説明

複屈折特性を有する部材の検査方法および複屈折特性を有する部材の製造方法

【課題】製造ライン等において、複屈折特性を有する光学補償層が形成された被検査フィルムの光学的欠陥検査を簡易かつ容易に行うことができる複屈折特性を有する部材の検査方法、および、これを利用する複屈折特性を有する部材の製造方法を提供する。
【解決手段】前記被検査部材の光学補償層の複屈折特性を相殺する補正部材を用い、かつ、ラインセンサを用い、このラインセンサを、前記被検査部材の搬送方向に対して受光素子列を傾斜して配置することにより、前記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査フィルムの光学的欠陥検査を簡易かつ容易に行い、特に、液晶表示装置等に用いる視野角改善フィルム等の製造過程において、欠陥検査を連続的に行う複屈折特性を有する部材の検査方法、および、この検査方法を利用する複屈折特性を有する部材の製造方法の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
今日、液晶表示装置として、TFT液晶表示装置やDSTN液晶表示装置が広く利用されている。しかし、これらの液晶表示装置は、視認可能な領域に視角依存性があるため、視認可能な領域からはずれると表示画面を見ることが困難になる。たとえば、視角を上下方向に傾けた場合、全体に表示画面の色が薄くなってコントラストが低下したり、黒表示部分での階調反転が生じて、視認が困難となる。また、大型の液晶表示装置の画面では表示画面の拡大に伴い視角が広がるため、上記コントラストの低下や階調反転が生じ易い。そのため、広い視認可能な領域を持つ液晶表示装置が望まれている。
【0003】
このような状況下、液晶表示装置の視野角を改善するために、液晶表示装置の液晶の配向分割方法や負の複屈折率を持つ光学補償膜を用いた位相差膜等が種々検討されている。
例えば、本出願人にかかる特許文献1では、光学異方素子及びその製造方法が提案されている。それによると、液晶表示装置の液晶セルの液晶分子は、電圧印加時、液晶表示装置の基板の法線方向から若干傾くので、液晶表示装置はこの法線方向から若干傾いた方向に光軸を持つ正の一軸光学異方素子とみなすことができる。そのため、この傾きに合わせて負の一軸光学異方素子の光学軸を若干傾け、液晶セルによる位相差を光学異方素子の位相差で補償することによって、視角依存性のない良好な液晶表示装置を得ることができる。そして、本出願人から液晶用視野角改善フィルムが市販されている。
【0004】
ところで、光学異方素子である低分子液晶から成る上記液晶用視野角改善フィルムは、最適化された液晶セルの補償状態を画面上で均一に維持するため、厳しい均質性が要求されているものの、たとえば上記液晶用視野角改善フィルムは、可撓性支持体上に液晶を塗布し乾燥し、さらに配向し、膜を硬化する各種複雑な工程を経て製造されるため、製造工程中に異物が混入したり、付着により低分子液晶の配向方向が大小様々に、あるいはランダムに変化して乱れ、また、塗布むら等によってレターデーション値が変化して、所望の光学特性を持たない欠陥部分が種々生じる。
このような欠陥部分は、複雑な製造工程を経て得られる上記液晶用視野角改善の製造ラインにおいて、漏れなくしかも精度よく検出され、このような欠陥部分を有する液晶用視野角改善フィルムを市場に提供しないことが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−214116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、搬送される液晶用視野角改善フィルムの製造ラインにおける欠陥検査方法として、液晶用視野角改善フィルムの一方の側に搬送方向と平行な透過光軸を、他方の側に搬送方向と直交する偏光透過光軸を持つ一対の偏光子、すなわちクロスニコルに配置された一対の偏光子を挟み、その外側の一方から検査用照明光を投光し、反対側から透過される透過光をラインセンサ等で受光して透過光の輝度信号を得、輝度信号の変化から、例えば、輝度信号に微分処理等を行って、フィルム面の欠陥部分を検出する方法が行われている。
【0007】
しかし、この方法では、CCDカメラ等で撮影される輝度信号を画像として表示した場合、欠陥部分が正常な部分を背景として明るい部分を形成するものの、正常な部分の透過光量が、液晶用視野角改善フィルム自体の視角依存性のために不均一であり、欠陥部分に対応した明るい部分の輝度信号のSN比が低く、欠陥検出精度が低いといった問題がある。また、シェーディング補正により演算を施して正常な部分の不均一な背景部分を取り除くこともできるが、演算することによって、輝度信号に含まれる情報も処理されるため、精度の高い欠陥の検出ができない。
【0008】
また、上記方法は、一対の偏光子を液晶用視野角改善フィルムの両側に搬送方向と平行な偏光透過光軸を持たせクロスニコルに配置することによって、欠陥部分の検出を比較的容易にするものであるが、液晶用視野角改善フィルムの液晶の配向方向が偏光透過光軸と略直交するため、正常なフィルム面の透過光量は少ない一方、明るい領域を形成する欠陥部分においても透過光量は全体的に少ないため、欠陥部分の輝度信号のSN比は低く、欠陥検出精度が低いといった問題もある。
【0009】
