束をコイル内の磁束で割った値である。
【0043】
ここで、上記複合磁気部品CMPの動作原理を説明する。
【0044】
まず、足21を通る磁束φ1と、足22を通る磁束φ2とのそれぞれを、接続部26から接続部25に進む方向を正とする磁束であると定義する。また、リアクトル用コイルWRのターン数をターン数NRとし、リアクトル用コイルWRに流れる電流を電流IRとする。また、リアクトル用コイルWRとトランス用コイルW1,W2との接続点の電圧を電圧VJとする。また、トランス用コイルW1を流れる電流を電流IT1とし、トランス用コイルW1とスイッチング素子Sn1およびダイオードDp1の接続点の電圧を電圧VT1とする。さらに、トランス用コイルW2を流れる電流を電流IT2とし、トランス用コイルW2とスイッチング素子Sn2およびダイオードDp2の接続点の電圧を電圧VT2とする。加えて、足21のうち低透磁率部材Lμの部分の磁気抵抗を磁気抵抗Rとする。
【0045】
今、足21,23を備えるループ経路にアンペールの法則を適用すると、この経路における磁気抵抗は、低透磁率部材Lμ部分が他の部分と比較して十分に大きいため、以下の式(c1)が成立する。
【0046】
N・IT2+NR・IR=R・φ1 …(c1)
また、足21,22を備えるループ経路にアンペールの法則を適用すると、この経路における磁気抵抗は、低透磁率部材Lμ部分が他の部分と比較して十分に大きいため、以下の式(c2)が成立する。
【0047】
N・IT1+NR・IR=R・φ1 (c2)
また、足22,24を備えるループ経路にアンペールの法則を適用すると、この経路における磁性体が連続性を有するように構成されていることから、磁気抵抗を無視しうるとして、以下の式(c3)が成立する。
【0048】
N・IT1−N・IT2=0 …(c3)
一方、リアクトル用コイルWRとトランス用コイルW1,W2との接続点にキルヒホッフの法則を適用することで、以下の式(c4)が得られる。
【0049】
IT1+IT2=IR …(c4)
上記の式(c3),(c4)より、以下の式(c5)が成立する。
【0050】
IT1=IT2=IR/2 …(c5)
一方、磁束φ1,φ2の変化は、磁束密度の時間による偏微分に関するマックスウェル方程式によって以下のように定まる。
【0051】
NR・(dφ1/dt)=VR−VJ …(c6)
N・(dφ2/dt)=VT1−VJ …(c7)
N・{d(φ1+φ2)/dt}=VJ−VT2 …(c8)
上記の式(c7),(c8)より、以下の式(c9)が成立する。
【0052】
N・(dφ1/dt)=2VJ−VT1−VT2 …(c9)
上記の式(c6),(c9)より、以下の式(c10)が成立する。
【0053】
(NR+N/2)・(dφ1/dt)=VR−(VT1+VT2)/2 …(c10)
上記の式(c1),(c5)より、以下の式(c11)が成立する。
【0054】
(NR+N/2)・IR=R・φ1 …(c11)
上記の式(c10),(c11)より、以下の式(c12)が成立する。
【0055】
(1/R)・(NR+N/2)^2・(dIR/dt)
=VR−(VT1+VT2)/2 …(c12)
以上より、複合磁気部品CMPは、図2に示す回路おいて、トランスTを、1次側と2次側とのターン数が互いに等しい密結合変成器とした場合と等価である。
【0056】
すなわち、図2において、トランスTが密結合変成器であるとすると、以下の式(c13)が成立する。
【0057】
IT1=IT2 …(c13)
また、トランスTの1次側および2次側のターン数が互いに等しく、密結合変成器であることから漏れ磁束がないとみなすと、それらに誘起される電圧が互いに等しくなることから、以下の式(c14)が成立する。
【0058】
VJ=(VT1+VT2)/2 …(c14)
したがって、以下の式(c15)が成立する。
【0059】
(1/R)・(NR+N/2)^2・(dIR/dt)
=VR−VJ
=VR−(VT1+VT2)/2 …(c15)
また、上記の式(c5)については、上記の式(c13)に鑑みれば、図2の回路においても成立することは明らかである。
【0060】
