説明

複合繊維樹脂の改良とその製造方法

【課題】骨材を密着固化させる複合繊維樹脂の改良と製造方法。
【解決手段】有機系繊維の一種類又は数種類に対して液体合成樹脂を吸収させた後、これに無機系繊維の一種類又は数種類を補強繊維として前記液体合成樹脂の固形分に対して2〜15重量%の割合で混合することからなる複合繊維樹脂の改良による製造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、骨材を密着固化させる複合繊維樹脂の改良と製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂には、特有の硬化作用があり、これらの合成樹脂の物性と接着力は、多くの分野で利用され、必要不可欠となってきており、セメントやアスファルトが技術改良されるなかでも、それらに代わって合成樹脂が多く使用されるようになってきた。例えば、合成樹脂に溶剤を加えた液体合成樹脂を接着材として用い、骨材と混練して骨材間を合成樹脂で接着してなる透、排水性を有する舗装体やブロック等が製造されている。
【0003】
しかし、従来技術では、液体合成樹脂の可使用時間帯、即ち、合成樹脂が化学反応により硬化する過程、即ち、合成樹脂本剤と硬化剤との化学反応や、あるいは熱、光その他により合成樹脂の反応が始まり、合成樹脂そのものが極端に凝固し始める直前までの時間帯における沈下現象や、骨材として使用する石粉、細砂の混合の不均一性等のため、骨材が不安定な状態の舗装体やブロック体しか製造することができなかった。合成樹脂の使用に際しては、硬化が始まったら動かさないことが大切であり、硬化の進行中に動かした場合には、合成樹脂本来の接着力以下の接着力しか得ることができない。しかし、従来技術では、例えば樹脂舗装等の施工の際に、合成樹脂と骨材を混練しただけでは粘りが少ないために、転圧はおろか左官ゴテでさえ充分に圧縮して成形ができないことから、混練物全体に粘りが出る合成樹脂の硬化の進行中に無理な施工をせざるを得なかった。このため、合成樹脂本来の接着力を得ることができず、施工後の強度維持が出来ず、その結果、骨材が外れる、いわゆるトッピングを起こして、その舗装体やブロック等は長持ちしないという欠点があった。骨材の安定とは、大小様々な形状の骨材が互いに詰まり合って動かない状態を意味するものであり、この安定が舗装構造体やブロック等の強度と維持力であり、接着剤の強さが唯一の条件ではない。アスファルト合材の骨材配合は、大小様々な砕石だけでなく、大きめの砂(粗砂)や細めの砂及び石粉までを混合している。即ち、車道の粗粒配合や密粒配合とよばれているのがそれである。一方、例えば、歩道に於ける目の粗いアスファルト舗装は、直径4mm〜8mm程度の砕石を中心にした開粒配合であり、粗砂、細砂、石粉等はすべて除いて施工されている。従って、アスファルトで固めた場合は、骨材間の空隙だけに透水機能を期待せざるを得ない。しかし、その結果は、逆に土砂や粉塵で目詰まりを起こし、又、強度も向上させることができず、その効果は実に期待薄という結果に終始していた。又、大地の砂漠化を改善し、生活廃熱を含む熱反射を軽減するうえにも必要であった透、排水性の舗装も、単に液体合成樹脂を接着材とした場合には、骨材間の接着が点的であったため、接着強度が不十分であるだけでなく、骨材間の空隙が大きいことから、そこへ土砂や粉塵の粒子が詰まり易く、又、舗装構造体やブロック表面の骨材が外れる、いわゆるトッピングを解消することができなかった。更に、排水機能を有する砂防ダムや擁壁を構築しようとする場合においても、目詰まりし難い構造体とすることができなかった。このため、土砂だけではなく水までも止めてしまい、土砂崩れに到る危険もぬぐえない。しかし、液体合成樹脂を増粘剤で増粘しただけでは、上記のような透、排水性の構造体における骨材間の点的接着現象は改善されない。