また、上記方法では、搬送される液晶視野角改善フィルムの欠陥検査を、搬送方向と直交する方向に固体撮像素子を一列に配置したラインセンサを用いて行うが、固体撮像素子の配列方向と平行に、連続的にあるいは周期的に、発生する欠陥、例えば、塗布むら等による段ムラの欠陥は、上記ラインセンサで得られる輝度信号の変化から精度良く検出することはできないといった問題もある。
【0010】
このため、製造工程中に生じるすべての欠陥を漏れることなく精度よく検出することはできない。
このような問題は、液晶視野角改善フィルムのみならず、複屈折率を利用する位相差膜全体に共通する問題である。
【0011】
そこで、本発明は、上記問題点を解消し、製造ライン等において被検査フィルムの光学的欠陥検査を簡易かつ容易に行い、さらに、製造工程中に生じるすべての光学的欠陥を漏れることなく精度よく検出する複屈折特性を有する部材の検査方法、および、液晶表示装置等に用いる視野角改善フィルムの製造過程等において、異物の混入や配向ムラや段ムラ等に起因する欠陥の検出を漏れなく精度良く連続的に行う複屈折特性を有する部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明の複屈折特性を有する部材の検査方法は、複屈折特性を有する被検査部材を第1の偏光子および第2の偏光子の間に配置し、照明光源から投光し、第1の偏光子および第2の偏光子と被検査部材とを透過した光を受光することによって、被検査部材の光学的欠陥を検査する部材の検査方法において、
被検査部材は、複屈折特性を有する光学補償層が形成されてなるものであり、
第1の偏光子および第2の偏光子は、第1の偏光子の偏光透過軸が被検査部材の遅相軸と平行で、かつ、互いの偏光透過軸がクロスニコルとなるように第1の偏光子と第2の偏光子とを配置した状態から、第1の偏光子または第2の偏光子の偏光透過軸と、被検査部材の遅相軸との交差角を変更するように、第1の偏光子または第2の偏光子を回転した状態として配置されるものであり、
さらに、被検査部材の光学補償層の複屈折特性を相殺する補正部材を、第1の偏光子と被検査部材との間または第2の偏光子と被検査部材との間に配置した状態として、
被検査部材を搬送しつつ、照明光源から前記第1の偏光子および第2の偏光子のいずれかに投光し、光を投光された偏光子、補正部材、搬送される被検査部材、および他方の偏光子を透過した光を受光素子によって受光することにより、被検査部材の光学的欠陥を検査するものであり、
かつ、受光素子としてラインセンサを用い、このラインセンサを、被検査部材の搬送方向に対して受光素子列を傾斜して配置することを特徴とする複屈折特性を有する部材の検査方法を提供する。
【0013】
また、本発明の複屈折特性を有する部材の製造方法の第1の態様は、複屈折特性を有する光学補償層が形成された部材の製造方法であって、部材を連続搬送し、かつ、前記本発明の検査方法による複屈折特性を有する部材の検査工程を製造工程中に含むことを特徴とする複屈折特性を有する部材の製造方法を提供する。
【0014】
また、発明の複屈折特性を有する部材の製造方法の第2の態様は、可撓性支持体上に液晶を塗布する工程、塗布した液晶を乾燥する工程、乾燥した液晶を配向する工程、配向した液晶膜を硬化する工程、および、前記本発明の検査方法による複屈折特性を有する部材の検査工程を、連続的に行なうことを特徴とする複屈折特性を有する部材の製造方法を提供する。
【0015】
このような本発明の複屈折特性を有する部材の製造方法において、複屈折特性を有する部材が視野角改善用部材であるのが好ましい。
また、複屈折特性を有する部材が液晶表示装置用部材であるのが好ましい。
さらに、少なくとも、支持体の上に液晶を塗布する工程、塗布した液晶を乾燥する工程、および、乾燥した液晶膜を配向する工程を行って、液晶用視野角改善フィルムを製造するものであるのが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
上記構成を有する本発明によれば、光学的欠陥のない被検査フィルムの複屈折特性と略同一なフィルムであって、被検査フィルムの複屈折特性に応じて配置方向が予め設定される補正フィルムを用いることによって、輝度信号の信号レベルを一定にし、さらに透過光量も増加させることができるので、欠陥部分の輝度信号のSN比を大きくし、欠陥検出精度を向上させることができ、製造ライン等において被検査フィルムの光学的欠陥検査を簡易かつ容易に行うことができる。
さらに、一対の偏光子の偏光透過軸の向きを変えることによって、製造工程中に生じるすべての光学的欠陥を漏れることなく精度よく検出することができる。特に、液晶表示装置等に用いる視野角改善フィルムの製造過程において、異物の混入や配向ムラや段ムラ等に起因する欠陥の検出を連続的に漏れなく行うことができ、製造工程でのインライン全数検査において有効である。特に、段ムラは、輝度信号の輝度信号値によって検出できるので、微分処理や画像処理を用いて、段ムラの発生周期や段ムラの強度を定量化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の検査方法に対応するフィルムの欠陥検査装置の一例の概略を説明する概略構成図である。
【図2】(a)は、従来のフィルム検査装置を説明する説明図であり、(b)は(a)の検査装置で得られる輝度信号の一例を示す図であり、(c)は本発明の検査方法に対応するフィルムの欠陥検査装置の他の例の概略を説明する説明図であり、(d)は(c)の検査装置で得られる輝度信号の一例を示す図である。
