説明

複合顕微鏡および複合顕微鏡のケーブル支持装置

【課題】装着されるケーブル付きの付属機器に制約を生じることなく、安価で汎用性の高い複合顕微鏡を実現する。
【解決手段】レボルバ15に対物レンズ18と、ケーブル31が接続されるSTM検出部30を混在させて装着する複合顕微鏡10において、レボルバ15の回転中心軸15aの近傍でケーブル31を保持するケーブル保持部材43を設け、STM検出部30に特別な改造等を必要とすることなく、低コストかつ高い汎用性にてレボルバ15の回動時のケーブル31の遊動による経路変動等によるケーブル31やSTM検出部30における好ましくない負荷の発生を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合顕微鏡および複合顕微鏡のケーブル支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、微小試料を観察できる光学顕微鏡と併用すべく、走査型プローブ顕微鏡等に代表されるような様々な計測器ユニットが小型化され、光学顕微鏡に装備されているレボルバに対して、一部の対物レンズの代わりに計測器ユニットを装着して使用される機会が増えてきた。
これにより光学顕微鏡の持つ観察方法に加えて、試料を様々な方法により観察することが可能となる。
【0003】
しかし、計測器ユニットを装着するには計測器ユニットと外部に設けられたコントローラとの間で信号や電力のやり取りが必要であり、信号や電力の伝達を、ケーブル等を用いて行う場合が多い。
【0004】
例えば、計測器ユニットとして、走査型プローブ顕微鏡(SPM)の一種である走査型トンネル顕微鏡(STM検出部)と、一般的な光学顕微鏡を複合的に用いた複合顕微鏡として以下の特許文献1に開示された例がある。
【0005】
ここで一般的なSTM(走査型トンネル顕微鏡)について説明する。
STMは、STM検出部に装着されたカンチレバーと呼ばれる深針で試料面上を走査し、カンチレバーと試料間に発生するトンネル電流を用いて、原子レベルの3次元表面形状測定を可能とする顕微鏡である。
【0006】
このSTM検出部にはXYZの各軸方向に屈曲、伸縮可能な微動素子が搭載され、この微動素子にバイアス電圧を印加し、試料に対してZ方向にアプローチしてある領域に達すると、カンチレバーと試料との間にトンネル電流が発生する。
【0007】
そして、微動素子を用いてカンチレバーが試料面を走査し、例えば、カンチレバーと試料との間のトンネル電流値が一定になるようにフィードバックすることで試料の表面形状を画像化する。
このフィードバックはSTM検出部内の微動素子とコントローラの間で行うため、信号や電力のやり取りが必須で外部との間で信号等の伝達が必要となる。
【0008】
このため、特許文献1では、レボルバ側に、複数の微動素子を駆動するためのリード線に接続された複数の接点と、カンチレバーに対する電圧印加のためのリード線に接続された接点を備えた支持部を固定する。
【0009】
そして、微動素子およびカンチレバーを備え、支持部に着脱される微動素子ブロックの側には、前記支持部に対向する端面に、微動素子に接続される複数のコンタクトピンと、カンチレバーに接続されるコンタクトピンを配置し、微動素子ブロックが支持部に装着される際に、複数の微動素子を駆動するためのリード線に接続された接点と微動素子に接続される複数のコンタクトピン、およびカンチレバーに対する電圧印加のためのリード線に接続された接点とカンチレバーに接続されるコンタクトピンが同時に接触して導通状態となる構成としている。
【0010】
このような特許文献1の構成によれば、外部との間における信号および電力のやり取りを接点方式によって実現することでSTM観察が可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平2−64401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上述の従来技術は接点方式であるため、例えばレボルバの回転時の衝撃や振動等の外的要因によって機器の動作が不安定となる懸念がある。
【0013】
また、信号のやり取りにはコンタクトピンと接点を用いているが、微動素子の制御には高電圧の印加が必要であるため、接点接続部におけるEMI(Electro Magnetic Interference)等のノイズ防止のためシールド対策が別途必要になり、コスト高になるという技術的課題もある。
