説明

複数のデータバス区間を有する印刷システム

【課題】印刷インキを記録担体に塗布するための少なくとも2つ印刷ユニットを備える印刷システムを提供することである。
【解決手段】バススイッチ(13)は各線路に対して、一方のデータバス区間(11,12)の1つの線路を他方のデータバス区間(11,12)の対応する線路と接続するためにそれぞれ1つのデータスイッチ(17)を有し、さらに各データバス区間(11,12)に対してそれぞれ1つの終端抵抗(18)を有し、該終端抵抗(18)はそれぞれ1つの終端スイッチ(19)と直列に接続されており、該終端スイッチ(19)は前記データスイッチ(17)と、すべての終端スイッチ(19)が開放されかつすべてのデータスイッチ(17)が閉成されるか、または、すべての終端スイッチ(19)が閉成されかつすべてのデータスイッチ(17)が開放されるように接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷システムに関する。とりわけ本発明は、印刷インキを記録担体に塗布するための印刷ユニットを少なくとも2つ有する印刷システムに関するものであり、各印刷ユニットはそれぞれマイクロプロセッサ制御部を備える複数の機器を有し、印刷ユニットのマイクロプロセッサ制御部はそれぞれデータバスで相互に接続されている。
【背景技術】
【0002】
機器を制御するための典型的なデータバスはCANバスである。省略記号CANは、Controller Area Networkに対するものである。CANバスにより、個々のバス加入者、すなわち機器の電気モジュールまたは構成群、たとえば印刷装置が相互に接続される。CANバスは、単純で安価なシリアルバスである。これによりデータを非常に簡単に、しかしマイクロプロセッサの周辺で比較的低い伝送速度で伝送することができる。データを伝送するためにCANプロトコルによれば、データブロックと識別子からなる複数のテレグラムにデータが分割される。
【0003】
CANバスまたは対応するプロトコルは、非特許文献1に詳細に説明されている。CANバスは通例、種々の2芯線路により実現される。CANデータテレグラムは、スタートビット、11ビットの識別子、別の7ビットの制御ビット、0から8のデータバイト、そしてこのデータバイトに続く別の制御ビットを含む。CANデータテレグラムの構造は、CAN仕様のバージョンに応じて異なることがある。
【0004】
仲裁はビットごとに無制御で行われる。すなわち、データバスで他の送信より優先度で優先される送信器は、自分のテレグラムを再度送信する必要がない。仲裁のために、データバイトにより設けられた制御ビットが使用され、仲裁は実質的に識別子のビットによって行われる。非特許文献2から、識別子付与の形式をCANベースのシステムの基本構造エレメントと呼ぶことのできることが分かる。なぜならCANメッセージの識別子がその優先度と待ち時間を規定するからである。さらに識別子とCANメッセージとの割当てのスキームが最終的にネットワークの通信構造を決定する。
【0005】
いわゆるCANopenネットワークではいわゆる「最小機器構築」により、識別子に対する機器ベースの設定スキームが設けられており、この設定スキームが上位の制御機器(マスタ)と127のスレーブ機器との間のデータ交換を可能にする。このようなCANopenネットワークの最大加入者数は128である。この加入者数は、11ビットの識別子により制限されている。
【0006】
非特許文献3には、11ビットの識別子を有する標準フレームのデータテレグラムと、29ビットの識別子を有する拡張フレームのデータテレグラムとの相違が詳細に述べられている。
【0007】
特許文献1から、とりわけCANバス用の2芯線路の線路接続のための装置が公知である。この装置は、それぞれ2つのデータ線路の間に2つの終端抵抗を有し、第1と第2の終端抵抗は直列に接続されている。2つの終端抵抗の間には、制御倫理回路によって制御されるスイッチが設けられている。この制御論理回路はマイクロコントローラと接続されており、対応する信号をマイクロコントローラから受け取ると、制御論理回路は終端抵抗間に配置されたスイッチを操作することができる。マイクロコントローラにより、終端抵抗のコンフィギュレーションをいつでも変更することができる。択一的に、ケーブル束プラグにあるブリッジにより、終端抵抗をハードウエア的に適合することもできる。
