説明

複層塗膜形成方法

【課題】平滑性及び鮮映性に優れた塗膜を形成できる複層塗膜形成方法を提供すること。
【解決手段】被塗物上に、第1着色塗料(X)、水性第2着色塗料(Y)及びクリヤー塗料(Z)を順次塗装し、形成される第1着色塗膜、第2着色塗膜及びクリヤー塗料(Z)を同時に焼付け硬化させることを含んでなり、水性第2着色塗料(Y)が第1着色塗膜のゲル分率が5質量%以上40質量%未満の範囲内にあるときに塗装され、かつ第1着色塗料(X)が、酸成分(a1)及びアルコール成分(a2)の反応によって得られ、かつ酸成分(a1)中の脂肪族多塩基酸(a1−1)の含有量が、酸成分(a1)の総量を基準として20〜70mol%の範囲内であり、かつ酸価が15mgKOH/g以下である水酸基含有ポリエステル樹脂(A)、及びポリイソシアネート化合物(B)を含有することを特徴とする複層塗膜形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた外観を有する複層塗膜を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車車体における塗膜形成方法としては、被塗物に電着塗膜を形成した後、中塗り塗料の塗装→焼き付け硬化→ベースコート塗料の塗装→クリヤー塗料の塗装→焼き付け硬化の3コート2ベーク(3C2B)方式により複層塗膜を形成する方法が広く採用されているが、近年、省エネルギーなどの観点から、中塗り塗料の塗装後の焼き付け硬化工程を省略し、被塗物に電着塗膜を形成した後、中塗り塗料の塗装→ベースコート塗料の塗装→クリヤー塗料の塗装→焼き付け硬化とする3コート1ベーク(3C1B)方式により複層塗膜を形成する方法が試みられている(例えば、特許文献1)。
【0003】
しかしながら、上記3C1B方式では、中塗り塗膜とベースコート塗膜との混層が起こりやすいため、得られる塗膜の平滑性や鮮映性が低下するという欠点があり、課題とされている。
【0004】
従来、この対策としては、中塗り塗料を塗装後、形成される中塗り塗膜をできるだけ硬化状態に近づけてから、ベースコート塗料を塗装することにより、中塗り塗膜とベースコート塗膜との混層を抑制する方法が検討され、例えば、特許文献2には、被塗物に水性第1塗料を塗装し、形成される塗膜のゲル分率を5重量%以上に調整してから、水性第2塗料を塗装し、形成される塗膜中の水分を揮散させた後、クリヤ塗料を塗装し、次いで得られる3層塗膜を加熱して同時に硬化せしめた場合に、被塗面の表面粗さを隠蔽すること(下地隠蔽性)に優れた複層塗膜を形成できることが記載されている。しかしながら、該塗装方法においても十分な平滑性及び鮮映性を有する複層塗膜を得られない場合があり、課題とされている。
【0005】
【特許文献1】特開平10−216617号公報
【特許文献2】特開2001−327911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、3C1B方式において、平滑性及び鮮映性に優れた塗膜を形成することができる複層塗膜形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するべく鋭意検討を重ねた結果、今回、3C1B方式による複層塗膜の塗装工程において、第1着色塗料として、特定の構造を有する比較的低酸価の水酸基含有ポリエステル樹脂とポリイソシアネート化合物を含有する塗料を用い、該第1着色塗料を比較的低いゲル分率に調整した後、水性第2着色塗料を塗装する場合に、平滑性及び鮮映性に優れた複層塗膜を形成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
かくして、本発明は、下記の工程(1)〜(5)、
工程(1):被塗物上に、第1着色塗料(X)を塗装して未硬化の第1着色塗膜を形成する工程、
工程(2):前記工程(1)で形成される未硬化の第1着色塗膜のゲル分率を5質量%以上40質量%未満とする工程、
工程(3):前記工程(2)で形成される未硬化の第1着色塗膜上に、水性第2着色塗料(Y)を塗装して未硬化の第2着色塗膜を形成する工程、
工程(4):前記工程(3)で形成される未硬化の第2着色塗膜上に、クリヤー塗料(Z)を塗装して未硬化のクリヤー塗膜を形成する工程、及び
工程(5):前記工程(1)〜(4)で形成される第1着色塗膜、第2着色塗膜及びクリヤー塗膜を同時に焼付け硬化する工程、
を順次行うことにより複層塗膜を形成せしめる方法において、第1着色塗料(X)として、酸成分(a1)及びアルコール成分(a2)の反応によって得られ、かつ酸成分(a1)中の脂肪族多塩基酸(a1−1)の含有量が、酸成分(a1)の総量を基準として20〜70mol%の範囲内であり、かつ酸価が15mgKOH/g以下である水酸基含有ポリエステル樹脂(A)、及びポリイソシアネート化合物(B)を含んでなる塗料組成物を使用することを特徴とする複層塗膜形成方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、3C1B方式により、平滑性及び鮮映性に優れた複層塗膜を容易に形成せしめることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の複層塗膜形成方法について、さらに詳細に説明する。
【0011】
工程(1)
本工程では、被塗物上に、第1着色塗料(X)が塗装され、未硬化の第1着色塗膜が形成される。
【0012】
被塗物
本発明に従い水性第1着色塗料(X)を適用し得る被塗物としては、特に制限されるものではなく、例えば、乗用車、トラック、オートバイ、バス等の自動車車体の外板部;自動車部品;携帯電話、オーディオ機器等の家庭電気製品の外板部等を挙げることができ、なかでも、自動車車体の外板部及び自動車部品が好ましい。
【0013】
また、上記被塗物の素材としては、特に限定されるものではなく、例えば、鉄、アルミニウム、真鍮、銅、ステンレス鋼、ブリキ、亜鉛メッキ鋼、合金化亜鉛(Zn−Al、Zn−Ni、Zn−Fe等)メッキ鋼等の金属材料;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂や各種のFRP等のプラスチック材料;ガラス、セメント、コンクリート等の無機材料;木材;繊維材料(紙、布等)等を挙げることができ、なかでも、金属材料及びプラスチック材料が好適である。
【0014】
上記被塗物は、上記金属材料やそれから成形された車体等の金属表面に、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理などの表面処理が施されたものであってもよい。さらに、該被塗物は、上記金属材料や車体などに、各種電着塗料等の下塗り塗膜が形成されたものであってもよく、なかでも、カチオン電着塗料によって下塗り塗膜が形成された車体が特に好適である。
【0015】
第1着色塗料(X)
本発明では、第1着色塗料(X)として、酸成分(a1)及びアルコール成分(a2)の反応によって得られ、かつ酸成分(a1)中の脂肪族多塩基酸(a1−1)の含有量が、酸成分(a1)の総量を基準として20〜70mol%の範囲内であり、かつ酸価が15mgKOH/g以下である水酸基含有ポリエステル樹脂(A)、及びポリイソシアネート化合物(B)を含んでなる塗料組成物(以下、本発明の塗料組成物という)が使用される。
【0016】
水酸基含有ポリエステル樹脂(A)
本発明の塗料組成物において基体樹脂として用いられる水酸基含有ポリエステル樹脂(A)は、1分子中に少なくとも1個の水酸基を有し、かつ酸成分(a1)及びアルコール成分(a1)の反応によって得られ、かつ酸成分(a1)中の脂肪族多塩基酸(a1−1)の含有量が、酸成分(a1)の総量を基準として20〜70mol%、好ましくは25〜60mol%、さらに好ましくは30〜50mol%の範囲内であり、かつ酸価が15mgKOH/g以下、好ましくは1〜12mgKOH/g、さらに好ましくは3〜10mgKOH/gの範囲内にあるポリエステル樹脂である。
【0017】
酸成分(a1)
本発明において、酸成分(a1)は、脂肪族多塩基酸(a1−1)を、酸成分(a1)の総量を基準として、20〜70mol%、好ましくは25〜60mol%、さらに好ましくは30〜50mol%含有する。
【0018】
上記脂肪族多塩基酸(a1−1)は、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する脂肪族化合物、該脂肪族化合物の酸無水物及び該脂肪族化合物のエステル化物であって、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、オクタデカン二酸、クエン酸等の脂肪族多価カルボン酸;該脂肪族多価カルボン酸の無水物;該脂肪族多価カルボン酸の低級アルキルエステル化物等が挙げられる。上記脂肪族多塩基酸は単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0019】
上記脂肪族多塩基酸(a1−1)としては、炭素数4〜18のアルキル鎖を有するジカルボン酸を使用することが好ましい。上記炭素数4〜18のアルキル鎖を有するジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、オクタデカン二酸等が挙げられ、なかでもアジピン酸を好適に使用することができる。
【0020】
酸成分(a1)が、上記脂肪族多塩基酸(a1−1)として、炭素数4〜18のアルキル鎖を有するジカルボン酸を含有する場合、該炭素数4〜18のアルキル鎖を有するジカルボン酸の含有量は、酸成分(a1)の総量を基準として、20〜70mol%、好ましくは25〜60mol%、さらに好ましくは30〜50mol%の範囲内であることが好適である。また、酸成分(a1)が、上記脂肪族多塩基酸(a1−1)としてアジピン酸を含有する場合、アジピン酸の含有量は、酸成分(a1)の総量を基準として、20〜70mol%、好ましくは25〜60mol%、さらに好ましくは30〜50mol%の範囲内であることが好適である。
【0021】
また、酸成分(a1)としては、前記脂肪族多塩基酸(a1−1)以外に、脂環族多塩基酸(a1−2)及び芳香族多塩基酸(a1−3)を好適に使用することができる。
【0022】