【0014】
さらに、計測機器の市場では、ケーブル付きの計測器ユニットが一般的であり、このような一般のケーブル付きの計測機器製品を、特許文献1のような接点接続機構に装着可能とするためには、計測機器の側に大規模な設計変更が必要となり、使用可能な計測機器製品が限定され、汎用性が低い。
【0015】
本発明の目的は、装着されるケーブル付きの付属機器に制約を生じることなく、安価で汎用性の高い複合顕微鏡を実現することが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の観点は、複数の対物レンズが着脱可能で回転可能なレボルバを備え、前記レボルバに付属機器が装着可能な複合顕微鏡であって、
前記付属機器に接続されたケーブルを前記レボルバの回転中心部に引き回すケーブル支持手段を具備した複合顕微鏡を提供する。
【0017】
本発明の第2の観点は、複数の対物レンズが着脱可能で回転可能なレボルバに付属機器が装着される複合顕微鏡のケーブル支持装置であって、
前記付属機器に接続されるケーブルが挿通されるケーブル保持部材と、
前記付属機器が着脱自在に装着される前記レボルバの第1装着穴とは異なる第2装着穴に着脱自在に装着される基体部と、
一端部が前記基体部に支持され、他端部に前記ケーブル保持部材を保持し、当該ケーブル保持部材を前記レボルバの回転中心部に位置決めする支持アームと、
を含む複合顕微鏡のケーブル支持装置を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、装着されるケーブル付きの付属機器に制約を生じることなく、安価で汎用性の高い複合顕微鏡を実現することが可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施の形態である複合顕微鏡の構成例を示す略側面図である。
【図2】本発明の一実施の形態である複合顕微鏡の構成例の一部を拡大して示す略側面図である。
【図3】本発明の一実施の形態である複合顕微鏡の構成例の一部を、レボルバの軸方向からみた略平面図である。
【図4】本発明の一実施の形態の変形例である複合顕微鏡におけるケーブル支持装置の構成例を示す略側面図である。
【図5】本発明の他の実施の形態である複合顕微鏡の構成例を示す一部破断略側面図である。
【図6】本発明の他の実施の形態である複合顕微鏡におけるレボルバの構成例を示す略平面図である。
【図7】本発明のさらに他の実施の形態である複合顕微鏡の構成例を示す一部破断略側面図である。
【図8】本発明のさらに他の実施の形態である複合顕微鏡の構成例の一部を取り出して示す略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本実施の形態では、一態様として、対物レンズを複数装着可能で回転可能なレボルバと、顕微鏡と組み合わせて複合的に使用される付属機器と、付属機器を制御するためのケーブルと、付属機器から引き出されたケーブルをレボルバの回転中心で引き回し、ステージもしくはステージ上に配置された試料にケーブルが接触することを防止するための機構を備える。
【0021】
このような構成によれば、既存の顕微鏡や付属機器等に大きな変更を加えることなく、安価で汎用性および信頼性の高い複合顕微鏡を提供することができる。
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
なお、以下の本実施の形態の説明では、各図において、X、Y、Zの各方向は図示の通りとし、上下方向をZ方向、X−Y平面は水平面とする。
【0023】
(実施の形態1)
図1は、本発明の一実施の形態である複合顕微鏡の構成例を示す略側面図である。
図2は、本発明の一実施の形態である複合顕微鏡の構成例の一部を拡大して示す略側面図である。
図3は、本発明の一実施の形態である複合顕微鏡の構成例の一部を、レボルバの軸方向からみた略平面図である。
【0024】
図1に例示されるように、本実施の形態の複合顕微鏡10は、ベース11に立設された略逆L字形のコラム12には鏡筒16がZ方向に設けられ、鏡筒16の上端側には、接眼レンズ17が傾斜して設けられている。
【0025】
鏡筒16の下端側を支持するコラム12の下面には、Z方向に所望の角度に傾斜した回転中心軸15a(回転中心部)を有する略凸欠球形のレボルバ15が回転自在に設けられている。
