説明

複合素材の染色方法及びその方法により染色された複合素材

【課題】 合成ポリアミド繊維を含有する複合素材を、異種染料の一浴方式での混成染色により、同色にもしくは鮮鋭な異色に染色する方法、又は該複合素材に、明白な白残し染色をする方法、及びこれらの染色方法により染色された付加価値の高い複合素材を提供する。
【解決手段】 ナイロンと綿の複合素材を所定条件で染色したときの、ナイロンの濃度と綿の濃度の比、及びナイロンを酸性条件で染色した場合と中性条件で染色した場合の濃度比が所定の範囲内となるHN染料を用いて、一浴方式で、合成ポリアミド繊維を含有する複合素材の浸染を行い、浸染後にアルカリ還元を行うことを特徴とする複合素材の染色方法、及びこの染色方法により染色された複合素材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成ポリアミド繊維を含有する複合素材、例えば合成ポリアミド繊維及びセルロース繊維、ポリアクリル又はポリエステル等を含有する複合素材を染色する方法であって、該複合素材を、異種染料の混成染色により同色にもしくは鮮鋭な異色に染色する方法、又は明白な白残し染色をする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、繊維製品に対する消費動向の多様化に伴い、複合素材の需要が伸びている。これらの複合素材を構成する各繊維素材間では、染料への染着性が大きく異なる場合が多いので、各繊維素材を、別浴で別個に染色する方法が採用されているが、この方法では、工程が長くなり経済的に著しく不利である。そこで複合素材を、一浴方式で同色に染めることができる染料や染色方法が望まれていた。
【0003】
本発明者らは、硫酸ナトリウムを多量に用いることにより、合成ポリアミド繊維及びセルロース繊維等からなる複合素材を、セルロース繊維と共有結合する反応染料により、濃厚かつ堅牢に染色する方法(特開平7−97777号公報)や、中性及び酸性における合成ポリアミド繊維の染色物の濃度比及び補正色差が特定の範囲内にある反応染料を用いることを特徴とする均染染色方法(特開2002−194680号公報)を提案し、これらの方法により、複合素材を一浴方式で同色に染色することができるようになった。
【0004】
しかし、複合素材については、同色での染色に加えて、各素材間を明確な異色に染色する異色染色や、複合素材中の一成分の繊維を染色せずに残す白残し染色によっても極めて付加価値のある染色製品が得られると期待されている。従って、前記のような同色に染色する方法とともに、異色染色法や白残し染色法の開発も望まれている。
【0005】
又、セルロース繊維主体に用いられてきた軍服やレンジャー隊の制服についても、その機能性、軽量化、耐久性を指向した合成ポリアミド/セルロース等の複合素材の適用が望まれてきており、これらの複合素材を、いわゆる迷彩色に染める方法の開発も望まれている。
【特許文献1】特開平7−97777号公報
【特許文献2】特開2002−194680号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、合成ポリアミド繊維を含有する複合素材を、異種染料の一浴方式での混成染色により、同色に、もしくは鮮鋭な異色に染色する方法、又は該複合素材に、明白な白残し染色をする方法を提供することを課題とする(課題1)。本発明はさらに、その染色方法により染色された付加価値の高い複合素材を提供することを課題とする(課題2)。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題1は、
6−ナイロンジャージ及び未シルケット綿ニットを、1:1の重量比で、
硫酸ナトリウム40〜80g/lを加えたpH6.3〜7.0、浴比1:20の染浴で、Navy染料については5%o.w.f.、Black染料については10%o.w.f.、Navy染料及びBlack染料以外の染料については2%o.w.f.で染色した場合の、6−ナイロンジャージの濃度をNPAとし、未シルケット綿ニットの濃度をNCとし、
硫酸ナトリウム40〜80g/l及び酢酸1%o.w.f.を加えた浴比1:20の染浴で、2%o.w.f.で染色した場合の、6−ナイロンジャージの濃度をAPA、未シルケット綿ニットの濃度をACとしたとき、
NPA/NCが200%以上、APA/ACが200%以上、APA/NPAが80〜200%かつそれぞれの補正色差が5.0以下であるHN染料を用いて、一浴方式で、合成ポリアミド繊維を含有する複合素材の浸染を行い、浸染後にアルカリ還元を行うことを特徴とする複合素材の染色方法(請求項1)
により達成される。
【0008】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、ナイロンと綿の複合素材を所定条件で染色したときの、ナイロンの濃度と綿の濃度の比、及びナイロンを酸性条件で染色した場合と中性条件で染色した場合の濃度比が所定の範囲内となる染料、すなわち前記HN染料を用いて、又はHN染料を異種染料(アルカリ還元性染料)と混成して用いて浸染を行い、その後アルカリ還元を行うことにより、前記課題が達成されることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
分散染料による染色とアルカリ還元の組合せは、ポリエステル又はポリエステルを含む複合素材の染色においては、従来も行われて来た。
【0010】
例えば、ポリエステルやポリエステル/セルロース複合素材の染色において、分散染料でポリエステル側を染色した後、苛性ソーダとハイドロサルファイト等によるアルカリ還元洗浄により、ポリエステル繊維表面に付着している未染着の分散染料やセルロース繊維内に付着している分散染料を、還元分解しその後の洗浄により除去している(還元洗浄:Reduction Clearing)。これは、高温時にポリエステル繊維内に拡散し温度低下により固溶化してポリエステル繊維内に染着した分散染料は、100℃未満では、アルカリ性での強い還元作用によっても全く分解されないが、繊維表面の未染着染料は容易に分解され、同浴中の洗浄剤により除去されることに基づくものである。
【0011】
又、ポリエステル/セルロース複合素材等のポリエステルを含む複合素材の染色において、分散染料及び還元性染料を含む複合染料を用い、ポリエステル側を、130℃前後の高温染色や180℃〜220℃でのサーモゾール染色等の通常の染色方法で染色した後、苛性ソーダとハイドロサルファイト等によるアルカリ還元を行い、セルロース繊維に還元性染料を染着させると同時に、ポリエステル繊維表面に付着している未染着の分散染料やセルロース繊維内に付着している分散染料を、還元分解し洗浄により除去する方法も行われている。
