説明

複層塗膜形成方法

【課題】平滑性及び鮮映性に優れた複層塗膜を形成できる方法を提供すること。
【解決手段】被塗物上に、水性中塗り塗料、水性ベース塗料及びクリヤー塗料を順次塗装し、得られる中塗り塗膜、ベース塗膜及びクリヤー塗膜を同時に加熱硬化することにより複層塗膜を形成する方法であって、水性中塗り塗料(X)が、基体樹脂(A)、硬化剤(B)ならびに、下記一般式(1):


(式中、R及びRは、独立して炭素数4〜18の炭化水素基を表し、Rは炭素数2〜4のアルキレン基を表し、mは3〜25の整数を表す。m個のオキシアルキレン単位(R−O)は、互いに同じであっても異なっていてもよい。)
で表されるジエステル化合物(C)を含有し、
前記硬化剤(B)が、ポリイソシアネート化合物(B1)及び/又はポリカルボジイミド化合物(B2)である、複層塗膜形成方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被塗物上に、水性中塗り塗料、水性ベース塗料及びクリヤー塗料を順次塗装し、得られる3層の複層塗膜を同時に加熱硬化する3コート1ベーク方式により、優れた外観を有する複層塗膜を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車車体における塗膜形成方法としては、被塗物に電着塗料を施した後、中塗り塗料の塗装→焼き付け硬化→ベース塗料の塗装→プレヒート(予備加熱)→クリヤー塗料の塗装→焼き付け硬化の3コート2ベーク(3C2B)方式により複層塗膜を形成する方法が広く採用されている。しかしながら、近年、省エネルギーの観点から、中塗り塗料の塗装後の焼き付け硬化工程を省略し、被塗物に電着塗料を施した後、中塗り塗料の塗装→プレヒート(予備加熱)→ベース塗料の塗装→プレヒート(予備加熱)→クリヤー塗料の塗装→焼き付け硬化の3コート1ベーク(3C1B)方式が試みられている。
【0003】
なかでも、有機溶剤の揮散による環境汚染を抑制する観点から、中塗り塗料及びベース塗料として水性塗料を用いた3コート1ベーク方式が特に求められている。
【0004】
しかしながら、上記水性中塗り塗料及び水性ベース塗料を用いた3コート1ベーク方式においては、水性中塗り塗料と水性ベース塗料とが、共に水を主溶媒として使用しているため、中塗り塗膜上に水性ベース塗料を塗装した際に、水性ベース塗料中の水によって中塗り塗膜が溶解し、中塗り塗膜とベース塗膜の間で混層が生じ、得られる塗膜の平滑性や鮮映性の低下が生じるという問題があった。特に、上記水性ベース塗料が光輝性顔料を含有する場合、上記の混層によって、水性ベース塗料中の光輝性顔料の配向が乱れ、得られる塗膜のフリップフロップ性が低下したり、メタリックムラが発生したりする場合があった。
【0005】
このような問題に対し、特許文献1には、基材上に、水性中塗り塗料により中塗り塗膜、水性メタリックベース塗料によりメタリックベース塗膜及びクリヤー塗料によりクリヤー塗膜を、順次形成する塗膜形成方法において、前記水性中塗り塗料及び/又は前記水性メタリックベース塗料が、ポリカルボジイミド化合物及びカルボキシル基含有水性樹脂を含有する場合に、耐水性及び鮮映性に優れた複層塗膜が得られることが記載されている。しかしながら、該塗装方法によって得られる塗膜は、平滑性が不十分であった。
【0006】
また、特許文献2には、水性中塗り塗料(A)、水性ベース塗料(B)及びクリヤー塗料(C)を用いる3C1B方式において、水性中塗り塗料(A)が、ポリエステル樹脂(X)及び硬化剤(Y)を含んでなり、ポリエステル樹脂(X)が、分子中にベンゼン環とシクロヘキサン環を含有し且つそれらの合計含有量が1.0〜2.2mol/kg(樹脂固形分)の範囲内にあるポリエステル樹脂であり、そして硬化剤(Y)が、イソシアネート基含有化合物(a)、オキサゾリン基含有化合物(b)、カルボジイミド基含有化合物(c)、ヒドラジド基含有化合物(d)及びセミカルバジド基含有化合物(e)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である、複層塗膜形成方法が開示されている。特許文献2の方法では、平滑性、鮮映性、耐チッピング性及び耐水性に優れた複層塗膜が得られることが記載されている。しかしながら、該塗装方法によって得られる複層塗膜においても、平滑性及び鮮映性が不十分な場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−9357号公報
【特許文献2】WO2007/126107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、被塗物上に、水性中塗り塗料、水性ベース塗料及びクリヤー塗料を順次塗装し、得られる3層の複層塗膜を同時に加熱硬化する3コート1ベーク方式において、平滑性及び鮮映性に優れた複層塗膜を形成する方法を提供すること、特に、水性ベース塗料が光輝性顔料を含有する場合に、フリップフロップ性が高く、メタリックムラが少ない優れた外観を有する複層塗膜を形成する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するべく鋭意検討を重ねた結果、今回、被塗物上に、水性中塗り塗料、水性ベース塗料及びクリヤー塗料を順次塗装し、得られる3層の複層塗膜を同時に加熱硬化する3コート1ベーク方式において、水性中塗り塗料として、基体樹脂(A)、特定の硬化剤(B)及び特定の構造を有するジエステル化合物(C)を含有する塗料を用いる場合に、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は以下の複層塗膜形成方法、該複層塗膜形成方法に用いる水性中塗り塗料及び該複層塗膜形成方法によって複層塗膜が形成された物品を提供するものである。
1.下記の工程(1)〜(4);
工程(1):被塗物上に、水性中塗り塗料(X)を塗装して中塗り塗膜を形成する工程、
工程(2):工程(1)で形成される未硬化の中塗り塗膜上に、水性ベース塗料(Y)を塗装してベース塗膜を形成する工程、
工程(3):工程(2)で形成される未硬化のベース塗膜上に、クリヤー塗料(Z)を塗装してクリヤー塗膜を形成する工程、及び
工程(4):工程(1)〜(3)で形成される未硬化の中塗り塗膜、未硬化のベース塗膜及び未硬化のクリヤー塗膜を同時に加熱硬化させる工程、
を順次行う複層塗膜形成方法であって、
水性中塗り塗料(X)が、基体樹脂(A)、硬化剤(B)ならびに、下記一般式(1):
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、R及びRは、独立して炭素数4〜18の炭化水素基を表し、Rは炭素数2〜4のアルキレン基を表し、mは3〜25の整数を表す。m個のオキシアルキレン単位(R−O)は、互いに同じであっても異なっていてもよい。)
で表されるジエステル化合物(C)を含有し、
前記硬化剤(B)が、ポリイソシアネート化合物(B1)及び/又はポリカルボジイミド化合物(B2)である、
複層塗膜形成方法。
2.基体樹脂(A)が水酸基含有樹脂(A1)であり、硬化剤(B)がポリイソシアネート化合物(B1)である上記項1に記載の複層塗膜形成方法。
3.水酸基含有樹脂(A1)が、水酸基含有ポリエステル樹脂(A1−1)及び/又は水酸基含有アクリル樹脂(A1−2)である上記項2に記載の複層塗膜形成方法。
4.水酸基含有ポリエステル樹脂(A1−1)が、分子中に炭素数4以上の直鎖アルキレン基を0.3〜2.5mol/kg(樹脂固形分)含有するポリエステル樹脂である上記項3に記載の複層塗膜形成方法。
5.水酸基含有ポリエステル樹脂(A1−1)が、分子中にベンゼン環及び/又はシクロヘキサン環を含有し、且つそれらの合計含有量が1.5〜4.0mol/kg(樹脂固形分)の範囲内にあるポリエステル樹脂である上記項3に記載の複層塗膜形成方法。
6.ポリイソシアネート化合物(B1)が、水分散性ポリイソシアネート化合物である上記項2に記載の複層塗膜形成方法。
7.水酸基含有樹脂(A1)、ポリイソシアネート化合物(B1)及びジエステル化合物(C)の配合割合が、水酸基含有樹脂(A1)及びポリイソシアネート化合物(B1)の合計固形分100質量部を基準として、水酸基含有樹脂(A1)が30〜95質量部、ポリイソシアネート化合物(B1)が5〜70質量部、ジエステル化合物(C)が1〜30質量部である上記項2に記載の複層塗膜形成方法。
8.基体樹脂(A)がカルボキシル基含有樹脂(A2)であり、硬化剤(B)がポリカルボジイミド化合物(B2)である上記項1に記載の複層塗膜形成方法。
9.カルボキシル基含有樹脂(A2)が、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(A2−1)及び/又はカルボキシル基含有アクリル樹脂(A2−2)である上記項8に記載の複層塗膜形成方法。
10.カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(A2−1)が、分子中に炭素数4以上の直鎖アルキレン基を0.3〜2.5mol/kg(樹脂固形分)含有するポリエステル樹脂である上記項9に記載の複層塗膜形成方法。
11.カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(A2−1)が、分子中にベンゼン環及び/又はシクロヘキサン環を含有し、且つそれらの合計含有量が1.5〜4.0mol/kg(樹脂固形分)の範囲内にあるポリエステル樹脂である上記項9に記載の複層塗膜形成方法。
12.カルボキシル基含有樹脂(A2)、ポリカルボジイミド化合物(B2)及びジエステル化合物(C)の配合割合が、カルボキシル基含有樹脂(A2)及びポリカルボジイミド化合物(B2)の合計固形分100質量部を基準として、カルボキシル基含有樹脂(A2)が30〜95質量部、ポリカルボジイミド化合物(B2)が5〜70質量部、ジエステル化合物(C)が1〜30質量部である上記項8に記載の複層塗膜形成方法。
13.基体樹脂(A)がカルボキシル基及び水酸基含有樹脂(A3)、硬化剤(B)がポリカルボジイミド化合物(B2)であり、さらにアミノ樹脂(B3)を含有する水性中塗り塗料(X)である上記項1に記載の複層塗膜形成方法。
14.アミノ樹脂(B3)がメラミン樹脂(B3−1)であり、該メラミン樹脂(B3−1)がメトキシ基とブトキシ基とのモル比がメトキシ基/ブトキシ基=90/10〜50/50の範囲内であるメチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂である上記項13に記載の複層塗膜形成方法。
15.水性中塗り塗料(X)が、さらに着色顔料(D1)及び/又は体質顔料(D2)を含有し、かつ、該着色顔料(D1)及び体質顔料(D2)の合計含有量が、基体樹脂(A)及び硬化剤(B)の合計固形分100質量部を基準として、40〜180質量部の範囲内である上記項1に記載の複層塗膜形成方法。
16.水性ベース塗料(Y)が光輝性顔料(D3)を含有する塗料である上記項1に記載の複層塗膜形成方法。
17.被塗物が、電着塗料によって下塗り塗膜が形成された車体である上記項1に記載の複層塗膜形成方法。
18.上記項1に記載の方法により複層塗膜が形成された物品。
19.基体樹脂(A)、硬化剤(B)ならびに、下記一般式(1):
【0013】
【化1】

【0014】
(式中、R及びRは、独立して炭素数4〜18の炭化水素基を表し、Rは炭素数2〜4のアルキレン基を表し、mは3〜25の整数を表す。m個のオキシアルキレン単位(R−O)は、互いに同じであっても異なっていてもよい。)
で表されるジエステル化合物(C)を含有し、
前記硬化剤(B)が、ポリイソシアネート化合物(B1)及び/又はポリカルボジイミド化合物(B2)である、
複層塗膜形成用の水性中塗り塗料。
【発明の効果】
【0015】
本発明の塗膜形成方法に従えば、被塗物上に、水性中塗り塗料、水性ベース塗料及びクリヤー塗料を順次塗装し、得られる3層の複層塗膜を同時に加熱硬化する3コート1ベーク方式において、平滑性及び鮮映性に優れた複層塗膜を形成することができる。また、上記水性ベース塗料が光輝性顔料を含有する場合に、フリップフロップ性が高く、メタリックムラが少ない優れた外観を有する複層塗膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の複層塗膜形成方法について、さらに詳細に説明する。
【0017】
1. 工程(1)
本発明の複層塗膜形成方法の工程(1)においては、被塗物上に、基体樹脂(A)、硬化剤(B)ならびに下記一般式(1):
【0018】
【化1】