図2に示す回路は、電流のリップルを低減する上で有効な回路である。すなわち、たとえば、先の図1に示したコンデンサ12を、一対の昇圧チョッパ回路で共有し、これら昇圧チョッパ回路をマルチフェーズ駆動する場合には、コンデンサ12のリップルを低減することができるとはいえ、各昇圧チョッパ回路のリアクトルの電流の増減周波数は、単一の昇圧チョッパ回路のスイッチング周波数と等しい。これに対し、図2に示す回路では、リアクトルの電流の増減周波数は、スイッチング素子Sn1,Sn2のスイッチング周波数の2倍となる。このため、スイッチング素子Sn1,Sn2のオン状態への切り替えるタイミングをスイッチング周期が均等分割されたタイミングとすることで(その位相差をπとすることで)、リップルを低減できることに加えて、リアクトルの小型化が可能である。さらに、リアクトル用コイルWRのうちトランス用コイルW1,W2の接続される側に印加される電圧は、上記の式(c15)からわかるように、「(VT1+VT2)/2」となる。これに対しマルチフェーズ駆動の場合には、各リアクトルのそれぞれに電圧VT1,VT2のそれぞれが印加される。このため、リアクトル用コイルWRの両端の電位差が小さくなるため、電流リップルが小さくなり、ひいてはリアクトルのさらなる小型化が可能である。
【0061】
ここで、本実施形態にかかるリアクトルは、これを単品にて製造した場合と比較して、インダクタンスが大きくなっていることに特徴がある。すなわち、リアクトル用コイルWRを、ターン数NRとし、単品にて製造する場合、磁気抵抗Rを同一とすると、インダクタンスは、「(1/R)・(NR)^2」となる。これに対し、本実施形態にかかるリアクトルは、リアクトル用コイルWRとトランス用コイルW1,W2の複合磁気部品によって構成されるが故、インダクタンスに、トランス用コイルW1,W2のターン数Nが関係する。これは、リアクトルがエネルギを蓄積する磁気経路(足21,23を備えるループ経路、足21,22を備えるループ経路、足21,24を備えるループ経路)がトランス用コイルW1,W2を貫くことに起因している。
【0062】
特に、トランス用コイルW1,W2の巻き方を上記のように設定することで、トランス用コイルW1,W2がリアクトルのインダクタンスを増加させる側に寄与している。このため、リアクトル用コイルWRのターン数を低減することができるため、2つの理由により複合磁気部品CMPを小型化することができる。すなわち、まず第1に、ターン数が減少することで、足21の長さを短くすることができる。第2に、ターン数が減少するために、リアクトル用コイルWRの配線抵抗が小さくなるため、その断面積を低減することができ、ひいては、足21,23間の間隔や、足21,22間の間隔を狭めることができる。
【0063】
上述したように、複合磁気部品CMPにおいては、上記の式(c5)が成立するため、トランス用コイルW1,W2を流れる電流IT1,IT2の一方の増加に伴って他方が増加し、一方の減少に伴って他方が減少する。しかも、これら電流値自体、互いに略等しくなる。このため、リアクトル用コイルWRを流れる電流IRは、トランス用コイルW1,W2に均等に分担される。したがって、スイッチング素子Sn1,Sn2やダイオードDp1,Dp2に流れる電流量を低減することができる。このため、それらの導通損失を低減することができる。また、スイッチング素子Sn1,Sn2のターンオフ損失を低減したり、スイッチング素子Sn1,Sn2のターンオフ時のサージ電圧を低減したりすることができる。
【0064】
さらに、先の図1に示す制御装置30によって、スイッチング素子Sn1,Sn2のオン状態への切り替え位相をπずらす場合、オン・オフの1周期に対するオン時間の時比率が「1/2」付近となることで、リップルを著しく低減することができる。すなわち、この場合、「VT1+VT2」は、コンデンサ12側の電圧となって且つ、コンデンサ12側の電圧は、コンデンサ10側の電圧の2倍となる。このため、上記の式(c12)より、「dIR・dt=0」となる。また、「IT1=IT2」であるため、出力電流のリップルは略ゼロとみなせる。
【0065】
さらに、本実施形態では、リアクトル用コイルWRとトランス用コイルW1,W2とを貫く足21,22が、四方を足23,24および接続部25,26によって囲われている。このため、これら足23,24および接続部25,26による電磁シールド効果のため、これら足23,24および接続部25,26に近接して電子部品を配置しつつも、磁気干渉を好適に回避することができる。このように、外側の足23,24や接続部25,26にコイルを設けない場合、足23,24や接続部25,26に囲われた足の数が増加しやすい。しかし、本実施形態では、トランス用コイルW2を、足21,22の双方によって貫くようにすることで、リアクトル用コイルWRおよびトランス用コイルW1の双方を貫くループ経路とリアクトル用コイルWRおよびトランス用コイルW2の双方を貫くループ経路との一対のリアクトル経路について、それらを互いに相違させつつも足の数を極力低減することができる。このため、複合磁気部品CMPの小型化に寄与する。
<第2の実施形態>
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0066】