【図3】本発明の検査方法を実施するフィルム欠陥検査装置の受光手段の配置の一例を説明する図である。
【図4】従来の検査方法の受光手段の配置の一例を説明する図である。
【図5】本発明の検査方法に対応するフィルムの欠陥検査システムの一例の概略を説明する概略構成図である。
【図6】本発明の検査方法に対応するフィルムの欠陥検査装置によって得られる透過光量比の特性を示す図である。
【図7】本発明の検査方法に対応するフィルムの欠陥検査装置によって得られる透過光量比の他の特性を示す図である。
【図8】本発明の検査方法に対応するフィルムの欠陥検査システムに用いられるフィルムの欠陥検査装置の一例の概略を説明する概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の複屈折特性を有する部材の検査方法および複屈折特性を有する部材の製造方法について、添付の図面に示される好適実施例を基に詳細に説明する。
図1は、複屈折特性を有する部材の検査方法に対応する、フィルムの欠陥検査装置の好適実施例である視野角改善フィルムの欠陥を検出するフィルム欠陥検査装置10の概略の構成を示す。
【0019】
フィルム欠陥検査装置10は、視野角改善フィルム(以降、被検査フィルムという)Fの光学的欠陥部分、すなわち、複屈折特性が正常な部分と異なる欠陥部分を検出するための輝度信号を得る装置であって、得られた輝度信号は欠陥検出のための欠陥検出装置22に送られる。
フィルム欠陥検査装置10は、照明光源12と、被検査フィルムFを両面から挟む偏光子14aおよび偏光子14bからなる一対の偏光子14と、液晶補正フィルム16と、光学系18と、CCDカメラ20とを主に有して構成される。
【0020】
照明光源12は、被検査フィルムFのフィルム面を偏光子14aを介して一様に平行光を投光するための照明光源で、例えば伝送ライトが用いられる。投光する光は白色光が好ましいが、可視域にスペクトルを有する投影光の光源であれば制限されない。また、照明光源12は、被検査フィルムFのフィルム面の一定の領域を一様に投光する面光源であっても、被検査フィルムFのフィルム面の一方向を一様に投光する線光源であってもよい。
【0021】
一対の偏光子14は、偏光子14aおよび偏光子14bからなり、偏光子14aは、被検査フィルムFのフィルム面と平行に配置され、照明光源12から照射される光を直線偏光あるいは、ほぼ直線偏光として、被検査フィルムFに入射させる部位である。
偏光子14bは、偏光子14aとクロスニコルの状態(偏光子14aの偏光透過光軸と偏光子14bとの偏光透過光軸を直交させた状態)で被検査フィルムFのフィルム面に平行に配置され、被検査フィルムFおよび後述する液晶補正フィルム16を透過した透過光Lの一部分、すなわち、偏光子14bの偏光透過光軸方向の透過光Lの成分を透過させる部位である。
偏光子14aおよび14bともに公知の偏光子が用いられる。
【0022】
光学系18は、偏光子14bを透過した平行光である透過光LをCCDカメラ20の受光面に結像するために集光する光学系レンズであり、公知の光学系レンズが用いられる。本実施例において、光学系18を用いて透過光Lを平行光から集光してCCDカメラ20の受光面に結像させるのは、光学系18がないと、CCDカメラ20の受光面で受光する際の透過光Lの光量によって得られる輝度信号の値がCCDカメラ20の受光面の受光位置によって変化する視角依存性が生じるからである。このように、光学系18は、上記視角依存性をなくし、シェーディング補正を不要とする輝度信号を得るために視角補正レンズとして用いるものであるが、後述する液晶補正フィルム16の作用によって、視角依存性を小さくし、シェーディング補正を不要とする輝度信号を得ることができることから、必ずしも光学系18は必須のものではない。しかし、より視角依存性を小さくし、精度の高い欠陥部分の検出を行う場合や、輝度信号の値が小さく欠陥部分のSN比が小さい場合等に、特に光学系18を用いることが好ましい。
【0023】
CCDカメラ20は、偏光子14a、被検査フィルムF、液晶補正フィルム16および偏光子14bを介して透過され、光学系18によって集光された透過光Lを受光し、透過光Lの輝度信号を得る受光手段であり、受光面上の固体撮像素子が一方向に線状に並んだラインセンサが用いられる。なお、本発明においては、受光面上の固体撮像素子がエリア状に配置されたエリアセンサであってもよい。また、本発明においては、固体撮像素子を受光面に持つCCDカメラに限定されず、CMOS型撮像素子等の公知の固体撮像素子が用いられてもよい。
【0024】
液晶補正フィルム16は、本発明の特徴とする部分であって、光学的欠陥のないことが予め確認されている被検査フィルムFの一定範囲の部分を取り出し、フィルム面内で180度回転し、あるいはフィルム面を表裏反転して被検査フィルムFに平行に配置したものである。
このように被検査フィルムFと同一の複屈折特性を備える液晶補正フィルム16をフィルム面内で180度回転し、あるいはフィルム面を表裏反転して用いるのは、以下の理由によるためである。
すなわち、被検査フィルムFは、所定の複屈折特性を持つように作られるため、液晶補正フィルム16がない場合、CCDカメラ20によって得られる輝度信号は、CCDカメラ20の受光素子の受光位置に依存する視角依存性を持つので、正常なフィルム面の輝度信号は一様なレベルの信号とならず、そのため、正常なフィルム面の輝度信号から欠陥部分を検出する検出精度が低下する。そのため、正常なフィルム面の輝度信号が、受光位置によらず一定レベルとなるように、すなわち輝度信号のレベルが一様になるように液晶補正フィルム16を用いて輝度信号を補正するのである。