【0026】
ベース11における鏡筒16の光軸上には、XYステージ13およびZステージ14が設けられ、Zステージ14に載置される試料90のX−Y−Zの三次元的な変位による位置決めが可能になっている。
【0027】
コラム12には、例えばマイコン等で構成される内部コントローラ19が設けられている。そして、この内部コントローラ19が、外部に設けられたコントローラ20からケーブル21を介して指令を受けることにより、XYステージ13、Zステージ14やレボルバ15の変位動作の制御を行う構成となっている。
【0028】
本実施の形態の場合、レボルバ15には、図3に例示されるように、回転中心軸15aの回りの同心円上に、周方向に等間隔で複数のレンズ装着穴A(第1装着穴)〜レンズ装着穴Fが設けられている。
【0029】
これらのレンズ装着穴A〜レンズ装着穴Fの各々の内周部には、図示しない雌ねじ部が、回転中心軸15aに対して放射状に傾斜した中心軸を持つように形成されており、所望の対物レンズ18の基端部が螺着されることにより、当該対物レンズ18を着脱自在に装着することが可能になっている。
【0030】
なお、以下の説明では、対物レンズを総称する場合に対物レンズ18と記し、個別の対物レンズについては対物レンズ18a〜対物レンズ18c等と記す。
【0031】
レンズ装着穴A〜レンズ装着穴Fの中心軸の回転中心軸15aに対する傾斜角度は、回転中心軸15aのZ軸方向に対する傾斜角度と一致するように構成され、これにより、レンズ装着穴A〜レンズ装着穴Fの任意の一つが選択的に鏡筒16の光軸(Z軸)上に位置決めされたときに、選択された対物レンズ18の光軸が、鏡筒16の光軸(Z軸)と一致する構成となっている。
【0032】
本実施の形態の場合、一例として、レンズ装着穴A〜レンズ装着穴Fのうち、レンズ装着穴Aには、対物レンズ18の代わりに、例えば、走査型プローブ顕微鏡(SPM)の一種である走査型トンネル顕微鏡のプローブ部分を構成するSTM検出部30(付属機器)が、螺着されることによって着脱自在に装着されている。
【0033】
なお、STM検出部30は、一例であり、任意の走査型プローブ顕微鏡(SPM)のプローブ部分であるSPM検出部を、STM検出部30の代わりに装着することができる。
【0034】
また、他のレンズ装着穴B〜レンズ装着穴Dの各々において、レンズ装着穴Bには倍率×100の対物レンズ18aが装着され、レンズ装着穴Cには×20の対物レンズ18bが装着されている。
【0035】
また、本実施の形態の場合、STM検出部30が装着されたレンズ装着穴Aと回転中心軸15aを挟んで対角となるレンズ装着穴Dには、視野範囲の広い倍率×5の低倍用の対物レンズ18cが装着されている。
【0036】
レンズ装着穴Aに装着されたSTM検出部30にはXYZの各軸方向に屈曲、伸縮可能なピエゾ素子等の微動素子が搭載されているとともに、STM検出部30の試料90に面する下端面には探針(カンチレバー)が装着されている。
STM検出部30の側面からは、ケーブル31(ケーブル)が引き出され、外部のコントローラ20に接続されている。
【0037】
このケーブル31は、例えば、STM検出部30の内部に設けられた微動素子を駆動するための電力を供給する電源線や、STM検出部30の下端に突設される図示しない探針に電気信号を供給する信号線を含んでいる。
【0038】
なお、STM検出部30のケーブル31は、レボルバ15を回動させ、STM検出部30が鏡筒16の光軸(Z軸)上の試料観察位置に配置された際に最もケーブル31の負荷が小さくなるように引き出されている。
【0039】
本実施の形態の複合顕微鏡10の場合、このSTM検出部30のケーブル31を、回転中心軸15a上で引き回すためのケーブル支持装置40(ケーブル支持手段)を備えている。
【0040】
すなわち、レボルバ15の回転中心軸15a上には、ケーブル支持装置40のケーブル保持部材43が設けられ、STM検出部30に接続されたケーブル31を、回転中心軸15a上の近傍に位置決めして保持するように構成されている。
【0041】
図2に例示されるように、本実施の形態のケーブル支持装置40は、ケーブル保持部材43をレボルバ15の回転中心軸15a上に支持する支持穴42aが形成された支持アーム42と、レボルバ15の空いているレンズ装着穴E(第2装着穴)に螺着され、支持アーム42の基端部を支持する基体部41で構成されている。