【0008】
特許文献2から、データバス、たとえばCANバス用の分岐装置が公知である。この分岐装置により、スター状バストポロジーで個々の分岐路を分離・結合することができる。このことは、データバスの駆動中に可能である。この分岐装置は、インタフェースと、送受信ユニットと、1つまたは複数の終端抵抗を有する。
【0009】
特許文献3から、バス加入者を既存のCANバスに接続するための方法が公知である。この方法では、新規のバス加入者の接続時に一時的加入者識別番号が、それぞれのバス加入者の連続番号に基づいて求められ、この一時的加入者識別番号がバスメッセージに対する識別子として使用され、このバスメッセージにより最終的な加入者識別番号が設定される。最終的な加入者識別番号は連続番号より短く、したがって最終的な動作では対応する短い識別子を備えるバスメッセージが使用される。
【0010】
本願では、バスケーブルを有する新規のバス加入者を既存のデータバスに接続するだけで、データバスが正しい反復インピーダンスと自動的に接続されるデータバスシステムが考察される。
【0011】
高性能印刷機のような複雑な機器は通例、モジュールで構成されている。ここで個々のモジュールまたは構成群は、できるだけ簡単に追加または除去できるようにすべきである。これらのモジュールと構成群は、場合により存在するデータバスにも簡単に接続でき、または分離できるようにすべきである。
【0012】
特許文献4から、セグメント化されたCANバスが公知であり、このCANバスでは個々のノードにアドレスが割り当てられている。これにより自動的にバストポロジーを求めることができる。したがってノードには、アドレスを記憶することができ、アドレスの問い合わせの応答することのできる電子構成素子を設けなければならない。
【0013】
IXXAT Inc.社, 120 Bedford Center Road, Bedford, NH 03110, U.S.A., www.ixxat.comから、市販名「CAN-CR200 Modular ISO 11898-2 CAN Repeater」の名前で、いわゆるCANリピータスイッチ素子が販売されている。
【0014】
これはCANバスを接続するためのスイッチ素子であり、物理的に別個に構成されたCANバスを介してデータを伝送することができる。このスイッチ素子は個々のCANバスを導電的に分離するが、論理的には相互に結合する。しかしこの種のスイッチ素子の欠点は、CANバスで可能な最大データ伝送速度が低下することである。最大可能データ伝送速度でデータバスを使用すべき場合での適用には、この種のスイッチ素子は適しない。高性能印刷機システムでは、接続すべき機器の数が多いので高いデータ伝送速度が必要であり、したがって従来のスイッチ素子を使用することは意味がないと思われる。
【0015】
特許文献5にはタンデム印刷システムが記載されており、2つの印刷機を選択的に個別にまたは共通に駆動することができる。そのために印刷機の少なくとも1つがスイッチオン操作ユニットを有し、これにより選択的に印刷機の少なくとも1つを個別運転のために、または両方の印刷機をタンデム運転のためにスイッチオンすることができる。
【0016】
上記の刊行物および特許願の内容は、本明細書に参照として取り入れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】WO2004/062219A1
【特許文献2】WO02/056545A2
【特許文献3】WO2007/12229A2
【特許文献4】US6865460B2
【特許文献5】本出願人により同時に出願された出願番号2011−0105DE、名称「タンデム印刷システム、タンデム印刷システムの制御方法、ならびにコンピュータシステムとコンピュータプログラム製品」の特許願
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】"CAN -Controller Area Network, Grundlagen und Praxis", W. Lawrenz (Hsg.), 第2版, 1997 (ISBN 3-7785-2575-1) pp.86 - 95
