説明

複合金属酸化物、電極およびナトリウム二次電池

【課題】リチウムの使用量を減少させることができ、しかも、従来に比し、充放電を繰り返したときの放電容量が大きいナトリウム二次電池、およびその電極活物質として用いることのできる複合金属酸化物を提供する。
【解決手段】Na、M1およびM2(ここで、M1は、Mg、Ca、SrおよびBaからなる群より選ばれる1種以上の元素を表し、M2は、Mn、Fe、CoおよびNiからなる群より選ばれる1種以上の元素を表す。)を含み、Na:M1:M2のモル比が、a:b:1(ここで、aは0.5以上1未満の範囲の値であり、bは0を超え0.5以下の範囲の値であり、かつa+bは0.5を超え1以下の範囲の値である。)である複合金属酸化物。前記複合金属酸化物からなる電極活物質。前記電極活物質を有する電極。前記電極を、正極として有するナトリウム二次電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合金属酸化物、電極およびナトリウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
複合金属酸化物は、二次電池の電極活物質として用いられている。二次電池の中でも、リチウム二次電池は、携帯電話やノートパソコンなどの小型電源として既に実用化され、さらに、電気自動車、ハイブリッド自動車等の自動車用電源や分散型電力貯蔵用電源等の大型電源として使用可能であることから、その需要は増大しつつある。しかしながら、リチウム二次電池においては、その電極活物質の原料に、リチウム等の稀少金属元素が多く含有されており、大型電源の需要の増大に対応するための前記原料の供給が懸念されている。
【0003】
これに対し、上記の供給懸念を解決することのできる二次電池として、ナトリウム二次電池の検討がなされている。ナトリウム二次電池は、供給量が豊富でしかも安価な材料により構成することができ、これを実用化することにより、大型電源を大量に供給可能になるものと期待されている。
【0004】
そして、ナトリウム二次電池用の電極活物質としては、複合金属酸化物NaFeOが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−317511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1における複合金属酸化物NaFeOからなる電極活物質を用いた二次電池では、現行のリチウム二次電池と比較して、コバルト、ニッケル、リチウムといった稀少金属の使用量を減少させることはできるものの、二次電池としての性能、例えば充放電を繰り返したときの放電容量は十分とはいえない。本発明の目的は、リチウムの使用量を減少させることができ、しかも、従来に比し、充放電を繰り返したときの放電容量が大きいナトリウム二次電池、およびその電極活物質として用いることのできる複合金属酸化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ね、本発明に至った。すなわち、本発明は、下記の発明を提供する。
<1> Na、M1およびM2(ここで、M1は、Mg、Ca、SrおよびBaからなる群より選ばれる1種以上の元素を表し、M2は、Mn、Fe、CoおよびNiからなる群より選ばれる1種以上の元素を表す。)を含み、Na:M1:M2のモル比が、a:b:1(ここで、aは0.5以上1未満の範囲の値であり、bは0を超え0.5以下の範囲の値であり、かつa+bは0.5を超え1以下の範囲の値である。)である複合金属酸化物。
<2> M1が、Caを含む前記<1>記載の複合金属酸化物。
<3> M1が、Srを含む前記<1>または<2>記載の複合金属酸化物。
<4> 前記<1>〜<3>のいずれかに記載の複合金属酸化物を有する電極活物質。
<5> 前記<4>記載の電極活物質を有する電極。
<6> 前記<5>記載の電極を、正極として有するナトリウム二次電池。
<7> セパレータを更に有する前記<6>記載のナトリウム二次電池。
<8> セパレータが、耐熱多孔層と多孔質フィルムとが積層されてなる積層フィルムを有するセパレータである前記<7>記載のナトリウム二次電池。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、リチウムの使用量を減少させることができ、しかも、従来に比し、充放電を繰り返したときの放電容量が大きいナトリウム二次電池、およびその電極活物質として用いることのできる複合金属酸化物を提供することができ、本発明は工業的に極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】複合金属酸化物C1の粉末X線回折図形。
【図2】複合金属酸化物E1の粉末X線回折図形。
【図3】複合金属酸化物E2の粉末X線回折図形。
【図4】複合金属酸化物E3の粉末X線回折図形。
【図5】複合金属酸化物E4の粉末X線回折図形。
【図6】複合金属酸化物E5の粉末X線回折図形。
【図7】複合金属酸化物C3の粉末X線回折図形。
【図8】複合金属酸化物E10の粉末X線回折図形。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<本発明の複合金属酸化物>
本発明の複合金属酸化物は、Na、M1およびM2(ここで、M1は、Mg、Ca、SrおよびBaからなる群より選ばれる1種以上の元素を表し、M2は、Mn、Fe、CoおよびNiからなる群より選ばれる1種以上の元素を表す。)を含み、Na:M1:M2のモル比が、a:b:1(ここで、aは0.5以上1未満の範囲の値であり、bは0を超え0.5以下の範囲の値であり、かつa+bは0.5を超え1以下の範囲の値である。)であることを特徴とする。
【0011】
本発明の複合金属酸化物は、以下の式(1)として、表すこともできる。
Na12(1)
(ここで、M1は、Mg、Ca、SrおよびBaからなる群より選ばれる1種以上の元素を表し、M2は、Mn、Fe、CoおよびNiからなる群より選ばれる1種以上の元素を表し、aは0.5以上1未満の範囲の値であり、bは0を超え0.5以下の範囲の値であり、かつa+bは0.5を超え1以下の範囲の値である。)
式(1)において、酸素原子のモル比を表す2の値は、若干変化することがある。変化する範囲としては、例えば2±0.5程度、すなわち、式(1)における酸素原子のモル比の範囲は、(2−0.5)以上(2+0.5)以下程度である。
【0012】
本発明の複合金属酸化物において、好ましい1つの態様は、M1がCaを含む態様、特にM1がCaである態様である。このとき、得られるナトリウム二次電池について、高い電圧まで充電してから放電する充放電を繰り返したときの放電容量を高める観点で、M2はFeおよび/またはMnを含むことが好ましく、M2はFeおよび/またはMnであることがより好ましい。
【0013】
本発明の複合金属酸化物において、好ましい他の態様は、M1がSrを含む態様、特にM1がSrである態様である。このとき、得られるナトリウム二次電池について、高い電圧まで充電してから放電する充放電を繰り返したときの放電容量を高める観点で、M2はFeを含むことが好ましく、M2はFeであることが好ましい。
【0014】
本発明の複合金属酸化物において、好ましい他の態様は、M1がMgを含む態様、特にM1がMgである態様である。この場合、得られるナトリウム二次電池について、高い電圧まで充電してから放電する充放電を繰り返したときの平均電位は高く、ナトリウム二次電池のエネルギー密度が高くなる。
【0015】
また、本発明の複合金属酸化物において、M2はFeを含むことが好ましく、Mn、FeおよびNiであることがより好ましい。この場合、得られるナトリウム二次電池を高い電圧まで充電してから放電する充放電を繰り返したときの放電容量が大きくなる。
