説明

複合電子部品

【課題】本発明は、電子機器を過電圧から確実に保護できる複合電子部品を提供することを目的とするものである。
【解決手段】本発明の複合電子部品は、内部導体11を有し、かつこの内部導体11の上方および下方に磁性体層12a〜12dが形成されたインダクタ部13と、前記インダクタ部13と互いに上下方向に積層された静電気対策部14と、前記磁性体層12a〜12dとで前記静電気対策部14を挟むように設けられた他の磁性体層12eとを備え、前記静電気対策部14は、一対の電極15a、15bを有するとともに、この一対の電極15a、15b間に設けられ通常は絶縁体として機能し所定以上の電圧が印加されると通電される静電気通過部16を有し、かつ前記一対の電極15a、15bのうち少なくとも一方が前記磁性体層12a〜12dに接するようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル機器やAV機器、情報通信端末等の各種電子機器を、静電気等による過電圧から保護するために使用される複合電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の複合電子部品は、図7に示すように、磁性材料からなる磁性体層1およびこの磁性体層1の内部に形成された内部導体2によって設けられたインダクタ部3と、ガラスセラミック材料からなる複数のセラミック層4の内部に形成された空洞部5、およびこの空洞部5を介して形成された一対の電極6によって設けられた静電気対策部7とを備えていた。なお、インダクタ部3はノイズフィルタとしての機能を有し、静電気対策部7は、通常は一対の電極6間には電気が流れないが、静電気等の過電圧印加時には一対の電極6間に放電が生じ、過電圧による電流を流すことにより、電子部品を保護する機能を有する。
【0003】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−294724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来の複合電子部品においては、通常想定される過電圧よりさらに電圧の高い過電圧を印加しなければ、一対の電極6間に放電が生じない可能性があるため、電子機器を静電気等による過電圧から十分に保護することができない場合があるという課題を有していた。
【0006】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、電子機器を過電圧から確実に保護できる複合電子部品を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を有するものである。
【0008】
本発明の請求項1に記載の発明は、内部導体を有し、かつこの内部導体の上方および下方に磁性体層が形成されたインダクタ部と、前記インダクタ部と互いに上下方向に積層された静電気対策部と、前記磁性体層とで前記静電気対策部を挟むように設けられた他の磁性体層とを備え、前記静電気対策部は、一対の電極を有するとともに、この一対の電極間に設けられ通常は絶縁体として機能し所定以上の電圧が印加されると通電される静電気通過部を有し、かつ前記一対の電極のうち少なくとも一方が前記磁性体層に接するようにしたもので、この構成によれば、磁性体層に含有された磁性材料を静電気通過部に拡散させることができるため、静電気通過部における絶縁抵抗を低下させることができ、これにより、比較的低い電圧の過電圧で静電気通過部に放電が生じるため、電子機器を過電圧から確実に保護できるという作用効果が得られるものである。
【発明の効果】
【0009】
以上のように本発明の複合電子部品は、静電気対策部に設けられた一対の電極のうち少なくとも一方がインダクタ部の磁性体層に接するようにしているため、磁性体層に含有された磁性材料を静電気通過部に拡散させることができ、これにより、静電気通過部における絶縁抵抗を低下させることができるため、比較的低い電圧の過電圧で静電気通過部に放電を生じさせることができ、この結果、電子機器を過電圧から確実に保護できるという優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施の形態における複合電子部品の分解斜視図
【図2】同複合電子部品の斜視図
【図3】同複合電子部品の等価回路図
【図4】同複合電子部品の他の例を示す分解斜視図
【図5】同複合電子部品の他の例を示す分解斜視図
【図6】同複合電子部品の他の例を示す分解斜視図
【図7】従来の複合電子部品の分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態における複合電子部品について図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1は本発明の一実施の形態における複合電子部品の分解斜視図、図2は同複合電子部品の斜視図である。
【0013】
本発明の一実施の形態における複合電子部品は、図1、図2に示すように、内部導体11を有し、かつこの内部導体11の上方および下方に第1〜第4の磁性体層12a〜12dが形成されたインダクタ部13と、前記インダクタ部13と互いに上下方向に積層された静電気対策部14と、前記第4の磁性体層12dとで前記静電気対策部14を挟むように設けられた他の磁性体層12eとを備え、前記静電気対策部14は、一対の第1、第2の電極15a、15bを有するとともに、この一対の第1、第2の電極15a、15b間に設けられ通常は絶縁体として機能し所定以上の電圧が印加されると通電する静電気通過部16を備え、前記一対の第1、第2の電極15a、15bのうち少なくとも一方が第4の磁性体層12dに接するようにしたものである。