上記脂環族多塩基酸(a1−2)は、一般に、1分子中に1個以上の脂環式構造(主として4〜6員環)と2個以上のカルボキシル基を有する化合物、該化合物の酸無水物及び該化合物のエステル化物であって、例えば、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、3−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸;該脂環族多価カルボン酸の無水物;該脂環族多価カルボン酸の低級アルキルエステル化物等が挙げられ、なかでも、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物を好適に使用することができる。上記脂環族多塩基酸(a1−2)は単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0023】
酸成分(a1)が、上記脂環族多塩基酸(a1−2)を含有する場合、該脂環族多塩基酸(a1−2)の含有量は、酸成分(a1)の総量を基準として、20〜70mol%、好ましくは25〜60mol%、さらに好ましくは30〜50mol%の範囲内であることが好適である。
【0024】
また、上記脂環族多塩基酸(a1−2)としては、得られる複層塗膜の平滑性及び鮮映性の観点から、カルボキシル基を1位と2位に有する脂環族多塩基酸(a1−2−1)及びカルボキシル基を1位と4位に有する脂環族多塩基酸(a1−2−2)を併用することが好ましい。
【0025】
上記脂環族多塩基酸(a1−2)として、上記カルボキシル基を1位と2位に有する脂環族多塩基酸(a1−2−1)及びカルボキシル基を1位と4位に有する脂環族多塩基酸(a1−2−2)を併用する場合、その使用量は、酸成分(a1)の総量を基準として、脂環族多塩基酸(a1−2−1)の含有量が5〜50mol%、好ましくは8〜40mol%、さらに好ましくは12〜30mol%の範囲内であり、かつ脂環族多塩基酸(a1−2−2)の含有量が5〜50mol%、好ましくは8〜40mol%、さらに好ましくは12〜30mol%の範囲内であることが好適である。また、上記脂環族多塩基酸(a1−2−1)と脂環族多塩基酸(a1−2−2)のモル比は20/80〜80/20、好ましくは30/70〜70/30、さらに好ましくは40/60〜60/40の範囲内であることが好適である。
【0026】
上記カルボキシル基を1位と2位に有する脂環族多塩基酸(a1−2−1)としては、例えば1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸;該脂環族多価カルボン酸の無水物;該脂環族多価カルボン酸の低級アルキルエステル化物等が挙げられ、なかでも、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、好ましくは1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物を好適に使用することができる。上記脂環族多塩基酸(a1−2−1)は単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0027】
上記カルボキシル基を1位と4位に有する脂環族多塩基酸(a1−2−2)としては、例えば1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸;該脂環族多価カルボン酸の低級アルキルエステル化物等が挙げられ、なかでも、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を好適に使用することができる。上記脂環族多塩基酸(a1−2−2)は単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0028】
上記カルボキシル基を1位と2位に有する脂環族多塩基酸(a1−2−1)として、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物からなる群より選ばれる少なくとも1種の脂環族多塩基酸を使用し、かつカルボキシル基を1位と4位に有する脂環族多塩基酸(a1−2−2)として、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を使用する場合、脂環族多塩基酸(a1−2)中の1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸及び4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物の合計含有量は、酸成分(a1)の総量を基準として、5〜50mol%、好ましくは8〜40mol%、さらに好ましくは12〜30mol%の範囲内であることが好適であり、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の含有量は、酸成分(a1)の総量を基準として、5〜50mol%、好ましくは8〜40mol%、さらに好ましくは12〜30mol%の範囲内であることが好適である。
【0029】
前記芳香族多塩基酸(a1−3)は、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物、該芳香族化合物の酸無水物及び該芳香族化合物のエステル化物であって、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4′−ビフェニルジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族多価カルボン酸;該芳香族多価カルボン酸の無水物;該芳香族多価カルボン酸の低級アルキルエステル化物等が挙げられる。上記芳香族多塩基酸(a1−3)は単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0030】
上記芳香族多塩基酸(a1−3)としては、得られる塗膜の鮮映性の観点から、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸を用いることが好適である。
【0031】
酸成分(a1)が、上記芳香族多塩基酸(a1−3)を含有する場合、該芳香族多塩基酸(a1−3)の含有量は、酸成分(a1)の総量を基準として、10〜80mol%、好ましくは15〜60mol%、さらに好ましくは20〜50mol%の範囲内であることが好適である。
【0032】
また、上記脂肪族多塩基酸(a1−1)、脂環族多塩基酸(a1−2)及び芳香族多塩基酸(a1−3)以外の酸成分としては、特に限定されず、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等の脂肪酸;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、10−フェニルオクタデカン酸等のモノカルボン酸;乳酸、3−ヒドロキシブタン酸、3−ヒドロキシ−4−エトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸等を挙げることができる。上記酸成分は単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0033】
アルコール成分(a2)
前記アルコール成分(a2)としては、1分子中に2個以上の水酸基を有する多価アルコールを好適に使用することができる。該多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、3−メチル−1,2−ブタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3−メチル−4,3−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールFなどの2価アルコール;これらの2価アルコールにε−カプロラクトンなどのラクトン類を付加したポリラクトンジオール;ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレートなどのエステルジオール類;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどのポリエーテルジオール類;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸、ソルビトール、マンニットなどの3価以上のアルコール;これらの3価以上のアルコールにε−カプロラクトンなどのラクトン類を付加させたポリラクトンポリオール類等が挙げられる。
【0034】
また、アルコール成分(a2)としては、上記多価アルコール以外に、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ステアリルアルコール、2−フェノキシエタノール等のモノアルコール;プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、「カージュラE10」(商品名、HEXION Specialty Chemicals社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)等のモノエポキシ化合物と酸を反応させて得られたアルコール化合物等を使用することができる。
【0035】
また、上記アルコール成分(a2)は、得られる塗膜の耐水性の観点から、3価以上のアルコール(a2−1)を含有することが好ましく、なかでも、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、グリセリン、ジグリセリン、ソルビトール、好ましくはトリメチロールエタン、トリメチロールプロパンを好適に使用することができる。
【0036】
アルコール成分(a2)が、上記3価以上のアルコール(a2−1)を含有する場合、該3価以上のアルコール(a2−1)の含有量は、アルコール成分(a1)の総量を基準として、5〜80mol%、好ましくは15〜60mol%、さらに好ましくは20〜40mol%の範囲内であることが好適である。
【0037】
水酸基含有ポリエステル樹脂(A)の製造方法は、特に限定されるものではなく、通常の方法に従って行なうことができ、例えば、前記酸成分(a1)中のカルボキシル基と前記アルコール成分(a2)中の水酸基の当量比(COOH/OH)を1未満とし、カルボキシル基に比べ水酸基が多い状態でエステル化反応又はエステル交換反応を行なうことによって製造することができる。また、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂に上記アルコール成分(a2)を反応させることによっても製造することができる。
【0038】