【0016】
本発明の効果をより高める意味で、好ましいbは、0を超え0.5以下の範囲の値である。より好ましくは0.05以上0.2以下の範囲の値である。
【0017】
本発明の効果をより高める意味で、好ましいa+bは、0.7以上1以下の範囲の値である。
【0018】
本発明の複合金属酸化物は、M2の一部を、M2以外の金属元素(例えば、Ti、V、Mo、WおよびCuなど)で置換してもよい。置換することにより、ナトリウム二次電池の電池特性が向上する場合もある。
【0019】
<本発明の複合金属酸化物の製造方法>
本発明の複合金属酸化物は、焼成により本発明の複合金属酸化物となり得る組成を有する金属含有化合物の混合物を焼成することによって製造できる。具体的には、対応する金属元素を含有する金属含有化合物を所定の組成となるように秤量し、これらを混合することにより得られた混合物を焼成することによって製造できる。例えば、好ましいモル比の一つであるNa:Ca:Fe=0.90:0.10:1.00のモル比を有する複合金属酸化物は、Na2CO3、CaCOおよびFe34の各原料を、Na:Ca:Feのモル比が0.90:0.10:1.00となるように秤量し、それらを混合することにより得られた混合物を焼成することによって製造できる。この場合、得られる複合金属酸化物は、上記式(1)において、MがCa、MがFe、aが0.9、bが0.1であるNa0.9Ca0.1FeOで表すことができる。
【0020】
本発明の複合金属酸化物を製造するために用いることができる上記金属含有化合物としては、酸化物、ならびに高温で分解および/または酸化したときに酸化物になり得る化合物、例えば水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物、シュウ酸塩を用いることができる。ナトリウム化合物としてはNa2CO3、NaHCO3およびNa22からなる群より選ばれる1種以上の化合物が好ましく、取り扱い性の観点で、より好ましくはNa2CO3である。マグネシウム化合物としてはMgCO、Mg(OH)およびMgOからなる群より選ばれる1種以上の化合物が好ましい。カルシウム化合物としてはCaCO、Ca(OH)およびCaOからなる群より選ばれる1種以上の化合物が好ましい。ストロンチウム化合物としてはSrCO、Sr(OH)およびSrOからなる群より選ばれる1種以上の化合物が好ましい。バリウム化合物としてはBaCO、Ba(OH)およびBaOからなる群より選ばれる1種以上の化合物が好ましい。マンガン化合物としてはMnO2が好ましく、鉄化合物としてはFe34が好ましく、コバルト化合物としてはCoが好ましく、ニッケル化合物としてはNiOが好ましい。また、これらの金属含有化合物は、水和物であってもよい。
【0021】
上記金属含有化合物の混合には、ボールミル、V型混合機、攪拌機等の工業的に通常用いられている装置を用いることができる。このときの混合は、乾式混合、湿式混合のいずれによってもよい。また晶析法によって、所定の組成の金属含有化合物の混合物を得て、これを複合金属酸化物の原料として用いてもよい。
【0022】
上記の金属含有化合物の混合物を、例えば600℃〜1600℃の温度範囲にて0.5時間〜100時間にわたって保持して焼成することによって、本発明の複合金属酸化物が得られる。好ましい焼成温度範囲は、600℃〜900℃の温度範囲であり、より好ましくは650℃〜850℃の温度範囲である。金属含有化合物の混合物として、高温で分解および/または酸化しうる化合物、例えば水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物、シュウ酸塩を使用した場合、該混合物の焼成の前に、仮焼を行うことも可能である。具体的には、仮焼は、該混合物を400℃〜1600℃の温度範囲で、かつ焼成の温度より低い温度で保持することにより行う。この仮焼により、該混合物における金属含有化合物を酸化物にしたり、結晶水を除去したりすることが可能である。仮焼を行う雰囲気は、不活性ガス雰囲気、酸化性雰囲気または還元性雰囲気のいずれでもよい。また仮焼後に粉砕することもできる。
【0023】
焼成時の雰囲気としては、例えば、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気;空気、酸素、酸素含有窒素、酸素含有アルゴン等の酸化性雰囲気;水素を0.1体積%〜10体積%含有する水素含有窒素、水素を0.1体積%〜10体積%含有する水素含有アルゴン等の還元性雰囲気などが挙げられる。強い還元性の雰囲気で焼成するためには、適量の炭素を金属含有化合物の混合物に含有させてこれを焼成してもよい。好ましい焼成雰囲気は、酸化性雰囲気、特に空気である。
【0024】
金属含有化合物として、フッ化物、塩化物等のハロゲン化物を適量用いることによって、生成する複合金属酸化物の結晶性、複合金属酸化物を構成する粒子の平均粒径を制御することができる。この場合、ハロゲン化物は、反応促進剤(フラックス)としての役割を果たす場合もある。フラックスとしては、例えばNaF、MgF2、CaF2、SrF2、BaF2、MnF3、FeF2、NiF2、NaCl、MgCl2、CaCl2、SrCl2、BaCl2、MnCl2、FeCl2、FeCl3、NiCl2、Na2CO3、NaHCO3、NH4Cl、NH4I、B23、H3BO3などを挙げることができ、フラックスは、混合物の原料(金属含有化合物)として、あるいは、混合物に適量添加して用いられる。また、これらのフラックスは、水和物であってもよい。
【0025】
本発明の複合金属酸化物は、二次電池などの電極活物質として用いることができる。電極活物質として用いる場合、上記のようにして得られる複合金属酸化物について、随意にボールミルやジェットミル等を用いた粉砕、洗浄、分級等の操作を行うことにより、複合金属酸化物の粒度を調節することが好ましいことがある。また、焼成を2回以上行ってもよい。また、複合金属酸化物の粒子表面をSi、Al、Ti、Y等を含有する無機物質で被覆する等の表面処理をしてもよい。また、本発明の複合金属酸化物は、その結晶構造が層状構造を含むものが好ましい。
【0026】
本発明の複合金属酸化物は、単独で、または被覆などの表面処理を施すなどして、電極活物質として用いることができる。本発明の電極活物質は、本発明の複合金属酸化物を有する。本発明の電極活物質を有する電極を、ナトリウム二次電池の正極として用いれば、得られるナトリウム二次電池は、従来に比し、充放電を繰り返したときの放電容量が大きい。また、本発明により、得られるナトリウム二次電池の内部抵抗を小さくし、充放電のときの過電圧を小さくすることもできる。充放電時の過電圧を小さくすることができれば、二次電池の大電流放電特性をより高めることができる。また、二次電池を過充電したときの電池の安定性を向上させることもできる。
【0027】
<本発明の電極およびその製造方法>
本発明の電極は、本発明の電極活物質を含有してなる。本発明の電極は、本発明の電極活物質、導電材およびバインダーを含む電極合剤を、電極集電体に担持させて製造することができる。
【0028】
導電材としては、天然黒鉛、人造黒鉛、コークス類、カーボンブラックなどの炭素材料などが挙げられる。バインダーとしては、熱可塑性樹脂を挙げることができ、具体的には、ポリフッ化ビニリデン(以下では「PVDF」とも言う)、ポリテトラフルオロエチレン、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン・フッ化ビニリデン系共重合体、六フッ化プロピレン・フッ化ビニリデン系共重合体、四フッ化エチレン・パーフルオロビニルエーテル系共重合体などのフッ素樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂等を挙げることができる。電極集電体としては、Al、Ni、ステンレスなどを用いることができる。