【0004】
又、従来の液体合成樹脂の使用法では、透、排水性の構造体だけでなく、不透水構造体における強度も、合成樹脂自体の接着力だけの強度しか得ることが出来なかった。更に、繊維強化プラスチック(以下、FRPという。)の構造体においても、構造体の強度は、補強材としてのガラス繊維、炭素繊維等の無機繊維の強度に負うところが大きく、それら補強材を張り合わせる合成樹脂自体は単に補強材を支えているに過ぎない。
【0005】
世界的に見れば合成樹脂に溶剤を加えた液体合成樹脂を接着剤とし、これを骨材と混合して、舗装や平板ブロック等としたものが、透、排水性や滑り止め効果を付与したり、又、景観の改善を目的として利用が拡大し、その歴史も、早や20年を超えている。しかし、その間、技術的には何ら進捗の跡はみられないまま、今日に至っている。即ち、上記した液体合成樹脂に特有の沈下現象や、それに伴う接着の不均一、骨材の剥離(トッピング)、ローラーによる転圧作業やプレス等による充分な圧縮作業が出来ないための骨材の不安定、更には、セメント二次製品同様の量産が出来ない等の致命的欠陥の改善はもとより、FRPにおいても、その強度を従来以上に向上させ、且つ工法も現行通り、あるいは現行の工法より簡単に成形できる等の改良等は全く成されていない。
【0006】
このように、従来技術においては、単に液体合成樹脂をそのままの状態で接着材として透、排水性を有する舗装体やブロック、あるいは擁壁、その他の構造物を構築したり、FRPを製造していたため、要求される強度を必ずしも満足することができず、又、透、排水性を有する構造体の場合には、目詰まりの問題が解消されず、要求される機能を必ずしも充分に備えているとはいい難い。
【0007】
又、合成樹脂を素材として、PCBをはじめ、種々の有害物を容易に封じ込めるといった接着剤としての使用においても、合成樹脂本来の接着力を厚膜に作用させて効果を向上させる改良も充分には果たされていない。
【0008】
更に、漏水防止処理における塗料としての利用にあっても、液体合成樹脂を化学的に増粘させただけでは、一回の塗布作業で充分な効果は得られていない。
【0009】
これら液状合成樹脂の接着剤としの不十分性を改良するものとして開発された複合繊維樹脂においても、その製造方法によっては充分な繊維の重合と分散ができず、得られるべきマイクロフレーム構造体が不完全な結果に終わる場合があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的の第1は、上記のような、液体合成樹脂を接着剤として骨材と混合して透、排水性を有する舗装体やブロックを構成する場合における、液体成樹脂の可使用時間帯での沈下現象による点的接着現象による強度不足の問題や、骨材間空隙中への土砂や粉塵の目詰まりの問題、更には骨材トッピングの問題を解決せんとするものである。又、本発明の第2の目的は、前記の場合に、合成樹脂の接着力を最大限に活用し、石粉や細砂等の細かなものでも骨材として使用可能とすることである。更に、本発明の第3の目的は、合成樹脂により、様々な有害物質を強固に封じ込めることを可能とすることである。加えて、本発明の第4の目的は、従来複合繊維樹脂に改良を加え、機能性に優れた複合繊維樹脂を製造可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明が上記のような課題を解決しようとして採用した手段は、以下のとおりである。即ち、本発明は、合成樹脂がもつ接着性及び耐薬品性等の特徴にガラス繊維、炭素繊維、又はアルミ繊維等の無機繊維のもつ特徴と強度をより一体化させるため、吸収力に優れ且つ粉麈化しにくいPET繊維、PVA繊維、アラミド繊維等の有機繊維から選択される少なくとも一種類又は数種類の有機繊維に対して、液体合成樹脂を吸収させた後、これにガラス繊維、炭素繊維、シリカ繊維、シリカとアルミナの合成繊維、ジルコニア繊維等の無機繊維から選択される少なくとも一種類又は数種類の無機繊維を混合することからなる複合繊維樹脂の製造方法である。