【0012】
この方法は、還元性染料の染着と同時に還元洗浄が行われるという非常に効果的な方法であり、又昇華、湿潤等の諸堅牢度を向上させる合理的な染色方法として、100%ポリエステル素材の吸尽バッチ染色や、ポリエステルとセルロース繊維との複合繊維素材の連続染色等に広く用いられており、これらの染色分野の大きな発展に寄与してきた。
【0013】
これに対して、合成ポリアミド繊維を酸性染料、酸性含金属染料を用いて酸性浴でイオン結合により染着する染色方法や、合成ポリアミド繊維や合成ポリアミド繊維とセルロース繊維等からなる複合繊維素材を、スルホン酸基を有する反応染料を用いて染色する染色方法においては、アルカリ性の還元剤との組合せや、還元性染料との組合せで染色する例は全く見出されていない。これらの水溶性の染料は、一般の還元剤によって容易に分解されてしまうと考えられていたからである。
【0014】
しかし本発明者の検討の結果、合成ポリアミド繊維へ染着した酸性含金属染料、分散染料及び反応染料、並びに一部の酸性染料は、(酸性での還元作用では染料の分解が認められるが、予想に反して)アルカリ性浴でのアルカリ還元に対して、ほとんど分解されないという事実が見出された。
【0015】
そこで、前記染料であって、合成ポリアミド繊維への染着力が大きく一方合成ポリアミド繊維以外への染着力が小さいものと、アルカリ還元性染料を混成して、一浴方式で浸染染色と、アルカリ還元を行うことにより、合成ポリアミド/セルロース複合素材を、同色に、又は鮮明な異色に染色できることを見出した。さらに、前記染料による浸染染色とアルカリ還元との組合せにより、合成ポリアミド/セルロース複合素材を染色し、セルロース側の染料を抜染すれば、すなわちセルロース繊維に汚染または染着した染料を除去することにより、明白な白残し染色が可能であることを見出し、本発明に至った。
【0016】
本発明の染色方法により、染色される合成ポリアミド繊維を含有する複合素材とは、合成ポリアミド繊維とともに、ポリアクリル、ポリエステル(カチオン染料可染ポリエステルを含む。)等の合成繊維や、セルロース繊維等を含有する複合素材である。中でも、合成ポリアミド繊維とともにセルロース繊維を含有する複合素材に、本発明の染色方法は好適に用いられる。請求項2は、この好ましい態様に該当する。
【0017】
本発明の染色方法は、前記のHN染料を用いることを特徴とする。HN染料は、合成ポリアミド繊維に対し大きな染着力を示し、一方、同浴にセルロース繊維等が存在してもそれら繊維への染着力は小さい。そしてセルロース繊維等に付着したHN染料はアルカリ還元により容易に除去される。すなわち、HN染料のこの特徴は、セルロース繊維部分等を明白な白残し(白抜)にするために、又はセルロース繊維部分等を同色、鮮明な異色に染めるために非常に有利に作用する。本発明は、合成ポリアミド繊維に大きな染着力で染着したHN染料はアルカリ還元により除去されないこと、及び他の繊維に付着しているHN染料はアルカリ還元により容易に除去されることがともに見出されて完成されたものである。
【0018】
本発明の染色方法は、一浴方式で浸染する染色方法である。HN染料とアルカリ還元性染料を混成して用いる染色においては、一浴方式であれば、HN染料とアルカリ還元性染料を混合して染浴に添加する方式でもよいし、HN染料による合成ポリアミド繊維の染色がされた後に、アルカリ還元性染料を添加して還元染色を行う方式のいずれもが含まれる。一浴方式であるので、高い生産性が得られる。浸染とは、被染色物を、染料を溶解又は分散した染浴に浸して、該染料を該被染色物に吸着させ、固着させる染色法を意味し、吸尽バッチ染色や連続染色等が含まれる。
【0019】
本発明の染色方法では、浸染後にアルカリ還元が行われる。アルカリ還元とは、アルカリ性下でされる還元を意味する。通常、染浴をアルカリ性にするアルカリ剤と、アルカリ性下で還元作用をする還元剤を用いて行われる。アルカリ還元は、好ましくは、20℃のpHが9.0〜12.5のアルカリ剤と、そのアルカリ性浴、すなわち20℃のpHが9.0〜12.5の浴での還元電位(−mV)が300〜1200を示す還元剤を含有する還元浴を用いて行われる。請求項3は、この好ましい態様に該当する。
【0020】
アルカリ還元後、通常の染色の場合と同様に、洗剤等による洗浄が行われる。このアルカリ還元と洗浄により、合成ポリアミド繊維以外の繊維、例えばセルロース繊維に付着していたHN染料が除去される。一方、合成ポリアミド繊維に染着したHN染料は除去されず、ほとんど影響されない。
【0021】
本発明の染色方法の一態様は、HN染料とともにアルカリ還元性染料を混成して用いる特徴とする複合素材の染色方法である。請求項4はこの態様に該当する。ここで、混成とは、2種以上の染料を共に用いることを意味し、HN染料による合成ポリアミド繊維の染色がされた後に、アルカリ還元性染料を添加する方式等も含まれ、HN染料とアルカリ還元性染料を混合して染浴に添加する方式に限定されない。
【0022】
ここでアルカリ還元性染料とは、アルカリ還元される前は水に不溶であるが、アルカリ性下で還元されて水に可溶になり、綿等の繊維に染着し、その後酸化剤により酸化されて水に不溶になり繊維に固着する染料である。アルカリ還元性染料としては、バット染料、硫化染料又はインジゴ染料が例示される。請求項5は、この態様に該当し、前記のHN染料とともにアルカリ還元性染料を混成して用いる特徴とする複合素材の同色染色又は異色染色の方法であって、アルカリ還元性染料が、バット染料、硫化染料及びインジゴ染料から選ばれることを特徴とする染色方法を提供するものである。
【0023】
請求項4の態様の染色方法により、複合素材を同色に、又は異色に染色することができる。HN染料により合成ポリアミド繊維側が染色される。一方、合成ポリアミド繊維以外の側、例えばセルロース繊維側はHN染料によりあまり染色されず、浸染後にされるアルカリ還元及び洗浄により、セルロース繊維等の側のHN染料はほとんど除去される。
【0024】
複合素材を同色に染色する場合は、同じ色相のHN染料とアルカリ還元性染料を用い、両者を混成して浸染を行う。セルロース繊維等の側に付着しているHN染料は、アルカリ還元及び洗浄により除去されるので、セルロース繊維等の側は、アルカリ還元性染料のみにより染色される。従って、HN染料と同じ色相のアルカリ還元性染料を用いれば、合成ポリアミド繊維側とセルロース繊維等の側が同色に染色された複合素材が得られる。