上記酸成分(a1)及びアルコール成分(a2)のエステル化反応又はエステル交換反応は、それ自体既知の方法、例えば、上記酸成分(a1)及びアルコール成分(a2)を、窒素気流中、150〜250℃で、5〜10時間程度加熱し、重縮合させることによって行なうことができる。
【0039】
また、上記酸成分(a1)及びアルコール成分(a2)をエステル化反応又はエステル交換反応せしめる際には、これらを一度に添加してもよいし、数回に分けて添加してもよい。また、はじめに水酸基含有ポリエステル樹脂を合成した後、得られた水酸基含有ポリエステル樹脂に酸無水物を反応させてハーフエステル化させてもよい。また、はじめにカルボキシル基含有ポリエステル樹脂を合成した後、上記アルコール成分(a2)を付加させてもよい。
【0040】
前記エステル化又はエステル交換反応の際には、反応を促進させるための触媒として、ジブチル錫オキサイド、三酸化アンチモン、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸コバルト、酢酸カルシウム、酢酸鉛、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等のそれ自体既知の触媒を使用することができる。
【0041】
また、前記水酸基含有ポリエステル樹脂(A)は、該樹脂の調製中、もしくはエステル化反応後又はエステル交換反応後に、脂肪酸、モノエポキシ化合物等で変性することができる。
【0042】
上記脂肪酸としては、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸などが挙げられ、上記モノエポキシ化合物としては、例えば、「カージュラE10」(商品名、HEXION Specialty Chemicals社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)を好適に用いることができる。
【0043】
また、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)は、得られる塗膜の硬化性の観点から、一般に50〜250mgKOH/g、好ましくは70〜180mgKOH/g、さらに好ましくは100〜150mgKOH/gの範囲内の水酸基価を有することが好適である。また、得られる複層塗膜の平滑性の観点から、500〜10,000、好ましくは700〜5,000、さらに好ましくは1,000〜3,000の範囲内の数平均分子量を有することが好適である。
【0044】
水酸基含有ポリエステル樹脂(A)の酸価、水酸基価及び数平均分子量の調整は、例えば、前記酸成分(a1)中のカルボキシル基と前記アルコール成分(a2)中の水酸基の当量比(COOH/OH)を調整すること、又は前記エステル化反応又はエステル交換反応における反応時間を調整すること等によって行なうことができる。上記酸成分(a1)中のカルボキシル基とアルコール成分(a2)中の水酸基の当量比(COOH/OH)としては、一般に、0.75〜0.95、好ましくは0.78〜0.92、さらに好ましくは0.80〜0.90の範囲内であることが好適である。
【0045】
なお、本明細書における数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフ(東ソー社製、「HLC8120GPC」)で測定した数平均分子量及び重量平均分子量を、標準ポリスチレンの分子量を基準にして換算した値である。この測定において、カラムは、「TSKgel G−4000HXL」、「TSKgel G−3000HXL」、「TSKgel G−2500HXL」、「TSKgel G−2000HXL」(いずれも商品名、東ソー社製)の4本を用い、移動相テトラヒドロフラン、測定温度40℃、流速1mL/min、検出器RIという測定条件を使用した。
【0046】
ポリイソシアネート化合物(B)
本発明の塗料組成物において架橋剤として使用されるポリイソシアネート化合物(B)は、イソシアネート基を1分子中に少なくとも2個有する化合物であって、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、該ポリイソシアネートの誘導体等を挙げることができる。
【0047】
上記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−または2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエートなどの脂肪族ジイソシアネート、例えば、リジンエステルトリイソシアネート、1,4,8−トリイソシアナトオクタン、1,6,11−トリイソシアナトウンデカン、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン、1,3,6−トリイソシアナトヘキサン、2,5,7−トリメチル−1,8−ジイソシアナト−5−イソシアナトメチルオクタンなどの脂肪族トリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0048】
前記脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−または1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物、ノルボルナンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート;1,3,5−トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5−トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,6−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)−ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタンなどの脂環族トリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0049】
前記芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−もしくは1,4−キシリレンジイソシアネートまたはその混合物、ω,ω’−ジイソシアナト−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−または1,4−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物などの芳香脂肪族ジイソシアネート、例えば、1,3,5−トリイソシアナトメチルベンゼンなどの芳香脂肪族トリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0050】
前記芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,4’−または4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートもしくはその混合物、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネートもしくはその混合物、4,4’−トルイジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート、例えば、トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエンなどの芳香族トリイソシアネート、例えば、4,4’−ジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネートなどの芳香族テトライソシアネートなどを挙げることができる。
【0051】
また、前記ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネート化合物のダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)及びクルードTDI等を挙げることができる。
【0052】
上記ポリイソシアネート及びその誘導体は、それぞれ単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。また、これらポリイソシアネートのうち、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート及びこれらの誘導体をそれぞれ単独で、又は2種以上併用して好適に使用することができる。
【0053】
また、ポリイソシアネート化合物(B)は、得られる複層塗膜の平滑性の観点から、一般に3,000以下、特に120〜1,500の範囲内の数平均分子量を有していることが好ましい。
【0054】
水酸基含有ポリエステル樹脂(A)に対するポリイソシアネート化合物(B)の使用割合は、特に制限されるものではないが、塗膜の硬化性や塗料安定性などの面から、ポリイソシアネート化合物(B)のイソシアネート基と水酸基含有樹脂(A)の水酸基の当量比(NCO/OH)が一般に0.5〜2.0、特に0.8〜1.5、さらに特に0.9〜1.2の範囲内であることが好ましい。
【0055】
塗料組成物
本発明の塗料組成物は、該塗料組成物中の水酸基含有ポリエステル樹脂(A)及びポリイソシアネート化合物(B)の合計固形分100質量部を基準として、水酸基含有樹脂(A)を30〜95質量部、好ましくは50〜90質量部、さらに好ましくは60〜80質量部の範囲内及びポリイソシアネ−ト化合物(B)を5〜70質量部、好ましくは10〜50質量部、さらに好ましくは20〜40質量部の範囲内で含有することができる。
【0056】
本発明の塗料組成物は、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)の他に、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、アルキド樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂などの改質用樹脂を含むことができ、特に、仕上り性や耐チッピング性などの点から、ポリウレタン樹脂及び/又はアクリル樹脂を含むことが望ましい。
【0057】
