説明

複層塗膜形成方法及び塗装物品

【課題】
自動車車体外板等の各種工業製品に対して、粒子感が少なく金属感に優れる高い光沢の塗膜を形成する複層塗膜形成方法及び塗装物品を提供する。
【解決手段】
本発明は、基材上に鱗片状光輝性顔料を含んでなるベースコート塗料(A)を塗装して得られた塗膜上に、さらに艶調整剤を含んでなる艶消しクリヤー塗料(B)を塗装して得られた塗膜上に、最上層を形成する塗料としてトップクリヤー塗料を塗装する複層塗膜形成方法及び塗装物品に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子感が少なく金属感に優れる高い光沢の塗膜を形成する複層塗膜形成方法及び塗装物品に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や工業製品の外板等に塗装することは、製品を保護するために行なわれるものであった。また、製品の保護に加えてさらに消費者の製品に対する印象を高めるために種々の色に塗装することが古くから行なわれていた。一方、外装の意匠性を高めることによって消費者の個性的且つ多様化した要望に応じるために、鱗片状金属顔料や光輝性顔料などを含有せしめた塗料を自動車外板などに塗装して、メタリック塗膜や光干渉塗膜を形成することはすでに知られており、キラキラとした光輝感や光干渉性を示し、従前のソリッドカラ−塗膜に比べて意匠性に優れるため広く採用されている。
【0003】
しかしながら、自動車や家電製品などの外板部の色彩的な意匠性に対する要望はさらに高まっており、また、製品の差別化を図るためにも従来のメタリック調や光干渉調の塗膜には見られない、新規な色彩的な意匠性の塗膜を形成する塗料の開発が強く望まれている。
【0004】
本発明の目的は、これらの要望に対して、これまでのメタリック調や光干渉調の塗膜とは全く異なり、金属感に優れ、粒子感が少なく高い光沢の塗膜を形成する塗料及びそれを用いた塗膜形成方法の開発に関する。
【0005】
シルキ−調の意匠性にすぐれた塗膜を形成する塗料及びそれを用いた塗膜形成方法として、例えば特許文献1には、シルキ−調を示す光輝材として、塩化オキシビスマスの薄片状粒子を使用する塗料組成物及び塗膜形成方法について記載されている。シルキー調の優れた意匠性を有する塗膜を形成することができるが、金属感が少ないものである。
【0006】
また、特許文献2には、光輝感を失わず、かつ、落ち着いた雰囲気を併せ持つ光輝性艶消し塗膜を形成することのできる塗料、複合塗膜および複合塗膜の形成方法として、透明性樹脂中に樹脂微粒子及び/又は無機微粒子を含有する艶消し塗料に、特定量の光輝性顔料をさらに加えた光輝性艶消しクリヤー塗料、該光輝性艶消しクリヤー塗料を塗装して得られた塗膜、該塗膜を最上層とする塗膜形成方法について記載されている。光輝感を失わず、かつ、落ち着いた雰囲気を併せ持つ光輝性艶消し塗膜を形成するものであるが、金属感が少ないものであり、また、艶消し塗膜を形成するものであって高い光沢の塗膜を形成するものではない。
【0007】
【特許文献1】特開2001−49188号公報
【特許文献2】特開2001−131488号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、粒子感が少なく、金属感に優れる高い光沢の塗膜を形成できる複層塗膜形成方法及び塗装物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
1.基材上に鱗片状光輝性顔料を含んでなるベースコート塗料(A)を塗装して得られた塗膜上に、艶調整剤を塗料中のビヒクル固形分100重量部に対して1〜50重量部含む艶消しクリヤー塗料(B)を塗装し、さらに得られた塗膜上にトップクリヤー塗料(C)を1層もしくは2層以上塗装して複層塗膜を得ることを特徴とする複層塗膜形成方法(以下、「本発明方法1」と略称する。)、
2.基材上にカラーベース塗料(D)を塗装して得られた塗膜上に、鱗片状光輝性顔料を含んでなるベースコート塗料(A)を塗装して得られた塗膜上に、艶調整剤を塗料中のビヒクル固形分100重量部に対して1〜20重量部含む艶消しクリヤー塗料(B)を塗装し、さらに得られた塗膜上にトップクリヤー塗料(C)を1層もしくは2層以上塗装して複層塗膜を得ることを特徴とする複層塗膜形成方法(以下、「本発明方法2」と略称する。)、
3.艶消しクリヤー塗料(B)を塗装し、さらに得られた塗膜上に染料及び/又は着色顔料を含んでなるカラークリヤー塗料(E)を塗装して得られた塗膜上にさらにトップクリヤー塗料(C)を塗装して複層塗膜を得ることを特徴とする1項又は2項記載の複層塗膜形成方法(以下、「本発明方法3」と略称する。)、
4.ベースコート塗料(A)を塗装し、さらに得られた塗膜上に染料及び/又は着色顔料を含んでなるカラークリヤー塗料(E)を塗装して得られた塗膜上にさらに艶消しクリヤー塗料(B)を塗装して複層塗膜を得ることを特徴とする1項又は2項記載の複層塗膜形成方法(以下、「本発明方法4」と略称する。)、
5.得られた複層塗膜の粒子感を表わすHG値が70〜30である1項〜4項のいずれか1項記載の複層塗膜形成方法、
6.得られた複層塗膜の60度鏡面光沢値が80以上である1項〜5項のいずれか1項記載の複層塗膜形成方法、