【0025】
例えば、図2(a)には、液晶補正フィルム16を用いない通常の欠陥検査装置が示されており、ここでは、光学系18のない例が示されている。
欠陥検査装置30は、照明光源32から投光され偏光子34a、被検査フィルムFおよび偏光子34bを通過した透過光を、ラインセンサを受光面とするCCDカメラ36で受光して輝度信号を得るが、輝度信号は図2(b)に示される様に正常なフィルム面の輝度信号Gのレベルが図中右方向に傾斜する視角依存性を持つ。そのため、正常な輝度信号Gに乗る欠陥部分の輝度信号NのSN比が低く、欠陥検出精度が低い。
一方、本発明における液晶補正フィルムを用いる欠陥検査装置の一例である欠陥検査装置40(図2(c)参照)は、照明光源42から投光され偏光子44a、被検査フィルムF、液晶補正フィルム46(液晶補正フィルム16に対応)および偏光子44bを通過した透過光を、ラインセンサを受光面とするCCDカメラ48で受光して輝度信号を得るものであるが、液晶補正フィルム46を用いることによって、一様なレベル(勿論ノイズ成分を含んでいる)にある正常なフィルム部分の輝度信号G’上に欠陥部分の輝度信号N’が乗る輝度信号が得られる(図2(d)参照)。これによって、輝度信号Gから欠陥部分をシェーディング補正することなく検出することができる。
【0026】
このように、フィルム欠陥検査装置10において、液晶補正フィルム16を用いることで、図2で示した様な撮像位置に依存しない一定のレベルの輝度信号を得ることができ、欠陥部分の輝度信号のSN比が向上するほか、CCDカメラ20が受光する透過光の光量も増大し、輝度信号のレベルも上昇することによってSN比が向上し、検出精度も向上する。
【0027】
このような液晶補正フィルム16は、光学的欠陥のない被検査フィルムFをフィルム面内で180度回転し、あるいはフィルム面を表裏反転して配置したものであるが、本発明においては、これに限定されず、複屈折特性が、光学的欠陥のない被検査フィルムの複屈折特性と略同一である液晶補正フィルムを用い、上述した様に、CCDカメラ20で得られる輝度信号の視角依存性をなくし、一定レベルの輝度信号を得られるように、被検査フィルムFの所定の複屈折特性に応じて配置方向が予め設定されるものであれば、どのような補正フィルムであってもよい。
また、液晶補正フィルム16は、偏光子14aまたは14bに貼り合わせたものであってもよい。また、フィルム欠陥検査装置10では、液晶補正フィルム16を被検査フィルムFと偏光子14bとの間に配置するものであるが、偏光子14aと被検査フィルムFとの間に配置するものであってもよい。
【0028】
欠陥検出装置22は、所定の強調回路、例えば微分処理回路や空間フィルタ回路等と、欠陥の種類に対応した検出回路、たとえば「スジ検出回路」や「薄汚れ検出回路」を有し、微分処理やフィルタ処理された輝度信号が検出回路において処理されて欠陥の有無が判定される。
【0029】
なお、上述したように、フィルム欠陥検査装置10のCCDカメラ20は、固体撮像素子が一列に並んだラインセンサで構成しているが、この固体撮像素子の配列方向は、図1の紙面中の左右方向であってもよいし、紙面に垂直方向であってもよいし、紙面に対して傾斜した方向であってもよい。
しかし、被検査フィルムFが長尺物であって、被検査フィルムFが、搬送中にフィルム欠陥検査装置10によって検査される場合、CCDカメラ20の固体撮像素子を、被検査フィルムFの搬送方向と直交する方向に対して傾斜して配列するのが好ましい。
【0030】
このような例が図3に示されている。ここでは、理解を容易にする点から、フィルム欠陥検査装置10のCCDカメラ20と被検査フィルムFとの関係を示し、照明光源12、一対の偏光子14、補正フィルム16および光学系18を省略している。
ここで、CCDカメラ20は、固体撮像素子が一列に並んだラインセンサで、被検査フィルムFの搬送方向と直交する方向に対して45度の傾斜が付くように、CCDカメラ20が配置されている。すなわち、CCDカメラ20の固体撮像素子は、被検査フィルムFの搬送方向と直交する方向に対して45度傾斜して一列に配列される。このようなCCDカメラ20の配置により、可撓性支持体上に液晶を塗布する被検査フィルムFの作製工程中の塗装むらによって生じる段ムラF1〜F5が搬送方向と直交する方向に発生しても、欠陥検出装置22に送られる輝度信号A(図3参照)は、段ムラF2〜F5に対応して輝度信号値が変化する。欠陥検出装置22は、この輝度信号Aを微分処理回路で微分処理して、輝度信号の変化を求め微分処理輝度信号Bを得る。これによって、欠陥を強調し、微分処理輝度信号Bの信号値と閾値との比較から容易に欠陥を検出することができる。このような処理輝度信号Aあるいは微分処理輝度信号Bは、被検査フィルムFの搬送方向が画面上で水平あるいは垂直となるように、画像の回転処理が施されて、モニタに画面Cが表示される。
【0031】