【0025】
複合素材を構成する繊維のそれぞれを異色に染色する場合、互いに異なった色相のHN染料とアルカリ還元性染料を用い、両者を混成して浸染を行う。請求項6は、この態様に該当し、前記請求項4の染色方法であって、アルカリ還元性染料の色相がHN染料の色相とは異なり、合成ポリアミド繊維と他の繊維を異色に染色することを特徴とする染色方法を提供するものである。
【0026】
同色の場合と同様、セルロース繊維等の側に付着しているHN染料は、アルカリ還元及び洗浄により除去されるので、セルロース繊維等の側は、アルカリ還元性染料のみにより染色される。又アルカリ還元性染料としては、合成ポリアミド繊維をほとんど染色しないものが望ましい。このようなアルカリ還元性染料を用いれば、合成ポリアミド繊維側とセルロース繊維等の側は、それぞれHN染料とアルカリ還元性染料の一方のみより染色され、合成ポリアミド繊維側とセルロース繊維等の側それぞれの濃度等の調整が容易となるとともに、合成ポリアミド繊維の色相がアルカリ還元性染料に影響されることがないので、より鮮明な異色染めが得られる。
【0027】
前記請求項4の染色方法は、合成ポリアミド繊維を含有する複合素材を、一浴方式で迷彩色に染色する方法へも好適に適用できる。請求項7は、この態様に該当し、前記請求項4の染色方法であって、迷彩色の染色を得ることを特徴とする複合素材の染色方法を提供するものである。
【0028】
迷彩色は、軍服やレンジャー隊の制服に広く適用されている色であり、Green系、Brown系や、Khaki、Grey又はOliveの色相が用いられるとともに、赤外線カメラによる写真に対して迷光であることが重要な特徴である。さらに軍服やレンジャー隊の制服用としては、全ての堅牢度が優れることが求められている。しかし従来は、前記のような色相の染料を用い、機能性、軽量化、耐久性に優れた合成ポリアミド/セルロース等の複合素材を、一浴方式で迷彩色に染め、かつ高い堅牢度を得る方法は見出されていなかった。
【0029】
本発明者は検討の結果、Green系、Brown系、Khaki、Grey又はOliveの色相を有し、赤外線カメラによる写真に対して迷光であるとの特性を有する染料を、HN染料及びアルカリ還元性染料として用い、前記請求項4の染色方法を行えば、合成ポリアミド/セルロース等の複合素材を、一浴方式で容易に迷彩色に染色することができ、又全ての堅牢度が優れている染色物が得られることを見出したのである。本発明により、合成ポリアミド/セルロース等の複合素材を用いた軍服やレンジャー隊の制服を、優れた生産性で迷彩色に染色できる。
【0030】
前記請求項7の染色方法において、合成ポリアミド繊維を含有する複合素材が、さらに合成ポリアミド繊維以外の合成繊維から選ばれる少なくとも1種の繊維を含有し、さらにHN染料及びアルカリ還元性染料以外の合成繊維用の染料を用いて浸染を行うと、多色から構成される迷彩色を得ることができるので、好ましい。
【0031】
本発明の染色方法は、複合素材の白残し染色にも適用できる。請求項8は、この態様に該当するものである。
【0032】
すなわち、HN染料による浸染染色とアルカリ還元との組合せにより、合成ポリアミド繊維を含有する複合素材、例えば合成ポリアミド繊維とセルロース繊維を含有する複合素材を染色すれば、セルロース繊維等に汚染または染着した染料は、アルカリ還元により容易に除去されて(抜染)、合成ポリアミド繊維側のみが染色された(白残し染色)された染色物を得ることができる。この方法により明白な白残し染色を得ることができる。
【0033】
本発明は、その請求項9において、前記の染色方法により染色されたことを特徴とする合成ポリアミド繊維を含有する複合素材を提供する。この複合素材は、合成ポリアミド繊維を含有する複合素材の優れた特徴を有するとともに、複合素材を構成する複数の素材が、同色に、鮮明な異色に、又明白な白残しに染色され、優れた堅牢度も達成され、高い付加価値を有するものである。
【発明の効果】
【0034】
本発明の複合素材の染色方法により、合成ポリアミド繊維を含有する複合素材を、一浴方式の高い生産性で、同色に、鮮明な異色に、又明白な白残しに染色することができる。この染色方法は、非常に多様な浸染染色に応用可能であって、染色の合理化、省エネルギー、品質の向上に役立つばかりでなく、鮮明な水溶性染料の特徴と堅牢で迷彩色性のある還元性染料の特徴を十分に発揮させるものであり、機能性、耐久性及びファッション性のある染色加工を提供するものである。
【0035】
従って、この染色方法により得られる本発明の複合素材は、複合素材を構成する複数の素材が、同色に、鮮明な異色に、又明白な白残しに染色されたものであり、この複合素材を用いて高い付加価値を有する製品を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
HN染料は、合成ポリアミドに良好に染着して、40°Be’苛性ソーダ15ml/l、還元剤であるハイドロサルファイト5g/lを含有する浴比1:20、温度60℃で15分のアルカリ還元条件に耐える、酸性染料、酸性含金属染料、分散染料、および反応染料から選ばれる水溶性の染料である。従来は、これらの水溶性の染料の全てがアルカリ還元により分解されると考えられていたが、本発明者は、合成ポリアミドに染着したこれらの染料はアルカリ還元により分解されず、本発明においてHN染料として有効に用いられることを見出した。又、分散染料としては、合成ポリアミド繊維によく染着して堅牢なものが好ましく用いられる。このようなHN染料としては、下記の染料が好ましく例示される。
【0037】