7.得られた複層塗膜の明度を表わすL*値が60以上である1項〜6項のいずれか1項記載の複層塗膜形成方法、
8.1項〜7項のいずれか1項記載の複層塗膜形成方法で得られた塗装物品
に関する。
【発明の効果】
【0010】
発明によれば、基材上に鱗片状光輝性顔料を含んでなるベースコート塗料(A)を塗装して得られた塗膜上に、艶調整剤を特定量含む艶消しクリヤー塗料(B)を塗装し、さらに最上層を形成する塗料としてトップクリヤー塗料(C)を塗装して複層塗膜を形成することによって、粒子感が少なく金属感に優れ、光沢が高い塗膜を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明方法において基材としては、鉄、亜鉛、アルミニウム等の金属やこれらを含む合金、及びこれらの金属によるメッキまたは蒸着が施された成型物、ならびに、ガラス、プラスチックや発泡体などによる成型物等を挙げることができる。これら素材に応じて適宜、脱脂処理や表面処理して基材とすることができる。さらに、上記基材に下塗り塗膜や中塗り塗膜を形成させて基材とすることもでき、これらのものが特に好ましい。
【0012】
上記下塗り塗膜は、素材表面を隠蔽したり、素材に防食性及び防錆性などを付与するために形成されるものであり、下塗り塗料を塗装し、乾燥、硬化することによって得ることができる。この下塗り塗料種としては特に限定されるものではなく、例えば、電着塗料、溶剤型プライマー等を挙げることができる。
【0013】
また、上記中塗り塗膜は、素材表面や下塗り塗膜を隠蔽したり、付着性や耐チッピング性などを付与するために形成されるものであり、素材表面や下塗り塗膜上に、中塗り塗料を塗装し、乾燥、硬化することによって得ることができる。中塗り塗料種は、特に限定されるものではなく、既知のものを使用でき、例えば、熱硬化性樹脂組成物及び着色顔料を必須成分とする有機溶剤系又は水系の中塗り塗料を好ましく使用できる。
【0014】
また、基材として、下塗り塗膜あるいは中塗り塗膜を形成させる場合においては、下塗り塗膜あるいは中塗り塗膜を加熱し、架橋硬化後に後述する次工程の塗料を塗装することができる。あるいは、下塗り塗膜及び/又は中塗り塗膜が未硬化の状態で、次工程の塗料を塗装することもできる。
【0015】
本発明方法1では、上述の如き基材に鱗片状光輝性顔料を含んでなるベースコート塗料(A)を塗装する。該鱗片状光輝性顔料としては、インク用、塗料用として従来公知の顔料を1種あるいは2種以上を組み合わせて含有することができる。鱗片状光輝性顔料の具体例としては、アルミニウム、銅、ニッケル合金、ステンレス等の鱗片状金属顔料、表面を金属酸化物で被覆した鱗片状金属顔料、表面に着色顔料を化学吸着させた鱗片状金属顔料、表面に酸化還元反応を起こさせることにより酸化アルミニウム層を形成した鱗片状アルミニウム顔料、アルミニウム固溶盤状酸化鉄顔料、ガラスフレーク顔料、表面を金属又は金属酸化物で被覆したガラスフレーク顔料、表面に着色顔料を化学吸着させたガラスフレーク顔料、表面を二酸化チタンで被覆した干渉マイカ顔料、干渉マイカ顔料を還元した還元マイカ顔料、表面に着色顔料を化学吸着させたり、表面を酸化鉄で被覆した着色マイカ顔料、表面を二酸化チタンで被覆したグラファイト顔料、表面を二酸化チタンで被覆したシリカフレークやアルミナフレーク顔料、盤状酸化鉄顔料、ホログラム顔料、合成マイカ顔料、らせん構造を持つコレステリック液晶ポリマー顔料などが挙げられる。これらのうち、高い金属感を得るためにアルミニウム、銅、ニッケル合金、ステンレス等の鱗片状金属顔料、表面を金属酸化物で被覆した鱗片状金属顔料、表面に着色顔料を化学吸着させた鱗片状金属顔料、表面に着色顔料を化学吸着させたり、表面を酸化鉄で被覆した着色マイカ顔料が好ましく、アルミフレーク顔料や表面を金属酸化物で被覆したアルミフレーク顔料が特に好ましいが、限定されるものではなく、求める光輝感に応じて前記の各種光輝性顔料を1種あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0016】
上記鱗片状光輝顔料の配合量は、得られる塗膜の光輝感や仕上がり外観の点からベースコート塗料(A)中のビヒクル固形分100重量部に対して、1〜50重量部、好ましくは5〜30重量部である。
【0017】
ベースコート塗料(A)には、鱗片状光輝性顔料のほかに、ビヒクルとして、液状及び/又は粉体状の樹脂成分を含有することができる。樹脂成分としては、熱硬化性樹脂組成物が好ましく、具体的には、水酸基などの架橋性官能基を有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂などの基体樹脂を、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネ−ト化合物(ブロック体も含む)などの架橋剤と併用したものが挙げられ、これらは有機溶剤及び/又は水などの溶剤に溶解または分散して使用することができる。
【0018】