また、本発明の塗料組成物は、補助架橋剤として、ポリイソシアネート化合物(B)に加えて、メラミン樹脂などを併用することができる。使用しうるメラミン樹脂としては、例えば、メラミンとアルデヒドとの反応によって得られるメチロール化メラミン樹脂が挙げられる。上記アルデヒドとしては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドなどが挙げられる。上記メチロール化メラミン樹脂のメチロール基の一部又は全部をモノアルコールによってエーテル化したものも使用することができ、エーテル化に用いられるアルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、2−エチルブタノール、2−エチルヘキサノールなどが挙げられる。
【0058】
上記メラミン樹脂の市販品としては、例えば、「サイメル202」、「サイメル203」、「サイメル238」、「サイメル251」、「サイメル303」、「サイメル323」、「サイメル324」、「サイメル325」、「サイメル327」、「サイメル350」、「サイメル385」、「サイメル1156」、「サイメル1158」、「サイメル1116」、「サイメル1130」(以上、日本サイテックインダストリーズ社製)、「ユーバン120」、「ユーバン20HS」、「ユーバン20SE60」、「ユーバン2021」、「ユーバン2028」、「ユーバン28−60」(以上、三井化学社製)等が挙げられる。
上記メラミン樹脂は単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0059】
メラミン樹脂を補助架橋剤として使用する場合には、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸などのスルホン酸、或いはこれらの酸とアミンとの塩を触媒として使用することができる。
【0060】
上記メラミン樹脂は、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)及びポリイソシアネート化合物(B)の合計固形分100質量部を基準として、30質量部以下、好ましくは1〜20質量部の範囲内で使用することができる。
【0061】
また、本発明の塗料組成物は、ポリオール化合物(C)を含有することができる。なかでも、本発明の塗料組成物が、該ポリオール化合物(C)として、数平均分子量が100〜2,000、好ましくは300〜1,600、さらに好ましくは400〜900の範囲内であるポリオール化合物を含有することが、平滑性に優れた複層塗膜を得られるため、好適である。
【0062】
上記ポリオール化合物(C)は、1分子中に少なくとも2個の水酸基を有する化合物であって、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール等が挙げられ、これらは、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0063】
上記ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレン/プロピレン)グリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(エチレン/テトラメチレン)グリコール等が挙げられる。
【0064】
また、前記ポリエステルポリオールは、酸価が3mgKOH/g未満であることが好ましく、数平均分子量が200〜900、好ましくは300〜800の範囲内であることが好適である。また、該ポリエステルポリオールは直鎖状であることが好ましい。
【0065】
上記ポリエステルポリオールとしては、例えば、多価アルコール成分と多塩基酸成分とをエステル化反応させることにより得られるポリエステルポリオール、多価アルコール成分を開始剤としてラクトン化合物の開環反応により得られるポリエステルポリオール等が挙げられる。上記多価アルコール成分及び多塩基酸成分としては、前記水酸基含有ポリエステル樹脂(A)の説明において例示した多価アルコール及び多塩基酸が挙げられ、これらの多価アルコール成分及び多塩基酸成分はそれぞれ単独又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。また後者の場合、ラクトン化合物としては、ε−カプロラクトン、ポリβ−メチル−δ−バレロラクトン等が挙げられる。
【0066】
前記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、多価アルコールとホスゲンとの反応物、環状炭酸エステル(アルキレンカーボネート等)の開環重合物などが挙げられる。上記多価アルコールとしては、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどが挙げられ、上記環状炭酸エステルとしては、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネートなどが挙げられる。また、該ポリカーボネートポリオールは、分子内にカーボネート結合とともにエステル結合を有していてもよい。
【0067】
本発明の塗料組成物は、上記ポリオール化合物(C)を含有する場合、該ポリオール化合物(C)の配合量は、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)及びポリイソシアネート化合物(B)の合計固形分100質量部を基準として、1〜50質量部、好ましくは2〜30質量部、さらに好ましくは3〜15質量部の割合で使用することが好適である。
【0068】
また、本発明の塗料組成物は、さらに、二酸化ケイ素(D)を含有することができる。なかでも、本発明の塗料組成物が、該二酸化ケイ素(D)として、炭素量が1.0質量%以下、好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下である二酸化ケイ素を含有することが、鮮映性に優れた複層塗膜を得られるため、好適である。
【0069】
なお、本明細書において、二酸化ケイ素(D)の炭素量は、二酸化ケイ素(D)が含有する炭素の二酸化ケイ素(D)に対する質量割合であって、固体中炭素分析装置EMIA−110(商品名、堀場製作所社製)を用いて測定することができる。具体的には、二酸化ケイ素をるつぼに仕込み、1,000℃まで加熱し、発生した気体成分を赤外線吸収法によって分析し、検出された一酸化炭素及び二酸化炭素の量から全炭素量を求め、その量の仕込んだ二酸化ケイ素に対する質量分率を二酸化ケイ素の炭素量とする。
【0070】
本発明の塗料組成物が、炭素量が少ない、すなわち疎水基が少なく、比較的親水性の高い二酸化ケイ素を含有する場合に、鮮映性に優れた塗膜が得られる理由は明確ではないが、本発明の塗料組成物上に水性第2着色塗料(Y)が塗り重ねられた際に、この比較的親水性が高い二酸化ケイ素が両塗膜の界面付近に集まり、塗膜間の混層を抑制することが推察される。
【0071】
本発明の塗料組成物が二酸化ケイ素(D)を含有する場合、二酸化ケイ素(D)の配合量としては、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)及びポリイソシアネート化合物(B)の合計固形分100質量部を基準として、一般に0.05〜10質量部、特に0.1〜5質量部、さらに特に0.3〜2質量部の範囲内であることが好適である。また、上記炭素量が1.0質量%以下の二酸化ケイ素の配合量は、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)及びポリイソシアネート化合物(B)の合計固形分100質量部を基準として、一般に0.05〜10質量部、特に0.1〜5質量部、さらに特に0.3〜2質量部の範囲内であることが好適である。
【0072】
また、本発明の塗料組成物は、硬化触媒(E)を含有することが好ましい。該硬化触媒(E)としては、例えば、オクチル酸錫、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫脂肪酸塩、2−エチルヘキサン酸鉛、オクチル酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、脂肪酸亜鉛類、ナフテン酸コバルト、オクチル酸カルシウム、ナフテン酸銅、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネートなどの有機金属化合物;第三級アミン;りん酸化合物等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で、もしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0073】
本発明の塗料組成物が、上記硬化触媒(E)を含有する場合、該硬化触媒(E)の配合量は、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)及びポリイソシアネート化合物(B)の合計固形分100質量部を基準として、0.005〜5質量部、好ましくは0.01〜0.5質量部、さらに好ましくは0.03〜0.3質量部の範囲内であることが好適である。
【0074】
また、本発明の塗料組成物は、さらに、顔料(F)を含有することが好ましい。該顔料(F)としては、例えば、着色顔料(F1)、体質顔料(F2)、光輝性顔料(F3)等を挙げることができる。該顔料(F)は単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0075】
本発明の塗料組成物が、上記顔料(F)を含有する場合、該顔料(F)の配合量は、前記水酸基含有ポリエステル樹脂(A)及びポリイソシアネート化合物(B)の合計固形分100質量部を基準として、1〜200質量部、好ましくは20〜150質量部、さらに好ましくは50〜120質量部の範囲内であることが好適である。
【0076】
上記着色顔料(F1)としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、モリブデンレッド、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリン顔料、スレン系顔料、ペリレン顔料等が挙げられ、なかでも、酸化チタン、カーボンブラックを好適に使用することができる。
【0077】
本発明の塗料組成物が、上記着色顔料(F1)を含有する場合、該着色顔料(F1)の配合量は、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)及びポリイソシアネート化合物(B)の合計固形分100質量部を基準として、1〜120質量部、好ましくは10〜100質量部、さらに好ましくは15〜90質量部の範囲内であることが好適である。