【非特許文献2】Etschberger, Konrad著, "Identifier zuordnen und Nachrichten austauschen", (ISBN 3-8259-1902-1) 第1版, 1998, PRAXIS Profiline - Controller Area Network (CAN), pp. 40 - 43
【非特許文献3】Zeltwanger, Holger著 "Jeder darf Senden und alle Empfangen; CAN-Kommunikation und Bus-Arbitrierung", (ISBN 3-8251-1902-1) 1. Auflage, 1998, Praxis Profiline -Controller Area Network (CAN), pp. 5 -7
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の基礎とする課題は、印刷インキを記録担体に塗布するための少なくとも2つ印刷ユニットを備える印刷システムを提供することである。ここでは、各印刷ユニットがそれぞれマイクロプロセッサ制御部を備える複数の機器を有し、印刷ユニットのマイクロプロセッサ制御部はそれぞれデータバスと相互接続されており、印刷ユニットが共通にも、相互に独立しても運転できるように印刷システムを構成すべきである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この課題は本発明により、請求項1の特徴を備える印刷システムによって解決される。
【0021】
本発明の有利な構成は、従属請求項に記載されている。
【0022】
本発明の印刷システムは、印刷インキを記録担体に塗布するための少なくとも2つの印刷ユニットを有する。各印刷ユニットは、それぞれマイクロプロセッサ制御部を備える複数の機器を有し、印刷ユニットのマイクロプロセッサ制御部は、それぞれデータバス区間と相互接続されている。各データバス区間は複数のデータ線路を有する。2つの印刷ユニットの少なくとも2つのデータバス区間はバススイッチにより互いに接続されている。バススイッチは、各データ線路ごとにそれぞれ1つのデータスイッチを、データバス区間のそれぞれのデータ線路を別のデータバス区間の対応するデータ線路に接続するために有し、それぞれ1つの終端抵抗を各データバス区間ごとに有する。ここで終端抵抗は、それぞれの終端スイッチと直列に接続されており、すべての終端スイッチが開放されかつすべてのデータスイッチが閉成されるか、または、すべての終端スイッチが閉成されかつすべてのデータスイッチが開放されるように終端スイッチはデータスイッチと接続される。
【0023】
バススイッチが、データバス区間のそれぞれのデータ線路を別のデータバス区間の対応するデータ線路と接続するためのデータスイッチを有することにより、本発明では、データスイッチの開放の際に分離されるデータバス区間が共通のデータバスに接続される。これにより、それぞれのデータバス形式により可能な最大伝送速度を、本発明の印刷システムでも達成することができる。
【0024】
データスイッチが開放すると終端スイッチが閉成され、したがってデータスイッチにより分離されたデータバス区間が対応する終端抵抗により正しく終端され、このデータバス区間を別個のデータバスとして運転することができる。これにより、別個のデータバス区間による正しい動作も保証される。
【0025】
データバススイッチは好ましくは機械的スイッチ、とりわけリレーであり、データスイッチが閉成されているときに2つのデータバス区間のデータ線路が物理的に相互に接続される。
【0026】
したがって本発明の印刷システムは、2つのデータバス区間がそれぞれ別個のデータバスを形成するように運転することができ、これにより、2つの印刷ユニットを相互に完全に独立して駆動することができる。本発明の印刷システムは、2つのデータバス区間が共通のデータバスを形成するように運転することもできる。したがって2つの印刷ユニットは、共通に運転するために共通のデータバスを介して同時に制御される。後者は、2つの印刷ユニットが同じ記録担体、とりわけ同じ記録担体ウェブを印刷するために使用される場合に有利である。この場合、一方の印刷ユニットが記録担体の表面を、他方の印刷ユニットが裏面を印刷するために使用される。