Sumifix Yellow 2GL、Sumifix Yellow GR、Sumifix Golden Yellow GG、Sumifix Brill Red G、Sumifix Brill Red 7BF、Sumifix Supra Brill Red BSF、Sumifix Supra Rubine Red E−XF、Sumifix Brill Red BB、Sumifix Supra Brill Red GF、Sumifix Brill Orange 3R、Sumifix Brill Blue R、Sumifix Brill Orange GRS、Sumifix Turq Blue G(n)、Sumifix Supra Blue BRF、Sumifix Black B、Sumifix Black E−XF、Sumifix Black EX、Sumifix Supra Scarlet 2GF、Realan Yellow G、Realan Gold Yellow RC、Realan Red G、Realan Turquoise G、Realan Red RC、Levafix Royal Blue E−FR、Realan Blue B、ReaNova Yellow CA、ReaNova Navy CA、Realan Blue RC、Realan Black G、Cibacron Yellow H−2G、Cibacron Orange C−3R、Cibacron Yellow F4G、Cibacron Yellow C−R、Cibacron Black C−2R、Lanyl Bv Yellow 3G、Lanyl Yellow G、Lanyl Yellow GR、Lanyl Orange R、Lanyl Red B、Lanyl Blue 3G、Lanyl Brill Blue G、Lanyl Navy Blue TW、Aminyl Black F−GL、Lanyl Grey BG、Neutrichrome Bordeux M−B、Sumikaron Turquoise Blue S−GL、Sumikaron Turquoise Blue 76、Sumikaron Blue S−BBL、Sumikaron Yellow E−RPD、Sumikaron Red E−RPD、Sumikaron Red E−FBL、Sumikaron Blue E−RPD、Sumikaron Blue E−FBL、Sumikaron UL Blue GF、Sumikaron Brill Red S−BLF、Sumikaron Brill Pink SE−RL(n)、Miketon Polyester Red 2BSF及びKayalon Polyester Blue KSF、Telon Turquoise M−GGL、Suminol Milling Brill Green 5G。
【0038】
アルカリ還元性染料としては、前記のようにバット染料、インジゴ染料、および硫化染料等から容易に選択することができるが、水溶性のHN染料との混成染色に供することから、染料の形態としては、水に分散型および水溶性型の還元性染料が望ましい。このような形態の染料を用いることにより、連続式を含む多様な浸染染色が可能となる。
【0039】
高温では合成ポリアミドへの還元性染料の染着が生じやすく、白残し染色または異色染めの場合には、アルカリ還元性染料の合成ポリアミドへの染着が少ない方が望ましいので、アルカリ還元性染料としては、低温染色(40〜70℃)の可能なバット染料が有利である。
【0040】
迷彩色の異色染めの場合にも、Brown、Olive、GreenおよびGrey等の色相を有し、赤外線の反射特性のあるバット染料が好ましく用いられる。合成ポリアミド繊維とセルロース繊維を同色性に染める場合には、C.I.Vat Green 1等のバット染料が、合成ポリアミド繊維とセルロース繊維を略々同色にそして堅牢に染めるので、最も堅牢で耐久性の染色物を得るのに適している。このような方法により得られる合成ポリアミド繊維とセルロース繊維の複合素材の染色物は、軽量で吸湿性、乾燥性に優れるので、軍服等の制服の機能性向上に大いに役立つ。
【0041】
一方、硫化染料は、Green、NavyおよびBlack染料の中で、セルロース繊維を最も濃く染める染料として知られており、セルロース繊維側を濃く染める用途に好適に用いられる。又、インジゴ染料は、合成ポリアミド繊維とセルロース繊維からなる複合素材(ポリアクリル、ポリエステルを含有していてもよい。)のジーンズ調の青色の染色に好ましく用いられる。
【0042】
バット染料としては、次に示す染料が好ましく例示される。C.I.Vat Yellow 2、Vat Yellow 33、Vat Orange 9、Vat Orange 15、Vat Orange 2、Vat Red 10、Vat Violet 13、Vat Blue 6、Vat Blue 14、Vat Blue 64、Vat Green 1、Vat Green 3、Vat Green 13、Vat Black 25、Vat Black 27、Vat Brown 1、Vat Brown 3、Vat Brown 68、Vat Brown 72、Vat Blue 72、Vat Black 8、Vat Black 9、Mikethrene Yellow GCN、Yellow 3GL、Brill Pink R、Brill. Green FFB 1、Red F3B、Brown GGS、Brown BR、Olive MW(ダイスター社製)、Brown GS、Brown 5RN、Brown RP、Grey CL、Direct Black RB。
【0043】
インジゴ染料としては、次に示す染料が好ましく例示される。Mitsui Indigo Pure Exn(ダイスター社製)。
【0044】
硫化染料としては、次に示す染料が好ましく例示される。C.I.Sol.Sulpfur Yellow 24、C.I.Sol.Sulpfur Orange 1、Sol.Sulpfur Blue 2、Sol.Sulpfur Blue 5、Sol.Sulpfur Blue 7、Sol.Sulpfur Blue 15、Sol.Sulpfur Red 2、Sol.Sulpfur Brown 12、Sol.Sulpfur Brown 52、Sol.Sulpfur Brown 52、Sol.Sulpfur Brown 97、Sol.Sulpfur Green 3、Sol.Sulpfur Black 1、C.I.Sol.Sulpfur Green 14、Sulpfur Green 3、Kayaku Homodye Yellow GNF−S、Orange 2RF−S、Red Brown RF−S、Blue RBL−S、Olive KL−S、Olive WF−S、Black RL−S、Black GL−S以上、Kayaku Homodye(日本化薬社製)。
【0045】
アルカリ還元に用いられるアルカリ剤としては、20℃のpH9.0〜12.5のアルカリ剤が好ましく選定される。ここで20℃のpH9.0〜12.5のアルカリ剤とは、このアルカリ剤の濃度1重量%以上の水溶液の20℃のpHがこの範囲であるアルカリ剤を意味する。アルカリ還元に用いられる還元剤としては、前記のように所定の範囲の還元電位(−mV)を示す還元剤が好ましい。
【0046】
さらに、用いられる染料の種類、特に染料の還元されやすさ、染色時の染料の濃度、設定される染色温度等に基づいて、アルカリ剤や還元剤の種類や使用量が選定される。