一方、図4に示すように、CCDカメラ20’の固体撮像素子の配列方向を被検査フィルムFの搬送方向と直交する方向とした場合、段ムラF3を撮像する場合であっても、その段ムラの輝度信号Dは、段ムラのない正常な部分の輝度信号Hと比べてDC成分のレベルが変わるだけである(図4参照)。従って、微分処理を行って得られる微分処理輝度信号Eも、欠陥のない正常な部分の微分処理輝度信号Iと同様に、輝度信号値に大きな変化を持たず、輝度信号値と閾値との比較から欠陥を検出することはできない。
【0032】
このように、CCDカメラ20は、段ムラ等のような一方向に発生しやすい欠陥の発生方向を予め想定して、配置方向を定めるのがよい。
図3の例では、固体撮像素子の配列方向は、被検査フィルムFの搬送方向と直交する方向に対して45度傾斜するが、本発明においては、この傾斜角度は限定されない。しかし、図示されないモニタ画面上で搬送方向を水平方向あるいは垂直方向にして画面表示する場合を考慮して、画像の回転処理を施し易いように、傾斜角度を45度とするのが好ましい。
フィルム欠陥検査装置10および欠陥検出装置22は以上の様に構成される。
【0033】
このようなフィルム欠陥検査装置10では、照明光源12から一様に投光された光は、偏光子14aによって一方向に直線偏光した成分のみとなり、被検査フィルムFに入射する。被検査フィルムFでは、直線偏光した光が被検査フィルムFの複屈折特性によって楕円偏光して、被検査フィルムFから透過する。さらに、液晶補正フィルム16の複屈折特性によって楕円偏光を受けて液晶補正フィルム16から透過する。液晶補正フィルム16から透過した楕円偏光した光は、偏光子14aとクロスニコルに配置された偏光子14bによって、偏光子14bの偏光透過光軸方向の成分のみが透過し、光学系18によって集光されてCCDカメラ20によって受光される。
【0034】
ここで、被検査フィルムFに欠陥が含まれる場合、この欠陥部分を通過する光の楕円偏光成分は、欠陥のない正常な部分を透過する光の楕円偏光成分と異なる。従って、CCDカメラ20で受光して得られる輝度信号においても、欠陥部分の輝度信号値が大きく変化し、例えば輝度信号値が高くなる。
また、液晶補正フィルム16の作用により、CCDカメラ20で得られる輝度信号は、視角依存性を持たない一様なレベルの信号となる。なお、本発明では、被検査フィルムFの複屈折特性によって光が楕円偏光するのを、液晶補正フィルム16の複屈折特性によって直線偏光に戻す訳でなく、つまり、被検査フィルムFの複屈折率の異方性を液晶補正フィルム16の複屈折率の異方性を用いて補償する訳でなく、被検査フィルムFの複屈折特性によってできるCCDカメラの視覚依存性、すなわち、受光素子の受光位置によって輝度信号の値が変化する視角依存性を、液晶補正フィルム16の複屈折特性を利用して補正することによって、輝度信号を一様なレベルに保たせるものである。
このような輝度信号は、欠陥検出装置22に送られ、微分処理や空間フィルタ処理が施され、一様なレベルの輝度信号の中からノイズ成分と区別して欠陥部分の輝度信号を識別して検出する種々の検出回路に送られ、輝度信号から欠陥検出が行われる。
【0035】
このように本発明のフィルムの欠陥検査装置は、視角依存性のない一様なレベルの輝度信号を得るために液晶補正フィルムを用いるものであるが、このフィルム欠陥検査装置を被検査フィルム(液晶用視野角改善フィルム)Fの製造工程に用い、被検査フィルムFの製造工程中に生じるすべての光学的欠陥を漏れることなく精度よく検出することができる。以下、本発明のフィルムの欠陥検査装置を被検査フィルムFの製造工程に適用したフィルムの欠陥検査システムについて説明する。
【0036】
図5は、本発明のフィルムの欠陥検査装置を利用するフィルムの欠陥検査システムの一例である、液晶用視野角改善フィルム(被検査フィルム)Fの欠陥検査を行うフィルム欠陥検査システム50を示す。
フィルム欠陥検査システム50は、本発明に係るフィルムの欠陥検査装置の構成を備えるフィルム欠陥検査装置58、60および62および欠陥検出装置64を備える。ここで、検査の対象である被検査フィルムFは、可撓性支持体上に液晶を塗布し乾燥し、さらに配向し、膜を硬化する各種工程を経て製造されたものである。
フィルム欠陥検査システム50は、製造された被検査フィルムFを巻き取りロール52から、ローラ56a〜56jを介し、巻き取りロール54に最終的に連続搬送する搬送路中に、フィルム欠陥検査装置58、60および62を配置したシステムで、フィルム欠陥検査装置58、60および62の各々によって輝度信号を得、この輝度信号を欠陥検出装置64に送り、欠陥検出を行うものである。
【0037】
欠陥検出装置64は、欠陥検出装置22と同様に、微分処理回路や空間フィルタ回路と、欠陥の種類に対応した検出回路、たとえば「スジ検出回路」や「薄汚れ検出回路」を有し、送られてきたフィルム欠陥検査装置58、60および62各々の輝度信号を微分処理回路や空間フィルタ回路で処理し、検出回路において欠陥の有無を判定し、欠陥を検出する。
【0038】
フィルム欠陥検査装置58は、照明光源58a、偏光子58b、液晶補正フィルム58c、偏光子58d、光学系58eおよびCCDカメラ58fを備え、これらは、上述したフィルム欠陥検査装置10の照明光源12、偏光子14a、液晶補正フィルム16、偏光子14b、光学系18およびCCDカメラ20に対応するもので、構成や作用は同一であるので説明は省略する。