【0042】
基体部41は、対物レンズ18と同じ雄ねじ部を備えており、レンズ装着穴A〜レンズ装着穴Eの任意の位置に着脱自在に装着可能となっている。
【0043】
ケーブル保持部材43は、軸方向にケーブルガイド穴43aが貫通して形成された筒体からなり、このケーブルガイド穴43aの中心軸がレボルバ15の回転中心軸15aとほぼ一致するように、支持アーム42および基体部41によって支持されている。
【0044】
そして、STM検出部30のケーブル31は、ケーブル保持部材43のケーブルガイド穴43aに挿通されることにより、レボルバ15が回動しても、常にレボルバ15の中心である回転中心軸15a上の引き回し経路に位置する構成となっている。
【0045】
また、複合顕微鏡10のコラム12には、ケーブル保持部材43を経由してコントローラ20に至るケーブル31を支持するケーブル受け部材44が装着され、リング状のケーブル止め部45によって、ケーブル31がケーブル受け部材44に沿うように固定されている。
【0046】
このケーブル受け部材44は、コラム12に対して、ベルトやねじ留め等で着脱自在に装着されている。
これにより、ケーブル保持部材43を経由してコントローラ20に至るケーブル31が垂れ下がって下方のZステージ14や試料90等に接触することが防止されている。
【0047】
このように、本実施の形態の複合顕微鏡10では、STM検出部30より出たケーブル31はケーブル保持部材43により、レボルバ15が回転した際でもレボルバの回転中心軸15aに沿うように保持されている。
【0048】
次に、本実施の形態の複合顕微鏡10の作用について説明する。
最初に、対物レンズ18とSTM検出部30が図3に例示されるように混在して装着された本実施の形態のレボルバ15の動きの一例について説明する。以下では、必要に応じてレンズ装着穴A〜レンズ装着穴Fの位置を単にA〜Fと記す。
【0049】
内部コントローラ19は、複合顕微鏡10の電源投入時にはDの×5の対物レンズ18cが試料観察位置にあるように、レボルバ15を制御するものとする。
内部コントローラ19が、対物レンズ18cを切り替える際には、図3において、時計回りにA→B→C→D→E→Fという順に切り替えられる。
【0050】
内部コントローラ19は、レボルバ15をFからAに切り替える際にはF→E→D→C→B→Aという順に切り替える。
よって、本実施の形態の複合顕微鏡10では、レボルバ15は、最大でも300°以上は回動しないものとする。
【0051】
また、内部コントローラ19は、レボルバ15が、A→F、もしくはF→Aには動かないようにし、その他の切り替えに関しては最短距離を動くようにレボルバ15を制御するものとする。
これにより、ケーブル31がレボルバ15の回動動作によって受ける負荷が最小となる。
【0052】
次に、上述のように一般的な光学顕微鏡機能とSTM検出部30を具備した構成の本実施の形態の複合顕微鏡10において、STM検出部30を用いて試料90の観察を行う手順の一例を説明する。
【0053】
複合顕微鏡10の電源を投入すると、まず、内部コントローラ19により、最も低倍率であるDの×5の対物レンズ18cが鏡筒16の光軸上の観察位置に移動され、試料90の表面上に配置される。
【0054】
次に、XYステージ13とZステージ14を用いて試料90の表面上に対物レンズ18cの焦点を合わせる。
低倍率の対物レンズ18cから徐々に高倍率の対物レンズの方向へとレボルバ15を回転させ、最後にSTM検出部30を試料90の直上の観察位置へ配置する。
【0055】
このとき、本実施の形態の場合には、上述のように、STM検出部30のケーブル31がケーブル保持部材43によってレボルバ15の回転中心軸15a上に保持されているため、レボルバ15の回転に伴うケーブル31の引き回し経路におけるレボルバ15の半径方向等の遊動変位が最小となり、ケーブル31および当該ケーブル31が接続されるSTM検出部30に作用する負荷を大幅に軽減することができる。
【0056】
次に、Zステージ14を用いて、トンネル電流が発生する領域までSTM検出部30の探針を試料90に近づける。
【0057】