【0012】
本発明は、液体合成樹脂の高分子を重合させるため、純度の高い有機質の超短繊維をもって高分子群とし、その高分子群を、純度が高く強靭で、超短繊維よりはサイズの大きな無機系短繊維に対して結合させて製造する。
【0013】
本発明は、請求項1で示す有機繊維であるPET繊維、PVA繊維、アラミド繊維等の太さ50ミクロン〜1ミクロン、長さ10ミリ〜1ミリのものに対して液体合成樹脂を吸着させて高分子を重合させ、請求項2に於いては、無機繊維であるガラス繊維、炭素繊維、シリカ繊維、シリカとアルミナの合成繊維、ジルコニア繊維等の太さ70ミクロン〜10ミクロン、長さ50ミリ〜2ミリの短繊維に対して、請求項1でした高分子群を吸着重合させる。
【0014】
本発明は、請求項1及び請求項2で用いる短繊維に、合成樹脂を素材としたものがあるが、これはこの繊維重合粘着固化剤の用途が、FRP成品の製造に供する目的、又は更に強度を求める目的に供される場合に多く、その場合はこれに複合させる短繊維は、無機質の短繊維量を増量して調整する。
【0015】
本発明が、液体合成樹脂の高分子を吸着させる短繊維を、純度の高い有機質の短繊維を選択するのは、その第一に液体合成樹脂をより吸着させるためであり、請求項1で用いる短繊維が、請求項2で用いる短繊維のサイズが大きいのは、請求項1では高分子を構成する目的の手段であり、請求項2は、請求項1でした高分子群を吸着させて重合できる表面積を有したものでなければならない理由による。
【0016】
本発明は、請求項1には高分子群の構成がその目的であり、その手段として、選択する短繊維のサイズを、請求項1でするものは請求項2でするものよりも少さなものにした。
【0017】
本発明は、請求項1でした高分子微細群集物を、更に吸着重合に必要な表面積を有する短繊維を請求項2で選択してする目的は、2種類の短繊維を組合せて補強させる目的を伴った手段である。即ち高分子を重合させ、更には繊維の重合を確立する。
【0018】
本発明が、選択する有機繊維は、無機質短繊維の量に対して、100重量%を超えないものとする。又繊維重合粘着固化剤の基剤である液体合成樹脂に対して、相溶しないものとする。
【0019】
本発明に成る繊維重合粘着固化剤の基剤となる液体合成樹脂に、エポキシ系及びウレタン系又はフェノール系の合成樹脂を選択し、更には予め製造された高純度無機質物等による不燃物を繊維重合粘着固化剤に混練して、不燃性粘着固化剤としてすることができる。
【0020】
本発明は、この繊維重合粘着固化剤を、石材を骨材として、透排水性を目的とした舗装及び平板ブロック・インターロッキング、擁壁、砂防等の二次製品の製造に供する場合は、骨材量に対して3重量%〜8重量%とし、好ましくは3.5重量%〜6重量%である。
【0021】
本発明は、この繊維重合粘着固化剤を、焼却灰、砿砕、木片、土等を固化するために供するときは、この粘着剤は、固化しようとする物に対して6重量%〜20重量%とし、好ましくは6重量%〜15重量%とする。
【0022】
本発明は、この繊維重合粘着固化剤をFRP成形物の素剤としてする。又漏水防止等防水剤として使用する。
【0023】
本発明は、この繊維重合粘着固化剤を、木炭やバクハン石等の性能を損わせることのないブロック等を製造する。その場合の混合量は木炭やバクハン石の量に対して5重量%〜12重量%とする。
【0024】