【0047】
例えば、バット染料は、還元によって酸化体から還元体となり、同浴中のアルカリで例えばNa−ロイコ体となって水に溶解し、セルロース繊維に速やかに染着した後、酸化処理によって、繊維内で再び酸化体となるが、そのまま繊維内に凝固して強い染着が形成される。この時のNa−ロイコ体の還元電位は約400〜1100(−mV)であり、この数値が大きいほど難還元性であり、一方600(−mV)以下の染料は易還元性である。そこで、この還元性とともに、染色の温度、アルカリの使用量等を考慮して、還元剤の種類や使用量が選定される。
【0048】
より具体的には、難還元性のバット染料に対しては、その染料のロイコ体の還元電位より還元電位が高い還元剤であるハイドロサルファイト、二酸化チオ尿素、またはナトリウムボロハイドライドが、一般に苛性アルカリ浴で用いられる。この場合の標準的な染色条件は、染色温度が55〜70℃と高く、還元剤量は、ハイドロサルファイトで5〜25g/l、苛性ソーダ量は5〜25g/l、染色時間が30〜60分程度である。
【0049】
易還元性のバット染料又はインジゴ染料に対しても、ハイドロサルファイトが用いられる。しかし、この場合は、苛性ソーダは2.5〜12.5g/l(難還元性のバット染料の場合の約半分)、温度は40〜55℃、及び硫酸ナトリウムは20g/lの比較的弱い染色条件が適する。また、この種の染料は均染性がよいので、淡い色の染色にも用いられるので、弱いアルカリ剤として炭酸ナトリウムや、弱い還元剤として、酸性亜硫酸ソーダ、亜硫酸ソーダ、またはぶどう糖(D−グルコース)等も使用することができる。
【0050】
必要により80〜95℃程度の高い染色温度を採用する場合には、ハイドロサルファイト(ソジウムハイドロサルファイト)より高温で安定なレドールC(ジンクホルムアルデヒドスルホキシレート)等の還元剤を用いることができる。なお、これら薬剤を用いる染料条件は、比較的高温(80〜100℃)を必要とする硫化染料を使用する染色にも好ましく適用することができる。
【0051】
硫化染料を使用する染色には、硫化染料の染色に一般的に用いられている硫化ソーダ、水硫化ソーダも還元剤として使用できる。しかし、高温(80〜100℃)で染色する方式では、息気の問題がある。そこで、硫化染料として近年市販されている水に分解または溶けるタイプの染料を用いて、バット染料の還元染色と同様に、苛性ソーダとハイドロサルファイトを使用する方法が好ましく挙げられる。
【0052】
次に、本発明の染色方法の中の同色染色、すなわち合成ポリアミド繊維側と他の素材側を同じ色相に染める混成染色方法について、その好ましい一態様を挙げ、より具体的に述べる。本発明の同色染色は、この態様に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で各種の変更が可能である。
【0053】
この態様では、分散染料、酸性含金属染料および鮮明な反応染料からなるGreen HN染料と、還元性染料としてGreenのバット染料との混成染料が用いられる。より具体的には、Green HN染料は、C.I.Disperse Blue 60、C.I.Acid Blue 127、C.I.Reactive Yellow 37および反応染料であるRealan Yellow G(ダイスター社製)からなる染料であり、バット染料としては、同色性で還元染色時に合成ポリアミド繊維にもやや染着するものの、堅牢度が良好なC.I.Vat Green 1が用いられる。
【0054】
先ず前記Green HN染料及びバット染料の混成染料を用いて、硫酸ナトリウム、1%酢酸/1%酢酸ソーダ(1/1)の酸を含有する染浴で、95〜100℃で、約40分間染色した後、温度を60℃に冷却する。この一段目の染色によって、Green HN染料は、その大部分が合成ポリアミド繊維側に染着する。セルロース繊維側に若干染色し、又は染浴に染料が若干残っても、次の二段目の還元染色時に分解され除去されるので、その影響はほとんどない。
【0055】
この一段目の染色で用いられる硫酸ナトリウムは、染浴中の反応染料の染着向上に効果があり、その添加量は20〜50g/lが好ましい。それ以上の場合は、染浴中の分散染料の分散性劣化の可能性があるので、この場合は予備テストが必要である。又同浴に加えられる酸は、含有する反応染料、酸性染料の染着促進と、分散染料の安定性に効果があり、1%酢酸/1%酢酸ソーダ(1/1)からなる酸性側(PH4.0〜5.5)の緩衝液として、5〜15g/lの使用が好ましい。
【0056】
バット染料を用いる場合の染色温度は通常40〜70℃が採用されるが、C.I.Vat Green 1は難還元性の染料であるので、二段目の染色温度としては、比較的高温の60℃前後が適している。
【0057】
その後ハイドロサルファイト5〜20g/lを加えて、20〜40分間アルカリ還元をした後、排液しながら水を加えて(必要に応じてオーバーフローさせる)水洗し、50%程度の酢酸を加えて中和した後十分に水洗すると、繊維中のバット染料はそのまま酸化されて染着する。最後に中性洗剤(1〜2g/l)等でソーピング(80〜100℃で5〜15分)することにより、同色染色が完了する。上記の中和、水洗だけでの酸化が不十分の場合には、市販の過酸化水素等の酸化剤(3g/l程度)で繊維中の染料を完全に酸化させることができる。
【0058】
染色機の構造にもよるが、この二段目の還元染色中に起こる問題として、染色中に還元性染料が空気と接触して、染料の酸化皮膜が生じ繊維素材に付着するという現象が生ずる場合がある。この場合は、酸化皮膜防止剤として市販の保護コロイド剤の使用が好ましい。
【0059】
近年、分散化または水溶性化された還元性染料の使用が一般化してきている。分散化または水溶性化された還元性染料は、染色の一段目から、HN染料とともに一浴中に加えて染色することができ、染色を有利に行うことができる。前記の態様においては、Vat Green染料を染色の一段目から加える染色が可能になり、それは、HN染料の合成ポリアミド繊維への染着に悪影響を与えない。
【0060】
なお、還元性染料の中でバット染料と硫化染料は、酸化還元条件と合成ポリアミド繊維とセルロース繊維への染着等が類似し、その併用が許容される組合せが比較的多い。例えば、前記のC.I.Vat Green 1は、C.I.Sol.Sulphur Green 3と染着性と色相が比較的類似していることから、両者の併用も可能である。
【0061】