STM検出部30に備えられた上述の図示しない微動素子を用いて探針が試料90の表面上を走査し、例えば、探針と試料90の表面のトンネル電流が一定になるようにフィードバック制御することで、コントローラ20において、試料90の表面形状を画像化する。
【0058】
上述のように、レボルバ15が回転する際には、そのままではケーブル31が大きく遊動するが、本実施の形態の複合顕微鏡10では、レボルバ15の回転中心である回転中心軸15a上にケーブル保持部材43を設け、ケーブル31をレボルバ15の回転中心近傍に保持することで遊動を抑制し、ケーブル31やSTM検出部30に作用する負荷を大幅に軽減することができる。
【0059】
また、ケーブル保持部材43を経由してコントローラ20に至るケーブル31の経路に、コラム12に支持されたケーブル受け部材44を設けることでケーブル31が試料90の表面やZステージ14等に接触することが確実に防止される。
【0060】
さらに、ケーブル31が付随するSTM検出部30において、対物レンズ18と同様にレボルバ15のレンズ装着穴A〜レンズ装着穴Fに装着可能な構成であれば、ケーブル31を、ケーブル保持部材43によってレボルバ15の回転中心に引き回すように装着可能であり、STM検出部30に接点等の特別な接続構造を設けるための改造が不要であり、STM検出部30を低コストで汎用性を損なうことなく製作できる。
【0061】
また、複合顕微鏡10の側では、既存のレンズ装着穴A〜レンズ装着穴Fの一つを利用してケーブル支持装置40の基体部41を装着するだけで済み、複合顕微鏡10の既存の本体構造自体に改造を加える必要がないので、低コストで汎用性の高い複合顕微鏡10を実現できる。
【0062】
さらに、レボルバ15において、STM検出部30が装着されるレンズ装着穴Aの対角位置(すなわち、回転中心軸15aを挟んで反対側の位置)に、最も低い倍率(×5)の対物レンズ18cを配置したことにより、レボルバ15の回動によるケーブル31のストレス負荷によって位置再現性が悪くなるという技術的課題も解消される。
【0063】
また、STM検出部30が鏡筒16の光軸上の試料観察位置の配置された際に最もケーブル31の負荷が小さくなる配置にすることで、試料90に対するSTM観察時の視野ズレ軽減を実現できる。
【0064】
さらに、レボルバ15の切替動作において、回動角度が、例えば300°以下に制限されるように、上述のような規則性を設けることでケーブル31やSTM検出部30に作用する負荷を軽減できる。
【0065】
以上のように、本実施の形態の複合顕微鏡10によれば、既存の光学顕微鏡に対して小さい変更規模で安価に、任意のSTM検出部30等の走査型プローブ顕微鏡の機能を付加した汎用性の高い複合顕微鏡を実現できる。
【0066】
図4は、本実施の形態の変形例である複合顕微鏡におけるケーブル支持装置の構成例を示す略側面図である。
この図4の変形例のケーブル支持装置40A(ケーブル支持手段)では、支持アーム42に対して、上述のケーブル保持部材43の代わりに、中央部に、ケーブル31が挿通されるスリット46aが貫通して形成されたケーブルブッシュ46を、ベアリング47を介して空転自在に配置した構成となっている。
【0067】
ケーブルブッシュ46は、例えばゴムや樹脂等の弾性体で構成され、スリット46aが弾性変形して拡開することにより、任意の太さのケーブル31を挿通して保持させることが可能である。
【0068】
この変形例のケーブル支持装置40Aの場合には、上述のケーブル支持装置40の効果に加えて、ケーブル31を保持するケーブルブッシュ46が支持アーム42に対して空転するので、レボルバ15の回動に伴ってケーブル31に作用する捻りストレス等が一層軽減される等の利点がある。
【0069】
また、ケーブルブッシュ46は、ケーブル保持部材43よりも薄くできるため、ケーブル支持装置40Aの全体を一層小形化できる利点もある。
すなわち、本実施の形態の複合顕微鏡10によれば、装着されるSTM検出部30等のケーブル付きの付属機器に制約を生じることなく、安価で汎用性の高い複合顕微鏡10を実現することができる。
【0070】
(実施の形態2)
図5は、本発明の他の実施の形態である複合顕微鏡の構成例を示す一部破断略側面図である。
図6は、本発明の他の実施の形態である複合顕微鏡におけるレボルバの構成例を示す略平面図である。
【0071】