また、ベースコート塗料(A)には、必要に応じて着色顔料を配合することができる。着色顔料としては、インク用、塗料用として従来公知の顔料を1種あるいは2種以上組み合わせて使用することができる。着色顔料の具体例としては、酸化チタン、酸化鉄等の金属酸化物顔料、チタンイエロー等の複合酸化金属顔料、カーボンブラック、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属キレートアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インダンスロン系顔料、ジオキサン系顔料、インジゴ系顔料等を挙げることができる。
【0019】
これら着色顔料の好ましい含有量は、ベースコート塗料(A)中のビヒクル固形分100重量部に対して、150重量部以下であることが好ましく、より好ましくは1〜50重量部である。
【0020】
さらに、ベースコート塗料(A)には、必要に応じて、水や有機溶剤等の溶媒、レオロジーコントロール剤、顔料分散剤、沈降防止剤、硬化触媒、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の各種添加剤、体質顔料などを適宜配合することができる。
【0021】
ベースコート塗料(A)は、前述の成分を混合分散せしめることによって調製することができる。ベースコート塗料(A)が液状である場合には通常、塗装に際して、固形分含有率を、塗料組成物に基づいて、15〜50重量%、好ましくは20〜40重量%に、また、20℃における粘度を11〜15秒/フォ−ドカップ#4に調整しておくことが好ましい。
【0022】
ベースコート塗料(A)は、静電塗装、エア−スプレ−、エアレススプレ−などの方法で塗装することができ、その膜厚は硬化塗膜に基づいて5〜25μmの範囲内とするのが、塗膜の平滑性の点から好ましい。ベースコート塗料(A)の塗膜それ自体は約70〜約150℃の温度で硬化させることができる。
【0023】
また、ベースコート塗料(A)は、塗装後、加熱し、硬化後に次工程の塗料を塗装することができるが、または加熱硬化させることなく未硬化の状態で、次工程の塗料を塗装することができる。
【0024】
本発明方法1では、ベースコート塗料(A)を塗装して得られた塗膜上に、さらに艶調整剤を塗料中のビヒクル固形分100重量部に対して1〜50重量部含む艶消しクリヤー塗料(B)を塗装する。艶消しクリヤー塗料(B)は、艶調整剤を必須成分とし、樹脂成分を主成分として、さらに必要に応じてその他の塗料用添加剤などを配合してなる液状あるいは粉体状の塗料であって、無色で且つスリガラスの如きを有する塗膜を形成するものである。
【0025】
上記艶調整剤とは、塗膜中に塗膜のビヒクル成分と異なる屈折率を持つ粒子成分として存在することにより、入射光を適度に乱射させ、塗膜の艶を調製する効果を奏するものである。一般には、微粉シリカ(含水ニ酸化ケイ素)やポリエチレン粉末、樹脂ビーズ、セラミックビーズあるいはこれらをプレ分散した分散液等が用いられる。これらのうちで、微粉シリカ、微粉シリカをプレ分散した分散液、セラミックビーズが好ましく、特に好ましくは微粉シリカであるが、限定されるものではなく、求める質感に応じて、艶調整剤を1種又は2種以上を選択して使用することができる。
【0026】
上記艶調整剤の好ましい配合量は、艶消しクリヤー塗料(B)中のビヒクル固形分100重量部に対して、1〜50重量部である。1重量部未満では、塗膜に透明感が発現し、複層塗膜を形成したときに所望の質感が得られず、50重量部を超えると塗膜外観が低下する恐れがある。より好ましくは5〜30重量部である。
【0027】
艶消しクリヤー塗料(B)には、上記艶調整剤のほかに、ビヒクルとして、樹脂成分を含有することができる。樹脂成分としては、前記ベースコート塗料(A)において使用できる樹脂と同様のものを使用することができる。
【0028】
さらに、艶消しクリヤー塗料(B)には、必要に応じて、水や有機溶剤等の溶媒、顔料分散剤、沈降防止剤、レオロジーコントロール剤、硬化触媒、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の各種添加剤、体質顔料等を適宜配合することができる。
【0029】
艶消しクリヤー塗料(B)は、前述の成分を混合分散せしめることによって調製することができる。艶消しクリヤー塗料(B)が液状である場合には通常、塗装に際して、固形分含有率を、塗料組成物に基づいて、30〜60重量%、好ましくは35〜50重量%に、また、20℃における粘度を20〜30秒/フォ−ドカップ#4に調整しておくことが好ましい。
【0030】
艶消しクリヤー塗料(B)は、静電塗装、エア−スプレ−、エアレススプレ−などの方法で塗装することができ、その膜厚は、塗膜の平滑性、光輝性の点から、硬化塗膜に基づいて5〜40μmの範囲内とするのが好ましい。艶消しクリヤー塗料(B)の塗膜それ自体は約70〜約150℃の温度で硬化させることができる。
【0031】
また、艶消しクリヤー塗料(B)は、塗装後、加熱し、硬化後に次工程の塗料を塗装することができるが、または加熱硬化させることなく未硬化の状態で、次工程の塗料を塗装することができる。
【0032】
本発明方法1では、艶消しクリヤー塗料(B)を塗装して得られた塗膜にさらにトップクリヤー塗料(C)を塗装して、トップクリヤー塗膜を形成させることができる。
【0033】