【0029】
電極集電体に電極合剤を担持させる方法としては、加圧成型する方法、または有機溶媒などを用いて電極合剤をペースト化して得られるペーストを電極集電体上に塗工して乾燥後プレスするなどして固着する方法が挙げられる。ペースト化する場合、電極活物質、導電材、バインダーおよび有機溶媒を用いて、ペーストを作製する。該有機溶媒としては、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルトリアミン等のアミン系溶媒;エチレンオキシド、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸メチル等のエステル系溶媒;ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。電極合剤を電極集電体上に塗工する方法としては、例えばスリットダイ塗工法、スクリーン塗工法、カーテン塗工法、ナイフ塗工法、グラビア塗工法、静電スプレー法等が挙げられる。
【0030】
<本発明のナトリウム二次電池>
本発明のナトリウム二次電池は、本発明の電極を、正極として有する。本発明のナトリウム二次電池は、例えば、本発明の電極(正極)、セパレータ、負極集電体に負極合剤が担持されてなる負極およびセパレータをこの順に積層または積層・巻回することによって電極群を得、この電極群を電池ケース内に収納し、電解質および有機溶媒を含有する電解液を電極群に含浸させることによって、製造することができる。
【0031】
ここで、この電極群の形状としては、例えば、この電極群を巻回の軸と垂直方向に切断したときの断面が、円、楕円、長円、長方形、角がとれたような長方形等となるような形状を挙げることができる。また、電池の形状としては、例えば、ペーパー型、コイン型、円筒型、角型などの形状を挙げることができる。
【0032】
<本発明のナトリウム二次電池−負極>
本発明のナトリウム二次電池で用いることができる負極としては、負極活物質を含む負極合剤を負極集電体に担持したもの、ナトリウム金属またはナトリウム合金などのナトリウムイオンを吸蔵・脱離可能な電極を用いることができる。負極活物質としては、ナトリウムイオンを吸蔵・脱離することのできる天然黒鉛、人造黒鉛、コークス類、カーボンブラック、熱分解炭素類、炭素繊維、有機高分子化合物焼成体などの炭素材料が挙げられる。炭素材料の形状としては、例えば天然黒鉛のような薄片状、メソカーボンマイクロビーズのような球状、黒鉛化炭素繊維のような繊維状、または微粉末の凝集体などのいずれでもよい。ここで、炭素材料は、導電材としての役割を果たす場合もある。
【0033】
また、負極活物質としては、酸化物、硫化物等のカルコゲン化合物のうち、正極よりも低い電位でナトリウムイオンを吸蔵・脱離することのできるものを用いることもできる。
【0034】
負極合剤は、必要に応じて、バインダー、導電材を含有してもよい。したがって、本発明のナトリウム二次電池の負極は、負極活物質およびバインダーの混合物を含有していてもよい。バインダーとしては、熱可塑性樹脂を挙げることができ、具体的には、PVDF、熱可塑性ポリイミド、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレンおよびポリプロピレンからなる群より選ばれる1種以上などを挙げることができる。
【0035】
負極集電体としては、Cu、Ni、ステンレスなどを挙げることができ、ナトリウムと合金を作り難い点、薄膜に加工しやすいという点で、Cuが好ましい。負極集電体に負極合剤を担持させる方法は、上記正極の場合と同様であり、加圧成型する方法、溶媒などを用いてペースト化して得られるペーストを負極集電体上に塗工して乾燥後にプレスするなどして固着する方法等が挙げられる。
【0036】
<本発明のナトリウム二次電池−セパレータ>
本発明のナトリウム二次電池で用いることができるセパレータの材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、含窒素芳香族重合体などの材質を挙げることができ、これらの材質からなる多孔質フィルム、不織布、織布などの形態を有する材料をセパレータとして用いることができる。また、これらの材質、材料を2種以上用いて、単層セパレータまたは積層セパレータとしてもよい。セパレータとしては、例えば特開2000−30686号公報、特開平10−324758号公報等に記載のセパレータを挙げることができる。セパレータの厚みは、電池の体積エネルギー密度が上がり、内部抵抗が小さくなるという点で、機械的強度が保たれる限り薄いほど好ましい。セパレータの厚みは一般に、5〜200μm程度が好ましく、より好ましくは5〜40μm程度である。
【0037】
セパレータは、好ましくは、熱可塑性樹脂を含有する多孔質フィルムを有する。二次電池において、セパレータは、正極と負極の間に配置される。二次電池の充放電時に、正極−負極間の短絡等が原因で電池内に異常電流が流れた際には、セパレータは、電流を遮断して、過大電流が流れることを阻止する(シャットダウンする)役割を果たすことが好ましい。ここで、シャットダウンは、通常の使用温度を越えた場合に、セパレータにおける多孔質フィルムの微細孔を閉塞することによりなされる。そしてシャットダウンした後に、ある程度の高温まで電池内の温度が上昇しても、その温度により破膜することなく、シャットダウンした状態を維持すること、換言すれば、耐熱性が高いことが好ましい。かかるセパレータとして、耐熱多孔層と多孔質フィルムとが積層されてなる積層フィルムなどの耐熱材料を有する多孔質フィルム、好ましくは、耐熱樹脂を含有する耐熱多孔層と熱可塑性樹脂を含有する多孔質フィルムとが積層されてなる積層フィルムを挙げることができる。このような耐熱材料を有する多孔質フィルムをセパレータとして用いることにより、本発明の二次電池の熱破膜をより防ぐことが可能となる。ここで、耐熱多孔層は、多孔質フィルムの両面に積層されていてもよい。
【0038】
<本発明のナトリウム二次電池−セパレータ−積層フィルム>
以下、セパレータとして好ましい耐熱多孔層と多孔質フィルムとが積層されてなる積層フィルムについて説明する。ここで、このセパレータの厚みは、通常5μm以上40μm以下、好ましくは20μm以下である。また、耐熱多孔層の厚みをA(μm)、多孔質フィルムの厚みをB(μm)としたときには、A/Bの値が、0.1以上1以下であることが好ましい。また更に、このセパレータは、イオン透過性の観点から、ガーレー法による透気度が50〜300秒/100ccであることが好ましく、50〜200秒/100ccであることがさらに好ましい。このセパレータの空孔率は、通常30〜80体積%、好ましくは40〜70体積%である。
【0039】
(耐熱多孔層)
積層フィルムにおいて、耐熱多孔層は、耐熱樹脂を含有することが好ましい。イオン透過性をより高めるために、耐熱多孔層の厚みは、1μm以上10μm以下、さらには1μm以上5μm以下、特に1μm以上4μm以下という薄い耐熱多孔層であることが好ましい。また、耐熱多孔層は微細孔を有し、その孔のサイズ(直径)は通常3μm以下、好ましくは1μm以下である。さらに、耐熱多孔層は、後述のフィラーを含有することもできる。また、耐熱多孔層は、無機粉末により構成されていてもよい。
【0040】
