説明

複合航空機パネルの避雷および接地手段

パネルコア(28)と、内部プライ層を形成し、パネルコア(28)を囲む複数のプリプレグ層(30)と、内部プライ層の外側層の上に位置決めされる少なくとも1つの金属箔層(38)とを含む航空機パネルアセンブリ(10)が提供される。少なくとも1つの金属箔層(38)は、接地のため、航空機パネルアセンブリ(10)の外面(24)と下部構造(26)との間の電気的導管となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は一般的に航空機の表面に関し、より特定的には、避雷手段を備える航空機操縦面に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
近代的な航空機は一般的に、複合構造を利用しかつさまざまなハイテク電子機器を組入れるように設計される。伝統的な航空機設計に対するこれらの改良の結果、航空機業界には広範な利益がもたらされたが、これらの同じ利益のために近代的な航空機が落雷などの伝統的な問題の影響を被りやすくなり得る。近代的な航空機の電子機器は、連続した落雷による高出力の電気に不適切にさらされると、損傷したり誤作動したりする可能性がある。同様に、適切な接地技術を備えない複合操縦面は、落雷の場合に構造的な損傷を受ける可能性がある。したがって、落雷に耐えかつこれを許容するように設計された航空機の能力は航空機業界にとって意義深い利点となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
落雷予防の1つの方策は、航空機の外面上の複合レイアップ(composite lay-up)の外側に配置されるエキスパンドアルミニウムメッシュ(expanded aluminum mesh)の使用であった。エキスパンドアルミニウムメッシュとその下にある構造との間に接地経路を設けるのに、一般的にアルミニウムグロメットを利用する。これは、複合操縦面を損傷させずに航空機の操縦面の外面からその下の構造へ雷が伝わる導電経路を提供する。この方法はうまくいくことがわかったが、製造時間および材料費が不所望に増加してしまう。したがって、伸張アルミニウムメッシュの使用は、複合操縦面の避雷手段における改良の余地をかなり残している。
【0004】
したがって、製造時間および発生する材料コストを低減しつつ、公知の方法と同様に避雷手段を設けた航空機の複合面を有することが非常に望ましい。避雷手段を改良する航空機設計とともに利用可能な、低コストかつ改良された航空機構造パネルを作製する方法を開発することがさらに非常に望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
したがって、この発明の目的は、避雷手段が改良された航空機パネル構造を提供することである。この発明のさらなる目的は、製造時間および材料費が改善されて作製され得る、避雷手段を備えた複合表面を記載することである。
【0006】
この発明の目的に従うと、航空機パネルアセンブリが提供される。航空機パネルアセンブリは、複数の内部充填材プライ層および複数の内部プリプレグ層によって囲まれたハニカムコアを含む。この発明は、複数の内部充填材プライ層および内部プリプレグ層の外側層の上に配置される少なくとも1つの金属箔層をさらに含む。この発明は、少なくとも1つの金属箔層の上に適用される外表面の外板(outer surface skin)をさらに含む。
【0007】
この発明のその他の目的および特徴は、添付の図面および請求項とともに考えられれば、詳細な説明および好ましい実施例に照らして明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
好ましい実施例の説明
この発明に従う航空機パネルアセンブリ10の図示である図1をここで参照して、図示される航空機パネルアセンブリ10は、航空機構造12内の定位置にある。航空機構造12は安定板構造として図示されるが、航空機パネルアセンブリは広範な航空機構造12での使用を意図されることが企図されることを理解されたい。図示される航空機構造12は、前縁14、前方ボックス(forward box)16、メインボックス18、後縁20および飛行操縦面22を含む。落雷の場合は、航空機構造12または内部電子デバイス(図示せず)への損傷を防止するため、航空機構造12の外面24から接地可能な下部構造26へ電気が流れるようにすることが望ましい。先行技術の方法は、高価なエキスパンドメッシュ(図示せず)およびアルミニウムグロメット(図示せず)の設置を利用して電流の流れおよび下部構造26への接地のための経路を設けた。