トップクリヤー塗料(C)は、樹脂成分及び溶剤を主成分とし、さらに必要に応じてその他の塗料用添加剤などを配合してなる無色もしくは有色の透明塗膜を形成する液状もしくは粉体状の塗料であって、艶消しクリヤー塗料(B)の未硬化もしくは硬化させてなる塗面に塗装することができる。
【0034】
トップクリヤー塗料(C)としては、従来公知のクリヤー塗料を制限なく使用できる。例えば、基体樹脂及び架橋剤を含有する液状もしくは粉体状の塗料組成物が適用できる。基体樹脂の例としては、水酸基、カルボキシル基、シラノ−ル基、エポキシ基などの架橋性官能基を含有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、シリコン含有樹脂などが挙げられる。架橋剤としては、前記基体樹脂の官能基と反応しうる反応性基を有するメラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネ−ト化合物、ブロックポリイソシアネ−ト化合物、エポキシ化合物又は樹脂、カルボキシル基含有化合物又は樹脂、酸無水物、アルコキシシラン基含有化合物又は樹脂等が挙げられる。また、必要に応じて、水や有機溶剤等の溶媒、硬化触媒、消泡剤、紫外線吸収剤等の添加剤を適宜配合することができる。
【0035】
また、トップクリヤー塗料(C)は、静電塗装、エア−スプレ−、エアレススプレ−などの方法で塗装することができ、その膜厚は、塗膜の平滑性の点から硬化塗膜に基づいて10〜50μmの範囲内とするのが好ましい。トップクリヤー塗料(C)の塗膜それ自体は約70〜約150℃の温度で架橋硬化させることができる。
【0036】
本発明方法2では、ベースコート塗料(A)の塗装前に基材上に着色顔料を含んでなるカラーベース塗料(D)を塗装して得られた塗膜上に、ベースコート塗料(A)を塗装して得られた塗膜上に、艶消しクリヤー塗料(B)を塗装し、さらに得られた塗膜上にトップクリヤー塗料(C)することができる。カラーベース塗料(D)は、着色顔料、樹脂成分を主成分とし、さらに必要に応じてその他の塗料用添加剤などを配合してなる液状あるいは粉体状の塗料であって、基材の色を隠蔽し、複層塗膜の色相を決定するものである。カラーベース塗料(D)によって複層塗膜の色相を決定することでベースコート塗料(A)に配合する着色顔料の量を減ずることができるため塗膜の深み感を一層強いものとすることができる。該着色顔料としては、インク用、塗料用として従来公知の顔料を1種あるいは2種以上を組み合わせて含有することができる。着色顔料の具体例としては、前記ベースコート塗料(A)において使用できるものを同様に使用することができる。
【0037】
上記着色顔料の好ましい配合量は、隠蔽性や塗膜外観の点から、カラーベース塗料(D)中のビヒクル固形分100重量部に対して、1〜150重量部、好ましくは3〜100重量部である。
【0038】
カラーベース塗料(D)には、着色顔料のほかに、ビヒクルとして、樹脂成分を含有することができる。樹脂成分としては、前記ベースコート塗料(A)において使用できる樹脂と同様のものを使用することができる。
【0039】
カラーベース塗料(D)には、必要に応じて、水や有機溶剤等の溶媒、レオロジーコントロール剤、顔料分散剤、沈降防止剤、硬化触媒、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の各種添加剤や体質顔料等を適宜配合することができる。
【0040】
カラーベース塗料(D)は、前述の成分を混合分散せしめることによって調製される。塗料(B)が液状である場合には通常、塗装時に際して、固形分含有率を、塗料組成物に基づいて、30〜60重量%、好ましくは35〜50重量%に、また、20℃における粘度を18〜25秒/フォ−ドカップ#4に調整しておくことが好ましい。
【0041】
本発明のカラーベース塗料(D)は、静電塗装、エア−スプレ−、エアレススプレ−などの方法で塗装することができ、その膜厚は、塗膜の隠蔽性、平滑性の点から硬化塗膜に基づいて10〜45μmの範囲内とするのが好ましい。カラーベース塗料(D)の塗膜それ自体は約70〜約150℃の温度で硬化させることができる。
【0042】
また、カラーベース塗料(D)は、塗装後、加熱し、硬化後にベースコート塗料(A)を塗装することができるが、または加熱硬化させることなく未硬化の状態で、ベースコート塗料(A)を塗装することもできる。
【0043】
本発明方法3では、発明方法1又は2と同様の方法にてベースコート塗料(A)を塗装して得られた塗膜上に、着色顔料または染料を適時配合してなるカラークリヤー塗料(E)を塗装し、さらに得られた塗膜上に艶消しクリヤー塗料(B)を塗装し、さらに得られた塗膜上にトップクリヤー塗料(C)することができる。
【0044】
本発明方法におけるカラークリヤー塗料(E)は、複層塗膜においてフリップフロップ感をさらに高める塗料であって、着色顔料及び/又は染料を必須成分として含有する。フリップフロップ感とは、メタリック塗色の金属感を表わし、塗膜を光の入射角に対してほぼ正反射近傍(ハイライト)で観察したときと、それ以外の角度(フェース、シェード)で観察したときとの輝度感の差を意味する。
【0045】