図3に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。なお、図3において、先の図1に示した部材に対応するものについては、便宜上同一の符号を付している。
【0067】
本実施形態では、足21に限って透磁率の低い磁性体材料(ダストコアDC)を採用することで、磁心20において、足21の磁気抵抗と比較して他の磁気抵抗を無視しうるものとした。このように、フェライトと比較して磁気飽和密度の高いダストコアを採用することで、足21を小型化して複合磁気部品CMPをよりいっそう小型化できることに加えて、ギャップを設けた場合と比較して漏れ磁束を低減することができることから、漏れ磁束がコイルに誘導する渦電流による損失増加を低減することもできる。
【0068】
また、本実施形態では、複合磁気部品CMPを用いて昇降圧コンバータを構成した。すなわち、トランス用コイルW1は、スイッチング素子Sp1,Sn1の接続点に接続され、トランス用コイルW2は、スイッチング素子Sp2,Sn2の接続点に接続されている。そして、スイッチング素子Sp1,Sn1は、互いに相補的に駆動され、スイッチング素子Sp2,Sn2も互いに相補的に駆動される。これにより、スイッチング素子Sn1、Sn2のオン・オフの1周期に対するオン時間の時比率と、コンデンサ10,12の電圧に応じて、コンデンサ10の電圧が昇圧されることで、その電気エネルギがコンデンサ12に移動するか、コンデンサ12の電圧が降圧されることで、その電気エネルギがコンデンサ10に移動するかが定まる。
<第3の実施形態>
以下、第3の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0069】
図4に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。なお、図4において、先の図1に示した部材に対応するものについては、便宜上同一の符号を付している。
【0070】
図示されるように、本実施形態では、リアクトル用コイルWRを足21,22の双方が貫くとともに、トランス用コイルW1,W2のそれぞれを足22,21のそれぞれが貫くようにした。そして、外側の足23,24に低透磁率部材Lμを設けた。これにより、トランス用コイルW1,W2を対称的なものとすることができる。すなわち、これらを互いに同一の長さ等とすることが容易となる。このため、これらの抵抗値のばらつきによってトランス用経路(足21,22を備えるループ経路)の交流磁束の変動量の平均値がゼロからずれる偏磁現象を好適に回避することができる。
【0071】
なお、本実施形態では、磁気エネルギ密度の大きい部分が一対の足23,24に分散することから、リアクトルのインダクタンスを第1の実施形態と同一とするうえでは、足23,24の断面積を、第1の実施形態の足21の断面積の「1/2」とすればよい。
【0072】
また、本実施形態では、複合磁気部品CMPを用いて、降圧コンバータを構成した。すなわち、スイッチング素子Sp1,Sp2がオンとなることで、コンデンサ12からコンデンサ10にエネルギが流出するとともに、コンデンサ12のエネルギがリアクトルに蓄積され、スイッチング素子Sp1,Sp2がオフとなることで、リアクトルに蓄積されたエネルギがコンデンサ10に供給される。この際、コンデンサ10には、コンデンサ12の充電電圧が降圧された電圧が印加される。
<第4の実施形態>
以下、第4の実施形態について、先の第3の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0073】
図5に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。なお、図5において、先の図1に示した部材に対応するものについては、便宜上同一の符号を付している。
【0074】
本実施形態でも、上記第3の実施形態と同様、トランス用コイルW1,W2のそれぞれを貫く磁心の双方によってリアクトル用コイルWRを貫く設定としている。ただし、本実施形態では、リアクトル用コイルWRを貫く磁心を、低透磁率部材Lμを介して接続部25,26に接続した。これにより、低透磁率部材Lμについても四方を磁心20の一部(足23,24および接続部25,26)に囲われるため、他の箇所と比較して漏れ磁束が多くなる低透磁率部材Lμからの漏れ磁束が、磁心20の外部へと流出する事態を好適に抑制することができる。このため、足23,24および接続部25,26の近くに電子部品を配置したとしても、磁気干渉を好適に回避することができる。
【0075】
なお、本実施形態では、複合磁気部品CMPを用いて昇降圧コンバータを構成した。
<第5の実施形態>
以下、第5の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0076】