【0009】
この発明は、図2に図示されるように、接地の問題に対する経済的な解決策を提供する。図示される航空機パネルアセンブリ10はパネルコア28を含む。パネルコア28は航空機業界では周知であり、さまざまな形態でさまざまな材料から作製され得る。パネルコア28の異なる群が企図されるが、図示される実施例はハニカムコアの使用を企図する。パネルコア28は、複数層のプリプレグ材料30およびプライ34の内部層(internal layer of plies)を形成する充填材プライ32の複数の層によって覆われる。さまざまなプリプレグ材料30が企図されるが、1つの実施例はガラス繊維プリプレグ織物であるBMS8−79の使用を企図する。プリプレグ材料30の代替的なスタイルは代用してまたは組合せて使用されてもよく、Style7781およびStyle220を含むがそれらに限定されない。さらに、プリプレグ材料30の繊維の方向は変更されてもよく、0/90°、±45°および0°を含むがこれらに限定されない。パネルコア28とプリプレグ材料の第1の層との間にフィルム状接着剤BMS5−129などの内部接着層36が位置決めされてもよい。
【0010】
この発明は、プライ34の内部層の外側層40上に位置決めされる少なくとも1つの金属箔層38をさらに含む。金属箔層38は広範な態様で外側層40に装着され得るが、1つの実施例は、外側層40と金属箔層38との間に位置決めされる中間接着層42の使用を企図する。金属箔層38はさまざまな金属箔を含み得ることが企図される。しかしながら、1つの実施例は、約0.008インチに形成されるPAA処理3003H−19アルミニウム箔の使用を企図する。金属箔層38はプライ34の内部層を完全に取囲むように適用され得るが、そのような適用は不必要かもしれない。なぜなら、潜在的な落雷にさらされ得るのは航空機パネルアセンブリ10の単一の表面のみだからである。この状況で、金属箔層38が外面24と下部構造接触面39(図1を参照)との間の電気的コンタクトを設けるように延在する限り、航空機パネルアセンブリ10の唯一の表面のみを覆えばよい。
【0011】
保護の目的のため、外表面の外板44を金属箔層38の上に適用してもよいことがさらに企図される。外表面の外板44は、落雷による電流が金属箔層38へ通過するようにするさまざまな材料を含み得る。1つの実施例では、外表面の外板44は接着剤の層を含むことが企図される。代替的な実施例では、外表面の外板44はロクタイト(Loctite)のシンスキン(Synskin)を含むことが企図される。この発明は、金属箔層38をさらに保護しかつ金属箔層38に対する損傷または層間剥離を防止する、周辺プリプレグ層46および周辺接着層48をさらに含み得る。周辺プリプレグ層46および周辺接着層48はさまざまな態様で適用され得るが、1つの実施例は、これらの層46、48を金属箔層38と外表面の外板44との間に位置決めすることを企図する。
【0012】
航空機構造を通じて航空機パネルアセンブリ10をさまざまな場所で用いてもよいことが企図されるが、1つの実施例は、前方ボックスパネル50(図1を参照)および特に尾
翼前方ボックスパネルとしての使用を企図する。これを後縁52上で用い得ることも企図される。これら特定の使用が記載されたが、本願が記載する技術は広範な場所で航空機表面の広い範囲に適用可能であることを理解されたい。
【0013】
この発明は1つ以上の実施例について説明されたが、記載の特定の機構および技術はこの発明の原則の例示のためにすぎず、添付の請求項によって規定されるようなこの発明の精神および範囲から逸脱することなく記載の方法および装置に数多くの変更がなされ得ることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明に従う避雷手段を備えた航空機パネルアセンブリを図示し、図示される航空機パネルアセンブリは、図示の目的のため、航空機安定板構造内の位置にあるものとして示される図である。
【図2】図1に図示される航空機パネルアセンブリの詳細断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機パネルアセンブリであって、
パネルコアと、
前記パネルコアに適用され、内部プライ層を形成する複数のプリプレグプライと、