この実施の形態2の複合顕微鏡10Aでは、上述した複合顕微鏡10の構成において、ケーブル支持装置40の代わりに、ケーブル支持構造50(ケーブル支持手段)を設けた点が異なり、他は同様である。
従って、本実施の形態2の複合顕微鏡10Aでは、上述の実施の形態1の複合顕微鏡10と共通する構成には同一の符号を付して、重複した説明は割愛する。
【0072】
本実施の形態2の複合顕微鏡10Aでは、ケーブル支持構造50として、レボルバ15の中央部の回転中心軸15aの方向に貫通するレボルバケーブル穴51と、このレボルバケーブル穴51に連通するように、鏡筒16を支持するコラム12の側に貫通して形成された筐体ケーブル穴52を具備した構成となっている。
【0073】
この場合、レボルバ15は、外周部を図示しないベアリング等でコラム12に回動自在に支持され、同じく、レボルバ15の外遊部に設けられた図示しないギア等によって回転駆動される構成となっている。
【0074】
このため、本実施の形態のレボルバ15の回転中心軸15aの近傍は、可動機構等が存在しないため、顕微鏡本来の機能になんら支障なく、簡便にレボルバ15の中心部にレボルバケーブル穴51を形成することが可能である。
【0075】
また、コラム12の側の筐体ケーブル穴52は、コラム12に支持される鏡筒16と干渉しない位置に設けられており、やはり、顕微鏡本来の機能になんら支障を生じることはない。
【0076】
そして、レボルバ15に一部の対物レンズ18の代わりに装着されたSTM検出部30のケーブル31は、このケーブル支持構造50のレボルバケーブル穴51および筐体ケーブル穴52に挿通されて外部に引き出され、外部のコントローラ20に接続されている。
【0077】
これにより、STM検出部30に接続されるケーブル31は、レボルバ15の回転中心軸15a上を経由して外部に引き回されるため、STM検出部30や対物レンズ18の切換のためにレボルバ15が回動しても、ケーブル31やSTM検出部30に大きな負荷が作用することが確実に防止される。
【0078】
この場合、ケーブル31は、レボルバケーブル穴51を通じてレボルバ15の背面側の上方で引き回されるので、ケーブル31が下方の試料90やZステージ14に接触することも確実に防止される。
すなわち、本実施の形態2の複合顕微鏡10Aによれば、上述の実施の形態1の場合と同様の効果が得られる。
【0079】
さらに、この複合顕微鏡10Aによれば、レボルバ15に設けられたレンズ装着穴A〜レンズ装着穴Fのすべてを、対物レンズ18やSTM検出部30の装着に利用できる、という利点がある。
【0080】
また、ケーブル支持構造50は、レボルバケーブル穴51および筐体ケーブル穴52を、レボルバ15およびコラム12にそれぞれ形成するだけなので、製作が簡単であり、既存の複合顕微鏡10Aの構造の簡単かつ低コストの改造で実現できる利点もある。
【0081】
(実施の形態3)
図7は、本発明のさらに他の実施の形態である複合顕微鏡の構成例を示す一部破断略側面図である。
【0082】
この実施の形態3の複合顕微鏡10Bは、ケーブル支持装置40の代わりに、レボルバ15の中央部に、回転中心軸15aと同軸に突設された円柱棒61を具備するケーブル支持構造60(ケーブル支持手段)を備えた点が、上述の実施の形態1の複合顕微鏡10と異なり、他の構成は同様である。
【0083】
すなわち、ケーブル支持構造60の円柱棒61は、基端部がベアリング62を介してレボルバ15の回転中心軸15aの同軸に、空転自在に支持されている。
そして、STM検出部30に接続されるケーブル31は、円柱棒61の外周に沿って軸方向に引き回され、ケーブル止め部材63によって円柱棒61に固定される。
【0084】
また、円柱棒61からコントローラ20に至るケーブル31は、コラム12の側に設けられたケーブル受け部材44およびケーブル止め部45によって固定されることは、上述の実施の形態1と同様である。
この実施の形態3の複合顕微鏡10Bでも、上述の実施の形態1と同様の効果が得られる。
【0085】
なお、上述の実施の形態1では、ケーブル31とケーブル受け部材44を締結するケーブル止め部45を設けたが、ケーブル受け部材44に、ケーブル31が嵌合して固定される溝や突起壁を設けて、ガイドのような構造にしてケーブル止め部45を省略する構成としてもよい。
【0086】
(実施の形態4)
図8は、本発明のさらに他の実施の形態である複合顕微鏡の構成例の一部を取り出して示す略側面図である。