図6に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。なお、図6において、先の図1に示した部材に対応するものについては、便宜上同一の符号を付している。
【0077】
図示されるように、本実施形態では、磁心20に足27を追加するとともに、トランス用コイルW3を追加した。そして、トランス用コイルW3が足27によって貫かれるようにして且つ、トランス用コイルW2が足21,22,27によって貫かれるようにした。ここで、トランス用コイルW2が足21,22,27によって貫かれるようにしたのは、先の第1の実施形態において説明したように、足の数を低減するためである。
【0078】
この回路の動作は、上記第1の実施形態と同様に考えることで、以下の式(c16),(c17)によって記述される。
【0079】
(1/R)・(NR+N/3)^2・(dIR/dt)
=VR−(VT1+VT2+VT3)/3 …(c16)
IT1=IT2=IT3=IR/3 …(c17)
この回路は、図7に示す回路において、トランスT1,T2,T3を密結合変成器として且つ3つのトランス用コイルのターン数を互いに等しくしたものと等価となる。
【0080】
本実施形態にかかる回路によれば、スイッチング素子Sn1,Sn2,Sn3のオン状態への切替位相を、オン・オフ操作の一周期をトランス用コイルW1〜W3の数で均等分割した期間ずつずらすことで(互いに「2π/3」ずつずらすことで)、電流のリップルを十分に低減することができる。さらにこの際、コンデンサ12の電圧がコンデンサ10の電圧の「3」倍程度となる場合、コンデンサ12のリップルが著しく小さくなる。
<第6の実施形態>
以下、第6の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0081】
図8に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。なお、図8において、先の図1に示した部材に対応するものについては、便宜上同一の符号を付している。
【0082】
図示されるように、本実施形態では、磁心20に、足27,28を追加した。ここで、足27は、磁性体の連続性を保った構成であり、足28は、磁性体が低透磁率部材Lμによって分断された構成である。
【0083】
そして、足27は、トランス40の1次側コイルTW1および2次側コイルTW2を貫く。1次側コイルTW1は、フルブリッジ回路42に接続され、2次側コイルTW2は、全波整流回路44に接続されている。全波整流回路44には、リアクトルRWの一方の端子が接続され、リアクトルRWの他方の端子は、出力コンデンサ46に接続されている。そして、リアクトルRWは、足28によって貫かれている。
【0084】
こうした構成によれば、トランス40、フルブリッジ回路42、全波整流回路44、リアクトルRWおよび出力コンデンサ46を備える絶縁コンバータの磁気部品と、第1の実施形態にかかる磁気部品とで磁心20を共有することができる。ここで、トランス40の磁束の経路は、足27および足23を備えるループ経路や、足27および足24を備えるループ経路である。また、リアクトルRWの磁束の経路は、足28および足23を備えるループ経路や、足28および足24を備えるループ経路である。
<第7の実施形態>
以下、第6の実施形態について、先の第3の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0085】
図9に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。なお、図9において、先の図4に示した部材に対応するものについては、便宜上同一の符号を付している。
【0086】
図示されるように、本実施形態では、磁心20に、足27,28を追加した。ここで、足27,28は、いずれも磁性体が低透磁率部材Lμによって分断された構成である。
【0087】
一方、コンデンサ12には、互いにターン数の等しいリアクトル50,52のそれぞれの一方の端子が接続されており、リアクトル50,52の他方の端子には、コンデンサ54が接続されている。そして、リアクトル50,52のそれぞれは、足27,28のそれぞれによって貫かれている。ここで、リアクトル50,52は、コンデンサ12およびコンデンサ54間の差圧が印加されることで、足27,28を備えるループ経路において、大きさおよび向きが互いに等しい磁束を誘起するように設定されている。この場合、リアクトル50,52の誘起する磁束が足21〜24に流出する事態を好適に回避することができる。
【0088】