【0014】
そして、前記インダクタ部13と静電気対策部14からなる積層体17が構成され、かつこの積層体17の両端部には第1の外部電極18aが設けられ、その両側部には第2の外部電極18bが設けられている。
【0015】
上記構成において、前記内部導体11は、渦巻き状に銀などの導電材料をめっきすることにより2つ形成され、それぞれ第2、第3の磁性体層12b、12cの上面に設けられている。そして、2つの内部導体11同士を、第3の磁性体層12cに形成されたビア電極11aによって接続することにより、ノイズフィルタとしての機能を有する1つのインダクタ19が設けられる。さらに、このインダクタ19の両端部は、積層体17の両端部に設けられた第1の外部電極18aに接続される。
【0016】
また、前記第1〜第4の磁性体層12a〜12dは、Cu−Ni−Znフェライト等の磁性材料によりシート状に構成され、絶縁性を有している。そして、下方の内部導体11の下面に第2の磁性体層12bが、内部導体11間に第3の磁性体層12cが、上方の内部導体11の上面に第4の磁性体層12dがそれぞれ形成されている。さらに、第2の磁性体層12bの下方には所定枚数の第1の磁性体層12aが設けられている。この構成により、内部導体11の上方および下方に第1、第2、第4の磁性体層12a、12b、12dが形成されることになる。そして、上記した内部導体11(インダクタ19)と第1〜第4の磁性体層12a〜12dとでインダクタ部13が構成される。
【0017】
そしてまた、前記第1、第2の電極15a、15bは、銀などの導電材料をめっきすることにより形成され、第1の電極15aは第4の磁性体層12dの上面に直接設けられ、第2の電極15bは、過電圧を流すためのガラスセラミックからなる絶縁層20の上面に設けられている。また、第1の電極15aは2つ形成され、これらは互いに接することはなく、かつ、この2つの第1の電極15aはそれぞれ積層体17の両端部に設けられた第1の外部電極18aを介してインダクタ19の両端部に接続されている。さらに、第2の電極15bの両端部は、積層体17の両側部に設けられた第2の外部電極18bに接続されている。なお、第4の磁性体層12dと第1、第2の電極15a、15bとの間に、非磁性体層を形成してもよい。
【0018】
また、絶縁層20には空洞部21が設けられ、この空洞部21を介して第2の電極15bと2つの第1の電極15aとが対向している。そしてまた、第2の電極15bの上面には、ガラスセラミックからなる上部絶縁層22が形成され、絶縁層20、空洞部21および上部絶縁層22によって静電気通過部16が構成されている。さらに、この静電気通過部16は、通常では絶縁体として機能し、第1、第2の電極15a、15b間(第1の外部電極18a同士間)に所定以上の静電気等による過電圧が印加されると通電される。このとき、この静電気通過部16においては、過電圧が印加されると、空洞部21の周囲の絶縁層20を電流が流れる。なお、この空洞部21は、焼成消失材、例えば樹脂ペーストにアクリルビーズ粒子を含有したものを貫通孔に充填し、積層体17を焼成すると同時に焼き飛ばすことにより形成される。
【0019】
上述したような構成とすることより、図3に示すような等価回路が得られる。図3において、通常はインダクタ部13を差動電流が流れ、一定の電圧以上の電圧が印加されたときは、静電気対策部14に当該静電気パルスを放電させ、インダクタ部13の下流にある素子等を保護する。なお、図3では、インダクタ部13、静電気対策部14はπ型となるように構成しているが、第1の電極15aを1つにしてL型になるように構成してもよい。
【0020】
また、上部絶縁層22の上面に磁性材料からなる他の磁性体層12eが形成されている。すなわち、静電気通過部16は、第1〜第4の磁性体層12a〜12dのうち最上層の第4の磁性体層12dと他の磁性体層12eとで挟まれることになり、これにより、ガラスセラミックからなる絶縁層20、上部絶縁層22を磁性体で挟むことができる。
【0021】
なお、第1〜第4の磁性体層12a〜12d、他の磁性体層12e、絶縁層20、上部絶縁層22の枚数は、図1に示された枚数に限定されるものではない。
【0022】
そしてまた、前記第1、第2の外部電極18a、18bは、積層体17の両端部、両側部に銀を印刷することによって形成されている。また、第1、第2の外部電極18a、18bの表面には、ニッケルめっき層、すずめっき層が施されている。なお、この第1、第2の外部電極18a、18bは、積層体17を焼成した後に形成する。
【0023】
上記したように本発明の一実施の形態においては、2つの内部導体11を有し、かつこの内部導体11の上方および下方に第1〜第4の磁性体層12a〜12dが形成されたインダクタ部13と、前記インダクタ部13の上方に積層された静電気対策部14とを備え、前記静電気対策部14は、一対の電極15a、15bを有するとともに、この一対の電極15a、15b間に設けられ通常は絶縁体として機能し所定以上の電圧が印加されると通電される静電気通過部16を備え、かつ前記第1の電極15aが第4の磁性体層12dに接するようにしているため、静電気通過部16における絶縁抵抗を低下させることができ、これにより、比較的低い電圧の静電気等の過電圧でも静電気通過部16に放電が生じるため、電子機器を過電圧から確実に保護できるという効果が得られるものである。
【0024】
すなわち、通常時はノイズフィルタとして機能させ、静電気等による過電圧が印加された異常時には過電圧を静電気対策部14で放電させて、ノイズと過電圧の両方から電子機器を確実に保護することができる。