上記カラークリヤー塗料(E)に含有させることができる着色顔料としては、インク用、塗料用として従来公知の顔料を1種あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。該着色顔料の具体例としては、酸化チタン、酸化鉄等の金属酸化物顔料、チタンイエロー等の複合酸化金属顔料、カーボンブラック、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属キレートアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インダンスロン系顔料、ジオキサン系顔料、インジゴ系顔料等を挙げることができる。
【0046】
上記着色顔料を配合させる場合、その配合量は、得られる塗膜の仕上がり外観の点からカラークリヤー塗料(E)中の樹脂固形分100重量部に対して、通常、0.001〜5重量部、好ましくは0.01〜1重量部が適当である。
【0047】
上記カラークリヤー塗料(E)に含有させることができる染料としては、インク用、塗料用、プラスチック用として従来公知の染料を1種あるいは2種以上組み合わせて使用することができる。該染料の具体例としては、アゾ系染料、アンスラキノン系染料、銅フタロシアニン系染料、金属錯塩系染料等を挙げることができる。
【0048】
上記染料を含有させる場合、その配合量は、得られる塗膜の色相や仕上がり外観の点からカラークリヤー塗料(E)中の樹脂固形分100重量部に対して、通常、0.001〜3重量部が好ましく、特に好ましくは0.01〜1.5重量部である。
【0049】
上記カラークリヤー塗料(E)は、静電塗装、エア−スプレ−、エアレススプレ−などの方法で塗装することができ、その膜厚は、塗膜の平滑性の点から硬化塗膜に基づいて10〜50μmの範囲内とするのが好ましい。カラークリヤー塗料(E)の塗膜それ自体は約70〜約150℃の温度で架橋硬化させることができる。
【0050】
本発明方法4では、発明方法1又は2と同様の方法にてベースコート塗料(A)を塗装して得られた塗膜上に、カラークリヤー塗料(E)を塗装して得られた塗膜上に、艶消しクリヤー塗料(B)を塗装して得られた塗膜上にさらにトップクリヤー塗料(C)を塗装することができる。
【0051】
本発明においては、得られた複層塗膜の緻密感を表わすHG値が好ましくは70〜30であり、より好ましくは、65〜45である。HG値とは、微視的に観察した場合における質感であるミクロ光輝感の尺度の一つで、ハイライト(塗膜を入射光に対して正反射近傍から観察)側の粒子感を表わすパラメータである。塗膜を入射角15度/受光角0度にてCCDカメラで撮像し、得られたデジタル画像データ、すなわち2次元の輝度分布データを2次元フーリエ変換処理し、得られたパワースペクトル画像から、粒子感に対応する空間周波数領域のみを抽出し、算出した計測パラメータを、さらに0から100の数値を取り且つ粒子感との間に直線的な関係が保たれるように変換して得られるものである。具体的には、ミクロ光輝感測定装置を使用して測定することができる。測定方法の詳細については、“塗料の研究”(関西ペイント技報)、No.138、2002年8月:p.8−p.24“及び“塗料の研究”(関西ペイント技報)、No.132、2002年8月:p.8−p.24“に記載している。
【0052】
本発明においては、得られた複層塗膜の60度鏡面光沢値が好ましくは80以上であり、より好ましくは90以上である。60度鏡面光沢値とは、塗膜の光沢を表わす数値で、大きいほど光沢があることを意味する。塗膜の法線に対して60度の角度から光を照射し、入射光の軸の鏡像を受光して測定する。具体的には、JIS K5600 4−7に記載の方法で測定することができる。
【0053】
本発明においては、得られた複層塗膜のハイライトの明度を表わすL*値が好ましくは60以上である。ハイライトの明度を表わすL*値は、塗膜を正反射光近傍(ハイライト)から観察した場合の明度を表わす刺激値であって、具体的には、塗膜に対して45度の角度から光を照射し、正反射光に対して25度の角度にて受光し、得られた分光反射率から算出したものである。具体的には、市販の変角分光反射率計等を使用して測定することができる。
【実施例】
【0054】
次に、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
【0055】
実施例及び比較例
基材の調整
脱脂及びりん酸亜鉛処理した鋼板(JISG3141、大きさ400×300×0.8mm)にカチオン電着塗料「エレクロン9400HB」(商品名:関西ペイント株式会社製、エポキシ樹脂ポリアミン系カチオン樹脂に硬化剤としてブロックポリイソシアネ−ト化合物を使用したもの)を硬化塗膜に基づいて膜厚20μmになるように電着塗装し、170℃で20分加熱して架橋硬化させて電着塗膜を得た。
【0056】
得られた電着塗面に、中塗塗料「ル−ガベ−ク中塗りグレ−」(商品名:関西ペイント株式会社製、ポリエステル樹脂・メラミン樹脂系、有機溶剤型)をエアスプレーにて硬化塗膜に基づいて膜厚30μmになるように塗装し、140℃で30分加熱して架橋硬化させて、中塗塗膜を形成した塗板を基材とした。
【0057】
塗料の調整
(カラーベース塗料1)
水酸基含有アクリル樹脂(水酸基価100、数平均分子量20000)及びメラミン樹脂からなる樹脂成分100重量部(固形分)あたり、ルチル型ニ酸化チタン顔料を130重量部、カーボンブラック顔料を0.01重量部配合して攪拌混合し、塗装に適正な粘度に希釈して、固形分約25%の有機溶剤型塗料を調整し、カラーベース塗料1を作成した。