なお、本実施形態では、スイッチング素子Sn1,Sn2を、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)とする例を示した。
<第8の実施形態>
以下、第8の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0089】
図10に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。なお、図10において、先の図1に示した部材に対応するものについては、便宜上同一の符号を付している。
【0090】
本実施形態では、磁心20のうちトランス用コイルW1,W2の双方を貫くトランス用経路にも低透磁率部材Lμを備える。詳しくは、足22を磁性体が分断された構成として且つ、その間に低透磁率部材Lμを挟み込む。ここで、足22を選択したのは、磁心20のうちトランス用コイルW1,W2の双方を貫く経路上に必ず低透磁率部材Lμを備えるためである。
【0091】
こうした構成の場合、上記の式(c4),(c5)が成立しないため、トランス用コイルW1,W2のそれぞれを流れる電流IT1,IT2は、増加期間や減少期間が互いに同期したものとはならない。しかし、この場合、たとえばスイッチング素子Sn1をオン且つスイッチング素子Sn2をオフすることで、トランス用コイルW1を流れる電流IT1を徐々に増加させて且つ、トランス用コイルW2を流れる電流IT2を徐々に減少させることができる。したがって、トランス用コイルW2を流れる電流がゼロである場合にスイッチング素子Sn2をオンとするなら、スイッチング素子Sn2のターンオン操作を、ゼロ電流スイッチングとすることができる。このため、たとえばスイッチング素子Sp2をスーパージャンクションMOS電界効果トランジスタとするなど、ボディーダイオード(ダイオードDp2)のリカバリ電流が大きくなるものにあっては、ターンオン時のサージ電圧を低減するうえで特に有効である。
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0092】
「エネルギ蓄積用コイルと補助コイルとの磁束の方向について」
たとえば先の図1において、トランス用コイルW1,W2の巻き方を逆とすることで、リアクトル用コイルWRからトランス用コイルW1,W2に電流を流すことで、トランス用コイルW1,2に誘起される磁束の方向が図1の場合と逆となるようにしてもよい。この場合、インダクタンスは、「(NR−N/2)^2/R」となるため、同一のインダクタンスを得るためのターン数を増大させる必要が生じるとはいえ、所望のインダクタンスに調節するための一手法とはなり得る。
【0093】
「磁心について」
図1に例示されるように、いくつかの足21〜24と、その軸に直交する接続部25,26からなるものに限らない。たとえば、図1において、足23,24と接続部25,26をトロイダルコアに代え、その内周に足21,22を接続してもよい。この場合であっても、中間磁心部(足21,22)が磁心の一部に四方を覆われるため、磁気シールドの効果を有する。
【0094】
エネルギ蓄積用コイルや補助コイルを貫く部分が四方を磁心の一部で覆われた構成に限らない。たとえば上記第1の実施形態(図1)において、足23を削除してもよい(図11(a))。また、上記第3の実施形態(図4)において、足23を削除してもよい(図12(b))。こうした場合であっても、三方(24と接続部25,26側)は、シールドされているため、三方に他の回路を配置するなら、磁気シールドの効果を奏することができる。
【0095】
「補助コイルの数について」
2個または3個に限らず、4個以上であってもよい。この場合であっても、リアクトル用コイルWRと、補助コイルとのうちのいずれか1つを、中間磁心部の全てによって鎖交する構成とすることで、磁心を小型化することが可能となる。
【0096】
「補助コイル同士の電流の関係について」
補助コイルのうちの1つに流れる電流の増加の開始に伴って前記補助コイルのうちの残りに流れる電流が増加を開始し、前記補助コイルのうちの1つに流れる電流の減少の開始に伴って前記補助コイルのうちの残りに流れる電流が減少を開始する設定を設けない構成としては、上記第8の実施形態(図10)に例示したものに限らない。たとえば、足22をダストコアにて構成してもよい。
【0097】
リアクトル用コイルWRを流れる電流のリップルの増加を許容できるなら、トランス用コイルW1,W2のターン数を相違させてもよい。これにより、トランス用コイルW1,W2のそれぞれを流れる電流の絶対値が相違するようになる。また、この場合、リアクトル用コイルWRは、単一のリアクトルとしては振舞わず、トランス用コイルW1,W2と疎結合した磁気部品となる。
【0098】
「第2流通規制要素の開閉操作について」