【0087】
この実施の形態4では、上述の実施の形態1の複合顕微鏡10において、レボルバ15に対して、付属機器として、STM検出部30の代わりに、ケーブル71(ケーブル)が接続される対物レンズ用ピエゾスキャナ70(付属機器)を介して対物レンズ18を装着する場合を例示する。
【0088】
この対物レンズ用ピエゾスキャナ70は、一端に、レボルバ15のレンズ装着穴A〜レンズ装着穴Fのいずれかに螺着される雄ねじ部73が形成され、他端部には、対物レンズ18が螺着される雌ねじ部72が同軸に形成されるとともに、光路となる貫通穴74が軸方向に貫通して形成された中空の筒構造となっている。
【0089】
また、対物レンズ用ピエゾスキャナ70の壁面には、図示しないピエゾ素子等の複数の微動素子が配置され、ケーブル71を介して、外部から個々の微動素子に対して電圧を印加することにより、対物レンズ用ピエゾスキャナ70をX−Y−Zの各軸方向に独立に微小変形させることで、この対物レンズ用ピエゾスキャナ70に搭載された対物レンズ18のZ方向の微動による焦点調整や、鏡筒16の光軸方向に対する傾きの制御等が可能になっている。
【0090】
この対物レンズ用ピエゾスキャナ70におけるX−Y−Zの各軸方向に微動の分解能は、Zステージ14、XYステージ13よりも小さく、高精度である。
従って、対物レンズ用ピエゾスキャナ70は、Zステージ14、XYステージ13よりも高い解像度で対物レンズ18の変位を微小制御する等の用途に用いられる。
【0091】
すなわち、本実施の形態4に例示されるように、複合顕微鏡10に装着される付属機器としては、上述の走査プローブ顕微鏡等のSTM検出部30に限らず、ケーブル71を備えた対物レンズ用ピエゾスキャナ70等にも適用できるものである。
【0092】
なお、特に図示しないが、図8に例示されたケーブル支持装置40の代わりに、上述のケーブル支持装置40A、ケーブル支持構造50、ケーブル支持構造60等の手段を用いてケーブル71を保持してもよいことは言うまでもない。
【0093】
この場合にも、ケーブル保持部材43等によってレボルバ15の回動変位においてケーブル71に作用する負荷を大幅に軽減できるので、ケーブル71に作用する負荷の反作用で、対物レンズ用ピエゾスキャナ70やレボルバ15が歪むこと等に起因する障害や、観察精度の低下を防止できる利点がある。
【0094】
なお、本発明は、上述の実施の形態に例示した構成に限らず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、レボルバに装着される付属機器としては、走査プローブ顕微鏡や対物レンズ用ピエゾスキャナに限らず、ケーブルが接続された状態でレボルバに装着される一般の付属機器を広く用いることができる。
【0095】
(付記1)
対物レンズを複数装着可能で回転可能なレボルバと、
前記レボルバに計測器ユニットを装着可能な複合顕微鏡において、
前記レボルバの回転中心に計測器ユニットから出た計測器ユニット用制御コードを引き回す機構を有することを特徴とする前記複合顕微鏡。
【0096】
(付記2)
前記レボルバの回転中心に前記計測器ユニットから出た前記計測器ユニット用制御コードを保持するコード保持部材と、
前記コード保持部材を前記レボルバの回転中心に保持するコード保持部材保持部と、
前記計測器ユニットより引き出された前記計測器ユニット制御用コードと試料面もしくはステージ面との接触防止用コード受け部材と、を有することを特徴とする付記1記載の複合顕微鏡。
【0097】
(付記3)
前記接触防止用コード受け部材に、前記計測器ユニットより引き出された前記計測器ユニット制御用コードの暴れ防止用コード止め部を有することを特徴とする付記1,2記載の複合顕微鏡。
【0098】
(付記4)
前記レボルバの回転中心に穴を設け、前記計測器ユニットより引き出された前記計測器ユニット制御用コードを前記レボルバの回転中心の穴を通して引き回す機構を特徴とする付記1記載の複合顕微鏡。
【0099】
(付記5)
前記計測器ユニットより引き出された前記計測器ユニット制御用コードのレボルバ回転時のコードストレスによる視野ズレを防止するため、
前記レボルバの前記計測器ユニット装着部の対角に視野範囲の広い低倍用の対物レンズを配置することを特徴とする付記1〜4記載の複合顕微鏡。
【符号の説明】
【0100】
10 複合顕微鏡