本発明に成る繊維重合粘着固化剤は、雑燃性及び不燃性の建材を製造する。その場合の骨材とするものに対する混合量は、通気性、吸湿性を求める建材に就いては4重量%〜12重量%とし、防水、遮断性の建材に就いては8重量%〜20重量%とする。
【0025】
本発明に成る繊維重合粘着固化剤は、有害物溶出を遮断する成形体を製造する。その場合の混合量は13重量%〜20重量%をもってする。
【0026】
本発明に成る繊維重合粘着固化剤は、特に強度を求めるときの接着剤又は塗料として使用する。
【0027】
本発明に成る繊維重合粘着固化剤は、その用途によって液体合成樹脂及び繊維の物性並びにそのサイズや量を選択してする。
【0028】
本発明の繊維重合粘着固化剤の製造は、撹拌羽根の無いミキサーで行う。
【0029】
本発明は、高分子の重合と繊維の重合を、液体合成樹脂機能範囲に於いて行うもので、併せて高分子の重合と繊維の重合を一体化させたことを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明は、最も多様性をもって使用されているエポキシ系合成樹脂40kg、高純度有機繊維であるPET短繊維(太さ3ミクロン、長さ2ミリ)1200g、無機質短繊維であるガラス短繊維(太さ5ミクロン、長さ5ミリ)1200gを用意した。
【0031】
撹拌羽根の無いミキサー((株)千代田技研工業製)40リッター1台、平型ミキサー1台を用意した。
【0032】
平板ブロック用金型(300mm×300mm×50mm)3枚を用意した。又締固めるため、10000kg油圧機1台を用意した。
【0033】
大型ポリバケツ2個のほか、製造した繊維重合粘着固化剤をミキサーから取り出すための、かき出し棒1本及び作業するためのゴム手袋を用意した。
【0034】
繊維重合粘着固化剤の特徴の1つである、骨材表面積を全面被服しなくても成形体を製造することを確認するため、木炭10kgを用意した。
【0035】
繊維重合粘着固化剤の強靭性及び防水遮断性を確認するため、ごみ焼却灰3kgを用意した。
【実施例】
【0036】
[実施例1]本発明請求項1に基き、高純度有機系短繊維であるPET短繊維(太さ3ミクロン、長さ2ミリ)1200gをポリバケツに入れ、これにエポキシ系(=液性)液体合成樹脂40kgを流込んで、繊維に吸着させるため軽く撹拌(3分間)させ、これを撹拌羽根の無いミキサーに移して約3分間ミキサーを作動させ、それに無機系繊維であるガラス短繊維(太さ5ミクロン、長さ5ミリ)1200gを混入してミキサーを2分間作動させ42.4kgの繊維重合粘着固化剤を製造し、別に用意したペール缶に移した。
[実施例2]アスファルト舗装用密粒配合骨材50kgを、平型ミキサーに入れ、それに繊維重合粘着固化剤2.5kg(骨材に対して5重量%)を加えて3分間ミキサーを作動させたあと、更に硬化剤(指定量)を加えて約2分間ミキサーを回転させ53.75kgの合材を得た。実施例1で得た繊維重合粘着固化剤の粘度は、その基剤としての初期粘度(25度Cの設定で1600CPS)のものが、実施時の気温(20度C)では約10000CPSとなっている。然し繊維重合化によって増粘されているため、液体合成樹脂に対して、従来の増粘方法で増粘したものであれば、実施時のこの気温(20度C)で、細砂及び石粉を混合している密粒配合の骨材との混合は、均一には行えず細砂及び石粉の部分がダマ化する。しかも混合に際して用いたミキサーは、セメント合材用のものでありその混合に要した時間も約5分間である。従来の常識に於いては均一混合は不可能である。繊維重合粘着固化剤の粘度は、繊維の吸着とその分散による重合だからこそ、可能になったものである。繊維重合粘着固化剤は液体合成樹脂を最も吸着することが可能な高純度の有機質の短繊維を主繊維とし、これに同じく高純度の無機質の短繊維を混練してしたことにより、より大量な液体合成樹脂を吸着させ、更には100%に及ぶ分散に起因する。