【0027】
好ましくは印刷システムは、マイクロプロセッサの設けられた機器が、印刷システムの記録担体の駆動のために用いられるよう構成されている。とりわけ、記録担体の搬送速度を決定する機器が、マスタとして初期化されたマイクロプロセッサ制御部を有することができる。このマスタマイクロプロセッサシステムは、別の機器が記録担体を搬送すべき速度を、データバスを介して設定する。マスタとして初期化されたマイクロプロセッサ制御部を以下、マスタと称するが、これは速度値を含むメッセージを形成し、このメッセージはデータバスを介して別のマイクロプロセッサ制御部に通知される。これはブロードキャストメッセージである。すなわちメッセージは、接続されたすべてのマイクロプロセッサ機器によりデータバス上で読み出すことができる。これにより、マスタはただ1つのメッセージによって、印刷システムでの正しい速度調整を保証することができる。このことは、2つの印刷ユニットがそのデータバス区間により相互に独立して駆動される場合でも、2つのデータバス区間を共通のデータバスに接続することにより、これらが1つのユニットとして駆動される場合でも同様である。
【0028】
データバスは好ましくは2芯バスとして構成されており、とりわけシリアルに駆動される。好ましくはデータバスはCANプロトコルによって駆動される。しかし本発明では、別のプロトコル、たとえばHSCXプロトコルを設けることもできる。
【0029】
好ましくは印刷システムは中央制御装置を有し、この中央制御装置はとりわけデータスイッチと終端スイッチを開放・閉成のために制御する。
【0030】
中央制御装置は好ましくはマイクロプロセッサ制御部と接続されており、印刷システムのスイッチオン時および/またはバススイッチの切り換え時に、すべてのデータバス区間が正しく設定されるように構成されている。バススイッチの切り換え時に自動的に設定されることにより、マイクロプロセッサ制御部が正しく初期化されることが保証される。すなわちただ1つのマイクロプロセッサ制御部だけがデータバス全体でマスタとして初期化され、残りのマイクロプロセッサ制御部はスレーブとして初期化される。
【0031】
中央制御装置はマイクロプロセッサ制御部と、好ましくは別個のとりわけ並列のバスシステムを介して接続されている。マイクロプロセッサ制御部の初期化は、別個のバスシステムを介して行うことができる。
【0032】
中央制御装置により、印刷システムを、2つの印刷ユニットが共通に動作するモードと、2つの印刷ユニットが別個に動作するモードとの間を中央で切り替えることができる。共通に動作するモードは「ツインシステム」と称され、別個に動作するモードは「シングルシステム」と称される。
【0033】
以下、本発明を図面に基づき詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】1つの印刷ユニットのそれぞれ1つのデータバス区間と接続された複数の機器を示す図であり、これらのデータバス区間は共通のデータバスに接続されている。
【図2】1つの印刷ユニットのそれぞれ1つのデータバス区間と接続された複数の機器を示す図であり、これらのデータバス区間は別個のデータバスとして接続されている。
【図3】ツインシステムとして運転される2つの印刷ユニットを備える印刷システムを示す図。
【図4】図3の印刷システムを示す図であり、2つの印刷ユニットはそれぞれシングルシステムとして運転される。
【発明を実施するための形態】
【0035】
印刷システム1(図3,4)は2つの印刷ユニット2,3を含む。印刷ユニット2,3は、記録担体を搬送するための搬送経路4を有する。印刷ユニット2,3が個別の枚葉紙を印刷するように構成されている場合、搬送経路4上では複数の枚葉紙が個別に搬送される。しかし搬送経路4は、連続記録担体またはウェブ状の記録担体を印刷するように構成することもでき、記録担体はたとえば入口ドラムから引き出され、搬送経路に沿って搬送され、出口ドラム6に巻き取られる。搬送経路4に沿ってローラペア7が配置されており、これらはそれぞれモータ(図示せず)により駆動され、記録担体を所定の速度で搬送する。各印刷ユニット2,3は印刷機構8を有し、印刷機構8ではインキを塗布するための印刷ヘッド9が記録担体の上に配置されている。本実施例では、印刷ヘッドはインクジェット印刷ヘッドである。しかし印刷ヘッド9は、別の印刷方法による印刷ヘッドでも良く、たとえばトナーを電子写真技術で印刷する印刷ヘッドまたは記録担体をサーマル印刷するための印刷ヘッドであって良い。印刷機構8はそれぞれローラペア10を有し、このローラペア10もモータにより駆動され、印刷ヘッド9に記録担体を所定の速度で供給する。記録担体が印刷ヘッド9に沿って移動される速度は、印刷ヘッド9により形成される画素の、記録担体上の搬送方向における間隔を規定する。