たとえば、上記第1の実施形態(図1)において、スイッチング素子Sn1,Sn2のオン状態への切り替えタイミングの位相差がπよりも小さい場合であっても、位相差がゼロでないなら、リップルを低減する効果はある。
【0099】
「鎖交磁心部について」
複数個の補助コイルおよび前記エネルギ蓄積用コイルのうちの特定の1つが、鎖交磁心部の全てによって貫かれる構成に限らない。たとえば、上記第1の実施形態(図1)において、トランス用コイルW1,W2のそれぞれを、接続部26のうち足21を挟む両側のそれぞれによって貫かれるようにしてもよい。こうした構成は、以下の技術的思想の一実施形態である。
【0100】
エネルギ蓄積用コイルの一端に接続された所定の複数個の補助コイルのそれぞれが、電流の流通方向を一方向に制限する整流機能を有する第1流通規制要素、および電流の流通経路を開閉する開閉機能を有する第2流通規制要素の直列接続体であって且つ各別の直列接続体の接続点のそれぞれに接続され、前記複数個の補助コイルのそれぞれに接続された前記第2流通規制要素を開閉操作することで、前記エネルギ蓄積用コイル側および前記補助コイル側のいずれか一方から他方へ電気エネルギを移動させる電気回路に適用され、前記エネルギ蓄積用コイル、および前記複数個の補助コイルのそれぞれを貫いて且つ一体的に形成された磁心を備え、前記磁心は、前記複数個の補助コイルおよび前記エネルギ蓄積用コイルのうちの一対の補助コイルのみを貫くループ経路であるトランス用経路と、前記複数個の補助コイルのそれぞれについて、前記複数個の補助コイルおよび前記エネルギ蓄積用コイルのうち1つの補助コイルおよび前記エネルギ蓄積用コイルのみを貫くループ経路であるリアクトル用経路とを構成し、前記エネルギ蓄積用コイルから一対の補助コイルに電流を流した際に該一対の補助コイルのそれぞれが対応するトランス用経路に誘起する磁束の方向が互いに逆となり、前記トランス用経路の磁気抵抗は、前記補助コイルのうちの1つに流れる電流の増加の開始に伴って前記補助コイルのうちの残りに流れる電流が増加を開始し、前記補助コイルのうちの1つに流れる電流の減少の開始に伴って前記補助コイルのうちの残りに流れる電流が減少を開始するように設定されていることを特徴とする。
【符号の説明】
【0101】
20…磁心、WR…リアクトル用コイル(エネルギ蓄積用コイルの一実施形態)、W1,W2,W3…トランス用コイル(補助コイルの一実施形態)、CMP…複合磁気部品、Sn1,Sn2…スイッチング素子(図1の場合、第2流通規制要素の一実施形態)、Dp1,Dp2…ダイオード(図1の場合、第1流通規制要素の一実施形態)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギ蓄積用コイルの一端に接続された所定の複数個の補助コイルのそれぞれが、電流の流通方向を一方向に制限する整流機能を有する第1流通規制要素、および電流の流通経路を開閉する開閉機能を有する第2流通規制要素の直列接続体であって且つ各別の直列接続体の接続点のそれぞれに接続され、前記複数個の補助コイルのそれぞれに接続された前記第2流通規制要素を開閉操作することで、前記エネルギ蓄積用コイル側および前記補助コイル側のいずれか一方から他方へ電気エネルギを移動させる電気回路に適用され、
前記エネルギ蓄積用コイル、および前記複数個の補助コイルのそれぞれを貫いて且つ一体的に形成された磁心を備え、
前記磁心は、
前記複数個の補助コイルおよび前記エネルギ蓄積用コイルの少なくとも1つを貫く複数の鎖交磁心部を備え、
前記複数個の補助コイルおよび前記エネルギ蓄積用コイルのうちの特定の1つ以外の残りは、それぞれ前記鎖交磁心部のうちの互いに相違するもの1つのみに貫かれ、
前記特定の1つは、前記残りのそれぞれを貫く鎖交磁心部の全てに貫かれ、
前記鎖交磁心部は、前記複数個の補助コイルおよび前記エネルギ蓄積用コイルのうちの一対の補助コイルのみを貫くループ経路であるトランス用経路と、前記複数個の補助コイルのそれぞれについて、前記複数個の補助コイルおよび前記エネルギ蓄積用コイルのうち1つの補助コイルおよび前記エネルギ蓄積用コイルのみを貫くループ経路であるリアクトル用経路との1部を構成し、
前記エネルギ蓄積用コイルから一対の補助コイルに電流を流した際に該一対の補助コイルのそれぞれが対応するトランス用経路に誘起する磁束の方向が互いに逆となることを特徴とする複合磁気部品。
【請求項2】
前記複数個の補助コイルのそれぞれについて、前記エネルギ蓄積用コイルから該補助コイルに電流を流すことで前記エネルギ蓄積用コイルによって誘起される磁束の方向と前記補助コイルによって誘起される磁束の方向とが、前記補助コイルと前記エネルギ蓄積用コイルとを貫く前記リアクトル用経路において互いに等しいことを特徴とする請求項1記載の複合磁気部品。