【0019】
(式中、R及びRは、独立して炭素数4〜18の炭化水素基を表し、Rは炭素数2〜4のアルキレン基を表し、mは3〜25の整数を表す。m個のオキシアルキレン単位(R−O)は、互いに同じであっても異なっていてもよい。)
で表されるジエステル化合物(C)を含有し、
前記硬化剤(B)が、ポリイソシアネート化合物(B1)及び/又はポリカルボジイミド化合物(B2)である、水性中塗り塗料(X)が塗装される。
【0020】
1.1 被塗物
水性中塗り塗料(X)を適用する被塗物は、特に限定されない。該被塗物としては、例えば、乗用車、トラック、オートバイ、バス等の自動車車体の外板部;バンパー等の自動車部品;携帯電話、オーディオ機器等の家庭電気製品の外板部等を挙げることができる。これらのうち、自動車車体の外板部及び自動車部品が好ましい。
【0021】
これらの被塗物の材質としては、特に限定されるものではない。例えば、鉄、アルミニウム、真鍮、銅、ブリキ、ステンレス鋼、亜鉛メッキ鋼、亜鉛合金(Zn−Al、Zn−Ni、Zn−Fe等)メッキ鋼等の金属材料;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂類、これらの樹脂の混合物、各種の繊維強化プラスチック(FRP)等のプラスチック材料;ガラス、セメント、コンクリート等の無機材料;木材;紙、布等の繊維材料等を挙げることができる。これらの中でも、金属材料及びプラスチック材料が好ましい。
【0022】
上記被塗物は、上記金属材料やそれから成形された車体等の金属表面に、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理などの表面処理が施されたものであってもよく、さらに、その上に塗膜が形成されているものであってもよい。
【0023】
塗膜形成を施した被塗物としては、基材に必要に応じて表面処理を施し、その上に下塗り塗膜を形成したものなどを挙げることができる。なかでも、電着塗料によって下塗り塗膜が形成された車体が好ましく、カチオン電着塗料によって下塗り塗膜が形成された車体が特に好ましい。
【0024】
また、上記被塗物は、前記プラスチック材料やそれから成形された自動車部品等のプラスチック表面に、必要に応じて、表面処理、プライマー塗装等を行ったものであってもよい。また、該プラスチック材料と上記金属材料とが組み合わさったものであってもよい。
【0025】
1.2 基体樹脂(A)
本発明で用いる基体樹脂(A)としては、特に限定されないが、水酸基含有樹脂(A1)、カルボキシル基含有樹脂(A2)、カルボキシル基及び水酸基含有樹脂(A3)等を挙げることができる。以下、それぞれの樹脂について説明をする。
【0026】
1.2.1 水酸基含有樹脂(A1)
水酸基含有樹脂(A1)は、1分子中に少なくとも1個の水酸基を有する樹脂である。得られる塗膜の耐水性等の観点から、水酸基含有樹脂(A1)の水酸基価は、5〜300mgKOH/g程度が好ましく、15〜200mgKOH/g程度がより好ましく、30〜180mgKOH/g程度がさらに好ましい。
【0027】
また、水酸基含有樹脂(A1)は、酸基を分子内に有していてもよい。該酸基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、燐酸基等を挙げることができ、これらの中でも、カルボキシル基が好ましい。水酸基含有樹脂(A1)がカルボキシル基を有する場合、後述するカルボキシル基及び水酸基含有樹脂(A3)となる。該酸基を塩基性化合物で中和することにより、水酸基含有樹脂(A1)を水溶化又は水分散化することができる。
【0028】
上記塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物;アンモニア;エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ベンジルアミン、モノエタノールアミン、ネオペンタノールアミン、2−アミノプロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、3−アミノプロパノール等の第1級モノアミン;ジエチルアミン、ジエタノールアミン、ジ−n−プロパノールアミン、ジ−iso−プロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン等の第2級モノアミン;ジメチルエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、メチルジエタノールアミン、2−(ジメチルアミノ)エタノール等の第3級モノアミン;ジエチレントリアミン、ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、エチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロピルアミン等のポリアミンを挙げることができる。
【0029】
塩基性化合物の使用量は、得られる塗膜の耐水性の観点から、水酸基含有樹脂(A1)の酸基に対して0.1〜1.5当量程度が好ましく、0.2〜1.2当量程度がより好ましい。
【0030】
水酸基含有樹脂(A1)が酸基を有する場合、該水酸基含有樹脂(A1)の酸価は、中塗り塗料(X)の貯蔵安定性、得られる塗膜の耐水性等の観点から、3〜100mgKOH/g程度が好ましく、5〜80mgKOH/g程度がより好ましく、10〜70mgKOH/g程度がさらに好ましい。また、酸価が10mgKOH/g以下の水酸基含有樹脂(A1)を使用する場合には、上記塩基性化合物を用いて中和することに代えて、該水酸基含有樹脂(A1)と乳化剤とを混合し、機械的なせん断力を加えて攪拌して該水酸基含有樹脂(A1)を水中に強制的に分散させることもできる。
【0031】
水酸基含有樹脂(A1)としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂等が挙げられる。これらは単独で、もしくは2種以上組み合わせて使用することができる。これらの中でも、水酸基含有樹脂(A1)が水酸基含有ポリエステル樹脂(A1−1)及び/又は水酸基含有アクリル樹脂(A1−2)であることが好ましく、水酸基含有ポリエステル樹脂(A1−1)であることがさらに好ましい。
【0032】
また、水酸基含有樹脂(A1)としては、上記水酸基含有ポリエステル樹脂(A1−1)及び水酸基含有アクリル樹脂(A1−2)中の一部の水酸基とポリイソシアネート化合物とをウレタン反応させることにより、これらの樹脂を伸長させ高分子量化した、いわゆるウレタン変性ポリエステル樹脂又はウレタン変性アクリル樹脂を使用してもよい。
【0033】
1)水酸基含有ポリエステル樹脂(A1−1)
水酸基含有ポリエステル樹脂(A1−1)は、通常、酸成分(a1−1)とアルコ−ル成分(a1−2)とのエステル化反応又はエステル交換反応によって製造することができる。
【0034】
上記酸成分(a1−1)としては、ポリエステル樹脂の製造に際して酸成分として通常使用される化合物を使用することができる。該酸成分(a1−1)としては、例えば、脂肪族多塩基酸(a1−1−1)、脂環族多塩基酸(a1−1−2)、芳香族多塩基酸(a1−1−3)等を使用することができる。
【0035】
上記脂肪族多塩基酸(a1−1−1)は、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する脂肪族化合物、該脂肪族化合物の酸無水物及び該脂肪族化合物のエステル化物である。該脂肪族多塩基酸(a1−1−1)としては、例えば、ブタン二酸(コハク酸)、ペンタン二酸(グルタル酸)、ヘキサン二酸(アジピン酸)、ヘプタン二酸(ピメリン酸)、オクタン二酸(スベリン酸)、ノナン二酸(アゼライン酸)、デカン二酸(セバシン酸)、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸(ブラシル酸)、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸等の脂肪族多価カルボン酸;これら脂肪族多価カルボン酸の無水物;これら脂肪族多価カルボン酸の低級アルキルエステル化物等が挙げられる。上記脂肪族多塩基酸(a1−1−1)は単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0036】
上記脂肪族多塩基酸(a1−1−1)としては、得られる塗膜の平滑性、鮮映性、耐水性、耐チッピング性等の観点から、炭素数4以上、好ましくは4〜18、さらに好ましくは6〜12の直鎖アルキレン基を有する脂肪族ジカルボン酸を好適に使用することができる。該炭素数4以上の直鎖アルキレン基を有する脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、ヘキサン二酸(アジピン酸)、ヘプタン二酸(ピメリン酸)、オクタン二酸(スベリン酸)、ノナン二酸(アゼライン酸)、デカン二酸(セバシン酸)、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸(ブラシル酸)、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸;これら脂肪族ジカルボン酸の無水物;これら脂肪族ジカルボン酸の低級アルキルエステル化物等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上組合せて使用することができる。
【0037】
前記脂環族多塩基酸(a1−1−2)は、一般に、1分子中に1個以上の脂環式構造(主として4〜6員環)と2個以上のカルボキシル基を有する化合物、該化合物の酸無水物及び該化合物のエステル化物である。該脂環族多塩基酸(a1−1−2)としては、例えば、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、3−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸;これら脂環族多価カルボン酸の無水物;これら脂環族多価カルボン酸の低級アルキルエステル化物等が挙げられる。上記脂環族多塩基酸(a1−1−2)は単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0038】
前記芳香族多塩基酸(a1−1−3)は、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物、該芳香族化合物の酸無水物及び該芳香族化合物のエステル化物である。該芳香族多塩基酸(a1−1−3)としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族多価カルボン酸;これら芳香族多価カルボン酸の無水物;これら芳香族多価カルボン酸の低級アルキルエステル化物等が挙げられる。上記芳香族多塩基酸(a1−1−3)は単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0039】
上記芳香族多塩基酸(a1−1−3)としては、特に、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、又は無水トリメリット酸を用いることが好ましい。
【0040】
前記脂肪族多塩基酸(a1−1−1)、脂環族多塩基酸(a1−1−2)及び芳香族多塩基酸(a1−1−3)以外の酸成分(a1−1)としては、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等の脂肪酸;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、10−フェニルオクタデカン酸等のモノカルボン酸;乳酸、クエン酸、3−ヒドロキシブタン酸、3−ヒドロキシ−4−エトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸等が挙げられる。上記酸成分(a1−1)は単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0041】
前記アルコール成分(a1−2)としては、1分子中に2個以上の水酸基を有する多価アルコールを好適に使用することができる。上記多価アルコールとしては、例えば、脂肪族ジオール(a1−2−1)、脂環族ジオール(a1−2−2)、芳香族ジオール(a1−2−3)等を使用することができる。
【0042】
上記脂肪族ジオール(a1−2−1)は、一般に、1分子中に2個の水酸基を有する脂肪族化合物である。該脂肪族ジオール(a1−2−1)としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、3−メチル−1,2−ブタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3−メチル−4,3−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0043】
上記脂肪族ジオール(a1−2−1)としては、得られる塗膜の平滑性、鮮映性、耐チッピング性等の観点から、炭素数4以上、好ましくは4〜12、さらに好ましくは6〜10の直鎖アルキレン基を有する脂肪族ジオールを好適に使用することができる。該炭素数4以上の直鎖アルキレン基を有する脂肪族ジオールとしては、例えば、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上組合せて使用することができる。
【0044】
前記脂環族ジオール(a1−2−2)は、一般に、1分子中に1個以上の脂環式構造(主として4〜6員環)と2個の水酸基を有する化合物である。該脂環族ジオール(a1−2−2)としては、例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF等の2価アルコール;これらの2価アルコールにε−カプロラクトン等のラクトン類を付加したポリラクトンジオール等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0045】
上記芳香族ジオール(a1−2−3)は、一般に、1分子中に2個の水酸基を有する芳香族化合物である。該芳香族ジオール(a1−2−3)としては、例えば、ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート等のエステルジオール類;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0046】
前記脂肪族ジオール(a1−2−1)、脂環族ジオール(a1−2−2)及び芳香族ジオール(a1−2−3)以外の多価アルコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテルジオール類;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ソルビトール、マンニット等の3価以上のアルコール;これらの3価以上のアルコールにε−カプロラクトン等のラクトン類を付加させたポリラクトンポリオール類等が挙げられる。
【0047】
また、上記多価アルコール以外のアルコール成分(a1−2)としては、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ステアリルアルコール、2−フェノキシエタノール等のモノアルコール;プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル(商品名「カージュラE10」、HEXION Specialty Chemicals社製)等のモノエポキシ化合物と酸とを反応させて得られたアルコール化合物等が挙げられる。
【0048】
水酸基含有ポリエステル樹脂(A1−1)は、得られる塗膜の平滑性、鮮映性、耐水性、耐チッピング性等の観点から、分子中に炭素数4以上の直鎖アルキレン基を0.3〜2.5mol/kg(樹脂固形分)、好ましくは0.6〜2.0mol/kg(樹脂固形分)含有するポリエステル樹脂であることが好適である。
【0049】
上記分子中に炭素数4以上の直鎖アルキレン基を含有する水酸基含有ポリエステル樹脂は、例えば、酸成分(a1−1)として、前記炭素数4以上の直鎖アルキレン基を有する脂肪族ジカルボン酸を使用したり、アルコール成分(a1−2)として、前記炭素数4以上の直鎖アルキレン基を有する脂肪族ジオールを使用したりすることによって、製造することができる。
【0050】
なお、本発明において、「炭素数4以上の直鎖アルキレン基の含有量」は、ポリエステル樹脂1kg(固形分)当たりに含まれる炭素数4以上の直鎖アルキレン基のモル数である。これは、ポリエステル樹脂合成に用いるモノマー中に含まれる、炭素数4以上の直鎖アルキレン基を有するモノマーの合計モル数(Wm)を、縮合水を除いた生成樹脂質量(Wr:単位kg)で除すること(すなわち、Wm/Wr)により算出することができる。
【0051】
上記「炭素数4以上の直鎖アルキレン基の含有量」は、例えば、前記酸成分(a1−1)及びアルコール成分(a1−2)中の、前記炭素数4以上の直鎖アルキレン基を有する脂肪族ジカルボン酸及び炭素数4以上の直鎖アルキレン基を有する脂肪族ジオールの配合割合を調節することによって、調整することができる。
【0052】
また、水酸基含有ポリエステル樹脂(A1−1)は、得られる塗膜の平滑性、鮮映性、耐水性、耐チッピング性等の観点から、分子中にベンゼン環及び/又はシクロヘキサン環を含有し、且つそれらの合計含有量が1.5〜4.0mol/kg(樹脂固形分)、好ましくは2.0〜3.5mol/kg(樹脂固形分)の範囲内にあるポリエステル樹脂であることが好適である。
【0053】
上記分子中にベンゼン環及び/又はシクロヘキサン環を含有する水酸基含有ポリエステル樹脂は、例えば、前記酸成分(a1−1)又はアルコール成分(a1−2)として、上記脂環族多塩基酸(a1−1−2)、芳香族多塩基酸(a1−1−3)、脂環族ジオール(a1−2−2)、芳香族ジオール(a1−2−3)のうちの少なくとも1種を使用し、エステル化反応又はエステル交換反応を行うことによって製造することができる。
【0054】
なお、本発明において、「ベンゼン環とシクロヘキサン環の合計含有量」は、ポリエステル樹脂1kg(固形分)当たりに含まれるベンゼン環及びシクロヘキサン環の合計モル数である。これは、ポリエステル樹脂合成に用いるモノマー中に含まれる、ベンゼン環を有するモノマーとシクロヘキサン環を有するモノマーの合計モル数(Wn)を、縮合水を除いた生成樹脂質量(Wr:単位kg)で除すること(すなわち、Wn/Wr)により算出することができる。
【0055】
上記「ベンゼン環とシクロヘキサン環の合計含有量」は、例えば、前記酸成分(a1−1)及びアルコール成分(a1−2)中の、上記脂環族多塩基酸(a1−1−2)、芳香族多塩基酸(a1−1−3)、脂環族ジオール(a1−2−2)及び芳香族ジオール(a1−2−3)の配合割合を調節することによって、調整することができる。
【0056】
水酸基含有ポリエステル樹脂(A1−1)の製造は、特に限定されるものではなく、通常の方法に従って行なうことができる。例えば、前記酸成分(a1−1)とアルコール成分(a1−2)とを窒素気流中、150〜250℃で、5〜10時間反応させることにより、エステル化反応又はエステル交換反応を行なう方法が挙げられる。
【0057】
前記エステル化反応又はエステル交換反応では、上記酸成分(a1−1)及びアルコール成分(a1−2)を一度に添加してもよいし、数回に分けて添加してもよい。また、はじめにカルボキシル基含有ポリエステル樹脂を合成した後、上記アルコール成分(a1−2)を用いて、該カルボキシル基含有ポリエステル樹脂をエステル化してもよい。さらに、はじめに水酸基含有ポリエステル樹脂(A1−1)を合成した後、酸無水物を反応させて、水酸基含有ポリエステル樹脂をハーフエステル化させてもよい。
【0058】
前記エステル化又はエステル交換反応の際には、反応を促進させるために、触媒を用いてもよい。前記触媒としては、ジブチル錫オキサイド、三酸化アンチモン、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸コバルト、酢酸カルシウム、酢酸鉛、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等の既知の触媒を使用することができる。
【0059】
また、前記水酸基含有ポリエステル樹脂(A1−1)は、該樹脂の調製中、もしくはエステル化反応後又はエステル交換反応後に、脂肪酸、モノエポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物等で変性することができる。
【0060】
上記脂肪酸としては、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等が挙げられる。
【0061】
上記モノエポキシ化合物としては、例えば、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル(商品名「カージュラE10」、HEXION Specialty Chemicals社製)を好適に用いることができる。
【0062】
上記ポリイソシアネート化合物としては、例えば、リジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類;水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,6−ジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート類;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類;リジントリイソシアネート等の3価以上のポリイソシアネート等の有機ポリイソシアネートそれ自体、又はこれらの各有機ポリイソシアネートと多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂もしくは水等との付加物、あるいは上記した各有機ジイソシアネート同士の環化重合体(例えば、イソシアヌレート)、ビウレット型付加物等が挙げられる。これらは、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0063】
水酸基含有ポリエステル樹脂(A1−1)の水酸基価は、10〜300mgKOH/g程度が好ましく、50〜200mgKOH/g程度がより好ましく、80〜180mgKOH/g程度がさらに好ましい。また、水酸基含有ポリエステル樹脂(A1−1)の酸価は、3〜100mgKOH/g程度が好ましく、5〜80mgKOH/g程度がより好ましく、10〜70mgKOH/g程度がさらに好ましい。
【0064】
また、水酸基含有ポリエステル樹脂(A1−1)の重量平均分子量は、500〜50,000程度が好ましく、1,000〜30,000程度がより好ましく、1,500〜20,000程度がさらに好ましい。
【0065】
また、水酸基含有ポリエステル樹脂(A1−1)の数平均分子量は、500〜5,000程度が好ましく、750〜4,000程度がより好ましく、1,000〜3,000程度がさらに好ましい。
【0066】
なお、本明細書において、数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した数平均分子量及び重量平均分子量を、標準ポリスチレンの分子量を基準にして換算した値である。
【0067】
水性中塗り塗料(X)が、前記水酸基含有樹脂(A1)として上記水酸基含有ポリエステル樹脂(A1−1)を含有する場合、該水酸基含有ポリエステル樹脂(A1−1)の固形分含有量は、水酸基含有樹脂(A1)及びポリイソシアネート化合物(B1)の合計固形分量に基づいて、5〜95質量%程度であることが好ましく、20〜90質量%程度であることがより好ましく、30〜85質量%程度であることがさらに好ましい。
【0068】
2)水酸基含有アクリル樹脂(A1−2)
水酸基含有アクリル樹脂(A1−2)は、通常、水酸基含有重合性不飽和モノマー(a1−3)及び該水酸基含有重合性不飽和モノマー(a1−3)と共重合可能な他の重合性不飽和モノマー(a1−4)を、例えば、有機溶媒中での溶液重合法、水中でのエマルション重合法等の既知の方法によって共重合させることにより製造できる。
【0069】
上記水酸基含有重合性不飽和モノマー(a1−3)は、1分子中に水酸基及び重合性不飽和結合をそれぞれ1個以上有する化合物である。該水酸基含有重合性不飽和モノマー(a1−3)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物;これらのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド;アリルアルコール;分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0070】
また、前記水酸基含有重合性不飽和モノマー(a1−3)と共重合可能な他の重合性不飽和モノマー(a1−4)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、「イソステアリルアクリレート」(商品名、大阪有機化学工業(株)製)、シクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、シクロドデシル(メタ)アクリレ−ト等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート等のイソボルニル基を有する重合性不飽和モノマー;アダマンチル(メタ)アクリレート等のアダマンチル基を有する重合性不飽和モノマー;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のビニル芳香族化合物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー;パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等のフッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー;マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー;N−ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等のビニル化合物;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレートのアミン類付加物等の含窒素重合性不飽和モノマー;アリル(メタ)アクリレ−ト、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレ−ト等の重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホエチルメタクリレート等のスルホン酸基を有する重合性不飽和モノマー;これらスルホン酸基を有する重合性不飽和モノマーのナトリウム塩やアンモニウム塩;2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート等のリン酸基を有する重合性不飽和モノマー;2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2' −ジヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2' −ジヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−(2' −ヒドロキシ−5' −メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等の紫外線吸収性官能基を有する重合性不飽和モノマー;4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等の紫外線安定性重合性不飽和モノマー;アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、4〜7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)等のカルボニル基を有する重合性不飽和モノマー;3級アミノ基、4級アンモニウム塩基等のカチオン性官能基を有する重合性不飽和モノマー等が挙げられる。これら重合性不飽和モノマー(a1−4)については単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0071】
また、上記水酸基含有アクリル樹脂(A1−2)は、カチオン性官能基を有することができる。カチオン性官能基を有する水酸基含有アクリル樹脂については、例えば、上記重合性不飽和モノマー(a1−4)の一種として、3級アミノ基、4級アンモニウム塩基等のカチオン性官能基を有する重合性不飽和モノマーを用いることにより製造できる。
【0072】
上記3級アミノ基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジtert−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート等のN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。これらの中でも、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びN,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートの少なくとも一種を用いることが好適である。
【0073】
また、前記4級アンモニウム塩基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムブロマイド、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムジメチルホスフェート等の(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウム塩;メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムブロマイド等の(メタ)アクリロイルアミノアルキルトリアルキルアンモニウム塩等が挙げられる。なかでも、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライドを用いることが好適である。
【0074】
上記水酸基含有アクリル樹脂(A1−2)の水酸基価は、貯蔵安定性や得られる塗膜の耐水性等の観点から、5〜300mgKOH/g程度が好ましく、15〜200mgKOH/g程度がより好ましく、30〜180mgKOH/g程度がさらに好ましい。
【0075】
また、水酸基含有アクリル樹脂(A1−2)がカルボキシル基等の酸基を有する場合、該水酸基含有アクリル樹脂(A1−2)の酸価は、得られる塗膜の耐水性等の観点から、3〜100mgKOH/g程度が好ましく、5〜80mgKOH/g程度がより好ましく、10〜70mgKOH/g程度がさらに好ましい。
【0076】
また、上記水酸基含有アクリル樹脂(A1−2)の重量平均分子量は、2,000〜5,000,000程度が好ましく、3,000〜2,000,000程度がより好ましい。
【0077】
水性中塗り塗料(X)が、前記水酸基含有樹脂(A1)として上記水酸基含有アクリル樹脂(A1−2)を含有する場合、該水酸基含有アクリル樹脂(A1−2)の固形分含有量は、水酸基含有樹脂(A1)及びポリイソシアネート化合物(B1)の合計固形分量に基づいて、5〜95質量%程度であることが好ましく、10〜70質量%程度であることがより好ましく、20〜50質量%程度であることがさらに好ましい。
【0078】
1.2.2 カルボキシル基含有樹脂(A2)
カルボキシル基含有樹脂(A2)は、1分子中に少なくとも1個のカルボキシル基を有する樹脂である。得られる塗膜の耐水性等の観点から、カルボキシル基含有樹脂(A2)の酸価は、10〜100mgKOH/g程度が好ましく、15〜90mgKOH/g程度がより好ましく、15〜80mgKOH/g程度がさらに好ましい。
【0079】
カルボキシル基含有樹脂(A2)は、上記カルボキシル基を塩基性化合物で中和することにより、水溶化又は水分散化することができる。該塩基性化合物としては、例えば、水酸基含有樹脂(A1)の欄に記載したものを挙げることができる。
【0080】
上記塩基性化合物の使用量は、得られる塗膜の耐水性等の観点から、カルボキシル基含有樹脂(A2)の酸基に対して0.1〜1.5当量程度が好ましく、0.2〜1.2当量程度がより好ましい。
【0081】
また、カルボキシル基含有樹脂(A2)は、得られる塗膜の耐水性、耐チッピング性等の観点から、水酸基を分子内に有することが好ましい。カルボキシル基含有樹脂(A2)が水酸基を有する場合、カルボキシル基及び水酸基含有樹脂(A3)である。
【0082】
カルボキシル基含有樹脂(A2)が水酸基を有する場合、該カルボキシル基含有樹脂(A2)の水酸基価は、得られる塗膜の耐水性、耐チッピング性等の観点から、5〜200mgKOH/g程度が好ましく、15〜180mgKOH/g程度がより好ましく、20〜160mgKOH/g程度がさらに好ましい。
【0083】
カルボキシル基含有樹脂(A2)としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂等が挙げられる。これらは単独で、もしくは2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、カルボキシル基含有樹脂(A2)がカルボキシル基含有ポリエステル樹脂(A2−1)及び/又はカルボキシル基含有アクリル樹脂(A2−2)であることが好ましく、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(A2−1)であることがさらに好ましい。
【0084】
1)カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(A2−1)
カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(A2−1)は、通常、酸成分(a1−1)とアルコ−ル成分(a1−2)とのエステル化反応又はエステル交換反応によって製造することができる。
【0085】
上記酸成分(a1−1)としては、ポリエステル樹脂の製造に際して酸成分として通常使用される化合物を使用することができる。該酸成分(a1−1)としては、例えば、脂肪族多塩基酸(a1−1−1)、脂環族多塩基酸(a1−1−2)、芳香族多塩基酸(a1−1−3)等を使用することができる。脂肪族多塩基酸(a1−1−1)、脂環族多塩基酸(a1−1−2)及び芳香族多塩基酸(a1−1−3)としては、水酸基含有樹脂(A1)の欄に記載したものを挙げることができる。また、それらの中でも、脂肪族多塩基酸(a1−1−1)としては、得られる塗膜の平滑性、鮮映性、耐水性、耐チッピング性等の観点から、炭素数4以上、好ましくは4〜18、さらに好ましくは6〜12の直鎖アルキレン基を有する脂肪族ジカルボン酸を好適に使用することができる。
【0086】
また、上記芳香族多塩基酸(a1−1−3)としては、特に、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、又は無水トリメリット酸を用いることが好ましい。
【0087】
前記脂肪族多塩基酸(a1−1−1)、脂環族多塩基酸(a1−1−2)及び芳香族多塩基酸(a1−1−3)以外の酸成分(a1−1)としては、水酸基含有樹脂(A1)の欄に記載したものを挙げることができる。
【0088】
前記アルコール成分(a1−2)としては、1分子中に2個以上の水酸基を有する多価アルコールを好適に使用することができる。上記多価アルコールとしては、例えば、脂肪族ジオール(a1−2−1)、脂環族ジオール(a1−2−2)、芳香族ジオール(a1−2−3)等を使用することができる。脂肪族ジオール(a1−2−1)、脂環族ジオール(a1−2−2)、芳香族ジオール(a1−2−3)としては、水酸基含有樹脂(A1)の欄に記載したものを挙げることができる。
【0089】
上記脂肪族ジオール(a1−2−1)としては、得られる塗膜の平滑性、鮮映性、耐チッピング性等の観点から、炭素数4以上、好ましくは4〜12、さらに好ましくは6〜10の直鎖アルキレン基を有する脂肪族ジオールを好適に使用することができる。
【0090】
前記脂肪族ジオール(a1−2−1)、脂環族ジオール(a1−2−2)及び芳香族ジオール(a1−2−3)以外の多価アルコールとしては、水酸基含有樹脂(A1)の欄に記載したものを挙げることができる。
【0091】
また、上記多価アルコール以外のアルコール成分(a1−2)としては、水酸基含有樹脂(A1)の欄に記載したものを挙げることができる。
【0092】
カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(A2−1)は、得られる塗膜の平滑性、鮮映性、耐水性、耐チッピング性等の観点から、分子中に炭素数4以上の直鎖アルキレン基を0.3〜2.5mol/kg(樹脂固形分)、好ましくは0.6〜2.0mol/kg(樹脂固形分)含有するポリエステル樹脂であることが好適である。
【0093】