[実施例3]実施例2で得た合材を、予め0mm〜40mmの砕石をもって締固めた約30cmの路盤上に敷設する訳であるが、その路盤の安定度は必らずしも充たされている訳ではない。従って舗装材に求められて来たことは、路盤に対する接着安定と、併せて舗装材そのものの曲げ強度及び引張り強度、並びに圧縮強度、耐摩耗性等の強度とその維持性である。実施例2に於いては、舗装の強度を検出するため、300mm×300mm×50mmの金型にこの合材を詰合せ、これを油圧機で500Kg程度の圧力で2度圧縮したあと即脱して常温養生した。
[実施例4]骨材の硬度とその安定が、舗装及びブロック等の強度を得るための第一条件であるが、その条件を安定維持させるための接着固化剤そのものに、接着力と耐摩耗性をもたせ、更には液状の部分が合材圧縮等によって引き延ばされ、又は骨材によってその連続層を切断されて強度を失う作用を、繊維によって連結を確立させた本発明は、更に性状を重合させることにより接着剤でありながら、FRP化したものとなっている。従って硬度も安定も期待のほかである焼却灰、灰熔融片、モミ殻等に対し繊維重合粘着固化剤の効果を確認するため、接着力及び靭性確認、並びに有害溶出遮断の性能確認を含めて、ごみ焼却灰10kgに対して繊維重合粘着剤1.2kg(ごみ焼却灰に対して12重量%)をもって混練しこれに硬化剤を加えて更に混練して30mm×300mm×50mmの金型にそれを締固めておよそ10mm厚の成形体を得た。
[実施例5]繊維重合粘着固化剤が、骨材表面積の全部を被服せず、然も強靭な成形体を製造できることを確認するため、木炭片10kgに対して繊維重合粘着固化材1.2kgを混練して合材とし、これを300×300×50mmの平板用金型に詰め、これを油圧機で圧縮し40mm厚の平板ブロックを得、同様の配合で木炭片10kgに対して複合繊維樹脂1.2kgで別に同40mm厚の平板ブロックを得た。
[実施例6]繊維重合粘着固化剤が、セメント構造物に対して補修と補強があることを確認するため、6ヶ所にクラックを生じているセメント二次製品である平板ブロックのクラック部分に対して、繊維重合粘着固化剤と所定の硬化剤を混練したものを塗布して補修した。
[実施例7]繊維重合粘着固化剤による合材が、アスファルト舗装面に対して強靭に補修し得ることを確認するため、密粒配合の骨材から細砂と石粉を除いた骨材とアスファルトを混練した合材を、300×300×50mmの平板用金型に詰め、これを油圧機で圧縮して得た平板ブロックを、深さ約30mm幅約100mmを切削してこの部分に繊維重合粘着固化剤と、細砂、石粉も混合された密粒配合の骨材をして合材としたものを詰め、これをプレートで圧縮した。
[実施例8]直径15cm、高さ15cmのプラスチック容器の内側部に離型剤を塗布し、そこに繊維重合粘着固化剤と所定の硬化剤を混練したものを、張合せて約8mm厚を成形した。
[実施例9]直径15cm、高さ15cmのプラスチック容器の内側部に離型剤を塗布し、これに繊維重合粘着固化剤と硅砂(3mm〜1mm)2kgとを混練してした約2kgの合材を張合せ、約8mm厚の透水性容器を製作した。
【0037】
本発明は、各実施例に示す通り合材用とし又は単体の接着剤とし、又はFRP成型剤とし、有害物溶出の遮断剤として使用する粘着固化剤である。従来技術である複合繊維樹脂との根本的な相異点は、有機系繊維を主繊維とし、無機系繊維を補強繊維としたことである。液体合成樹脂と有機系繊維は、ともに高分子化合物としての相性から、より一体化と分散化が可能であり、これに補強繊維としての無機系繊維を混練することで理想的なマイクロフレーム構造体を得ることができる。