【0058】
(カラーベース塗料2)
水酸基含有アクリル樹脂(水酸基価100、数平均分子量20000)及びメラミン樹脂からなる樹脂成分100重量部(固形分)あたり、ルチル型ニ酸化チタン顔料を100重量部、カーボンブラック顔料を1重量部配合して攪拌混合し、塗装に適正な粘度に希釈して、固形分約25%の有機溶剤型塗料を調整し、カラーベース塗料2を作成した。
【0059】
(ベースコート塗料1)
水酸基含有アクリル樹脂(水酸基価100、数平均分子量20000)及びメラミン樹脂からなる樹脂成分100重量部(固形分)あたり、アルミニウムフレーク顔料(アルペースト7640NS、商品名、東洋アルミ社製、平均粒径15μm、固形分65重量%)を20固形分重量部配合して攪拌混合し、塗装に適正な粘度に希釈して、固形分約25%の有機溶剤型塗料を調整し、ベースコート塗料1を作成した。
【0060】
(ベースコート塗料2)
水酸基含有アクリル樹脂(水酸基価100、数平均分子量20000)及びメラミン樹脂からなる樹脂成分100重量部(固形分)あたり、アルミニウムフレーク顔料(アルペースト7640NS、商品名、東洋アルミ社製、平均粒径15μm、固形分65重量%)を10固形分重量部及びカーボンブラック顔料を1重量部配合して攪拌混合し、塗装に適正な粘度に希釈して、固形分約25%の有機溶剤型塗料を調整し、ベースコート塗料2を作成した。
【0061】
(ベースコート塗料3)
水酸基含有アクリル樹脂(水酸基価100、数平均分子量20000)及びメラミン樹脂からなる樹脂成分100重量部(固形分)あたり、アルミニウムフレーク顔料(アルペースト7640NS、商品名、東洋アルミ社製、平均粒径15μm、固形分65重量%)を7固形分重量部及びカーボンブラック顔料を0.5重量部配合して攪拌混合し、塗装に適正な粘度に希釈して、固形分約25%の有機溶剤型塗料を調整し、ベースコート塗料3を作成した。
【0062】
(ベースコート塗料4)
水酸基含有アクリル樹脂(水酸基価100、数平均分子量20000)及びメラミン樹脂からなる樹脂成分100重量部(固形分)あたり、オキシ塩化ビスマス顔料(Mealite Radiant Pearl SUQ、商品名、エンゲルハード社製、平均粒径9μm、固形分50重量%)を15固形分重量部、配合して攪拌混合し、塗装に適正な粘度に希釈して、固形分約25%の有機溶剤型塗料を調整し、ベースコート塗料4を作成した。
【0063】
(ベースコート塗料5)
水酸基含有アクリル樹脂(水酸基価100、数平均分子量20000)及びメラミン樹脂からなる樹脂成分100重量部(固形分)あたり、アルミニウムフレーク顔料(アルペースト7640NS、商品名、東洋アルミ社製、平均粒径15μm、固形分65重量%)を15固形分重量部及び艶調整剤(サイリシア435、商品名、富士シリシア化学社製、含水ニ酸化ケイ素)を5重量部配合して攪拌混合し、塗装に適正な粘度に希釈して、固形分約25%の有機溶剤型塗料を調整し、ベースコート塗料5を作成した。
【0064】
(艶消しクリヤー塗料)
クリヤー塗料「ル−ガベ−ククリヤ−」(商品名、関西ペイント製、アクリル樹脂・アミノ樹脂系、有機溶剤型)の樹脂成分100重量部(固形分)あたり、艶調整剤(サイリシア435、商品名、富士シリシア化学社製、含水ニ酸化ケイ素)を10重量部、配合して攪拌混合し、塗装に適正な粘度に希釈して、固形分約40%の有機溶剤型塗料を調整し、艶消しクリヤー塗料を作成した。
【0065】
(カラークリヤー塗料)
クリヤー塗料「ル−ガベ−ククリヤ−」(商品名、関西ペイント製、アクリル樹脂・アミノ樹脂系、有機溶剤型)の樹脂成分100重量部(固形分)あたり、黒染料(Neozapon X55、商品名、BASF社製、クロム錯塩系)を0.1固形分重量部、配合して攪拌混合し、塗装に適正な粘度に希釈して、固形分約40%の有機溶剤型塗料を調整し、カラークリヤー塗料を作成した。
【0066】
試験板の作成
以下の手順にて、基材にカラーベース塗料、ベースコート塗料、艶消しクリヤー塗料、カラークリヤー塗料、トップクリヤー塗料を順次塗装して試験板とした。
【0067】
(実施例1)
(1)で作成した中塗り塗板に、(2)で作成したベースコート塗料1をREAガンを用いて、ブ−ス温度20℃、湿度75%の条件で、硬化塗膜として、12μmとなるように塗装した。塗装後、(2)で作成した艶消しクリヤー塗料をミニベル型回転式静電塗装機を用いて、ブ−ス温度20℃、湿度75%の条件で硬化塗膜として、30μmとなるように塗装した。塗装後、室温にて15分間放置し、ついで、これらの未硬化塗面にトップクリヤー塗料「ル−ガベ−ククリヤ−」、(商品名、関西ペイント製、アクリル樹脂・アミノ樹脂系、有機溶剤型)をミニベル型回転式静電塗装機を用いて、ブ−ス温度20℃、湿度75%の条件で硬化塗膜として、25〜35μmとなるように塗装した。塗装後、室温にて15分間放置した後に、熱風循環式乾燥炉内にて、140℃で30分間加熱し、複層塗膜を同時に乾燥硬化せしめて試験板とした。
【0068】
(実施例2)