上記分子中に炭素数4以上の直鎖アルキレン基を含有するカルボキシル基含有ポリエステル樹脂は、例えば、酸成分(a1−1)として、前記炭素数4以上の直鎖アルキレン基を有する脂肪族ジカルボン酸を使用したり、アルコール成分(a1−2)として、前記炭素数4以上の直鎖アルキレン基を有する脂肪族ジオールを使用したりすることによって、製造することができる。
【0094】
なお、本発明において、「炭素数4以上の直鎖アルキレン基の含有量」は、ポリエステル樹脂1kg(固形分)当たりに含まれる炭素数4以上の直鎖アルキレン基のモル数である。これは、ポリエステル樹脂合成に用いるモノマー中に含まれる炭素数4以上の直鎖アルキレン基を有するモノマーの合計モル数(Wm)を、縮合水を除いた生成樹脂質量(Wr:単位kg)で除すること(すなわち、Wm/Wr)により算出することができる。
【0095】
上記「炭素数4以上の直鎖アルキレン基の含有量」は、例えば、前記酸成分(a1−1)及びアルコール成分(a1−2)中の、前記炭素数4以上の直鎖アルキレン基を有する脂肪族ジカルボン酸及び炭素数4以上の直鎖アルキレン基を有する脂肪族ジオールの配合割合を調節することによって、調整することができる。
【0096】
また、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(A2−1)は、得られる塗膜の平滑性、鮮映性、耐水性、耐チッピング性等の観点から、分子中にベンゼン環及び/又はシクロヘキサン環を含有し、且つそれらの合計含有量が1.5〜4.0、好ましくは2.0〜3.5mol/kg(樹脂固形分)の範囲内にあるポリエステル樹脂であることが好適である。
【0097】
上記分子中にベンゼン環及び/又はシクロヘキサン環を含有するカルボキシル基含有ポリエステル樹脂は、例えば、前記酸成分(a1−1)又はアルコール成分(a1−2)として、上記脂環族多塩基酸(a1−1−2)、芳香族多塩基酸(a1−1−3)、脂環族ジオール(a1−2−2)、芳香族ジオール(a1−2−3)のうちの少なくとも1種を使用し、エステル化反応又はエステル交換反応を行うことによって製造することができる。
【0098】
なお、本発明において、「ベンゼン環とシクロヘキサン環の合計含有量」は、ポリエステル樹脂1kg(固形分)当たりに含まれるベンゼン環及びシクロヘキサン環の合計モル数である。これは、ポリエステル樹脂合成に用いるモノマー中に含まれる、ベンゼン環とシクロヘキサン環を有するモノマーの合計モル数(Wn)を、縮合水を除いた生成樹脂質量(Wr:単位kg)で除すること(すなわち、Wn/Wr)により算出することができる。
【0099】
上記「ベンゼン環とシクロヘキサン環の合計含有量」は、例えば、前記酸成分(a1−1)及びアルコール成分(a1−2)中の、上記脂環族多塩基酸(a1−1−2)、芳香族多塩基酸(a1−1−3)、脂環族ジオール(a1−2−2)及び芳香族ジオール(a1−2−3)の配合割合を調節することによって、調整することができる。
【0100】
カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(A2−1)の製造は、特に限定されるものではなく、通常の方法に従って行なうことができる。例えば、前記酸成分(a1−1)とアルコール成分(a1−2)とを窒素気流中、150〜250℃で、5〜10時間反応させることにより、エステル化反応又はエステル交換反応を行なう方法が挙げられる。
【0101】
前記エステル化反応又はエステル交換反応では、上記酸成分(a1−1)及びアルコール成分(a1−2)を一度に添加してもよいし、数回に分けて添加してもよい。また、はじめにカルボキシル基含有ポリエステル樹脂(A2−1)を合成した後、上記アルコール成分(a1−2)を用いて、該カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(A2−1)中のカルボキシル基の一部をエステル化してもよい。さらに、はじめに水酸基含有ポリエステル樹脂を合成した後、酸無水物を反応させて、水酸基含有ポリエステル樹脂をハーフエステル化させてもよい。
【0102】
前記エステル化又はエステル交換反応の際には、反応を促進させるために、触媒を用いてもよい。前記触媒としては、ジブチル錫オキサイド、三酸化アンチモン、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸コバルト、酢酸カルシウム、酢酸鉛、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等の既知の触媒を使用することができる。
【0103】
また、前記カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(A2−1)は、該樹脂の調製中、もしくはエステル化反応後又はエステル交換反応後に、脂肪酸、モノエポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物等で変性することができる。
【0104】
上記脂肪酸、モノエポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物としては、例えば、水酸基含有樹脂(A1)の欄に記載したものを挙げることができる。
【0105】
カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(A2−1)の酸価は、10〜100mgKOH/g程度が好ましく、15〜90mgKOH/g程度がより好ましく、15〜80mgKOH/g程度がさらに好ましい。
【0106】
また、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(A2−1)の重量平均分子量は、500〜50,000程度が好ましく、1,000〜30,000程度がより好ましく、1,500〜20,000程度がさらに好ましい。
【0107】
また、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(A2−1)の数平均分子量は、500〜5,000程度が好ましく、750〜4,000程度がより好ましく、1,000〜3,000程度がさらに好ましい。
【0108】
水性中塗り塗料(X)が、前記カルボキシル基含有樹脂(A2)として上記カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(A2−1)を含有する場合、該カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(A2−1)の固形分含有量は、カルボキシル基含有樹脂(A2)及びポリカルボジイミド化合物(B2)の合計固形分量に基づいて、5〜95質量%程度であることが好ましく、20〜90質量%程度であることがより好ましく、30〜85質量%程度であることがさらに好ましい。
【0109】
2)カルボキシル基含有アクリル樹脂(A2−2)
カルボキシル基含有アクリル樹脂(A2−2)は、通常、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(a2−1)及び該カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(a2−1)と共重合可能な他の重合性不飽和モノマー(a2−2)を、例えば、有機溶媒中での溶液重合法、水中でのエマルション重合法等の既知の方法によって共重合させることにより製造できる。
【0110】
上記カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(a2−1)は、1分子中にカルボキシル基及び重合性不飽和結合をそれぞれ1個以上有する化合物である。該カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(a2−1)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、該カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(a2−1)が、アクリル酸及び/又はメタクリル酸であることが好ましい。
【0111】
また、前記カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(a2−1)と共重合可能な他の重合性不飽和モノマー(a2−2)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、「イソステアリルアクリレート」(商品名、大阪有機化学工業社製)、シクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、シクロドデシル(メタ)アクリレ−ト等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物、これらのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、アリルアルコール、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等の水酸基含有重合性不飽和モノマー;イソボルニル(メタ)アクリレート等のイソボルニル基を有する重合性不飽和モノマー;アダマンチル(メタ)アクリレート等のアダマンチル基を有する重合性不飽和モノマー;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のビニル芳香族化合物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー;パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等のフッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー;マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー;N−ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等のビニル化合物;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレートのアミン類付加物等の含窒素重合性不飽和モノマー;アリル(メタ)アクリレ−ト、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレ−ト等の重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホエチルメタクリレート等のスルホン酸基を有する重合性不飽和モノマー;これらスルホン酸基を有する重合性不飽和モノマーのナトリウム塩やアンモニウム塩;2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート等のリン酸基を有する重合性不飽和モノマー;2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2' −ジヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2' −ジヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−(2' −ヒドロキシ−5' −メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等の紫外線吸収性官能基を有する重合性不飽和モノマー;4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等の紫外線安定性重合性不飽和モノマー;アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、4〜7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)等のカルボニル基を有する重合性不飽和モノマー;3級アミノ基、4級アンモニウム塩基等のカチオン性官能基を有する重合性不飽和モノマー等が挙げられる。これら重合性不飽和モノマー(a2−2)については単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0112】
また、上記カルボキシル基含有アクリル樹脂(A2−2)は、カチオン性官能基を有することができる。カチオン性官能基を有するカルボキシル基含有アクリル樹脂については、例えば、上記重合性不飽和モノマー(a2−2)の一種として、3級アミノ基、4級アンモニウム塩基等のカチオン性官能基を有する重合性不飽和モノマーを用いることにより製造できる。
【0113】
上記3級アミノ基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジtert−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート等のN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。なかでも、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びN,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートの少なくとも一種を用いることが好適である。
【0114】
また、前記4級アンモニウム塩基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムブロマイド、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムジメチルホスフェート等の(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウム塩;メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムブロマイド等の(メタ)アクリロイルアミノアルキルトリアルキルアンモニウム塩等が挙げられる。なかでも、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライドを用いることが好適である。
【0115】
上記カルボキシル基含有アクリル樹脂(A2−2)の酸価は、貯蔵安定性や得られる塗膜の耐水性等の観点から、10〜100mgKOH/g程度が好ましく、15〜90mgKOH/g程度がより好ましく、15〜80mgKOH/g程度がさらに好ましい。
【0116】
また、上記カルボキシル基含有アクリル樹脂(A2−2)の重量平均分子量は、2,000〜5,000,000程度が好ましく、3,000〜2,000,000程度がより好ましい。
【0117】
水性中塗り塗料(X)が、前記カルボキシル基含有樹脂(A2)として上記カルボキシル基含有アクリル樹脂(A2−2)を含有する場合、該カルボキシル基含有アクリル樹脂(A2−2)の固形分含有量は、カルボキシル基含有樹脂(A2)及びポリカルボジイミド化合物(B2)の合計固形分量に基づいて、5〜95質量%程度であることが好ましく、10〜70質量%程度であることがより好ましく、20〜60質量%程度であることがさらに好ましい。
【0118】
1.2.3 カルボキシル基及び水酸基含有樹脂(A3)
カルボキシル基及び水酸基含有樹脂(A3)は、前述のカルボキシル基含有樹脂(A2)が水酸基を有するように調製、又は、前述の水酸基含有樹脂(A1)がカルボキシル基を有するように調製することにより製造することができる。
【0119】
上記カルボキシル基及び水酸基含有樹脂(A3)は、酸価が10〜100mgKOH/g、好ましくは15〜90mgKOH/g、さらに好ましくは15〜80mgKOH/gの範囲内であり、かつ水酸基価が5〜200mgKOH/g、好ましくは15〜180mgKOH/g、さらに好ましくは20〜160mgKOH/gの範囲内であることが好適である。
【0120】
上記カルボキシル基及び水酸基含有樹脂(A3)としては、カルボキシル基及び水酸基含有ポリエステル樹脂(A3−1)、カルボキシル基及び水酸基含有アクリル樹脂(A3−2)が好ましく、カルボキシル基及び水酸基含有ポリエステル樹脂(A3−1)がさらに好ましい。
【0121】
1)カルボキシル基及び水酸基含有ポリエステル樹脂(A3−1)
上記カルボキシル基及び水酸基を含有するポリエステル樹脂(A3−1)の製造は、特に限定されるものではなく、通常の方法に従って行なうことができる。具体的には、例えば、前記酸成分(a1−1)とアルコール成分(a1−2)の配合割合を調節したり、エステル化反応又はエステル交換反応における反応温度や反応時間を調節したりすることにより、調整することができる。また、例えば、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(A2−1)を合成した後、前記アルコール成分(a1−2)を用いて、該カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(A2−1)中のカルボキシル基の一部をエステル化したり、水酸基含有ポリエステル樹脂(A1−1)を合成した後、酸無水物を反応させて、水酸基含有ポリエステル樹脂中の水酸基の一部をハーフエステル化させる方法によっても製造することができる。
【0122】
上記カルボキシル基及び水酸基含有ポリエステル樹脂(A3−1)は、酸価が10〜100mgKOH/g、好ましくは15〜90mgKOH/g、さらに好ましくは15〜80mgKOH/gの範囲内であり、かつ水酸基価が10〜200mgKOH/g、好ましくは30〜180mgKOH/g、さらに好ましくは40〜160mgKOH/gの範囲内であることが好適である。
【0123】
また、上記カルボキシル基及び水酸基含有ポリエステル樹脂(A3−1)の重量平均分子量は、500〜50,000程度が好ましく、1,000〜30,000程度がより好ましく、1,500〜20,000程度がさらに好ましい。
【0124】
また、上記カルボキシル基及び水酸基含有ポリエステル樹脂(A3−1)の数平均分子量は、500〜5,000程度が好ましく、750〜4,000程度がより好ましく、1,000〜3,000程度がさらに好ましい。
【0125】
2)カルボキシル基及び水酸基含有アクリル樹脂(A3−2)
前記カルボキシル基及び水酸基含有アクリル樹脂(A3−2)の製造は、特に限定されるものではなく、通常の方法に従って行なうことができる。具体的には、例えば、前記カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(a2−1)と共重合可能な他の重合性不飽和モノマー(a2−2)として、水酸基含有重合性不飽和モノマーを使用することによって製造することができる。
【0126】
上記水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物;これらのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド;アリルアルコール;分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0127】
上記カルボキシル基及び水酸基含有アクリル樹脂(A3−2)は、酸価が10〜100mgKOH/g、好ましくは15〜90mgKOH/g、さらに好ましくは15〜80mgKOH/gの範囲内であり、かつ水酸基価が5〜200mgKOH/g、好ましくは15〜180mgKOH/g、さらに好ましくは20〜160mgKOH/gの範囲内であることが好適である。
【0128】
また、上記カルボキシル基及び水酸基含有アクリル樹脂(A3−2)の重量平均分子量は、2,000〜5,000,000程度が好ましく、3,000〜2,000,000程度がより好ましい。
【0129】
1.3 硬化剤(B)
本発明で用いる硬化剤(B)としては、ポリイソシアネート化合物(B1)及び/又はポリカルボジイミド化合物(B2)であり、用いる基体樹脂(A)の種類によって適宜選択することができる。例えば、基体樹脂(A)が水酸基含有樹脂(A1)である場合は、ポリイソシアネート化合物(B1)であることが好ましく、基体樹脂(A)がカルボキシル基含有樹脂(A2)である場合は、ポリカルボジイミド化合物(B2)であることが好ましい。また、基体樹脂(A)が、カルボキシル基及び水酸基含有樹脂(A3)である場合は、硬化剤(B)が、ポリイソシアネート化合物(B1)及び/又はポリカルボジイミド化合物(B2)であることが好ましく、硬化剤(B)がポリカルボジイミド化合物(B2)である場合はさらにアミノ樹脂(B3)を含有することが好ましい。
【0130】
以下、ポリイソシアネート化合物(B1)、ポリカルボジイミド化合物(B2)及びアミノ樹脂(B3)について説明する。
【0131】
1.3.1 ポリイソシアネート化合物(B1)
ポリイソシアネート化合物(B1)は、1分子中に少なくとも2個のブロック化されていないイソシアネート基を有する化合物であって、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、該ポリイソシアネートの誘導体などを挙げることができる。
【0132】
上記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−又は2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエートなどの脂肪族ジイソシアネート;リジンエステルトリイソシアネート、1,4,8−トリイソシアナトオクタン、1,6,11−トリイソシアナトウンデカン、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン、1,3,6−トリイソシアナトヘキサン、2,5,7−トリメチル−1,8−ジイソシアナト−5−イソシアナトメチルオクタンなどの脂肪族トリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0133】
前記脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−もしくは1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物、ノルボルナンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート;1,3,5−トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5−トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,6−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、3−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ[2.2.1]−ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンなどの脂環族トリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0134】
前記芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−もしくは1,4−キシリレンジイソシアネート又はその混合物、ω,ω’−ジイソシアナト−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−又は1,4−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物などの芳香脂肪族ジイソシアネート;1,3,5−トリイソシアナトメチルベンゼンなどの芳香脂肪族トリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0135】
前記芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,4’−もしくは4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートもしくはその混合物、2,4−もしくは2,6−トリレンジイソシアネートもしくはその混合物、4,4’−トルイジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエンなどの芳香族トリイソシアネート;4,4’−ジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネートなどの芳香族テトライソシアネートなどを挙げることができる。
【0136】
また、前記ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネート化合物のダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)、クルードTDIなどを挙げることができる。
【0137】
上記ポリイソシアネート及びその誘導体は、それぞれ単独で用いてもよく又は2種以上併用してもよい。また、これらポリイソシアネートのうち、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート及びこれらの誘導体をそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することが好適である。
【0138】
また、ポリイソシアネート化合物(B1)としては、得られる塗膜の平滑性などの観点から、水分散性ポリイソシアネート化合物を使用することが好ましい。該水分散性ポリイソシアネート化合物としては、水性媒体中に安定に分散可能なポリイソシアネート化合物であれば制限なく使用することができるが、なかでも、親水性に変性した親水化ポリイソシアネート化合物(B1−1)、ポリイソシアネート化合物(B1)と界面活性剤とを予め混合することにより水分散性を付与したポリイソシアネート化合物等を好適に使用することができる。
【0139】
上記親水化ポリイソシアネート化合物(B1−1)としては、例えば、アニオン性基を有する活性水素基含有化合物の活性水素基を、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応させて得られるアニオン性親水化ポリイソシアネート化合物(B1−1−1)、ポリオキシエチレンのモノアルコールなどの親水性ポリエーテルアルコールとポリイソシアネート化合物とを反応させて得られるノニオン性親水化ポリイソシアネート化合物(B1−1−2)などが挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0140】
上記アニオン性基を有する活性水素基含有化合物には、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、べタイン構造含有基などのアニオン性基を有し、且つイソシアネート基と反応し得る、例えば、水酸基、アミノ基などの活性水素基を有する化合物が包含され、該化合物とポリイソシアネート化合物を反応させることにより、ポリイソシアネート化合物に親水性を付与することができる。
【0141】
上記アニオン性基を有する活性水素基含有化合物としては、特に制限されるものではなく、例えば、1個のアニオン性基と少なくとも2個の活性水素基を有する化合物が挙げられる。より具体的に、カルボキシル基を有する活性水素基含有化合物としては、例えば、2,2−ジメチロール酢酸、2,2−ジメチロール乳酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、ジメチロールヘプタン酸、ジメチロールノナン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸などのジヒドロキシルカルボン酸;1−カルボキシ−1,5−ペンチレンジアミン、ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジアミノ安息香酸、リジン、アルギニンなどのジアミノカルボン酸;ポリオキシプロピレントリオールと無水マレイン酸や無水フタル酸とのハーフエステル化合物などを挙げることができる。
【0142】
スルホン酸基を有する活性水素基含有化合物としては、例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸、1,3−フェニレンジアミン−4,6−ジスルホン酸、ジアミノブタンスルホン酸、3,6−ジアミノ−2−トルエンスルホン酸、2,4−ジアミノ−5−トルエンスルホン酸、2−(シクロヘキシルアミノ)−エタンスルホン酸、3−(シクロヘキシルアミノ)−プロパンスルホン酸などが挙げられる。
【0143】
リン酸基を有する活性水素基含有化合物としては、例えば、2,3−ジヒドロキシプロピルフェニルホスフェートなどを挙げることができる。
【0144】
ベタイン構造含有基を有する活性水素基含有化合物としては、例えば、N−メチルジエタノールアミンなどの3級アミンと1,3−プロパンスルトンとの反応によって得られるスルホベタイン基含有化合物などを挙げることができる。
【0145】
これらアニオン性基を有する活性水素基含有化合物は、例えば、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを付加させることによってアルキレンオキサイド変性体としてもよい。
【0146】
これらのアニオン性基を有する活性水素基含有化合物は、それぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0147】
アニオン性親水化ポリイソシアネート化合物(B1−1−1)としては、得られる塗膜の平滑性などの観点から、なかでも、スルホン酸基及び/又はリン酸基を有する活性水素基含有化合物の活性水素基をポリイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応させることにより得られるアニオン性親水化ポリイソシアネート化合物を用いることが特に好ましい。
【0148】
親水化変性ポリイソシアネート化合物(B1−1)において、親水化し得るポリイソシアネート化合物としては、前記したものと同様のポリイソシアネート化合物を用いることができる。なかでも、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート及びこれらの誘導体が好ましく、具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)の誘導体、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)の誘導体などを好適に使用することができる。
【0149】
また、ポリイソシアネート化合物(B1)と界面活性剤とを予め混合することにより水分散性を付与する場合、該界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤及び/又はノニオン性界面活性剤が好ましく、アニオン性界面活性剤がさらに好ましい。
【0150】
ポリイソシアネート化合物(B1)は、得られる塗膜の耐水性の観点から、該ポリイソシアネート化合物(B1)中のイソシアネート基と前記水酸基含有樹脂(A1)中の水酸基との当量比(NCO/OH)が通常0.5〜2.0、特に0.8〜1.5の範囲内となる割合で使用することが好適である。
【0151】
1.3.2 ポリカルボジイミド化合物(B2)
ポリカルボジイミド化合物(B2)は、1分子中に少なくとも2個のカルボジイミド基を有する化合物であって、例えば、イソシアネート基含有化合物のイソシアネート基同士を脱二酸化炭素反応せしめたものを使用することができる。
【0152】
上記ポリカルボジイミド化合物(B2)としては、得られる塗膜の平滑性などの観点から、水溶性又は水分散性のポリカルボジイミド化合物を使用することが好ましい。該水溶性又は水分散性のポリカルボジイミド化合物としては、水性媒体中に安定に溶解又は分散し得るポリカルボジイミド化合物であれば、特に制限なく使用することができる。
【0153】
上記水溶性ポリカルボジイミド化合物としては、具体的には、例えば、「カルボジライトSV−02」、「カルボジライトV−02」、「カルボジライトV−02−L2」「カルボジライトV−04」(いずれも日清紡社製、商品名)等を使用することができる。また、上記水分散性ポリカルボジイミド化合物としては、例えば、「カルボジライトE−01」、「カルボジライトE−02」(いずれも日清紡社製、商品名)等を使用することができる。
【0154】
上記ポリカルボジイミド化合物(B2)は、それぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0155】
1.3.3 アミノ樹脂(B3)
アミノ樹脂(B3)としては、アミノ成分とアルデヒド成分との反応によって得られる部分メチロール化アミノ樹脂又は完全メチロール化アミノ樹脂を使用することができる。
【0156】
アミノ成分としては、例えば、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミド等が挙げられる。アルデヒド成分としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。
【0157】
また、上記メチロール化アミノ樹脂のメチロール基を、適当なアルコールによって、部分的に又は完全にエーテル化したものも使用することができる。エーテル化に用いられるアルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、2−エチル−1−ブタノール、2−エチル−1−ヘキサノール等が挙げられる。
【0158】
アミノ樹脂(B3)としては、メラミン樹脂(B3−1)が好ましい。メラミン樹脂(B3−1)としては、例えば、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基を上記アルコールで部分的に又は完全にエーテル化したアルキルエーテル化メラミン樹脂を使用することができる。
【0159】
上記アルキルエーテル化メラミン樹脂としては、例えば、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をメチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したメチルエーテル化メラミン樹脂;部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をブチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したブチルエーテル化メラミン樹脂;部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をメチルアルコール及びブチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したメチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂を好適に使用することができる。これらの中でも、得られる複層塗膜の平滑性、鮮映性、耐水性等の観点から、メチルエーテル化メラミン樹脂、メチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂が好ましく、メチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂がさらに好ましい。
【0160】
また、上記メチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂は、得られる複層塗膜の平滑性、鮮映性、耐水性等の観点から、メトキシ基とブトキシ基とのモル比が、メトキシ基/ブトキシ基=90/10〜50/50、好ましくは80/20〜60/40の範囲内であることが好適である。
【0161】
また、上記メラミン樹脂(B3−1)は、重量平均分子量が400〜6,000であるのが好ましく、500〜4,000であるのがより好ましく、600〜2,000であるのがさらに好ましい。
【0162】
メラミン樹脂(B3−1)としては市販品を使用できる。市販品の商品名としては、例えば、「サイメル202」、「サイメル203」、「サイメル204」、「サイメル211」、「サイメル238」、「サイメル251」、「サイメル303」、「サイメル323」、「サイメル324」、「サイメル325」、「サイメル327」、「サイメル350」、「サイメル385」、「サイメル1156」、「サイメル1158」、「サイメル1116」、「サイメル1130」(以上、日本サイテックインダストリーズ社製)、「ユーバン120」、「ユーバン20HS」、「ユーバン20SE60」、「ユーバン2021」、「ユーバン2028」、「ユーバン28−60」(以上、三井化学(株)製)等が挙げられる。
【0163】
また、水性中塗り塗料(X)が、上記メラミン樹脂(B3−1)を使用する場合は、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸などのスルホン酸;該スルホン酸とアミンとの中和塩;リン酸エステル化合物とアミンとの中和塩等を触媒として使用することができる。
【0164】
1.4 ジエステル化合物(C)
ジエステル化合物(C)は、一般式(1)
【0165】
【化3】