耐熱多孔層に含有される耐熱樹脂としては、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリサルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルケトン、芳香族ポリエステル、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルイミドを挙げることができ、耐熱性をより高める観点で、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルイミドが好ましく、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミドがより好ましい。さらにより好ましくは、耐熱樹脂は、芳香族ポリアミド(パラ配向芳香族ポリアミド、メタ配向芳香族ポリアミド)、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミドイミド等の含窒素芳香族重合体であり、とりわけ好ましくは芳香族ポリアミドであり、特に好ましくはパラ配向芳香族ポリアミド(以下、「パラアラミド」ということがある。)である。また、耐熱樹脂としては、ポリ−4−メチルペンテン−1、環状オレフィン系重合体を挙げることもできる。これらの耐熱樹脂を用いることにより、耐熱性を高めること、すなわち熱破膜温度を高めることができる。
【0041】
熱破膜温度は、耐熱樹脂の種類に依存し、使用場面、使用目的に応じ、選択使用される。通常、熱破膜温度は160℃以上である。耐熱樹脂として、上記含窒素芳香族重合体を用いる場合は、400℃程度に、また、ポリ−4−メチルペンテン−1を用いる場合は250℃程度に、環状オレフィン系重合体を用いる場合は300℃程度に、夫々、熱破膜温度をコントロールすることができる。また、耐熱多孔層が、無機粉末からなる場合には、熱破膜温度を、例えば、500℃以上にコントロールすることも可能である。
【0042】
上記パラアラミドは、パラ配向芳香族ジアミンとパラ配向芳香族ジカルボン酸ハライドの縮合重合により得られるものであり、アミド結合が芳香族環のパラ位またはそれに準じた配向位(例えば、4,4’−ビフェニレン、1,5−ナフタレン、2,6−ナフタレン等のような反対方向に同軸または平行に延びる配向位)で結合される繰り返し単位から実質的になるものである。パラアラミドとしては、パラ配向型またはパラ配向型に準じた構造を有するパラアラミド、具体的には、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)、ポリ(パラベンズアミド)、ポリ(4,4’−ベンズアニリドテレフタルアミド)、ポリ(パラフェニレン−4,4’−ビフェニレンジカルボン酸アミド)、ポリ(パラフェニレン−2,6−ナフタレンジカルボン酸アミド)、ポリ(2−クロロ−パラフェニレンテレフタルアミド)、パラフェニレンテレフタルアミド/2,6−ジクロロパラフェニレンテレフタルアミド共重合体等が例示される。
【0043】
上記芳香族ポリイミドとしては、芳香族の二酸無水物とジアミンの縮重合で製造される全芳香族ポリイミドが好ましい。二酸無水物の具体例としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4―ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物などがあげられる。ジアミンとしては、オキシジアニリン、パラフェニレンジアミン、ベンゾフェノンジアミン、3,3’−メチレンジアニリン、3,3’−ジアミノベンソフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、1,5’−ナフタレンジアミンなどがあげられる。また、溶媒に可溶なポリイミドが好適に使用できる。このようなポリイミドとしては、例えば、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物と、芳香族ジアミンとの重縮合物のポリイミドが挙げられる。
【0044】
上記芳香族ポリアミドイミドとしては、芳香族ジカルボン酸および芳香族ジイソシアネートを用いてこれらの縮合重合から得られるもの、芳香族二酸無水物および芳香族ジイソシアネートを用いてこれらの縮合重合から得られるものが挙げられる。芳香族ジカルボン酸の具体例としてはイソフタル酸、テレフタル酸などが挙げられる。また芳香族二酸無水物の具体例としては、無水トリメリット酸などが挙げられる。芳香族ジイソシアネートの具体例としては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、オルソトリランジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0045】
耐熱多孔層が、耐熱樹脂を含有する場合には、耐熱多孔層は、1種以上のフィラーを含有していてもよい。耐熱多孔層に含有されていてもよいフィラーは、有機粉末、無機粉末またはこれらの混合物のいずれから選ばれるものであってよい。フィラーを構成する粒子は、その平均粒子径が、0.01μm以上1μm以下であることが好ましい。フィラーの形状としては、略球状、板状、柱状、針状、ウィスカー状、繊維状等が挙げられ、いずれの粒子も用いることができるが、均一な孔を形成しやすいことから、略球状粒子であることが好ましい。略球状粒子としては、粒子のアスペクト比(粒子の長径/粒子の短径)が1以上1.5以下の範囲の値である粒子が挙げられる。粒子のアスペクト比は、電子顕微鏡写真により測定することができる。
【0046】
フィラーとしての有機粉末としては、例えば、スチレン、ビニルケトン、アクリロニトリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、アクリル酸メチル等の単独あるいは2種類以上の共重合体;ポリテトラフルオロエチレン、4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合体、4フッ化エチレン−エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド等のフッ素系樹脂;メラミン樹脂;尿素樹脂;ポリオレフィン;ポリメタクリレート等の有機物からなる粉末が挙げられる。有機粉末は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いることもできる。これらの有機粉末の中でも、化学的安定性の点で、ポリテトラフルオロエチレン粉末が好ましい。
【0047】
フィラーとしての無機粉末としては、例えば、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属水酸化物、炭酸塩、硫酸塩等の無機物からなる粉末が挙げられ、これらの中でも、導電性の低い無機物からなる粉末が好ましく用いられる。具体的に例示すると、アルミナ、シリカ、二酸化チタン、硫酸バリウムまたは炭酸カルシウム等からなる粉末が挙げられる。無機粉末は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いることもできる。これらの無機粉末の中でも、化学的安定性の点で、アルミナ粉末が好ましい。フィラーを構成する粒子のすべてがアルミナ粒子であることがより好ましく、フィラーを構成する粒子のすべてがアルミナ粒子であり、かつその一部または全部が略球状のアルミナ粒子であることがさらにより好ましい。因みに、耐熱多孔層が、無機粉末により構成される場合には、上記例示の無機粉末を用いればよく、必要に応じてバインダーと混ぜて用いればよい。
【0048】
耐熱多孔層が耐熱樹脂を含有する場合におけるフィラーの含有量は、フィラーの材質の比重にもよるが、例えば、フィラーを構成する粒子のすべてがアルミナ粒子である場合には、耐熱多孔層の総重量を100としたとき、フィラーの重量は、通常5以上95以下であり、好ましくは20以上95以下、より好ましくは30以上90以下である。これらの範囲は、フィラーの材質の比重に依存して適宜設定できる。