前記内部プライ層の外側層に適用される少なくとも1つの金属箔層とを備え、前記少なくとも1つの金属箔層は、外面と航空機パネルアセンブリの下部構造接触面との間の電気的導管を提供する、航空機パネルアセンブリ。
【請求項2】
前記少なくとも1つの金属箔層に適用される外表面の外板をさらに備える、請求項1に記載の航空機パネルアセンブリ。
【請求項3】
前記外表面の外板はロクタイトのシンスキンを含む、請求項2に記載の航空機パネルアセンブリ。
【請求項4】
前記外表面の外板は接着剤を含む、請求項2に記載の航空機パネルアセンブリ。
【請求項5】
前記外表面の外板と前記少なくとも1つの金属箔層との間に適用される周辺プリプレグ層をさらに備える、請求項2に記載の航空機パネルアセンブリ。
【請求項6】
前記パネルコアはハニカムコアを含む、請求項1に記載の航空機パネルアセンブリ。
【請求項7】
前記パネルコアと前記少なくとも1つの金属箔層との間に位置決めされる複数の充填材プライ層をさらに備える、請求項1に記載の航空機パネルアセンブリ。
【請求項8】
前記内部プライ層と前記少なくとも1つの金属箔層との間に位置決めされる中間接着層をさらに備える、請求項1に記載の航空機パネルアセンブリ。
【請求項9】
前記少なくとも1つの金属箔層はアルミニウム箔を含む、請求項1に記載の航空機パネルアセンブリ。
【請求項10】
航空機構造アセンブリであって、
下部構造と、
外面および下部構造接触面を有する少なくとも1つの航空機パネルアセンブリとを備え、前記少なくとも1つの航空機パネルアセンブリは、
パネルコアと、
前記パネルコアに適用され、内部プライ層を形成する複数のプリプレグプライと、
前記内部プライ層の外側層に適用される少なくとも1つの金属箔層とを含み、前記少なくとも1つの金属箔層は、落雷の間に受けた電流が前記外面から前記下部構造に伝導されるように、前記外面と前記下部構造接触面との間の電気的導管を提供する、航空機構造アセンブリ。
【請求項11】
前記少なくとも1つの金属箔層に適用される外表面の外板をさらに備える、請求項10に記載の航空機構造アセンブリ。
【請求項12】
前記外表面の外板はロクタイトのシンスキンを含む、請求項11に記載の航空機構造アセンブリ。
【請求項13】
前記外表面の外板は接着剤を含む、請求項11に記載の航空機構造アセンブリ。
【請求項14】
前記少なくとも1つの金属箔層に適用される周辺プリプレグ層をさらに備える、請求項10に記載の航空機構造アセンブリ。
【請求項15】
前記パネルコアはハニカムコアを含む、請求項10に記載の航空機構造アセンブリ。
【請求項16】
前記パネルコアと前記少なくとも1つの金属箔層との間に位置決めされる複数の充填材プライ層をさらに備える、請求項10に記載の航空機構造アセンブリ。
【請求項17】
前記内部プライ層と前記少なくとも1つの金属箔層との間に位置決めされる中間接着層をさらに備える、請求項10に記載の航空機構造アセンブリ。
【請求項18】
前記少なくとも1つの航空機パネルアセンブリは前方ボックスパネルを含む、請求項10に記載の航空機構造アセンブリ。
【請求項19】
前記少なくとも1つの航空機パネルアセンブリは後縁パネルを含む、請求項10に記載の航空機構造アセンブリ。
【請求項20】
下部構造および航空機パネルアセンブリを含む航空機構造アセンブリへの落雷によって発生する電流による損傷を防止する方法であって、
外面から下部構造へ落雷による電流を伝導するステップを備え、前記伝導ステップは、航空機パネルアセンブリの外面から少なくとも1つの金属箔層へ電流を伝導するステップを含み、前記少なくとも1つの金属箔層はハニカムコアを覆う複数のプリプレグプライの上に位置決めされ、さらに前記伝導ステップは、
前記少なくとも1つの金属箔層から下部構造へ電流を伝導するステップを含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−502046(P2006−502046A)
【公表日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−543494(P2004−543494)
【出願日】平成15年10月7日(2003.10.7)
【国際出願番号】PCT/US2003/031807
【国際公開番号】WO2004/033293
【国際公開日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
【Fターム(参考)】