【0166】
(式中、R及びRは、独立して炭素数4〜18の炭化水素基を示し、Rは炭素数2〜4のアルキレン基を示し、mは3〜25の整数を示す。m個のオキシアルキレン単位(R−O)は、互いに同じであっても異なっていてもよい。)
で表される化合物である。
【0167】
なかでも、得られる複層塗膜の平滑性、鮮映性、耐水性、フリップフロップ性及びメタリックムラ抑制の観点から、上記一般式(1)中のR及びRの炭素数は4〜18が好ましく、5〜11がより好ましく、5〜9がさらに好ましく、6〜8が最も好ましい。前記R及びRは直鎖状又は分岐状のアルキル基であることが好ましく、分岐状のアルキル基であることがより好ましい。前記R及びRとして特に好ましいのは、炭素数6〜8の分岐状のアルキル基である。前記R及びRが分岐状のアルキル基である場合、塗料を比較的長期間貯蔵した後に塗装しても、優れた平滑性及びフリップフロップ性を有し、かつメタリックムラが抑制された、優れた外観を有する複層塗膜を形成することができる。
【0168】
また、得られる複層塗膜の平滑性、鮮映性、フリップフロップ性及びメタリックムラ抑制の観点から、上記一般式(1)中のRは、炭素数2又は3のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数2のアルキレン基(エチレン基)であることが更に好ましい。また、得られる複層塗膜の平滑性、鮮映性、耐水性、フリップフロップ性及びメタリックムラ抑制の観点から、上記一般式(1)中のmは、4〜12であることがより好ましく、6〜9であることが更に好ましい。
【0169】
ジエステル化合物(C)の分子量は320〜1,400程度が好ましく、450〜1,000程度がより好ましく、500〜800程度がさらに好ましく、500〜700程度が最も好ましい。
【0170】
ジエステル化合物(C)は、ポリオキシアルキレングリコールと脂肪族モノカルボン酸とのジエステル化合物であることが好ましい。具体的に、ジエステル化合物(C)は、例えば、2個の末端水酸基を有するポリオキシアルキレングリコールと、炭素数4〜18の炭化水素基を有するモノカルボン酸とをエステル化反応させることにより得ることができる。
【0171】
上記ポリオキシアルキレングリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンとプロピレングリコールとの共重合体、ポリブチレングリコール等を挙げることができる。このなかでも、特に、ポリエチレングリコールを用いることが好ましい。
上記ポリオキシアルキレングリコールの数平均分子量は、100〜1,200程度が好ましく、150〜600程度がより好ましく、200〜400程度がさらに好ましい。
【0172】
また、前記炭素数4〜18の炭化水素基を有するモノカルボン酸としては、例えば、ペンタン酸、ヘキサン酸、2−エチルブタン酸、3−メチルペンタン酸、安息香酸、シクロヘキサンカルボン酸、ヘプタン酸、2−エチルペンタン酸、3−エチルペンタン酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、4−エチルヘキサン酸、ノナン酸、2−エチルヘプタン酸、デカン酸、2−エチルオクタン酸、4−エチルオクタン酸、ドデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸等を挙げることができる。なかでも、ヘキサン酸、ヘプタン酸、2−エチルペンタン酸、3−エチルペンタン酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、4−エチルヘキサン酸、ノナン酸、2−エチルヘプタン酸、デカン酸、2−エチルオクタン酸、4−エチルオクタン酸等の炭素数5〜9のアルキル基を有するモノカルボン酸が好ましく、ヘプタン酸、2−エチルペンタン酸、3−エチルペンタン酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、4−エチルヘキサン酸、ノナン酸、2−エチルヘプタン酸等の炭素数6〜8のアルキル基を有するモノカルボン酸がより好ましく、2−エチルペンタン酸、3−エチルペンタン酸、2−エチルヘキサン酸、4−エチルヘキサン酸、2−エチルヘプタン酸等の炭素数6〜8の分岐状のアルキル基を有するモノカルボン酸がさらに好ましい。
【0173】
上記ポリオキシアルキレングリコール及びモノカルボン酸については、それぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0174】
前記ポリオキシアルキレングリコールと炭素数4〜18の炭化水素基を有するモノカルボン酸とのジエステル化反応については既知の方法により行なうことができる。
【0175】
水性中塗り塗料、水性ベース塗料及びクリヤー塗料を順次塗装し、得られる3層の複層塗膜を同時に加熱硬化する3コート1ベーク方式において、水性中塗り塗料(X)が、前記基体樹脂(A)、硬化剤(B)及びジエステル化合物(C)を含有する場合に、平滑性及び鮮映性に優れた複層塗膜を形成し得る理由としては、以下の通りである。
【0176】
上記ジエステル化合物(C)を含有する水性中塗り塗料(X)を塗装することによって、適度な親水性を有する中塗り塗膜が形成され、該中塗り塗膜上に塗装された前記水性ベース塗料(Y)が中塗り塗膜上に均一に濡れ広がるため、平滑性に優れた複層塗膜が得られることが推察される。また、水性中塗り塗料(X)中の基体樹脂(A)と硬化剤(B)との反応性が比較的高く、中塗り塗膜が加熱工程の比較的早い段階で硬化するため、上層の水性ベース塗料(Y)との混層が起こりにくくなり、鮮映性が向上し、さらに上記ジエステル化合物(C)によって、基体樹脂(A)と硬化剤(B)の急速な硬化反応による塗膜の熱フロー性の低下が緩和されるため平滑性に優れた複層塗膜が得られることが推察される。
【0177】
1.5 水性中塗り塗料(X)
本発明の複層塗膜形成方法において使用される水性中塗り塗料(X)は、前記基体樹脂(A)、硬化剤(B)(ポリイソシアネート化合物(B1)及び/又はポリカルボジイミド化合物(B2))及びジエステル化合物(C)を含有する水性塗料である。
【0178】
ここで、水性塗料とは、有機溶剤型塗料と対比される用語であって、一般に、水又は水を主成分とする媒体(水性媒体)に、塗膜形成樹脂、顔料等を分散及び/又は溶解させた塗料を意味する。上記水性中塗り塗料(X)中の水の含有量は、10〜90質量%程度が好ましく、20〜80質量%程度がより好ましく、30〜60質量%程度がさらに好ましい。
【0179】
水性中塗り塗料(X)における基体樹脂(A)、硬化剤(B)及びジエステル化合物(C)の配合割合は、基体樹脂(A)及び硬化剤(B)の合計固形分100質量部を基準として、下記の範囲内であることが好適である。
基体樹脂(A):30〜95質量部、好ましくは50〜90質量部、さらに好ましくは60〜85質量部、
硬化剤(B):5〜70質量部、好ましくは10〜50質量部、さらに好ましくは15〜40質量部、
ジエステル化合物(C):1〜30質量部、好ましくは3〜20質量部、さらに好ましくは5〜15質量部。
【0180】
上記配合割合は、以下のいずれの組み合わせにおいても採用することができる。
(1)基体樹脂(A)が水酸基含有樹脂(A1)、硬化剤(B)がポリイソシアネート化合物(B1)である組み合わせ、
(2)基体樹脂(A)がカルボキシル基含有樹脂(A2)、硬化剤(B)がポリカルボジイミド化合物(B2)である組み合わせ、
(3)基体樹脂(A)がカルボキシル基及び水酸基含有樹脂(A3)、硬化剤(B)がポリイソシアネート化合物(B1)及び/又はポリカルボジイミド化合物(B2)である組み合わせ、
(4)基体樹脂(A)がカルボキシル基及び水酸基含有樹脂(A3)、硬化剤(B)がポリカルボジイミド化合物(B2)及びアミノ樹脂(B3)である組み合わせ。
【0181】
また、以下に記載の各種配合割合において、基準となる基体樹脂(A)と硬化剤(B)は、それぞれ、上記基体樹脂と硬化剤の組み合わせ(1)〜(4)を適用することができる。
【0182】
また、本発明においては、得られる複層塗膜の平滑性、鮮映性、耐水性、耐チッピング性等の観点から、基体樹脂(A)がカルボキシル基及び水酸基を含有する樹脂(A3)であり、かつ水性中塗り塗料(X)が硬化剤(B)として、さらにアミノ樹脂を含有することが好ましい。アミノ樹脂としては、前述した通りである。
【0183】
水性中塗り塗料(X)が、上記カルボキシル基及び水酸基を含有する樹脂(A3)並びにメラミン樹脂(B3−1)を含有する場合、該カルボキシル基及び水酸基を含有する樹脂(A3)、ポリカルボジイミド化合物(B2)、ジエステル化合物(C)及びメラミン樹脂(B3−1)の配合割合は、カルボキシル基及び水酸基を含有する樹脂(A3)及びポリカルボジイミド化合物(B2)の合計固形分100質量部を基準として、下記の範囲内であることが好適である。
カルボキシル基及び水酸基を含有する樹脂(A3):30〜95質量部、好ましくは50〜90質量部、さらに好ましくは60〜85質量部、
ポリカルボジイミド化合物(B2):5〜70質量部、好ましくは10〜50質量部、さらに好ましくは15〜40質量部、
ジエステル化合物(C):1〜30質量部、好ましくは3〜20質量部、さらに好ましくは5〜15質量部。
メラミン樹脂(B3−1):5〜70質量部、好ましくは10〜50質量部、さらに好ましくは15〜40質量部。
【0184】
水性中塗り塗料(X)は、基体樹脂(A)の他に、実質的に水酸基及び/又はカルボキシル基を含有しない改質用樹脂を含むことができる。該改質用樹脂としては、例えば、水溶性もしくは水分散性のポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、アルキド樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0185】
水性中塗り塗料(X)が、上記改質用樹脂を含有する場合、該改質用樹脂の配合量は、水性中塗り塗料(X)中の、基体樹脂(A)及び硬化剤(B)の合計固形分100質量部を基準として、一般に1〜50質量部、好ましくは3〜40質量部、さらに好ましくは5〜30質量部の範囲内であることができる。
【0186】
上記改質用樹脂としては、耐チッピング性向上の観点から、ポリウレタン樹脂を使用することができる。該ポリウレタン樹脂としては、例えば、脂肪族及び/又は脂環式ジイソシアネートに、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール及びポリカーボネートジオールから選ばれる少なくとも一種以上のジオール、低分子量ポリヒドロキシ化合物及びジメタノールアルカン酸を反応させてウレタンプレポリマーを作製し、これを第3級アミンで中和し、水中に乳化分散させた後、必要に応じてポリアミン等の鎖伸長剤、架橋剤及び/又は停止剤を含む水性媒体と混合して、イソシアネート基が実質的に無くなるまで反応させてなるものを挙げることができる。上記方法により、通常、平均粒径0.001〜3μm程度の自己乳化型のポリウレタン樹脂を得ることができる。上記ポリウレタン樹脂の市販品としては、例えば、「ユーコートUX−5000」、「ユーコートUX−8100」(商品名、三洋化成工業(株)製)等を挙げることができる。
【0187】
水性中塗り塗料(X)が、上記ポリウレタン樹脂を含有する場合、該ポリウレタン樹脂の配合量は、水性中塗り塗料(X)中の、基体樹脂(A)及び硬化剤(B)の合計固形分100質量部を基準として、一般に1〜50質量部、好ましくは3〜40質量部、さらに好ましくは5〜30質量部の範囲内であることができる。
【0188】
また、水性中塗り塗料(X)は、前記水酸基含有樹脂(A1)及び/又は改質用樹脂が水酸基以外の反応性官能基を有する場合、該反応性官能基との反応性を有する化合物を含有することができる。具体的には、例えば、水酸基含有樹脂(A1)及び/又は改質用樹脂がカルボキシル基を有する場合、水性中塗り塗料(X)は、カルボジイミド基含有化合物を含有することができる。
【0189】
上記カルボジイミド基含有化合物としては、例えば、前記ポリイソシアネート化合物(B1)のイソシアネート基同士を脱二酸化炭素反応せしめたものを使用することができる。また、前記ポリカルボジイミド化合物(B2)も好適に用いることができる。該カルボジイミド基含有化合物としては市販品を使用できる。市販品の商品名としては、例えば、「カルボジライトSV−02」、「カルボジライトV−02」、「カルボジライトV−02−L2」、「カルボジライトV−04」、「カルボジライトE−01」、「カルボジライトE−02」(いずれも日清紡社製、商品名)等を挙げることができる。
【0190】
また、水性中塗り塗料(X)は、前記カルボキシル基含有樹脂(A2)及び/又は改質用樹脂がカルボキシル基以外の反応性官能基を有する場合、該反応性官能基との反応性を有する化合物を含有することができる。具体的には、例えば、カルボキシル基含有樹脂(A2)及び/又は改質用樹脂が水酸基を有する場合、水性中塗り塗料(X)は、アミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物等を含有することができる。
【0191】
アミノ樹脂及びポリイソシアネート化合物としては、前述したものと同様のものを挙げることができる。
【0192】
また、前記ブロック化ポリイソシアネート化合物は、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物のイソシアネート基を、ブロック剤でブロックした化合物である。
【0193】
上記ブロック剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、エチルフェノール、ヒドロキシジフェニル、ブチルフェノール、イソプロピルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸メチルなどのフェノール系;ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピオラクタムなどのラクタム系;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ラウリルアルコールなどの脂肪族アルコール系;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシメタノールなどのエーテル系;ベンジルアルコール、グリコール酸、グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、グリコール酸ブチル、乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチロール尿素、メチロールメラミン、ジアセトンアルコール、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートなどのアルコール系;ホルムアミドオキシム、アセトアミドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシムなどのオキシム系;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトンなどの活性メチレン系;ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノールなどのメルカプタン系;アセトアニリド、アセトアニシジド、アセトトルイド、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ステアリン酸アミド、ベンズアミドなどの酸アミド系;コハク酸イミド、フタル酸イミド、マレイン酸イミドなどのイミド系;ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N−フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ブチルフェニルアミンなどアミン系;イミダゾール、2−エチルイミダゾールなどのイミダゾール系;尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素、ジフェニル尿素などの尿素系;N−フェニルカルバミン酸フェニルなどのカルバミン酸エステル系;エチレンイミン、プロピレンイミンなどのイミン系;重亜硫酸ソーダ、重亜硫酸カリなどの亜硫酸塩系;アゾール系の化合物等が挙げられる。上記アゾール系の化合物としては、ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、3−メチルピラゾール、4−ベンジル−3,5−ジメチルピラゾール、4−ニトロ−3,5−ジメチルピラゾール、4−ブロモ−3,5−ジメチルピラゾール、3−メチル−5−フェニルピラゾール等のピラゾール又はピラゾール誘導体;イミダゾール、ベンズイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾールまたはイミダゾール誘導体;2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン等のイミダゾリン誘導体等が挙げられる。
【0194】
1.5.1 顔料(D)
水性中塗り塗料(X)は、さらに、顔料(D)を含有することが好ましい。該顔料(D)としては、例えば、着色顔料(D1)、体質顔料(D2)、光輝性顔料(D3)等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0195】
水性中塗り塗料(X)が、顔料(D)を含有する場合、該顔料(D)の配合量は、水性中塗り塗料(X)中の、基体樹脂(A)及び硬化剤(B)の合計固形分100質量部を基準として、一般に1〜200質量部、好ましくは20〜150質量部、さらに好ましくは50〜120質量部の範囲内であることが好適である。
【0196】
なかでも、水性中塗り塗料(X)が着色顔料(D1)及び/又は体質顔料(D2)を含有し、該着色顔料(D1)及び体質顔料(D2)の合計含有量が、水性中塗り塗料(X)中の基体樹脂(A)及び硬化剤(B)の合計固形分100質量部を基準として、40〜180質量部、好ましくは50〜160質量部、さらに好ましくは60〜140質量部の範囲内であることが好適である。
【0197】
上記着色顔料(D1)としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、モリブデンレッド、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサジン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料などが挙げられ、なかでも、酸化チタン、カーボンブラックを好適に使用することができる。
【0198】
水性中塗り塗料(X)が上記着色顔料(D1)を含有する場合、該着色顔料(D1)の配合量は、水性中塗り塗料(X)中の基体樹脂(A)及び硬化剤(B)の合計固形分100質量部を基準として、通常1〜180質量部、好ましくは3〜160質量部、さらに好ましくは5〜140質量部の範囲内であることができる。
【0199】
また、前記体質顔料(D2)としては、例えば、クレー、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナホワイトなどが挙げられ、なかでも、硫酸バリウム、タルクを好適に使用することができる。
【0200】
なかでも、上記体質顔料(D2)として、平均一次粒子径が1μm以下の硫酸バリウム、さらに好ましくは平均一次粒子径が0.01〜0.8μmの範囲内である硫酸バリウムを含有することが、平滑性に優れ、後記の水性ベース塗料(Y)が光輝性顔料(D3)を含有する塗料である場合に、フリップフロップ性が高く、メタリックムラの少ない優れた外観を有する複層塗膜を得られるため、好適である。
【0201】
なお、本発明における硫酸バリウムの平均一次粒子径は、硫酸バリウムを走査型電子顕微鏡で観察し、電子顕微鏡写真上に無作為に引いた直線上にある硫酸バリウム20個の最大径を平均した値である。
【0202】
水性中塗り塗料(X)が上記体質顔料(D2)を含有する場合、該体質顔料(D2)の配合量は、水性中塗り塗料(X)中の基体樹脂(A)及び硬化剤(B)の合計固形分100質量部を基準として、通常1〜150質量部、好ましくは5〜130質量部、さらに好ましくは10〜110質量部の範囲内であることができる。
【0203】
また、前記光輝性顔料(D3)としては、例えば、アルミニウム(蒸着アルミニウムを含む)、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタンや酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタンや酸化鉄で被覆された雲母、ガラスフレーク、ホログラム顔料などを挙げることができ。これらの光輝性顔料(D3)は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。アルミニウム顔料には、ノンリーフィング型アルミニウムとリーフィング型アルミニウムがあるが、いずれも使用できる。
【0204】
水性中塗り塗料(X)が上記光輝性顔料(D3)を含有する場合、該光輝性顔料(D3)の配合量は、水性中塗り塗料(X)中の基体樹脂(A)及び硬化剤(B)の合計固形分100質量部を基準として、通常1〜50質量部、好ましくは2〜30質量部、さらに好ましくは3〜20質量部の範囲内であることができる。
【0205】
1.5.2 疎水性溶媒(E)
水性中塗り塗料(X)は、平滑性及び鮮映性向上の観点から、さらに、疎水性溶媒(E)を含有することが好ましい。
【0206】
該疎水性溶媒(E)としては、20℃において、100gの水に溶解する質量が10g以下、好ましくは5g以下、より好ましくは1g以下の有機溶媒であるのが望ましい。かかる有機溶媒としては、例えば、ゴム揮発油、ミネラルスピリット、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ等の炭化水素系溶媒;1−ヘキサノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、1−デカノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等のアルコール系溶媒;酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、酢酸メチルアミル、酢酸エチレングリコールモノブチルエーテル等のエステル系溶媒;メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、エチルn−アミルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶媒を挙げることができる。これらは、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0207】
疎水性溶媒(E)としては、得られる塗膜の平滑性の観点から、アルコール系疎水性溶媒を用いることが好ましい。なかでも、炭素数7〜14のアルコール系疎水性溶媒が好ましく、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種のアルコール系疎水性溶媒がさらに好ましい。
【0208】
水性中塗り塗料(X)が上記疎水性溶媒(E)を含有する場合、該疎水性溶媒(E)の配合量は、基体樹脂(A)、硬化剤(B)及びジエステル化合物(C)の合計固形分100質量部に対して、2〜50質量部であるのが好ましく、5〜40質量部であるのがより好ましく、8〜30質量部であるのが更に好ましい。
【0209】
1.5.3 硬化触媒
水性中塗り塗料(X)は、さらに、硬化触媒を含有することができる。該硬化触媒としては、例えば、オクチル酸錫、ジブチル錫ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジオクチル錫ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジオクチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫脂肪酸塩、2−エチルヘキサン酸鉛、オクチル酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、脂肪酸亜鉛類、ナフテン酸コバルト、オクチル酸カルシウム、ナフテン酸銅、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネートなどの有機金属化合物;第三級アミン;りん酸化合物などが挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0210】
水性中塗り塗料(X)が上記硬化触媒を含有する場合、該硬化触媒の配合量は、水性中塗り塗料(X)中の基体樹脂(A)及び硬化剤(B)の合計固形分100質量部を基準として、通常0.001〜5質量部、好ましくは0.01〜0.5質量部、さらに好ましくは0.05〜0.3質量部の範囲内であることができる。
【0211】
1.5.4 その他の塗料用添加剤
また、水性中塗り塗料(X)は、必要に応じて、増粘剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、可塑剤、上記疎水性溶媒(E)以外の有機溶剤、表面調整剤、沈降防止剤等の塗料用添加剤を含有することが出来る。
【0212】
上記増粘剤としては、例えば、ケイ酸塩、金属ケイ酸塩、モンモリロナイト、コロイド状アルミナ等の無機系増粘剤;(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、ポリアクリル酸ソーダ等のポリアクリル酸系増粘剤;1分子中に親水性部分と疎水性部分を有し、水性媒体中において、該疎水性部分が塗料中の顔料やエマルション粒子の表面に吸着したり、該疎水性部分同士が会合したりすることにより効果的に増粘作用を示す会合型増粘剤;カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等の繊維素誘導体系増粘剤;カゼイン、カゼイン酸ソーダ、カゼイン酸アンモニウム等のタンパク質系増粘剤;アルギン酸ソーダ等のアルギン酸系増粘剤;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルベンジルエーテル共重合体等のポリビニル系増粘剤;プルロニックポリエーテル、ポリエーテルジアルキルエステル、ポリエーテルジアルキルエーテル、ポリエーテルエポキシ変性物等のポリエーテル系増粘剤;ビニルメチルエーテル−無水マレイン酸共重合体の部分エステル等の無水マレイン酸共重合体系増粘剤;ポリアマイドアミン塩等のポリアマイド系増粘剤などが挙げられる。これらの増粘剤は、それぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0213】
上記ポリアクリル酸系増粘剤としては、市販品を使用できる。市販品の商品名として、例えば、ロームアンドハース社製の「プライマルASE−60」、「プライマルTT−615」、「プライマルRM−5」、サンノプコ社製の「SNシックナー613」、「SNシックナー618」、「SNシックナー630」、「SNシックナー634」、「SNシックナー636」等が挙げられる。また、上記会合型増粘剤としては、市販品を使用できる。市販品の商品名として、例えば、ADEKA社製の「UH−420」、「UH−450」、「UH−462」、「UH−472」、「UH−540」、「UH−752」、「UH−756VF」、「UH−814N」、ロームアンドハース社製の「プライマルRM−8W」、「プライマルRM−825」、「プライマルRM−2020NPR」、「プライマルRM−12W」、「プライマルSCT−275」、サンノプコ社製の「SNシックナー612」、「SNシックナー621N」、「SNシックナー625N」、「SNシックナー627N」、「SNシックナー660T」等が挙げられる。
【0214】
上記増粘剤としては、ポリアクリル酸系増粘剤及び/又は会合型増粘剤を用いるのが好ましく、会合型増粘剤を用いるのがより好ましく、末端に疎水基を有し、分子鎖中にウレタン結合を含有するウレタン会合型増粘剤を用いるのが更に好ましい。該ウレタン会合型増粘剤としては、市販品を使用できる。市販品の商品名として、例えば、ADEKA社製の「UH−420」、「UH−462」、「UH−472」、「UH−540」、「UH−752」、「UH−756VF」、「UH−814N」、サンノプコ社製の「SNシックナー612」、「SNシックナー621N」、「SNシックナー625N」、「SNシックナー627N」、「SNシックナー660T」等が挙げられる。
【0215】
また、水性中塗り塗料(X)が、上記増粘剤を含有する場合、該増粘剤の配合量は、基体樹脂(A)、硬化剤(B)及びジエステル化合物(C)の合計固形分100質量部に対して、0.01〜10質量部であるのが好ましく、0.02〜3質量部であるのがより好ましく、0.03〜2質量部であるのが更に好ましい。
【0216】
水性中塗り塗料(X)は、基体樹脂(A)、硬化剤(B)及びジエステル化合物(C)、並びに、必要に応じて、メラミン樹脂(B3−1)、顔料(D)、疎水性溶媒(E)及びその他の塗料用添加剤を、公知の方法により、水性媒体中で、混合、分散することによって、調製することが出来る。また、水性媒体としては、脱イオン水又は脱イオン水と親水性有機溶媒の混合物を使用することができる。親水性有機溶媒としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル等を挙げることができる。
【0217】
水性中塗り塗料(X)の固形分濃度は、通常、30〜80質量%であるのが好ましく、40〜70質量%であるのがより好ましく、45〜60質量%であるのが更に好ましい。
【0218】
本発明に従う水性中塗り塗料(X)は、一液型塗料又は多液型塗料のいずれであってもよいが、貯蔵安定性などの観点から、以下の二液型塗料とすることが好ましい。
1)水酸基含有樹脂(A1)及びジエステル化合物(C)を含有する主剤(X1)と、ポリイソシアネート化合物(B1)を含有する硬化剤(X2)とからなる二液型塗料。また、一般に、主剤(X1)がさらに顔料、硬化触媒及び水を含有し、硬化剤(X2)がさらに溶媒を含有することが好ましい。
2)カルボキシル基含有樹脂(A2)及びジエステル化合物(C)を含有する主剤(X1)と、ポリカルボジイミド化合物(B2)を含有する硬化剤(X2)とからなる二液型塗料とすることが好ましい。また、一般に、主剤(X1)がさらに顔料、硬化触媒及び水を含有し、硬化剤(X2)がさらに水を含有することが望ましい。また、上記硬化剤(X2)は、さらに界面活性剤を含有してもよい。
【0219】
また、上記硬化剤(X2)は、さらに界面活性剤を含有してもよい。該界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤及び/又はノニオン性界面活性剤が好ましく、アニオン性界面活性剤がさらに好ましい。上記硬化剤(X2)が該界面活性剤を含有する場合、主剤(X1)と硬化剤(X2)を混合した際に、ポリイソシアネート化合物(B1)が水性中塗り塗料(X)中に比較的均一に分散し、中塗り塗膜が均一に硬化するため、平滑性及び鮮映性に優れた塗膜を形成することができる。
【0220】
また、本発明に従う水性中塗り塗料(X)は、得られる塗膜の平滑性、鮮映性、フリップフロップ性及びメタリックムラ抑制などの観点から、硬化膜厚が30μmとなるように塗装し、80℃で10分間加熱した後の塗膜のゲル分率(G80)が、一般に5〜100質量%、好ましくは10〜95質量%、より好ましくは15〜95質量%、さらに好ましくは30〜90質量%の範囲内となる塗料であることが好適である。
【0221】
なお、上記ゲル分率(G80)は、以下の方法により測定することができる。
まず、ポリプロピレン板上に本発明の水性中塗り塗料(X)を硬化膜厚が30μmとなるように塗装し、80℃で10分間加熱する。次に、該ポリプロピレン板上の中塗り塗膜を回収し、質量(W)を測定する。その後、該塗膜を300メッシュのステンレススチール製の網状容器に入れ、64℃に加温したアセトンとメタノールの等質量混合溶剤中で5時間抽出し、110℃で60分間乾燥した後の塗膜質量(W)を測定し、以下の式に従って算出される不溶塗膜残存率(質量%)を算出し、それをゲル分率(G80)とする。
【0222】