【0049】
(多孔質フィルム)
積層フィルムにおいて、多孔質フィルムは、微細孔を有し、シャットダウンすることが好ましい。この場合、多孔質フィルムは、熱可塑性樹脂を含有する。この多孔質フィルムの厚みは、通常、3〜30μmであり、さらに好ましくは3〜25μmである。多孔質フィルムは、上記耐熱多孔層と同様に、微細孔を有し、その孔のサイズは通常3μm以下、好ましくは1μm以下である。多孔質フィルムの空孔率は、通常30〜80体積%、好ましくは40〜70体積%である。二次電池において、通常の使用温度を越えた場合には、多孔質フィルムは、それを構成する熱可塑性樹脂の軟化により、微細孔を閉塞することができる。
【0050】
多孔質フィルムに含有される熱可塑性樹脂としては、80〜180℃で軟化するものを挙げることができ、二次電池における電解液に溶解しないものを選択すればよい。具体的には、熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂を挙げることができ、これらの2種以上の混合物を用いてもよい。より低温で軟化してシャットダウンさせるためには、熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンを含有することが好ましい。ポリエチレンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状ポリエチレン等のポリエチレンを挙げることができ、分子量が100万以上の超高分子量ポリエチレンを挙げることもできる。多孔質フィルムの突刺し強度をより高めるためには、熱可塑性樹脂は、超高分子量ポリエチレンを含有することが好ましい。また、多孔質フィルムの製造面において、熱可塑性樹脂は、低分子量(重量平均分子量1万以下)のポリオレフィンからなるワックスを含有することが好ましい場合もある。
【0051】
また、上記積層フィルムとは異なる耐熱材料を有する多孔質フィルムとしては、耐熱樹脂および/または無機粉末からなる多孔質フィルムや、耐熱樹脂および/または無機粉末が、ポリオレフィン樹脂や熱可塑性ポリウレタン樹脂等の熱可塑性樹脂フィルムに分散した多孔質フィルムを挙げることもできる。ここで、耐熱樹脂、無機粉末としては、上述のものを挙げることができる。
【0052】
<本発明のナトリウム二次電池−電解液または固体電解質>
本発明のナトリウム二次電池で用いることができる電解液において、電解質としては、NaClO4、NaPF6、NaAsF6、NaSbF6、NaBF4、NaCF3SO3、NaN(SO2CF32、低級脂肪族カルボン酸ナトリウム塩、NaAlCl4などが挙げられ、これらの2種以上の混合物を使用してもよい。これらの中でもフッ素を含むNaPF6、NaAsF6、NaSbF6、NaBF4、NaCF3SO3およびNaN(SO2CF32からなる群から選ばれた少なくとも1種を含むものを用いることが好ましい。
【0053】
本発明のナトリウム二次電池で用いることができる電解液において、有機溶媒としては、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、イソプロピルメチルカーボネート、ビニレンカーボネート、4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、1,2−ジ(メトキシカルボニルオキシ)エタンなどのカーボネート類;1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジメトキシプロパン、ペンタフルオロプロピルメチルエーテル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルジフルオロメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどのエーテル類;ギ酸メチル、酢酸メチル、γ−ブチロラクトンなどのエステル類;アセトニトリル、ブチロニトリルなどのニトリル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類;3−メチル−2−オキサゾリドンなどのカーバメート類;スルホラン、ジメチルスルホキシド、1,3−プロパンサルトンなどの含硫黄化合物;または上記の有機溶媒にさらにフッ素置換基を導入したものを用いることができる。有機溶媒として、これらのうちの二種以上を混合して用いてもよい。
【0054】
また、前記電解液の代わりに固体電解質を用いてもよい。固体電解質としては、例えばポリエチレンオキサイド系の高分子化合物、ポリオルガノシロキサン鎖もしくはポリオキシアルキレン鎖の少なくとも一種以上を含む高分子化合物などの有機系固体電解質を用いることができる。また、高分子化合物に電解液を保持させた、いわゆるゲルタイプのものを用いることもできる。またNa2S−SiS2、Na2S−GeS2、NaTi2(PO43、NaFe2(PO43、Na2(SO43、Fe2(SO42(PO4)、Fe2(MoO43等の無機系固体電解質を用いてもよい。これら固体電解質を用いて、安全性をより高めることができることがある。また、本発明のナトリウム二次電池において、固体電解質を用いる場合には、固体電解質がセパレータの役割を果たす場合もあり、その場合には、セパレータを必要としないこともある。
【実施例】
【0055】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものでもない。なお、特に断らない限り、充放電試験用の電極および二次電池の作製方法、ならびに粉末X線回折の測定方法は、下記の通りである。
【0056】
(1)電極(正極)の作製
電極活物質としての複合金属酸化物、導電材としてのアセチレンブラック(電気化学工業株式会社製)、およびバインダーとしてのPVDF(株式会社クレハ製、PolyVinylideneDiFluoride)を、電極活物質:導電材:バインダー=85:10:5(重量比)の組成となるようにそれぞれ秤量した。その後、まず複合金属酸化物とアセチレンブラックをメノウ乳鉢で十分に混合して得られた混合物に、N−メチル−2−ピロリドン(NMP:東京化成工業株式会社製)を適量加え、さらにPVDFを加えて引き続き均一になるように混合して、スラリー化した。得られたスラリーを、集電体である厚さ40μmのアルミ箔上に、アプリケータを用いて100μmの厚さで塗布し、これを乾燥機に入れ、NMPを除去させながら、十分に乾燥することによって電極シートを得た。この電極シートを電極打ち抜き機で直径1.5cmに打ち抜いた後、ハンドプレスにて十分に圧着し、電極(正極)を得た。
【0057】
(2)電池の作製
コインセル(宝泉株式会社製)の下側パーツの窪みに、アルミ箔を下に向けて正極を置き、そして電解液としての濃度1MのNaClO4/プロピレンカーボネート、セパレータとしてのポリプロピレン多孔質フィルム(厚み20μm)、および負極としての金属ナトリウム(アルドリッチ社製)を組み合わせて、電池を作製した。なお、電池の組み立てはアルゴン雰囲気のグローブボックス内で行った。
【0058】
(3)粉末X線回折測定
測定は、株式会社リガク製の粉末X線回折測定装置RINT2500TTR型を用いて、以下の条件で行った:
X線 :CuKα
電圧−電流 :40kV−140mA
測定角度範囲:2θ=10〜90°
ステップ :0.02°
スキャンスピード:4°/分
【0059】
比較例1(Na:Fe=1.00:1.00)
(1)複合金属酸化物の製造