次に、本発明の染色方法の中の白残し染色について説明する。白残し染色では、アルカリ還元性染料(前記の態様においてはC.I.Vat Green 1)を用いない。しかし、その他の条件は、前記の同色染色と同様である。すなわち、HN染料としては、前記と同様なものが用いられ、アルカリ還元、酸化、洗浄その他の条件も前記と同様である。
【0062】
次に、本発明の染色方法の中の異色染色について説明する。異色染色では、アルカリ還元性染料として、HN染料とは異なった色相のものが用いられる。例えば前記の態様においてはGreen HN染料が用いられているので、アルカリ還元性染料としては、Green以外の色相のものが用いられる。その他の条件は、前記の同色染色と同様である。すなわち、HN染料としては、前記と同様なものが用いられ、アルカリ還元、酸化、洗浄その他の条件も前記と同様である。なお、アルカリ還元性染料として、還元染色時に合成ポリアミド繊維に染着するものを用いると、合成ポリアミド繊維側がHN染料とは異なった色相になるので、還元染色時に合成ポリアミド繊維に染着しないものが好ましく用いられる。
【0063】
白残し染色や異色染色は、従来、捺染分野で行われており、多種多様の模様(柄)とその模様の鮮鋭さで高品質の染色製品を得る高度な技法である。すなわち、すでに染色された染色布(地染)に、にじまないように、巧みに調製された還元剤を含む抜染糊、又はさらにその還元剤に強い染顔料を含む着色抜染糊を柄模様に印捺し、乾燥し、スチーミング等の熱処理により、地染の染料を柄模様の輪郭の通り鮮鋭に還元分解させて白模様にし(白抜)または、白抜と同時に還元糊中の染料を柄模様の通りに染着させる(着色抜染法)方法であり、シャープな柄模様を得る捺染法と言われている。ただし模様のニジミとか、白抜地の汚染や白度不十分等の問題もしばしば生じている。
【0064】
これに対し、本発明の方法による白残し染色や異色染色は、多種繊維からなる複合素材の浸染染色による方法であり、少なくとも被染物重量の3倍前後以上の重量を有する染浴中でセルロース繊維側等を白抜または白抜着色をする方法である。すなわち、捺染ではなく浸染による方法である点で従来法と異なる。そして、一浴系で染色を達成できるという大きな利点が得られる。
【0065】
本発明の染色方法に染色される複合繊維素材としては、合成ポリアミド/セルロースの混紡、交織、柄模様及びリバーシブル等の複合素材が例示され、又これらの複合素材に、ポリエステル、ポリアクリル等のアルカリ還元に耐えうる繊維がさらに含まれる複合素材が例示される。本発明の染色方法により、このような多種多様の繊維を含有する複合素材の特徴的な高度の染色が得られる。
【0066】
前記の複合繊維素材に含有されるセルロース繊維としては、綿がその代表的なものとして挙げられるが、本発明の染色方法は、吸水性の高いキュプラ等のレーヨン、テンセル等の再生繊維にも好適に適用できる。なおポリエステル繊維としては、常圧で染色できるカチオン染料可染改質ポリエステル、ポリトリメチレンテレフタレート系ポリエステル繊維が好ましく挙げられる。一方、羊毛等の天然ポリアミド繊維を含有する素材の場合は、これらの繊維が一般に強いアルカリに耐えられないことと、これらに染着した染料は還元剤によって分解されやすいので注意が必要である。絹については炭酸ソーダの使用で適用の可能性がある。
【0067】
次に。軍服等の製造における迷彩色に染色加工する場合への応用について説明する。
【0068】
従来、迷彩色の染色加工は、綿布の反応染料、バット染料等による捺染法や一部顔料の直接捺染法で行われてきた。迷彩色は赤外線カメラに対して迷光であるので、この染色には、迷彩色の性質を有するバット染料のGreen、Olive、Brown染料が中心に用いられている。又、中間色の反応染料を主とした染色及び捺染で加工がされている。
【0069】
本発明の染色方法、すなわちHN染料と還元性染料との混成染料を用いる方法は、合成ポリアミド繊維と綿からなる複合素材を迷彩色に染める方法として適している。例えば、還元性染料として、前記のバット染料のGreen、Olive、Brown染料を用い、又前記中間色の反応染料としてHN染料を用いれば、従来の捺染法や直接捺染法による場合と同様な迷彩色を得ることができる。
【0070】
しかも、本発明は捺染法によるものでなく、多種の繊維からなる複合素材を巧みに利用して迷彩色加工を一浴方式の浸染にて行う方法であり、優れた生産性が達成される。なお、従来は綿が中心であった軍服等に、合成ポリアミド等の合成繊維の適度に含有させることにより、柔軟性、伸縮性、軽量性等の付与による機能性改善と、耐光性の向上がされる。合成繊維の含有による吸水性、吸汗性の減少に対しては、吸水性の極めて大きいレーヨンとの複合で対処が可能である。寒さに対しては、ポリアクリル繊維を適度に含有させることにより対処が可能である。本発明の方法は、合成ポリアミド、レーヨン、ポリアクリル繊維等多繊維を含有する複合素材にも適用可能であり、優れた性質を有する迷彩色(多色性)の製品を高い生産性で得ることができる。なお、ポリエステル繊維の含有により、製品の耐久性が向上するとともに、迷彩色の柄模様の多色性も付与されるので好ましい。
【0071】
迷彩色の染色加工には、前記の通り、Green系、Olive系、Brown系、Grey又はKhakiの色相を有し、近赤外線領域での反射が大きい染料が用いる必要がある。従って、本発明の合成ポリアミド繊維側の染色に用いるHN染料は、主としてこれら色相を有する染料から選択される。この染料としては、C.I.Acid Yellow 116、Brown 19,28,226,297、Black60,50、Lanyl Olive BG、Lanyl Khaki G(住友化学工業社製)等の酸性含金属染料が好ましく例示される。湿潤堅牢度の向上と色相の調整には、HN染料に属する三原色の反応染料を用いることにより対応できる。
【0072】
セルロース繊維を迷彩色に染色するバット染料としては、C.I.Vat Orange 2、C.I.Vat Brown 1,3,68及び72、C.I.Vat Green 1,3及び13、C.I.Vat Black 8,25及び27等が好ましく例示される。
【0073】