10A 複合顕微鏡
10B 複合顕微鏡
11 ベース
12 コラム
13 XYステージ
14 Zステージ
15 レボルバ
15a 回転中心軸
16 鏡筒
17 接眼レンズ
18(18a〜18c) 対物レンズ
19 内部コントローラ
20 コントローラ
21 ケーブル
30 STM検出部
31 ケーブル
40 ケーブル支持装置
40A ケーブル支持装置
41 基体部
42 支持アーム
42a 支持穴
43 ケーブル保持部材
43a ケーブルガイド穴
44 ケーブル受け部材
45 ケーブル止め部
46 ケーブルブッシュ
46a スリット
47 ベアリング
50 ケーブル支持構造
51 レボルバケーブル穴
52 筐体ケーブル穴
60 ケーブル支持構造
61 円柱棒
62 ベアリング
63 ケーブル止め部材
70 対物レンズ用ピエゾスキャナ
71 ケーブル
72 雌ねじ部
73 雄ねじ部
74 貫通穴
90 試料
A〜F レンズ装着穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の対物レンズが着脱可能で回転可能なレボルバを備え、前記レボルバに付属機器が装着可能な複合顕微鏡であって、
前記付属機器に接続されたケーブルを前記レボルバの回転中心部に引き回すケーブル支持手段を具備したことを特徴とする複合顕微鏡。
【請求項2】
請求項1記載の複合顕微鏡において、
前記ケーブル支持手段は、
前記ケーブルが挿通されるケーブル保持部材と、
前記付属機器が着脱自在に装着される前記レボルバの第1装着穴とは異なる第2装着穴に着脱自在に装着される基体部と、
一端部が前記基体部に支持され、他端部に前記ケーブル保持部材を保持し、当該ケーブル保持部材を前記レボルバの前記回転中心部に位置決めする支持アームと、
を含むことを特徴とする複合顕微鏡。
【請求項3】
請求項2記載の複合顕微鏡において、
さらに、前記ケーブル保持部材を前記支持アームに対して空転可能に支持する空転支持部材を含むことを特徴とする複合顕微鏡。
【請求項4】
請求項2または請求項3記載の複合顕微鏡において、
前記レボルバが支持される筐体の側に設けられ、前記ケーブル保持部材を経由した前記ケーブルを支持するケーブル受け部材を具備したことを特徴とする複合顕微鏡。
【請求項5】
請求項1記載の複合顕微鏡において、
前記ケーブル支持手段は、
前記レボルバの前記回転中心部に形成され、前記ケーブルが挿通されるレボルバケーブル穴からなることを特徴とする複合顕微鏡。
【請求項6】
請求項5記載の複合顕微鏡において、
前記レボルバが支持される筐体には、前記レボルバケーブル穴を前記筐体の外部に連通させる筐体ケーブル穴が設けられ、前記レボルバケーブル穴および前記筐体ケーブル穴を通じて前記ケーブルが前記筐体の外部に引き出されることを特徴とする複合顕微鏡。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の複合顕微鏡において、
前記付属機器は、走査型プローブ顕微鏡からなることを特徴とする複合顕微鏡。
【請求項8】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の複合顕微鏡において、
前記付属機器は、前記レボルバと前記対物レンズとの間に介在する対物レンズ用ピエゾスキャナからなることを特徴とする複合顕微鏡。
【請求項9】
複数の対物レンズが着脱可能で回転可能なレボルバに付属機器が装着される複合顕微鏡のケーブル支持装置であって、
前記付属機器に接続されるケーブルが挿通されるケーブル保持部材と、
前記付属機器が着脱自在に装着される前記レボルバの第1装着穴とは異なる第2装着穴に着脱自在に装着される基体部と、
一端部が前記基体部に支持され、他端部に前記ケーブル保持部材を保持し、当該ケーブル保持部材を前記レボルバの回転中心部に位置決めする支持アームと、
を含むことを特徴とする複合顕微鏡のケーブル支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−237578(P2011−237578A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108527(P2010−108527)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】