【0078】
また、前記体質顔料(F2)としては、例えば、クレー、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、アルミナホワイト等が挙げられ、なかでも硫酸バリウム及び/又はタルクを使用することが好ましい。
【0079】
なかでも、本発明の塗料組成物が、上記体質顔料(F2)として、平均一次粒子径が1μm以下の硫酸バリウム、さらに好ましくは平均一次粒子径が0.01〜0.8μmの範囲内である硫酸バリウムを含有することが、平滑性に優れた複層塗膜を得られるため、好適である。
【0080】
なお、本発明における硫酸バリウムの平均一次粒子径は、硫酸バリウムを走査型電子顕微鏡で観察し、電子顕微鏡写真上に無作為に引いた直線上にある硫酸バリウム粒子20個の最大径を平均した値である。
【0081】
本発明の塗料組成物が、上記体質顔料(F2)を含有する場合、該体質顔料(F2)の配合量は、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)及びポリイソシアネート化合物(B)の合計固形分100質量部を基準として、1〜100質量部、好ましくは11〜60質量部、さらに好ましくは16〜40質量部の範囲内であることが好適である。また、上記平均一次粒子径が1μm以下の硫酸バリウムの配合量は、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)及びポリイソシアネート化合物(B)の合計固形分100質量部を基準として、1〜100質量部、好ましくは11〜60質量部、さらに好ましくは16〜40質量部の範囲内であることが好適である。
【0082】
また、前記光輝性顔料(F3)としては、塗膜にキラキラとした光輝感やパール調の光干渉性模様を付与する顔料であり、具体的には、ノンリーフィング型もしくはリーフィング型アルミニウム(蒸着アルミニウムも含む)、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタンや酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタンや酸化鉄で被覆された雲母などを使用することができる。このうち、パール調の光干渉性模様を付与することのできる光輝性顔料(F3)としては、酸化チタンや酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタンや酸化鉄で被覆された雲母などを挙げることができる。
【0083】
上記光輝性顔料(F3)はりん片状であることが好ましい。また、該光輝性顔料(F3)としては、長手方向寸法が1〜100μm、特に5〜40μm、厚さが0.0001〜5μm、特に0.001〜2μmの範囲内にあるものが適している。
【0084】
また、本発明の塗料組成物は、さらに必要に応じて、増粘剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、可塑剤、有機溶剤、表面調整剤、沈降防止剤等の通常の塗料用添加剤を単独でもしくは2種以上組み合わせて含有することができる。
【0085】
本発明の塗料組成物は、得られる塗膜の平滑性などの観点から、硬化膜厚が30μmとなるように塗装し、80℃で10分間加熱したときの塗膜のゲル分率(G80)が40質量%以上、特に45〜98質量%、さらに特に50〜95質量%の範囲内となるようなものであることが望ましい。
【0086】
なお、上記ゲル分率(G80)は、以下の方法により測定することができる。
まず、ポリプロピレン板上に本発明の塗料組成物を硬化膜厚が30μmとなるように塗装し、80℃で10分間加熱する。次に、該ポリプロピレン板上の塗膜を回収し、質量(W)を測定する。その後、該塗膜を200メッシュのステンレススチール製の網状容器に入れ、64℃に加温したアセトン中で5時間還流しながら抽出し、110℃で60分間乾燥した後の塗膜質量(W)を測定し、以下の式に従って算出される不溶塗膜残存率(質量%)をゲル分率とする。
ゲル分率(質量%)=(W/W)×100
本発明の塗料組成物のゲル分率(G80)の調整は、例えば、塗料組成物中の硬化触媒の配合量を調節することにより行なうことができる。
【0087】
また、本発明の塗料組成物は、得られる複層塗膜の平滑性の観点から、30〜80℃の範囲で周波数0.1Hzの条件で測定した粘性率の最大値が5Pa・sec以下となるものであることが好ましい。
【0088】
本明細書において、粘性率は、粘弾性測定装置を用いて測定される値であって、該粘弾性測定装置としては、例えば「レオストレスRS−150」(商品名、HAAKE社製)を使用することができる。上記粘性率の具体的な測定方法としては、イソプロパノールを用いて脱脂したブリキ板(300×450×0.3mm)の表面に、フォードカップNo.4による20℃での粘度を20秒に調整した本発明の塗料組成物を乾燥膜厚30μmとなるようにエアスプレー塗装し、ブリキ板上に形成された未硬化の塗膜を掻き取ってサンプル瓶に収集し、直ちに蓋をして密閉したものを試料とし、試料1.0gを「レオストレスRS−150」を用いて、ひずみ制御による動的粘弾性測定(周波数0.1Hz、ひずみ1.0、昇温速度6℃/分、センサー:パラレルプレート(Φ=20mm)、ギャップ:0.5mm)を30℃から80℃の温度範囲で行ない、複素粘性率の最大値を測定することにより行なうことができる。
【0089】
上記粘性率の最大値の調整は、例えば、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)のモノマー組成を調節することによって行なうことができる。
【0090】
本発明の塗料組成物は、一液型塗料の形態であってもよく、また、多液型塗料の形態であってもよいが、貯蔵安定性などの観点から、水酸基含有樹脂(A)を含有する主剤と、ポリイソシアネート化合物(B)を含有する硬化剤成分とからなる二液型塗料であることが好ましい。また、一般に、上記主剤が、さらに、顔料、硬化触媒及び溶媒を含有し、上記硬化剤成分が、さらに、溶媒を含有することが望ましい。
【0091】
また、本発明の塗料組成物は、有機溶剤型塗料及び水性塗料のいずれの形態であってもよいが、貯蔵安定性、平滑性、鮮映性などの観点から、有機溶剤型塗料であることが好適である。なお、本明細書において、水性塗料とは溶媒の主成分が水である塗料であり、有機溶剤型塗料とは溶媒として実質的に水を含有しない塗料である。
【0092】
以上に述べた本発明の塗料組成物は、第1着色塗料(X)として、前記被塗物上に、それ自体既知の方法、例えば、エアスプレー、エアレススプレー、回転霧化塗装機などにより塗装することができ、塗装の際、静電印加を行ってもよい。なかでも、エアスプレーによる静電塗装及び回転霧化塗装機による静電塗装が好ましく、回転霧化塗装機による静電塗装が特に好ましい。塗装膜厚は、硬化膜厚で、通常10〜100μm、好ましくは10〜50μm、さらに好ましくは15〜35μmの範囲内とすることができる。
【0093】
本発明の塗料組成物は、必要に応じて各種電着塗料によって下塗り塗膜を形成せしめた金属部材と、必要に応じて各種プライマー塗料によって下塗り塗膜を形成せしめたプラスチック部材とが一体化された被塗物上に塗装することもでき、それにより、金属部材とプラスチック部材の塗色が一致し、且つ両部材上に平滑性に優れた複層塗膜が形成せしめることができるという利点が得られる。
【0094】
工程(2)
本工程では、前記工程(1)により形成される未硬化の第1着色塗膜のゲル分率が、5質量%以上40質量%未満、好ましくは10〜35質量%、さらに好ましくは15〜30質量%に調整される。
【0095】
本明細書において、硬化塗膜とは、JIS K 5600−1−1に規定された硬化乾燥状態、すなわち、塗面の中央を親指と人差指とで強く挟んで、塗面に指紋によるへこみが付かず、塗膜の動きが感じられず、また、塗面の中央を指先で急速に繰り返しこすって、塗面にすり跡が付かない状態の塗膜である。一方、未硬化塗膜とは、塗膜が上記硬化乾燥状態に至っていない状態であって、JIS K 5600−1−1に規定された指触乾燥状態及び半硬化乾燥状態をも含むものである。
【0096】
第1着色塗膜のゲル分率は、例えば、予備加熱(プレヒート)、エアブローなどを行なうことにより調整することができる。上記予備加熱は、通常、第1着色塗料(A)が塗装された被塗物を乾燥炉内で30〜110℃、好ましくは40〜90℃、さらに好ましくは50〜70℃の温度で、30秒間〜15分間、好ましくは1〜10分間、さらに好ましくは2〜5分間直接的又は間接的に加熱することにより行うことができ、また、上記エアブローは、通常、被塗物の塗装面に常温又は約25℃〜約80℃の温度に加熱された空気を吹き付けることにより行うことができる。
【0097】
また、第1着色塗膜のゲル分率は、以下の方法により測定することができる。
まず、被塗物に第1着色塗料(X)を塗装すると同時に、ポリプロピレン板上にも第1着色塗料(X)を塗装し、必要に応じて予備加熱などを行った後、被塗物に水性第2着色塗料(Y)が塗装される直前に該ポリプロピレン板を回収し、次に、該ポリプロピレン板上の第1着色塗膜を回収し、質量(W)を測定する。その後、該塗膜を200メッシュのステンレススチール製の網状容器に入れ、64℃に加温したアセトン中で5時間還流しながら抽出し、110℃で60分間乾燥した後の塗膜質量(W)を測定し、以下の式に従って得られる不溶塗膜残存率(質量%)をゲル分率とする。
ゲル分率(質量%)=(W/W)×100
また、得られる複層塗膜の平滑性などの観点から、本工程において、第1着色塗膜の固形分含有率が、一般に70〜100質量%、特に80〜100質量%、さらに特に90〜100質量%の範囲内に調整されることが好ましい。
【0098】
第1着色塗膜の固形分含有率は、例えば、前記予備加熱(プレヒート)、エアブローなどを行なうことにより調整することができる。
【0099】
なお、第1着色塗膜の固形分含有率は、以下の方法により測定することができる。
まず、被塗物に第1着色塗料(X)を塗装すると同時に、予め質量(W)を測定しておいたアルミホイル上にも第1着色塗料(X)を塗装し、必要に応じて予備加熱などを行った後、被塗物に水性第2着色塗料(Y)が塗装される直前に該アルミホイルを回収し、その質量(W)を測定する。次に、回収したアルミホイルを110℃で60分間乾燥し、デシケーター内で室温まで放冷した後、該アルミホイルの質量(W)を測定し、以下の式に従って固形分含有率を求める。