複合素材が、ポリエステル繊維を含有する場合には、好ましくは、前記HN染料とアルカリ還元性染料に加えて、ポリエステル繊維を直接染める分散染料が加えられ、この分散染料によるポリエステル繊維の染色が行われる。このような分散染料としては、例えば、Sumikaron Yellow Brown S−2RF、Sumikaron Yellow Brown S−BRF、Sumikaron Blue S−3RF、Sumikaron Blue SE−RPD、Sumikaron Blue E−RPD、Sumikaron Yellow E−RPD、Sumikaron Yellow SE−RPD、Sumikaron Red E−RPD、Sumikaron Red SE−RPD、Sumikaron Rubine SE−GL、Sumikaron Bordeaux SE−BL、Sumikaron Navy Blue S−GL(以上住友化学工業社製)等を挙げることができる。
【0074】
ポリアクリル繊維を染めるカチオン染料としては、単独でBrown、Olive等の中間色染料が上布されていない。そこで、複合素材が、ポリアクリル繊維を含有する場合には、代りに暗味系の三原色染料が使用される。
【0075】
このような染料としては、例えば、C.I.Basic Yellow 32、 C.I.Basic Yellow 28、 C.I.Basic Orange 30、 C.I.Basic Red 18、 C.I.Basic Blue 41等が挙げられる。但し、酸性染料等アニオン系の染料またはアニオン系の分散剤を含有する分散染料と一浴で用いる場合には、沈澱防止を加える必要がある。そこで、この場合はより安全のために、分散型のカチオン染料を用いるのが好ましい。この染料としては、Estrol Yellow 3RL−SD、Estrol Red GSL−SD、Estrol Blue GSL−SD、Estrol Navy Blue 3RL−SD(以上住友化学工業社製)等が適している。
【実施例】
【0076】
実施例1
表:6−ナイロン60%、裏:綿パイル40%からなるリバーシブルの複合素材5gを熱湯で湿潤して脱液した後、Sumikaron Turq.Blue S−GL 200%(住友化学工業社製)の23.8部、Lanyl Brill.Blue G e/c(住友化学工業社製)の23.8部、Sumifix Yellow 2GL 150%(住友化学工業社製)の26.2部、およびRealan Yellow G(ダイスター社製)の26.2部からなるGreen HN染料(NPA/NC:460、補正色差:4.73、APA/AC:530、補正色差:4.30、APA/NPA:105、補正色差:3.70)0.84%o.w.f.の染浴100ml(浴比1:20)に加える。次いで、常温で硫酸ナトリウム3gを加えて5分間染色したのち、1%酢酸水溶液と1%酢酸ソーダ水溶液1:1の酸性側の緩衝液(PH4.0〜5.5)0.7mlを加えてから、温度を95〜100℃昇温して、40分間染色した。
【0077】
次に、この染浴の温度を60℃まで冷却したのち、Mikethrene Brill. Green FFB 1.の4%o.w.f.を加えて分散させたのち、40°Be’苛性ソーダ2.2mlと還元剤であるハイドロサルファイト1gを加えて20分間染色した。そして、排液し、水洗し、酢酸(3ml/l)で中和し、水洗すると染料は酸化されて染着が完了した。最後に水洗し、通常のソーピングをして仕上げた。得られた染色物は表裏同色で、鮮明なグリーン色である。その堅牢度は、耐光、塩素とも5級をクリアーし、最高のGreenの染色物が得られた。
【0078】
実施例2
実施例1と同じリバーシブルの複合素材5gを熱湯で湿潤して脱液した後、Sumifix Black EX conc(住友化学工業社製)50部、Aminyl Black F−GL(住友化学工業社製)20部、Lanyl Grey BG e/c(住友化学工業社製)10部、ReaNova Navy CA(ダイスター社製)20部からなるBlack HN染料(NPA/NC:238、補正色差:2.47、APA/AC:214、補正色差:3.42、APA/NPA:208、補正色差:2.36)7.0%o.w.f.の染浴100ml(浴比1:20)に加える。そして、実施例1と同じ条件で40分間したのち、温度を60℃まで冷却し、40°Be’苛性ソーダ2.2mlと還元剤であるハイドロサルファイト1gを加えて20分間染色した。最後に、実施例1と同様の後処理を行って仕上げた。
【0079】
結果は、表の6−ナイロン側は濃厚なBlackで、裏の綿パイル側は、還元剤によって抜染されて真白となり、完全な白残しの貴重な染色物を得た。そして、6−ナイロン側に染着した染料の分解等の影響は全くみられなかった。
【0080】
実施例3
ポリエステル加工系織物0.4g、綿ニット0.6g、6−ナイロン0.6g及びポリアクリル布0.4gを熱湯で湿潤して脱液した後、反応染料からなるRed HN染料(NPA/NC:226、補正色差:2.61、APA/AC:430、補正色差:2.39、APA/NPA:140、補正色差:1.16)0.5%o.w.f.の染浴40mlに加える。次いで、前記の酸性側の緩衝材0.5mlと沈澱防止剤であるイオネットFY−104(三洋化成社製)を加えて、60℃で10分間染色する。
【0081】
この染浴にAstrazon Blue AU(ダイスター社製)0.4%o.w.f.を加えてから、95〜100℃に昇温して、30分間染色し、硫酸ナトリウム1.2gを加えて、さらに10分間染色した後、60℃に冷却する。最後に、Mikethrene Yellow 3GL(ダイスター社製バット染料)1%o.w.f.を加えてから、40°Be’苛性ソーダ1mlとハイドロサルファイト0.5gを加えて20分間染色した。排液したのち、実施例1と同様の後処理を行って仕上げた。
【0082】
結果は、6−ナイロンはRedに、ポリアクリルはBlueに、綿ニットはYellowにそれぞれ良好に染色されて、それら3者間の異色染めが得られた。そして、ポリエステルに若干汚染した染料は、バット染料の染色時に還元分解されてポリエステルの白度が向上し、良好な白残しの結果も併せて得られた。
【0083】
実施例4
常圧可染ポリエステル編物4cmを2枚、綿ニット4cmを2枚、6−ナイロンジャージ4cmを2枚、およびポリアクリル布4cmを2枚の計8枚をランダムに縫い合せて、幅約8cmで、約5gの被染物を作成した。この4種の繊維からなる被染物を、熱湯で湿潤し、脱液してから、
ポリエステルを染めるSumikaron Yellow Brown S−BRF(住友化学工業社製)0.4%o.w.f.、Sumikaron Navy Blue S−GL(住友化学工業社製)0.1%o.w.f.、
綿を染めるMikethrene Olive MW(ダイスター社製バット染料)0.2%o.w.f.、Mikethrene Brown BR(ダイスター社製バット染料)0.8%o.w.f.