【請求項3】
前記磁心は、四方を該磁心の一部によって囲われた中間磁心部を複数備え、
前記中間磁心部は、前記鎖交磁心部を含むことを特徴とする請求項1または2記載の複合磁気部品。
【請求項4】
前記トランス用経路の磁気抵抗は、前記補助コイルのうちの1つに流れる電流の増加の開始に伴って前記補助コイルのうちの残りに流れる電流が増加を開始し、前記補助コイルのうちの1つに流れる電流の減少の開始に伴って前記補助コイルのうちの残りに流れる電流が減少を開始するように設定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合磁気部品。
【請求項5】
前記補助コイルのターン数を互いに等しい値に設定したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合磁気部品。
【請求項6】
前記磁心は、磁性体が分断された箇所を、前記リアクトル用経路および前記トランス用経路のうちの前記トランス用経路を含まない部分に限って備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合磁気部品。
【請求項7】
前記磁心は、前記リアクトル用経路および前記トランス用経路のうちの前記トランス用経路を含まない部分に限って透磁率の低い磁性体を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合磁気部品。
【請求項8】
前記磁心は、四方を該磁心の一部によって囲われた中間磁心部を前記複数個以上備え、
前記中間磁心部は、前記鎖交磁心部を含み、
前記エネルギ蓄積用コイルと、前記複数個の補助コイルのうちの特定の1つ以外の残りとは、それぞれ前記複数の中間磁心部のうちの互いに相違するもの1つのみに貫かれ、
前記特定の1つの補助コイルは、前記特定の1つ以外の残りと前記エネルギ蓄積用コイルとのそれぞれを貫く中間磁心部の全てに貫かれることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の複合磁気部品。
【請求項9】
前記磁心は、前記中間磁心部を前記複数個よりも多数備え、
前記中間磁心部のうち前記補助コイルおよび前記エネルギ蓄積用コイルのいずれも貫かないものが、前記エネルギ蓄積用コイルおよび前記補助コイル以外のコイルを貫くことを特徴とする請求項8記載の複合磁気部品。
【請求項10】
前記磁心は、四方を該磁心の一部によって囲われた中間磁心部を前記複数個以上備え、
前記中間磁心部は、前記鎖交磁心部を含み、
前記複数個の補助コイルは、それぞれ前記中間磁心部のうちの互いに相違するもの1つのみに貫かれ、
前記エネルギ蓄積用コイルは、前記補助コイルのそれぞれを貫く中間磁心部の全てに貫かれることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の複合磁気部品。
【請求項11】
前記中間磁心部は、前記補助コイルおよび前記エネルギ蓄積用コイルのいずれをも貫かない一対の中間磁心部を備え、
前記補助コイルおよび前記エネルギ蓄積用コイルのいずれをも貫かない一対の中間磁心部のそれぞれが、互いに同一の電圧が印加されて且つターン数が互いに等しい一対のコイルのそれぞれを貫き、
前記一対のコイルは、前記一対の中間磁心を備えるループ経路に誘起される磁束の方向が互いに等しいことを特徴とする請求項10記載の複合磁気部品。
【請求項1】
エネルギ蓄積用コイルの一端に接続された所定の複数個の補助コイルのそれぞれが、電流の流通方向を一方向に制限する整流機能を有する第1流通規制要素、および電流の流通経路を開閉する開閉機能を有する第2流通規制要素の直列接続体であって且つ各別の直列接続体の接続点のそれぞれに接続され、前記複数個の補助コイルのそれぞれに接続された前記第2流通規制要素を開閉操作することで、前記エネルギ蓄積用コイル側および前記補助コイル側のいずれか一方から他方へ電気エネルギを移動させる電気回路に適用され、
前記エネルギ蓄積用コイル、および前記複数個の補助コイルのそれぞれを貫いて且つ一体的に形成された磁心を備え、
前記磁心は、
前記複数個の補助コイルおよび前記エネルギ蓄積用コイルの少なくとも1つを貫く複数の鎖交磁心部を備え、
前記複数個の補助コイルおよび前記エネルギ蓄積用コイルのうちの特定の1つ以外の残りは、それぞれ前記鎖交磁心部のうちの互いに相違するもの1つのみに貫かれ、
前記特定の1つは、前記残りのそれぞれを貫く鎖交磁心部の全てに貫かれ、
前記鎖交磁心部は、前記複数個の補助コイルおよび前記エネルギ蓄積用コイルのうちの一対の補助コイルのみを貫くループ経路であるトランス用経路と、前記複数個の補助コイルのそれぞれについて、前記複数個の補助コイルおよび前記エネルギ蓄積用コイルのうち1つの補助コイルおよび前記エネルギ蓄積用コイルのみを貫くループ経路であるリアクトル用経路との1部を構成し、