固形分含有率(質量%)={(W−W)/(W−W)}×100
本発明の複層塗膜形成方法において、第1着色塗膜のゲル分率が5質量%以上40質量%未満に調整された状態で、水性第2着色塗料(Y)を塗装することによって、平滑性及び鮮映性に優れた複層塗膜が形成される理由は明確ではないが、第1着色塗膜のゲル分率が低いことにより、該第1着色塗膜の流動性が確保されて平滑性が向上し、かつ該第1着色塗膜中の比較的低酸価の水酸基含有ポリエステル樹脂(A)が、上層の水性第2着色塗料(Y)からの水の浸透を抑制するため、第1着色塗膜と第2着色塗膜間の混層が抑えられ、鮮映性が向上することが推察される。
【0100】
工程(3)
本工程では、上記工程(2)により形成される未硬化の第1着色塗膜上に、水性第2着色塗料(Y)が塗装され、未硬化の第2着色塗膜が形成される。
【0101】
水性第2着色塗料(Y)
水性第2着色塗料(Y)としては、例えば、自動車車体の塗装において通常使用されるそれ自体既知のものを使用することができる。具体的には、例えば、カルボキシル基、水酸基などの架橋性官能基を有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などの基体樹脂と、ブロックされていてもよいポリイソシアネート化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂などの架橋剤を、顔料、その他の添加剤と共に水に溶解ないし分散させて塗料化したものを使用することができる。なかでも、水酸基含有樹脂とメラミン樹脂を含んでなる熱硬化型水性塗料が好適である。
【0102】
また、上記顔料としては、前記着色顔料(F1)、体質顔料(F2)、光輝性顔料(F3)等を使用することができる。なかでも、顔料成分の少なくとも一部として光輝性顔料(F3)を用いることによって、メタリック調又はパール調の塗膜を形成せしめることができる。
【0103】
上記光輝性顔料(F3)としては、例えば、前記水性第1着色塗料(X)の説明において例示した、ノンリーフィング型もしくはリーフィング型アルミニウム(蒸着アルミニウムも含む)、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタンや酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタンや酸化鉄で被覆された雲母等を挙げることができる。なかでも、アルミニウム、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタンや酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタンや酸化鉄で被覆された雲母を用いることが好ましく、アルミニウムを用いることが特に好ましい。上記光輝性顔料(F3)は単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0104】
また、上記光輝性顔料(F3)は、りん片状であることが好ましい。また、該光輝性顔料(F3)としては、長手方向寸法が1〜100μm、特に5〜40μm、厚さが0.0001〜5μm、特に0.001〜2μmの範囲内にあるものが適している。
【0105】
また、水性第2着色塗料(Y)が上記光輝性顔料(F3)を含有する場合、該光輝性顔料(F3)の配合量は、水性第2着色塗料(Y)中の樹脂固形分100質量部を基準として、一般に1〜50質量部、特に3〜30質量部、さらに特に5〜20質量部の範囲内にあることが好適である。
【0106】
また、水性第2着色塗料(Y)は、さらに、疎水性溶媒を含有することが好ましい。該疎水性溶媒は、20℃において、100gの水に溶解する質量が10g以下、好ましくは5g以下、さらに好ましくは1g以下の有機溶媒であって、例えば、ゴム揮発油、ミネラルスピリット、トルオール、キシロール、ソルベントナフサなどの炭化水素系溶媒;n−ヘキサノール、n−オクタノール、2−オクタノール、2−エチルヘキサノール、n−デカノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテルなどのアルコール系溶媒;酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、酢酸メチルアミル、酢酸エチレングリコールモノブチルエーテルなどのエステル系溶媒;メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、エチルn−アミルケトン、ジイソブチルケトンなどのケトン系溶媒を挙げることができ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0107】
水性第2着色塗料(Y)が、上記疎水性溶媒を含有する場合、該疎水性溶媒の配合量は、水性第2着色塗料(Y)中の固形分100質量部を基準として、2〜70質量部、好ましくは11〜50質量部、さらに好ましくは16〜40質量部の範囲内であることが好適である。
【0108】
上記疎水性溶媒としては、得られる複層塗膜の平滑性及び鮮映性の観点から、アルコール系疎水性溶媒を用いることが好ましい。なかでも、炭素数7〜14のアルコール系疎水性溶媒、例えば、n−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテルが特に好適である。
【0109】
水性第2着色塗料(Y)が、上記アルコール系疎水性溶媒を含有する場合、該アルコール系疎水性溶媒の配合量は、水性第2着色塗料(Y)中の固形分100質量部を基準として、2〜70質量部、好ましくは11〜50質量部、さらに好ましくは16〜40質量部の範囲内であることが好適である。
【0110】
水性第2着色塗料(Y)は、さらに必要に応じて、硬化触媒、増粘剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、防錆剤、可塑剤、有機溶剤、表面調整剤、沈降防止剤などの通常の塗料用添加剤をそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて含有することができる。
【0111】
水性第2着色塗料(Y)の塗装は、それ自体既知の方法、例えば、エアスプレー、エアレススプレー、回転霧化塗装機などにより塗装することができ、塗装の際、静電印加を行ってもよい。塗装膜厚は、硬化膜厚で通常5〜40μm、好ましくは10〜30μm、さらに好ましくは12〜20μmの範囲内とすることができる。
【0112】
塗装された水性第2着色塗料(Y)の塗膜は、ワキ等の塗膜欠陥の発生を防止する観点から、塗膜が実質的に硬化しない加熱条件でプレヒート(予備加熱)、エアブロー等を行うことが好ましい。プレヒートの温度は、40〜100℃、好ましくは50〜90℃、さらに好ましくは60〜80℃とすることができ、プレヒートの時間は、30秒間〜15分間、好ましくは1〜10分間、さらに好ましくは2〜5分間とすることができる。また、上記エアブローは、通常、被塗物の塗装面に常温又は25℃〜80℃の温度に加熱された空気を吹き付けることにより行うことができる。
【0113】
工程(4)
本工程では、上記工程(3)により形成される未硬化の第2着色塗膜上に、さらに、クリヤー塗料(Z)が塗装され、未硬化のクリヤー塗膜が形成される。
【0114】
クリヤー塗料(Z)
クリヤー塗料(Z)としては、例えば、自動車車体の塗装において通常使用されるそれ自体既知のものを使用することができる。具体的には、例えば、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、シラノール基などの架橋性官能基を有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂などの基体樹脂と、メラミン樹脂、尿素樹脂、ブロックされていてもよいポリイソシアネート化合物、カルボキシル基含有化合物もしくは樹脂、エポキシ基含有化合物もしくは樹脂などの架橋剤を樹脂成分として含有する有機溶剤系熱硬化型塗料、水性熱硬化型塗料、熱硬化型粉体塗料などを使用することができる。なかでも、水酸基含有アクリル樹脂及びメラミン樹脂を含んでなる熱硬化型塗料、水酸基含有アクリル樹脂及びブロックされていてもよいポリイソシアネート化合物を含んでなる熱硬化型塗料又はカルボキシル基含有樹脂及びエポキシ基含有樹脂を含んでなる熱硬化型塗料が特に好ましい。
【0115】
また、上記クリヤー塗料(Z)としては、一液型塗料及び二液型ウレタン樹脂塗料などの二液型塗料のいずれの形態のものであってもよい。
【0116】
クリヤー塗料(Z)には、必要に応じて、透明性を阻害しない程度に、前記着色顔料(F1)、光輝性顔料(F3)、染料等を含有させることができ、さらに体質顔料(F2)や、硬化触媒、増粘剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、防錆剤、可塑剤、有機溶剤、表面調整剤、沈降防止剤などの通常の塗料用添加剤をそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて含有することができる。
【0117】
また、クリヤー塗料(Z)の塗装は、タレの抑制や得られる塗膜の鮮映性などの観点から、第2着色塗膜の固形分含有率が、一般に70〜100質量%、特に80〜100質量%、さらに特に90〜100質量%の範囲内にある間に行なうことが好適である。
【0118】
第2着色塗膜の固形分含有率は、クリヤー塗料(Z)を塗装する前に、例えば、予備加熱(プレヒート)、エアブローなどを行なうことにより調整することができる。上記予備加熱は、通常、第1着色塗料(X)及び水性第2着色塗料(Y)が塗装された被塗物を乾燥炉内で40〜100℃、好ましくは50〜90℃、さらに好ましくは60〜80℃の温度で30秒間〜15分間、好ましくは1〜10分間、さらに好ましくは2〜5分間直接的又は間接的に加熱することにより行うことができ、また、上記エアブローは、通常、被塗物の塗装面に常温又は約25℃〜約80℃の温度に加熱された空気を吹き付けることにより行うことができる。
【0119】
なお、第2着色塗膜の固形分含有率は、以下の方法により測定することができる。