従来の改良においては、主繊維であるロックウール(岩綿)とガラス短繊維との物性の違いが挙げられていたが、特にロックウールの場合は、その製造過程で残留した有機物の作用で、液体合成樹脂の吸着が本発明の請求項に示す純度の高い有機系短繊維と比較して半減し、更に分散に於いてはこれも半減した状態であった。従って補強繊維との一体化も液体合成樹脂との一体化も、不充分であったため、その繊維作用効果が均一には得られてはいなかった。然し、この性状の複合繊維樹脂ではあっても、セメントやアスファルトの接着力をはじめ骨材を選ばず成形化ができ、まして液体合成樹脂の領域ではそれを越えた強度を検出し、更には機能とその維持及び施工性を得ていたのは、ミクロな高分子の作用に、複合させた繊維作用があったからである。液体合成樹脂の粘度が20度Cの設定に於いて1500CPS〜2000CPSに及べば、その粘度に於いて一体化している様に目視されるものの、それ以下の粘度に於いては明らかに繊維と液体合成樹脂との遊離が目視される。又高粘度(2500CPS以上)の合成樹脂に対しても同様である。繊維の吸着と分散こそが、合材化と圧縮性に代表される施工性を容易化する要であり、一方ミクロな高分子群をして接着力を高揚し、更には繊維の補強力は靭性にも及んで、従来高分子の領域では思考されなかった改革を現実にした。
【0038】
実施例に就いて述べれば、合材時の粘度は低いもの程容易である。セメントの合材化は粘度のない水を用いて行われるため、ミキサーの回転によって合材化されるが、アスファルトの合材化は異る。もともと固型状態のアスファルトを高温熔融して骨材と混練する訳で、ミキサーも撹拌羽根が回転していれば良いと言うものではない。即ち練合わせる仕様でなければならない。繊維重合粘着剤は、いわばアスファルト合材時の性状になっているから、通常の液体合成樹脂と、骨材を混合するものとは異る。繊維重合粘着固化剤と骨材との合材化は、まさしく混練の仕様ではあるが、繊維重合粘着固化剤の見かけ粘度3万CPS程度までは、力量があり撹拌羽根とドラムの間かくが5mm程度の平型ミキサーでの混練は充分に満せる。自動車道の舗装に於いてはアスファルト舗装用合材プラントでの合材化が最も容易である。とり分け常温混練に於ける気温が−5度C位までの合材化は難色はない。又気温が40度Cを越える場合の作業は、繊維重合粘着固化剤に硬化遅延剤の作用をもって調整する。又この舗装の劣化を構じる場合は、予め紫外線防止材を混入してする。又繊維重合粘着固化剤が見かけ粘度とはいえ、その用途に於いては、50000CPS〜100000CPSを構じて提供する理由は、セメント、アスファルト又は液体合成樹脂の使用分野に於いて欠陥を指摘されて来た機能の維持と、施工性を高揚し、もって従来技術では対応不可能な産廃物の処理と資源化を行うためである。
【0039】
実施例4について述べれば、焼却灰の処理に関してはその量が莫大であり、含有する有害物の溶出が問われている。用途によっては正に資材となるが、強靭さと有害物溶出を遮断する固化は、セメント及びアルファルト、並びに液体合成樹脂の性能領域を越えたものであった。従来複合繊維樹脂に於けるロックウール及びガラス繊維の遮断性をしても、既でに認められてはいるが、本発明が示す補強繊維としての高純度の無機繊維は、1000時間連続で1260度Cの高熱遮断効果があり、1時間であれば1700度Cに耐える性能が認められたものを用いている。従って遮断性能は従来の複合繊維樹脂をはるかに越えるものである。
【0040】
実施例5に就いて述べれば、街路樹の伐採、廃屋から排出される材木等の処理に、それらを木炭にして活用する傾向が強まっている。木炭の脱臭性、空気や水の浄化等の性能を、ブロックやボード状にして活用しようとするものである。又バクハン石や俗称千枚岩等の様に薬効あるものを、ブロックや板状にしてそれらの効果を広く活用できる固化を推進しようとするものである。因に木炭の板や千枚岩のブロックは、PH4の酸性水をPH7の中性に変革する。