(1)で作成した中塗り塗板に、(2)で作成したベースコート塗料2をREAガンを用いて、ブ−ス温度20℃、湿度75%の条件で、硬化塗膜として、12μmとなるように塗装した。塗装後、(2)で作成した艶消しクリヤー塗料をミニベル型回転式静電塗装機を用いて、ブ−ス温度20℃、湿度75%の条件で硬化塗膜として、30μmとなるように塗装した。塗装後、室温にて15分間放置し、ついで、これらの未硬化塗面にトップクリヤー塗料「ル−ガベ−ククリヤ−」、(商品名、関西ペイント製、アクリル樹脂・アミノ樹脂系、有機溶剤型)をミニベル型回転式静電塗装機を用いて、ブ−ス温度20℃、湿度75%の条件で硬化塗膜として、30μmとなるように塗装した。塗装後、室温にて15分間放置した後に、熱風循環式乾燥炉内にて、140℃で30分間加熱し、複層塗膜を同時に乾燥硬化せしめて試験板とした。
【0069】
(実施例3)
(1)で作成した中塗り塗板に、(2)で作成したベースコート塗料1をREAガンを用いて、ブ−ス温度20℃、湿度75%の条件で、硬化塗膜として、12μmとなるように塗装した。塗装後、塗装後、室温にて15分間放置し、(2)で作成した艶消しクリヤー塗料をミニベル型回転式静電塗装機を用いて、ブ−ス温度20℃、湿度75%の条件で硬化塗膜として、30μmとなるように塗装した。塗装後、室温にて15分間放置した後に、熱風循環式乾燥炉内にて、140℃で30分間加熱し、加熱硬化せしめた塗膜面に(2)で作成したカラークリヤー塗料をミニベル型回転式静電塗装機を用いて、ブ−ス温度20℃、湿度75%の条件で硬化塗膜として、30μmとなるように塗装した。塗装後、室温にて15分間放置し、ついで、未硬化塗面にトップクリヤー塗料「ル−ガベ−ククリヤ−」、(商品名、関西ペイント製、アクリル樹脂・アミノ樹脂系、有機溶剤型)をミニベル型回転式静電塗装機を用いて、ブ−ス温度20℃、湿度75%の条件で硬化塗膜として、30μmとなるように塗装した。塗装後、室温にて15分間放置した後に、熱風循環式乾燥炉内にて、140℃で30分間加熱し、複層塗膜を同時に乾燥硬化せしめて試験板とした。
【0070】
(実施例4)
(1)で作成した中塗り塗板に、(2)で作成したカラーベース塗料2をREAガンを用いて、ブ−ス温度20℃、湿度75%の条件で、硬化塗膜として、12μmとなるように塗装した。塗装後、室温にて15分間放置し、(2)で作成したベースコート塗料3をREAガンを用いて、ブ−ス温度20℃、湿度75%の条件で、硬化塗膜として、12μmとなるように塗装した。塗装後、室温にて15分間放置し、(2)で作成した艶消しクリヤー塗料をミニベル型回転式静電塗装機を用いて、ブ−ス温度20℃、湿度75%の条件で硬化塗膜として、30μmとなるように塗装した。ついで、塗装後、室温にて15分間放置し、これらの未硬化塗面にトップクリヤー塗料「ル−ガベ−ククリヤ−」、(商品名、関西ペイント製、アクリル樹脂・アミノ樹脂系、有機溶剤型)をミニベル型回転式静電塗装機を用いて、ブ−ス温度20℃、湿度75%の条件で硬化塗膜として、30μmとなるように塗装した。塗装後、室温にて15分間放置した後に、熱風循環式乾燥炉内にて、140℃で30分間加熱し、複層塗膜を同時に乾燥硬化せしめて試験板とした。
【0071】
(実施例5)
(1)で作成した中塗り塗板に、(2)で作成したベースコート塗料1をREAガンを用いて、ブ−ス温度20℃、湿度75%の条件で、硬化塗膜として、12μmとなるように塗装した。塗装後、塗装後、室温にて15分間放置し、(2)で作成したカラークリヤー塗料をミニベル型回転式静電塗装機を用いて、ブ−ス温度20℃、湿度75%の条件で硬化塗膜として、30μmとなるように塗装した。塗装後、室温にて15分間放置した後に、熱風循環式乾燥炉内にて、140℃で30分間加熱し、加熱硬化せしめた塗膜面に塗装後、(2)で作成した艶消しクリヤー塗料をミニベル型回転式静電塗装機を用いて、ブ−ス温度20℃、湿度75%の条件で硬化塗膜として、30μmとなるように塗装した。室温にて15分間放置し、ついで、未硬化塗面にトップクリヤー塗料「ル−ガベ−ククリヤ−」、(商品名、関西ペイント製、アクリル樹脂・アミノ樹脂系、有機溶剤型)をミニベル型回転式静電塗装機を用いて、ブ−ス温度20℃、湿度75%の条件で硬化塗膜として、30μmとなるように塗装した。塗装後、室温にて15分間放置した後に、熱風循環式乾燥炉内にて、140℃で30分間加熱し、複層塗膜を同時に乾燥硬化せしめて試験板とした。
【0072】
(比較例1)
(1)で作成した中塗り塗板に、(2)で作成したベースコート塗料1をREAガンを用いて、ブ−ス温度20℃、湿度75%の条件で、硬化塗膜として、12μmとなるように塗装した。塗装後、室温にて15分間放置し、ついで、これらの未硬化塗面にトップクリヤー塗料「ル−ガベ−ククリヤ−」、(商品名、関西ペイント製、アクリル樹脂・アミノ樹脂系、有機溶剤型)をミニベル型回転式静電塗装機を用いて、ブ−ス温度20℃、湿度75%の条件で硬化塗膜として、30μmとなるように塗装した。塗装後、室温にて15分間放置した後に、熱風循環式乾燥炉内にて、140℃で30分間加熱し、複層塗膜を同時に乾燥硬化せしめて試験板とした。
【0073】
(比較例2)