【0025】
ここで、第1の電極15aが第4の磁性体層12dに接するようにすると、静電気通過部16における絶縁抵抗が低下するのは、積層体17を焼成することによって、絶縁層20を構成するガラスセラミックに第4の磁性体層12dや非磁性体層に含有された異種材料の不純物が拡散するためであると考えられる。この不純物としてはFe23、CuO、Ni、内部導体11からのAg等が考えられる。
【0026】
また、ガラスセラミックからなる絶縁層20、上部絶縁層22を、磁性材料からなる第1〜第4の磁性体層12a〜12dと他の磁性体層12eとで挟むように構成しているため、ガラスセラミックと磁性材料との収縮率の違いによるクラックの発生を防止できる。
【0027】
したがって、ガラスセラミックからなる絶縁層20に異種材料の第4の磁性体層12dを積層し、ガラスセラミックに磁性材料を拡散させて絶縁層20の見かけ上の絶縁抵抗を低下させるとともに、異種材料積層によるクラックの発生を、他の磁性体層12eを形成することにより防止できるようにしている。
【0028】
さらに、インダクタ部13をノイズフィルタとして機能させるための磁性材料を、静電気通過部16における絶縁抵抗を低下させる機能としても活用できるため、生産性や材料費の点で有効である。また、第4の磁性体層12d(非磁性体層)と第1の電極15aとの間にガラスセラミックからなる絶縁層20を形成していないため、低背化にも有利となる。
【0029】
なお、上記本発明の一実施の形態においては、インダクタ部13の上方に静電気対策部14を積層したものについて説明したが、図4に示すように、インダクタ部13の下方にも静電気対策部14を形成して、インダクタ部13を2つの静電気対策部14でサンドイッチするように構成してもよい。この場合は、上方の静電気対策部品14内では第2の電極15bを第1の電極15aの上方に配置し、下方の静電気対策部14内では第1の電極15aを第2の電極15bの上方に配置し、かつ第2の電極15bを上方の静電気対策部14に形成し、下方の静電気対策部14と第2の磁性体層12bとの間の第1の磁性体層12aは不要となる。また、他の磁性体層12eを最上層、最下層にそれぞれ形成し、他の磁性体層12eと第2〜第4の磁性体層12b〜12dとで静電気対策部14を挟むようにする。
【0030】
さらに、図5に示すように、インダクタ19を2つ形成し、インダクタ部13をコモンモードノイズフィルタとしてもよい。この場合は、インダクタ19同士を上下に積層し、少なくともインダクタ19間に非磁性層24を設けるようにする。また、インダクタ19が2つ形成されることから、これに対応するために電極15aを2対設ける必要がある。なお、前記非磁性層24の所定箇所には磁性材料からなる磁性部25を形成する。
【0031】
また、インダクタ部13をコモンモードノイズフィルタとするときも、図6に示すように、インダクタ部13の下方にも静電気対策部14を形成することができる。
【0032】
そしてまた、静電気対策部14において、空洞部21を介して第1、第2の電極15a、15bが対向するように構成したが、第1、第2の電極15a、15bを同一面に直線状に形成するとともに、この第1、第2の電極15a、15bの各先端部同士が対向するように構成して、第1、第2の電極15a、15bの先端部間で静電気等の過電圧が通電されるようにしてもよい。
【0033】
さらに、上部絶縁層22を、ガラスセラミックではなく磁性体材料で構成すれば、磁性材料を静電気通過部16により多く拡散させることができるため、静電気通過部16における絶縁抵抗をより低下させることができ、これにより、低い電圧の過電圧で放電が生じるため、電子機器を静電気等の過電圧からより確実に保護できる。
【0034】
また、上記した説明では、インダクタ部13を単品としたが、インダクタ部13を複数設けて、多連タイプとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明に係る複合電子部品は、電子機器を過電圧から確実に保護できるという効果を有するものであり、特にデジタル機器やAV機器、情報通信端末等の各種電子機器を、静電気等による過電圧から保護するために使用される複合電子部品等に適用することにより有用となるものである。
【符号の説明】
【0036】
11 内部導体
12a〜12d 第1〜第4の磁性体層
12e 他の磁性体層
13 インダクタ部
14 静電気対策部
15a、15b 第1、第2の電極
16 静電気通過部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部導体を有し、かつこの内部導体の上方および下方に磁性体層が形成されたインダクタ部と、前記インダクタ部と互いに上下方向に積層された静電気対策部と、前記磁性体層とで前記静電気対策部を挟むように設けられた他の磁性体層とを備え、前記静電気対策部は、一対の電極を有するとともに、この一対の電極間に設けられ通常は絶縁体として機能し所定以上の電圧が印加されると通電される静電気通過部を有し、かつ前記一対の電極のうち少なくとも一方が前記磁性体層に接するようにした複合電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−198793(P2011−198793A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−60598(P2010−60598)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】