【0041】
実施例6に就いて述べれば、元来耐酸性と耐衝撃性に脆いセメントコンクリートの構造物には、クラックを生じさせ易い欠陥や劣化崩落の危険を伴って来た。本発明は強化プラスチック補修剤として、セメントコンクリート構造物を補強する。又この繊維重合粘着固化剤が防水効果にも優れており、1回の塗布作業で厚膜施工が出来るのも、特徴である。
【0042】
実施例7に就いて述べれば、本発明に成る繊維重合粘着固化剤は、アスファルト舗装面に対しても、強靭な接着力を発揮する。従来ミクロな高分子の作用を、重合させてしている効果である。
【0043】
実施例8に就いて述べれば、この繊維重合粘着固化剤は合材用接着剤及び防水施工用剤、並びに接着剤、補修剤、有害汚染の遮断剤等のほか、FRP成形剤として使用する。
【0044】
実施例9に就いて述べれば、繊維重合粘着固化剤と砂利や細砂等を混練し、これを成形体とするのも、実施例の様に容易に出来る。これは植木鉢やプランナーとして利用できる。
【発明の効果】
【0045】
本発明による繊維重合粘着固化剤としての複合繊維樹脂が及ぼす効果は、地球環境とりわけ大地及び河川、並びに海に関する自然生態の改良と、それによる経済効果が挙げられる。即ち、雨水が大地に浸透することによって大地は潤い、地下水脈が満されて大地は支えられているのであるが、その自然のメカニズムを紛れもなく遮断して破壊して来たのは近代社会の生産力発展であった。セメントやアスファルト並びに合成樹脂の普及が結果として水の循環を封じ込めることになり、環境の劣化は今や深刻になっている。即ち環境の改良はその原因を断つことが重要ではあるが、従来の技術とそれを活用して繁栄して来た産業界と国家にとって、総てを無にすることになる。すくなくとも遮断しつづけている雨水を大地に還流し、有害物溶出を遮断し、莫大化した廃材を活用することが目下の改良である。本発明は従来技術であるセメントやアスファルトよりも接着力や防水性に優れた液体合成樹脂を基剤とする複合繊維樹脂の更なる究明を果すことにあった。従来、液体合成樹脂を複合繊維に作用させてした技術をしても、その技術の根本的な原因で、究明の成果を半ばにしていた。即ち液体合成樹脂の性能と機能性を左右する高分子を、充分には重合しきれず、又施工性を左右する複合させた繊維の分散をさせきれず、液体合成樹脂のままの性状を残留させていたことにより、研究の成果は充分に果されてはいなかった。本発明は、前述の通り高分子の重合と、繊維の靭性と優れた強度を活し、当該研究の完成を果し得たものである。本発明は前述実施例を更に詳述する。
【0046】
実施例1の配合を表1に示す。
【表1】

【0047】
実施例1で得た繊維重合粘着固化剤による供試体の強度を表2に示す。
【表2−1】

【表2−2】

【0048】
実施例3を検証する。実施例3で得た平板ブロックの強度を表3に示す。
【表3−1】

【表3−2】

【表3−3】

【表3−2】

【0049】
実施例4を検証する。実施例4で得たゴミ焼却灰の繊維重合粘着固化剤のものと従来複合繊維樹脂のものとのそれぞれの配合と強度を表4に示す。
【表4】

同条件下で作製された平板ブロックの強度が、大きく異るのは、従来複合繊維樹脂の作用が不充分であったことを示している。即ち液体合成樹脂に対する繊維の吸着性とその分散の違い、並びに液体合成樹脂と繊維との一体化が充分に行われていないことに起因している。
【0050】
実施例5を検証する。実施例5でした木炭の性能を損んじさせない平板ブロック製作の配合を表5に示し、その検証を記す。
【表5】

表5の配合をもって300×300×40mmの平板ブロックを得る。そしてこのブロックに対し、予め準備しておいたPH4の酸性水1リットルを浸透させ、落下溜水したものをPH試験液をもって確認したところ、PH7.3を確認した。