金属含有化合物として、炭酸ナトリウム(Na2CO3:和光純薬工業株式会社製:純度99.8%)、および酸化鉄(II、III)(Fe34:株式会社高純度化学研究所製:純度99%)を用い、Na:Feのモル比が1.00:1.00となるように秤量し、乾式ボールミルで4時間にわたって混合して、金属含有化合物の混合物を得た。得られた金属含有化合物の混合物を、アルミナボートに充填し、電気炉を用いて空気雰囲気において加熱して650℃で2時間にわたって保持して焼成した。焼成は2回行った。このようにして比較例1の複合金属酸化物C1(NaFeO)を得た。比較例1の複合金属酸化物C1の粉末X線回折図形を図1に示している。図1より複合金属酸化物C1の結晶構造は層状構造であることがわかる。
【0060】
(2)ナトリウム二次電池の充放電性能評価
比較例1の複合金属酸化物C1を用いて電極を作製し、該電極をナトリウム二次電池の正極として用いて、電池を作製し、以下の条件で定電流充放電試験を実施した。
【0061】
充放電条件:
充電は、4.0Vまで0.1Cレート(10時間で完全充電する速度)でCC(コンスタントカレント:定電流)充電することにより行った。放電は、該充電速度と同じ速度で、CC放電を行い、電圧1.5Vでカットオフすることにより行った。次サイクル以降の充電、放電は、該充電速度と同じ速度で行い、1サイクル目と同様に、充電電圧4.0V、放電電圧1.5Vでカットオフした。
【0062】
この電池について、充放電を10サイクル繰り返したときの10サイクル目の放電容量を100とした(以下、実施例1〜8の電池における10サイクル目の放電容量は、比較例1の電池の充放電を10サイクル繰り返したときの10サイクル目の放電容量を100とした相対放電容量として示した)。また、1サイクル目の放電容量に対する10サイクル目の放電容量の維持率は44%であった。結果を表1に示している。
【0063】
実施例1(Na:Ca:Fe=0.99:0.01:1.00)
(1)複合金属酸化物の製造
金属含有化合物として、炭酸ナトリウム(Na2CO3:和光純薬工業株式会社製:純度99.8%)、炭酸カルシウム(CaCO:宇部マテリアルズ株式会社製、CS−3NA、純度99%以上)、および酸化鉄(II、III)(Fe34:株式会社高純度化学研究所製:純度99%)を用い、Na:Ca:Feのモル比が0.99:0.01:1.00となるように秤量し、乾式ボールミルで4時間にわたって混合して金属含有化合物の混合物を得た。得られた金属含有化合物の混合物を、アルミナボートに充填し、電気炉を用いて空気雰囲気において加熱して650℃で2時間にわたって保持して焼成した。焼成は2回行った。このようにして実施例1の複合金属酸化物E1(Na0.99Ca0.01FeO)を得た。実施例1の複合金属酸化物E1の粉末X線回折図形を図2に示している。図2より複合金属酸化物E1の結晶構造は層状構造であることがわかる。
【0064】
(2)ナトリウム二次電池の充放電性能評価
実施例1の複合金属酸化物E1を用いて電極を作製し、該電極をナトリウム二次電池の正極として用いて、電池を作製し、比較例1の場合と同様の条件で、定電流充放電試験を実施した。この電池について、充放電を10サイクル繰り返したときの10サイクル目の相対放電容量は134であり、また、1サイクル目の放電容量に対する10サイクル目の放電容量の維持率は44%であり、Caを含有させることにより、ナトリウム二次電池として充放電を繰り返したときの放電容量が大きくなることがわかった。結果を表1に示している。
【0065】
実施例2(Na:Ca:Fe=0.95:0.05:1.00)
(1)複合金属酸化物の製造
Na:Ca:Feのモル比が0.95:0.05:1.00となる量で金属含有化合物を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例2の複合金属酸化物E2(Na0.95Ca0.05FeO)を得た。実施例2の複合金属酸化物E2の粉末X線回折図形を図3に示している。図3より複合金属酸化物E2の結晶構造は層状構造であることがわかる。
【0066】
(2)ナトリウム二次電池の充放電性能評価
実施例2の複合金属酸化物E2を用いて電極を作製し、該電極をナトリウム二次電池の正極として用いて、電池を作製し、比較例1の場合と同様の条件で、定電流充放電試験を実施した。この電池について、充放電を10サイクル繰り返したときの10サイクル目の相対放電容量は160であり、また、1サイクル目の放電容量に対する10サイクル目の放電容量の維持率は52%であり、Caを含有させることにより、ナトリウム二次電池として充放電を繰り返したときの放電容量が大きくなることがわかった。結果を表1に示している。
【0067】
実施例3(Na:Ca:Fe=0.90:0.10:1.00)
(1)複合金属酸化物の製造
Na:Ca:Feのモル比が0.90:0.10:1.00となる量で金属含有化合物を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例3の複合金属酸化物E3(Na0.90Ca0.10FeO)を得た。実施例3の複合金属酸化物E3の粉末X線回折図形を図4に示している。図4より複合金属酸化物E3の結晶構造は層状構造であることがわかる。
【0068】
(2)ナトリウム二次電池の充放電性能評価
実施例3の複合金属酸化物E3を用いて電極を作製し、該電極をナトリウム二次電池の正極として用いて、電池を作製し、比較例1の場合と同様の条件で、定電流充放電試験を実施した。この電池について、充放電を10サイクル繰り返したときの10サイクル目の相対放電容量は170であり、また、1サイクル目の放電容量に対する10サイクル目の放電容量の維持率は59%であり、Caを含有させることにより、ナトリウム二次電池として充放電を繰り返したときの放電容量が大きくなることがわかった。結果を表1に示している。
【0069】
実施例4(Na:Ca:Fe=0.85:0.15:1.00)
(1)複合金属酸化物の製造
Na:Ca:Feのモル比が0.85:0.15:1.00となる量で金属含有化合物を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例4の複合金属酸化物E4(Na0.85Ca0.15FeO)を得た。実施例4の複合金属酸化物E4の粉末X線回折図形を図5に示している。図5より複合金属酸化物E4の結晶構造は層状構造であることがわかる。
【0070】
(2)ナトリウム二次電池の充放電性能評価
実施例4の複合金属酸化物E4を用いて電極を作製し、該電極をナトリウム二次電池の正極として用いて、電池を作製し、比較例1の場合と同様の条件で、定電流充放電試験を実施した。この電池について、充放電を10サイクル繰り返したときの10サイクル目の相対放電容量は168であり、また、1サイクル目の放電容量に対する10サイクル目の放電容量の維持率は60%であり、Caを含有させることにより、ナトリウム二次電池として充放電を繰り返したときの放電容量が大きくなることがわかった。結果を表1に示している。
【0071】
実施例5(Na:Ca:Fe=0.80:0.20:1.00)
(1)複合金属酸化物の製造
Na:Ca:Feのモル比が0.80:0.20:1.00となる量で金属含有化合物を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例5の複合金属酸化物E5(Na0.80Ca0.20FeO)を得た。実施例5の複合金属酸化物E5の粉末X線回折図形を図6に示している。図6より複合金属酸化物E5の結晶構造は層状構造であることがわかる。
【0072】
(2)ナトリウム二次電池の充放電性能評価