ここで、偏光子58bと偏光子58dはクロスニコルに偏光透過光軸が配置されると共に、偏光子58bまたは偏光子58dの偏光透過光軸の一方は、搬送方向と平行に配置される。すなわち、一対の偏光子の偏光透過軸の搬送方向に対する交差角(搬送方向に対する交差角とは、一対の偏光子のうちどちらか一方の偏光子の偏光透過光軸の搬送方向に対する交差角をいう)は、略0度に設定される。ここで略0度とは、被検査フィルムFの複屈折特性によってその許容範囲は異なるが、例えば±2〜3度以内をいう。
【0039】
フィルム欠陥検査装置60は、照明光源60a、偏光子60b、液晶補正フィルム60c、偏光子60dおよびCCDカメラ60eを備え、これらは、上述した欠陥検査装置10の照明光源12、偏光子14a、液晶補正フィルム16、偏光子14bおよびCCDカメラ20に対応するもので、これらの構成や作用は、照明光源12、偏光子14a、液晶補正フィルム16、偏光子14bおよびCCDカメラ20と同一であるので、説明は省略する。
また、フィルム欠陥検査装置60には、光学系18が含まれない。また、偏光子60bと偏光子60dはクロスニコルに偏光透過光軸が配置されると共に、偏光子60bまたは偏光子60dの偏光透過光軸の一方は、搬送方向に対して僅かに傾き、例えば、5度以上15度以下の範囲に傾斜して配置される。すなわち、一対の偏光子の偏光透過軸の搬送方向に対する交差角は、例えば5度以上15度以下、好ましくは、例えば略10度に設定される。
【0040】
フィルム欠陥検査装置62は、照明光源62a、偏光子62b、液晶補正フィルム62c、偏光子62dおよびCCDカメラ62eを備え、これらは、上述したフィルム欠陥検査装置10の照明光源12、偏光子14a、液晶補正フィルム16、偏光子14bおよびCCDカメラ20に対応するもので、これらの構成や作用は、照明光源12、偏光子14a、液晶補正フィルム16、偏光子14bおよびCCDカメラ20と同一であるので、説明は省略する。
なお、フィルム欠陥検査装置62には、光学系18が含まれない。また、偏光子62bと偏光子62dはクロスニコルに偏光透過光軸が配置されると共に、偏光子62bまたは偏光子62dの偏光透過光軸の一方は、搬送方向に対して略45度程度、例えば35度以上45度以下の範囲に傾斜して配置される。すなわち、一対の偏光子の偏光透過軸の搬送方向に対する交差角は、例えば35度以上45度以下、好ましくは、例えば略45度に設定される。
【0041】
このようにフィルム欠陥検査装置58、60および62において、偏光子の偏光透過軸の交差角を変えるのは、被検査フィルムFの欠陥の種類や欠陥の程度に応じて、最もSN比の高い状態で輝度信号を得るためである。以下、その作用について説明する。
図6には、フィルム欠陥検査装置10において、被検査フィルムFのレターデーション値が22nmである時の、一対の偏光子14の偏光透過軸と被検査フィルムFの遅相軸との交差角(遅相軸との交差角は、一対の偏光子のうちのどちらか一方の偏光子の偏光透過軸と被検査フィルムFの遅相軸の交差角をいう)に対して、一方の偏光子に入射される光量に対する他方の偏光子から透過する透過光量の比率(透過光量比)がどのように変化するかを示したものである。
【0042】
図6によると、被検査フィルムFの遅相軸と偏光透過軸の交差角が0度、すなわち、被検査フィルムFの遅相軸と一方の偏光子の偏光透過軸とが平行である場合、被検査フィルムFに入射された光は偏光子14aによって受けた直線偏光の状態のまま被検査フィルムFを透過するため、クロスニコルに配置された偏光子14bから透過することはなく、従って透過光量比は0である。しかし、被検査フィルムFの遅相軸と偏光透過軸の交差角が増えるに連れて、偏光子14aによって直線偏光を受けた光が被検査フィルムFの複屈折特性の影響を受けて楕円偏光成分が強くなる。そのため、偏光子14bから透過する透過光の光量は交差角にともなって次第に増大し透過光量比は増大する。
【0043】
ここで、被検査フィルムFに欠陥が存在し、すなわち、被検査フィルムFの遅相軸の方向が乱れ、遅相軸と偏光透過軸の交差角が変動する場合を考える。例えば、被検査フィルムFの欠陥が液晶の配向欠陥によって遅相軸が所定角度以上傾く、例えば5度以上傾くような大きな配向欠陥の場合、被検査フィルムFの正常な部分の遅相軸と偏光透過軸の交差角が0度であっても、大きな配向欠陥では、その欠陥部分の遅相軸の方向が大きくずれ偏光透過軸と大きな交差角を形成するため、図6に示される交差角に対応して透過光量は大きく変化する。したがって、得られる欠陥部分の輝度信号は大きな信号の変化として検出される。
【0044】
一方、配向欠陥の遅相軸が偏光子14の偏光透過軸に対して傾いているが、その角度が所定角度未満である小さな配向欠陥、例えば5度未満の配向欠陥の場合、被検査フィルムFの正常な部分の遅相軸と偏光透過軸の交差角が略0度の時、図6に示されるように、交差角0度の近傍では、交差角の僅かな変化に対して透過光量比が十分に変化しないため、小さな配向欠陥を輝度信号として検出することは難しい。そこで、被検査フィルムFの遅相軸と偏光透過軸の交差角を5度以上15度以下に、例えば10度に設定することで、遅相軸の向きのわずかな変化に対する透過光量比の変化を増幅することができる。すなわち、小さな配向欠陥の場合、正常な被検査フィルムFの遅相軸と偏光子14の偏光透過軸の交差角を5度以上15以下に設定することで、小さな配向欠陥による透過光量比の変化を大きくして輝度信号の変化を増幅し、SN比を向上して欠陥検出の精度を高めることができる。
【0045】