【0051】
実施例6を検証する。セメント構造体に対する繊維重合粘着固化剤の接着力及び作用を確認したところ、繊維重合粘着固化剤は、高粘性でありながらヘアークラックの部分にも確実に詰って強靭な接着が確認された、因みに補修後の試験体を破壊してみたところ、繊維重合粘着固化剤で補修した部分は全てにセメント合材が付着したままで、それ以外のセメント構造体が破壊していることを確認した。
【0052】
実施例7を検証する。アスファルト合材による平板ブロックを削り、ワダチに見たてた部分に対して、密粒配合の骨材と、繊維重合粘着固化剤との合材を締固めてしたものを、実施例7の検証同様に破壊してみたところ、繊維重合粘着固化剤の合材には全面的にアスファルト合材が付着したままその部分の周辺が割れていることを確認した。尚この実施例は透水性の配合の合材で実施したことにより、透水性アスファルト舗装体より遥かに優れた性能であったことも確認した。
【0053】
実施例8を検証する。強化プラスチック粘着剤である繊維重合粘着固化剤の防水性及び有害物溶出の遮断性を確認するため、この実施を行った。即ち繊維重合粘着固化剤と所定の硬化剤を混練したものを、直径15cm、高さ15cmのプラスチック容器の内側部に離型剤を塗布したあと、その繊維重合粘着固化剤を張付けてした。この実施例で得た強化プラスチック容器の厚さは、約8mmであった。即ち粘着剤そのものをこの様な作業で得ることは、従来不可能であった。
【0054】
実施例9を検証する。従来の接着剤の中で、従来複合繊維樹脂を除いて、開粒度配合の骨材又は単粒度の骨材でした合材を、プラスチック製の容器に対して張付け成形することは不可能であった。唯一可能であった従来複合繊維樹脂もその究明の最良を極め得なかった。即ち接着強度、耐久性、防水性、透水性等の性能をはじめ耐薬性に於いても、高純度の短繊維の物性と機能をもってした液体合成樹脂との更なる一体化を果し得たのが本特許の成果である。
【図面の簡単な説明】
【図1】繊維重合粘着固化剤としての複合繊維樹脂の拡大図面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機系繊維の一種類又は数種類に対して液体合成樹脂を吸収させた後、これに無機系繊維の一種類又は数種類を補強繊維として前記液体合成樹脂の固形分に対して2〜15重量%の割合で混合することからなる複合繊維樹脂の改良と製造方法。
【請求項2】
請求項1の有機系繊雜は、PET繊維、PVA繊維、アラミド繊維の一種類又は数種類を選択したものとする。
【請求項3】
請求項1の無機系繊維は、ガラス繊維、炭素繊維、シリカ繊維、シリカとアルミナの合成繊維、ジルコニア繊維の一種類又は数種類を選択したものとする。
【請求項4】
本発明が請求項1で選択する繊維の太さは、50ミクロン〜1ミクロンとし、その長さは10ミリ〜1ミリとする。
【請求項5】
本発明が請求項2で選択する短繊維の太さは、70ミクロン〜10ミクロンとし、その長さは50ミリ〜2ミリとする。
【請求項6】
本発明は、液体合成樹脂の高分子を純度の高い有機質で、マイクロサイズの短繊維に集合させ、それを純度の高い無機質の短繊維に重合させてする繊維重合粘着固化剤としての複合繊維樹脂の改良と、その製造に関する。

【図1】
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【公開番号】特開2007−8139(P2007−8139A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−216476(P2005−216476)
【出願日】平成17年6月28日(2005.6.28)
【出願人】(504243187)日環整備株式会社 (1)
【Fターム(参考)】