まず、第1着色塗膜上に水性第2着色塗料(Y)を塗装すると同時に、予め質量(W)を測定しておいたアルミホイル上にも水性第2着色塗料(Y)を塗装し、必要に応じて予備加熱などを行った後、第2着色塗膜上にクリヤー塗料(Z)が塗装される直前に該アルミホイルを回収し、その質量(W)を測定する。次に、回収したアルミホイルを110℃で60分間乾燥し、デシケーター内で室温まで放冷した後、該アルミホイルの質量(W)を測定し、以下の式に従って固形分含有率を求める。
固形分含有率(質量%)={(W−W)/(W−W)}×100
クリヤー塗料(Z)は、水性第2着色塗料(Y)の未硬化の塗膜面に、それ自体既知の方法、例えば、エアレススプレー、エアスプレー、回転霧化塗装機などにより塗装することができ、塗装の際、静電印加を行ってもよい。塗装膜厚は、通常、硬化膜厚で10〜60μm、好ましくは25〜50μmの範囲内になるように塗装することができる。
【0120】
上記クリヤー塗料(Z)の塗装後は、必要に応じて、室温で1〜60分間、好ましくは3〜20分間のインターバルをおいたり、40〜90℃で1〜30分間、好ましくは3〜10分間程度予備加熱することができる。
【0121】
工程(5)
以上に述べた如くして形成される第1着色塗膜、第2着色塗膜及びクリヤー塗膜の3層の塗膜からなる複層塗膜は、通常の塗膜の焼付け手段により、例えば、熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱などにより、80〜180℃、好ましくは120〜160℃、さらに好ましくは130〜150℃の温度で、10〜40分間、好ましくは15〜30分間加熱して同時に硬化させることができ、それによって、第1着色塗膜、第2着色塗膜及びクリヤー塗膜の3層の硬化塗膜からなる平滑性及び鮮映性に優れた複層塗膜を形成せしめることができる。
【実施例】
【0122】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」は「質量部」及び「質量%」を示す。
【0123】
ポリエステル樹脂溶液(A)の製造
製造例1
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び水分離器を備えた反応容器に、アジピン酸(分子量146)52.6部(0.36mol)、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物(分子量154)20.8部(0.135mol)、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(分子量172)23.2部(0.135mol)、イソフタル酸(分子量166)44.8部(0.27mol)、トリメチロールプロパン(分子量134)33.5部(0.25mol)及びネオペンチルグリコール(分子量104)78部(0.0.75mol)を仕込み、160℃から230℃まで3時間かけて昇温させた後、230℃で保持し、酸価が5mgKOH/gとなるまで反応を行った。生成した縮合水は水分離器により留去した。次いで、キシレン/スワゾール1000(商品名、コスモ石油社製、石油系芳香族炭化水素系溶剤)=50/50(質量比)の混合溶剤で固形分濃度60%となるよう希釈し、水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(A−1)を得た。得られた水酸基含有ポリエステル樹脂は水酸基価が118、数平均分子量が1,870であった。
【0124】
製造例2〜12
製造例1と同様にして、下記表1に示す配合割合のモノマーを下記表1に示す酸価となるまで反応させることにより、水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(A−2)〜(A−12)を得た。各モノマーの配合量、得られた各水酸基含有ポリエステル樹脂の酸価、水酸基価及び数平均分子量を製造例1で得た水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(A−1)と併せて、下記表1に示す。
【0125】
【表1】

【0126】
第1着色塗料(X)の製造
製造例13〜32
製造例1〜8で得たポリエステル樹脂溶液(A−1)〜(A−12)、「JR−806」(商品名、テイカ社製、ルチル型二酸化チタン)、「カーボンMA−100」(商品名、三菱化学社製、カーボンブラック)、「バリエースB−35」(商品名、堺化学工業社製、硫酸バリウム粉末、平均一次粒子径0.5μm)、「SPARWITE W−5HB」(商品名、ウィルバーエリス社製、硫酸バリウム粉末、平均一次粒子径1.6μm)、「MICRO ACE S−3」(商品名、日本タルク社製、タルク)、「スミジュールN3300」(商品名、住化バイエルウレタン社製、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、固形分100%、NCO含有率21.8%)、「サイメル325」(商品名、日本サイテックインダストリーズ社製、メラミン樹脂、固形分80%)、「TPA−B80X」(商品名、旭化成ケミカル社製、ヘキサメチレンジイソシアネートのメチルエチルケトオキシムブロック化物、固形分80%)、「クラレポリオールP−510」(商品名、クラレ社製、ポリエステルポリオール、数平均分子量500)、「AEROSIL 200」(商品名、日本アエロジル社製、炭素量0質量%)、「AEROSIL R−972」(商品名、日本アエロジル社製、炭素量0.8質量%)、「AEROSIL R−104」(商品名、日本アエロジル社製、炭素量1.1質量%)及びジブチル錫ジアセテートを、下記表2に示す配合割合にて攪拌混合して塗料化を行い、第1着色塗料(X−1)〜(X−32)を得た。
なお、顔料成分の配合にあたっては、第1着色塗料中の水酸基含有ポリエステル樹脂溶液42部(樹脂固形分25部)及び表2中に示す量の顔料に、キシレン15部及びガラスビーズを加えて混合し、ペイントシェーカーで30分間分散した後、ガラスビーズを除去して、顔料分散ペーストとし、他成分との攪拌混合に供した。また、二酸化ケイ素の配合にあたっては、第1着色塗料中の水酸基含有ポリエステル樹脂溶液2部(樹脂固形分1.2部)及び表2中に示す量の二酸化ケイ素に、キシレン5部及びガラスビーズを加えて混合し、ペイントシェーカーで30分間分散した後、ガラスビーズを除去して、顔料分散ペーストとし、他成分との攪拌混合に供した。
第1着色塗料は、さらに、キシレン/スワゾール1000(商品名、コスモ石油社製、石油系芳香族炭化水素系溶剤)=50/50(質量比)の混合溶剤を添加することにより、フォードカップNo.4を用いて20℃で20秒の粘度になるように調整した。
また、得られた第1着色塗料(X−1)〜(X−20)について、ポリプロピレン板上に硬化膜厚が30μmとなるように塗装し、80℃で10分間加熱した後の塗膜のゲル分率(G80)及び30〜80℃における周波数0.1Hzの条件で測定した粘性率の最高値の測定結果を合わせて表2に示す。
【0127】
【表2】

【0128】
【表3】

【0129】
水性第2着色塗料(Y)用アクリル樹脂エマルションの製造例
製造例33
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、脱イオン水130部及びアクアロンKH−10(注1)0.52部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、80℃に昇温した。次いで、下記のモノマー乳化物(1)のうちの全量の1%量及び6%過硫酸アンモニウム水溶液5.3部を反応容器内に導入し、80℃で15分間保持した。その後、残りのモノマー乳化物(1)を3時間かけて、同温度に保持した反応容器内に滴下し、滴下終了後1時間熟成を行なった。その後、下記のモノマー乳化物(2)を1時間かけて滴下し、1時間熟成した後、5%ジメチルエタノールアミン水溶液40部を反応容器に徐々に加えながら30℃まで冷却し、100メッシュのナイロンクロスで濾過しながら排出し、平均粒子径100nm(サブミクロン粒度分布測定装置「COULTER N4型」(ベックマン・コールター社製)を用いて、脱イオン水で希釈し20℃で測定した)、固形分濃度30%のアクリル樹脂エマルション(AC)を得た。得られたアクリル樹脂は、酸価が33mgKOH/g、水酸基価が25mgKOH/gであった。
(注1)アクアロンKH−10: ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩エステルアンモニウム塩:第一工業製薬株式会社製、有効成分97%。
【0130】
モノマー乳化物(1): 脱イオン水42部、アクアロンKH−10 0.72部、アリルメタクリレート2.1部、スチレン2.8部、メチルメタクリレート16.1部、エチルアクリレート28部及びn−ブチルアクリレート21部を混合攪拌して、モノマー乳化物(1)を得た。
【0131】
モノマー乳化物(2): 脱イオン水18部、アクアロンKH−10 0.31部、過硫酸アンモニウム0.03部、メタクリル酸5.1部、2−ヒドロキシエチルアクリレート5.1部、スチレン3部、メチルメタクリレート6部、エチルアクリレート1.8部及びn−ブチルアクリレート9部を混合攪拌して、モノマー乳化物(2)を得た。
【0132】
水性第2着色塗料(Y)用ポリエステル樹脂の製造
製造例34
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び水分離器を備えた反応容器に、トリメチロールプロパン109部、1,6−ヘキサンジオール141部、ヘキサヒドロ無水フタル酸126部及びアジピン酸120部を仕込み、160℃〜230℃の間を3時間かけて昇温させた後、230℃で4時間縮合反応させた。生成した縮合水は水分離器により留去した。次いで、得られた縮合反応生成物にカルボキシル基を付加するために、さらに、無水トリメリット酸38.3部を加え、170℃で30分間反応させた後、2−エチル−1−ヘキサノール(20℃において100gの水に溶解する質量:0.1g)で希釈し、固形分濃度70%のポリエステル樹脂溶液(PE1)を得た。得られたポリエステル樹脂は酸価が46mgKOH/g、水酸基価が150mgKOH/g、数平均分子量が1,400であった。
【0133】
製造例35
希釈溶剤の2−エチル−1−ヘキサノールをエチレングリコールモノn−ブチルエーテル(20℃において100gの水に溶解する質量:無限)に変更する以外は、製造例34と同様にして、ポリエステル樹脂(PE2)を得た。
【0134】
光輝性顔料濃厚液の製造例
製造例36