本実施例においては、上記交差角を5度以上15度以下に限定することによって、被検査フィルムFの正常な部分の輝度信号のレベルを低く抑えつつ、小さな配向欠陥の輝度信号を効果的に検出することができるが、本発明においては、被検査フィルムFの複屈折特性によっては、上記交差角を5度以上15度以下に限定する必要はなく、図6に示される様な交差角に対する透過光量比の曲線に応じて、交差角を適宜設定するとよい。
【0046】
また、被検査フィルムFでは、配向欠陥はないが、製造工程における塗布むら等によってレターデーション値が変動する位相差欠陥、すなわち、上述した段ムラも発生する。
図6に示す遅相軸と偏光子14の偏光透過軸の交差角が小さい場合、透過光量比が元々小さいため、上記位相差欠陥によるレターデーション値の変化に対応して透過光量比は大きく変化しない。一方、上記交差角が大きい場合、図7に上記交差角が45度の場合のレターデーション値に対する透過光量比の変化が示されているように、透過光量自体が多いため、レターデーション値に対する透過光量比の変化が大きい。
そのため、レターデーション値の変化する位相差欠陥の場合は、上記交差角を大きく、例えば35度以上45度以下、好ましくは例えば45度に設定することによって、レターデーション値の変化に対する透過光量比を大きく変化させることができ、位相差欠陥部分における輝度信号の変化を増幅し、SN比を向上させて位相差欠陥の検出の精度を高めることができる。上述した様に好ましい交差角の態様は45度であるが、この理由は、偏光子14がクロスニコルに配置されているため、交差角45度において透過光量比が最大となり、この交差角でのレターデーション値に対する透過光量比の変化が最大になるからである。
なお、本発明において、被検査フィルムFの複屈折特性によっては、上記交差角を35度以上45度以下に限定する必要はなく、図6に示される様な交差角に対する透過光量比の曲線に応じて、交差角を適宜設定するとよい。
【0047】
このように、欠陥の種類や欠陥の程度に応じて、被検査フィルムFの正常な部分の遅相軸と偏光子の偏光透過軸との交差角を変えることによって、欠陥を漏れなく精度よく検出することができる。
【0048】
フィルム欠陥検査システム50では、上述した原理に基づき、さらに、搬送される被検査フィルムFの遅相軸が搬送方向と直交する方向に向いて製造されることを利用して、フィルム欠陥検査装置58、60および62における偏光子の偏光透過軸を搬送方向に対して所定の方向に変化させたものである。
すなわち、フィルム欠陥検査装置58では、大きな配向欠陥を精度よく検出できる様に、被検査フィルムFの遅相軸と偏光子58bまたは58dの偏光透過光軸の交差角を略0度、即ち略平行に設定するために、偏光子58bまたは58dの偏光透過光軸を搬送方向に対して略0度、即ち略平行に配置する。
これによって、欠陥検査装置58は、大きな配向欠陥を精度よく検出できる輝度信号を得ることができる他、さらに、遅相軸の方向が様々に変動しレターデーション値も様々に変動する異物混入による欠陥も精度よく検出できる輝度信号を得ることができる。
【0049】
フィルム欠陥検査装置60では、小さな配向欠陥を精度よく検出できる様に、被検査フィルムFの遅相軸と偏光子60bまたは60dの偏光透過光軸の交差角を略10度に設定し、従って、偏光子60bまたは60dの偏光透過光軸を搬送方向に対して略10度に配置する。これによって、フィルム欠陥検査装置60は、小さな配向欠陥を精度よく検出できる輝度信号を得ることができる他、大きな配向欠陥は勿論、遅相軸の方向が様々に変動するとともに、レターデーション値も様々に変動する異物混入による欠陥も精度よく検出できる輝度信号を得ることができる。
【0050】
フィルム欠陥検査装置62では、遅相軸の向きが変化した配向欠陥でなく、レターデーション値が変化した位相差欠陥を精度よく検出できる様に、被検査フィルムFの遅相軸と偏光子62bまたは62dの偏光透過光軸の交差角を略45度に設定し、従って、偏光子62bまたは62dの偏光透過光軸を搬送方向に対して略45度に配置する。これによって、フィルム欠陥検査装置62は、位相差欠陥を精度よく検出できる輝度信号を得ることができる。
【0051】
このように、欠陥検査システム50は、被検査フィルムFの光学的欠陥を遅相軸の向きのズレによる配向欠陥を程度に応じて大きな配向欠陥や小さな配向欠陥に分類して欠陥検出を可能とし、さらには、レターデーション値がずれる位相差欠陥を検出可能とし、さらに異物混入による欠陥等も検出可能とする。
欠陥検査システム50では、欠陥検査装置の一対の偏光子の偏光透過光軸を搬送方向に対して略0度、略10度および略45度に交差して3台の欠陥検査装置を配置するが、本発明の欠陥検査システムでは、台数に限定はなく、また、交差角度も限定されず、被検査フィルムFの遅相軸の向きやレターデーション値等の複屈折特性に応じて、上記交差角を種々変化すればよい。
【0052】
このようなフィルム欠陥検査システム50のフィルム欠陥検査装置58、60および62では、被検査フィルムFの幅に合わせて複数台のCCDカメラが配置される。例えば、フィルム欠陥検査装置60では、図8に示される様に、連続搬送される被検査フィルムFの幅に合わせて、CCDカメラ60e1〜60e6からなるCCDカメラ60eによって幅方向全体の透過光を受光して輝度信号を欠陥検出装置64に送る。
【0053】