ナイロンを染めるLanyl Khaki G(住友化学工業社製)0.2%o.w.f.のYellow HN染料(NPA/NC:516、補正色差:3.95、APA/AC:581、補正色差:2.25、APA/NPA:109、補正色差:1.20)0.2%o.w.f.、及び
ポリアクリル布を染めるEstrol Yellow 3RL−SD(住友化学工業社製)0.2%o.w.f.、Estrol Blue GSL−SD(住友化学工業社製)0.2%o.w.f.
を含有する100mlの染浴に加える。
【0084】
次いで、前記実施例1で用いた酸性側の緩衝液0.7mlを加えてから昇温し、95〜100℃で40分間染色した後、60℃まで冷却する。続いて、40°Be’苛性ソーダ2.2mlとハイドロサルファイト1gを加えて10分間染色したのち、硫酸ナトリウム3gを加えて30分間染色して排液する。前記実施例1と同じ後処理を行って仕上げた。
【0085】
結果は、ポリエステル側がOlive色系に、綿側が青暗味のBrown色系に、ナイロン側が黄味のKhaki色系に、そしてポリアクリル側がGreen色系に、堅牢に染色され、全体的に迷彩色を形成する色調の染色物が得られた。
【0086】
実施例5
6−ナイロンジャージ1gと綿ニット1gを熱湯で湿潤、脱液した後、実施例2で用いたBlack HN染料7.0%o.w.f.、硫化染料であるAsathiorol Black S−H(旭化学工業社製)5.0%o.w.f.の染浴40mlに加える。これに常温で前記の酸性側緩衝液0.3mlを加えてから昇温し、85℃で30分間染色した。次いで、硫酸ナトリウム3.2gを加えて、10分間染色を継続してから、炭酸ナトリウム1.2gと還元剤であるレドールC(住友化学工業社製)1gを加えて40分間染色したのち、排液し、水洗し、48%酢酸で中和し、過酸化水素(3g/l)で、十分に酸化したのち、水洗し、ソーピングして仕上げた。
【0087】
結果は、両繊維とも濃厚なBlackに染色され、同色性の優れた染色物が得られた。洗濯、耐光、塩素な諸堅牢度も十分にクリアーした。
【0088】
実施例6
ヨコ:6−ナイロン糸40%/タテ:綿糸60%からなる7cm幅の交織布10gを、実施例2で用いたBlack HN染料 30g/l、Mikethrene Direct Black S/F.(C.I.Vat Black 9)60g/lを含有する染料液に5秒間浸漬したのち、直ちに二本ロールのマングルで均一に絞り(絞り率90%)、両端を幅7cm、長さ5cmのポリエステル布でつなぎ、ガラス棒で巻き取り、小型のジッガー染色機(Jigger)に移す。このジッガー染色機に、前記の酸性側緩衝剤5ml、硫酸ナトリウム80g/lからなる染浴50mlを注入したのち、カバーし、90℃〜100℃に昇温しながら、先の染液を含む被染物を先端からくり入れ、浸漬し、巻き取りながら、先端と末端から交互に浸漬し巻き取りながら50分間染色する。
【0089】
その後、60℃まで冷却し、40°Be’苛性ソーダ30ml/lを加えたのち、還元剤であるハイドロサルファイト15g/lを加えて、15分間巻き取りながら染色する。さらに、40°Be’苛性ソーダ5ml/lと、ハイドロサルファイト5g/lを加えて、10分間巻き取りながら染色した後排液する。次に、ジッガーに水を十分に注入して水洗し、48%酢酸を5ml/lを加えて中和し、過酸化水素2ml/lで酸化した後水洗し、十分にソーピングして仕上げた。
【0090】
結果は、両繊維とも同色性で濃いGrey色に染色された。染色物の堅牢度は、洗濯、耐光、汗耐光、塩素堅牢度に特に優れた結果が得られ、最高級のGrey色の品質が得られた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
6−ナイロンジャージ及び未シルケット綿ニットを、1:1の重量比で、
硫酸ナトリウム40〜80g/lを加えたpH6.3〜7.0、浴比1:20の染浴で、Navy染料については5%o.w.f.、Black染料については10%o.w.f.、Navy染料及びBlack染料以外の染料については2%o.w.f.で染色した場合の、6−ナイロンジャージの濃度をNPAとし、未シルケット綿ニットの濃度をNCとし、
硫酸ナトリウム40〜80g/l及び酢酸1%o.w.f.を加えた浴比1:20の染浴で、2%o.w.f.で染色した場合の、6−ナイロンジャージの濃度をAPA、未シルケット綿ニットの濃度をACとしたとき、
NPA/NCが200%以上、APA/ACが200%以上、APA/NPAが80〜200%かつそれぞれの補正色差が5.0以下であるHN染料を用いて、一浴方式で、合成ポリアミド繊維を含有する複合素材の浸染を行い、浸染後にアルカリ還元を行うことを特徴とする複合素材の染色方法。
【請求項2】
合成ポリアミド繊維を含有する複合素材が、セルロース繊維を含有することを特徴とする請求項1に記載の複合素材の染色方法。
【請求項3】
アルカリ還元が、20℃のpH9.0〜12.5のアルカリ剤と、そのアルカリ性浴での還元電位(−mV)が300〜1200を示す還元剤を含有する還元浴を用いて行われることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の染色方法。
【請求項4】
前記浸染を、HN染料とともにアルカリ還元性染料を混成して行うことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の複合素材の染色方法。
【請求項5】
アルカリ還元性染料が、バット染料、硫化染料及びインジゴ染料から選ばれることを特徴とする請求項4に記載の染色方法。
【請求項6】
アルカリ還元性染料の色相がHN染料の色相とは異なり、合成ポリアミド繊維と他の繊維を異色に染色することを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の染色方法。
【請求項7】
迷彩色の染色を得ることを特徴とする請求項4ないし請求項6のいずれかに記載の複合素材の染色方法。
【請求項8】
白残し染色であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の複合素材の染色方法。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の染色方法により染色されたことを特徴とする合成ポリアミド繊維を含有する複合素材。


【公開番号】特開2006−138024(P2006−138024A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−326297(P2004−326297)
【出願日】平成16年11月10日(2004.11.10)
【出願人】(302038774)
【Fターム(参考)】