実施例5の複合金属酸化物E5を用いて電極を作製し、該電極をナトリウム二次電池の正極として用いて、電池を作製し、比較例1の場合と同様の条件で、定電流充放電試験を実施した。この電池について、充放電を10サイクル繰り返したときの10サイクル目の相対放電容量は163であり、また、1サイクル目の放電容量に対する10サイクル目の放電容量の維持率は61%であり、Caを含有させることにより、ナトリウム二次電池として充放電を繰り返したときの放電容量が大きくなることがわかった。結果を表1に示している。
【0073】
【表1】

【0074】
実施例6(Na:Sr:Fe=0.95:0.05:1.00)
(1)複合金属酸化物の製造
金属含有化合物として、炭酸ナトリウム(Na2CO3:和光純薬工業株式会社製:純度99.8%)、水酸化ストロンチウム八水和物(Sr(OH)2・8H2O:和光純薬工業株式会社製:純度99%以上)、および酸化鉄(II、III)(Fe34:株式会社高純度化学研究所製:純度99%)を用い、Na:Sr:Feのモル比が0.95:0.05:1.00となるように秤量し、乾式ボールミルで4時間にわたって混合して金属含有化合物の混合物を得た。得られた金属含有化合物の混合物を、アルミナボートに充填し、電気炉を用いて空気雰囲気において加熱して650℃で2時間にわたって保持して焼成した。焼成は2回行った。このようにして実施例6の複合金属酸化物E6(Na0.95Sr0.05FeO)を得た。
【0075】
(2)ナトリウム二次電池の充放電性能評価
実施例6の複合金属酸化物E6を用いて電極を作製し、該電極をナトリウム二次電池の正極として用いて、電池を作製し、比較例1の場合と同様の条件で、定電流充放電試験を実施した。この電池について、充放電を10サイクル繰り返したときの10サイクル目の相対放電容量は157であり、また、1サイクル目の放電容量に対する10サイクル目の放電容量の維持率は48%であり、Srを含有させることにより、ナトリウム二次電池として充放電を繰り返したときの放電容量が大きくなることがわかった。結果を表2に示している。
【0076】
実施例7(Na:Sr:Fe=0.90:0.10:1.00)
(1)複合金属酸化物の製造
Na:Sr:Feのモル比が0.90:0.10:1.00となる量で金属含有化合物を用いた以外は、実施例6と同様にして、実施例7の複合金属酸化物E7(Na0.90Sr0.10FeO)を得た。
【0077】
(2)ナトリウム二次電池の充放電性能評価
実施例7の複合金属酸化物E7を用いて電極を作製し、該電極をナトリウム二次電池の正極として用いて、電池を作製し、比較例1の場合と同様の条件で、定電流充放電試験を実施した。この電池について、充放電を10サイクル繰り返したときの10サイクル目の相対放電容量は154であり、また、1サイクル目の放電容量に対する10サイクル目の放電容量の維持率は47%であり、Srを含有させることにより、ナトリウム二次電池として充放電を繰り返したときの放電容量が大きくなることがわかった。結果を表2に示している。
【0078】
実施例8(Na:Sr:Fe=0.85:0.15:1.00)
(1)複合金属酸化物の製造
Na:Sr:Feのモル比が0.85:0.15:1.00となる量で金属含有化合物を用いた以外は、実施例6と同様にして、実施例8の複合金属酸化物E8(Na0.85Sr0.15FeO)を得た。
【0079】
(2)ナトリウム二次電池の充放電性能評価
実施例8の複合金属酸化物E8を用いて電極を作製し、該電極をナトリウム二次電池の正極として用いて、電池を作製し、比較例1の場合と同様の条件で、定電流充放電試験を実施した。この電池について、充放電を10サイクル繰り返したときの10サイクル目の相対放電容量は148であり、また、1サイクル目の放電容量に対する10サイクル目の放電容量の維持率は47%であり、Srを含有させることにより、ナトリウム二次電池として充放電を繰り返したときの放電容量が大きくなることがわかった。結果を表2に示している。
【0080】
【表2】

【0081】
比較例2(Na:Mn=1.00:1.00)
(1)複合金属酸化物の製造
金属含有化合物として、炭酸ナトリウム(Na2CO3:和光純薬工業株式会社製:純度99.8%)および酸化マンガン(IV)(MnO2:株式会社高純度化学研究所製:純度99.9%)を用い、Na:Mnのモル比が1.00:1.00となるように秤量し、乾式ボールミルで4時間にわたって混合して、金属含有化合物の混合物を得た。得られた金属含有化合物の混合物を、アルミナボートに充填し、電気炉を用いて空気雰囲気において加熱して800℃で2時間にわたって保持して焼成した。焼成は2回行った。このようにして比較例2の複合金属酸化物C2(NaMnO)を得た。
【0082】
(2)ナトリウム二次電池の充放電性能評価
比較例2の複合金属酸化物C2を用いて電極を作製し、該電極をナトリウム二次電池の正極として用いて、電池を作製し、比較例1の場合と同様の条件で、定電流充放電試験を実施した。この電池について、充放電を10サイクル繰り返したときの10サイクル目の放電容量を100とした(以下、実施例9の電池における10サイクル目の放電容量は、比較例2の電池の充放電を10サイクル繰り返したときの10サイクル目の放電容量を100とした相対放電容量として示した)。また、1サイクル目の放電容量に対する10サイクル目の放電容量の維持率は61%であった。結果を表3に示している。
【0083】
実施例9(Na:Ca:Mn=0.90:0.10:1.00)
(1)複合金属酸化物の製造
金属含有化合物として、炭酸ナトリウム(Na2CO3:和光純薬工業株式会社製:純度99.8%)、炭酸カルシウム(CaCO:宇部マテリアルズ株式会社製、CS−3NA、純度99%以上)および酸化マンガン(IV)(MnO2:株式会社高純度化学研究所製:純度99.9%)を用い、Na:Ca:Mnのモル比が0.90:0.10:1.00となるように秤量し、乾式ボールミルで4時間にわたって混合して金属含有化合物の混合物を得た。得られた金属含有化合物の混合物を、アルミナボートに充填し、電気炉を用いて空気雰囲気において加熱して800℃で2時間にわたって保持して焼成した。焼成は2回行った。このようにして実施例9の複合金属酸化物E9(Na0.90Ca0.10MnO)を得た。
【0084】
(2)ナトリウム二次電池の充放電性能評価
実施例9の複合金属酸化物E9を用いて電極を作製し、該電極をナトリウム二次電池の正極として用いて、電池を作製し、比較例1の場合と同様の条件で、定電流充放電試験を実施した。この電池について、充放電を10サイクル繰り返した10サイクル目の相対放電容量は120であり、1サイクル目の放電容量に対する10サイクル目の放電容量の維持率は86%であり、Caを含有させることにより、ナトリウム二次電池として充放電を繰り返したときの放電容量が大きくなることがわかった。結果を表3に示している。
【0085】
【表3】

【0086】
比較例3(Na:M2=1.00:1.00、MはMn、FeおよびNiである。)
(1)複合金属酸化物の製造
金属含有化合物として、炭酸ナトリウム(Na2CO3:和光純薬工業株式会社製:純度99.8%)、酸化マンガン(IV)(MnO2:株式会社高純度化学研究所製:純度99.9%)、酸化鉄(II、III)(Fe34:株式会社高純度化学研究所製:純度99%)、および酸化ニッケル(II)(NiO:株式会社高純度化学研究所製:純度99%)を用い、Na:Mn:Fe:Niのモル比が1.00:0.60:0.20:0.20となるように秤量し、乾式ボールミルで4時間にわたって混合して、金属含有化合物の混合物を得た。得られた金属含有化合物の混合物を、アルミナボートに充填し、電気炉を用いて空気雰囲気において加熱して800℃で2時間にわたって保持して焼成した。焼成は2回行った。このようにして比較例3の複合金属酸化物C3(NaMn0.6Fe0.2Ni0.2)を得た。比較例3の複合金属酸化物C3の粉末X線回折図形を図7に示している。図7より複合金属酸化物E5の結晶構造は層状構造であることがわかる。