攪拌混合容器内において、アルミニウム顔料ペースト「GX−180A」(旭化成メタルズ社製、金属含有量74%)19部、2−エチル−1−ヘキサノール35部、リン酸基含有樹脂溶液(注2)8部及び2−(ジメチルアミノ)エタノール0.2部を均一に混合して、光輝性顔料濃厚液(P1)を得た。
(注2)リン酸基含有樹脂溶液:温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器にメトキシプロパノール27.5部、イソブタノール27.5部の混合溶剤を入れ、110℃に加熱し、スチレン25部、n−ブチルメタクリレート27.5部、「イソステアリルアクリレート」(商品名、大阪有機化学工業社製、分岐高級アルキルアクリレート)20部、4−ヒドロキシブチルアクリレート7.5部、リン酸基含有重合性モノマー(注3)15部、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート12.5部、イソブタノール10部、t−ブチルパーオキシオクタノエート4部からなる混合物121.5部を4時間かけて上記混合溶剤に加え、さらにt−ブチルパーオキシオクタノエート0.5部とイソプロパノール20部からなる混合物を1時間滴下した。その後、1時間攪拌熟成して固形分濃度50%のリン酸基含有樹脂溶液を得た。本樹脂のリン酸基による酸価は83mgKOH/g、水酸基価は29mgKOH/g、重量平均分子量は10,000であった。
(注3)リン酸基含有重合性モノマー:温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器にモノブチルリン酸57.5部、イソブタノール41部を入れ、90℃に昇温後、グリシジルメタクリレート42.5部を2時間かけて滴下した後、さらに1時間攪拌熟成した。その後、イソプロパノ−ル59部を加えて、固形分濃度50%のリン酸基含有重合性モノマー溶液を得た。得られたモノマーのリン酸基による酸価は285mgKOH/gであった。
【0135】
製造例37
2−エチル−1−ヘキサノール35部を、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル35部に変更する以外は、製造例36と同様にして、光輝性顔料濃厚液(P2)を得た。
【0136】
水性第2着色塗料(Y)の製造
製造例38
製造例33で得たアクリル樹脂エマルション(AC)100部、製造例34で得たポリエステル樹脂溶液(PE1)57部、製造例36で得た光輝性顔料濃厚液(P1)62部及び「サイメル325」(商品名、日本サイテックインダストリーズ社製、メラミン樹脂、固形分80%)37.5部を均一に混合し、更に、「プライマルASE−60」(商品名、ロームアンドハース社製、ポリアクリル酸系増粘剤)、2−(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を加えてpH8.0、塗料固形分25%、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度40秒の水性第2着色塗料(Y−1)を得た。
【0137】
製造例39
製造例33で得たアクリル樹脂エマルション(AC)100部、製造例35で得たポリエステル樹脂溶液(PE2)57部、製造例37で得た光輝性顔料濃厚液(P2)62部及び「サイメル325」(日本サイテックインダストリーズ社製、商品名、メラミン樹脂、固形分80%)37.5部を均一に混合し、更に、「プライマルASE−60」(ロームアンドハース社製、商品名、ポリアクリル酸系増粘剤)、2−(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を加えてpH8.0、塗料固形分25%、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度40秒の水性第2着色塗料(Y−2)を得た。
【0138】
塗膜形成方法
前記製造例13〜32で得た第1着色塗料(X−1)〜(X−20)、及び上記製造例38及び39で得た水性第2着色塗料(Y−1)及び(Y−2)を用い、以下のようにしてそれぞれ試験塗板を作製し、評価試験を行なった。
【0139】
(試験用被塗物の作製)
リン酸亜鉛化成処理を施した冷延鋼板に、「エレクロンGT−10」(商品名、関西ペイント社製、カチオン電着塗料)を硬化膜厚20μmとなるように電着塗装し、170℃で30分間加熱して硬化させて試験用被塗物とした。
【0140】
実施例1
上記試験用被塗物、前述した塗着塗膜のゲル分率測定用のポリプロピレン板及び固形分含有率測定用のアルミホイル上に、それぞれ、製造例13で得た第1着色塗料(X−1)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、硬化膜厚が30μmとなるように静電塗装した。5分間放置後、60℃で5分間プレヒートを行なった後、第1着色塗膜のゲル分率及び固形分含有率を測定した。測定結果を表3に示す。
次いで、第1着色塗膜上に製造例38で得た水性第2着色塗料(Y−1)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、硬化膜厚が15μmとなるように静電塗装し、3分間放置後、80℃で3分間プレヒートを行なった。
次いで、該第2着色塗膜上に、「マジクロンKINO−1210」(商品名、関西ペイント社製、アクリル樹脂系溶剤型上塗りクリヤー塗料、以下「クリヤー塗料(Z−1)」ということがある)を硬化膜厚が40μmとなるように静電塗装し、7分間放置した後、140℃で30分間加熱して、上記第1着色塗膜、第2着色塗膜及びクリヤー塗膜を同時に硬化させ、試験塗板を作製した。
【0141】
実施例2〜19、比較例1〜7
実施例1において、製造例13で得た第1着色塗料(X−1)を表3に示す第1着色塗料(X−2)〜(X−20)に変更し、第1着色塗料(X−1)を塗装した後のプレヒート条件を表3に示すプレヒート条件に変更し、製造例38で得た水性第2着色塗料(Y−1)を表3に示す水性第2着色塗料(Y−1)又は製造例39で得た水性第2着色塗料(Y−2)に変更する以外は、実施例1と同様にして試験塗板を作製した。
【0142】
評価試験
上記実施例1〜19及び比較例1〜7で得られた各試験板について、下記の試験方法により評価を行なった。評価結果を表3に示す。
(試験方法)
平滑性:Wave Scan(商品名、BYK Gardner社製)によって測定されるLong Wave(LW)値を用いて評価した。Long Wave(LW)値は、1.2〜12mm程度の波長の表面粗度の振幅の指標であり、測定値が小さいほど塗面の平滑性が高いことを示す。
【0143】
鮮映性:上記Wave Scanによって測定されるShort Wave(SW)値を用いて評価した。Short Wave(SW)値は、0.3〜1.2mm程度の波長の表面粗度の振幅の指標であり、測定値が小さいほど塗面の鮮映性が高いことを示す。
【0144】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程(1)〜(5)、
工程(1):被塗物上に、第1着色塗料(X)を塗装して未硬化の第1着色塗膜を形成する工程、
工程(2):前記工程(1)で形成される未硬化の第1着色塗膜のゲル分率を5質量%以上40質量%未満とする工程、
工程(3):前記工程(2)で形成される未硬化の第1着色塗膜上に、水性第2着色塗料(Y)を塗装して未硬化の第2着色塗膜を形成する工程、
工程(4):前記工程(3)で形成される未硬化の第2着色塗膜上に、クリヤー塗料(Z)を塗装して未硬化のクリヤー塗膜を形成する工程、及び
工程(5):前記工程(1)〜(4)で形成される第1着色塗膜、第2着色塗膜及びクリヤー塗膜を同時に焼付け硬化する工程、
を順次行うことにより複層塗膜を形成せしめる方法において、第1着色塗料(X)として、酸成分(a1)及びアルコール成分(a2)の反応によって得られ、かつ酸成分(a1)中の脂肪族多塩基酸(a1−1)の含有量が、酸成分(a1)の総量を基準として20〜70mol%の範囲内であり、かつ酸価が15mgKOH/g以下である水酸基含有ポリエステル樹脂(A)、及びポリイソシアネート化合物(B)を含んでなる塗料組成物を使用することを特徴とする複層塗膜形成方法。
【請求項2】
酸成分(a1)中の脂環族多塩基酸(a1−2)の含有量が、酸成分(a1)の総量を基準として、20〜70mol%の範囲内である請求項1に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項3】
酸成分(a1)が脂環族多塩基酸(a1−2)を含有し、かつ該脂環族多塩基酸(a1−2)中の1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸及び4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物の合計含有量が、酸成分(a1)の総量を基準として、5〜50mol%の範囲内であり、かつ1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の含有量が、酸成分(a1)の総量を基準として、5〜50mol%の範囲内である請求項1又は2に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項4】
塗料組成物が、30〜80℃における周波数0.1Hzの条件で測定した粘性率の最大値が5Pa・sec以下となるものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項5】
塗料組成物が、該塗料組成物を硬化膜厚が30μmとなるように塗装し、80℃で10分間加熱した後の塗膜のゲル分率(G80)が、40質量%以上となるものである請求項1〜4のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項6】
被塗物が、電着塗料によって下塗り塗膜が形成された車体である請求項1〜5のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法により塗装された物品。

【公開番号】特開2009−6285(P2009−6285A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−171237(P2007−171237)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】