【0036】
すべてのローラペア7,10はそれぞれマイクロプロセッサ制御部16(図1,2)と接続されており、マイクロプロセッサ制御部はローラペア7,10の回転速度を制御する。2つの印刷ユニット2,3の1つの対応するマイクロプロセッサ制御部は、データバス区間11,12により互いに接続されている。2つの印刷ユニット11,12はバススイッチ13により互いに接続されている。
【0037】
バススイッチ13により、2つのデータバス区間11,12を分離することができ、したがってこれらを2つの別個のデータバスとして駆動することも、またはこれらをバススイッチ13により互いに接続して、2つのデータバス区間11,12を共通のデータバスとして運転することもできる。
【0038】
データバス区間11,12を分離するか否かは、印刷ユニット2,3がシングルシステムとして、またはツインシステムとして駆動されるかに依存している。この決定は、印刷ユニット(印刷機)2,3のスイッチオンに続いて行うことができる。そのためには、印刷機2,3の少なくとも1つにスイッチオン操作ユニットが設けられており、このスイッチオン操作ユニットを介して選択的に2つの印刷機の少なくとも1つをシングルモードのために、または2つの印刷機をタンデムモードとも称されるツインモードのためにスイッチオンすることができる。この種のスイッチオン操作ユニットならびにさらなる詳細は、特許文献5に記載されている。この特許願の内容は本発明の参照として取り入れる。
【0039】
データバス区間11,12は好ましくはシリアルデータバス、とりわけ伝送速度の異なるシリアルデータバスとして構成されており、データバスの各データ線路に対して2つの物理的線路が設けられている。この線路にはデータ信号または反転データ信号が印加され、同相に入力されたノイズ信号を除去することができる。本実施例ではデータバスはCANデータバスとして構成されている。
【0040】
印刷システム1は付加的に並列バスシステム14を有し、この並列バスシステム14にはすべてのマイクロプロセッサ制御部が接続されている。並列バスシステム14は中央制御装置15とも接続されている。バススイッチ13は並列バスシステム14に、このスイッチが中央制御装置15により開放または閉成のために制御されるよう接続されている。
【0041】
図1と2は、データバス区間11,12、バススイッチ13、マイクロプロセッサ制御部16ならびに並列バスシステム14と中央制御装置15を簡略的に示す。
【0042】
バス区間11,12はそれぞれ2つの線路を、シリアルデータ信号の別々の伝送のために有する。2つの線路はすべてのマイクロプロセッサ制御部16とバススイッチ13に接続されている。
【0043】
バススイッチ13は2つのデータスイッチ17を有し、これらのデータスイッチは、一方のデータバス区間11のデータ線路を他方のバス区間12のデータ線路と接続する。それぞれのデータバス区間11,12の端部領域の間には、それぞれ1つの終端抵抗18と終端スイッチ19が直列に接続されている。それぞれの終端スイッチ19が閉成されると、対応する終端抵抗18がそれぞれのデータバス区間11,12の2つの線路と導電接続される。
【0044】
終端スイッチ19はバススイッチ13のデータスイッチ17と、すべての終端スイッチ19が開放されかつすべてのデータスイッチ178が閉成されるか、または、すべての終端スイッチ19が閉成されかつすべてのデータスイッチ17が開放されるように接続されている。これにより、データスイッチ17が開放されたときに、2つのデータバス区間11,12が正常に終端されることが保証される。他方、データスイッチ17が閉成されるときには、終端抵抗18への接続が遮断され、これにより2つのデータバス区間11,12が障害となる抵抗なしに、貫通したデータバスを形成することが保証される。