【0087】
(2)ナトリウム二次電池の充放電性能評価
比較例3の複合金属酸化物C3を用いて電極を作製し、該電極をナトリウム二次電池の正極として用いて、電池を作製し、比較例1の場合と同様の条件で、定電流充放電試験を実施した。この電池について、充放電を10サイクル繰り返したときの10サイクル目の放電容量を100とした(以下、実施例10の電池における10サイクル目の放電容量は、比較例3の電池の充放電を10サイクル繰り返したときの10サイクル目の放電容量を100とした相対放電容量として示した)。また、1サイクル目の放電容量に対する10サイクル目の放電容量の維持率は88%であった。結果を表4に示している。
【0088】
実施例10(Na:Mg:M2=0.90:0.10:1.00、MはMn、FeおよびNiである。)
(1)複合金属酸化物の製造
金属含有化合物として、炭酸ナトリウム(Na2CO3:和光純薬工業株式会社製:純度99.8%)、酸化マグネシウム(MgO:和光純薬工業株式会社製:純度99%以上)、酸化マンガン(IV)(MnO:株式会社高純度化学研究所製:純度99.9%)、酸化鉄(II、III)(Fe34:株式会社高純度化学研究所製:純度99%)、および酸化ニッケル(II)(NiO:株式会社高純度化学研究所製:純度99%)を用い、Na:Mg:Mn:Fe:Niのモル比が0.90:0.10:0.60:0.20:0.20となるように秤量し、乾式ボールミルで4時間にわたって混合して金属含有化合物の混合物を得た。得られた金属含有化合物の混合物を、アルミナボートに充填し、電気炉を用いて空気雰囲気において加熱して800℃で2時間にわたって保持して焼成した。焼成は2回行った。このようにして実施例10の複合金属酸化物E10(Na0.90Mg0.10Mn0.6Fe0.2Ni0.2)を得た。実施例10の複合金属酸化物E10の粉末X線回折図形を図8に示している。図8より複合金属酸化物E10の結晶構造は層状構造であることがわかる。
【0089】
(2)ナトリウム二次電池の充放電性能評価
実施例10の複合金属酸化物E10を用いて電極を作製し、該電極をナトリウム二次電池の正極として用いて、電池を作製し、比較例1の場合と同様の条件で、定電流充放電試験を実施した。この電池について、充放電を10サイクル繰り返した10サイクル目の相対放電容量は119であり、1サイクル目の放電容量に対する10サイクル目の放電容量の維持率は96%であり、Mgを含有させることにより、ナトリウム二次電池として充放電を繰り返したときの放電容量が大きくなることがわかった。結果を表4に示している。
【0090】
【表4】

【0091】
製造例(積層フィルムの製造)
(1)耐熱多孔層用塗工液の製造
NMP4200gに塩化カルシウム272.7gを溶解した後、パラフェニレンジアミン132.9gを添加して完全に溶解させた。得られた溶液に、テレフタル酸ジクロライド243.3gを徐々に添加して重合し、パラアラミドを得て、さらにNMPで希釈して、濃度2.0重量%のパラアラミド溶液(A)を得た。得られたパラアラミド溶液100gに、アルミナ粉末(a)2g(日本アエロジル社製、アルミナC、平均粒子径0.02μm)とアルミナ粉末(b)2g(住友化学株式会社製スミコランダム、AA03、平均粒子径0.3μm)とをフィラーとして計4g添加して混合し、ナノマイザーで3回処理し、さらに1000メッシュの金網で濾過、減圧下で脱泡して、スラリー状塗工液(B)を製造した。パラアラミドおよびアルミナ粉末の合計重量に対するアルミナ粉末(フィラー)の重量は、67重量%となる。
【0092】
(2)積層フィルムの製造および評価
多孔質フィルムとしては、ポリエチレン製多孔質フィルム(膜厚12μm、透気度140秒/100cc、平均孔径0.1μm、空孔率50%)を用いた。厚み100μmのPETフィルムの上に上記ポリエチレン製多孔質フィルムを固定し、テスター産業株式会社製バーコーターにより、該多孔質フィルムの上に耐熱多孔層用スラリー状塗工液を塗工した。PETフィルム上の塗工された該多孔質フィルムを一体にしたまま、貧溶媒である水中に浸漬させ、パラアラミド多孔質膜(耐熱多孔層)を析出させた後、溶媒を乾燥させて、PETフィルムをはがして、耐熱多孔層と多孔質フィルムとが積層された積層フィルムを得た。積層フィルムの厚みは16μmであり、パラアラミド多孔質膜(耐熱多孔層)の厚みは4μmであった。積層フィルムの透気度は180秒/100cc、空孔率は50%であった。積層フィルムにおける耐熱多孔層の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察をしたところ、0.03μm〜0.06μm程度の比較的小さな微細孔と0.1μm〜1μm程度の比較的大きな微細孔とを有することがわかった。なお、積層フィルムの評価は、以下の(A)〜(C)のようにして行った。
【0093】
(A)厚み測定
積層フィルムの厚み、多孔質フィルムの厚みは、JIS規格(K7130−1992)に従い、測定した。また、耐熱多孔層の厚みとしては、積層フィルムの厚みから多孔質フィルムの厚みを差し引いた値を用いた。
(B)ガーレー法による透気度の測定
積層フィルムの透気度は、JIS P8117に基づいて、株式会社安田精機製作所製のデジタルタイマー式ガーレー式デンソメータで測定した。
(C)空孔率
得られた積層フィルムのサンプルを一辺の長さ10cmの正方形に切り取り、重量W(g)と厚みD(cm)を測定した。サンプル中のそれぞれの層の重量(Wi(g))を求め、Wiとそれぞれの層の材質の真比重(真比重i(g/cm3))とから、それぞれの層の体積を求めて、次式より空孔率(体積%)を求めた。
空孔率(体積%)=100×{1−(W1/真比重1+W2/真比重2+・・+Wn/真比重n)/(10×10×D)}
【0094】
上記実施例において、セパレータとして、製造例により得られた積層フィルムを用いれば、熱破膜をより防ぐことのできるナトリウム二次電池を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Na、M1およびM2(ここで、M1は、Mg、Ca、SrおよびBaからなる群より選ばれる1種以上の元素を表し、M2は、Mn、Fe、CoおよびNiからなる群より選ばれる1種以上の元素を表す。)を含み、Na:M1:M2のモル比が、a:b:1(ここで、aは0.5以上1未満の範囲の値であり、bは0を超え0.5以下の範囲の値であり、かつa+bは0.5を超え1以下の範囲の値である。)である複合金属酸化物。
【請求項2】
1が、Caを含む請求項1記載の複合金属酸化物。
【請求項3】
1が、Srを含む請求項1または2記載の複合金属酸化物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の複合金属酸化物を有する電極活物質。
【請求項5】
請求項4記載の電極活物質を有する電極。
【請求項6】
請求項5記載の電極を、正極として有するナトリウム二次電池。
【請求項7】
セパレータを更に有する請求項6記載のナトリウム二次電池。
【請求項8】
セパレータが、耐熱多孔層と多孔質フィルムとが積層されてなる積層フィルムを有するセパレータである請求項7記載のナトリウム二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−235434(P2010−235434A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45022(P2010−45022)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】