前記エネルギ蓄積用コイルから一対の補助コイルに電流を流した際に該一対の補助コイルのそれぞれが対応するトランス用経路に誘起する磁束の方向が互いに逆となることを特徴とする複合磁気部品。
【請求項2】
前記複数個の補助コイルのそれぞれについて、前記エネルギ蓄積用コイルから該補助コイルに電流を流すことで前記エネルギ蓄積用コイルによって誘起される磁束の方向と前記補助コイルによって誘起される磁束の方向とが、前記補助コイルと前記エネルギ蓄積用コイルとを貫く前記リアクトル用経路において互いに等しいことを特徴とする請求項1記載の複合磁気部品。
【請求項3】
前記磁心は、四方を該磁心の一部によって囲われた中間磁心部を複数備え、
前記中間磁心部は、前記鎖交磁心部を含むことを特徴とする請求項1または2記載の複合磁気部品。
【請求項4】
前記トランス用経路の磁気抵抗は、前記補助コイルのうちの1つに流れる電流の増加の開始に伴って前記補助コイルのうちの残りに流れる電流が増加を開始し、前記補助コイルのうちの1つに流れる電流の減少の開始に伴って前記補助コイルのうちの残りに流れる電流が減少を開始するように設定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合磁気部品。
【請求項5】
前記補助コイルのターン数を互いに等しい値に設定したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合磁気部品。
【請求項6】
前記磁心は、磁性体が分断された箇所を、前記リアクトル用経路および前記トランス用経路のうちの前記トランス用経路を含まない部分に限って備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合磁気部品。
【請求項7】
前記磁心は、前記リアクトル用経路および前記トランス用経路のうちの前記トランス用経路を含まない部分に限って透磁率の低い磁性体を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合磁気部品。
【請求項8】
前記磁心は、四方を該磁心の一部によって囲われた中間磁心部を前記複数個以上備え、
前記中間磁心部は、前記鎖交磁心部を含み、
前記エネルギ蓄積用コイルと、前記複数個の補助コイルのうちの特定の1つ以外の残りとは、それぞれ前記複数の中間磁心部のうちの互いに相違するもの1つのみに貫かれ、
前記特定の1つの補助コイルは、前記特定の1つ以外の残りと前記エネルギ蓄積用コイルとのそれぞれを貫く中間磁心部の全てに貫かれることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の複合磁気部品。
【請求項9】
前記磁心は、前記中間磁心部を前記複数個よりも多数備え、
前記中間磁心部のうち前記補助コイルおよび前記エネルギ蓄積用コイルのいずれも貫かないものが、前記エネルギ蓄積用コイルおよび前記補助コイル以外のコイルを貫くことを特徴とする請求項8記載の複合磁気部品。
【請求項10】
前記磁心は、四方を該磁心の一部によって囲われた中間磁心部を前記複数個以上備え、
前記中間磁心部は、前記鎖交磁心部を含み、
前記複数個の補助コイルは、それぞれ前記中間磁心部のうちの互いに相違するもの1つのみに貫かれ、
前記エネルギ蓄積用コイルは、前記補助コイルのそれぞれを貫く中間磁心部の全てに貫かれることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の複合磁気部品。
【請求項11】
前記中間磁心部は、前記補助コイルおよび前記エネルギ蓄積用コイルのいずれをも貫かない一対の中間磁心部を備え、
前記補助コイルおよび前記エネルギ蓄積用コイルのいずれをも貫かない一対の中間磁心部のそれぞれが、互いに同一の電圧が印加されて且つターン数が互いに等しい一対のコイルのそれぞれを貫き、
前記一対のコイルは、前記一対の中間磁心を備えるループ経路に誘起される磁束の方向が互いに等しいことを特徴とする請求項10記載の複合磁気部品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−115298(P2013−115298A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261505(P2011−261505)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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