(1)で作成した中塗り塗板に、(2)で作成したカラーベース塗料をREAガンを用いて、ブ−ス温度20℃、湿度75%の条件で、硬化塗膜として、7〜15μmとなるように塗装した。塗装後、室温にて15分間放置し、(2)で作成したベースコート塗料4をREAガンを用いて、ブ−ス温度20℃、湿度75%の条件で、硬化塗膜として、12μmとなるように塗装した。塗装後、室温にて15分間放置し、ついで、これらの未硬化塗面にトップクリヤー塗料「ル−ガベ−ククリヤ−」、(商品名、関西ペイント製、アクリル樹脂・アミノ樹脂系、有機溶剤型)をミニベル型回転式静電塗装機を用いて、ブ−ス温度20℃、湿度75%の条件で硬化塗膜として、30μmとなるように塗装した。塗装後、室温にて15分間放置した後に、熱風循環式乾燥炉内にて、140℃で30分間加熱し、複層塗膜を同時に乾燥硬化せしめて試験板とした。
【0074】
(比較例3)
(1)で作成した中塗り塗板に、(2)で作成したベースコート塗料5をREAガンを用いて、ブ−ス温度20℃、湿度75%の条件で、硬化塗膜として、18μmとなるように塗装した。塗装後、室温にて15分間放置した後に、熱風循環式乾燥炉内にて、140℃で30分間加熱し、乾燥硬化せしめて試験板とした。
(4)評価試験
実施例及び比較例で得られた試験板について、目視による金属感の評価、目視による粒子感の評価、粒子感を表わすHG値の測定、60度鏡面光沢値の測定、L*値の測定を行なった。表1にその結果を示した。
【0075】
(目視による金属感の評価)
昼間に直射日光が当たらない屋外にて、塗膜を真正面(ハイライト部)及び斜め(フェース〜シェード部)から観察して、金属感を下記の3段階に評価した。
3:優れた金属感を示す
2:やや金属感を示す
1:金属感が感じられない
(目視による粒子感の評価)
昼間に直射日光が当たらない屋外にて、塗膜を真正面(ハイライト部)及び斜め(フェース〜シェード部)から観察して、粒子感を下記の3段階に評価した。
3:粒子感が少ない
2:粒子感がやや多い
1:粒子感が多い
(HG値の測定)
ミクロ光輝感測定装置を使用して、ミクロ光輝感の一つで、ハイライト(塗膜を入射光に対して正反射近傍から観察)側の粒子感を表わすパラメータであるHG値を測定した。測定方法は、“塗料の研究”(関西ペイント技報)、No.138、2002年8月:p.8−p.24記載の方法に準じた。
【0076】
(60度鏡面光沢値の測定)
Micro−Tri−Gloss(商品名、BYKガードナー社製、光沢計)を使用して、60度鏡面光沢値を測定した。
【0077】
(L*値の測定)
MA−68(商品名、X−Lite社製、多角度分光光度計)を使用して、明度L*値を測定した。測定は、入射光の正反射光に対する25度の角度にて受光して行なった。
【0078】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の塗膜形成方法は、各種工業製品、特に自動車車体の外板に適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に鱗片状光輝性顔料を含んでなるベースコート塗料(A)を塗装して得られた塗膜上に、艶調整剤を塗料中のビヒクル固形分100重量部に対して1〜50重量部含む艶消しクリヤー塗料(B)を塗装し、さらに得られた塗膜上にトップクリヤー塗料(C)を塗装して複層塗膜を得ることを特徴とする複層塗膜形成方法。
【請求項2】
基材上にカラーベース塗料(D)を塗装して得られた塗膜上に、鱗片状光輝性顔料を含んでなるベースコート塗料(A)を塗装して得られた塗膜上に、艶調整剤を塗料中のビヒクル固形分100重量部に対して1〜20重量部含む艶消しクリヤー塗料(B)を塗装し、さらに得られた塗膜上にトップクリヤー塗料(C)を塗装して複層塗膜を得ることを特徴とする複層塗膜形成方法。
【請求項3】
艶消しクリヤー塗料(B)を塗装し、さらに得られた塗膜上に染料及び/又は着色顔料を含んでなるカラークリヤー塗料(E)を塗装して得られた塗膜上にさらにトップクリヤー塗料(C)を塗装して複層塗膜を得ることを特徴とする請求項1又は2記載の複層塗膜形成方法。
【請求項4】
ベースコート塗料(A)を塗装し、さらに得られた塗膜上に染料及び/又は着色顔料を含んでなるカラークリヤー塗料(E)を塗装して得られた塗膜上にさらに艶消しクリヤー塗料(B)を塗装して複層塗膜を得ることを特徴とする請求項1又は2記載の複層塗膜形成方法。
【請求項5】
得られた複層塗膜の粒子感を表わすHG値が70〜30である請求項1〜4のいずれか1項記載の複層塗膜形成方法。
【請求項6】
得られた複層塗膜の60度鏡面光沢値が80以上である請求項1〜5のいずれか1項記載の複層塗膜形成方法。
【請求項7】
得られた複層塗膜のハイライトの明度を表わすL*値が60以上である請求項1〜6のいずれか1項記載の複層塗膜形成方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項記載の複層塗膜形成方法で得られた塗装物品。

【公開番号】特開2006−87978(P2006−87978A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−273487(P2004−273487)
【出願日】平成16年9月21日(2004.9.21)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】