ゲル分率(G80)[質量%]=(W/W)×100

本発明の塗料組成物のゲル分率(G80)の調整は、例えば、塗料組成物中の硬化触媒の配合量を調節することにより行なうことができる。
【0223】
水性中塗り塗料(X)は、それ自体既知の方法、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装などにより被塗物上に塗装することができ、塗装の際、静電印加を行ってもよい。これらの中でも、エアスプレー塗装、回転霧化塗装等の方法が好ましい。
【0224】
水性中塗り塗料(X)の塗布量は、硬化膜厚として、通常、5〜70μm、好ましくは10〜50μm、さらに好ましくは15〜40μmとなる量であるのが好ましい。
【0225】
2. 工程(2)
以上に述べた工程(1)で形成される水性中塗り塗料(X)の塗膜(以下、「中塗り塗膜」という場合がある)上には、次いで、水性ベース塗料(Y)が塗装される。
【0226】
上記中塗り塗膜は、水性ベース塗料(Y)を塗装する前に、塗膜が実質的に硬化しない加熱条件でプレヒート(予備加熱)、エアブロー等を行うことが好ましい。なお、本発明において、硬化塗膜とは、JIS K 5600−1−1に規定された硬化乾燥状態、すなわち、塗面の中央を親指と人差指とで強く挟んで、塗面に指紋によるへこみが付かず、塗膜の動きが感じられず、また、塗面の中央を指先で急速に繰り返しこすって、塗面にすり跡が付かない状態の塗膜である。一方、未硬化塗膜とは、塗膜が上記硬化乾燥状態に至っていない状態であって、JIS K 5600−1−1に規定された指触乾燥状態及び半硬化乾燥状態をも含むものである。
【0227】
上記プレヒートの温度は、40〜100℃が好ましく、50〜90℃がより好ましく、60〜80℃が更に好ましい。プレヒートの時間は、30秒間〜15分間が好ましく、1〜10分間がより好ましく、2〜5分間が更に好ましい。また、上記エアブローは、通常、被塗物の塗装面に、常温又は25〜80℃の温度に加熱された空気を、30秒間〜15分間吹き付けることにより行うことができる。
【0228】
中塗り塗膜は、水性ベース塗料(Y)を塗装する前に、例えば、上記プレヒート、エアブロー等の手段により、塗膜の固形分含有率が通常60〜100質量%、特に80〜100質量%、さらに特に90〜100質量%の範囲内となるように調整することが好ましい。
【0229】
また、塗膜のゲル分率は、以下の範囲内となるように調整することが好ましい。
【0230】
水性中塗り塗料(X)が、水酸基含有樹脂(A1)及び/又は水酸基及びカルボキシル基含有樹脂(A3)、ポリイソシアネート化合物(B1)ならびにジエステル化合物(C)を含有する塗料である場合は、塗膜のゲル分率が、通常1〜95質量%、好ましくは15〜92質量%、より好ましくは20〜90質量%の範囲内となるように調整することが好ましい。
【0231】
水性中塗り塗料(X)が、カルボキシル基含有樹脂(A2)及び/又は水酸基及びカルボキシル基含有樹脂(A3)、ポリカルボジイミド化合物(B2)ならびにジエステル化合物(C)を含有する塗料である場合は、塗膜のゲル分率は、通常1〜95質量%、好ましくは5〜90質量%、より好ましくは10〜85質量%の範囲内となるように調整することが好ましい。
【0232】
ここで、塗膜の固形分含有率は以下の方法により測定することができる:
まず、被塗物上に水性中塗り塗料(X)を塗装する。また、予め質量(W)を測定しておいたアルミホイル上にも水性中塗り塗料(X)を塗装する。続いて、塗装後、プレヒートなどがされた該アルミホイルを水性ベース塗料(Y)が塗装される直前に回収し、その質量(W)を測定する。次に、回収したアルミホイルを110℃で60分間乾燥し、デシケーター内で室温まで放冷した後、該アルミホイルの質量(W)を測定し、以下の式に従って固形分含有率を求める。
【0233】