【0045】
図1は、データスイッチ17が閉成され、終端スイッチ19が開放されているバススイッチ13を示す。図2は、データスイッチ17が開放され、終端スイッチ19が閉成されているバススイッチ13を示す。
【0046】
シリアルバス、とりわけCANバスでは、1つのバス加入者がデータバスをコントロールするマスタとして初期化されなければならず、残りのバス加入者はデータバス上でマスタのコントロールに従うスレーブとして初期化されなければならない。バス加入者は本実施例ではマイクロプロセッサ制御部16である。印刷システム11のスイッチオン時、またはバススイッチ13の切り換え時に、すべてのバス加入者は新たに設定される。個々のバス加入者が起動する前に、中央制御装置15は並列バスシステム14を介して個々のバス加入者を、これらがマスタまたはスレーブとしてブートされるよう初期化する。
【0047】
2つのデータバス区間11,12がバススイッチ13により互いに接続されていれば(図1)、2つの印刷ユニット2,3の1つでだけバス加入者の1つがマスタとして初期化される。2つのデータバス区間11,12がバススイッチ13におり分離されていれば(図2)、2つの印刷ユニット2,3でそれぞれ1つのバス加入者がマスタとして初期化され、2つのデータバス区間11,12は別個のデータバスとして駆動される。
【0048】
マスタはそれぞれのデータバスで搬送速度を制御する。この制御は、速度を表す値を含む対応するメッセージをマスタがデータバスに印加することによって行われる。このメッセージは、データバスに接続されたすべてのバス加入者が読み出すことができ、したがってバス加入者はそれぞれの機器要素、たとえばローラペア7で速度を調整する。
【0049】
マスタは、記録担体の位置も別のバス加入者(スレーブ)に対して規定することができる。このことは、搬送過程の開始時に回転調整を伴うメッセージをマスタがデータバスに供給し、このメッセージをすべてのスレーブが読み出すことにより行われる。搬送過程が制御される場合、マスタは同期信号をデータバスに供給し、これがスレーブにより識別される。これにより、どのような速度で記録担体が移動しているのか、およびどの個所に記録担体が存在しているのかという情報がすべてのバス加入者に存在するようになる。
【0050】
図3は印刷システムを示し、ここでは2つの印刷ユニット2,3が共通に駆動される。すなわちバススイッチ13は2つのデータ区間11,12を図1にしたがい互いに接続している。記録担体は反転装置20により、2つの印刷ユニット2,3の間の領域で反転され、したがって一方の印刷ユニット2により表面が、他方の印刷ユニット3により記録担体の裏面が印刷される。しかし記録担体を反転なしで2回、たとえば異なる2つのインキにより印刷することもできる。
【0051】
図4は、2つの印刷ユニット2,3が別個に駆動される動作モードにある印刷システムを示す。すなわち各印刷ユニット2,3にそれぞれ1つの入口ドラム5と出口ドラム6が割り当てられており、記録担体は一方の印刷ユニット2または他方の印刷ユニット3によってのみ印刷される。
【0052】
この動作モードは、本発明の印刷システムでは簡単に中央制御装置15により切り換えることができる。このような「切り換え」の際には、バススイッチ13のデータスイッチ17は開放または閉成される。
【符号の説明】
【0053】
1 印刷システム
2 印刷ユニット
3 印刷ユニット
4 搬送経路
5 入口ドラム
6 出口ドラム
7 ローラペア
8 印刷機構
9 印刷ヘッド
10 ローラペア
11 データバス区間
12 データバス区間
13 バススイッチ
14 並列バスシステム
15 中央制御装置
16 マイクロプロセッサ制御部
17 データスイッチ
18 終端抵抗
19 終端スイッチ
20 反転装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷インキを記録担体に塗布するための少なくとも2つの印刷ユニット(2,3)を有する印刷システムであって、
各印刷ユニット(2,3)は、それぞれマイクロプロセッサ制御部(16)を備える複数の機器(7)を有しており、