上記欠陥検査システム50では、例えば毎分18mの速度で連続的に搬送される被検査フィルムFを上述した様に幅方向に6台のCCDカメラを配置し、カメラによる分解能を例えば0.125mmとし、フィルム欠陥検査装置60で得られる輝度信号に対して、微分回路や空間フィルタ回路等および「薄汚れ検出回路」を通すことによって、フィルム欠陥検査装置60で得られる輝度信号に対しては、微分処理回路や空間フィルタ回路および「スジ検出回路」を通すことによって所望の欠陥検査をインラインで行う。
【0054】
特に、上述した被検査フィルムFの製造中の塗布むらは、搬送方向と直交する方向に発生する段ムラとなり、レターデーション値が変化する位相差欠陥となるので、偏光透過光軸が搬送方向に対して略45度に傾斜した偏光子60bまたは60dを有するフィルム欠陥検査装置60を用いて段ムラを検出する場合、CCDカメラ60e1〜60e6を用い、あるいは、上述したように被検査フィルムFの幅に合わせて複数台、例えば6台のCCDカメラを用い、被検査フィルムFの搬送方向と直交する方向に対して傾斜して、例えば45度に傾斜して撮像するとよい。その際、欠陥検出装置64において、画面上水平あるいは垂直の搬送方向となるように画像回転の処理を行うとよい。こうして、段ムラの発生周期や段ムラの強度を定量化することができる。
【0055】
以上、本発明の複屈折特性を有する部材の検査方法および複屈折特性を有する部材の製造方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良および変更を行ってもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0056】
10,30,40,58,60,62 フィルム欠陥検査装置
12,32,42,58a,60a,62a 照明光源
14 一対の偏光子
14a,14b,34a,34b,44a、44b,58c,60c,62c 偏光子
16,46,58c,60c,62c 液晶補正フィルム
18,58e 光学系
20,36,48,58f,60e,62e CCDカメラ
22,64 欠陥検出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複屈折特性を有する被検査部材を第1の偏光子および第2の偏光子の間に配置し、照明光源から投光し、前記第1の偏光子および第2の偏光子と被検査部材とを透過した光を受光することによって、前記被検査部材の光学的欠陥を検査する部材の検査方法において、
前記被検査部材は、複屈折特性を有する光学補償層が形成されてなるものであり、
前記第1の偏光子および第2の偏光子は、前記第1の偏光子の偏光透過軸が前記被検査部材の遅相軸と平行で、かつ、互いの偏光透過軸がクロスニコルとなるように前記第1の偏光子と第2の偏光子とを配置した状態から、前記第1の偏光子または第2の偏光子の偏光透過軸と、前記被検査部材の遅相軸との交差角を変更するように、前記第1の偏光子または第2の偏光子を回転した状態として配置されるものであり、
さらに、前記被検査部材の光学補償層の複屈折特性を相殺する補正部材を、前記第1の偏光子と前記被検査部材との間または前記第2の偏光子と前記被検査部材との間に配置した状態として、
前記被検査部材を搬送しつつ、前記照明光源から前記第1の偏光子および第2の偏光子のいずれかに投光し、前記光を投光された偏光子、前記補正部材、搬送される被検査部材、および他方の偏光子を透過した光を受光素子によって受光することにより、前記被検査部材の光学的欠陥を検査するものであり、
かつ、前記受光素子としてラインセンサを用い、このラインセンサを、前記被検査部材の搬送方向に対して受光素子列を傾斜して配置することを特徴とする複屈折特性を有する部材の検査方法。
【請求項2】
複屈折特性を有する光学補償層が形成された部材の製造方法であって、
前記部材を連続搬送し、かつ、請求項1に記載の検査方法による複屈折特性を有する部材の検査工程を製造工程中に含むことを特徴とする複屈折特性を有する部材の製造方法。
【請求項3】
可撓性支持体上に液晶を塗布する工程、塗布した液晶を乾燥する工程、乾燥した液晶を配向する工程、配向した液晶膜を硬化する工程、および、請求項1に記載の検査方法による複屈折特性を有する部材の検査工程を、連続的に行なうことを特徴とする複屈折特性を有する部材の製造方法。
【請求項4】
前記複屈折特性を有する部材が視野角改善用部材である請求項2または3に記載の複屈折特性を有する部材の製造方法。
【請求項5】
前記複屈折特性を有する部材が液晶表示装置用部材である請求項2または3に記載の複屈折特性を有する部材の製造方法。
【請求項6】
少なくとも、支持体の上に液晶を塗布する工程、塗布した液晶を乾燥する工程、および、乾燥した液晶膜を配向する工程を行って、液晶用視野角改善フィルムを製造するものである請求項2または3に記載の複屈折特性を有する部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−137502(P2012−137502A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−84234(P2012−84234)
【出願日】平成24年4月2日(2012.4.2)
【分割の表示】特願2008−71132(P2008−71132)の分割
【原出願日】平成13年3月5日(2001.3.5)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】