固形分含有率[質量%]={(W−W)/(W−W)}×100

また、塗膜のゲル分率は以下の方法により測定することができる:
まず、被塗物上に水性中塗り塗料(X)を塗装する。また、ポリプロピレン板上にも水性中塗り塗料(X)を塗装し、塗装後、プレヒートなどがされた該ポリプロピレン板を水性ベース塗料(Y)が塗装される直前に回収する。次に、該ポリプロピレン板上の中塗り塗膜を回収し、質量(W)を測定する。その後、該塗膜を300メッシュのステンレススチール製の網状容器に入れ、64℃に加温したアセトンとメタノールの等質量混合溶剤中で5時間抽出し、110℃で60分間乾燥した後の塗膜質量(W)を測定し、以下の式に従って得られる不溶塗膜残存率(質量%)を算出し、それをゲル分率とする。
【0234】

ゲル分率[質量%]=(W/W)×100

中塗り塗膜上に塗装される水性ベース塗料(Y)は、一般に、被塗物に優れた外観を付与することを目的とするものであって、例えば、基体樹脂及び硬化剤からなる樹脂成分を、顔料、その他の添加剤と共に水に溶解ないし分散させて塗料化したものを使用することができる。
【0235】
基体樹脂としては、例えば、カルボキシル基、水酸基などの架橋性官能基を有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂を挙げることができ、硬化剤としては、ブロックされていてもよいポリイソシアネート化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂等を挙げることができる。これらの中でも、得られる複層塗膜の外観、耐水性等の観点から、基体樹脂として前記水酸基含有樹脂(A1)を使用し、硬化剤としてメラミン樹脂(B3−1)を使用する熱硬化型水性塗料、基体樹脂として前記カルボキシル基及び水酸基を含有する樹脂(A3)を使用し、硬化剤としてメラミン樹脂(B3−1)を使用する熱硬化型水性塗料を好適に用いることができる。
【0236】
また、上記顔料としては、前記着色顔料(D1)、体質顔料(D2)、光輝性顔料(D3)等を使用することができる。なかでも、水性ベース塗料(Y)が、上記顔料の少なくとも1種として着色顔料(D1)及び/又は光輝性顔料(D3)を含有することが好ましい。
【0237】
上記着色顔料(D1)としては、例えば、前記水性中塗り塗料(X)の説明において例示した、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、モリブデンレッド、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサジン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料などが挙げられる。
【0238】
水性ベース塗料(Y)が上記着色顔料(D1)を含有する場合、該着色顔料(D1)の配合量は、水性ベース塗料(Y)中の樹脂固形分100質量部を基準として、通常、1〜150質量部、好ましくは3〜130質量部、さらに好ましくは5〜110質量部の範囲内であることが好適である。
【0239】
上記光輝性顔料(D3)としては、例えば、前記水性中塗り塗料(X)の説明において例示した、アルミニウム(蒸着アルミニウムを含む)、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタンや酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタンや酸化鉄で被覆された雲母、ガラスフレーク、ホログラム顔料等を挙げることができる。なかでも、アルミニウム、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタンや酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタンや酸化鉄で被覆された雲母を用いることが好ましく、アルミニウムを用いることが特に好ましい。上記光輝性顔料(D3)は単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0240】
また、上記光輝性顔料(D3)はりん片状であることが好ましい。また、該光輝性顔料(D3)としては、長手方向寸法が1〜100μm、特に5〜40μm、厚さが0.001〜5μm、特に0.01〜2μmの範囲内にあるものが適している。
【0241】
水性ベース塗料(Y)が上記光輝性顔料(D3)を含有する場合、該光輝性顔料(D3)の配合量は、水性ベース塗料(Y)中の樹脂固形分100質量部を基準として、通常、1〜50質量部、好ましくは2〜30質量部、さらに好ましくは3〜20質量部の範囲内であることが好適である。
【0242】
本発明の複層塗膜形成方法において、水性ベース塗料(Y)が上記光輝性顔料(D3)を含有する場合、平滑性及び鮮映性に優れ、さらに、フリップフロップ性が高く、メタリックムラの少ない優れた外観を有する複層塗膜を形成することができる。
【0243】
この理由としては、水性中塗り塗料(X)が前記ジエステル化合物(C)を含有することにより、適度な親水性を有する中塗り塗膜が形成され、該中塗り塗膜上に塗装された前記水性ベース塗料(Y)が該中塗り塗膜上に均一に濡れ広がるため、水性ベース塗料(Y)中の光輝性顔料(D3)がベース塗膜中に比較的均一に存在し、かつ被塗物に対し平行に配向しやすくなり、フリップフロップ性が高く、メタリックムラが少ない優れた外観を有する塗膜が形成されることが推察される。
【0244】
また、水性ベース塗料(Y)は、前記疎水性溶媒(E)を含有することが好ましい。疎水性溶媒(E)としては、得られる塗膜の光輝感に優れる観点から、アルコール系疎水性溶媒を用いることが好ましい。なかでも、炭素数7〜14のアルコール系疎水性溶媒、例えば、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種のアルコール系疎水性溶媒がさらに好ましい。
【0245】
水性ベース塗料(Y)が、疎水性溶媒(E)を含有する場合、その配合量は、水性ベース塗料(Y)中の樹脂固形分100質量部を基準として、2〜70質量部、好ましくは11〜60質量部、さらに好ましくは16〜50質量部の範囲内であることが好適である。
【0246】
また、水性ベース塗料(Y)は、さらに必要に応じて、硬化触媒、増粘剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、可塑剤、有機溶剤、表面調整剤、沈降防止剤等の通常の塗料用添加剤を含有することができる。これらの塗料用添加剤は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0247】
水性ベース塗料(Y)は、それ自体既知の方法、例えば、エアスプレー、エアレススプレー、回転霧化塗装機などにより塗装することができ、塗装の際、静電印加を行ってもよい。塗装膜厚は、通常、硬化膜厚で5〜30μm、好ましくは8〜25μm、さらに好ましくは10〜20μmの範囲内とすることができる。
【0248】
3. 工程(3)
本発明の複層塗膜形成方法においては、上記工程(2)で形成される水性ベース塗料(Y)の塗膜(以下、「ベース塗膜」という場合がある)上に、クリヤー塗料(Z)が塗装される。
【0249】
上記ベース塗膜は、クリヤー塗料(Z)を塗装する前に、塗膜が実質的に硬化しない加熱条件で前記プレヒート、エアブロー等を行うことが好ましい。プレヒートの温度は、40〜100℃が好ましく、50〜90℃がより好ましく、60〜80℃が更に好ましい。プレヒートの時間は、30秒間〜15分間が好ましく、1〜10分間がより好ましく、2〜5分間が更に好ましい。また、上記エアブローは、通常、被塗物の塗装面に、常温又は25〜80℃の温度に加熱された空気を、30秒間〜15分間吹き付けることにより行うことができる。
【0250】
ベース塗膜は、クリヤー塗料(Z)を塗装する前に、必要に応じて、上記プレヒート、エアブロー等を行うことにより、塗膜の固形分含有率が通常70〜100質量%、好ましくは80〜100質量%、さらに好ましくは90〜100質量%の範囲内となるように調整することが好適である。
【0251】
クリヤー塗料(Z)としては、自動車車体等の塗装用として公知の熱硬化性クリヤー塗料組成物をいずれも使用できる。該熱硬化性クリヤー塗料組成物としては、例えば、架橋性官能基を有する基体樹脂及び架橋剤を含有する有機溶剤型熱硬化性塗料組成物、水性熱硬化性塗料組成物、粉体熱硬化性塗料組成物等を挙げることができる。
【0252】
上記基体樹脂が有する架橋性官能基としては、例えば、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、シラノール基等を挙げることができる。基体樹脂の種類としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂などを挙げることができる。架橋剤としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、カルボキシル基含有化合物、カルボキシル基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂、エポキシ基含有化合物などを挙げることができる。
【0253】
クリヤー塗料(Z)の基体樹脂/架橋剤の組み合わせとしては、カルボキシル基含有樹脂/エポキシ基含有樹脂、水酸基含有樹脂/ポリイソシアネート化合物、水酸基含有樹脂/ブロック化ポリイソシアネート化合物、水酸基含有樹脂/メラミン樹脂等が好ましい。
【0254】
また、上記クリヤー塗料(Z)は、一液型塗料であってもよいし、二液型ウレタン樹脂塗料等の多液型塗料であってもよい。
【0255】
また、上記クリヤー塗料(Z)には、必要に応じて、透明性を阻害しない程度に着色顔料(D1)、光輝性顔料(D3)、染料等を含有させることができ、さらに体質顔料(D2)、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、増粘剤、防錆剤、表面調整剤等を適宜含有せしめることができる。
【0256】
クリヤー塗料(Z)は、水性ベース塗料(Y)の塗膜面に、それ自体既知の方法、例えば、エアレススプレー、エアスプレー、回転霧化塗装機などにより塗装することができ、塗装の際、静電印加を行ってもよい。
【0257】
クリヤー塗料(Z)は、通常、硬化膜厚で10〜80μm、好ましくは15〜60μm、より好ましくは20〜50μmの範囲内になるように塗装することができる。
【0258】
また、クリヤー塗料(Z)の塗装後は、必要に応じて、室温で1〜60分間程度のインターバルをおいたり、40〜80℃程度で1〜60分間程度プレヒートすることができる。
【0259】
4. 工程(4)
本発明の複層塗膜形成方法においては、上記工程(1)〜(3)で形成される未硬化の中塗り塗膜、未硬化のベース塗膜及び未硬化のクリヤー塗膜が、同時に加熱硬化せしめられる。
【0260】
上記中塗り塗膜、ベース塗膜及びクリヤー塗膜の硬化は、通常の塗膜の焼付け手段、例えば、熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱などにより、行うことができる。
【0261】
加熱温度は、80〜180℃が好ましく、100〜170℃がより好ましく、120〜160℃がさらに好ましい。
【0262】
また加熱時間は、10〜60分間が好ましく、15〜40分間がより好ましい。この加熱により、中塗り塗膜、ベース塗膜及びクリヤー塗膜の3層からなる複層塗膜を同時に硬化させることできる。
【実施例】
【0263】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものである。
【0264】
水酸基及びカルボキシル基含有樹脂(A3)の製造
水酸基及びカルボキシル基含有ポリエステル樹脂(A3−1)の製造
製造例1−1
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び水分離器を備えた反応容器に、アジピン酸88g、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物490g、イソフタル酸199g、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール336g、ネオペンチルグリコール189g及びトリメチロールプロパン287gを仕込み、160℃から230℃まで3時間かけて昇温させた後、縮合水を水分離器により留去させながら230℃で保持し、酸価が5mgKOH/g以下となるまで反応させた。この反応生成物に、無水トリメリット酸48gを添加し、170℃で30分間付加反応を行った後、50℃以下に冷却し、2−(ジメチルアミノ)エタノールを酸基に対して0.9当量添加し中和してから、脱イオン水を徐々に添加することにより、固形分濃度45%、pH7.2の水酸基及びカルボキシル基含有ポリエステル樹脂水分散液(A3−1−1)を得た。得られた水酸基及びカルボキシル基含有ポリエステル樹脂の酸価は24mgKOH/g、水酸基価は150mgKOH/g、数平均分子量は1,310であった。
【0265】
なお、得られた水酸基及びカルボキシル基含有ポリエステル樹脂の、炭素数4以上の直鎖アルキレン基の含有量は、下記の計算により算出した。
【0266】
炭素数4以上の直鎖アルキレン基のモル数(Wm)
=88/146(アジピン酸)
=0.603[mol]
縮合水の質量
=18×{2×199/166(イソフタル酸)+1×490/154(1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物)+2×88/146(アジピン酸)}
=122[g]
縮合水を除いた樹脂出来高(Wr)
=287(トリメチロールプロパン)+336(2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール)+189(ネオペンチルグリコール)+199(イソフタル酸)+490(1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物)+88(アジピン酸)+48(無水トリメリット酸)−122(縮合水)
=1515[g]
=1.515[kg]
炭素数4以上の直鎖アルキレン基の含有量
=炭素数4以上の直鎖アルキレン基のモル数(Wm)/縮合水を除いた樹脂出来高(Wr)
=0.603/1.515
=0.4[mol/kg(樹脂固形分)]
また、得られた水酸基及びカルボキシル基含有ポリエステル樹脂のベンゼン環とシクロヘキサン環の合計含有量は、下記の計算により算出した。
【0267】
ベンゼン環とシクロヘキサン環の合計モル数(Wn)
=199/166(イソフタル酸)+490/154(1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物)+48/192(無水トリメリット酸)
=4.63[mol]
ベンゼン環とシクロヘキサン環の合計含有量
=ベンゼン環とシクロヘキサン環の合計モル数(Wn)/縮合水を除いた樹脂出来高(Wr)
=4.63/1.515
=3.1[mol/kg(樹脂固形分)]。
【0268】
製造例1−2〜1−12
下記表1、2に示す配合で、製造例1−1と同様に処理して、固形分濃度45%及びpHが7.2の水酸基及びカルボキシル基含有ポリエステル樹脂水分散液(A3−1−2)〜(A3−1−12)を得た。得られた各水酸基及びカルボキシル基含有ポリエステル樹脂の、炭素数4以上の直鎖アルキレン基の含有量、ベンゼン環とシクロヘキサン環の合計含有量、酸価、水酸基価及び数平均分子量を、製造例1−1で得た水酸基及びカルボキシル基含有ポリエステル樹脂水分散液(A3−1−1)と併せて、下記表1、2に示す。
【0269】
【表1】