印刷ユニット(2,3)のマイクロプロセッサ制御部(16)は、データバス区間(11,12)により互いに接続されており、
各データバス区間(11,12)は複数の線路を有し、
2つの印刷ユニット(2,3)の少なくとも2つのデータバス区間(11,12)は、バススイッチ(13)により互いに接続されており、
該バススイッチ(13)は各線路に対して、一方のデータバス区間(11,12)の1つの線路を他方のデータバス区間(11,12)の対応する線路と接続するためにそれぞれ1つのデータスイッチ(17)を有し、さらに各データバス区間(11,12)に対してそれぞれ1つの終端抵抗(18)を有し、
該終端抵抗(18)はそれぞれ1つの終端スイッチ(19)と直列に接続されており、
該終端スイッチ(19)は前記データスイッチ(17)と、すべての終端スイッチ(19)が開放されかつすべてのデータスイッチ(17)が閉成されるか、または、すべての終端スイッチ(19)が閉成されかつすべてのデータスイッチ(17)が開放されるように接続されている、印刷システム。
【請求項2】
データバスは2芯のシリアルデータバスであり、CANプロトコルまたはHSCXプロトコルにより駆動される、ことを特徴とする請求項1記載の印刷システム。
【請求項3】
データスイッチ(17)と終端スイッチ(19)は、リレーとして構成されている、ことを特徴とする請求項1または2に記載の印刷システム。
【請求項4】
印刷システム(1)は中央制御装置(15)を有し、該中央制御装置はデータスイッチ(17)と終端スイッチ(19)を開放および閉成するよう制御する、ことを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の印刷システム。
【請求項5】
中央制御装置(15)はマイクロプロセッサ制御部(16)と接続されており、該中央制御装置は、印刷システム(1)のスイッチオン時および/またはバススイッチの切り換え時に、データバス区間(11,12)に接続されたすべてのマイクロプロセッサ制御部(16)を設定する、ことを特徴とする請求項4記載の印刷システム。
【請求項6】
中央制御装置(15)によるマイクロプロセッサ制御部(16)のブートの前に、データバス区間(11,12)が分離されている場合には、1つのデータバス区間(11,12)のそれぞれ1つのマイクロプロセッサ制御部(16)がマスタとして初期化され、データバス区間(11,12)が接続されている場合には、ただ1つのマイクロプロセッサ制御部(16)だけがマスタとして初期化される、ことを特徴とする請求項5記載の印刷システム。
【請求項7】
機器は、少なくとも1つの記録担体を運動させるための駆動機器である、ことを特徴とする請求項4から6までのいずれか1項に記載の印刷システム。
【請求項8】
中央制御装置(15)は、別個のバスシステムによりマイクロプロセッサと接続されている、ことを特徴とする請求項1から7までのいずれか1項に記載の印刷システム。
【請求項9】
データバス区間(11,12)が分離されている場合、データバス区間は別個のデータバスとして駆動され、データバス区間が接続されている場合、データバス区間(11,12)は1つのデータバスとして共通に駆動される、ことを特徴とする請求項1から8までのいずれか1項記載の印刷システムの駆動方法。
【請求項10】
データバスでは、記録担体が印刷システム(1)内を搬送される速度が、それぞれのデータバスと接続されたマイクロプロセッサ制御部(16)によって設定される、ことを特徴とする請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−157003(P2012−157003A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−12313(P2012−12313)
【出願日】平成24年1月24日(2012.1.24)
【出願人】(397018925)オーセ プリンティング システムズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (68)
【氏名又は名称原語表記】Oce Printing Systems GmbH
【住所又は居所原語表記】Siemensallee 2, D−85586 Poing, Germany
【Fターム(参考)】