【0270】
【表2】

【0271】
水酸基及びカルボキシル基含有アクリル樹脂(A3−2)の製造
製造例1−13
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、プロピレングリコールモノプロピルエーテル30部を仕込み85℃に昇温後、スチレン10部、メチルメタクリレート30部、2−エチルヘキシルアクリレート15部、n−ブチルアクリレート11.5部、ヒドロキシエチルアクリレート30部、アクリル酸3.5部、プロピレングリコールモノプロピルエーテル10部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2部の混合物を4時間かけて滴下し、滴下終了後1時間熟成した。その後さらにプロピレングリコールモノプロピルエーテル5部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1部の混合物を1時間かけてフラスコに滴下し、滴下終了後1時間熟成した。さらに2−(ジメチルアミノ)エタノール3.03部を加え、脱イオン水を徐々に添加することにより、固形分濃度40%の水酸基及びカルボキシル基含有アクリル樹脂分散液(A3−2−1)を得た。得られた水酸基及びカルボキシル基含有アクリル樹脂の酸価は27mgKOH/g、水酸基価は145mgKOH/g、重量平均分子量は24,000であった。
【0272】
製造例1−14
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に脱イオン水70.7部、「アクアロンKH−10」(商品名、第一工業製薬(株)製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩エステルアンモニウム塩、有効成分97%)0.52部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、80℃に昇温した。次いで下記のモノマー乳化物(1)のうちの全量の1%量及び6%過硫酸アンモニウム水溶液5部を反応容器内に導入し80℃で15分間保持した。次いで、残りのモノマー乳化物(1)を3時間かけて、同温度に保持した反応容器内に滴下した。滴下終了後、1時間熟成した。次に、5% 2−(ジメチルアミノ)エタノール水溶液40部を反応容器に徐々に加えながら30℃まで冷却し、100メッシュのナイロンクロスで濾過することにより、濾液として、固形分濃度45%の水酸基及びカルボキシル基含有アクリル樹脂分散液(A3−2−2)を得た。得られた水酸基及びカルボキシル基含有アクリル樹脂の酸価は12mgKOH/g、水酸基価は43mgKOH/g、重量平均分子量は150,000であった。
モノマー乳化物(1):脱イオン水50部、スチレン10部、メチルメタクリレート40部、エチルアクリレート35部、n−ブチルメタクリレート3.5部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10部、アクリル酸1.5部、「アクアロンKH−10」1部及び過硫酸アンモニウム0.03部を混合攪拌して、モノマー乳化物(1)を得た。
【0273】
水分散性ポリイソシアネート化合物(B1)の製造
製造例1−15
tolonateHDT(NCO%=21.9%、ローディア社製ポリイソシアネート化合物)165部、酢酸ブチル24部、RhodafacRE610(ローディア社製、界面活性剤)13部及びトリエチルアミン3部をディスパーで5分間、100rpmで攪拌混合することにより水分散性ポリイソシアネート化合物(B1−3)を得た。
【0274】
水性中塗り塗料(X1)の製造
製造例1−16
製造例1−1で得た水酸基及びカルボキシル基含有ポリエステル樹脂水分散液(A3−1−1)44部(樹脂固形分20部)、ルチル型二酸化チタン(D1−1)(商品名「JR−806」テイカ(株)製)60部、カーボンブラック(D1−2)(商品名「カーボンMA−100」、三菱化学(株)製)1部、平均一次粒子径が0.5μmの硫酸バリウム粉末(D2−1)(商品名「バリエースB−35」、堺化学工業(株)製)15部、平均一次粒子径が4.8μmのタルク粉末(D2−2)(商品名「MICRO ACE S−3」日本タルク(株)製)3部及び脱イオン水11部を混合し、2−(ジメチルアミノ)エタノールでpH8.0に調整した後、ペイントシェーカーで30分間分散させて顔料分散ペーストを得た。
【0275】
次に、得られた顔料分散ペースト134部、製造例1−1で得た水酸基及びカルボキシル基含有ポリエステル樹脂水分散液(A3−1−1)98部、下記ジエステル化合物(C−1)10部及び疎水性溶媒(E−1)(2−エチル−1−ヘキサノール、20℃において100gの水に溶解する質量:0.1g)10部を均一に混合して、主剤を得た。
ジエステル化合物(C−1):ポリオキシエチレングリコールとn−ヘキサン酸のジエステル化合物。前記一般式(1)で、R及びRがペンチル基であり、Rがエチレン基であり、mが5である。分子量434。
【0276】
次いで、得られた主剤に、ポリイソシアネート化合物(B1−1)(商品名「バイヒジュールXP2570」、住化バイエルウレタン(株)製、アニオン性親水化水分散性ポリイソシアネート化合物、固形分100%、NCO含有率20.6%)26部、ウレタン会合型増粘剤(商品名「UH−752」、(株)ADEKA製)、2−(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を添加し、pH8.0、固形分48%、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度40秒の水性中塗り塗料(X1−1)を得た。また、得られた水性中塗り塗料(X1−1)を、硬化膜厚が30μmとなるように塗装し、80℃で10分間加熱した後の塗膜のゲル分率(G80)は40%であった。
【0277】
製造例1−17〜1−53、1−56〜1−60
表3〜9に示す配合に従って、実施例1−16と同様の方法により、pH8.0、固形分48%、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度40秒である水性中塗り塗料(X1−2)〜(X1−38)及び(X1−41)〜(X1−45)を得た。
【0278】
なお、製造例1−49では、水性中塗り塗料(X)を調製する際、さらにカルボジイミド基含有化合物(商品名「カルボジライトV−02」、日清紡(株)製、固形分40%)を25部加えた。また、製造例1−50では、水性中塗り塗料(X)を調製する際、さらにメラミン樹脂(商品名「サイメル327」日本サイテックインダストリーズ(株)製、固形分90%)を11部加えた。また、製造例1−53では、疎水性溶媒(E−1)の代わりに、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル(20℃において100gの水に溶解する質量は無限)を10部混合した。また、製造例1−59では、水性中塗り塗料(X1)を調製する際、さらにメラミン樹脂(商品名「サイメル327」日本サイテックインダストリーズ(株)製、固形分90%)を29部加えた。また、製造例1−60では、水性中塗り塗料(X1)を調製する際、さらにブロック化ポリイソシアネート化合物(商品名「バイヒジュールVP LS−2310」、住化バイエルウレタン(株)製、固形分38%)を68部加えた。
【0279】
また、表3〜9に示すポリイソシアネート化合物(B1−2)〜(B1−4)はそれぞれ以下の通りである。
【0280】
ポリイソシアネート化合物(B1−2):バイヒジュールVP LS−2319(住化バイエルウレタン社製、ノニオン性親水化水分散性ポリシソシアネート化合物、固形分100%、NCO含有率18.0%)。
【0281】
ポリイソシアネート化合物(B1−3):製造例1−15で得た水分散性ポリイソシアネート化合物。
【0282】
ポリイソシアネート化合物(B1−4):ディスモジュールXP−2410(住化バイエルウレタン社製、ポリイソシアネート化合物、固形分100%、NCO含有率24.0%)。
【0283】
また、表3〜9に示すジエステル化合物(C−2)〜(C−20)はそれぞれ以下の通りである。
【0284】
ジエステル化合物(C−2):ポリオキシエチレングリコールと2−エチルブタン酸とのジエステル化合物。前記一般式(1)で、R及びRがsec−ブチル基であり、Rがエチレン基であり、mが7である。分子量522。
【0285】
ジエステル化合物(C−3):ポリオキシエチレングリコールと2−エチルペンタン酸とのジエステル化合物。前記一般式(1)で、R及びRが2−エチルブチル基であり、Rがエチレン基であり、mが7である。分子量536。
【0286】
ジエステル化合物(C−4):ポリオキシエチレングリコールと安息香酸とのジエステル化合物。前記一般式(1)で、R及びRがベンゼン環であり、Rがエチレン基であり、mが7である。分子量536。
【0287】
ジエステル化合物(C−5):ポリオキシエチレングリコールとn−オクタン酸とのジエステル化合物。前記一般式(1)で、R及びRがヘプチル基であり、Rがエチレン基であり、mが7である。分子量578。
【0288】
ジエステル化合物(C−6):ポリオキシプロピレングリコールとn−オクタン酸とのジエステル化合物。前記一般式(1)で、R及びRがヘプチル基であり、Rがプロピレン基であり、mが7である。分子量676。
【0289】
ジエステル化合物(C−7):ポリオキシブチレングリコールとn−オクタン酸とのジエステル化合物。前記一般式(1)で、R及びRがヘプチル基であり、Rがブチレン基であり、mが7である。分子量774。
【0290】
ジエステル化合物(C−8):ポリオキシエチレングリコールと2−エチルヘキサン酸とのジエステル化合物。前記一般式(1)で、R及びRが2−エチルペンチル基であり、Rがエチレン基であり、mが7である。分子量578。
【0291】
ジエステル化合物(C−9):ポリオキシエチレングリコールとn−ノナン酸とのジエステル化合物。前記一般式(1)で、R及びRがオクチル基であり、Rがエチレン基であり、mが7である。分子量606。
【0292】
ジエステル化合物(C−10):ポリオキシエチレングリコールと2−エチルヘプタン酸とのジエステル化合物。前記一般式(1)で、R及びRが2−エチルヘキシル基であり、Rがエチレン基であり、mが7である。分子量606。
【0293】
ジエステル化合物(C−11):ポリオキシエチレングリコールとn−デカン酸とのジエステル化合物。前記一般式(1)で、R及びRがノニル基であり、Rがエチレン基であり、mが7である。分子量634。
【0294】
ジエステル化合物(C−12):ポリオキシエチレングリコールと2−エチルオクタン酸とのジエステル化合物。前記一般式(1)で、R及びRが2−エチルヘプチル基であり、Rがエチレン基であり、mが10である。分子量766。
【0295】
ジエステル化合物(C−13):ポリオキシエチレングリコールとn−ドデカン酸とのジエステル化合物。前記一般式(1)で、R及びRがウンデシル基であり、Rがエチレン基であり、mが7である。分子量690。
【0296】
ジエステル化合物(C−14):ポリオキシエチレングリコールとn−オクタデカン酸とのジエステル化合物。前記一般式(1)で、R及びRがヘプタデシル基であり、Rがエチレン基であり、mが7である。分子量858。
【0297】
ジエステル化合物(C−15):ポリオキシエチレングリコールと2−エチルヘキサン酸とのジエステル化合物。前記一般式(1)で、R及びRが2−エチルペンチル基であり、Rがエチレン基であり、mが3である。分子量402。
【0298】
ジエステル化合物(C−16):ポリオキシエチレングリコールと2−エチルヘキサン酸とのジエステル化合物。前記一般式(1)で、R及びRが2−エチルペンチル基であり、Rがエチレン基であり、mが5である。分子量490。
【0299】
ジエステル化合物(C−17):ポリオキシエチレングリコールと2−エチルヘキサン酸とのジエステル化合物。前記一般式(1)で、R及びRが2−エチルペンチル基であり、Rがエチレン基であり、mが10である。分子量710。
【0300】
ジエステル化合物(C−18):ポリオキシエチレングリコールと2−エチルヘキサン酸とのジエステル化合物。前記一般式(1)で、R及びRが2−エチルペンチル基であり、Rがエチレン基であり、mが25である。分子量1370。
【0301】
ジエステル化合物(C−19):ポリオキシエチレングリコールとn−ブタン酸とのジエステル化合物。前記一般式(1)で、R及びRがn−プロピル基であり、Rがエチレン基であり、mが7である。分子量466。
【0302】
ジエステル化合物(C−20):ポリオキシエチレングリコールとn−イコサン酸とのジエステル化合物。前記一般式(1)で、R及びRがノナデシル基であり、Rがエチレン基であり、mが7である。分子量914。
【0303】
製造例1−54
製造例1−1で得た水酸基及びカルボキシル基含有ポリエステル樹脂水分散液(A3−1−1)44部(樹脂固形分20部)、ルチル型二酸化チタン(D1−1)60部、カーボンブラック(D1−2)1部、平均一次粒子径が0.5μmの硫酸バリウム粉末(D2−1)15部、平均一次粒子径が4.8μmのタルク粉末(D2−2)3部及び脱イオン水11部を混合し、2−(ジメチルアミノ)エタノールでpH8.0に調整した後、ペイントシェーカーで30分間分散させて顔料分散ペーストを得た。
【0304】
次に、得られた顔料分散ペースト134部、製造例1−1で得た水酸基及びカルボキシル基含有ポリエステル樹脂水分散液(A3−1−1)98部、ジエステル化合物(C−8)10部及び疎水性溶媒(E−1)10部を均一に混合して、主剤を得た。
【0305】
次いで、得られた主剤に、前記ポリイソシアネート化合物(B1−1)26部、ポリアクリル酸系増粘剤(商品名「プライマルASE−60」ロームアンドハース社製)、2−(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を添加し、pH8.0、固形分48%、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度40秒の水性中塗り塗料(X1−39)を得た。
【0306】
製造例1−55
製造例1−1で得た水酸基及びカルボキシル基含有ポリエステル樹脂水分散液(A3−1−1)44部(樹脂固形分20部)、ルチル型二酸化チタン(D1−1)60部、カーボンブラック(D1−2)1部、平均一次粒子径が0.5μmの硫酸バリウム粉末(D2−1)15部、平均一次粒子径が4.8μmのタルク粉末(D2−2)3部及び脱イオン水11部を混合し、2−(ジメチルアミノ)エタノールでpH8.0に調整した後、ペイントシェーカーで30分間分散させて顔料分散ペーストを得た。
【0307】
次に、得られた顔料分散ペースト134部、製造例1−1で得た水酸基及びカルボキシル基含有ポリエステル樹脂水分散液(A3−1−1)98部、ジエステル化合物(C−8)10部及び疎水性溶媒(E−1)10部を均一に混合して、主剤を得た。
【0308】
次いで、得られた主剤に、ポリイソシアネート化合物(B1−1)26部、2−(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を添加し、pH8.0、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度40秒の水性中塗り塗料(X1−40)を得た。
【0309】
【表3】

【0310】
【表4】

【0311】
【表5】

【0312】
【表6】

【0313】
【表7】

【0314】
【表8】

【0315】
【表9】

【0316】
水性ベース塗料(Y)用アクリル樹脂エマルションの製造例
製造例1−61
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に脱イオン水130部、「アクアロンKH−10」0.52部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、80℃に昇温した。次いで下記のモノマー乳化物(1)のうちの全量の1%量及び6%過硫酸アンモニウム水溶液5.3部を反応容器内に導入し80℃で15分間保持した。その後、残りのモノマー乳化物(1)を3時間かけて、同温度に保持した反応容器内に滴下した。滴下終了後、1時間熟成を行なった。次いで、下記のモノマー乳化物(2)を1時間かけて滴下した。1時間熟成した後、5%ジメチルエタノールアミン水溶液40部を反応容器に徐々に加えながら30℃まで冷却し、100メッシュのナイロンクロスで濾過することにより、濾液として、平均粒子径100nm、固形分濃度30%のアクリル樹脂エマルション(AC)を得た。
【0317】
前記平均粒子径は、サブミクロン粒度分布測定装置「COULTER N4型」(ベックマン・コールター社製)を用いて、脱イオン水で希釈し20℃で測定した。
【0318】
得られたアクリル樹脂は、酸価が33mgKOH/g、水酸基価が25mgKOH/gであった。
【0319】
モノマー乳化物(1):脱イオン水42部、アクアロンKH−10 0.72部、メチレンビスアクリルアミド2.1部、スチレン2.8部、メチルメタクリレート16.1部、エチルアクリレート28部及びn−ブチルアクリレート21部を混合攪拌して、モノマー乳化物(1)を得た。
【0320】
モノマー乳化物(2):脱イオン水18部、アクアロンKH−10 0.31部、過硫酸アンモニウム0.03部、メタクリル酸5.1部、2−ヒドロキシエチルアクリレート5.1部、スチレン3部、メチルメタクリレート6部、エチルアクリレート1.8部及びn−ブチルアクリレート9部を混合攪拌して、モノマー乳化物(2)を得た。
【0321】
水性ベース塗料(Y)用ポリエステル樹脂の製造
製造例1−62
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び水分離器を備えた反応容器に、トリメチロールプロパン109部、1,6−ヘキサンジオール141部、ヘキサヒドロ無水フタル酸126部及びアジピン酸120部を仕込み、160〜230℃の間を3時間かけて昇温させた後、230℃で4時間縮合反応させた。次いで、得られた縮合反応生成物にカルボキシル基を付加するために、さらに無水トリメリット酸38.3部を加え、170℃で30分間反応させた後、2−エチル−1−ヘキサノール(20℃において100gの水に溶解する質量:0.1g)で希釈し、固形分濃度70%であるポリエステル樹脂溶液(PE1)を得た。得られたポリエステル樹脂は、酸価が46mgKOH/g、水酸基価が150mgKOH/g、重量平均分子量が6,400であった。
【0322】
製造例1−63
2−エチル−1−ヘキサノールの代わりに、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル(20℃において100gの水に溶解する質量:無限)を用いる以外は、製造例1−62と同様にして、ポリエステル樹脂溶液(PE2)を得た。
【0323】
光輝性顔料分散液の製造例
製造例1−64
攪拌混合容器内において、アルミニウム顔料ペースト(商品名「GX−180A」旭化成メタルズ(株)製、金属含有量74%)19部、2−エチル−1−ヘキサノール35部、リン酸基含有樹脂溶液(注1)8部及び2−(ジメチルアミノ)エタノール0.2部を均一に混合して、光輝性顔料分散液(P1)を得た。
(注1)リン酸基含有樹脂溶液:温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器にメトキシプロパノール27.5部、イソブタノール27.5部の混合溶剤を入れ、110℃に加熱した。次いで、スチレン25部、n−ブチルメタクリレート27.5部、分岐高級アルキルアクリレート(商品名「イソステアリルアクリレート」大阪有機化学工業(株)製)20部、4−ヒドロキシブチルアクリレート7.5部、リン酸基含有重合性モノマー(注2)15部、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート12.5部、イソブタノール10部、t−ブチルパーオキシオクタノエート4部からなる混合物121.5部を4時間かけて上記混合溶剤に加え、さらにt−ブチルパーオキシオクタノエート0.5部とイソプロパノール20部からなる混合物を1時間かけて滴下した。その後、1時間攪拌しながら熟成して固形分濃度50%のリン酸基含有樹脂溶液を得た。リン酸基含有樹脂のリン酸基による酸価は83mgKOH/g、水酸基価は29mgKOH/g、重量平均分子量は10,000であった。
(注2)リン酸基含有重合性モノマー:温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器にモノブチルリン酸57.5部及びイソブタノール41部を入れ、90℃に昇温した後、グリシジルメタクリレート42.5部を2時間かけて滴下した。その後、さらに1時間攪拌しながら熟成した後、イソプロパノ−ル59部を加えて、固形分濃度50%のリン酸基含有重合性モノマー溶液を得た。得られたモノマーのリン酸基による酸価は285mgKOH/gであった。
【0324】
製造例1−65
2−エチル−1−ヘキサノールの代わりに、エチレングリコールモノn−ブチルエーテルを用いる以外は、製造例1−64と同様にして、光輝性顔料分散液(P2)を得た。
【0325】
水性ベース塗料(Y)の製造
製造例1−66
製造例1−61で得たアクリル樹脂エマルション(AC)100部、製造例1−62で得たポリエステル樹脂溶液(PE1)57部、製造例1−64で得た光輝性顔料分散液(P1)62部及びメラミン樹脂(商品名「サイメル325」日本サイテックインダストリーズ(株)製、固形分80%)37.5部を均一に混合し、更に、ポリアクリル酸系増粘剤(商品名「プライマルASE−60」ロームアンドハース社製)、2−(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を加えてpH8.0、固形分25%、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度40秒の水性ベース塗料(Y−1)を得た。
【0326】
製造例1−67
製造例1−61で得たアクリル樹脂エマルション(AC)100部、製造例1−63で得たポリエステル樹脂溶液(PE2)57部、製造例1−65で得た光輝性顔料分散液(P2)62部及びメラミン樹脂(商品名「サイメル325」日本サイテックインダストリーズ社製、固形分80%)37.5部を均一に混合し、更に、ポリアクリル酸系増粘剤(商品名「プライマルASE−60」ロームアンドハース社製)、2−(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を加えてpH8.0、固形分25%、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度40秒の水性ベース塗料(Y−2)を得た。
【0327】
試験板の作製
製造例1−16〜1−60で得た水性中塗り塗料(X1−1)〜(X1−45)、及び上記製造例1−66及び1−67で得た水性ベース塗料(Y−1)及び(Y−2)を用いて、以下のようにしてそれぞれ試験板を作製し、評価試験を行なった。
【0328】
(試験用被塗物の作製)
リン酸亜鉛化成処理を施した冷延鋼板に、カチオン電着塗料(商品名「エレクロンGT−10」関西ペイント(株)製)を硬化膜厚20μmとなるように電着塗装し、170℃で30分間加熱して硬化させて試験用被塗物とした。
【0329】
実施例1−1
上記試験用被塗物に、前記製造例1−16で得た水性中塗り塗料(X1−1)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、硬化膜厚25μmとなるように静電塗装し、2分間放置後、80℃で3分間プレヒートを行なった。次いで、該未硬化の中塗り塗膜上に製造例1−66で得た水性ベース塗料(Y−1)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、硬化膜厚15μmとなるように静電塗装し、2分間放置後、80℃で3分間プレヒートを行なった。次いで、該未硬化のベース塗膜上にアクリル樹脂系溶剤型上塗りクリヤー塗料(商品名「マジクロンKINO−1210」関西ペイント(株)製、以下「クリヤー塗料(Z−1)」ということがある)を硬化膜厚35μmとなるように静電塗装し、7分間放置した後、140℃で30分間加熱して、該中塗り塗膜、ベース塗膜及びクリヤー塗膜を同時に硬化させることにより試験板を作製した。
【0330】
実施例1−2〜1−41、比較例1−1〜1−5
実施例1−1において、製造例1−16で得た水性中塗り塗料(X1−1)を下記表10〜14に示す水性中塗り塗料(X1−2)〜(X1−45)のいずれかに変更し、製造例1−66で得た水性ベース塗料(Y−1)を下記表10〜14に示す水性ベース塗料(Y−1)又は製造例1−67で得た水性ベース塗料(Y−2)とする以外は、実施例1−1と同様にして試験板を作製した。
【0331】
評価試験
上記実施例1−1〜1−41及び比較例1−1〜1−5で得られた各試験板について、下記の試験方法により評価を行なった。評価結果を下記表10〜14に示す。
【0332】
(試験方法)
平滑性:商品名「Wave Scan」(BYK Gardner社製)によって測定されるLong Wave(LW)値を用いて評価した。Long Wave(LW)値が小さいほど塗面の平滑性が高いことを示す。なお、表10〜14中の「初期」は、水性中塗り塗料(X1)を製造直後に塗装した場合の平滑性を示す。また、「貯蔵後」は、主剤を製造後30℃で30日間貯蔵した後、他の原料を混合して水性中塗り塗料(X1)を製造し、塗装した場合の平滑性を示す。
【0333】
鮮映性:上記「Wave Scan」によって測定されるShort Wave(SW)値を用いて評価した。Short Wave(SW)値が小さいほど塗面の鮮映性が高いことを示す。
【0334】
フリップフロップ性:角度を変えて各試験板を目視し、下記基準でフリップフロップ性を評価した。
A:目視の角度によるメタリック感の変化が顕著である(極めて優れたフリップフロップ性を有する)。
B:目視の角度によるメタリック感の変化が大きい(フリップフロップ性に優れる)。
C:目視の角度によるメタリック感の変化がやや小さい(フリップフロップ性がやや劣る)。
D:目視の角度によるメタリック感の変化が小さい(フリップフロップ性が劣る)。
【0335】
メタリックムラ:各試験板を目視にて観察し、メタリックムラの発生程度を下記基準で評価した。
A:メタリックムラがほとんど認められず、極めて優れた塗膜外観を有する。
B:メタリックムラがわずかに認められるが、優れた塗膜外観を有する。
C:メタリックムラが認められ、塗膜外観がやや劣る。
D:メタリックムラが多く認められ、塗膜外観が劣る。
【0336】
耐水性:試験板を40℃の温水に240時間浸漬し、引き上げ、20℃で12時間乾燥した後、試験板の複層塗膜を素地に達するようにカッターで格子状に切り込み、大きさ2mm×2mmのゴバン目を100個作った。続いて、その表面に粘着セロハンテープを貼着し、20℃においてそのテープを急激に剥離した後のゴバン目塗膜の残存状態を調べた。
A:ゴバン目塗膜が100個残存し、カッターの切り込みの縁において塗膜の小さなフチカケが生じていない。
B:ゴバン目塗膜が100個残存するが、カッターの切り込みの縁において塗膜の小さなフチカケが生じている。
C:ゴバン目塗膜が90〜99個残存する。
D:ゴバン目塗膜の残存数が89個以下である。
【0337】
耐チッピング性:飛石試験機(商品名「JA−400型」スガ試験機(株)製)の試片保持台に試験板を設置し、−20℃において、試験板から30cm離れた所から0.392MPa(4kgf/cm )の圧縮空気により、粒度7号の花崗岩砕石50gを45度の角度で試験板に衝突させた。その後、得られた試験板を水洗して乾燥し、塗面に布粘着テープ(ニチバン(株)製)を貼着した。そして、上記テープを剥離し、塗膜のキズの発生程度等を目視で観察し評価した。
A:キズの大きさが極めて小さく、電着面や素地の鋼板が露出していない。
B:キズの大きさが小さく、電着面や素地の鋼板が露出していない。
C:キズの大きさは小さいが、電着面や素地の鋼板が露出している。
D:キズの大きさはかなり大きく、素地の鋼板も大きく露出している。
【0338】
【表10】

【0339】
【表11】

【0340】
【表12】

【0341】
【表13】

【0342】
【表14】

【0343】
水性中塗り塗料(X2)の製造
製造例2−1
製造例1−1で得た水酸基及びカルボキシル基含有ポリエステル樹脂水分散液(A3−1−1)44部(樹脂固形分20部)、ルチル型二酸化チタン(D1−1)(商品名「JR−806」、テイカ(株)製)60部、カーボンブラック(D1−2)(商品名「カーボンMA−100」、三菱化学(株)製)1部、平均一次粒子径が0.5μmの硫酸バリウム粉末(D2−1)(商品名「バリエースB−35」堺化学工業(株)製)15部、平均一次粒子径が4.8μmのタルク粉末(D2−2)(商品名「MICRO ACE S−3」、日本タルク(株)製)3部及び脱イオン水11部を混合し、2−(ジメチルアミノ)エタノールでpH8.0に調整した後、ペイントシェーカーで30分間分散させて顔料分散ペーストを得た。
【0344】
次に、得られた顔料分散ペースト134部、製造例1−1で得た水酸基及び水酸基及びカルボキシル基含有ポリエステル樹脂水分散液(A3−1−1)89部、製造例1−16で用いたジエステル化合物(C−1)10部及び疎水性溶媒(E−1)(2−エチル−1−ヘキサノール、20℃において100gの水に溶解する質量:0.1g)10部を均一に混合して、主剤を得た。
【0345】
次いで、得られた主剤に、ポリカルボジイミド化合物(B2−1)(商品名「カルボジライトSV−02」日清紡(株)製、固形分40%)38部、メラミン樹脂(B3−1)(メチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂、メトキシ基とブトキシ基のモル比がメトキシ基/ブトキシ基=70/30、重量平均分子量700、固形分80%)19部、ウレタン会合型増粘剤(商品名「UH−752」、(株)ADEKA製)、2−(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を添加し、pH8.0、固形分48%、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度40秒の水性中塗り塗料(X2−1)を得た。また、得られた水性中塗り塗料(X2−1)の、硬化膜厚が30μmとなるように塗装し、80℃で10分間加熱した後の塗膜のゲル分率(G80)は32%であった。
【0346】
製造例2−2〜2−36、2−39〜2−43
表15〜21に示す配合に従って、製造例2−1と同様の方法により、pH8.0、固形分48%、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度40秒である水性中塗り塗料(X2−2)〜(X2−36)及び(X2−39)〜(X2−43)を得た。
【0347】
なお、製造例2−36では、疎水性溶媒(E−1)の代わりに、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル(20℃において100gの水に溶解する質量は無限)を10部混合した。また、製造例2−43では、水性中塗り塗料(X2)を調製する際、さらにブロック化ポリイソシアネート化合物(商品名「バイヒジュールVPLS2310」住化バイエルウレタン(株)製、固形分38%)を68部加えた。
【0348】
また、表19に示すポリカルボジイミド化合物(B2−2)は以下の通りである。
【0349】
ポリカルボジイミド化合物(B2−2):カルボジライトV−02(日清紡(株)製、固形分40%)。
【0350】
また、表15〜21に示すジエステル化合物(C−2)〜(C−20)は、前述の通りである。
【0351】
また、表20に示すメラミン樹脂(B3−2)及び(B3−3)は以下の通りである。
【0352】
メラミン樹脂(B3−2):メチルエーテル化メラミン樹脂、メトキシ基とブトキシ基のモル比がメトキシ基/ブトキシ基=100/0、重量平均分子量650、固形分90%。
【0353】
メラミン樹脂(B3−3):メチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂、メトキシ基とブトキシ基のモル比がメトキシ基/ブトキシ基=55/45、重量平均分子量1200、固形分70%。
【0354】
製造例2−37
製造例1−1で得た水酸基及びカルボキシル基含有ポリエステル樹脂水分散液(A3−1−1)44部(樹脂固形分20部)、ルチル型二酸化チタン(D1−1)60部、カーボンブラック(D1−2)1部、平均一次粒子径が0.5μmの硫酸バリウム粉末(D2−1)15部、平均一次粒子径が4.8μmのタルク粉末(D2−2)3部及び脱イオン水11部を混合し、2−(ジメチルアミノ)エタノールでpH8.0に調整した後、ペイントシェーカーで30分間分散させて顔料分散ペーストを得た。
【0355】
次に、得られた顔料分散ペースト134部、製造例1−1で得た水酸基及びカルボキシル基含有ポリエステル樹脂水分散液(A3−1−1)89部、ジエステル化合物(C−8)10部及び疎水性溶媒(E−1)10部を均一に混合して、主剤を得た。
【0356】
次いで、得られた主剤に、ポリカルボジイミド化合物(B2−1)38部、メラミン樹脂(B3−1)19部、ポリアクリル酸系増粘剤(商品名「プライマルASE−60」ロームアンドハース社製)、2−(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を添加し、pH8.0、固形分48%、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度40秒の水性中塗り塗料(X2−37)を得た。
【0357】
製造例2−38
製造例1−1で得た水酸基及びカルボキシル基含有ポリエステル樹脂水分散液(A3−1−1)44部(樹脂固形分20部)、ルチル型二酸化チタン(D1−1)60部、カーボンブラック(D1−2)1部、平均一次粒子径が0.5μmの硫酸バリウム粉末(D2−1)15部、平均一次粒子径が4.8μmのタルク粉末(D2−2)3部及び脱イオン水11部を混合し、2−(ジメチルアミノ)エタノールでpH8.0に調整した後、ペイントシェーカーで30分間分散させて顔料分散ペーストを得た。
【0358】
次に、得られた顔料分散ペースト134部、製造例1−1で得た水酸基及びカルボキシル基含有ポリエステル樹脂水分散液(A3−1−1)89部、ジエステル化合物(C−8)10部及び疎水性溶媒(E−1)10部を均一に混合して、主剤を得た。
【0359】
次いで、得られた主剤に、ポリカルボジイミド化合物(B2−1)38部、メラミン樹脂(B3−1)19部、2−(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を添加し、pH8.0、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度40秒の水性中塗り塗料(X2−38)を得た。
【0360】
【表15】

【0361】
【表16】

【0362】
【表17】

【0363】
【表18】

【0364】
【表19】

【0365】
【表20】

【0366】
【表21】

【0367】
試験板の作製
製造例2−1〜2−43で得た水性中塗り塗料(X2−1)〜(X2−43)、及び上記製造例1−66及び1−67で得た水性ベース塗料(Y−1)及び(Y−2)を用いて、以下のようにしてそれぞれ試験板を作製し、評価試験を行なった。
【0368】
(試験用被塗物の作製)
リン酸亜鉛化成処理を施した冷延鋼板に、カチオン電着塗料(商品名「エレクロンGT−10」関西ペイント(株)製)を硬化膜厚20μmとなるように電着塗装し、170℃で30分間加熱して硬化させて試験用被塗物とした。
【0369】
実施例2−1
上記試験用被塗物に、前記製造例2−1で得た水性中塗り塗料(X2−1)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、硬化膜厚25μmとなるように静電塗装し、2分間放置後、80℃で3分間プレヒートを行なった。次いで、該未硬化の中塗り塗膜上に製造例1−66で得た水性ベース塗料(Y−1)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、硬化膜厚15μmとなるように静電塗装し、2分間放置後、80℃で3分間プレヒートを行なった。次いで、該未硬化のベース塗膜上にアクリル樹脂系溶剤型上塗りクリヤー塗料(商品名「マジクロンKINO−1210」関西ペイント(株)製、以下「クリヤー塗料(Z−1)」ということがある)を硬化膜厚35μmとなるように静電塗装し、7分間放置した後、140℃で30分間加熱して、該中塗り塗膜、ベース塗膜及びクリヤー塗膜を同時に硬化させることにより試験板を作製した。
【0370】
実施例2−2〜2−39、比較例2−1〜2−5
実施例2−1において、製造例2−1で得た水性中塗り塗料(X2−1)を下記表22〜26に示す水性中塗り塗料(X2−2)〜(X2−43)のいずれかに変更し、製造例1−66で得た水性ベース塗料(Y−1)を下記表22〜26に示す水性ベース塗料とする以外は、実施例2−1と同様にして試験板を作製した。
【0371】
評価試験
上記実施例2−1〜2−39及び比較例2−1〜2−5で得られた各試験板の平滑性、鮮映性、フリップフロップ性、メタリックムラ、耐水性、耐チッピング性について、上記と同様の方法により評価を行なった。評価結果を下記表22〜26に示す。
【0372】
【表22】

【0373】
【表23】

【0374】
【表24】

【0375】
【表25】

【0376】
【表26】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程(1)〜(4);
工程(1):被塗物上に、水性中塗り塗料(X)を塗装して中塗り塗膜を形成する工程、
工程(2):工程(1)で形成される未硬化の中塗り塗膜上に、水性ベース塗料(Y)を塗装してベース塗膜を形成する工程、
工程(3):工程(2)で形成される未硬化のベース塗膜上に、クリヤー塗料(Z)を塗装してクリヤー塗膜を形成する工程、及び
工程(4):工程(1)〜(3)で形成される未硬化の中塗り塗膜、未硬化のベース塗膜及び未硬化のクリヤー塗膜を同時に加熱硬化させる工程、
を順次行う複層塗膜形成方法であって、
水性中塗り塗料(X)が、基体樹脂(A)、硬化剤(B)ならびに、下記一般式(1):
【化1】

(式中、R及びRは、独立して炭素数4〜18の炭化水素基を表し、Rは炭素数2〜4のアルキレン基を表し、mは3〜25の整数を表す。m個のオキシアルキレン単位(R−O)は、互いに同じであっても異なっていてもよい。)
で表されるジエステル化合物(C)を含有し、
前記硬化剤(B)が、ポリイソシアネート化合物(B1)及び/又はポリカルボジイミド化合物(B2)である、
複層塗膜形成方法。
【請求項2】
基体樹脂(A)が水酸基含有樹脂(A1)であり、硬化剤(B)がポリイソシアネート化合物(B1)である請求項1に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項3】
水酸基含有樹脂(A1)が、水酸基含有ポリエステル樹脂(A1−1)及び/又は水酸基含有アクリル樹脂(A1−2)である請求項2に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項4】
水酸基含有ポリエステル樹脂(A1−1)が、分子中に炭素数4以上の直鎖アルキレン基を0.3〜2.5mol/kg(樹脂固形分)含有するポリエステル樹脂である請求項3に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項5】
水酸基含有ポリエステル樹脂(A1−1)が、分子中にベンゼン環及び/又はシクロヘキサン環を含有し、且つそれらの合計含有量が1.5〜4.0mol/kg(樹脂固形分)の範囲内にあるポリエステル樹脂である請求項3に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項6】
ポリイソシアネート化合物(B1)が、水分散性ポリイソシアネート化合物である請求項2に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項7】
水酸基含有樹脂(A1)、ポリイソシアネート化合物(B1)及びジエステル化合物(C)の配合割合が、水酸基含有樹脂(A1)及びポリイソシアネート化合物(B1)の合計固形分100質量部を基準として、水酸基含有樹脂(A1)が30〜95質量部、ポリイソシアネート化合物(B1)が5〜70質量部、ジエステル化合物(C)が1〜30質量部である請求項2に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項8】
基体樹脂(A)がカルボキシル基含有樹脂(A2)であり、硬化剤(B)がポリカルボジイミド化合物(B2)である請求項1に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項9】
カルボキシル基含有樹脂(A2)が、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(A2−1)及び/又はカルボキシル基含有アクリル樹脂(A2−2)である請求項8に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項10】
カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(A2−1)が、分子中に炭素数4以上の直鎖アルキレン基を0.3〜2.5mol/kg(樹脂固形分)含有するポリエステル樹脂である請求項9に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項11】
カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(A2−1)が、分子中にベンゼン環及び/又はシクロヘキサン環を含有し、且つそれらの合計含有量が1.5〜4.0mol/kg(樹脂固形分)の範囲内にあるポリエステル樹脂である請求項9に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項12】
カルボキシル基含有樹脂(A2)、ポリカルボジイミド化合物(B2)及びジエステル化合物(C)の配合割合が、カルボキシル基含有樹脂(A2)及びポリカルボジイミド化合物(B2)の合計固形分100質量部を基準として、カルボキシル基含有樹脂(A2)が30〜95質量部、ポリカルボジイミド化合物(B2)が5〜70質量部、ジエステル化合物(C)が1〜30質量部である請求項8に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項13】
基体樹脂(A)がカルボキシル基及び水酸基含有樹脂(A3)、硬化剤(B)がポリカルボジイミド化合物(B2)であり、さらにアミノ樹脂(B3)を含有する水性中塗り塗料(X)である請求項1に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項14】
アミノ樹脂(B3)がメラミン樹脂(B3−1)であり、該メラミン樹脂(B3−1)がメトキシ基とブトキシ基とのモル比がメトキシ基/ブトキシ基=90/10〜50/50の範囲内であるメチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂である請求項13に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項15】
水性中塗り塗料(X)が、さらに着色顔料(D1)及び/又は体質顔料(D2)を含有し、かつ、該着色顔料(D1)及び体質顔料(D2)の合計含有量が、基体樹脂(A)及び硬化剤(B)の合計固形分100質量部を基準として、40〜180質量部の範囲内である請求項1に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項16】
水性ベース塗料(Y)が光輝性顔料(D3)を含有する塗料である請求項1に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項17】
被塗物が、電着塗料によって下塗り塗膜が形成された車体である請求項1に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項18】
請求項1に記載の方法により複層塗膜が形成された物品。
【請求項19】
基体樹脂(A)、硬化剤(B)ならびに、下記一般式(1):
【化1】

(式中、R及びRは、独立して炭素数4〜18の炭化水素基を表し、Rは炭素数2〜4のアルキレン基を表し、mは3〜25の整数を表す。m個のオキシアルキレン単位(R−O)は、互いに同じであっても異なっていてもよい。)
で表されるジエステル化合物(C)を含有し、
前記硬化剤(B)が、ポリイソシアネート化合物(B1)及び/又はポリカルボジイミド化合物(B2)である、
複層塗膜形成用の水性中塗り塗料。


【公表番号】特表2011−530393(P2011−530393A)
【公表日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−545300(P2010−545300)
【出願日】平成21年8月10日(2009.8.10)
【国際出願番号】PCT/JP2009/064370
【国際公開番号】WO2010/018872
【国際公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】